JP6146211B2 - 質量分析データ処理方法及び該方法を用いた質量分析装置 - Google Patents

質量分析データ処理方法及び該方法を用いた質量分析装置 Download PDF

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Description

本発明は、質量分析により得られた質量分析データの処理方法、及び、該方法を用いた質量分析装置に関し、さらに詳しくは、液体クロマトグラフやキャピラリ電気泳動などにより分離された成分をそれぞれ含む複数のサンプルに対して得られたマススペクトルデータを処理する方法、及び該方法を用いた質量分析装置に関する。
生命科学の研究や医療、医薬品開発などの分野においては、生体試料を対象として、タンパク質、ペプチド、核酸、糖鎖など様々な物質を網羅的に同定することがますます重要になってきている。特にタンパク質やペプチドを対象とするこうした網羅的な解析手法はショットガン・プロテオミクス(Shotgun Proteomics)と呼ばれている。このような解析のために、液体クロマトグラフやキャピラリ電気泳動などのクロマトグラフィと、MSn分析(nは2以上の整数)が可能である質量分析装置(例えばタンデム四重極型質量分析装置やイオントラップ飛行時間型質量分析装置)とを組み合わせた分析手法が非常に威力を発揮している。なお、以下の説明では、MSn分析が可能な質量分析装置をタンデム型質量分析装置と称す。
タンデム型質量分析装置を用いて、或る試料に含まれる物質群(生体試料の場合には、対象物質はタンパク質、ペプチド、核酸、糖鎖、脂質など)を網羅的に同定するには、一般に以下の手順で測定及びデータ解析が実行される。
[ステップA1]分析対象である試料を液体クロマトグラフやキャピラリ電気泳動などにより分離し、その溶出液を分取・分画して多数のサンプルを調製する(以下、分取・分画により得られた個々のサンプルを「分画試料」と呼ぶ)。なお、試料を分取・分画する際には一般に、予め設定した一定の時間間隔で分画を行うか又は一定量の試料液を繰り返し採取するように分画を行うことにより、試料に含まれる様々な物質ができるだけ漏れなくいずれかの分画試料に含まれるようにする。
[ステップA2]各分画試料に対してイオン解離操作を伴わない通常の質量分析(MS1分析)をそれぞれ行い、所定質量電荷比m/z範囲におけるイオン強度を示すMS1スペクトルを取得する。
[ステップA3]各分画試料に対するMS1スペクトルにおいて、同定対象の物質群に由来すると推測し得るピークを見つけ、これをプリカーサイオン候補として選択する。
[ステップA4]上記ステップA3において選択された複数のプリカーサイオン候補の中から同定対象の物質群に由来する可能性の高い候補を選択し、それをプリカーサイオンに設定して当該分画試料に対するMS2分析を実行する。1回のイオン解離操作によって十分に小さな断片にまで解離しないような場合は、イオンを多段階に解離させるnが3以上のMSn分析を実行する。
[ステップA5]ステップA4におけるMSn分析で得られたMSnスペクトルから収集したピーク情報に対し、データベース検索やデノボシーケンスサーチなどの既存の手法を用いることで、分画試料に含まれる物質を同定する。或いは、その物質の構造を解析する。
以上が一般的な網羅的解析手法である。この中のステップA3において、MS1スペクトルからプリカーサイオン候補を選択する手法として次のような方法が知られている。
即ち、図に示すように、分画の順番(液体クロマトグラフの場合には実質的には保持時間(Retention Time=RT))にMS1スペクトルを並べ、或る分画及び質量電荷比における信号強度値をそれぞれ例えば濃淡や表示色に対応させることにより、実際には3次元データである多数のMS1スペクトルをヒートマップ(heatmap)と呼ばれる2次元画像で表すことができる。このヒートマップにおいて濃く示される点は重要なピークであると考えられるから、このようなピークを見つけて該ピークの位置、つまりはヒートマップ上での位置座標(RT,m/z)をプリカーサイオン候補として選択すればよい。
図8はこのような手法によるプリカーサイオン候補の選択例である。図8において、分画及び質量電荷比における信号強度値は上部に示すグレースケールに従った濃淡で表示されている。また、選択されたプリカーサイオン候補は、この濃淡表示に重ねて表示されている、横幅が一つの分画に相当する質量電荷比幅である矩形状の枠で示されている。
ところで、分画試料には液体クロマトグラフのカラムから定常的に溶出してくる夾雑物(contaminant)が含まれる場合がよくある。典型的には、移動相に夾雑物が混入しているような場合である。また、マトリクス支援レーザ脱離イオン化(MALDI)イオン源を用いた質量分析装置では、試料成分をイオン化させるために分画試料にマトリクスを添加してサンプルを調製するため、取得されたMS1スペクトルには、液体クロマトグラフ由来の夾雑物のみならず、マトリクス物質やマトリクスに混入している夾雑物に由来するピークが現れる場合がある(非特許文献1参照)。なお、夾雑物由来のピークはコンタミナントピーク(contaminant peak)、マトリクス物質由来のピークはマトリクスピーク(matrix peak)と呼ばれるが、以下の説明では、マトリクスピークも含めてコンタミナントピークと称し、各種夾雑物とマトリクスとを包括してコンタミナントと称する。
