JP5782996B2 - 単結晶の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、チョクラルスキー法(以下CZ法と称す)により単結晶を製造する方法に関する。
例えばシリコン単結晶の製造方法の1つとして、ルツボ内でシリコン多結晶原料を溶融し、種結晶をその融液面に接触させて引き上げることで単結晶を育成するCZ法が広く知られている。
CZ法による単結晶の製造において、融液となる原料多結晶及びその融液を収容する石英ルツボの金属不純物は、製造される単結晶の欠陥密度に影響することが分かっている。例えば、特許文献1では、合成層の不純物含有量(Al,Fe,Ni,Cr等)が少ない合成石英ルツボを用い、微小欠陥が3個/cm以下の単結晶を製造している。
特開平5−58770号公報
また、単結晶を製造する際、炉内の黒鉛部品に含有されている不純物は単結晶の純度に影響するので、炉内の黒鉛部品は、一般的に超高純度黒鉛材や高純度黒鉛材が使用される。これらの金属不純物濃度(Fe,Al,Ni,Cr等)の規格は、超高純度黒鉛材が0.3ppm(300ppb)前後、高純度黒鉛材が0.5ppm(500ppb)前後であった。
従来においては、これらの基準を満たす黒鉛材であれば、黒鉛材の不純物が単結晶に影響することが無かった。しかし、近年、低速で成長させる低欠陥結晶のマルチプーリング(一つのルツボから原料を再チャージすることで、多数本の単結晶を引き上げる方法)等によって、単結晶を製造する製造時間が過去の2〜3倍に長くなり、黒鉛材中に含まれる不純物の内、特に黒鉛、石英、及びシリコン中での拡散係数が大きい不純物が、黒鉛材から外方拡散し、その後、融液を収容する石英ルツボを拡散して通過し、融液中に取り込まれ、さらに単結晶中に偏析し、単結晶の結晶品質に影響するようになった。
そして、黒鉛材中の不純物が拡散して単結晶に取り込まれた場合、その単結晶のLT(Life Time)低下やLPD(Light Point Defect)異常が発生してしまう。
ここで、LTとは、光減衰法により測定され、半導体結晶中の少数キャリアが光で励起されて移動する時間を示し、金属不純物濃度が高いほど値が低くなる。また、LPDとは、単結晶から得られたウェーハにエピタキシャル層を形成し、そのエピタキシャル層表面をパーティクルカウンターで測定すると、0.09μm以上の結晶欠陥が観察され、これらのレーザ光を用いたウェーハ表面検査装置で観察される輝点欠陥の総称をLPDと称する。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、CZ法による単結晶の製造において、LT低下やLPD異常の発生がない単結晶を製造することができる方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、CZ法による単結晶の製造方法において、単結晶を製造する炉内で使用する少なくとも一つの黒鉛部品のNi濃度を分析して、該分析したNi濃度が30ppb以下の黒鉛部品を使用して前記単結晶を製造することを特徴とする単結晶の製造方法を提供する。
このように分析したNi濃度が30ppb以下の黒鉛部品を使用することで、LT低下やLPD異常が生じない高品質の単結晶を生産性良く製造することができる。
このとき、前記黒鉛部品を、石英ルツボに直接に接する黒鉛部品及び該直接に接する黒鉛部品を介して前記石英ルツボと間接的に接する黒鉛部品のうちの少なくとも一つとすることが好ましい。
このような黒鉛部品をNi濃度が30ppb以下とすることで、石英ルツボ内の融液へのNiの拡散を効率的に防止でき、単結晶のLT低下やLPD異常をより効果的に防止することができる。
このとき、前記黒鉛部品を、黒鉛ルツボとすることが好ましい。
このように黒鉛ルツボは、融液を収容する石英ルツボに直接接触しているため、Ni濃度30ppb以下とすることで、より効果的に単結晶のLT低下やLPD異常を防止することができる。
このとき、前記黒鉛部品を、さらにルツボ受皿及びペディスタルの少なくとも一つとすることが好ましい。
さらに、このような黒鉛部品をNi濃度30ppb以下とすることで、製造される単結晶のLT低下やLPD異常を確実に防止することができる。
このとき、前記Ni濃度を分析する方法を、前記黒鉛部品の黒鉛材をプラズマ灰化し、酸溶解したものを分析する高感度分析方法とすることが好ましい。
