以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
<I.第1の実施の形態>
<1.装置構成>
第1の実施の形態に係る基板処理装置1の構成について、図1、図2を参照しながら説明する。図1は、基板処理装置1の構成を模式的に示す側面図である。図2は、基板処理装置1の構成を模式的に示す平面図である。
基板処理装置1は、レジスト等の感光材料の層が形成された基板Wの上面に光を照射して、パターンを露光する装置(所謂、描画装置)である。なお、基板Wは、半導体基板、プリント基板、カラーフィルタ用基板、液晶表示装置やプラズマ表示装置に具備されるフラットパネルディスプレイ用ガラス基板、光ディスク用基板、太陽電池用パネルなどの各種基板のいずれであってもよい。図においては、円形の半導体基板が例示されている。
基板処理装置1は、本体フレーム101で構成される骨格の天井面および周囲面にカバーパネル(図示省略)が取り付けられることによって形成される本体内部と、本体フレーム101の外側である本体外部とに、各種の構成要素を配置した構成となっている。
基板処理装置1の本体内部は、処理領域102と受け渡し領域103とに区分されている。処理領域102には、主として、ステージ10、ステージ駆動機構20、計測部30、2個の光学ユニット40,40、および、撮像ユニット50が配置される。受け渡し領域103には、処理領域102に対する基板Wの搬出入を行う搬送装置60と、プリアライメント部70とが配置される。
基板処理装置1の本体外部には、撮像ユニット50に照明光を供給する照明ユニット501が配置される。また、基板処理装置1の本体外部であって、受け渡し領域103に隣接する位置には、カセットCを載置するためのカセット載置部104が配置される。カセット載置部104に対するカセットCの受け渡しは外部搬送装置(図示省略)によって行われる。
また、基板処理装置1には、基板処理装置1が備える各部と電気的に接続されて、これら各部の動作を制御する制御部90が配置される。
以下において、基板処理装置1が備える各部の構成について説明する。
<1−1.ステージ10>
ステージ10は、基板Wを水平姿勢に吸着保持する。ステージ10の構成について、図1、図2に加えて図3、図4を参照しながら説明する。図3は、ステージ10、押圧部80、および、これらが備える配管系統を、模式的に示す図である。図4は、保持面11を模式的に示す平面図である。なお、図4には、説明の便宜上、保持面11に後述する押圧面811が対向配置された状態において、押圧面811に配置されている各ベルヌーイチャック800と対向する位置が仮想線tで示されている。
ステージ10は、平板状の外形を有し、その上面に水平な保持面11が形成される。保持面11の平面度は、光学ユニット40における焦点深度に対して十分に小さい値(例えば約2μm以下)となるように形成される。また、保持面11は、少なくとも基板Wの露光領域をカバーするサイズに形成される。ただし、この実施形態においては、基板Wは円形状であるとし、保持面11も平面視円形状に形成される。
保持面11には、真空吸引口12が形成される。真空吸引口12は、保持面11に開口し、真空吸引により基板Wを保持面11に吸引する。真空吸引口12は、配管121を介して、気体を吸引する気体吸引部(例えば真空ポンプ)122と接続されている。また、配管121の途中には開閉弁(例えば電磁弁)123が介挿されている。開閉弁123は、制御部90と電気的に接続されており、制御部90からの指示に応じて開閉制御される。気体吸引部122が稼働されるとともに開閉弁123が開放されると、配管121を介して真空吸引口12に負圧(吸引圧)が形成される。また、配管121の途中には圧力計124が介挿されている。圧力計124は、制御部90と電気的に接続されており、圧力計124の計測値(すなわち、保持面11上の圧力値)は、制御部90に入力可能に構成されている。
保持面11には、その外縁に沿って土手部13が立設される。また、土手部13に包囲された保持面11の面内領域にはその全域にわたって複数の突起部14が満遍なく立設される。ただし、図4においては、突起部14の図示を省略している。
土手部13の頂部と各突起部14の頂部とはすべて面一に形成されており、これら各頂部が配置される平面の平面度も、光学ユニット40における焦点深度に対して十分に小さい値(例えば2μm程度)となるように形成される。保持面11に平坦な基板Wが載置されると、当該基板Wの裏面が土手部13の頂部全域、および、全ての突起部14の頂部と当接し、土手部13とこれに包囲された保持面11内の領域と基板Wの裏面との間に密閉空間が形成される。この状態で、保持面11に開口された真空吸引口12に負圧が形成されると、当該密閉空間が減圧され、基板W(具体的には、少なくとも基板Wにおける露光領域を含む部分)は、その裏面が保持面11から土手部13の高さ分だけ離間した位置において、平坦状態で保持面11に吸着保持されることになる。
保持面11には、複数個の距離センサ15,15,・・,15が配置される。各距離センサ15は、保持面11上の各位置に配置され、当該配置位置において、保持面11とこれに対向配置された対象面(例えば、基板Wの裏面)との離間距離(保持面11の法線方向に沿う離間距離)を検出する。複数の距離センサ15のうちの1個の距離センサ15(15A)は、保持面11に後述する押圧面811が対向配置された状態において、押圧面811に配置されているベルヌーイチャック800と対向する位置に配置される。また、残りの各距離センサ15(15B)は、保持面11に押圧面811が対向配置された状態において、押圧面811に配置されているベルヌーイチャック800の隙間の位置と対向する位置に配置される。各距離センサ15は、制御部90と電気的に接続されており、各距離センサ15の計測値(すなわち、保持面11上の各位置における対象面との離間距離)は、制御部90に入力可能に構成されている。
<1−2.ステージ駆動機構20>
再び図1、図2を参照する。ステージ駆動機構20は、ステージ10を基台105に対して移動させる機構であり、ステージ10を主走査方向(Y軸方向)、副走査方向(X軸方向)、および回転方向(Z軸周りの回転方向(θ軸方向))に移動させる。ステージ駆動機構20は、具体的には、ステージ10を回転させる回転機構21(図1)を備える。ステージ駆動機構20は、さらに、回転機構21を介してステージ10を支持する支持プレート22と、支持プレート22を副走査方向に移動させる副走査機構23とを備える。ステージ駆動機構20は、さらに、副走査機構23を介して支持プレート22を支持するベースプレート24と、ベースプレート24を主走査方向に移動させる主走査機構25とを備える。
回転機構21は、図1に示すように、ステージ10の上面(保持面11)の中心を通り、保持面11に垂直な回転軸Aを中心としてステージ10を回転させる。回転機構21は、例えば、上端が保持面11の裏面側に固着され、鉛直軸に沿って延在する回転軸部211と、回転軸部211の下端に設けられ、回転軸部211を回転させる駆動部(例えば、回転モータ)212とを含む構成とすることができる。この構成においては、駆動部212が回転軸部211を回転させることにより、ステージ10が水平面内で回転軸Aを中心として回転することになる。
副走査機構23は、支持プレート22の下面に取り付けられた移動子とベースプレート24の上面に敷設された固定子とにより構成されたリニアモータ231とを有している。また、ベースプレート24には、副走査方向に延びる一対のガイド部材232が敷設されており、各ガイド部材232と支持プレート22との間には、ガイド部材232に摺動しながら当該ガイド部材232に沿って移動可能なボールベアリング233が設置されている。つまり、支持プレート22は、当該ボールベアリング233を介して一対のガイド部材232上に支持される。この構成においてリニアモータ231を動作させると、支持プレート22はガイド部材232に案内された状態で副走査方向に沿って滑らかに移動する。
主走査機構25は、ベースプレート24の下面に取り付けられた移動子と基板処理装置1の基台105上に敷設された固定子とにより構成されたリニアモータ251を有している。また、基台105には、主走査方向に延びる一対のガイド部材252が敷設されており、各ガイド部材252とベースプレート24との間にはエアベアリング253が設置されている。エアベアリングにはユーティリティ設備から常時エアが供給されており、ベースプレート24は、エアベアリングによってガイド部材252上に非接触で浮上支持される。この構成においてリニアモータ251を動作させると、ベースプレート24はガイド部材252に案内された状態で主走査方向に沿って摩擦なしで滑らかに移動する。
<1−3.計測部30>