上述したコンタミナントピークは、連続する複数の分画試料に対するMS1スペクトルにおいて、同一の質量電荷比m/zを持つピークとして現れるという特徴があり、ヒートマップ上では分画方向(図8における縦方向)に延びるピークとして観測される。こうしたコンタミナントピークがヒートマップに含まれると、プリカーサイオン候補選択のためにヒートマップ上で2次元的なピーク検出を行っても、他のピーク、つまり本当に分析したいピークに混じって大量のコンタミナントピークが検出されてしまうことなる。しかしながら、コンタミナントピークは分析対象である試料にもともと含まれていた成分に由来するピークではないため、コンタミナントピークをプリカーサイオンとしたMSn分析を実施しても、試料中の物質の同定には全く役立たない。その結果、無駄な測定を行う時間が増えて測定を終えるまでの時間が長くなったり、或いは時間の制約のために本来であれば同定できた筈である物質の同定ができなくなったりするおそれがある。
こうした問題を回避するため、コンタミナントピークが現れると経験的に判明している質量電荷比値を分析者が予め装置に登録しておき、この質量電荷比値を持つピークをプリカーサイオン候補から除外する、という対策が従来採られている(非特許文献2参照)。こうした対策は、どのようなコンタミナントピークが生じるかを分析者が事前に把握している場合には非常に有効である。ただし、そのためには、例えば予備実験等を行うことで生じる可能性のあるコンタミナントピークを把握する必要がある。もちろん、事前に把握できないコンタミナントピークについては上記対策では除外することができないから、未知のコンタミナントが移動相やマトリクスに混入していたような場合には対応が不可能である。また、ヒートマップ上で試料成分に由来するピークがコンタミナントピークに近接していたり重畳していたりした場合には、試料成分由来のピークも除外されてしまうことになり、結果的に該物質の同定ができなくなるおそれがある。
サション(Emmanuelle Sachon)、ほか、「マルディ・トフ-トフ・キャラクタライゼイション・オブ・ア・ライト・スタビライザ・ポリマ・コンタミナント・フロム・ポリプロピレン・オア・ポリエチレン・プラスチック・テスト・チューブス(MALDI TOF-TOF characterization of a light stabilizer polymer contaminant from polypropylene or polyethylene plastic test tubes)」、ジャーナル・オブ・マス・スペクトロメトリ(Journal of Mass Spectrometry)、2010年、Vol.45、pp.43-50 「AXIMA Launchpad 2.9 User Guide」、Kratos Analytical社、chapter 15、p.178、2009年
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、上述したようなヒートマップにおいてコンタミナントピークのみを的確に除去し、目的とする試料成分由来のピークを精度よく抽出できるようにすることによって、無駄なMSn分析の実行を減らし、測定時間の短縮化や同定性能向上を図ることができる質量分析データ処理方法、及び該方法を用いた質量分析装置を提供することにある。
上記課題を解決するために成された本発明に係る質量分析データ処理方法は、各種物質が含まれる試料を所定の分離用パラメータに従って分離し分画して得られた複数の分画試料をそれぞれ質量分析することで収集されたマススペクトルデータを処理するデータ処理方法であって、
a)分画試料間で各分画試料に対するマススペクトルの信号強度を正規化するように信号強度値を修正する正規化処理ステップと、
b)前記正規化処理ステップにおいて正規化された各分画試料に対するマススペクトルデータに基づいて作成される、分離用パラメータ及び質量電荷比を2軸としその2軸に直交する軸に信号強度をとった3次元グラフにおいて、質量電荷比毎に分離用パラメータ軸方向に信号強度を並べて得られる2次元波形のベースラインを求めてこれを該2次元波形から差し引く減算処理ステップと、
を有することを特徴としている。
また上記課題を解決するために成された本発明に係る質量分析装置は、上記発明に係る質量分析データ処理方法を用いた質量分析装置であって、
a)各種物質が含まれる試料を所定の分離用パラメータに従って分離し、それを分画して得られた複数の分画試料をそれぞれ質量分析してマススペクトルデータを収集する分析実行部と、
b)分画試料間で各分画試料に対するマススペクトルの信号強度を正規化するように信号強度値を修正する正規化処理部と、
c)前記正規化処理部により正規化された各分画試料に対するマススペクトルデータに基づいて作成される、分離用パラメータ及び質量電荷比を2軸としその2軸に直交する軸に信号強度をとった3次元グラフにおいて、質量電荷比毎に分離用パラメータ軸方向に信号強度を並べて得られる2次元波形のベースラインを求めてこれを該2次元波形から差し引く減算処理部と、
