JP5786776B2 - 物質同定方法及び該方法に用いられる質量分析システム - Google Patents
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Description
[ステップ1]分析対象である試料に含まれる各種物質をLC、CE等により分離し、その溶出液を分取・分画して多数のサンプルを調製する(以下、分取・分画により得られた個々のサンプルを「分画試料」と呼ぶ)。なお、試料を分取・分画する際には、予め決めた一定の時間間隔で分画を行う又は一定量の試料液を採取するように分画を行うことにより、該試料中の物質ができるだけ漏れなくいずれかの分画試料に含まれるようにする。
[ステップ3]上記ステップ2で選択されたピークをプリカーサイオンに設定して当該分画試料に対しMS2測定を実行し、その測定結果に基づくデータベース検索やデノボシーケンスサーチを行い、その分画試料に含まれる物質を同定する。
[ステップ5]上記ステップ2〜4の処理を複数の分画試料に対してそれぞれ行い、元の試料に含まれている様々な物質を網羅的に同定する。
a)所定の試料から得られた複数の分画試料に対するMSn-1測定により求まるMSn-1ピークのSN比、及び該各MSn-1ピークをプリカーサイオンとして実行されたMSn測定の結果に基づく物質同定の結果を利用して、同種試料に由来するMSn-1ピークのSN比と複数のMSn-1ピークをSN比順に従ってプリカーサイオンとして選択してMSn測定及び同定を実行していったときに充分な確度で何らかの物質が同定できたピークの累積数との関係を示す同定確率推定モデルを求め、該同定確率推定モデルを表現する同定確率推定モデル情報を記憶する同定確率推定モデル構築ステップと、
b)同定対象である目的試料から得られた少なくとも1つの分画試料に対するMSn-1測定が終了した状況で、そのMSn-1測定により求まったMSn-1ピークの中で、プリカーサイオンの候補となる複数のMSn-1ピークについてそれぞれSN比を算出するピークSN比算出ステップと、
c)前記同定確率推定モデル情報より求まる同定確率推定モデルを参照して、前記ピークSN比算出ステップで算出されたMSn-1ピークのSN比から該MSn-1ピークの同定確率推定値を算出する同定確率推定ステップと、
d)前記プリカーサイオン候補となる複数のMSn-1ピークについてそれぞれ推定された同定確率推定値を用いて、該複数のMSn-1ピークに対するMSn測定の優先順位を決定するMSn測定順位決定ステップと、
を有することを特徴としている。
a)所定の試料から得られた複数の分画試料に対するMSn-1測定により求まるMSn-1ピークのSN比、及び該各MSn-1ピークをプリカーサイオンとして実行されたMSn測定の結果に基づく物質同定の結果を利用して求められた、同種試料に由来するMSn-1ピークのSN比と複数のMSn-1ピークをSN比順に従ってプリカーサイオンとして選択してMSn測定及び同定を実行していったときに充分な確度で何らかの物質が同定できたピークの累積数との関係を示す同定確率推定モデルを表現する同定確率推定モデル情報を記憶しておく同定確率推定モデル情報記憶手段と、
b)同定対象である目的試料から得られた少なくとも1つの分画試料に対するMSn-1測定が終了した状況で該分画試料に対するMSn測定を実行するに先立って、そのMSn-1測定により求まったMSn-1ピークの中で、プリカーサイオンの候補となる複数のMSn-1ピークについてそれぞれSN比を算出するピークSN比算出手段と、
c)前記同定確率推定モデル情報より求まる同定確率推定モデルを参照して、前記ピークSN比算出手段で算出されたMSn-1ピークのSN比から該MSn-1ピークの同定確率推定値を算出する同定確率推定手段と、
d)前記プリカーサイオン候補となる複数のMSn-1ピークについてそれぞれ推定された同定確率推定値を用いて、該複数のMSn-1ピークに対するMSn測定の優先順位を決定するMSn測定順位決定手段と、