計測部30は、ステージ10の位置を計測する機構であり、ステージ10外からステージ10に向けてレーザ光を出射するとともにその反射光を受光し、当該反射光と出射光との干渉からステージ10の位置(具体的には、主走査方向に沿うY位置、および、回転方向に沿うθ位置)を計測する、干渉式のレーザ測長器により構成される。
計測部30は、例えば、ステージ10の−Y側の側面に取り付けられるとともに、−Y側の面に主走査方向に垂直な反射面を備えるプレーンミラー31と、ステージの−Y側において基台105に対して固定される各部(具体的には、レーザ光源32、スプリッタ33、第1リニア干渉計34、第1レシーバ35、第2リニア干渉計36および第2レシーバ37)とを備える構成とすることができる。
この計測部30においては、レーザ光源32から出射されたレーザ光は、スプリッタ33により2分割され、一方の一部が第1リニア干渉計34を介してプレーンミラー31上の第1の部位に入射し、プレーンミラー31からの反射光が、第1リニア干渉計34において元のレーザ光の一部(これが参照光として利用される)と干渉して第1レシーバ35により受光される。第1レシーバ35における、反射光と参照光との干渉後の強度変化に基づいて、第1リニア干渉計34とプレーンミラー31との主走査方向における距離が特定される。この第1レシーバ35からの出力に基づいて、専門の演算回路(図示省略)にてステージ10の主走査方向における位置が求められる。
一方、レーザ光源32から出射されてスプリッタ33により分割された他方のレーザ光の一部は、取付台38の内部を+X側から−X側へと通過し、第2リニア干渉計36を介してプレーンミラー31に入射する。ここで、第2リニア干渉計36からのレーザ光は、プレーンミラー31上の第1の部位から副走査方向に一定距離だけ離間したプレーンミラー31上の第2の部位に入射することになる。プレーンミラー31からの反射光は、第2リニア干渉計36において元のレーザ光の一部と干渉して第2レシーバ37により受光される。第2レシーバ37における、反射光と参照光との干渉後の強度変化に基づいて、第2リニア干渉計36とプレーンミラー31との主走査方向における距離が特定される。第2レシーバ37からの出力と上述した第1レシーバ35からの出力に基づいて、専門の演算回路(図示省略)にてステージ10の回転角度が求められる。
<1−4.光学ユニット40>
光学ユニット40は、ステージ10上に保持された基板Wの上面に光を照射して露光するための機構である。上述したとおり、基板処理装置1は2個の光学ユニット40,40を備える。一方の光学ユニット40は、例えば、基板Wの+X側半分の露光を担当し、他方の光学ユニット40は、例えば、基板Wの−X側半分の露光を担当する。これら2個の光学ユニット40,40は、ステージ10およびステージ駆動機構20を跨ぐようにして基台105上に架設されたフレーム107に、間隔をあけて固設される。なお、2個の光学ユニット40,40の間隔は必ずしも一定に固定されている必要はなく、光学ユニット40,40の一方あるいは両方の位置を変更可能とする機構を設けて、両者の間隔を調整可能としてもよい。
2個の光学ユニット40,40はいずれも同じ構成を備える。すなわち、各光学ユニット40は、天板を形成するボックスの内部に配置されたレーザ駆動部41、レーザ発振器42および照明光学系43と、フレーム107の+Y側に取り付けられた付設ボックスの内部に収容されたヘッド部400とを備える。ヘッド部400は、空間光変調部44と投影光学系45とを主として備える。
レーザ発振器42は、レーザ駆動部41からの駆動を受けて、出力ミラー(図示省略)からレーザ光を出射する。照明光学系43は、レーザ発振器42から出射された光(スポットビーム)を、強度分布が均一な線状の光(光束断面が線状の光であるラインビーム)とする。レーザ発振器42から出射され、照明光学系43にてラインビームとされた光は、ヘッド部400に入射し、パターンデータD(図9参照)に応じた空間変調を施された上で基板Wに照射される。
ヘッド部400に入射した光は、具体的には、ミラー46を介して、定められた角度で空間光変調部44に入射する。空間光変調部44は、当該入射光を空間変調して、パターンの描画に寄与させる必要光と、パターンの描画に寄与させない不要光とを、互いに異なる方向に反射させる。ただし、光を空間変調させるとは、具体的には、光の空間分布(振幅、位相、および偏光等)を変化させることを意味する。
空間光変調部44は、具体的には、電気的な制御によって入射光を空間変調させる空間光変調器441を備える。空間光変調器441は、その反射面の法線が、ミラー46を介して入射する入射光の光軸に対して傾斜して配置され、当該入射光を制御部90の制御に基づいて空間変調させる。空間光変調器441は、例えば、回折格子型の空間変調器(例えば、GLV(Grating Light Valve:グレーチング・ライト・開閉弁)(シリコン・ライト・マシーンズ(サンノゼ、カリフォルニア)の登録商標)等を利用して構成される。回折格子型の空間変調器は、格子の深さを変更することができる回折格子であり、例えば、半導体装置製造技術を用いて製造される。
空間光変調器441は、複数の空間光変調素子を一次元に並べた構成となっている。各空間光変調素子の動作は、電圧のオン/オフで制御される。すなわち、例えば電圧がオフされている状態においては空間光変調素子の表面は平面となっており、この状態で空間光変調素子に光が入射すると、その入射光は回折せずに正反射する。これにより、正反射光(0次回折光)が発生する。一方、例えば電圧がオンされている状態においては、空間光変調素子の表面には平行な溝が周期的に並んで複数本形成される。この状態で空間光変調素子に光が入射すると、正反射光(0次回折光)は打ち消しあって消滅し、他の次数の回折光(±1次回折光、±2次回折光、および、さらに高次の回折光)が発生する。より正確には、0次回折光の強度が最小となり、他の次数の回折光の強度が最大となる。空間光変調器441は、複数の空間光変調素子のそれぞれに対して独立に電圧を印加可能なドライバ回路ユニットを備えており、各空間光変調素子の電圧が独立して切り換え可能となっている。
投影光学系45は、空間光変調器441にて空間変調された光のうち、パターンの描画に寄与させるべきでない不要光を遮断するとともにパターンの描画に寄与させるべき必要光のみを基板Wの表面に導いて、当該表面に結像させる。ただし、空間光変調器441にて空間変調された光には、0次回折光と、0次以外の次数の回折光(具体的には、±1次回折光、±2次回折光、および、比較的微量の±3次以上の高次回折光)とが含まれており、0次回折光はパターンの描画に寄与させるべき必要光であり、それ以外の回折光はパターンの描画に寄与させるべきでない不要光である。これら必要光と不要光とは互いに異なる方向に沿って出射される。すなわち、必要光はZ軸に沿って−Z方向に、不要光はZ軸から±X方向に僅かに傾斜した軸に沿って−Z方向に、それぞれ出射される。投影光学系45は、例えば、遮断板によって、Z軸から±X方向に僅かに傾斜した軸に沿って進行する不要光を遮断するとともに、Z軸に沿って進行する必要光のみを通過させる。投影光学系45は、この遮断板の他に、入射光の幅を広げる(あるいは狭める)ズーム部を構成する複数のレンズ、入射光を定められた倍率として基板W上に結像させる対物レンズ、等をさらに含む構成とすることができる。
上記の構成を備える光学ユニット40に描画動作を実行させる場合、制御部90は、レーザ駆動部41を駆動してレーザ発振器42から光を出射させる。出射された光は照明光学系43にてラインビームとされ、ミラー46を介して空間光変調部44の空間光変調器441に入射する。空間光変調器441においては、複数の空間光変調素子が、副走査方向(X軸方向)に沿って並んで配置されており、入射光はその線状の光束断面を空間光変調素子の配列方向に沿わせるようにして、一列に配列された複数の空間光変調素子に入射する。制御部90は、パターンデータDに基づいてドライバ回路ユニットに指示を与え、ドライバ回路ユニットが指示された空間光変調素子に対して電圧を印加する。これによって、各空間光変調素子にて個々に空間変調された光が形成され、基板Wに向けて出射されることになる。空間光変調器441が備える空間光変調素子の個数を「N個」とすると、空間光変調器441からは、副走査方向に沿うN画素分の空間変調された光が出射されることになる。空間光変調器441にて空間変調された光は、投影光学系45に入射し、ここで、不要光が遮断されるとともに必要光のみが基板Wの表面に導かれ、定められた倍率とされて基板Wの表面に結像される。