を備えたことを特徴としている。
本発明に係る質量分析データ処理方法の処理対象であるマススペクトルデータを得るために、試料に含まれる各種物質を分離する手段は、典型的には液体クロマトグラフやキャピラリ電気泳動などである。分離手段が液体クロマトグラフなどカラムを用いたものである場合には、上記分離用パラメータとは時間(保持時間)である。また、分離手段がキャピラリ電気泳動である場合には、上記分離用パラメータとは移動度である。
また、マススペクトルデータを得るために、MALDIイオン源を搭載した質量分析装置を用いる場合には、上記「分画試料」とはそれぞれ異なるウェルに調製された異なるサンプルである。一方、例えばエレクトロスプレイイオン源などの大気圧イオン源を搭載した質量分析装置を用い、質量分析装置において例えばイオントラップなどにより所定時間範囲に導入された試料由来のイオンを蓄積したうえでまとめて質量分析する、という処理を繰り返す場合には、上記「分画試料」は物理的に区分けされたものではなく、質量分析装置に連続的に導入される試料を例えば所定時間毎に区画したものの1つである。
本発明に係る質量分析データ処理方法を用いた本発明に係る質量分析装置において、 正規化処理部は、各分画試料に対して得られたマススペクトルの信号強度を正規化することで、分画試料間における検出感度をできるだけ揃える。これは、分画試料間で検出感度が異なった場合、たとえ同一濃度で同一種のコンタミナントが複数の分画試料に含まれていたとしても、分画試料によってそのコンタミナントに対応する信号強度にばらつきが生じ、後述する減算処理を実行してもコンタミナントピークを除去することが難しくなるためである。
なお、好ましくは、上記正規化処理部は、主要なピークが出現する範囲を除外した質量電荷比又は質量電荷比範囲におけるマススペクトルの信号強度に基づいて正規化を行うようにするとよい。例えば、マススペクトルの中で信号強度が絶対的に大きいピーク、具体的には信号強度が所定の閾値よりも大きいピーク、或いは、マススペクトルの中で信号強度が相対的に大きいピーク、具体的には最大強度に対して所定比率以上の信号強度を有するピークなどを、主要ピークとすればよい。一般に、目的物質は分画試料中に相対的に多く含まれる筈であるから、上述したようにして選択される主要ピークは目的物質由来のピークである可能性が高い。この主要ピークを含む所定の質量電荷比範囲を正規化処理から外すことで、目的物質由来のピークの信号強度が正規化処理によって小さくなりすぎることを回避することができる。
正規化処理がなされたならば次に、減算処理部は、正規化された各分画試料に対するマススペクトルに基づいて、例えば保持時間及び質量電荷比を2軸としその2軸に直交する軸に信号強度をとった3次元グラフを作成し、質量電荷比毎に例えば保持時間方向に信号強度を並べて得られる2次元波形のベースライン補正処理を実施する。このときの減算処理は、基本的には通常のクロマトグラムのベースライン補正の手法を利用することができる。
上述したように例えば液体クロマトグラフで使用される移動相にコンタミナントが含まれている場合、多数の連続する分画試料に亘って同一の質量電荷比にそのコンタミナント由来のピークが現れる筈である。しかも、上記正規化処理によって分画試料間における検出感度はほぼ揃えられている。そのため、分離用パラメータ、例えば保持時間を横軸とし信号強度を縦軸とした2次元波形においては、コンタミナントピークはその波形全体にほぼ共通に重畳しているベースラインであるとみなせ、ベースラインを差し引く減算処理又は補正処理によって、コンタミナントピークは概ね除去されることになる。
なお、上記減算処理部は、上記2次元波形の中で所定の上限値を超える信号強度を該所定の上限値又はそれよりも小さい所定の値に置換したうえでベースラインを差し引く減算処理を実行することが好ましい。
これにより、主要なピーク及びその近傍でベースラインの極端な変動が抑えられるので、ピーク近傍でのベースライン除去が過大になることを避けることができる。
また上記本発明に係る質量分析データ処理方法では、
上記減算処理ステップによるベースライン減算処理によってコンタミナントピークが除去されたマススペクトルに基づいて、MSn分析(nは2以上の整数)のためのプリカーサイオンを決定するプリカーサイオン選択ステップ、をさらに有するものとするとよい。
また上記本発明に係る質量分析データ処理方法を用いた質量分析装置は、選択された特定の質量電荷比を持つプリカーサイオンを1段階又は多段階解離させ、それによって生成されたプロダクトイオンを質量分析するMSn分析(nは2以上の整数)が可能な質量分析装置であって、
上記減算処理部によるベースライン減算処理によってコンタミナントピークが除去されたマススペクトルに基づいて、MSn分析(nは2以上の整数)のためのプリカーサイオンを決定するプリカーサイオン決定部と、
該プリカーサイオン決定部により決定されたプリカーサイオンを解離対象に設定したうえで、該プリカーサイオンが得られる分画試料に対するMSn分析を実行するように各部を制御するMSn分析制御部と、