を備え、前記MSn測定順位決定手段で決定された優先順位に従って前記分画試料に対するMSn測定を実行することを特徴としている。
前記プリカーサイオン候補となる複数のMSn-1ピークについて前記同定確率推定ステップにおいてそれぞれ推定された同定確率推定値に基づいて、同一のMSn-1ピークに対するMSn測定を複数回行ってその測定結果を積算したときの同定確率の増加度合である同定確率増分推定値を求める同定確率増分推定ステップをさらに有し、
前記MSn測定順位決定ステップでは、前記同定確率推定ステップによる各MSn-1ピークの同定確率推定値と、前記同定確率増分推定ステップによる同定確率増分推定値とに基づいて、同一MSn-1ピークに対する複数回のMSn測定を許容する条件の下で複数のMSn-1ピークに対するMSn測定の優先順位を決定するとよい。
また、第2発明に係る質量分析システムでも同様である。
ここでいう測定シーケンスとは、同一のMSn-1ピークに対する複数回のMSn測定の実行を含めた同一分画試料に対する全てのMSn測定の手順のことである。
この例による方法では、予備的に、つまり同定対象である目的試料の測定及び同定処理に先立って、多くの物質を含む同定確率推定モデル構築用試料(以下、単に「モデル構築用試料」という)に対する測定及び同定処理の結果を利用して、同定確率推定モデルを作成しておく。この同定確率推定モデルは、MS2測定及び同定実行前のMS1ピークをプリカーサイオンとしてMS2測定及び同定処理を実行したと仮定したときに同定が成功する確率を推測するための参照データである。モデル構築用試料は目的試料と同種、例えば目的試料がペプチド混合物である場合にはモデル構築用試料もペプチド混合物であることが好ましい。
まず、モデル構築用試料をLCで分離して、所定の分画時間毎に分取された多数の分画試料を調製する。そして、各分画試料に対しMS1測定が実施され、MS1スペクトルデータが収集される。さらに、このMS1スペクトルデータに基づいて抽出される各MS1ピークに対して、1回のCID操作を加えたMS2測定が実施されてMS2スペクトルデータが収集され、そのMS2スペクトルデータを用いた同定処理が試みられる。
後述する同定確率はMS1スペクトルのノイズレベルの影響を受ける。そこで、モデル構築用試料に対するMS1スペクトルのノイズレベルを評価する。本例では、次のステップS121〜S123の手順により、 MS1測定により得られた生データ(加工されていないデータ)であるMS1ロー(raw)プロファイル(以下、単に「ロープロファイル」という)からノイズレベルを分画試料毎に、つまりMS1スペクトル毎に評価する。以下の説明では、離散化されたロープロファイルの信号強度をRmとおく。ただし、m=0、1、…は、評価対象である試料のロープロファイルの、サンプリング点における質量電荷比の順序を示す番号である。ロープロファイルに含まれるサンプリング点全体の集合はMで表すものとする。
ロープロファイルの最大ピーク強度をP(max)とおく。つまり、次の(1)式のようにおく。
P(max)= max Rm …(1)
(ただしm∈M)
ここで、ピーク近傍の判定用閾値μ(0<μ<1)を適宜に選び、信号強度が最大ピーク強度P(max)のμ倍以上であるサンプリング点をピーク部分であるとみなす。そして、ピーク部分に含まれるサンプリング点、つまり信号強度がμ・P(max)以上であるサンプリング点からの距離がw以内であるサンプリング点、を除いたサンプリング点の集合M’(w,μ)を求める。図4(a)はm/z 1060-m/z 1080の範囲についてMS1スペクトルのロープロファイルに対しサンプリング点集合M’(w,μ)を求めた例であり、図4(b)は(a)のm/z 1070-m/z 1075の範囲の拡大図である。