後に明らかになるように、光学ユニット40は、このように副走査方向に沿うN画素分の空間変調された光を断続的に照射し続けながら(すなわち、基板Wの表面にパルス光を繰り返して投影し続けながら)、主走査方向(Y軸方向)に沿って基板Wに対して相対的に移動される。したがって、光学ユニット40が主走査方向に沿って基板Wを1回横断すると、基板Wの表面に、副走査方向に沿ってN画素分の幅をもつ一本のパターン群が描画されることになる。この、N画素分の幅をもつ1本のパターン描画領域を、以下の説明では「1ストライプ分の領域」ともいう。
なお、ヘッド部400には、空間光変調部44と投影光学系45との間に、空間光変調部44で変調された光の経路を副走査方向に沿って僅かにシフトさせる光路補正部をさらに設けてもよい。この場合、必要に応じて光路補正部に光の経路をシフトさせることによって、基板Wに照射される光の位置を副走査方向に沿って微調整することが可能となる。光路補正部は、例えば、2個のウェッジプリズム(非平行な光学面を備えることにより入射光の光路を変更できるプリズム)と、一方のウェッジプリズムを、他方のウェッジプリズムに対して、入射光の光軸の方向(Z軸方向)に沿って直線的に移動させるウェッジプリズム移動機構とから実現することができる。この構成においては、ウェッジプリズム移動機構を駆動制御して、2個のウェッジプリズム間の離間距離を調整することによって、必要な量だけ入射光をシフトさせることができる。
<1−5.撮像ユニット50>
撮像ユニット50は、基板Wの上面に形成されたアライメントマークを撮像する。撮像ユニット50は、鏡筒、対物レンズ、および、例えばエリアイメージセンサ(二次元イメージセンサ)により構成されるCCDイメージセンサ(いずれも図示省略)を備える。また、撮像ユニット50は、照明ユニット501から延びるファイバ502と接続される。照明ユニット501から出射される光はファイバ502によって鏡筒に導かれ、鏡筒を介して基板Wの上面に導かれる。そして、その反射光が、対物レンズを介してCCDイメージセンサで受光される。これによって、基板Wの上面の撮像データが取得されることになる。CCDイメージセンサは、制御部90からの指示に応じて撮像データを取得するとともに、取得した撮像データを制御部90に送信する。なお、撮像ユニット50はオートフォーカス可能なオートフォーカスユニットをさらに備えていてもよい。
<1−6.搬送装置60>
搬送装置60は、基板Wを支持するための2本のハンド61,61と、ハンド61,61を独立に移動させるハンド駆動機構62とを備える。各ハンド61は、ハンド駆動機構62によって駆動されることにより進退移動および昇降移動されて、プリアライメント部70の載置台71に対する基板Wの受け渡しを行う。
<1−7.プリアライメント部70>
プリアライメント部70は、基板Wの回転位置を粗く補正する装置である。プリアライメント部70は、例えば、回転可能に構成された載置台71と、載置台71に載置された基板Wの外周縁の一部に形成された切り欠き部(例えば、ノッチ、オリエンテーションフラット等)の位置を検出するセンサ(図示省略)と、載置台71を回転させる回転機構(図示省略)とから構成することができる。この場合、プリアライメント部70におけるプリアライメント処理は、まず、載置台71に載置された基板Wの切り欠き部の位置をセンサで検出し、続いて、回転機構が、当該切り欠き部の位置が定められた位置となるように(例えば、切り欠きの方向がステージ10の移動方向(例えば、X方向))と平行になるように)載置台71を回転させることによって行われる。
<1−8.押圧部80>
押圧部80は、基板Wを平坦化するための部材である。押圧部80の構成について、図1〜図3に加えて図5を参照しながら説明する。図5は、押圧面811を模式的に示す平面図である。
押圧部80は、押圧板81と、押圧板81を基台105に対して移動させる押圧板駆動機構82とを備える。
押圧板81は、平板状の外形を有し、その下面に平坦な押圧面811が形成される。押圧面811は、水平面内に配置される。また、押圧面811は、ステージ10の保持面11と略同一の形状および略同一のサイズに形成される。上述したとおり、ここでは、保持面11が平面視円形状に形成されているので、押圧面811も平面視円形状に形成される。
押圧面811には、距離センサ812が配置される。距離センサ812は、押圧面811とこれに対向配置された対象面(例えば、基板Wの表面)との離間距離(押圧面811の法線方向に沿う離間距離)を検出する。距離センサ812は、制御部90と電気的に接続されており、距離センサ812の計測値(すなわち、押圧面811と対象面との離間距離)は、制御部90に入力可能に構成されている。
押圧面811には、複数(図示の例では、9個)のベルヌーイチャック800,800,・・,800が配置される。複数のベルヌーイチャック800,800,・・,800は、保持面11の全域に満遍なく配置されることが好ましい。この実施の形態においては、複数のベルヌーイチャック800,800,・・,800のうちの1個のベルヌーイチャック800は、押圧面811の中心(幾何学中心)に配置される。また、残りのベルヌーイチャック800,800,・・,800は、押圧面811の中心と同心の仮想円q1,q2の各円周上に、当該円周に沿って等間隔で、配列される。また、仮想円q1の円周上に配置される各ベルヌーイチャック800と、仮想円q2の円周上に配置される各ベルヌーイチャック800とは、円周方向に沿って互い違いになるように配列される。
各ベルヌーイチャック800は同様の構成を備えている。ここで、ベルヌーイチャック800について、図3,図5に加えて、図6〜図8を参照しながら説明する。図6〜図8の各図は、押圧板81をベルヌーイチャック800の形成位置で切断した部分断面図である。
ベルヌーイチャック800は、押圧面811に形成された円柱状の凹空間(円柱状凹空間)801と、円柱状凹空間801の内周壁に沿って開口する一対の噴出ノズル802,802を備える。各噴出ノズル802は、配管803を介して、圧縮空気等の気体を供給する気体供給部(例えばコンプレッサ)804と接続されている。また、配管804の途中には開閉弁(例えば電磁弁)805とフィルタ(図示省略)が介挿されている。開閉弁805は、制御部90と電気的に接続されており、制御部90からの指示に応じて開閉制御される。
開閉弁805が開放されると、配管803を介して各噴出ノズル802から圧縮気体が噴出される。一対の噴出ノズル802,802から円柱状凹空間801の内周壁に沿って噴出された気体は、円柱状凹空間801の内周壁に沿うように流れ、強い旋回流となって円柱状凹空間801の開放端から流出する。このとき、旋回流の中心部(すなわち、円柱状凹空間801の中心部)付近A1にはベルヌーイの定理に従って負圧(吸引圧)が生じる。ただし、円柱状凹空間801から溢れ出た気体は、押圧面811に沿って流れ出るため、押圧面811の付近であって、円柱状凹空間801の中心部付近A1を除く領域A2は、大気圧よりも高圧の状態となる。
押圧面811に配置された各ベルヌーイチャック800の一対の噴出ノズル802,802から気体が噴出された状態で、押圧面811を対象物(ここでは、基板W)に近づけていくと、対象物におけるベルヌーイチャック800と対向する対象面(ここでは、基板Wの表面)は、ベルヌーイの原理に従って形成されている負圧によって、押圧面811に引きつけられる(図6に示される状態)。上述したとおり、押圧面811の付近は、大気圧よりも高圧の状態となっているため、基板Wの表面が押圧面811に接触する前(具体的には、押圧面811と基板Wの表面との離間距離がある距離(基準距離)d0となった時点で)、基板Wを押圧面811に引きつける力と基板Wを押圧面811から遠ざける力とが釣り合って、基板Wが押圧面811に非接触状態で吸着保持された状態となる(図7に示される状態)。基板Wが押圧面811に非接触状態で吸着保持された状態(押圧面811と基板Wの表面との離間距離が基準距離d0の状態)から、さらに基板Wと押圧面811とを近づけると、基板Wを押圧面811から遠ざける力が相対的に大きくなり、基板Wには、これを押圧面811から遠ざける方向に押す力が付加される(図8に示される状態)。
再び図1〜図3を参照する。押圧板駆動機構82は、押圧板81を基台105に対して移動させる機構であり、昇降駆動機構821と水平駆動機構822とを備える。
昇降駆動機構821は、押圧板81を鉛直軸(Z軸)に沿って移動させる。昇降駆動機構821は、具体的には、例えば、押圧板81の上側に固定された支持アーム8211と、支持アーム8211を昇降移動させる駆動部(例えば、エアシリンダ、あるいは、モータ等)8212とを含む構成することができる。この構成において駆動部8212を動作させると、押圧板81が、鉛直方向に沿って滑らかに昇降移動する。
