JP5786776B2 - 物質同定方法及び該方法に用いられる質量分析システム - Google Patents

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Description

本発明は、MSn測定(ただしnは2以上の整数)を行うことが可能な質量分析装置を用いて試料に含まれる物質を同定する物質同定方法、及び、該方法により試料中の物質を同定するための質量分析システムに関する。
生命科学の研究や医療、医薬品開発などの分野においては、生体試料を対象として、タンパク質、ペプチド、核酸、糖鎖など様々な物質を網羅的に同定することがますます重要になってきている。特にタンパク質やペプチドを対象とするこうした網羅的な解析手法はショットガン・プロテオミクス(Shotgun Proteomics)と呼ばれている。こうした解析のためには、LC(液体クロマトグラフ)やCE(キャピラリ電気泳動)などのクロマトグラフィと、MSn型質量分析装置(タンデム型質量分析装置)とを組み合わせた分析手法が非常に威力を発揮している。
MSn型質量分析装置を用いた生体試料中の各種物質の一般的な網羅的同定法の手順は次のとおりである。
[ステップ1]分析対象である試料に含まれる各種物質をLC、CE等により分離し、その溶出液を分取・分画して多数のサンプルを調製する(以下、分取・分画により得られた個々のサンプルを「分画試料」と呼ぶ)。なお、試料を分取・分画する際には、予め決めた一定の時間間隔で分画を行う又は一定量の試料液を採取するように分画を行うことにより、該試料中の物質ができるだけ漏れなくいずれかの分画試料に含まれるようにする。
[ステップ2]各分画試料に対しMS1測定をそれぞれ行ってMS1スペクトルを取得し、該MS1スペクトル上で同定対象の物質群に由来すると推測し得るピークを選択する。
[ステップ3]上記ステップ2で選択されたピークをプリカーサイオンに設定して当該分画試料に対しMS2測定を実行し、その測定結果に基づくデータベース検索やデノボシーケンスサーチを行い、その分画試料に含まれる物質を同定する。
[ステップ4]充分な確度で特定の物質が同定されなかった場合には、MS1スペクトル上で見つけた別のピークをプリカーサイオンに設定してMS2測定を実行するか、或いは、MS2スペクトル上で観測される特定のイオンをプリカーサイオンとしたさらに高次(つまりnが3以上)のMSn測定を実行し、その測定結果に基づくデータベース検索やデノボシーケンスサーチなどにより、分画試料に含まれる物質を同定する。
[ステップ5]上記ステップ2〜4の処理を複数の分画試料に対してそれぞれ行い、元の試料に含まれている様々な物質を網羅的に同定する。
上記のような網羅的同定において、高い確度で以て物質を同定するには、同一の分画試料に含まれる物質の種数が少ない(できれば1種類のみである)ことが望ましい。しかしながら、そのためには1つの分画の時間を短くする必要があり、そうすると分画数自体が非常に多くなってしまう。そこで、限られた測定時間又は測定回数でできるだけ多くの物質を同定するためには、つまり、網羅的同定のスループットを向上させるためには、MS1スペクトル上で観測される複数のピークの中で、同定に成功する確率(以下「同定確率」という)が高いピークを優先的にプリカーサイオンとして選択し且つ適切な測定条件で以てMSn測定を行う必要がある。
或る試料に対して得られたMS1スペクトル上で観測されるピークの中からMS2測定のためのプリカーサイオンを選択する方法としては、ピーク強度が高いものから順に選択する方法が従来知られている(特許文献1参照)。或る1つの試料に対してMS2測定を実行する時間や回数に制約がある場合には、ピーク強度の高い順に所定個数のピークに対応するイオンをプリカーサイオンとして選択する等の制御が行われている。他方、測定時間又は測定回数が充分に確保できる場合には、プリカーサイオンの選択個数に制約を設けずに、信号強度が所定閾値以上であるピークを全て抽出してプリカーサイオンとする方法も知られている。
これらの方法はあくまでも、ピーク強度の高いイオンが同定確率が高いとの仮定に基づいていると考えられる。この仮定自体は定性的に誤りであるというわけではないが、ピーク強度の高さは必ずしも同定確率の高さを示すものではない。そのため、プリカーサイオン候補であるピークが複数存在するときに、いずれのピークでも同程度の高い確率で以て同定に至る場合と、一部のピークしか同定に至ることが期待できない場合とがあるが、ピーク強度からそうした状況の相違を充分に識別することはかなり困難である。即ち、MS1スペクトル上の各ピークに対する同定確率を事前に、つまりMS2測定の実行前に、定量的に評価する方法は従来確立されておらず、このことが網羅的同定の効率を下げる大きな要因となっている。
特許第3766391号公報
アレクセイ・ナコルチェフスキー(Aleksey Nakorchevsky)、ほか1名、「エクスプローリング・データ-デペンデント・アクイジション・ストラテジーズ・ウィズ・ジ・インストゥルメント・コントロール・ライブラリーズ・フォー・ザ・サーモ・サイエンティフィック・インストゥルメンツ(Exploring Data-Dependent Acquisition Strategies with the Instrument Control Libraries for the Thermo Scientific Instruments)」、58th ASMS Conference、2010年
換言すれば、MSn-1スペクトル上の各ピークに対する同定確率を定量的に評価することが可能であれば、そうした定量的な評価結果に基づいて、より適切なピークをプリカーサイオンとして選択したりより適切な順序で複数のピークをプリカーサイオンとして選択したりすることが可能である。こうした課題に対し、本願出願人は、既に特願2011−244600号において、MS2測定を実行する前にそのMS2測定結果を利用した物質同定の確率を定量的に推定する新規の手法を提案している。
本発明は上記提案の同定確率推定手法の技術思想を利用して、試料中に含まれる多数の物質を効率的に、つまりはできるだけ少ない測定回数で以て又はできるだけ短い測定時間で以て得られた質量分析データに基づき高い確度で同定することができる、物質同定方法、及び該方法に用いられる質量分析システムを提供することを主たる目的としている。
上記課題を解決するために成された第1発明は、各種物質が含まれる試料を分離用パラメータに従って分離し分画することで得られた複数の分画試料に対しMSn測定(nは2以上の整数)をそれぞれ実行することで得られたMSnスペクトルに基づいて、各分画試料に含まれる物質を同定する物質同定方法であって、
a)所定の試料から得られた複数の分画試料に対するMSn-1測定により求まるMSn-1ピークのSN比、及び該各MSn-1ピークをプリカーサイオンとして実行されたMSn測定の結果に基づく物質同定の結果を利用して、同種試料に由来するMSn-1ピークのSN比と複数のMSn-1ピークをSN比順に従ってプリカーサイオンとして選択してMSn測定及び同定を実行していったときに充分な確度で何らかの物質が同定できたピークの累積数との関係を示す同定確率推定モデルを求め、該同定確率推定モデルを表現する同定確率推定モデル情報を記憶する同定確率推定モデル構築ステップと、
b)同定対象である目的試料から得られた少なくとも1つの分画試料に対するMSn-1測定が終了した状況で、そのMSn-1測定により求まったMSn-1ピークの中で、プリカーサイオンの候補となる複数のMSn-1ピークについてそれぞれSN比を算出するピークSN比算出ステップと、
