JP3687203B2 - クロマトグラフ質量分析用データ処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、クロマトグラフ質量分析装置を用いて得られた測定データを処理するためのデータ処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
今日のクロマトグラフ質量分析装置には一般にコンピュータ等からなるデータ処理装置が備えられている。このデータ処理装置を用いてマススペクトル分析を行なう手順は、例えば次のようなものである。まず、データ処理装置が磁気ディスク等からなる記憶装置に格納された測定データを用いて試料のクロマトグラムを生成し、CRT等の表示装置にこれを表示する。次に、使用者がクロマトグラム上の分析しようとするピークをマウス等の入力装置を用いて指定し、データ処理装置にマススペクトルの解析処理の開始を指示すると、データ処理装置は記憶装置から指定されたピークに対応する測定データを読み出してマススペクトルを生成し、このマススペクトルに基づいて成分に関する情報を得るための解析処理を行ない、解析結果を表示装置に表示する。
【0003】
成分に関する情報を得るための解析処理としては、マススペクトルデータベースを用いたいわゆるパターンマッチングという処理が挙げられる。マススペクトルデータベースには、様々な既知化合物についての情報、すなわち、所定のイオン化法(例えば電子衝撃法)を用いて質量分析を行なったときに得られるマススペクトルのデータの他、化合物名、分子量、組成式、構造式等の情報が含まれている。このような既知化合物のマススペクトルと未知成分のマススペクトルとを指定された検索条件の下でパターンマッチングすることにより、未知成分に関する情報を得ることができる。
【0004】
パターンマッチング等の解析処理を行なう場合、測定データをそのまま用いるのではなく、そのデータを適宜補正もしくは加工してより正確なデータとしてから解析処理を行なう。このような補正もしくは加工のための処理(以下、「前処理」とする)には、バックグラウンド消去や平均化といった処理がある。バックグラウンド消去とは、測定データの値からバックグラウンド成分を除去するという処理のことである。一方、平均化についてであるが、高い分解能を有する最近のクロマトグラフ質量分析装置では、一つのピーク成分を検出している間に複数回の質量走査が行なわれるのが一般的であり、従って同一成分に対して複数回分のマススペクトルデータが得られることになる。このような複数回分のマススペクトルデータを集計して質量数(m/z)毎の平均値を求めるという処理が平均化である。このような平均化により得られるマススペクトルを用いてパターンマッチングを行なえば、1回の質量走査により得られるマススペクトルを用いる場合よりも信頼性の高い解析結果が得られる。なお、上記前処理により得られるマススペクトルを、以下では「合成マススペクトル」と呼ぶ。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一つの試料をクロマトグラフで分離して得られるクロマトグラム上には通常複数のピークが現われ、その数はときに数十から数百に達することもある。これら各成分の合成マススペクトルを生成してパターンマッチング等の解析処理を行なおうとする場合、従来は使用者が入力装置を用いてクロマトグラム上のピークを一つずつ指定するという面倒な作業が必要であった。
【0006】
また、従来は、一つの成分についての解析処理が終了した後で次の成分の解析処理を実行すると、先の成分の合成マススペクトルやその解析結果に関するデータは全て失われてしまっていた。このため、先の成分の合成マススペクトルやその解析結果を再度表示させようとすると、その成分は先に解析処理したものであるにも関わらず、データ処理装置は記憶装置からその成分に対応する測定データを再度読み出して前処理や解析処理を行なわなければならず、無駄が多かった。しかも、今日ではマススペクトルデータベースに含まれるデータの量も膨大なものとなっており、その増加に従ってパターンマッチングに必要な時間も長時間化してきている。従って、一度処理したことのある成分について再度処理をやり直すということはデータ処理の効率化にとって大きな問題となってきている。
【0007】
本発明はこのような課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、クロマトグラム上のピーク成分の合成マススペクトルやその解析データを効率的に採取し、且つ、それらのデータを効率的に利用することができるクロマトグラフ質量分析用データ処理装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために成された本発明に係るクロマトグラフ質量分析用データ処理装置は、
a)測定により得られたデータが格納される測定データ記憶部と、
b)測定データに基づいてクロマトグラムを生成し、該クロマトグラム上のピークを自動的に検出するピーク検出部と、
c)ピーク検出部により検出されたピーク成分の測定データに対して補正もしくは加工のための前処理を行なって合成マススペクトルを生成する前処理部と、
d)上記合成マススペクトルに対して成分に関する情報を得るための解析処理を行なう解析処理部と、
e)合成マススペクトルのデータと解析処理の結果を示す解析データが相互に関連付けられて格納される解析データ記憶部と、
f)解析データ記憶部へのデータの格納及び解析データ記憶部からのデータの読出を行なうための解析データ入出力部と、
を備えることを特徴としている。