水平駆動機構822は、押圧板81を水平面内に沿って移動させる。具体的には、押圧板81を、プリアライメント部70の載置台71の上方位置と、ステージ10の保持面11の上方位置との間で、水平面内に沿って移動させる。水平駆動機構822は、例えば、水平面内において、載置台71の上方位置から保持面11の上方位置まで延在して設けられるガイド部8221と、ガイド部8221に沿って、昇降駆動機構821および押圧板81を移動させる駆動部(例えば、モータ等)8222とを含む構成とすることができる。この構成において駆動部8222を動作させると、昇降駆動機構821を介して支持された押圧板81が、ガイド部8221に案内された状態でガイド部8221の延在方向に沿って滑らかに往復移動する。
<1−9.制御部90>
制御部90は、基板処理装置1が備える各部と電気的に接続されており、各種の演算処理を実行しつつ基板処理装置1の各部の動作を制御する。
図9は、制御部90のハードウエア構成を示すブロック図である。制御部90は、例えば、CPU91、ROM92、RAM93、外部記憶装置94等がバスライン95を介して相互接続された一般的なコンピュータによって構成されている。ROM92は基本プログラム等を格納しており、RAM93はCPU91が所定の処理を行う際の作業領域として供される。外部記憶装置94は、フラッシュメモリ、あるいは、ハードディスク装置等の不揮発性の記憶装置によって構成されている。外部記憶装置94にはプログラムPが格納されており、このプログラムPに記述された手順に従って、主制御部としてのCPU91が演算処理を行うことにより、各種機能が実現されるように構成されている。プログラムPは、通常、予め外部記憶装置94等のメモリに格納されて使用されるものであるが、CD−ROMあるいはDVD−ROM、外部のフラッシュメモリ等の記録媒体に記録された形態(プログラムプロダクト)で提供され(あるいは、ネットワークを介した外部サーバからのダウンロードなどにより提供され)、追加的または交換的に外部記憶装置94等のメモリに格納されるものであってもよい。なお、制御部90において実現される一部あるいは全部の機能は、専用の論理回路等でハードウエア的に実現されてもよい。
また、制御部90では、入力部96、表示部97、通信部98もバスライン95に接続されている。入力部96は、各種スイッチ、タッチパネル等により構成されており、オペレータから各種の入力設定指示を受け付ける。表示部97は、液晶表示装置、ランプ等により構成されており、CPU91による制御の下、各種の情報を表示する。通信部98は、LAN等を介したデータ通信機能を有する。
外部記憶装置94には、基板Wに露光すべきパターンを記述したデータ(パターンデータ)Dが格納される。パターンデータDは、例えば、CADを用いて生成されたCADデータをラスタライズしたデータであり、回路パターンなどを表現している。制御部90は、基板Wに対する一連の処理に先立ってパターンデータDを取得して外部記憶装置94に格納している。なお、パターンデータDの取得は、例えばネットワーク等を介して接続された外部端末装置から受信することにより行われてもよいし、記録媒体から読み取ることにより行われてもよい。
<2.基板Wに対する処理の流れ>
<2−1.全体の流れ>
次に、基板処理装置1において実行される基板Wに対する一連の処理の流れについて、図10を参照しながら説明する。図10は、当該処理の流れを示す図である。以下に説明する一連の動作は、制御部90の制御下で行われる。
まず、搬送装置60が、カセット載置部104に載置されたカセットCから未処理基板Wを取り出して基板処理装置1に搬入し、プリアライメント部70の載置台71に載置する(ステップS1)。
続いて、プリアライメント部70にて、基板Wに対するプリアライメント処理が行われる(ステップS2)。プリアライメント処理は、上述したとおり、例えば、載置台71に載置された基板Wの切り欠き部の位置をセンサで検出し、当該切り欠き部の位置が定められた位置となるように載置台71を回転させることによって行われる。これによって、載置台71に載置された基板Wが定められた回転位置におおまかに位置合わせされた状態におかれることになる。
続いて、プリアライメント処理済みの基板Wがプリアライメント部70から搬出されて、ステージ10の保持面11に移載され、保持面11において吸着保持された状態とされる(ステップS3)。この処理については、後に具体的に説明する。
基板Wが保持面11に吸着保持された状態となると、続いて、当該基板Wが適正な回転位置にくるように精密に位置合わせする処理(ファインアライメント)が行われる(ステップS4)。具体的には、まず、ステージ駆動機構20が、ステージ10を撮像ユニット50の下方位置まで移動させる。ステージ10が撮像ユニット50の下方に配置されると、続いて、撮像ユニット50が、保持面11に保持されている基板W上のアライメントマークを撮像して、当該撮像データを取得する。続いて、制御部90が、撮像ユニット50により取得された撮像データを画像解析してアライメントマークの位置を検出し、その検出位置に基づいて基板Wの回転位置の適正位置からのずれ量を算出する。ずれ量が算出されると、回転機構21が、当該算出されたずれ量だけステージ10を回転させる。これによって、基板Wが適正な回転位置にくるように位置合わせされる。
保持面11に保持されている基板Wが適切な回転位置におかれると、続いて、パターンの描画処理が行われる(ステップS5)。描画処理について、図11を参照しながら説明する。図11は、描画処理を説明するための図である。
描画処理は、ステージ駆動機構20がステージ10に載置された基板Wを光学ユニット40,40に対して相対的に移動させつつ、光学ユニット40,40のそれぞれから基板Wの上面に空間変調された光を照射させることによって行われる。
具体的には、ステージ駆動機構20は、まず、撮像ユニット50の下方位置に配置されているステージ10を主走査方向(Y軸方向)に沿って+Y方向に移動させることによって、基板Wを光学ユニット40,40に対して主走査方向に沿って相対的に移動させる(主走査)。これを基板Wからみると、各光学ユニット40は基板W上を主走査方向に沿って−Y方向に横断することになる(矢印AR11)。主走査が行われる間、各光学ユニット40は、パターンデータDに応じた空間変調が形成された光(具体的には、副走査方向に沿うN画素分の空間変調された光)を、基板Wに向けて断続的に照射し続ける(すなわち、基板Wの表面にパルス光が繰り返して投影され続ける)。つまり、各光学ユニット40は、副走査方向に沿うN画素分の空間変調された光を断続的に照射し続けながら基板W上を主走査方向に沿って横断する。したがって、光学ユニット40が主走査方向に沿って基板Wを1回横断すると、基板Wの表面に、副走査方向に沿ってN画素分の幅をもつ一本のパターン群が描画されることになる。ここでは、2個の光学ユニット40が同時に基板Wを横断するので、一回の主走査により2本のパターン群が描画されることになる。
1回の主走査が終了すると、ステージ駆動機構20は、ステージ10を副走査方向(X軸方向)に沿って+X方向に、1ストライプの幅に相当する距離だけ移動させることによって、基板Wを光学ユニット40,40に対して副査方向に沿って相対的に移動させる(副走査)。これを基板Wからみると、各光学ユニット40は副走査方向に沿って−X方向に、1ストライプの幅分だけ移動することになる(矢印AR12)。
副走査が終了すると、再び主走査が行われる。すなわち、ステージ駆動機構20は、ステージ10を主走査方向に沿って−Y方向に移動させることによって、基板Wを光学ユニット40,40に対して主走査方向に沿って相対的に移動させる。これを基板Wからみると、各光学ユニット40は、基板W上における、先の主走査で描画された1ストライプ分の描画領域の隣を、主走査方向に沿って+Y方向に移動して横断することになる(矢印AR13)。ここでも、各光学ユニット40は、パターンデータDに応じた空間変調が形成された光を、基板Wに向けて断続的に照射し続けながら基板W上を主走査方向に沿って横断する。これによって、先の主走査で描画された1ストライプ分の描画領域の隣に、さらに1ストライプ分の領域の描画が行われることになる。以後、同様に、主走査と副走査とが繰り返して行われ、基板Wの表面の全域にパターンが描画されると描画処理が終了する。
再び図10を参照する。描画処理が終了すると、続いて、描画処理済みの基板Wが保持面11から取り上げられてプリアライメント部70の載置台71に移載される(ステップS6)。ステップS6の処理については、後に説明する。
描画処理済みの基板Wが載置台71に載置されると、搬送装置60が、載置台71に載置された基板Wを搬出する(ステップS7)。具体的には、当該基板Wを受け取って、これをカセット載置部104に載置されたカセットCに収容する。
<2−2.ステップS3の処理>