次に、上記ピーク部分とピーク近傍とを除外したサンプリング点集合M’(w,μ)において、通過帯域が半値幅wであるフィルタによりロープロファイルを平滑化した、平滑化プロファイル*Rm(w,μ)を求める。つまり、*Rm(w,μ)は次の(2)式で求まる。
*Rm(w,μ)={1/(2w+1)}ΣRm' …(2)
(ただしm∈M’(w,μ))
ここで、Σはm’=−wからwまでの総和である。この平滑化プロファイル*Rm(w,μ)と元のロープロファイルとの差を局所的な信号変動量と定義し、ΔRm(w,μ)で表す。つまり、ΔRm(w,μ)は次の(3)式で求まる。
ΔRm(w,μ)=Rm−*Rm(w,μ) …(3)
ここでは、上記局所的な信号変動量ΔRm(w,μ)の2乗平均のc倍をノイズレベルN(Rm;w,μ)と定義する。cはノイズレベルを定義するための適当な定数である。つまり、N(Rm;w,μ)の定義式は次の(4)式である。
N(Rm;w,μ) =c・√{ΣΔRm(w,μ)2} …(4)
なお、ノイズレベルの定義は上記説明のものに限定されるわけではなく、MS1スペクトルのノイズレベルを適切に定義できる方法でありさえすればよい。
実際の2つのMS1ロープロファイルに基づいて、上記方法によりノイズレベルN(Rm;w,μ)を算定した結果の例を図5に示す。
図6は、モデル構築用試料由来の全てのMS1ピークの質量電荷比m/zとSN比とをプロットした結果の例である。ここで、SN比はピーク強度とステップS12で求めたノイズレベルとの比である。図6に□印で示したプロット点はMS1ピークを示している。また、●印で示したプロット点は、そのMS1ピークをプリカーサイオンとしたMS2測定によって物質同定が可能であった、即ち、同定に成功したMS1ピークを示している。図6を見ると、この例では、SN比が大きいほど同定に成功するMS1ピークの割合が大きくなる傾向にあることが分かる。これは本例に限らず、一般的な傾向である。
SN比の大きい順にMS1ピークを抽出して「1」から順位付けし(つまりMS1ピークをSN比が大きい順にソートして順位を付け)、その順位毎にそれまでに同定に成功したMS1ピークの数(累積数)を求めると、図7に示すように、累積数が右上がりの階段状に変化するグラフが描ける。図7中の実線で示す階段状の折れ線は、例えば、順位1のSN比を示すMS1ピークは同定に成功し、順位1よりも低いSN比である順位3のSN比を示すMS1ピークは同定に失敗したことを意味している。この折れ線は、或るSN比以上を示すMS1ピークのうち幾つのMS1ピークが同定に成功したのかを示す経験累積分布関数である。
ステップS14で得られた階段状のプロファイルに対し解析的な関数を用いてフィッティングを行うことにより、SN比に従ったMS1ピークの累積数と同定成功累積数との滑らかなカーブ状の関係を求める。ここでは、フィッティング関数の形状として、次の(5)式の双曲線関数を用いた。
N(ident)tanh(n/N(all)σ) …(5)
ただし、nは或る順位よりも上位順位であるMS1ピークの総数であり、N(all)及びN(ident)はそれぞれMS1ピークの総数及び同定に成功したMS1ピークの総数である。また、σはフィッティング関数の立ち上がりの速さを定めるパラメータであり、先に求めた階段状のプロファイルにフィットするように算出する。図8中に階段状のプロファイルにフィットさせたフィッティング関数を一点鎖線で示している。このフィッティング関数のカーブが同定確率推定モデルであり、σはこのモデルを規定するパラメータである。
(N(ident)/N(all)σ)sech2(n/N(all)σ) …(6)
図8には上記微分関数で示される推定同定確率も重ねて示してある。
まず、目的試料から調製された多数の分画試料に対してそれぞれMS1測定が実行され、MS1スペクトルデータが収集される。そして、各分画試料のMS1スペクトルを保持時間の順に並べて3次元的なMS1スペクトルを求め、該3次元MS1スペクトルに対して質量電荷比m/z−保持時間の2次元平面上でピーク検出を行ってMS1ピークを抽出する。これは試料の相違はあるものの、基本的にはステップS11と同じ処理である。