c)前記同定確率推定モデル情報より求まる同定確率推定モデルを参照して、前記ピークSN比算出ステップで算出されたMSn-1ピークのSN比から該MSn-1ピークの同定確率推定値を算出する同定確率推定ステップと、
d)前記プリカーサイオン候補となる複数のMSn-1ピークについてそれぞれ推定された同定確率推定値を用いて、該複数のMSn-1ピークに対するMSn測定の優先順位を決定するMSn測定順位決定ステップと、
を有することを特徴としている。
また上記課題を解決するために成された第2発明は、各種物質が含まれる試料を分離用パラメータに従って分離し分画することで得られた複数の分画試料に対しMSn測定(nは2以上の整数)をそれぞれ実行することで得られたMSnスペクトルに基づいて、各分画試料に含まれる物質を同定するために用いられる質量分析システムであって、
a)所定の試料から得られた複数の分画試料に対するMSn-1測定により求まるMSn-1ピークのSN比、及び該各MSn-1ピークをプリカーサイオンとして実行されたMSn測定の結果に基づく物質同定の結果を利用して求められた、同種試料に由来するMSn-1ピークのSN比と複数のMSn-1ピークをSN比順に従ってプリカーサイオンとして選択してMSn測定及び同定を実行していったときに充分な確度で何らかの物質が同定できたピークの累積数との関係を示す同定確率推定モデルを表現する同定確率推定モデル情報を記憶しておく同定確率推定モデル情報記憶手段と、
b)同定対象である目的試料から得られた少なくとも1つの分画試料に対するMSn-1測定が終了した状況で該分画試料に対するMSn測定を実行するに先立って、そのMSn-1測定により求まったMSn-1ピークの中で、プリカーサイオンの候補となる複数のMSn-1ピークについてそれぞれSN比を算出するピークSN比算出手段と、
c)前記同定確率推定モデル情報より求まる同定確率推定モデルを参照して、前記ピークSN比算出手段で算出されたMSn-1ピークのSN比から該MSn-1ピークの同定確率推定値を算出する同定確率推定手段と、
d)前記プリカーサイオン候補となる複数のMSn-1ピークについてそれぞれ推定された同定確率推定値を用いて、該複数のMSn-1ピークに対するMSn測定の優先順位を決定するMSn測定順位決定手段と、
を備え、前記MSn測定順位決定手段で決定された優先順位に従って前記分画試料に対するMSn測定を実行することを特徴としている。
本発明において、試料に含まれる各種物質を分離する手段はLC、CEなどである。該手段がLCなどカラムを用いたものである場合には、上記分離用パラメータとは時間(保持時間)である。即ち、或る1つの分画試料は所定の時間範囲内にカラムから溶出してきた1乃至複数の物質を含む。また、試料に含まれる各種物質を分離する手段がCEである場合には、上記分離用パラメータとは移動度である。
また、MSnスペクトルに基づいて物質を同定する同定方法は特に限定されず、例えばデノボシーケンスサーチ、MS/MSイオンサーチ、など任意のアルゴリズムを用いることができる。ただし、同定確率推定モデル構築ステップ(及び手段)において同定を実行するときと、目的試料から得られた同定試料に対して同定を実行するときとでは、同じアルゴリズムを使用する必要がある。
第1発明に係る物質同定方法において同定確率推定モデル構築ステップでは、MSn-1測定、MSn測定、及びその測定結果を利用した同定結果(同定の成否)が全て得られているデータを用いて、同定確率推定モデル情報を求める。同定確率推定モデルは、複数(通常はかなり多数)のMSn-1ピークのSN比と、その複数のMSn-1ピークをSN比の高い順又は低い順に従ってプリカーサイオンとして選択してMSn測定及び同定を実行していったときに充分な確度で何らかの物質が同定できた、つまりは同定に成功したピークの累積数と、の関係を示す。したがって、この同定確率推定モデルは、全てのMSn-1ピークの中で、或るSN比を示す1つのMSn-1ピークよりもSN比が高い又は低いMSn-1ピークが同定成功となる割合を示している。なお、或るMS1ピークのSN比は、そのMS1ピークの信号強度と、該ピークが存在するMS1スペクトル(ノイズ除去などの加工がされていないプロファイル)から求めたノイズレベルとから求まるものとすることができる。
具体的には、複数のMSn-1ピークをSN比の高い順又は低い順に1つずつ選択した累積数と、その中で同定に成功したMSn-1ピークの総数との関係は、階段状に増加する形状になる。そこで、上記同定確率推定モデル構築ステップでは例えば、MSnピークの累積数と同定成功数との連続的な関係を求めるべくフィッティングを行って滑らかなフィッティングカーブを求め、このカーブの形状を示す関数式又はその関数式に含まれる係数、定数を同定確率推定モデル情報とすればよい。
なお、適切な同定確率推定モデルは試料の種類、より厳密には試料に含まれる各種物質の種類に依存する。換言すれば、同定対象の物質の種類が同一又は類似していれば、同一の同定確率推定モデル情報を用いることができる。例えば生体試料中のタンパク質を同定するといった目的に対しては、同定済みのタンパク質を各種物質として含む試料について得られたMSn-1ピーク等に基づいて同定確率推定モデル情報を取得しておけばよい。
含有物質が未知である試料から得られた或る1つの分画試料に対してMSn-1測定を行うことで得られたMSn-1スペクトル上で観測される複数のMSn-1ピークについて、例えばMSn測定を実行する前に、ピークSN比算出ステップでは各MSn-1ピークのSN比を算出する。SN比の算出方法は同定確率推定モデル作成時と同方法とする。同定確率推定ステップでは、同定確率推定モデル情報より求まる同定確率推定モデルを参照して、各MSn-1ピークのSN比から同定確率推定値をそれぞれ算出する。これにより、実際に或るMSn-1ピークに対するMSn測定を行うことなく、そのMSn測定を実行した結果に基づく同定成否の推定確率が定量的に求まる。さらにMSn測定順位決定ステップでは、プリカーサイオン候補となる複数のMSn-1ピークについて上述したようにそれぞれ推定された同定確率推定値を用いて、該複数のMSn-1ピークに対するMSn測定の優先順位を決定する。
例えば、1つの分画試料に対してプリカーサイオン候補として抽出されるMSn-1ピークの個数が1つの分画試料に対して実施されるMSn測定実行回数を超えている場合には、上記優先順位に従って順に所定個数のプリカーサイオン候補に対してMSn測定を実行すればよい。この場合、優先順位の低い1乃至複数個のプリカーサイオン候補についてはMSn測定が実行されない。
1つの分画試料に対して実施が許可されるMSn測定実行回数が1つの分画試料に対してプリカーサイオン候補として抽出されるMSn-1ピークの個数を超えている場合には、1つのMSn-1ピークに対するMSn測定を複数回実行し、その各MSn測定で得られたMSnスペクトルデータを積算することが可能である。MSnスペクトルデータ積算によって積算前に比べてMSnスペクトルのSN比が向上し、それによって同定確率の改善が期待できる。その同定確率の改善の程度は元の同定確率が高いほど大きいとは限らない。即ち、MSn-1ピークに対する2回目又は3回目(或いはそれ以上の回数)のMSn測定を実行する場合にそのときの優先順位は、同定確率推定値ではなく同定確率の改善の程度に基づいて決められることが好ましい。
そこで、第1発明に係る物質同定方法では、好ましくは、