プリアライメント処理済みの基板Wがプリアライメント部70から搬出されて、ステージ10の保持面11に移載され、保持面11において吸着保持された状態とされる処理(ステップS3の処理)について、図12〜図17を参照しながら説明する。図12は、当該処理の流れを示す図である。図13は、押圧板81を下降させる処理の流れを示す図である。図14〜図17のそれぞれは、ステップS3の処理の各段階における押圧板81およびステージ10の位置関係を説明するための図である。
まず、制御部90は、押圧部80に、プリアライメント部70の載置台71に載置された基板Wを保持させる(ステップS11)。具体的には、制御部90は、押圧板駆動機構82を制御して、押圧板81を、押圧面811がプリアライメント部70の載置台71に載置された基板Wの表面(パターンの形成面)に対向配置され、かつ、押圧面811と基板Wの表面との離間距離が基準距離d0となるような位置(保持位置)に移動させる。ここでは、例えば、押圧板81の待機位置が、プリアライメント部70の載置台71の真上の位置とされており(図1の一点鎖線)、制御部90は、昇降駆動機構821を制御して、待機位置に配置されている押圧板81を下降させて、押圧面811と基板Wの表面との離間距離が基準距離d0となるような位置まで移動させることによって、押圧板81を保持位置に移動させる。押圧板81が保持位置に配置されると、制御部90は、開閉弁805を開放する。すると、各ベルヌーイチャック800の各噴出ノズル802から圧縮気体が噴出され、押圧面811に配置された各ベルヌーイチャック800に、ベルヌーイの原理に従って負圧が形成される。その結果、押圧面811から基準距離d0だけ離間した位置にある基板Wの表面が、押圧面811に非接触状態で吸着保持される。
続いて、制御部90は、昇降駆動機構821を制御して、プリアライメント部70の載置台71上にある押圧板81を上昇させ、さらに、水平駆動機構822を制御して、押圧板81を、ステージ10の上方まで移動させる(ステップS12)。すると、押圧面811、および、押圧面811に非接触状態で吸着保持されている基板Wの裏面が、保持面11に対向配置された状態となる(図14の実線で示される状態)。
押圧板81がステージ10の上方まで移動されると、続いて、制御部90は、昇降駆動機構821を制御して、ステージ10の上方に配置されている押圧板81を下降させて、押圧板81を、押圧面811に非接触状態で吸着保持されている基板Wの裏面と保持面11との離間距離が定められた停止距離h0となるような位置に移動させる(図15に示される状態)(ステップS13)。
ステップS13の処理について、図13を参照しながら具体的に説明する。
まず、制御部90は、昇降駆動機構821を制御して、押圧板81を、定められた速度(第1下降速度V1)で下降開始させる(ステップS131)。押圧板81の下降が開始されると、制御部90は、保持面11に配置された複数の距離センサ15,15,・・・,15それぞれの出力の監視も開始する。
複数の距離センサ15,15,・・・,15のうちの少なくとも一つの距離センサ15によって、保持面11と基板Wの裏面との離間距離が、停止距離h0よりも僅かに大きい停止準備距離h1となったことが検出されると(図14の破線で示される状態)(ステップS132でYES)、制御部90は、昇降駆動機構821を制御して、押圧板81を下降させる速度を、第1下降速度V1から、これより小さい(遅い)第2下降速度V2に切り換えさせる(ステップS133)。つまり、押圧板81の下降速度を、押圧板81が停止距離h0に到達する少し前の時点で、相対的に大きい速度から相対的に小さい速度に切り換える。
その後、複数の距離センサ15,15,・・・,15のうちの少なくとも一つの距離センサ15によって、保持面11と基板Wの裏面との離間距離が停止距離h0となったことが検出されると(ステップS134でYES)、制御部90は、昇降駆動機構821を制御して、押圧板81の下降を停止させる(図15に示される状態)(ステップS135)。停止距離h0は、例えば、基板Wが保持面11上に適切に吸着保持された状態における、基板Wの裏面と保持面11との離間距離に、必要に応じて所定のギャップ(例えば、1μm〜10μm程度のギャップ)を加えた距離とされる。
再び図12を参照する。押圧板81が、押圧面811が保持面11に対向配置され、かつ、押圧面811に非接触状態で吸着保持されている基板Wの裏面と保持面11との離間距離が停止距離h0となるような位置に移動されると、続いて、制御部90は、開閉弁123を開放する。すると、真空吸引口12に負圧(吸引圧)が形成される(ステップS14)。
さらに、制御部90は、開閉弁805を閉鎖する。すると、各ベルヌーイチャック800の各噴出ノズル802からの圧縮気体の噴出が停止され、各ベルヌーイチャック800による吸着保持力が消滅する(ステップS15)。
基板Wが平坦な形状である場合、真空吸引口12に吸引圧が形成されるとともに、各ベルヌーイチャック800による保持力が消滅すると、基板Wは保持面11に向けて吸い付けられて、土手部13の頂部全域、および、全ての突起部14の頂部のそれぞれと基板Wの裏面とが当接し、土手部13と、これに包囲されている保持面11と、基板Wの裏面との間に密閉空間が形成された状態となる。この状態で、真空吸引口12に負圧が形成され続けることによって、当該密閉空間の圧力が低下し、基板Wは、その裏面が保持面11から土手部13の高さ分だけ離間した位置において、平坦状態で保持面11に吸着保持された状態となる。保持面11上の吸引圧が所定値より低圧側(真空圧側)となったことが圧力計124の出力情報から確認されると(すなわち、圧力計124の検知圧力が所定値(例えば−60kPa)より小さくなると)、制御部90は、基板Wは適切に吸着保持されたと判断する(ステップS16でYES)。この場合、制御部90は、昇降駆動機構821を制御して押圧板81を上昇させて、押圧板81をステージ10上方の待避位置まで移動させる(ステップS17)。これによって、ステップS3の処理が終了する。
一方、基板Wが平坦な形状ではない場合、真空吸引口12に吸引圧が形成されるとともに、各ベルヌーイチャック800による保持力が消滅すると、基板Wは保持面11に向けて多少は吸い付けられるが、基板Wの裏面と土手部13の頂部の少なくとも一部との間に隙間が生じた状態となる。この状態で、真空吸引口12に負圧が形成され続けても、当該隙間から負圧が逃げてしまい、保持面11上の圧力はなかなか低下しない。真空吸引口12からの吸引を開始してから一定の時間が経過しても、保持面11上の吸引圧が所定値より低圧側となったことが圧力計124の出力情報から確認されない場合(すなわち、圧力計124の検知圧力が所定値(例えば−60kPa)以上の場合)、制御部90は、基板Wは保持面11に適切に吸着保持されていない(吸着不良)と判断する(ステップS16でNO)。この場合、続いて、押圧部80が基板Wを平坦化するための一連の処理が行われる(ステップS18〜ステップS20)。
すなわち、まず、制御部90は、開閉弁805を開放する。すると、各ベルヌーイチャック800の各噴出ノズル802から圧縮気体が再び噴出される(ステップS18)。
さらに、制御部90は、押圧面811と基板Wの表面との離間距離を押圧面811に配置された距離センサ812で監視しつつ、昇降駆動機構821を制御して、押圧板81を、微小量(例えば、1mm以下)だけ下降させて、押圧面811と基板Wの裏面との離間距離を、基準距離d0よりも僅かに小さい接近距離d1とする(図16に示される状態)(ステップS19)。ただし、この際の下降速度は、比較的低速な第2下降速度V2とされることが好ましい。
上述したとおり、各ベルヌーイチャック800の各噴出ノズル802から圧縮気体が噴出されている状態において、押圧面811の付近は、各ベルヌーイチャック800から噴出されて押圧面811に沿って流れ出る気体によって、大気圧よりも高圧の状態となっているため、基板Wの裏面と押圧面811との離間距離が基準距離d0よりも小さくなると、基板Wには、これを押圧面811から遠ざける方向に押す力が付加される(図8参照)。すなわち、基板Wには、これを保持面11に向けて押す力が付加される。これによって、基板Wが平坦化され、基板Wの裏面と土手部13の頂部の少なくとも一部との間に生じていた隙間が消滅する。すなわち、基板Wの裏面が、土手部13の頂部全域、および、全ての突起部14の頂部のそれぞれと当接し、土手部13と、これに包囲されている保持面11と、基板Wの裏面との間に密閉空間が形成された状態となる。上述したとおり、真空吸引口12には負圧が形成されているため、密閉空間が形成されると、その圧力が低下し、基板Wは、その裏面が保持面11から土手部13の高さ分だけ離間した位置において、平坦状態で保持面11に吸着保持された状態となる(図17に示される状態)。