このような高感度分析方法であれば、黒鉛部品の黒鉛材のNi濃度を30ppb以下まで定量的に分析することができるため、製造される単結晶のLT低下やLPD異常を確実に防止することができる。
以上のように、本発明によれば、LT低下やLPD異常が生じない高品質の単結晶を歩留まり良く製造することができる。
本発明の製造方法に用いることができる単結晶製造装置の一例を示す概略図である。
本発明者は、CZ法により製造した単結晶に発生するLT低下やLPD異常について、従来は高純度品を用いれば原因とはならないと考えられていた黒鉛部品に着目し、以下のように検討した。
不純物含有量の極めて少ない原料多結晶と石英ルツボを使用し、単結晶を製造し、その単結晶のLT低下、またはLPD異常が発生した場合と発生しなかった場合の両方について、その単結晶を製造した際に使用した黒鉛部品を高感度分析方法(Fe,Al,Ni,Cr等の定量下限が5〜10ppb)により分析し、比較を行った。その結果、黒鉛中に多く含まれ、黒鉛中での拡散係数の大きい金属不純物であるNiが、30ppbを超える濃度の黒鉛部品を使用して製造した単結晶で、LT低下やLPD異常が発生することを見出した。
ここで、黒鉛部品中の金属不純物が単結晶中に取り込まれるプロセスを、黒鉛ルツボの場合で説明する。
黒鉛ルツボ中に含まれる不純物の内、特に拡散係数が大きい不純物が、長時間の単結晶製造中に黒鉛ルツボの基材内部から外方拡散し、黒鉛ルツボと接する石英ルツボの石英中に拡散して、石英ルツボを通過し、その後、融液中に取り込まれていく。そして、さらに融液から成長中の単結晶中に偏析し、製造された単結晶の結晶品質にLT低下やLPD異常が発生することになる。
不純物が黒鉛ルツボから石英ルツボへ、そして、融液中に取り込まれるまでには、黒鉛材中と石英材中での拡散係数が大きい金属不純物でもかなり長時間を要する。このため、低速成長でも2本引きまでマルチプーリングによる単結晶製造、または高速成長での3本引きまでのマルチプーリングによる単結晶製造では、成長中の単結晶に不純物が取り込まれるまでの時間に至らないので、黒鉛部品中の不純物に起因するLT低下やLPD異常が発生しにくい。従って、本発明の製造方法は、原料をリチャージしながら同一のルツボから複数の単結晶を引き上げるマルチプーリングに好適であり、特に、低速成長では3本以上、高速成長では4本以上の単結晶を引き上げるマルチプーリングにおいて好適である。
Niは、黒鉛部品中の金属不純物の内でも、黒鉛材中と石英材中での拡散係数が大きく、黒鉛材中の濃度が比較的高いため、30ppbを超える濃度の黒鉛部品を用いると、上記のように結晶品質に影響を与えてしまう。
以下、本発明について、実施態様の一例として、図を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1は、本発明の製造方法で用いることができる単結晶製造装置の概略図である。
図1の単結晶製造装置1は、メインチャンバー2と、メインチャンバー2の上部に連結されたプルチャンバー3で炉が構成されている。メインチャンバー2内には、融液4を収容する石英ルツボ5と、石英ルツボ5を支持するための黒鉛ルツボ6が配置されている。ルツボ5、6は、単結晶製造装置1の下部に取り付けられた回転駆動機構(図示せず)によって回転昇降自在な支持軸11により支持されている。支持軸11は、通常金属製のものが用いられる。また、ルツボ5,6の台座としての黒鉛製のペディスタル8が支持軸11に連結され、ルツボ5,6は黒鉛製のルツボ受皿7を介してペディスタル8に支持されている。
また、ルツボ5,6を囲繞し、融液4を加熱するヒータ9と、ヒータ9とメインチャンバー2の内壁の間に配設された断熱部材10とが設けられている。
ルツボ5,6の上方には、種結晶13を引き上げるための引き上げ軸(ワイヤー又はシャフト等)14が設けられている。
本発明では、上記のような単結晶製造装置を用いて単結晶を製造する際、単結晶を製造する炉内で使用する少なくとも一つの黒鉛部品のNi濃度を分析して、該分析したNi濃度が30ppb以下の黒鉛部品を使用して単結晶を製造する。