前記プリカーサイオン候補となる複数のMSn-1ピークについて前記同定確率推定ステップにおいてそれぞれ推定された同定確率推定値に基づいて、同一のMSn-1ピークに対するMSn測定を複数回行ってその測定結果を積算したときの同定確率の増加度合である同定確率増分推定値を求める同定確率増分推定ステップをさらに有し、
前記MSn測定順位決定ステップでは、前記同定確率推定ステップによる各MSn-1ピークの同定確率推定値と、前記同定確率増分推定ステップによる同定確率増分推定値とに基づいて、同一MSn-1ピークに対する複数回のMSn測定を許容する条件の下で複数のMSn-1ピークに対するMSn測定の優先順位を決定するとよい。
また、第2発明に係る質量分析システムでも同様である。
さらにまた、上記物質同定方法では、1つの分画試料に対するMSn測定実行回数の上限の下で、前記MSn測定順位決定ステップで決定された優先順位と各MSn-1ピークのSN比とに基づいて、複数のMSn-1ピークに対するMSn測定を実行するための測定シーケンスを決定するMSn測定シーケンス決定ステップを有するものとするとよい。
ここでいう測定シーケンスとは、同一のMSn-1ピークに対する複数回のMSn測定の実行を含めた同一分画試料に対する全てのMSn測定の手順のことである。
この発明によれば、1つの分画試料に対するMSn測定回数に拘わらず、同定される物質数の期待値が常に最大となるように測定シーケンスが定められる。これにより、同じ測定時間又は測定回数の下で最大限の数の物質の同定が可能となる。
また、第1発明に係る物質同定方法では、前記目的試料に対する測定に先立って前記所定の試料に対する測定を実行し、前記同定確率モデル構築ステップではその測定結果に基づいて同定確率推定モデルを作成することが好ましい。同定確率モデル構築用の所定試料に対する測定を目的試料に対する測定の直前に実行することにより、例えばノイズ環境が殆ど同一である等、測定条件がほぼ揃う。それにより、所定試料について求めた同定確率推定モデルの適用精度が向上し、同定確率推定値自体の精度も向上して、より的確な優先順位を求めることが可能となる。
また、第1発明に係る物質同定方法では、分画試料に対するMSn測定の実行に先立って、前記ピークSN比算出ステップ、前記同定確率推定ステップ、前記MSn測定順位決定ステップ、及びMSn測定シーケンス決定ステップによる一連の処理により該分画試料に対するMSn測定の測定シーケンスを決定するとよい。この場合、1つの分画試料に対して決められた測定シーケンスに従って複数のMSn-1ピークのそれぞれをプリカーサイオンとしたMSn測定を実行すればよいので、MSn測定の制御は簡単で済む。
また、第1発明に係る物質同定方法では、分画試料に対するMSn測定の実行に先立って、前記ピークSN比算出ステップ、前記同定確率推定ステップ、前記MSn測定順位決定ステップ、及びMSn測定シーケンス決定ステップによる一連の処理により該分画試料に対するMSn測定の測定シーケンスを決定するとともに、該測定シーケンスに従ってMSn測定を開始しその測定の途中段階で得られた同定結果を利用してその測定シーケンスを変更するようにしてもよい。
例えば、測定シーケンスに従って順次異なる又は同一のMSn-1ピークについてMSn測定を実行する途中で、MSn測定結果に基づく同定ができない状態が続いたならば、その時点でその測定シーケンスに従ったMSn測定を中止し、次の分画試料に対するMSn測定及び同定処理に移行してもよい。これにより、同定確率推定モデルと実際の同定結果との乖離がある程度存在する場合に、無駄なMSn測定の実行をできるだけ少なくし、同定効率が下がることを回避することができる。
第1発明に係る物質同定方法及び第2発明に係る質量分析システムによれば、MSn-1測定結果から複数のMSn-1ピークがプリカーサイオン候補として抽出された場合に、そのMSn測定や同定処理を行う前に、同定される物質数の期待値が最大になるようにプリカーサイオンを選択したり、異なる又は同一のMSn-1ピークに対するMSn測定の順序を定めたりすることができる。それにより、例えば、従来と同程度の数の物質の同定を成功させるのに要する測定時間を短縮する又は測定回数を減らすことができる。また、従来と同じ測定時間や測定回数であれば、それだけ多くの物質を同定することができるようになる。
本発明に係る物質同定方法を実施する質量分析システムの概略ブロック構成図。 本発明に係る物質同定方法における同定確率推定モデル構築の際の処理フローチャート。 本発明に係る物質同定方法において同定確率推定モデルに基づくMS2測定シーケンス最適化処理のフローチャート。 ノイズレベル評価処理を説明するためのMS1プロファイル(マススペクトル)の一例を示す図。 2つのMS1プロファイルに対するノイズレベル算出結果例を示す図。 質量電荷比m/zとSN比とに対するMS1ピークの分布状況の一例を示す図。 MS1ピークをSN比で順位付けしたときの、同定に成功したMS1ピークの経験累積分布関数の概念を示す模式図。 同定に成功したMS1ピークの経験累積分布関数、該分布関数に対するフィッティング関数、及び該フィッティング関数に基づく同定確率推定値の変化を示す図。 通常のデータ積算回数(1回)における同定確率の推定値とMS1ピークのSN比との関係、並びに2及び3倍のデータ積算時の同定確率増分推定値とMS1ピークのSN比との関係を示す図。 SN比が相違する5個のMSn-1ピークに対する同定確率推定値並びに2及び3倍のデータ積算による同定確率増分推定値を示す図。
以下、本発明に係る物質同定方法の一実施例、及び該方法による物質同定を実施するための質量分析システムの一実施例について、添付の図面を参照して詳細に説明する。
本発明に係る物質同定方法は、目的試料からLC等により分離・分画されることで得られた多数の分画試料に対し、それぞれMSn-1測定を実行して得られるMSn-1スペクトル上に現れる1又は複数のMSn-1ピークをプリカーサイオンに選出して該プリカーサイオンに対するMSn測定を行い、それにより得られるMSnスペクトルを利用して目的試料に含まれる各種物質を同定する質量分析システム(又は化合物同定システム)において、実際にMSn測定を実行する前に、MSn-1スペクトル上のMS1ピークについて物質の同定が成功する確率を定量的に推定し、それに基づいてMSnピークの選択の順序等を含むMSn測定シーケンスを最適化又はそれに近い状態とするための処理に特徴を有する。
まず、本発明におけるMSn測定シーケンス最適化方法を1つの具体例を挙げて説明する。
この例による方法では、予備的に、つまり同定対象である目的試料の測定及び同定処理に先立って、多くの物質を含む同定確率推定モデル構築用試料(以下、単に「モデル構築用試料」という)に対する測定及び同定処理の結果を利用して、同定確率推定モデルを作成しておく。この同定確率推定モデルは、MS2測定及び同定実行前のMS1ピークをプリカーサイオンとしてMS2測定及び同定処理を実行したと仮定したときに同定が成功する確率を推測するための参照データである。モデル構築用試料は目的試料と同種、例えば目的試料がペプチド混合物である場合にはモデル構築用試料もペプチド混合物であることが好ましい。
図2は同定確率推定モデル構築処理の手順を示すフローチャートである。図2により同定確率推定モデルを作成する手順を詳細に説明する。
[ステップS11]同定確率推定モデル構築用データの収集