をさらに備える構成とすることができる。
即ち、プリカーサイオン決定部により実施されるプリカーサイオン選択ステップでは、例えばコンタミナントピークが除去されたマススペクトルに基づいて作成される、一方の軸を質量電荷比、他方の軸を例えば保持時間とするヒートマップ上で、2次元的なピーク検出を実行してプリカーサイオンの候補を挙げる。そして、プリカーサイオン候補について必要に応じて(例えば数が多すぎる場合に)、自動的に又は分析者による手動操作に基づいて、候補を絞ってプリカーサイオンを決定する。自動的に絞り込む場合には、例えば信号強度の大きさなどに基づいて選択すればよい。こうして決定されたプリカーサイオンにはコンタミナント由来のイオンが混じっている可能性は低いので、このプリカーサイオンを設定したMSn分析を実行することで、目的物質の同定や構造解析に有用な情報を効率よく収集することができる。
本発明に係る質量分析データ処理方法及び質量分析装置によれば、目的物質に由来するピークを除去することなく、液体クロマトグラフに使用される移動相やMALDI用のマトリクスに混入している夾雑物やマトリクス物質そのものなどのコンタミナントに由来するピークを的確に除去することができる。それによって、例えば質量電荷比と保持時間とを2軸とするヒートマップに基づいて、同定対象或いは構造解析対象である目的物質由来である可能性の高いイオンをMSn分析のプリカーサイオンとして選択することができる。その結果、有益な情報が得られない無駄な測定の実行を減らすことができ、測定所要時間を短縮することができる。また、試料の無駄な消費を抑えることができる。また、限られた時間内で同定できる物質の数を増やすことができ、或いは、従来であれば同定できなかった可能性がある物質を同定することが可能となる。
本発明に係る質量分析データ処理方法を用いた質量分析装置の一実施例である質量分析システムの概略構成図。 本実施例の質量分析システムにおける特徴的なマススペクトルデータ処理を示すフローチャート。 本実施例の質量分析システムにおけるコンタミナントピーク除去処理の説明図。 コンタミナントピークに相当する質量電荷比m/zにおける抽出イオンクロマトグラムの一例を示す図。 正規化なしで作成したヒートマップの一例を示す図(a)、及び、同じデータについて正規化を行ったあとに作成したヒートマップの一例を示す図(b)。 元のMS1スペクトルに基づいて作成したヒートマップとそれに対して得られるプリカーサイオン候補を示す図(a)、及び、コンタミナントピーク除去後のMS1スペクトルに基づいて作成したヒートマップとそれに対して得られるプリカーサイオン候補を示す図(b)。 マススペクトルデータに基づいて作成されるヒートマップの説明図。 ヒートマップ上のピーク検出結果に基づくプリカーサイオン候補の選択例を示す図。
以下、本発明に係る質量分析データ処理方法を実施する質量分析装置の一実施例である質量分析システムについて、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は本実施例の質量分析システムの概略構成図である。図1において、分析部1は、液体試料中の各種物質を保持時間に応じて分離する液体クロマトグラフ(LC)部11と、液体クロマトグラフ部11で分離された物質を含む試料を分取・分画してそれぞれ異なる分画試料を調製する分取分画部12と、複数の分画試料のうちの一つを選択し該分画試料に対する質量分析を実行するという作業を繰り返すことが可能である質量分析(MS)部13と、を含む。
図示しないが、液体クロマトグラフ部11は、用意された移動相を略一定流量で送給する送液ポンプ、送給される移動相中に試料を注入するインジェクタ、試料中の成分を時間方向に分離するためのカラムなどを含む。分取分画部12は例えばフラクションコレクタとスポッティング装置とを含み、液体クロマトグラフ部11のカラムから溶出する溶出液を所定時間間隔で分画し、マトリクスを添加してMALDI分析用プレート上の異なるウェルに採取して、本発明における分画試料に相当するサンプルを調製する。また、質量分析部13は、MALDIイオン源、イオントラップ、及び飛行時間型質量分析計(TOFMS)を含むMALDI−IT−TOFMSであり、上記のように分取分画部12において調製されたサンプルに対する質量分析をそれぞれ実行する。
質量分析部13はイオン解離を伴わない通常の質量分析、つまりMS1分析だけでなく、イオントラップにおいてプリカーサイオン選択と衝突誘起解離(CID)操作とを1乃至複数回繰り返した後に飛行時間型質量分析計で質量分析を行う、nが2以上のMSn分析が可能である。ただし、MS1分析及びMS2分析のみを実行すればよい場合(つまりnが3以上であるMSn分析が不要の場合)には、イオントラップと飛行時間型質量分析計との組み合わせに代えて、タンデム四重極型質量分析装置(三連四重極型質量分析装置)のような、より簡易な構成の質量分析装置を利用することができる。