保持面11上の吸引圧が所定値より低圧側(真空圧側)となったことが圧力計124の出力情報から確認されると、制御部90は、基板Wは適切に吸着保持されたと判断する(ステップS20でYES)。この場合、制御部90は、開閉弁805を閉鎖した上で、昇降駆動機構821を制御して押圧板81を上昇させて、押圧板81をステージ10上方の待避位置まで移動させる(ステップS17)。これによって、ステップS3の処理が終了する。
<2−3.ステップS6の処理>
描画処理済みの基板Wが保持面11から取り上げられてプリアライメント部70の載置台71に移載される処理(ステップS6の処理)について、図18を参照しながら説明する。図18は、当該処理の流れを示す図である。
まず、制御部90は、開閉弁123を閉鎖して、真空吸引口12からの吸引を停止させる。これによって、真空吸引口12より気体が密閉空間に流入し(真空破壊)、保持面11に対する基板Wの吸着状態が解除される(ステップS21)。
続いて、制御部90は、昇降駆動機構821を制御して、保持面11の上方の待避位置に配置されている押圧板81を下降させて、押圧板81を、所定の停止位置まで移動させる(ステップS22)。ここでは、例えば、上述したステップS13の処理において押圧板81の下降が停止された際の押圧板81の位置を記憶しておき、当該位置をステップS22における押圧板81の停止位置として採用する。押圧板81が当該停止位置まで移動されると、押圧面811がステージ10の保持面11に載置されている基板Wの表面に対向配置され、かつ、押圧面811と基板Wの表面との離間距離がほぼ基準距離d0となる状態となる。なお、ステップS22において押圧板81を下降させる速度は、例えば、相対的に大きい第1下降速度V1とする。
ただし、真空破壊が行われると、平坦状態で保持面11に保持されていた基板Wの反り等が戻って基板Wが非平坦状態となってしまう可能性がある。そこで、真空破壊が行われた後に、制御部90が、各距離センサ15の計測値を参照し、最も大きな計測値の値に基づいて停止位置を微調整する構成としてもよい。具体的には、例えば、制御部90は、まず、各距離センサ15の計測値のうちで最も大きな計測値(最大離間幅)を特定し、当該最大離間幅から停止距離h0を差し引いた値を、基板Wの最大反り量として取得する。そして、制御部90は、上記の態様で決定した停止位置を、当該最大反り量分だけ、上方に修正する。この構成によると、基板Wの反り等が戻っている場合であっても、押圧板81を下降させた際に、基板Wと押圧板81とが接触して基板Wが破損する、といった事態を未然に回避することができる。
続いて、制御部90は、開閉弁805を開放する。すると、押圧面811に配置された各ベルヌーイチャック800に、ベルヌーイの原理に従って負圧が形成され、押圧面811から基準距離d0だけ離間した位置にある基板Wの表面が、押圧面811に非接触状態で吸着保持される(ステップS23)。ただし、停止位置が上方に修正されている場合、開閉弁805が開放された後に、押圧板81を当該修正幅分だけ追加で下降させる。この際の下降速度は、比較的低速な第2下降速度V2とされることが好ましい。
続いて、制御部90は、昇降駆動機構821を制御して、押圧板81を、定められた速度(第1上昇速度V11)で上昇開始させる(ステップS24)。押圧板81の上昇が開始されると、制御部90は、保持面11に配置された複数の距離センサ15,15,・・・,15それぞれの出力の監視も開始する。
複数の距離センサ15,15,・・・,15の全ての計測値が増加したことが確認されると(ステップS25でYES)、制御部90は、昇降駆動機構821を制御して、押圧板81を上昇させる速度を、第1上昇速度V11から、これより大きい(速い)第2上昇速度V12に切り換えさせる(ステップS26)。つまり、押圧板81の上昇速度を、相対的に小さい速度から相対的に大きい速度に切り換える。
押圧板81が上昇しても(あるいは、押圧板81が上昇開始してから一定の時間が経過しても)、複数の距離センサ15,15,・・・,15の全ての計測値が増加したことが確認されない場合(ステップS25でNO)、制御部90は、昇降駆動機構821を制御して、押圧板81を例えば再び停止位置、もしくは、停止位置よりさらに所定量だけ下方の位置(ただし、後者の場合、当該位置において押圧面811が基板Wに当たらないように、停止位置からの下げ幅は、十分微少な値(例えば、1mm以下)とする)まで下降させた上で(ステップS27)、押圧板81を再び上昇させる(ステップS24)。ただし、この際の下降速度は、比較的低速な第2下降速度V2とされることが好ましい。なお、ステップS27およびステップS24の処理を所定回数繰り返しても、複数の距離センサ15,15,・・・,15の全ての計測値が増加したことが確認されない場合、所定のエラー処理を行う構成としてもよい。
押圧板81が、押圧面811において基板Wを非接触状態で吸着保持した状態で、所定位置まで上昇されると、続いて、制御部90は、水平駆動機構822を制御して、押圧板81を、プリアライメント部70の載置台71の上方まで移動させる(ステップS28)。すると、押圧面811、および、押圧面811に保持されている基板Wの裏面が、載置台71に対向配置された状態となる。
押圧板81が載置台71の上方まで移動されると、続いて、制御部90は、昇降駆動機構821を制御して、押圧板81を、押圧面811に保持されている基板Wの裏面と載置台71との離間距離が定められた停止距離(例えば、「0(ゼロ)」)となるような位置まで下降させた上で、開閉弁805を閉鎖する。すると、各ベルヌーイチャック800の各噴出ノズル802からの圧縮気体の噴出が停止され、各ベルヌーイチャック800による吸着保持力が消滅し、基板Wは載置台71に載置された状態となる(ステップS29)。
<3.効果>
上記の実施の形態によると、基板Wの裏面が保持面11と対向配置されるとともに、基板Wの表面が押圧面811と対向配置された状態において、押圧面811に形成されたベルヌーイチャック800から気体が噴出されるとともに、押圧板81が、押圧面811と基板Wの表面との離間距離が基準距離d0よりも小さくなるような位置に降下される。この構成によると、基板Wはベルヌーイチャック800から噴出されて押圧面811に沿って流れ出る気体によって保持面11に向けて非接触で押圧されて、平坦化される。したがって、非平坦な基板Wであっても、これを効率的かつ有効に平坦化することができる。その結果、焦点位置のずれなどが生じにくくなり、目標位置に正確にパターンを形成することができる。また、処理の途中に、保持面11に対して基板Wが位置ずれするといった事態も生じにくい。したがって、パターンの描画精度を良好なものとすることができる。
また、上記の実施の形態によると、押圧板81によって、受け渡し位置(上記の例では載置台71)上の基板Wが保持面11の上方まで搬送される。具体的には、押圧板81が載置台71上の基板Wを、その表面側から非接触状態で吸着保持して、当該基板Wをステージ10の保持面11まで移載する。例えば、搬送装置60で受け渡し位置に配置された基板Wを保持面11まで搬送させようとした場合、ステージ10にリフトピンを設けるとともに、リフトピンを昇降させるための駆動機構を設ける必要があるが、上記の実施の形態においては、これらの機構が不要となる。つまり、この構成によると、装置構成が簡易化される。
また、上記の実施の形態によると、保持面11に配置され、保持面11とこれに対向配置される基板Wの裏面との離間距離を検知する距離センサ15を備えるので、保持面11と基板Wの裏面との離間距離を把握することができる。特に、上記の実施の形態においては、保持面11に配置された距離センサ15の計測値に応じて、押圧板81の停止タイミングが決定される。この構成によると、押圧板81に非接触状態で吸着保持される基板Wの厚みが変更されても、押圧板81の停止タイミングを適切に決定することができる。
また、上記の実施の形態においては、保持面11と押圧面811とが対向配置された状態において、保持面11における、ベルヌーイチャック800と対向する位置と、ベルヌーイチャック800間の隙間と対向する位置とのそれぞれに、距離センサ15が少なくとも1個配置される。したがって、基板Wの裏面が保持面11と対向配置されるとともに、基板Wの表面が押圧面811と対向配置された状態において、基板Wの面内におけるベルヌーイチャック800と対向配置されている部分と保持面11との離間距離を検知できるとともに、基板Wの面内におけるベルヌーイチャック800と対向配置されていない部分と保持面11との離間距離を検知できる。基板Wにおけるベルヌーイチャック800と対向していない部分は、下方に撓む可能性があるところ、この構成によると、このような場合に、基板Wの面内における保持面11と最も接近している部分と保持面11との離間距離を把握し逃す、といった事態が生じにくい。