次に、ステップS12(S121〜S123)と同様の処理を行うことで、各分画試料に対するMS1スペクトルのノイズレベルをそれぞれ評価する。
ステップS21で抽出されたMS1ピーク毎に、そのピーク強度と該ピークが存在する分画試料に対してステップS22で算出されたノイズレベルとからSN比を算出する。
上述したようにパラメータσに基づいて同定確率推定モデル、つまりは図8に示したフィッティング関数が求まる。そして、このフィッティング関数の横軸を各順位に対応するSN比に変換すれば、与えられたSN比に対応する同定確率推定値p1(r(1))が求まるカーブが得られる。ここで r(1)はMS1ピークのSN比である。各順位をSN比に変換するためには、例えば、MS1ピークをSN比に応じてソートする際に得られる順位とSN比との関係を示す情報をテーブル等の形式で保持しておき、このテーブルを用いればよい。図9には、図8に示したフィッティング関数から求めた同定確率推定値p1(r(1))のカーブを示す。このカーブを用いて、MS1ピーク毎にそのSN比から同定確率推定値を算出する。なお、この同定確率推定値p1(r(1))のカーブが滑らかでないのは、同定確率推定モデル作成に使用したMS1ピークのSN比が規則的なものでないからである。
ステップS24で得られる同定確率推定値p1(r(1))は、通常の、つまりは同定確率推定モデル作成に用いたMS2スペクトルデータと同条件のデータ積算回数で求めたMS2スペクトルデータを用いた場合の同定確率である。即ち、同定確率推定モデル作成時にはMS2スペクトルデータの積算を行っていないから、1回のMS2測定により得られたデータである。それに対し、同じプリカーサイオンに対してMS2測定をu回実行して、それら測定で得られたデータを積算すると、つまりデータ積算回数をu倍にすると、MS2スペクトルのSN比は√u倍になり、同定確率が向上することが期待される。このときの同定確率はMS1ピークのSN比が√u倍になった場合の同定確率にほぼ等しいと考えられる。すると、同じMS1ピークに対してMS2スペクトルデータ積算回数を2倍(u=2)及び3倍(u=3)にした際の同定確率は、それぞれp1(√2r(1))、p1(√3r(1)) と表される。したがって、2回目、3回目のMS2スペクトルデータ積算による同定確率の増分推定値はそれぞれ、(7)、(8)式に示すようになる。
p2(r(1))=p1(√2r(1))−p1(r(1)) …(7)
p3(r(1))=p1(√3r(1))−p1(√2r(1)) …(8)
この同定確率増分推定値p2(r(1))及びp3(r(1))を示すカーブを図9に示す。
ステップS24において得られた通常のMS2スペクトルデータ積算(この例では積算なし)における各MS1ピークに対する同定確率推定値と、ステップS25で得られた2回目及び3回目のMS2スペクトルデータ積算における各MS1ピークに対する同定確率増分推定値とを用いて、MS2測定を実行する上でプリカーサイオンとして選択するMS1ピークの優先順位を決定する。
(i)PA→PB→PC→PDの順に1回目のMS2測定を実行。
(ii)PD→PC→PBの順に2回目のMS2測定を実行し、得られたMS2スペクトルデータを積算。
(iii)PD→PC→PBの順に3回目のMS2測定を実行し、得られたMS2スペクトルデータを積算。
(iv)PEに対するMS2測定を実行。
(v)PEに対する2回目のMS2測定を実行し、得られたMS2スペクトルデータを積算。
(vi)PEに対する3回目のMS2測定を実行し、得られたMS2スペクトルデータを積算。
以上のように、プリカーサイオン候補である複数のMS1ピークのSN比と、同定確率推定モデルに基づく、SN比と同定確率推定値及び同定確率増分推定値との関係を示す曲線とを用いて、各MS1ピークを対象とするMS2測定の優先順位を決定することができる。