制御部2は上記分析部1中の各部の動作をそれぞれ制御する。質量分析部13により得られたデータ(マススペクトルデータ)はデータ処理部3に入力され、データ処理部3において処理されて例えばその結果が表示部5に出力される。データ処理部3は本実施例に特徴的な機能ブロックとして、MS1スペクトルデータやMSnスペクトルデータなどの測定データを収集するスペクトルデータ収集部31のほか、正規化処理部32、ベースライン減算処理部33、2次元ピーク検出部34、プリカーサイオン選択処理部35、を含む。また、データ処理部3には、表示部5のほか、分析者が適宜の設定や指示を行うための入力部4が接続されている。
なお、データ処理部3や制御部2は、パーソナルコンピュータをハードウエア資源とし、該パーソナルコンピュータにインストールされた専用の制御・処理ソフトウエアを実行することにより、上記のような各機能ブロックが具現化される構成とすることができる。
本実施例の質量分析システムにおいて、制御部2の制御の下にMS部13では、異なる試料成分を含むサンプル毎にそれぞれ質量分析が実施され、サンプル毎に、つまりは分画試料毎にマススペクトル(MS1スペクトル)データが取得される。データ処理部3においてスペクトルデータ収集部31はMS1スペクトルデータを収集し、これを一旦、内部のメモリや外部の記憶装置などに格納する。
例えば液体クロマトグラフ部11において使用される移動相や分取分画部12においてサンプル調製に使用されるマトリクスに何らかのコンタミナントが混入していると、こうしたコンタミナント由来のピーク、つまりコンタミナントピークがMS1スペクトルに現れる。コンタミナントピークは、目的物質を同定するべく或いは構造解析を行うべくMS2分析を行うためのプリカーサイオンを選択する際の障害となる。そこで、本実施例の質量分析システムでは、例えば、或る一つの試料から得られた多数のサンプル(分画試料)それぞれに対するMS1スペクトルデータが得られたあとに、以下のような特徴的なデータ処理を実施することで、コンタミナントピークを極力除去し、有益なプリカーサイオンを的確に選択できるようにしている。
次に、図2に示したフローチャートに従って、データ処理部3において実施される特徴的なマススペクトルデータ処理について説明する。
まず、本データ処理におけるコンタミナントピーク除去の原理を説明する。上述したように、移動相やマトリクスにコンタミナントが混入している場合やマトリクス自体がコンタミナントであるとみなせる場合には、こうしたコンタミナントはいずれのサンプル(分画試料)にもほぼ同程度の量、含まれる筈である。そのため、コンタミナントピークは、同試料から得られた多数のサンプルに対する各マススペクトル上で、ほぼ同じ質量電荷比m/zに観測される。したがって、各分画試料に対するマススペクトルデータに基づいて、質量電荷比を横軸、保持時間(分画順)を縦軸としたヒートマップを作成すると、このヒートマップ上においてコンタミナントピークは縦方向に延びる縞模様として現れる。そこで、基本的には、このようなコンタミナントピークの特徴的な現れ方を利用し、保持時間方向についてベースライン除去を行うことで、この方向にほぼ共通に存在しているコンタミナントピークを除去する。
ただし、多くの試料において、分画されたサンプル毎の信号強度のばらつきは大きい。特に、MALDIイオン源を利用した場合には、1回のレーザ光照射毎に生成されるイオン量のばらつきが大きいため、たとえ一つのサンプルに対して複数回の質量分析を実行した結果を積算したとしても、サンプル毎の信号強度のばらつきは無視できない程度に大きい。そのため、複数のサンプルにそれぞれ含まれるコンタミナントの量が全く同じであったとしても、該コンタミナントに由来するコンタミナントピークの信号強度には差異が生じるのが普通である。図4は、一つのコンタミナントピークに相当する質量電荷比m/zにおける抽出イオンクロマトグラム (eXtracted Ion Chromatogram)の実測例であるが、本来は同じ信号強度が続く筈であるのに、保持時間によって信号強度に大きなばらつきがあることが分かる。このような変動が存在する状態では、通常のベースライン除去を行っただけではコンタミナントピークが十分に除去されない。そこで、本データ処理では、まずサンプル間での信号強度のばらつき(つまりは検出感度のばらつき)を抑えるようにサンプル間で信号強度を正規化し、信号強度が正規化されたマススペクトルデータに対してベースライン除去を実行することでコンタミナントピークを除去するようにしている。
即ち、正規化処理部32は各サンプルに対するMS1スペクトルデータを収集し(ステップS1)、変数nを1に初期設定して正規化処理を開始する(ステップS2)。
正規化処理の演算手法は以下の通りである。
いま、保持時間に従って各分画試料に順に連続的に付与された分画番号をw(ただしw=1,2,…)、一つの分画試料においてそれぞれ質量電荷比に対応するサンプリング点に質量電荷比の順に連続的に付与されたサンプリング番号をm(ただしm=1,2,…)とする。したがって、wは或る保持時間、mは或る質量電荷比に対応している。また、分画番号w及びサンプリング番号mにおけるMS1スペクトルの信号強度をRwmとする。さらに、分画試料毎に、主要なピーク及びその近傍を除いたサンプリング点集合Nwを、次の(1)式で定義する。
w={m|Rwm <α1w } …(1)