【0009】
【発明の実施の形態】
試料の分析中、クロマトグラフ質量分析装置により得られる測定データは測定データ記憶部に格納される。試料の分析が終了した後のデータ処理において、ピーク検出部は測定データ記憶部に格納された測定データを用いてクロマトグラムを生成し、クロマトグラム上に現われたピークを順次自動的に検出し、ピーク検出信号(例えば、ピークの始点及び終点の保持時間を示すデータ)を前処理部へ出力する。ピーク検出信号を受けた前処理部は、そのピーク検出信号により特定されるピーク成分の測定データに対してバックグラウンド消去や平均化等の前処理を行ない、合成マススペクトルを生成する。この合成マススペクトルのデータは解析データ入出力部及び解析処理部へ転送される。解析処理部は、転送された合成マススペクトルに対してパターンマッチング等の解析処理を行ない、その結果を示す解析データを解析データ入出力部へ転送する。解析データ入出力部は、転送された解析データと、先に転送された合成マススペクトルのデータとを、相互に関連づけて解析データ記憶部に格納する。
【0010】
【発明の効果】
本発明のクロマトグラフ質量分析用データ処理装置によれば、測定により得られた測定データに対する前処理や解析処理は予めデータ処理装置により自動的に行なわれるため、測定後に使用者がクロマトグラム上の任意のピーク成分の合成マススペクトルや解析結果を利用しようとするときには前処理や解析処理を行なう必要がなく、解析データ記憶部に格納されたデータを読み出すだけでよいため、データ処理の効率が飛躍的に高まる。また、合成マススペクトルのデータ及びその解析データは全てのデータ処理が終了した後でも失われることがないため、例えば後日にそのデータを再び呼び出して適宜使用することも可能である。また、未知成分の合成マススペクトルに対して解析処理を実行するに際し、解析処理部が、通常のデータベースの他、解析データ記憶部に格納された合成マススペクトルのデータをも参照用データとして利用しながら解析処理を行なう、というようにすることも可能である。もちろん、使用者が外部からマウス等の入力装置を用いて解析データ入出力部に指示を出し、解析データ記憶部に格納された合成マススペクトルのデータやその解析データを自由に指定して読み出し、CRTやプリンタ等の表示手段にこれを表示させる、というようにすることもできる。
【0011】
【実施例】
本発明に係るクロマトグラフ質量分析用データ処理装置(以下、「データ処理装置」とする)の実施例を図面を参照しながら説明する。なお以下においては、ガスクロマトグラフ質量分析装置の場合を例にとるが、液体クロマトグラフ質量分析装置等の他のクロマトグラフ質量分析装置の場合も同様である。
【0012】
図1は本実施例のデータ処理装置10の構成を示す図である。データ処理装置10は、中央制御部16、ピーク検出部17、前処理部18、解析処理部20、測定データ記憶部22、解析データ記憶部24及び参照データ記憶部26からなる。中央制御部16はメモリを備えている。測定データ記憶部22及び解析データ記憶部24は中央制御部16に接続されており、参照データ記憶部26は解析処理部20に接続されている。また、中央制御部16には入力装置28及び表示装置30が接続されている。
【0013】
上記において、中央制御部16、ピーク検出部17、前処理部18及び解析処理部20はコンピュータ・プログラムに従って動作するCPU又は専用のLSIにより構成することができる。測定データ記憶部22及び解析データ記憶部24にはハードディスク(HDD)や光磁気ディスク(MO)等の読出/書込可能な記憶装置が利用できる。参照データ記憶部26にもHDD等が利用可能であるが、参照データ記憶部26へのデータの書込を行なわないような構成とする場合は、CD−ROMのような読出専用の装置を用いてもよい。参照データ記憶部26には様々な化合物に関するデータが格納されているが、このように参照データ記憶部26に格納されたデータの集合体を以下では「参照データベース」と呼ぶ。また、図1では、測定データ記憶部22、解析データ記憶部24及び参照データ記憶部26がそれぞれ独立に配置されているが、もちろん、これらの記憶部は、単一の記憶装置(HDD等)を論理的に分割してこれを構成することも可能である。なお、入力装置28にはキーボードやマウス等を利用することができ、表示装置30にはCRTやプリンタ等が利用できる。
【0014】
上記データ処理装置10の動作について説明する。まず、試料の測定中は、ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC/MS)12からの検出信号はA/D変換部14によりデジタルデータに変換されてデータ処理装置10の中央制御部16に入力される。中央制御部16はこれらのデジタルデータを測定データ記憶部22に格納する。こうして測定データ記憶部22に格納されたデジタルデータを以下では単に「測定データ」と呼ぶ。
【0015】
次に、試料の測定終了後の解析処理について図1及び図2を参照しながら説明する。図2は測定データの解析処理の手順を示すフローチャートである。
【0016】