Ni濃度が30ppbを超える黒鉛部品を使用すると、製造される単結晶にNiが不純物として混入し、LT低下やLPD異常を発生させてしまう。従って、予め分析してNi濃度が30ppb以下である黒鉛部品を使用することで、LT低下やLPD異常が発生しない高品質の単結晶を生産性良く製造することができる。
このとき、Ni濃度を分析して用いる黒鉛部品としては、特に限定されず、全ての黒鉛部品とすることができるが、それではコスト的に問題が生じる。このため、本発明でNi濃度を分析して用いる黒鉛部品を、石英ルツボ5に直接に接する黒鉛部品及び該直接に接する黒鉛部品を介して石英ルツボ5と間接的に接する黒鉛部品のうちの少なくとも一つとすることが好ましい。例えば図1に示すような石英ルツボ5に直接に接する黒鉛ルツボ6を分析することが好ましく、さらに、黒鉛ルツボ6を介して石英ルツボ5と間接的に接するルツボ受皿7、及びペディスタル8の少なくとも一つも分析することがより好ましい。
黒鉛ルツボ、ルツボ受皿、及びペディスタルは、黒鉛材が用いられ、融液を収容する石英ルツボに近接しており、Niが拡散して融液に取り込まれやすいため、本発明のように、分析してNi濃度が30ppb以下のものを用いることで、LT低下やLPD異常をより効果的に防止できる。この場合、Ni濃度30ppb以下とする必要がある優先順位は、黒鉛ルツボ、ルツボ受皿、ペディスタルの順である。もちろん、LT低下やLPD異常をより確実に防止するためには、黒鉛ルツボ6、ルツボ受皿7、及びペディスタル8の全てについて、分析してNi濃度が30ppb以下のものを用いることがより好ましい。
また、本発明で分析する黒鉛部品は、黒鉛ルツボ6、ルツボ受皿7、及びペディスタル8以外のものでもよい。黒鉛ルツボ6、ルツボ受皿7、及びペディスタル8以外の黒鉛部品であっても、本発明において分析してから使用するので、いずれの黒鉛部品についても確実にNi濃度30ppb以下のものを使用することになり、分析していなかった従来のように、Niで汚染された部品を使用することがないようにできる。従って、LT低下やLPD異常の抑制効果を発揮できる。特に、石英ルツボ5直上に用いられる黒鉛部品で効果を発揮しうる。
このとき、Ni濃度を分析する方法を、黒鉛部品の黒鉛材をプラズマ灰化し、酸溶解したものを分析する高感度分析方法とすることが好ましい。
従来の黒鉛部品の黒鉛材の分析方法は、黒鉛を燃焼灰化した後、これを酸処理して、その酸溶解物を分析していたため、金属不純物(Fe,Al,Ni,Cr等)の定量下限が50〜100ppbであり、50〜100ppb以下の濃度を測定できなかった。このような分析方法は、従来の黒鉛部品の金属不純物濃度(Fe,Al,Ni,Cr等)の規格(超高純度黒鉛材が300ppb前後、高純度黒鉛材が500ppb前後)にとっては、十分な定量下限であった。しかし、このような従来の方法では、LT低下やLPD異常が発生しない30ppb以下のNi濃度を分析することは不可能である。
一方、上記のような高感度分析方法のNi濃度の定量下限は5ppbであり、30ppb以下であるかどうかを精度良く識別でき、本発明の製造方法を確実に実施可能である。ただし、Ni濃度の定量下限が30ppb以下である分析方法であれば、本発明に用いることができ、上記の方法に限定されない。
なお、Ni濃度が30ppb以下の黒鉛部品は、Ni濃度が30ppb以下の黒鉛材を加工して黒鉛部品を作製することで得ることができるが、黒鉛材を加工して黒鉛部品とした後に、熱処理等を施して高純化することで、Ni濃度を30ppb以下としてもよい。すなわち、できた黒鉛部品のNi濃度が30ppb以下であればよい。
そして、上記のように分析したNi濃度が30ppb以下の黒鉛部品を使用して、例えば以下のように単結晶を製造する。
石英ルツボ5内に充填された多結晶原料をヒータ9で加熱して融液4とし、この融液4に種結晶13を浸漬させ、引き上げ軸14で引き上げながら種結晶13の下端に単結晶(インゴット)12を成長させる。この際、MCZ法の場合は、融液4に磁場を印加しながら、単結晶12を成長させることができる。
このときマルチプーリングを行う場合には、一本の単結晶12を引き上げた後、石英ルツボ5内に多結晶原料をリチャージして、同様に単結晶を製造することができる。このような単結晶の引き上げを繰り返すマルチプーリングは、一度しか使用できず再使用することができない石英ルツボから複数本の単結晶を製造し、製造歩留りを向上させると共に、石英ルツボのコストを低減できる。