ここで、Mw =max{Rwm|m=1,2,…}である。また、パラメータα1(0<α1<1}はピーク近傍か否かを判定するための閾値であり、このα1がピーク近傍の質量電荷比範囲を決定する。
分画番号wである分画試料に対するMS1スペクトルを基準とし、それに続く、分画番号がw+1である分画試料に対するMS1スペクトルの信号強度を正規化する。このとき正規化された分画番号w+1の分画試料に対するMS1スペクトルの信号強度R'w+1mは、次の(2)式で求まるものとする。
R'w+1m=Rw+1m×(ΣRwm'/ΣRw+1m') …(2)
なお、(2)式の分母及び分子のΣは、分画番号がw、w+1である分画試料に対するMS1スペクトルにおいて、いずれも主要なピーク及びピーク近傍を除く質量電荷比範囲でのデータの集合Nw∩Nw+1に含まれるm'についての総和である。このとき、総和を計算する範囲を主要なピークの影響がない質量電荷比範囲に限定する理由は、ペプチド等の目的物質を含む分画試料においてそれら目的物質由来のピークの信号強度が、正規化処理によって過小になることを避けるためである。
上記(2)式により正規化されたMS1スペクトルの信号強度R'w+1mを改めてRw+1mと表すと、分画番号がw+1である分画試料に続く、分画番号がw+2である分画試料に対するMS1スペクトルについても同様に、分画番号がw+1である分画試料に対するMS1スペクトルを基準として正規化することができる。図2に戻り説明すると、ステップS2においてnが「1」に設定されたあとにステップS3へ進むと、正規化処理部32は、1番目の分画試料に対するMS1スペクトルの信号強度を基準として、2番目の分画試料に対するMS1スペクトルの信号強度を正規化する。次に、全ての分画試料の正規化処理が終了したか否かが判定され(ステップS4)、未処理のMS1スペクトルがあればステップS4からS5へと進んで変数nをインクリメントする。
ステップS5からS3へと戻ると、変数nが1だけ大きくなった状態で再度上述した正規化処理が実施されるから、正規化処理部32は、2番目の分画試料に対するMS1スペクトルの信号強度を基準として3番目の分画試料に対するMS1スペクトルの信号強度を正規化する。全ての分画試料に対するMS1スペクトルの正規化処理が終わるまで、ステップS3→S4→S5→S3→…という処理が繰り返され、最後の分画試料に対するMS1スペクトルの正規化が終わると、ステップS4からS6へと進む。
図5は上述した正規化処理の効果を示す図であり、(a)は正規化処理を行わずに作成したヒートマップ、(b)は正規化処理を行ったあとに作成したヒートマップである。分画試料間の信号強度のばらつきは、質量電荷比方向(横軸方向)に延びる縞模様としてヒートマップ上に現れる。これは、高い検出感度となった分画試料に対するMS1マススペクトルでは、質量電荷比に依らず全体的に信号強度が高くなるからである。図5(a)では、こうした縞模様が明瞭に観測される。これに対し、(b)では縞模様が消失していることが分かる。これによって、少なくとも正規化処理によって、検出感度の平坦化が図られたことが確認できる。
なお、上述したように、隣接する分画試料におけるMS1スペクトルを基準とするのではなく、或る一つの分画試料、例えば1番目の分画試料におけるMS1スペクトルを基準として、他の全ての分画試料におけるMS1スペクトルの信号強度を正規化するようにしてもよい。
解析対象である試料から得られた全ての分画試料に対するMS1スペクトルデータの正規化処理が終わったならば、引き続き、ベースライン減算処理部33は、質量電荷比毎に分画順方向(保持時間方向)にベースライン減算処理を行うことで、ベースラインであるとみなせるコンタミナントピークを除去する。
ベースライン減算処理の演算手法は以下の通りである。
まず、例えば図3に示すようなヒートマップ上で或る質量電荷比における信号強度を保持時間方向(つまり縦方向)に見たときの2次元波形上のピークの近傍において、ベースラインが大きく変動しないように、信号強度Rwmに上限を設定する。具体的には、保持時間方向の2次元波形において次の(3)式のように信号強度を制限する。
wm =min{ Rwm ,α2m } …(3)
ここで、Am=Average{Rwm |w=1,2,… }である。ただし、パラメータα2(0<α2<1}はこの2次元波形上でピーク近傍か否かを判定するための閾値であり、このα2がピーク近傍の保持時間範囲(分画試料の範囲)を決定する。
(3)式は、2次元波形上の或る信号強度の値がα2mを超えている場合には、その信号強度をα2mに置き換える処理である。したがって、この処理により、その2次元波形上の最大信号強度はα2mにクリップされる(図3参照)。こうした処理を行ったあと、質量電荷比に対応する2次元波形毎に、上記rwmの移動平均をベースラインとみなして元の信号強度Rwmから差し引くことにより、ベースラインを除去する。これによりベースライン除去後のMS1スペクトルの信号強度<Rwm>は、次の(4)式で表せる。
<Rwm>=Rwm−Σrw+w'm …(4)
ここでΣはw'=−HからHまでの総和であり、このパラメータHは移動平均を求めるためのウインドウの半値幅である。