まず中央制御部16は測定データ記憶部22から試料の全測定データを読み出してピーク検出部17へ転送する(ステップS12)。ピーク検出部17は、転送された測定データを用いてクロマトグラムを生成し(ステップS14)、クロマトグラム上の最初のピーク(例えば保持時間が最も短いピーク)を検出してピーク検出信号を中央制御部16へ出力する(ステップS16)。ピーク検出信号を受けた中央制御部16は、そのピーク検出信号により特定されるピークの測定データを測定データ記憶部22から読み出してこれを前処理部18へ転送する(ステップS18)。前処理部18は、転送された測定データに対してバックグラウンド消去や平均化等の前処理を行ない、合成マススペクトルを生成する(ステップS20)。この合成マススペクトルのデータは中央制御部16を経て解析処理部20へ転送される。合成マススペクトルのデータを受けた解析処理部20は、参照データベースを用いてパターンマッチング等の解析処理を行ない、その結果を示すデータ(解析データ)を中央制御部16へ転送する(ステップS22)。中央制御部16は解析処理部20から転送された解析データと、先に前処理部18から転送された合成マススペクトルのデータとを相互に関連づけて解析データ記憶部24に格納する(ステップS24)。このように解析データ記憶部24内で関連づけられた合成マススペクトルのデータ及びその解析データを以下では「マススペクトル解析データ」と呼ぶ。マススペクトル解析データの格納が終了したら、中央制御部16はピーク検出部17に次のピークの検出を指示する(ステップS26)。その後のステップS28において、もしピーク検出部17が次のピークを検出すれば、そのピークに対して上記ステップS18〜S26の処理が実行される。一方、次のピークを検出することなくクロマトグラムの終端へ達した場合は、ピーク検出部17は全ピークの検出が終了したことを示す信号を中央制御部16へ送り、中央制御部16はデータ処理を終了する。
【0017】
上記一連の処理はクロマトグラム上の全てのピークについて行なわれるが、全ての処理はデータ処理装置が自動的に行なうことができるため、使用者に作業上の負担を強いることは一切ない。
【0018】
測定データの解析処理により、解析データ記憶部24には次々とマススペクトル解析データが蓄積されるが、こうして解析データ記憶部24に蓄積されたマススペクトル解析データの集合体を以下では「解析データベース」と呼ぶ。解析データベースは、解析処理部20が合成マススペクトルに対する解析処理を行なう際に参照データベースとともにデータベースとして利用することができる。
【0019】
また、解析データベースにマススペクトル解析データを格納する際、更に、格納されたマススペクトル解析データを管理するためのリストファイルを解析データ記憶部24内に作成し、使用者が入力装置28を用いてこのリストファイルを呼び出し、表示装置30上で任意のマススペクトル解析データを選択できるようにすることが望ましい。
【0020】
なお、図2のフローチャートの例では、前処理及び解析処理を各ピークが検出される度毎に連続して行なうようにしたが、ピークを順次検出している間は前処理のみを各ピーク毎に行なって合成マススペクトルのデータを解析データ記憶部24へ格納するようにし、全てのピークの検出が終了した後で解析データ記憶部24から各合成マススペクトルのデータを順次読み出して解析処理を行なうようにしてもよい。
【0021】
本実施例のデータ処理装置において、更に次のようにすることもできる。まず、あるクロマトグラムの各ピーク成分のマススペクトル解析データを中央制御部16が解析データ記憶部24へ格納するに際し、各マススペクトル解析データと、その元となるピークのクロマトグラム上での位置を示すデータとを関連づけて格納するようにする。次に、全てのピークについてマススペクトル解析データの格納が終了した後、使用者が入力装置28を操作して表示装置30に上記クロマトグラムを表示させ、任意のピークを指定して中央制御部16に解析処理を指示すると、中央制御部16が指定されたピークに対応するマススペクトル解析データを解析データ記憶部24から読み出し、合成マススペクトルや解析結果を表示装置30に表示するようにする。このようにすると、例えば、クロマトグラムを表示装置に表示させてピークを次々に指定し、各ピーク成分の合成マススペクトルや解析結果を次々に表示させるという処理を従来よりもはるかに高速で行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るデータ処理装置の実施例の構成を示す図。
【図2】 測定データの解析処理の手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
10…データ処理装置
12…ガスクロマトグラフ質量分析装置
14…A/D変換部
16…中央制御部
17…ピーク検出部
18…前処理部
20…解析処理部
22…測定データ記憶部
24…解析データ記憶部
26…参照データ記憶部
28…入力装置
30…表示装置
Claims (1)
- a)測定により得られたデータが格納される測定データ記憶部と、
b)測定データに基づいてクロマトグラムを生成し、該クロマトグラム上のピークを自動的に検出するピーク検出部と、
c)ピーク検出部により検出されたピーク成分の測定データに対して補正もしくは加工のための前処理を行なって合成マススペクトルを生成する前処理部と、
d)上記合成マススペクトルに対して、ピーク成分に関する情報を得るための解析処理を行なう解析処理部と、
e)合成マススペクトルのデータと解析処理の結果を示す解析データが相互に関連付けられて格納される解析データ記憶部と、
f)解析データ記憶部へのデータの格納及び解析データ記憶部からのデータの読出を行なうための解析データ入出力部と、
を備えることを特徴とするクロマトグラフ質量分析用データ処理装置。
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1996
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