また、上記の実施の形態においては、保持面11と基板Wの裏面との離間距離が停止準備距離h1となると、押圧板81の下降速度が、比較的高速な第1下降速度V1から、比較的低速な第2下降速度V2に切り換えられる。この構成によると、基板Wが保持面11に衝突して破損するといった事態を回避しつつ、基板Wを保持面11に吸着保持させるまでに要する時間を短縮することができる。
また、上記の実施の形態においては、押圧面811の中心にベルヌーイチャック800が配置されているので、凹状に反った基板Wであっても、これがほぼ平坦化された状態で吸着保持される。また、押圧面811の中心と同心の仮想円q1,q2の各円周上に、当該円周に沿って複数のベルヌーイチャック800が配置されているので、凹状に反った基板Wであっても、これがほぼ平坦化された状態で吸着保持される。なお、反った基板Wがほぼ平坦化された状態で押圧面811に吸着保持されていたとしても、当該基板Wが保持面11に載置され、ベルヌーイチャック800の吸着力が消滅した際に、基板Wの反り等が多少戻って基板Wが非平坦状態となってしまう可能性がある。しかしながら、上記の実施の形態においては、このような場合であっても、押圧面811で保持面11上の基板Wを押してこれを平坦化することができる。
<II.第2の実施の形態>
第2の実施の形態に係る基板処理装置について説明する。この実施の形態に係る基板処理装置は、押圧部が押圧面の法線方向に沿ってガスを噴出する構成を備えている点において、第1の実施の形態と相違する。以下においては、第1の実施の形態と相違する点を説明し、同じ構成については説明を省略するとともに、同じ符号を付して示す。
<1.装置構成>
第2の実施の形態に係る基板処理装置が備える押圧部80aの構成について、図19、図20を参照しながら説明する。図19は、ステージ10、押圧部80a、および、これらが備える配管系統を、模式的に示す図である。図20は、押圧面811aを模式的に示す平面図である。
押圧部80aは、第1の実施の形態に係る押圧部80と同様、押圧板81aと、押圧板81aを基台105に対して移動させる押圧板駆動機構82とを備える。押圧板駆動機構82の構成は、第1の実施の形態と同様である。
押圧板81aは、平板状の外形を有し、その下面に、水平面内に配置される押圧面811aが形成される。また、押圧面811aは、ステージ10の保持面11と略同一の形状およびサイズに形成される。
押圧面811aには、複数(図示の例では、9個)のベルヌーイチャック800,800,・・,800が配置される。各ベルヌーイチャック800の構成および複数のベルヌーイチャック800,800,・・,800の配列態様は、第1の実施の形態と同様である。
押圧面811aには、さらに、押圧面811aに開口する補助吐出口810が複数個(図示の例では、12個)形成される。補助吐出口810は、配管8101を介して、圧縮空気等の気体を供給する気体供給部(例えばコンプレッサ)804と接続されている。また、配管8101の途中には開閉弁(例えば電磁弁)8102が介挿されている。開閉弁8102は、制御部90と電気的に接続されており、制御部90からの指示に応じて開閉制御される。開閉弁8102が開放されると、配管8101を介して各補助吐出口810に圧縮気体が供給され、各補助吐出口810から押圧面811の法線方向に沿って圧縮気体が噴出される。
<2.ステップS3の処理>
プリアライメント処理済みの基板Wがプリアライメント部70から搬出されて、ステージ10の保持面11に移載され、保持面11において吸着保持された状態とされる処理(図10のステップS3の処理)について、図21を参照しながら説明する。図21は、当該処理の流れを示す図である。
当該処理の流れは、第1の実施の形態とほぼ同様である。ただし、この実施の形態においては、基板Wが保持面11に適切に吸着保持されていない(吸着不良)と判断された場合(ステップS16でNO)、次の処理が行われる。
まず、制御部90は、開閉弁805と開閉弁8102とを開放する。すると、各ベルヌーイチャック800の各噴出ノズル802から圧縮気体が噴出されるとともに、各補助吐出口810からも押圧面811の法線方向に沿って圧縮気体が吐出される(ステップS18a)。さらに、制御部90は、昇降駆動機構821を制御して、押圧板81aを、微小量(例えば、1mm以下)だけ下降させて、押圧面811aと基板Wの裏面との離間距離を、基準距離d0よりも僅かに小さい接近距離d1とする(ステップS19)。
上述したとおり、各ベルヌーイチャック800の各噴出ノズル802から圧縮気体が噴出されている状態において、押圧面811aの付近は、各ベルヌーイチャック800から噴出されて押圧面811に沿って流れ出る気体によって、大気圧よりも高圧の状態となっているため、基板Wの裏面と押圧面811aとの離間距離が基準距離d0よりも小さくなると、基板Wには、これを保持面11に向けて押す力が付加される。ここでは、各補助吐出口810から吐出される気体の圧力によって、基板Wの裏面を保持面11に向けて押す力がさらに付加される。これによって、基板Wが速やかに平坦化され、基板Wの裏面と土手部13の頂部の少なくとも一部との間に生じていた隙間が消滅し、土手部13と、これに包囲されている保持面11と、基板Wの裏面との間に密閉空間が形成された状態となる。その結果、当該密閉空間の圧力が低下し、基板Wは、その裏面が保持面11から土手部13の高さ分だけ離間した位置において、平坦状態で保持面11に吸着保持された状態となる。
保持面11上の吸引圧が所定値より低圧側(真空圧側)となったことが圧力計124の出力情報から確認されると、制御部90は、基板Wは適切に吸着保持されたと判断する(ステップS20でYES)。この場合、制御部90は、開閉弁805および開閉弁8102を閉鎖した上で、昇降駆動機構821を制御して押圧板81aを上昇させて、押圧板81aをステージ10上方の待避位置まで移動させる(ステップS17)。これによって、ステップS3の処理が終了する。
<3.効果>
第2の実施の形態によると、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。さらに、第2の実施の形態においては、基板Wはベルヌーイチャック800から噴出されて押圧面811に沿って流れ出る気体によって保持面11に向けて非接触で押圧されるとともに、補助吐出口810から吐出される気体によっても保持面11に向けて非接触で押圧される。したがって、非平坦な基板Wを速やかに平坦化することができる。
<III.第3の実施の形態>
第3の実施の形態に係る基板処理装置の構成について説明する。この実施の形態に係る基板処理装置は、押圧部80を水平面内で移動させる機構(水平駆動機構822)を備えない点において、第1の実施の形態と相違する。以下においては、第1の実施の形態と相違する点を説明し、同じ構成については説明を省略するとともに、同じ符号を付して示す。
<1.装置構成>
第3の実施の形態に係る基板処理装置1bの構成について、図22を参照しながら説明する。図22は、基板処理装置1bの構成を模式的に示す側面図である。
押圧部80bは、第1の実施の形態に係る押圧部80と同様、押圧板81と、押圧板81を基台105に対して移動させる押圧板駆動機構82bとを備える。押圧板81の構成は、第1の実施の形態と同様である。
押圧板駆動機構82bは、押圧板81を基台105に対して移動させる機構であり、昇降駆動機構821bを備える。昇降駆動機構821の構成は、第1の実施の形態と同様である。すなわち、昇降駆動機構821は、押圧板81を鉛直軸(Z軸)に沿って移動させる機構であり、具体的には、例えば、押圧板81の上側に固定された支持アーム8211bと、支持アーム8211bを昇降移動させる駆動部8212bとを含む。ただし、押圧板駆動機構82bは、水平駆動機構は備えず、昇降駆動機構821bの上端は、ステージ10bの真上の位置に固定されている。すなわち、押圧板81は、ステージ10bの上方において、保持面11に対して近接離間移動される。
なお、この実施の形態に係るステージ10bは、第1の実施の形態と同様の構成に加えて、基板Wを保持面11に対して昇降させるための機構を備える。具体的には、例えば、保持面11に形成されたピン孔(図示省略)を介して、保持面11に対して出没可能に設けられた複数のリフトピン(図示省略)と、各リフトピンを同期させて保持面11に対して出没させるリフトピン駆動機構(図示省略)とを備える。各リフトピンは、搬送装置60と保持面11との間で基板Wの受け渡しが行われる場合に、その先端が保持面11から突出した上方位置(突出位置)と、その先端が保持面11以下となる下方位置(待避位置)との間を往復移動される。
<2.処理の流れ>
第1の実施の形態においては、載置台71とステージ10bの保持面11との間の基板Wの移載は、押圧部80によって行われていたが、この実施の形態においては、当該移載は、搬送装置60によって行われる。
<2−1.ステップS3の処理>