図2に戻り説明すると、まずステップS6において質量電荷比に対応するサンプリング番号mが「1」に初期設定されたあとにステップS7へ進むと、ベースライン減算処理部33は、サンプリング番号m=1における保持時間方向の2次元波形について上述したようなベースライン減算処理によるコンタミナントピーク除去を実施する。次に、全てのサンプリング点において、つまりは全質量電荷比範囲に亘り、保持時間方向の2次元波形のベースライン減算処理が終了したか否かが判定され(ステップS8)、未処理の2次元波形があればステップS8からS9へと進んで変数mをインクリメントする。
ステップS9からS7へと戻ると、変数mが1だけ大きくなった状態で再度上述したベースライン減算処理が実施される。全質量電荷比範囲に亘り同様にベースライン減算処理が終わるまで、ステップS7→S8→S9→S7→…という処理が繰り返され、最後の質量電荷比(サンプリング点)における2次元波形に対するベースライン減算処理、つまりはコンタミナントピーク除去処理が終わると、ステップS8からS10へと進む。
このようにして、分画試料に依らず同じ質量電荷比に現れるコンタミナントピークを効果的に除去することができる。一方で、元の試料に含まれる目的物質に由来するピークは限られた分画試料にのみ現れるので、保持時間方向にみた2次元波形においてベースラインとはならず、上記処理では除去されずに残る。その結果、コンタミナントピークのみを効果的に除去したMS1スペクトルを得ることができる。
2次元ピーク検出部34は、こうしてコンタミナントピークが除去されたMS1スペクトルに基づくヒートマップ上で、2次元的に、つまりは質量電荷比方向と保持時間方向との両方向の信号強度の傾き等から、ピークを検出する。これにより、ピークトップの座標位置を決定し、決定されたピークをMS2分析のためのプリカーサイオン候補として抽出する(ステップS10、S11)。
図6はコンタミナントピーク除去の効果を示す図であり、(a)は元のMS1スペクトルに基づいて作成したヒートマップとそれに対して求まるプリカーサイオン候補を示す図、(b)はコンタミナントピーク除去後のMS1スペクトルに基づいて作成したヒートマップとそれに対して求まるプリカーサイオン候補を示す図である。プリカーサイオン候補は図8と同様に矩形状の枠で示されている。図6の(a)と(b)とを比較すれば分かるように、コンタミナントピークが除去されたことによって、プリカーサイオン候補の数が大幅に減少していることが分かる。これにより、有意な情報をもたらさない偽のプリカーサイオン候補が減り、目的物質由来のイオンをプリカーサイオンとして選択し易くなったことが分かる。
次に、プリカーサイオン選択処理部35は、多数のプリカーサイオン候補の中から、分画試料毎に、MS2分析を実行するプリカーサイオンを決定する(ステップS12)。プリカーサイオンを決定するアルゴリズムや手法は任意である。
例えば、自動的にプリカーサイオンを決定する場合には、予め設定された測定時間の制約からMS2分析の実行回数Nを計算し、多数のプリカーサイオン候補の中から信号強度の高い順にN個のピークを抽出してプリカーサイオンと定めることができる。また、同じ分画試料に対してレーザ光照射を多数回繰り返すと、目的物質自体が枯渇して信号が出なくなるおそれもある。そこで、一つの分画試料に対しMS2分析を実行する回数に制約を設けた上で、上記のようなアルゴリズムで以てプリカーサイオンを決定してもよい。また、目的物質の保持時間や質量電荷比についての事前情報が得られている場合には、そうした情報を利用してプリカーサイオン候補を絞り込んだ上で適宜の数のプリカーサイオンを決定してもよい。
さらにまた、こうしたプリカーサイオン候補の情報を表示部5の画面上に表示し、それを分析者が目視で確認した上で入力部4から指示を行うことで、プリカーサイオン候補を絞り込んだり、プリカーサイオン候補の中から実際に分析するプリカーサイオンを抽出したりしてもよい。
こうして決定されたプリカーサイオンの情報は制御部2に送られ、例えばMS2分析の実行が指示されると、制御部2の制御の下に、分析部1において質量分析部13は指定された分画試料に対し指定されたプリカーサイオンを設定したMS2分析を実行する。それによって、コンタミナントピークに対応した不所望のイオンをプリカーサイオンとしたMS2分析を実行することなく、目的物質を同定するために有用なMS2スペクトルデータを収集することが可能となる。
なお、上記実施例の質量分析システムでは、質量分析部13はMALDIイオン源を備えていたが、エレクトロスプレイイオン源等の大気圧イオン源と、三次元四重極型又はリニア型のイオントラップと、飛行時間型質量分析装置などとを組み合わせた質量分析装置を用い、液体クロマトグラフ部11のカラムから溶出した溶出液を質量分析装置のイオン源に直接導入し、所定の時間範囲中にイオン源で生成された各種イオンを一旦イオントラップに捕捉したあとに、その捕捉したイオンを質量分析に供するようにしてもよい。こうした構成によれば、上記実施例のシステムにおける分取分画部12と同様の機能を、イオントラップにおいて実現することができ、実質的に分画試料毎のMS1スペクトルデータを収集することができる。ただし、この構成の場合には、液体クロマトグラフ部11への1回の試料注入で該試料が消費されてしまうので、MS2分析を実行する際には再度、同じ試料を液体クロマトグラフ部11に注入する必要がある。