ステップS26ではMS2測定の優先順位が決定されるが、常に、その優先順位に従って全てのMS2測定を実行可能であるというわけではない。何故なら、一般に、1つの分画試料から得られたMS1スペクトル上でプリカーサイオンとして抽出されるMS1ピークの数は不定であるのに対し、測定時間や同定のためのデータ処理時間或いは測定回数などに制約があるのが一般的であるからである。そこで、1つの分画試料に対するMS2測定回数の条件を与えることにより、複数のプリカーサイオンに対するMS2測定の順序を規定するMS2測定シーケンスの最適化を行う。ここでいう、最適なMS2測定シーケンスとは、与えられたMS2測定回数の制約の下で、同定される物質(この例ではペプチド)の総数の期待値が最大になるような測定シーケンスである。上述した、PA、PB、PC、PD、PEの5個のMS1ピークがプリカーサイオン候補として存在する場合について例示する。
(1)SN比が大きいMS1ピークに対しては1回のみのMS2測定を行い、図10中のp2(r(1))の曲線のピーク付近にSN比が位置するMS1ピークは2回のMS2測定による2倍積算を行い、p3(r(1))の曲線のピーク付近にSN比が位置するMS1ピークは3回のMS2測定による3倍積算を行うとよい。
(2)MS2測定実施可能延べ回数が少ないときには、MS2スペクトルデータ積算の不要な(つまり、SN比の大きな)MS1ピークをMS2測定対象として選択する。MS2測定実施可能延べ回数が増えるに従い、最適なMS2測定回数が2回又は3回である(つまりSN比が相対的に小さい)MS1ピークについても選択する。
図1において、分析部1は、液体試料中の各種物質を保持時間に応じて分離するLC部11と、LC部11で分離された物質を含む試料を分取・分画してそれぞれ異なる分画試料を調製する分取分画部12と、複数の分画試料のうちの1つを選択して該分画試料に対する質量分析を実行するMS部13と、を含む。図示しないが、MS部13は、MALDIイオン源、イオントラップ、及び飛行時間型質量分析計(TOFMS)を含むMALDI−IT−TOFMSであり、MS1測定だけでなく、イオントラップにおいてプリカーサイオン選択と衝突誘起解離(CID)操作とを1乃至複数回繰り返した後にTOFMSで質量分析を行うMSn測定が可能となっている。ただし、MS1測定及びMS2測定のみを実行すればよい場合(nが3以上のMSn測定が不要である場合)には、イオントラップとTOFMSとの組み合わせに代えて、三連四重極型質量分析計のような、より簡単な構成の質量分析装置を利用することができる。
11…LC部
12…分取分画部
13…MS部
2…制御部
3…データ処理部
31…スペクトルデータ収集部
32…同定確率推定モデル構築部
33…同定確率推定パラメータ記憶部
34…同定確率推定値算出部
35…同定確率増分算出部
36…MSn測定優先順位決定部
37…MSn測定シーケンス最適化部
38…同定処理部
4…表示部
Claims (12)
- 各種物質が含まれる試料を分離用パラメータに従って分離し分画することで得られた複数の分画試料に対しMSn測定(nは2以上の整数)をそれぞれ実行することで得られたMSnスペクトルに基づいて、各分画試料に含まれる物質を同定する物質同定方法であって、
a)所定の試料から得られた複数の分画試料に対するMSn-1測定により求まるMSn-1ピークのSN比、及び該各MSn-1ピークをプリカーサイオンとして実行されたMSn測定の結果に基づく物質同定の結果を利用して、同種試料に由来するMSn-1ピークのSN比と複数のMSn-1ピークをSN比順に従ってプリカーサイオンとして選択してMSn測定及び同定を実行していったときに充分な確度で何らかの物質が同定できたピークの累積数との関係を示す同定確率推定モデルを求め、該同定確率推定モデルを表現する同定確率推定モデル情報を記憶する同定確率推定モデル構築ステップと、