まず、モデル構築用試料をLCで分離して、所定の分画時間毎に分取された多数の分画試料を調製する。そして、各分画試料に対しMS1測定が実施され、MS1スペクトルデータが収集される。さらに、このMS1スペクトルデータに基づいて抽出される各MS1ピークに対して、1回のCID操作を加えたMS2測定が実施されてMS2スペクトルデータが収集され、そのMS2スペクトルデータを用いた同定処理が試みられる。
上述したように保持時間に応じて分画された各分画試料に含まれる物質を同定する場合には、各分画試料のMS1スペクトルを保持時間の順に並べて3次元的なMS1スペクトルを求める。そして、該3次元MS1スペクトルに対して質量電荷比m/z−保持時間の2次元平面上でピーク検出を行ってMS1ピークを抽出し、該MS1ピークの質量電荷比をプリカーサイオンとしてMS2測定を行いMS2スペクトルを取得する。そして、そのMS2スペクトルに基づいて所定の同定アルゴリズム(例えばデノボシーケンスサーチやMS/MSイオンサーチなど)により物質の同定を試みる。この同定はMS1ピーク毎に行われるから、3次元MS1スペクトルから抽出されるMS1ピーク毎に同定の成功又は失敗(同定できず)が決まる。
[ステップS12]MS1スペクトルのノイズレベルの評価
後述する同定確率はMS1スペクトルのノイズレベルの影響を受ける。そこで、モデル構築用試料に対するMS1スペクトルのノイズレベルを評価する。本例では、次のステップS121〜S123の手順により、 MS1測定により得られた生データ(加工されていないデータ)であるMS1ロー(raw)プロファイル(以下、単に「ロープロファイル」という)からノイズレベルを分画試料毎に、つまりMS1スペクトル毎に評価する。以下の説明では、離散化されたロープロファイルの信号強度をRmとおく。ただし、m=0、1、…は、評価対象である試料のロープロファイルの、サンプリング点における質量電荷比の順序を示す番号である。ロープロファイルに含まれるサンプリング点全体の集合はMで表すものとする。
[ステップS121]ピーク部分及びピーク近傍の情報の除外
ロープロファイルの最大ピーク強度をP(max)とおく。つまり、次の(1)式のようにおく。
(max)= max Rm …(1)
(ただしm∈M)
ここで、ピーク近傍の判定用閾値μ(0<μ<1)を適宜に選び、信号強度が最大ピーク強度P(max)のμ倍以上であるサンプリング点をピーク部分であるとみなす。そして、ピーク部分に含まれるサンプリング点、つまり信号強度がμ・P(max)以上であるサンプリング点からの距離がw以内であるサンプリング点、を除いたサンプリング点の集合M’(w,μ)を求める。図4(a)はm/z 1060-m/z 1080の範囲についてMS1スペクトルのロープロファイルに対しサンプリング点集合M’(w,μ)を求めた例であり、図4(b)は(a)のm/z 1070-m/z 1075の範囲の拡大図である。
[ステップS122]局所的な信号変動量の算定
次に、上記ピーク部分とピーク近傍とを除外したサンプリング点集合M’(w,μ)において、通過帯域が半値幅wであるフィルタによりロープロファイルを平滑化した、平滑化プロファイル*m(w,μ)を求める。つまり、*m(w,μ)は次の(2)式で求まる。
*m(w,μ)={1/(2w+1)}ΣRm' …(2)
(ただしm∈M’(w,μ))
ここで、Σはm’=−wからwまでの総和である。この平滑化プロファイル*m(w,μ)と元のロープロファイルとの差を局所的な信号変動量と定義し、ΔRm(w,μ)で表す。つまり、ΔRm(w,μ)は次の(3)式で求まる。
ΔRm(w,μ)=Rm*m(w,μ) …(3)
[ステップS13]局所的な信号変動量に基づくノイズレベルの算定
ここでは、上記局所的な信号変動量ΔRm(w,μ)の2乗平均のc倍をノイズレベルN(Rm;w,μ)と定義する。cはノイズレベルを定義するための適当な定数である。つまり、N(Rm;w,μ)の定義式は次の(4)式である。
N(Rm;w,μ) =c・√{ΣΔRm(w,μ)2} …(4)
なお、ノイズレベルの定義は上記説明のものに限定されるわけではなく、MS1スペクトルのノイズレベルを適切に定義できる方法でありさえすればよい。
実際の2つのMS1ロープロファイルに基づいて、上記方法によりノイズレベルN(Rm;w,μ)を算定した結果の例を図5に示す。
[ステップS13]同定成功MS1ピークの抽出
図6は、モデル構築用試料由来の全てのMS1ピークの質量電荷比m/zとSN比とをプロットした結果の例である。ここで、SN比はピーク強度とステップS12で求めたノイズレベルとの比である。図6に□印で示したプロット点はMS1ピークを示している。また、●印で示したプロット点は、そのMS1ピークをプリカーサイオンとしたMS2測定によって物質同定が可能であった、即ち、同定に成功したMS1ピークを示している。図6を見ると、この例では、SN比が大きいほど同定に成功するMS1ピークの割合が大きくなる傾向にあることが分かる。これは本例に限らず、一般的な傾向である。
[ステップS14]MS1ピークのSN比と同定成功MS1ピーク累積数との関係付け
SN比の大きい順にMS1ピークを抽出して「1」から順位付けし(つまりMS1ピークをSN比が大きい順にソートして順位を付け)、その順位毎にそれまでに同定に成功したMS1ピークの数(累積数)を求めると、図7に示すように、累積数が右上がりの階段状に変化するグラフが描ける。図7中の実線で示す階段状の折れ線は、例えば、順位1のSN比を示すMS1ピークは同定に成功し、順位1よりも低いSN比である順位3のSN比を示すMS1ピークは同定に失敗したことを意味している。この折れ線は、或るSN比以上を示すMS1ピークのうち幾つのMS1ピークが同定に成功したのかを示す経験累積分布関数である。
ただし、図6から分かるように、この例では、同一の質量電荷比に対する複数のMS1ピーク(SN比は同一とは限らない)に対してそれぞれ個別に同定が行われている。そのため、質量電荷比の重なりが多いと、同定の成否に対する質量電荷比の重なりの影響が相対的に強くなり過ぎるおそれがある。そこで、これを避けるために、同一の質量電荷比であるMS1ピークN個(Nは2以上の整数)に対してそれぞれ同定がなされた場合には、個々の同定は1/N回であるとみなして経験累積分布関数を求めるほうが好ましい。図7に示した例では、順位1、2、4、5、及び8において同定に成功した場合を表しているが、図7中の実線は質量電荷比の重複を考慮しない経験累積分布関数である。ここで、順位2及び8に含まれる同定に成功した複数のMS1ピークが同一質量電荷比を有していた場合には、重複を考慮してその順位2、8のMS1ピークをそれぞれ1/2とカウントして、経験累積分布関数を図7中に一点鎖線で示すように修正する。
図6に示したMS1ピークの同定成否分布の例について、上述したように質量電荷比の重複を考慮した経験累積分布関数を求めると、図8中に示すような階段状のプロファイルが得られる。順位が大きくなるほど、つまりはMS1ピークのSN比が下がるほど、同定に成功するMS1ピークの数は減るため、同定成功累積数は頭打ちになることが分かる。
[ステップS15]同定確率推定モデルとパラメータの算出
ステップS14で得られた階段状のプロファイルに対し解析的な関数を用いてフィッティングを行うことにより、SN比に従ったMS1ピークの累積数と同定成功累積数との滑らかなカーブ状の関係を求める。ここでは、フィッティング関数の形状として、次の(5)式の双曲線関数を用いた。
(ident)tanh(/N(all)σ) …(5)