また、上記実施例の質量分析システムでは、試料中の物質を分離するために液体クロマトグラフを利用したが、キャピラリ電気泳動などの他の成分分離手法を利用してもよい。その場合、その成分分離手法に応じて、上記保持時間を、例えば移動度など他の分離パラメータに置き換えればよい。
また、上記実施例は本発明の一実施例にすぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜変形、修正、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは当然である。
1…分析部
11…液体クロマトグラフ(LC)部
12…分取分画部
13…質量分析(MS)部
2…制御部
3…データ処理部
31…スペクトルデータ収集部
32…正規化処理部
33…ベースライン減算処理部
34…二次元ピーク検出部
35…プリカーサイオン選択処理部
4…入力部
5…表示部

Claims (8)

  1. 各種物質が含まれる試料を所定の分離用パラメータに従って分離し分画して得られた複数の分画試料をそれぞれ質量分析することで収集されたマススペクトルデータを処理するデータ処理方法であって、
    a)分画試料間で各分画試料に対するマススペクトルの信号強度を正規化するように信号強度値を修正する正規化処理ステップと、
    b)前記正規化処理ステップにおいて正規化された各分画試料に対するマススペクトルデータに基づいて作成される、分離用パラメータ及び質量電荷比を2軸としその2軸に直交する軸に信号強度をとった3次元グラフにおいて、質量電荷比毎に分離用パラメータ軸方向に信号強度を並べて得られる2次元波形のベースラインを求めてこれを該2次元波形から差し引く減算処理ステップと、
    を有することを特徴とする質量分析データ処理方法。
  2. 請求項1に記載の質量分析データ処理方法であって、
    前記正規化処理ステップでは、主要なピークが出現する範囲を除外した質量電荷比又は質量電荷比範囲におけるマススペクトルの信号強度に基づいて正規化を行うことを特徴とする質量分析データ処理方法。
  3. 請求項1又は2に記載の質量分析データ処理方法であって、
    前記減算処理ステップでは、前記2次元波形の中で所定の上限値を超える信号強度を該所定の上限値又はそれよりも小さい所定の値に置換したうえでベースラインを差し引く処理を実行することを特徴とする質量分析データ処理方法。
  4. 請求項1〜3に記載の質量分析データ処理方法であって、
    前記減算処理ステップによるベースライン減算処理によってコンタミナントピークが除去されたマススペクトルに基づいて、MSn分析(nは2以上の整数)のためのプリカーサイオンを決定するプリカーサイオン選択ステップ、をさらに有することを特徴とする質量分析データ処理方法。
  5. a)各種物質が含まれる試料を所定の分離用パラメータに従って分離し、それを分画して得られた複数の分画試料をそれぞれ質量分析してマススペクトルデータを収集する分析実行部と、
    b)分画試料間で各分画試料に対するマススペクトルの信号強度を正規化するように信号強度値を修正する正規化処理部と、
    c)前記正規化処理部により正規化された各分画試料に対するマススペクトルデータに基づいて作成される、分離用パラメータ及び質量電荷比を2軸としその2軸に直交する軸に信号強度をとった3次元グラフにおいて、質量電荷比毎に分離用パラメータ軸方向に信号強度を並べて得られる2次元波形のベースラインを求めてこれを該2次元波形から差し引く減算処理部と、
    を備えたことを特徴とする質量分析装置。
  6. 請求項5に記載の質量分析装置であって、
    前記正規化処理部は、主要なピークが出現する範囲を除外した質量電荷比又は質量電荷比範囲におけるマススペクトルの信号強度に基づいて正規化を行うことを特徴とする質量分析装置。
  7. 請求項5又は6に記載の質量分析装置であって、
    前記減算処理部は、前記2次元波形の中で所定の上限値を超える信号強度を該所定の上限値又はそれよりも小さい所定の値に置換したうえでベースラインを差し引く処理を実行することを特徴とする質量分析装置。
  8. 請求項5〜7のいずれかに記載の質量分析装置であり、選択された特定の質量電荷比を持つプリカーサイオンを1段階又は多段階解離させ、それによって生成されたプロダクトイオンを質量分析するMSn分析(nは2以上の整数)が可能な質量分析装置において、
    前記減算処理部によるベースライン減算処理によってコンタミナントピークが除去されたマススペクトルに基づいて、MSn分析(nは2以上の整数)のためのプリカーサイオンを決定するプリカーサイオン決定部と、
    該プリカーサイオン決定部により決定されたプリカーサイオンを解離対象に設定したうえで、該プリカーサイオンが得られる分画試料に対するMSn分析を実行するように各部を制御するMSn分析制御部と、
    をさらに備えることを特徴とする質量分析装置。
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