b)同定対象である目的試料から得られた少なくとも1つの分画試料に対するMSn-1測定が終了した状況で、そのMSn-1測定により求まったMSn-1ピークの中で、プリカーサイオンの候補となる複数のMSn-1ピークについてそれぞれSN比を算出するピークSN比算出ステップと、
c)前記同定確率推定モデル情報より求まる同定確率推定モデルを参照して、前記ピークSN比算出ステップで算出されたMSn-1ピークのSN比から該MSn-1ピークの同定確率推定値を算出する同定確率推定ステップと、
d)前記プリカーサイオン候補となる複数のMSn-1ピークについてそれぞれ推定された同定確率推定値を用いて、該複数のMSn-1ピークに対するMSn測定の優先順位を決定するMSn測定順位決定ステップと、
を有することを特徴とする物質同定方法。
- 請求項1に記載の物質同定方法であって、
前記プリカーサイオン候補となる複数のMSn-1ピークについて前記同定確率推定ステップにおいてそれぞれ推定された同定確率推定値に基づいて、同一のMSn-1ピークに対するMSn測定を複数回行ってその測定結果を積算したときの同定確率の増加度合である同定確率増分推定値を求める同定確率増分推定ステップをさらに有し、
前記MSn測定順位決定ステップでは、前記同定確率推定ステップによる各MSn-1ピークの同定確率推定値と、前記同定確率増分推定ステップによる同定確率増分推定値とに基づいて、同一MSn-1ピークに対する複数回のMSn測定を許容する条件の下で複数のMSn-1ピークに対するMSn測定の優先順位を決定することを特徴とする物質同定方法。 - 請求項2に記載の物質同定方法であって、
1つの分画試料に対するMSn測定実行回数の上限の下で、前記MSn測定順位決定ステップで決定された優先順位と各MSn-1ピークのSN比とに基づいて、複数のMSn-1ピークに対するMSn測定を実行するための測定シーケンスを決定するMSn測定シーケンス決定ステップを有することを特徴とする物質同定方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の物質同定方法であって、
前記目的試料に対する測定に先立って前記所定の試料に対する測定を実行し、前記同定確率モデル構築ステップではその測定結果に基づいて同定確率推定モデルを作成することを特徴とする物質同定方法。 - 請求項2又は3に記載の物質同定方法であって、
前記分画試料に対するMSn測定の実行に先立って、前記ピークSN比算出ステップ、前記同定確率推定ステップ、前記MSn測定順位決定ステップ、及びMSn測定シーケンス決定ステップによる一連の処理により該分画試料に対するMSn測定の測定シーケンスを決定することを特徴とする物質同定方法。 - 請求項5に記載の物質同定方法であって、
前記分画試料に対するMSn測定の実行に先立って、前記ピークSN比算出ステップ、前記同定確率推定ステップ、前記MSn測定順位決定ステップ、及びMSn測定シーケンス決定ステップによる一連の処理により該分画試料に対するMSn測定の測定シーケンスを決定するとともに、該測定シーケンスに従ってMSn測定を開始しその測定の途中段階で得られた同定結果を利用してその測定シーケンスを変更することを特徴とする物質同定方法。 - 各種物質が含まれる試料を分離用パラメータに従って分離し分画することで得られた複数の分画試料に対しMSn測定(nは2以上の整数)をそれぞれ実行することで得られたMSnスペクトルに基づいて、各分画試料に含まれる物質を同定するために用いられる質量分析システムであって、