ただし、は或る順位よりも上位順位であるMS1ピークの総数であり、N(all)及びN(ident)はそれぞれMS1ピークの総数及び同定に成功したMS1ピークの総数である。また、σはフィッティング関数の立ち上がりの速さを定めるパラメータであり、先に求めた階段状のプロファイルにフィットするように算出する。図8中に階段状のプロファイルにフィットさせたフィッティング関数を一点鎖線で示している。このフィッティング関数のカーブが同定確率推定モデルであり、σはこのモデルを規定するパラメータである。
なお、(5)式のフィッティング関数の傾きが1であるということは100%、その傾きが0.5であるということは50%の確率で以て同定に成功することを示している。したがって、フィッティング関数の微分である次の(6)式により、或るMS1ピークに対し、その順位値から同定に成功する確率を推定することができる。
(N(ident)/N(all)σ)sech2(n/N(all)σ) …(6)
図8には上記微分関数で示される推定同定確率も重ねて示してある。
以上のような手順で、同定確率推定モデルを定めるパラメータσを算出することができるから、同定確率を推定するためにはこのパラメータσを記憶しておけばよい(ステップS16)。
次に、上記のような同定確率推定モデルのパラメータが予め用意されている状況の下で、目的試料をLCで分離し分取することで得られた分画試料をMS1測定して求まるMS1スペクトルに基づいて、プリカーサイオンとして適切なMS1ピークを選択するとともに最適なMS2測定のための測定シーケンスを決定する際の処理手順を、図3に示すフローチャートに従って説明する。
[ステップS21]目的試料由来のMS1測定データの収集
まず、目的試料から調製された多数の分画試料に対してそれぞれMS1測定が実行され、MS1スペクトルデータが収集される。そして、各分画試料のMS1スペクトルを保持時間の順に並べて3次元的なMS1スペクトルを求め、該3次元MS1スペクトルに対して質量電荷比m/z−保持時間の2次元平面上でピーク検出を行ってMS1ピークを抽出する。これは試料の相違はあるものの、基本的にはステップS11と同じ処理である。
[ステップS22]MS1スペクトルのノイズレベルの評価
次に、ステップS12(S121〜S123)と同様の処理を行うことで、各分画試料に対するMS1スペクトルのノイズレベルをそれぞれ評価する。
[ステップS23]MS1ピークのSN比の算出
ステップS21で抽出されたMS1ピーク毎に、そのピーク強度と該ピークが存在する分画試料に対してステップS22で算出されたノイズレベルとからSN比を算出する。
[ステップS24]同定確率推定モデルに基づくSN比からの同定確率の推定
上述したようにパラメータσに基づいて同定確率推定モデル、つまりは図8に示したフィッティング関数が求まる。そして、このフィッティング関数の横軸を各順位に対応するSN比に変換すれば、与えられたSN比に対応する同定確率推定値p1(r(1))が求まるカーブが得られる。ここで r(1)はMS1ピークのSN比である。各順位をSN比に変換するためには、例えば、MS1ピークをSN比に応じてソートする際に得られる順位とSN比との関係を示す情報をテーブル等の形式で保持しておき、このテーブルを用いればよい。図9には、図8に示したフィッティング関数から求めた同定確率推定値p1(r(1))のカーブを示す。このカーブを用いて、MS1ピーク毎にそのSN比から同定確率推定値を算出する。なお、この同定確率推定値p1(r(1))のカーブが滑らかでないのは、同定確率推定モデル作成に使用したMS1ピークのSN比が規則的なものでないからである。
[ステップS25]データ積算回数を増加させたときの同定確率増分の推定
ステップS24で得られる同定確率推定値p1(r(1))は、通常の、つまりは同定確率推定モデル作成に用いたMS2スペクトルデータと同条件のデータ積算回数で求めたMS2スペクトルデータを用いた場合の同定確率である。即ち、同定確率推定モデル作成時にはMS2スペクトルデータの積算を行っていないから、1回のMS2測定により得られたデータである。それに対し、同じプリカーサイオンに対してMS2測定をu回実行して、それら測定で得られたデータを積算すると、つまりデータ積算回数をu倍にすると、MS2スペクトルのSN比は√u倍になり、同定確率が向上することが期待される。このときの同定確率はMS1ピークのSN比が√u倍になった場合の同定確率にほぼ等しいと考えられる。すると、同じMS1ピークに対してMS2スペクトルデータ積算回数を2倍(u=2)及び3倍(u=3)にした際の同定確率は、それぞれp1(√2r(1))、p1(√3r(1)) と表される。したがって、2回目、3回目のMS2スペクトルデータ積算による同定確率の増分推定値はそれぞれ、(7)、(8)式に示すようになる。
2(r(1))=p1(√2r(1))−p1(r(1)) …(7)
3(r(1))=p1(√3r(1))−p1(√2r(1)) …(8)
この同定確率増分推定値p2(r(1))及びp3(r(1))を示すカーブを図9に示す。
[ステップS26]各MS1ピークに対するMS2測定の優先順位の決定
ステップS24において得られた通常のMS2スペクトルデータ積算(この例では積算なし)における各MS1ピークに対する同定確率推定値と、ステップS25で得られた2回目及び3回目のMS2スペクトルデータ積算における各MS1ピークに対する同定確率増分推定値とを用いて、MS2測定を実行する上でプリカーサイオンとして選択するMS1ピークの優先順位を決定する。
いま一例として、或る1つの分画試料に対するMS1スペクトル上で、PA、PB、PC、PD、PEの5個のMS1ピークがプリカーサイオン候補として抽出され、それらMS1ピークのSN比が図10中に示す位置にある場合を考える。なお、図10(a)は図9と同じグラフであり、図10(b)は図10(a)に示した各曲線をスムージングして得られたグラフである。ここでは、図10(b)を用いてMSn測定の優先順位を決定するが、図10(a)を用いてもよい。
図10(b)において、各MS1ピークPA、PB、PC、PD、PEに対応して引かれた縦の破線とp1(r(1))、p2(r(1))、p3(r(1))の各曲線との交点が、それらMS1ピークにおける同定確率推定値及び同定確率増分推定値である。そこで、同定に成功する確率が高い順に、つまりは図中に白抜き下向き矢印で示す順で、各MS1ピークの同定確率推定値又は同定確率増分推定値を抽出してゆき、それを、各MS1ピークをプリカーサイオンとしたMS2測定の優先順位とする。ただし、或る1つのMS1ピークについて同定確率増分推定値は2回目以降のMS2測定にしか適用されないから、同定確率増分推定値が同定確率推定値を上回ってもその同定確率推定値が抽出された後に初めて同定確率増分推定値が抽出されることになる。
図10(b)の例では、同定に成功する確率が高い順に、まず、p1(r(1))の曲線上で4個のMS1ピーク、PA→PB→PC→PDが順に抽出される。なお、図10(b)においてp1(r(1))の曲線上で抽出された点(上記交点)は○印で示している。さらに同定確率が下がる方向に進むと、p1(r(1))の曲線上のPEに対応した同定確率推定値よりもp2(r(1))の曲線上のPDに対応した同定確率増分推定値のほうが値が大きい。これは、MS1ピークPEをプリカーサイオンとした1回目のMS2測定を実行するよりも、MS1ピークPDをプリカーサイオンとした2回目のMS2測定を実行してMS2スペクトルデータ積算を行ったほうが同定確率が高まることを意味している。そこで、p2(r(1))の曲線上で1つのMS1ピークPDを抽出し、引き続いて、同じ理由でp2(r(1))の曲線上で2つのMS1ピーク、PC→PBを順に抽出する。なお、図10(b)においてp2(r(1))の曲線上で抽出された点(上記交点)は□印で示している。