以上のような本発明であれば、特に、低速成長でマルチプーリングを行う場合など、3本引き以上の長時間の単結晶製造を行う場合において、3本引き以降の単結晶についても、LT低下やLPD異常の発生がなく、結晶品質の良好な単結晶を製造することができる。
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1−3)
高感度分析方法で不純物濃度を分析して、Ni濃度が15ppb〜30ppb、Fe濃度が45ppb〜131ppb、Cr濃度が35ppb〜118ppbの黒鉛ルツボを使用した単結晶製造装置で、マルチプーリング(5本引き)による単結晶製造を実施した。
製造された単結晶についてLT、LPDの検査を行ったところ、3本引き以降の単結晶についてもLT値に低下は無く、また、LPDの異常も観察されなかった。表1,2にその結果を示す。
(比較例1−3)
高感度分析方法で不純物濃度を分析して、Ni濃度が38ppb〜48ppb、Fe濃度が18ppb〜125ppb、Cr濃度が15ppb〜133ppbの黒鉛ルツボを使用した単結晶製造装置で、マルチプーリング(5本引き)による単結晶製造を実施した。
製造された単結晶についてLT、LPDの検査を行ったところ、特に3本引き以降の単結晶について、LT値に低下が生じ、また、LPDの異常も観察された。表1,2にその結果を示す。
Figure 0005782996
Figure 0005782996
(実施例4−6)
高感度分析方法でNi濃度を分析して、Ni濃度が19ppb〜30ppbの黒鉛ルツボ、Ni濃度が23ppb〜29ppbのルツボ受皿、Ni濃度が22ppb〜28ppbのペディスタルを使用した単結晶製造装置で、マルチプーリング(5本引き)による単結晶製造を実施した。
製造された単結晶についてLT、LPDの検査を行ったところ、3本引き以降の単結晶についてもLT値に低下は無く、また、LPDの異常も観察されなかった。表3,4にその結果を示す。
Figure 0005782996
Figure 0005782996
表1,2から分かるように、LT低下、LPD異常は、黒鉛中のNi濃度に依存しており、30ppb以下のNi濃度でLT低下、LPD異常が抑制されている。黒鉛ルツボのNi濃度を30ppb以下とするのみでもLT低下、LPD異常は効果的に抑制されている。また、表3,4から分かるように、黒鉛ルツボ、ルツボ受皿、及びペディスタルの全てをNi濃度30ppb以下とすれば、LT低下、LPD異常はより抑制されている。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
1…単結晶製造装置、 2…メインチャンバー、 3…プルチャンバー、
4…融液、 5…石英ルツボ、 6…黒鉛ルツボ、 7…ルツボ受皿、
8…ペディスタル、 9…ヒータ、 10…断熱部材、 11…支持軸、
12…単結晶、 13…種結晶、 14…引き上げ軸。

Claims (5)

  1. CZ法による単結晶の製造方法において、単結晶を製造する炉内で使用する少なくとも一つの黒鉛部品のNi濃度を分析して、該分析において不純物の定量下限を5〜10ppbとして測定した場合に、該分析したNi濃度が30ppb以下の黒鉛部品を使用して前記単結晶を製造することを特徴とする単結晶の製造方法。
  2. 前記黒鉛部品を、石英ルツボに直接に接する黒鉛部品及び該直接に接する黒鉛部品を介して前記石英ルツボと間接的に接する黒鉛部品のうちの少なくとも一つとすることを特徴とする請求項1に記載の単結晶の製造方法。
  3. 前記黒鉛部品を、黒鉛ルツボとすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の単結晶の製造方法。
  4. 前記黒鉛部品を、さらにルツボ受皿及びペディスタルの少なくとも一つとすることを特徴とする請求項3に記載の単結晶の製造方法。
  5. 前記Ni濃度を分析する方法を、前記黒鉛部品の黒鉛材をプラズマ灰化し、酸溶解したものを分析する高感度分析方法とすることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の単結晶の製造方法。
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