a)所定の試料から得られた複数の分画試料に対するMSn-1測定により求まるMSn-1ピークのSN比、及び該各MSn-1ピークをプリカーサイオンとして実行されたMSn測定の結果に基づく物質同定の結果を利用して求められた、同種試料に由来するMSn-1ピークのSN比と複数のMSn-1ピークをSN比順に従ってプリカーサイオンとして選択してMSn測定及び同定を実行していったときに充分な確度で何らかの物質が同定できたピークの累積数との関係を示す同定確率推定モデルを表現する同定確率推定モデル情報を記憶しておく同定確率推定モデル情報記憶手段と、
b)同定対象である目的試料から得られた少なくとも1つの分画試料に対するMSn-1測定が終了した状況で該分画試料に対するMSn測定を実行するに先立って、そのMSn-1測定により求まったMSn-1ピークの中で、プリカーサイオンの候補となる複数のMSn-1ピークについてそれぞれSN比を算出するピークSN比算出手段と、
c)前記同定確率推定モデル情報より求まる同定確率推定モデルを参照して、前記ピークSN比算出手段で算出されたMSn-1ピークのSN比から該MSn-1ピークの同定確率推定値を算出する同定確率推定手段と、
d)前記プリカーサイオン候補となる複数のMSn-1ピークについてそれぞれ推定された同定確率推定値を用いて、該複数のMSn-1ピークに対するMSn測定の優先順位を決定するMSn測定順位決定手段と、
を備え、前記MSn測定順位決定手段で決定された優先順位に従って前記分画試料に対するMSn測定を実行することを特徴とする質量分析システム。
- 請求項7に記載の質量分析システムであって、
前記プリカーサイオン候補となる複数のMSn-1ピークについて前記同定確率推定手段においてそれぞれ推定された同定確率推定値に基づいて、同一のMSn-1ピークに対するMSn測定を複数回行ってその測定結果を積算したときの同定確率の増加度合である同定確率増分推定値を求める同定確率増分推定手段をさらに有し、
前記MSn測定順位決定手段は、前記同定確率推定手段による各MSn-1ピークの同定確率推定値と、前記同定確率増分推定手段による同定確率増分推定値とに基づいて、同一MSn-1ピークに対する複数回のMSn測定を許容する条件の下で複数のMSn-1ピークに対するMSn測定の優先順位を決定することを特徴とする質量分析システム。 - 請求項8に記載の質量分析システムであって、
1つの分画試料に対するMSn測定実行回数の上限の下で、前記MSn測定順位決定手段により決定された優先順位と各MSn-1ピークのSN比とに基づいて、複数のMSn-1ピークに対するMSn測定を実行するための測定シーケンスを決定するMSn測定シーケンス決定手段と、
決定された前記測定シーケンスに従って前記分画試料に対するMSn測定を実行するMSn測定実行制御手段と、
をさらに備えることを特徴とする質量分析システム。 - 請求項7〜9のいずれかに記載の質量分析システムであって、
前記目的試料に対する測定に先立って前記所定の試料に対する測定を実行し、前記同定確率モデル構築手段はその測定結果に基づいて同定確率推定モデルを作成することを特徴とする質量分析システム。 - 請求項8又は9に記載の質量分析システムであって、
前記分画試料に対するMSn測定の実行に先立って、前記ピークSN比算出手段、前記同定確率推定手段、前記MSn測定順位決定手段、及びMSn測定シーケンス決定手段による一連の処理により該分画試料に対するMSn測定の測定シーケンスを決定することを特徴とする質量分析システム。 - 請求項11に記載の質量分析システムであって、
前記分画試料に対するMSn測定の実行に先立って、前記ピークSN比算出手段、前記同定確率推定手段、前記MSn測定順位決定手段、及びMSn測定シーケンス決定手段による一連の処理により該分画試料に対するMSn測定の測定シーケンスを決定するとともに、該測定シーケンスに従ってMSn測定を開始しその測定の途中段階で得られた同定結果を利用してその測定シーケンスを変更することを特徴とする質量分析システム。
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