さらに同定確率が下がる方向に進むと、p1(r(1))の曲線上のPEに対応した同定確率推定値よりもp3(r(1))の曲線上のPDに対応した同定確率増分推定値のほうが値が大きい。これは、MS1ピークPEをプリカーサイオンとした1回目のMS2測定を実行するよりも、MS1ピークPDをプリカーサイオンとした3回目のMS2測定を実行してMS2スペクトルデータ積算を行ったほうが同定確率が高まることを意味している。そこで、p3(r(1))の曲線上で1つのMS1ピークPDを抽出し、引き続いて、同じ理由でp3(r(1))の曲線上で2つのMS1ピーク、PC→PBを順に抽出する。なお、図10(b)においてp3(r(1))の曲線上で抽出された点(交点)は△印で示している。
さらに同定確率が下がる方向に進むと、p1(r(1))の曲線上のMS1ピークPEに対応した同定確率推定値が最も高いから、ここで初めてp1(r(1))の曲線上のMS1ピークPEを抽出する。引き続いて、p2(r(1))の曲線上のMS1ピーク E に対応した同定確率推定値よりも高い同定確率を示す、 1 (r(1))の曲線上のMS1ピーク E を抽出し、同様の理由で次に、p3(r(1))の曲線上のMS1ピーク E を抽出する。
即ち、図10(b)の同定確率推定値及び同定確率増分推定値に従ったMS2測定の優先順位は次のようになる。
(i)PA→PB→PC→PDの順に1回目のMS2測定を実行。
(ii)PD→PC→PBの順に2回目のMS2測定を実行し、得られたMS2スペクトルデータを積算。
(iii)PD→PC→PBの順に3回目のMS2測定を実行し、得られたMS2スペクトルデータを積算。
(iv)PEに対するMS2測定を実行。
(v)PEに対する2回目のMS2測定を実行し、得られたMS2スペクトルデータを積算。
(vi)PEに対する3回目のMS2測定を実行し、得られたMS2スペクトルデータを積算。
以上のように、プリカーサイオン候補である複数のMS1ピークのSN比と、同定確率推定モデルに基づく、SN比と同定確率推定値及び同定確率増分推定値との関係を示す曲線とを用いて、各MS1ピークを対象とするMS2測定の優先順位を決定することができる。
[ステップS27]MS2測定シーケンスの最適化
ステップS26ではMS2測定の優先順位が決定されるが、常に、その優先順位に従って全てのMS2測定を実行可能であるというわけではない。何故なら、一般に、1つの分画試料から得られたMS1スペクトル上でプリカーサイオンとして抽出されるMS1ピークの数は不定であるのに対し、測定時間や同定のためのデータ処理時間或いは測定回数などに制約があるのが一般的であるからである。そこで、1つの分画試料に対するMS2測定回数の条件を与えることにより、複数のプリカーサイオンに対するMS2測定の順序を規定するMS2測定シーケンスの最適化を行う。ここでいう、最適なMS2測定シーケンスとは、与えられたMS2測定回数の制約の下で、同定される物質(この例ではペプチド)の総数の期待値が最大になるような測定シーケンスである。上述した、PA、PB、PC、PD、PEの5個のMS1ピークがプリカーサイオン候補として存在する場合について例示する。
いま1つの分画試料に対して延べ9回のMS2測定が可能であるとする。即ち、MS2測定回数の制約が9である。ステップS26で定められた優先順位に従えば、(i)〜(iii)のMS2測定の実行が可能である。そこで、MS1ピークPAに対しては1回のみのMS2測定を行ってMS2スペクトルデータ積算なしとし、MS1ピークPBに対しては2回のMS2測定を行って得られたMS2スペクトルデータを積算(2倍積算)し、MS1ピークPC、PDに対しては各3回のMS2測定を行って得られたMS2スペクトルデータをそれぞれ積算(3倍積算)するのが、最適なMS2測定シーケンスである。ただし、例えばMALDI等のイオン源では、同一の分画試料に対して繰り返しMS2測定を行うとサンプルが劣化して信号強度が下がる傾向にあるため、SN比が相対的に小さいMS1ピークに対して優先的にMS2測定を実行することが好ましい。このようなサンプル劣化を考慮した9回のMS2測定の順序、つまり測定シーケンスは、MS1ピークPDに対して3回のMS2測定→MS1ピークPCに対して3回のMS2測定→MS1ピークPBに対して2回のMS2測定→MS1ピークPAに対して1回のみのMS2測定、となる。
他の例として、1つの分画試料に対して延べ12回のMS2測定が可能である場合を考える。即ち、MS2測定回数の制約が12である。上記優先順位に従えば、(i)〜(v)までのMS2測定が可能である。そこで、MS1ピークPAに対しては1回のみのMS2測定を行ってMS2スペクトルデータ積算なしとし、MS1ピークPEに対しては2回のMS2測定を行って得られたMS2スペクトルデータを積算(2倍積算)し、MS1ピークPB、PC、PDに対しては各3回のMS2測定を行って得られたMS2スペクトルデータをそれぞれ積算(3倍積算)するのが、最適なMS2測定シーケンスである。また、サンプル劣化を考慮した12回のMS2測定の順序、つまり測定シーケンスは、MS1ピークPEに対して2回のMS2測定→MS1ピークPDに対して3回のMS2測定→MS1ピークPCに対して3回のMS2測定→MS1ピークPBに対して3回のMS2測定→MS1ピークPAに対して1回のみのMS2測定、となる。
即ち、MS2測定シーケンス最適化のための定性的な基準は次のとおりである。
(1)SN比が大きいMS1ピークに対しては1回のみのMS2測定を行い、図10中のp2(r(1))の曲線のピーク付近にSN比が位置するMS1ピークは2回のMS2測定による2倍積算を行い、p3(r(1))の曲線のピーク付近にSN比が位置するMS1ピークは3回のMS2測定による3倍積算を行うとよい。
(2)MS2測定実施可能延べ回数が少ないときには、MS2スペクトルデータ積算の不要な(つまり、SN比の大きな)MS1ピークをMS2測定対象として選択する。MS2測定実施可能延べ回数が増えるに従い、最適なMS2測定回数が2回又は3回である(つまりSN比が相対的に小さい)MS1ピークについても選択する。
なお、上述した最適なMS2測定シーケンスは、その分画試料に対するMS2測定開始前に、つまりは実際にMS2測定を全く行うことなく求められるものであり、あくまでも既知の同定確率推定モデルを参照して求められたものである。したがって、推定の確度は高いとはいえ、或る分画試料に対して求まった最適なMS2測定シーケンスが絶対的に正しいとは限らない。そこで、或る分画試料に対するMS2測定が途中まで進んだ段階で、それまでの該分画試料に対する同定結果を踏まえて、以降のMS2測定の順序を改めて最適化するようにしてもよい。
以上のように、本発明に係る物質同定方法によれば、同定確率推定モデルのパラメータを目的試料の測定に先立って求めておくことにより、該同定確率推定モデルを利用した簡易な演算及び処理によって、同定される物質数が最大又はそれに近い状態となるように、複数のMS1ピークをプリカーサイオンとしたMS2測定の適切な順序及び測定回数を、実際のMS2測定実行前に定めることができる。したがって、定められたMS2測定シーケンスに従ってプリカーサイオンを選択しながらMS2測定を実行し、その測定結果を利用して物質同定を実施することにより、きわめて効率的に物質同定を行うことができる。
次に、上記物質同定方法を実施するための質量分析システムの一実施例を図1により説明する。図1は本実施例による質量分析システムの概略構成図である。
図1において、分析部1は、液体試料中の各種物質を保持時間に応じて分離するLC部11と、LC部11で分離された物質を含む試料を分取・分画してそれぞれ異なる分画試料を調製する分取分画部12と、複数の分画試料のうちの1つを選択して該分画試料に対する質量分析を実行するMS部13と、を含む。図示しないが、MS部13は、MALDIイオン源、イオントラップ、及び飛行時間型質量分析計(TOFMS)を含むMALDI−IT−TOFMSであり、MS1測定だけでなく、イオントラップにおいてプリカーサイオン選択と衝突誘起解離(CID)操作とを1乃至複数回繰り返した後にTOFMSで質量分析を行うMSn測定が可能となっている。ただし、MS1測定及びMS2測定のみを実行すればよい場合(nが3以上のMSn測定が不要である場合)には、イオントラップとTOFMSとの組み合わせに代えて、三連四重極型質量分析計のような、より簡単な構成の質量分析装置を利用することができる。
制御部2は上記分析部1中の各部の動作をそれぞれ制御する。分析部1のMS部13で得られたデータはデータ処理部3に入力され、データ処理部3で処理されて例えばその結果が表示部4に出力される。データ処理部3は機能ブロックとして、MS1スペクトルデータやMSnスペクトルデータなどの測定データを収集するスペクトルデータ収集部31、上記ステップS12〜S16に対応した処理を実行する同定確率推定モデル構築部32、同定確率推定モデル構築部32により得られたパラメータを記憶しておく同定確率推定パラメータ記憶部33、上記ステップS22〜S24に対応した処理を実行する同定確率推定値算出部34、上記ステップS25に対応した処理を実行する同定確率増分算出部35、上記ステップS26に対応した処理を実行するMSn測定優先順位決定部36、上記ステップS27に対応した処理を実行するMSn測定シーケンス最適化部37、及び所定のアルゴリズムに従って同定処理を実行する同定処理部38、を含む。なお、データ処理部3や制御部2は、パーソナルコンピュータをハードウエア資源とし、該パーソナルコンピュータにインストールされた専用の制御・処理ソフトウエアを実行することにより、上記のような各機能ブロックが具現化される構成とすることができる。
目的試料に対する網羅的同定を実行するに先立って、制御部2の制御の下に分析部1は同定確率推定モデル構築用試料から得られる各分画試料に対するMS1測定、MS2測定を実行する。同定処理部38は、収集されたMS1、MS2スペクトルデータに基づいて同定処理を実行し、同定確率推定モデル構築部32はそれらスペクトルデータ及び同定結果に基づいて同定確率推定モデルを作成する。そして、この同定確率推定モデルを再現するパラメータが同定確率推定パラメータ記憶部33に格納される。
目的試料に対する網羅的同定時には、制御部2の制御の下に分析部1は、まず、目的試料から得られる各分画試料に対するMS1測定を実行し、スペクトルデータ収集部31はMS1スペクトルデータを収集する。同定確率推定値算出部34は、各分画試料に対するMS1スペクトルデータ毎に、同定確率推定パラメータ記憶部33から読み出したパラメータに基づき再現した同定確率推定モデルを利用して、プリカーサイオン候補である複数のMS1ピークの同定確率推定値を算出する。また、同定確率増分算出部35は、同じ同定確率推定モデルを利用して、MS1ピークに対する2回目、3回目のMS2測定を実行してデータ積算を行ったと仮定した場合の同定確率増分推定値を算出する。そして、MSn測定優先順位決定部36は、分画試料毎に、複数のMS1ピークに対する同定確率推定値及び同定確率増分推定値からMS2測定の優先順位を決定する。MSn測定シーケンス最適化部37は与えられたMSn測定回数条件やサンプル劣化の考慮有無などの付加的な条件に従って、同定される物質数が最大となるような最適なMS2測定シーケンスを分画試料毎に求める。
上述したように分画試料毎に求まった最適なMS2測定シーケンスは制御部2に送出され、制御部2はこのMS2測定シーケンスに従って分析部1を制御することにより、目的試料から得られる各分画試料に対するMS2測定を実行する。同定処理部38は、先に収集された目的試料由来の各分画試料に対するMS1スペクトルデータと、新たに収集された目的試料由来の各分画試料に対するMS2スペクトルデータとに基づいて同定処理を実行し、目的試料中の物質の同定を実行する。その同定結果は表示部4の画面上に表示される。以上のようにして、本実施例の質量分析システムでは、限られた測定時間又は測定回数で、より多数の物質の同定に至ることができる。
以上説明した実施例の動作は、最適なMS2測定シーケンスが求まったあとに該シーケンスに従って自動的にMS2測定が実行されるようにしたものであるが、最適なMSn測定シーケンスを表示部4の画面上に一旦表示し、ユーザ(分析担当者)によるMS2測定実行指示を受けて初めて目的試料に対するMS2測定及び同定処理を実行するようにしてもよい。こうした構成とすれば、ユーザが自らの判断や経験に従ってMS2測定シーケンスを適宜に手直ししてMS2測定を実行させるようにすることができる。
なお、上記実施例では説明を簡単にするためにMS1ピークの同定確率を推定しその結果からMS2測定シーケンスを求める場合について説明したが、これを拡張してMSn-1ピークをプリカーサイオンとしたMSn測定を実行する前に、そのMSn-1ピーク毎の同定確率を推定し、その結果からMSn測定シーケンスを求めることが可能であることは明らかである。
また、上記実施例は本発明の一実施例であり、本発明の趣旨の範囲で適宜変形、修正、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは当然である。
1…分析部
11…LC部
12…分取分画部
13…MS部
2…制御部
3…データ処理部
31…スペクトルデータ収集部
32…同定確率推定モデル構築部
33…同定確率推定パラメータ記憶部
34…同定確率推定値算出部
35…同定確率増分算出部
36…MSn測定優先順位決定部
37…MSn測定シーケンス最適化部
38…同定処理部
4…表示部

Claims (12)

  1. 各種物質が含まれる試料を分離用パラメータに従って分離し分画することで得られた複数の分画試料に対しMSn測定(nは2以上の整数)をそれぞれ実行することで得られたMSnスペクトルに基づいて、各分画試料に含まれる物質を同定する物質同定方法であって、
    a)所定の試料から得られた複数の分画試料に対するMSn-1測定により求まるMSn-1ピークのSN比、及び該各MSn-1ピークをプリカーサイオンとして実行されたMSn測定の結果に基づく物質同定の結果を利用して、同種試料に由来するMSn-1ピークのSN比と複数のMSn-1ピークをSN比順に従ってプリカーサイオンとして選択してMSn測定及び同定を実行していったときに充分な確度で何らかの物質が同定できたピークの累積数との関係を示す同定確率推定モデルを求め、該同定確率推定モデルを表現する同定確率推定モデル情報を記憶する同定確率推定モデル構築ステップと、
    b)同定対象である目的試料から得られた少なくとも1つの分画試料に対するMSn-1測定が終了した状況で、そのMSn-1測定により求まったMSn-1ピークの中で、プリカーサイオンの候補となる複数のMSn-1ピークについてそれぞれSN比を算出するピークSN比算出ステップと、
    c)前記同定確率推定モデル情報より求まる同定確率推定モデルを参照して、前記ピークSN比算出ステップで算出されたMSn-1ピークのSN比から該MSn-1ピークの同定確率推定値を算出する同定確率推定ステップと、
    d)前記プリカーサイオン候補となる複数のMSn-1ピークについてそれぞれ推定された同定確率推定値を用いて、該複数のMSn-1ピークに対するMSn測定の優先順位を決定するMSn測定順位決定ステップと、
    を有することを特徴とする物質同定方法。
  2. 請求項1に記載の物質同定方法であって、
    前記プリカーサイオン候補となる複数のMSn-1ピークについて前記同定確率推定ステップにおいてそれぞれ推定された同定確率推定値に基づいて、同一のMSn-1ピークに対するMSn測定を複数回行ってその測定結果を積算したときの同定確率の増加度合である同定確率増分推定値を求める同定確率増分推定ステップをさらに有し、
    前記MSn測定順位決定ステップでは、前記同定確率推定ステップによる各MSn-1ピークの同定確率推定値と、前記同定確率増分推定ステップによる同定確率増分推定値とに基づいて、同一MSn-1ピークに対する複数回のMSn測定を許容する条件の下で複数のMSn-1ピークに対するMSn測定の優先順位を決定することを特徴とする物質同定方法。
  3. 請求項2に記載の物質同定方法であって、
    1つの分画試料に対するMSn測定実行回数の上限の下で、前記MSn測定順位決定ステップで決定された優先順位と各MSn-1ピークのSN比とに基づいて、複数のMSn-1ピークに対するMSn測定を実行するための測定シーケンスを決定するMSn測定シーケンス決定ステップを有することを特徴とする物質同定方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の物質同定方法であって、
    前記目的試料に対する測定に先立って前記所定の試料に対する測定を実行し、前記同定確率モデル構築ステップではその測定結果に基づいて同定確率推定モデルを作成することを特徴とする物質同定方法。
  5. 請求項2又は3に記載の物質同定方法であって、
    前記分画試料に対するMSn測定の実行に先立って、前記ピークSN比算出ステップ、前記同定確率推定ステップ、前記MSn測定順位決定ステップ、及びMSn測定シーケンス決定ステップによる一連の処理により該分画試料に対するMSn測定の測定シーケンスを決定することを特徴とする物質同定方法。
  6. 請求項5に記載の物質同定方法であって、
    前記分画試料に対するMSn測定の実行に先立って、前記ピークSN比算出ステップ、前記同定確率推定ステップ、前記MSn測定順位決定ステップ、及びMSn測定シーケンス決定ステップによる一連の処理により該分画試料に対するMSn測定の測定シーケンスを決定するとともに、該測定シーケンスに従ってMSn測定を開始しその測定の途中段階で得られた同定結果を利用してその測定シーケンスを変更することを特徴とする物質同定方法。
  7. 各種物質が含まれる試料を分離用パラメータに従って分離し分画することで得られた複数の分画試料に対しMSn測定(nは2以上の整数)をそれぞれ実行することで得られたMSnスペクトルに基づいて、各分画試料に含まれる物質を同定するために用いられる質量分析システムであって、
    a)所定の試料から得られた複数の分画試料に対するMSn-1測定により求まるMSn-1ピークのSN比、及び該各MSn-1ピークをプリカーサイオンとして実行されたMSn測定の結果に基づく物質同定の結果を利用して求められた、同種試料に由来するMSn-1ピークのSN比と複数のMSn-1ピークをSN比順に従ってプリカーサイオンとして選択してMSn測定及び同定を実行していったときに充分な確度で何らかの物質が同定できたピークの累積数との関係を示す同定確率推定モデルを表現する同定確率推定モデル情報を記憶しておく同定確率推定モデル情報記憶手段と、
    b)同定対象である目的試料から得られた少なくとも1つの分画試料に対するMSn-1測定が終了した状況で該分画試料に対するMSn測定を実行するに先立って、そのMSn-1測定により求まったMSn-1ピークの中で、プリカーサイオンの候補となる複数のMSn-1ピークについてそれぞれSN比を算出するピークSN比算出手段と、
    c)前記同定確率推定モデル情報より求まる同定確率推定モデルを参照して、前記ピークSN比算出手段で算出されたMSn-1ピークのSN比から該MSn-1ピークの同定確率推定値を算出する同定確率推定手段と、
    d)前記プリカーサイオン候補となる複数のMSn-1ピークについてそれぞれ推定された同定確率推定値を用いて、該複数のMSn-1ピークに対するMSn測定の優先順位を決定するMSn測定順位決定手段と、
    を備え、前記MSn測定順位決定手段で決定された優先順位に従って前記分画試料に対するMSn測定を実行することを特徴とする質量分析システム。
  8. 請求項7に記載の質量分析システムであって、
    前記プリカーサイオン候補となる複数のMSn-1ピークについて前記同定確率推定手段においてそれぞれ推定された同定確率推定値に基づいて、同一のMSn-1ピークに対するMSn測定を複数回行ってその測定結果を積算したときの同定確率の増加度合である同定確率増分推定値を求める同定確率増分推定手段をさらに有し、
    前記MSn測定順位決定手段は、前記同定確率推定手段による各MSn-1ピークの同定確率推定値と、前記同定確率増分推定手段による同定確率増分推定値とに基づいて、同一MSn-1ピークに対する複数回のMSn測定を許容する条件の下で複数のMSn-1ピークに対するMSn測定の優先順位を決定することを特徴とする質量分析システム。
  9. 請求項8に記載の質量分析システムであって、
    1つの分画試料に対するMSn測定実行回数の上限の下で、前記MSn測定順位決定手段により決定された優先順位と各MSn-1ピークのSN比とに基づいて、複数のMSn-1ピークに対するMSn測定を実行するための測定シーケンスを決定するMSn測定シーケンス決定手段と、
    決定された前記測定シーケンスに従って前記分画試料に対するMSn測定を実行するMSn測定実行制御手段と、
    をさらに備えることを特徴とする質量分析システム。
  10. 請求項7〜9のいずれかに記載の質量分析システムであって、
    前記目的試料に対する測定に先立って前記所定の試料に対する測定を実行し、前記同定確率モデル構築手段はその測定結果に基づいて同定確率推定モデルを作成することを特徴とする質量分析システム。
  11. 請求項8又は9に記載の質量分析システムであって、
    前記分画試料に対するMSn測定の実行に先立って、前記ピークSN比算出手段、前記同定確率推定手段、前記MSn測定順位決定手段、及びMSn測定シーケンス決定手段による一連の処理により該分画試料に対するMSn測定の測定シーケンスを決定することを特徴とする質量分析システム。
  12. 請求項11に記載の質量分析システムであって、
    前記分画試料に対するMSn測定の実行に先立って、前記ピークSN比算出手段、前記同定確率推定手段、前記MSn測定順位決定手段、及びMSn測定シーケンス決定手段による一連の処理により該分画試料に対するMSn測定の測定シーケンスを決定するとともに、該測定シーケンスに従ってMSn測定を開始しその測定の途中段階で得られた同定結果を利用してその測定シーケンスを変更することを特徴とする質量分析システム。
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