プリアライメント処理済みの基板Wがプリアライメント部70から搬出されて、ステージ10bの保持面11に移載され、保持面11において吸着保持された状態とされる処理(図10のステップS3に相当する処理)について、図23を参照しながら説明する。図23は、当該処理の流れを示す図である。
プリアライメント処理(ステップS2)が終了すると、制御部90は、搬送装置60に、プリアライメント部70の載置台71に載置された基板Wを保持させて、当該基板Wをステージ10bの保持面11に載置させる(ステップS21)。この動作は、具体的には次のように行われる。まず、制御部90は、ステージ駆動機構20を制御して、ステージ10bを定められた受け渡し動作位置まで移動させる。ステージ10bが受け渡し動作位置に配置されると、続いて、ステージ10bに設けられたリフトピン駆動機構が一群のリフトピンを下方位置から上方位置に移動させる。これによって、保持面11から一群のリフトピンが突出した状態となる。続いて、搬送装置60が、プリアライメント処理済みの基板Wを支持したハンド61を保持面11に沿って差し込んで、さらにハンド61を下方に移動させる。これによって、ハンド61上に載置されていた基板Wが一群のリフトピン上に移載される。続いて、ハンド61が引き抜かれると、リフトピン駆動機構が、一群のリフトピンを上方位置から下方位置に移動させる。これによって、基板Wが保持面11に載置された状態となる。
基板Wが保持面11に載置された状態となると、続いて、制御部90は、開閉弁123を開放する。すると、真空吸引口12に負圧(吸引圧)が形成される(ステップS22)。
保持面11上の吸引圧が所定値より低圧側(真空圧側)となったことが圧力計124の出力情報から確認されると、制御部90は、基板Wは適切に吸着保持されたと判断する(ステップS23でYES)。これによって、ステップS3の処理が終了する。
一方、真空吸引口12からの吸引を開始してから一定の時間が経過しても、保持面11上の吸引圧が所定値より低圧側となったことが圧力計124の出力情報から確認されない場合、制御部90は、基板Wは保持面11に適切に吸着保持されていない(吸着不良)と判断する(ステップS23でNO)。この場合、続いて、押圧部80が基板Wを平坦化するための一連の処理が行われる(ステップS24〜ステップS28)。
すなわち、まず、制御部90は、昇降駆動機構821を制御して、ステージ10bの上方に配置されている押圧板81を下降させて、押圧板81を、押圧面811において非接触状態で吸着保持されている基板Wの裏面と保持面11との離間距離が定められた停止距離h0となるような位置まで移動させる(ステップS24)。この処理は、上述したステップS13の処理と同様である(図12、図13参照)。
以降の処理は、上述したステップS18〜ステップS20の処理と同様である。すなわち、制御部90は、開閉弁805を開放する。すると、各ベルヌーイチャック800の各噴出ノズル802から圧縮気体が噴出される(ステップS25)。
さらに、制御部90は、昇降駆動機構821を制御して、押圧板81を、微小量(例えば、1mm以下)だけ下降させて、押圧面811と基板Wの裏面との離間距離を、基準距離d0よりも僅かに小さい接近距離d1とする(ステップS26)。すると、上述したとおり、基板Wに、これを保持面11に向けて押す力が付加され、これによって、基板Wが平坦化される。その結果、基板Wは、その裏面が保持面11から土手部13の高さ分だけ離間した位置において、平坦状態で保持面11に吸着保持された状態となる。
保持面11上の吸引圧が所定値より低圧側(真空圧側)となったことが圧力計124の出力情報から確認されると、制御部90は、基板Wは適切に吸着保持されたと判断する(ステップS27でYES)。この場合、制御部90は、開閉弁805を閉鎖した上で、昇降駆動機構821を制御して押圧板81を上昇させて、押圧板81をステージ10b上方の待機位置まで移動させる(ステップS28)。これによって、ステップS3の処理が終了する。
<2−2.ステップS6の処理>
描画処理済みの基板Wが保持面11から取り上げられて搬出される処理(図10のステップS6〜ステップS7に相当する処理)について説明する。
まず、制御部90は、開閉弁123を閉鎖して、真空吸引口12からの吸引を停止させる。これによって、真空吸引口12より気体が密閉空間に流入し(真空破壊)、保持面11に対する基板Wの吸着状態が解除される(図18のステップS21参照)。
続いて、制御部90は、搬送装置60に、保持面11に載置されている基板Wを保持させて、当該基板Wをカセット載置部104に載置されたカセットCに収容させる。搬送装置60に保持面11から基板Wを受け取らせる動作は、具体的には次のように行われる。まず、リフトピン駆動機構が、一群のリフトピンを下方位置から上方位置に移動させる。これによって、基板Wは一群のリフトピンにより支持されて保持面11から持ち上げられ、基板Wの裏面が保持面11から引きはがされた状態となる。続いて、搬送装置60が、ハンド61を保持面11と基板Wの下面との間に差し込み、さらにハンド61を上昇させる。その一方で、リフトピン駆動機構が、一群のリフトピンを上方位置から下方位置に移動させる。これによって、一群のリフトピンの上に支持されていた基板Wがハンド61上に移載される。
<IV.変形例>
第1、あるいは、第2の実施の形態においては、押圧部80が、載置台71とステージ10との間で基板Wを搬送する。この構成において、ベルヌーイチャック800により非接触状態で吸着保持された基板Wが、水平面内に沿って位置ずれしないように、押圧面811の外縁にガイドピン等を立設しておいてもよい。この場合、保持面11における、ガイドピンと対応する位置(押圧面811と保持面11とが対向配置された状態において、ガイドピンの形成位置に対向する位置)に、ガイドピンが入り込むことができる凹部を形成しておく。このような凹部を形成しておけば、ガイドピンの先端が保持面11に当接してしまって、それ以上、押圧面811を保持面11に近接させることができない、といった事態が生じない。
また、第2の実施の形態においては、保持面11に対して基板Wが適切に吸着保持されなかった場合に、複数の補助吐出口810から押圧面811の法線方向に沿って圧縮気体が噴出される。ここで、配管8101の途中に例えば流量調整弁を介挿して、補助吐出口810からの気体の噴出圧を調整可能な構成としてもよい。この場合、例えば、複数の距離センサ15,15,・・,15のうち、ベルヌーイチャック800間の隙間と対向する位置に配置された距離センサ15の計測値が、ベルヌーイチャック800と対向する位置に配置された距離センサ15の計測値よりも大きい場合、気体の噴出圧を比較的大きく調整するとしてもよい。この構成によると、基板Wの平坦化が効率的に行われる。
さらに、複数の補助吐出口810,810,・・,810それぞれにおける気体の噴出圧を別個独立に調整可能な構成としてもよい。この場合、各距離センサ15の計測値を参照して、基板Wの裏面と保持面11との離間距離が比較的大きい領域と対向している補助吐出口810については、気体の噴出圧を比較的大きく調整し、基板Wの裏面と保持面11との離間距離が比較的小さい領域と対向している補助吐出口810については、気体の噴出圧を比較的小さく調整してもよい。この構成によっても、基板Wの平坦化が効率的に行われる。
また、上記の各実施の形態においては、吸引(真空吸引)により基板Wが保持面11に保持される構成であったが、保持面11に基板Wを保持する態様は必ずしも真空吸引である必要はなく、例えば、静電チャック方式、メカチャック方式などで保持面11に基板Wを保持してもよい。上述したとおり、押圧部80,80aを備える装置構成においては、押圧部80,80aで基板Wを平坦化することができるため、どのような態様であっても、基板Wを容易かつ確実に保持面11に保持することができる。
また、上記の各実施の形態においては、保持面11には複数個の距離センサ15が配置される構成であったが、距離センサ15は必ずしも複数個配置される必要はなく、距離センサ15を1個だけ配置する構成であってもよい。
また、押圧面811,811aに配置されるベルヌーイチャック800の個数は必ずしも図5の例のように9個である必要はない。ただし、ベルヌーイチャック800の個数を多くするほど、基板Wを平坦状態で保持できる可能性が高くなる。また、ベルヌーイチャック800の個数を少なく抑えれば、コストと気体の消費量とを抑えることができる。
また、上記の各実施の形態においては、保持面11に配置された距離センサ15の計測値に応じて、押圧板81,81aの停止タイミングが決定される構成としたが、押圧面811,811aに配置された距離センサ812の計測値に応じて、押圧板81,81aの停止タイミングを決定してもよい。この場合、例えば、押圧板81,81aの下降が開始されるとともに、制御部90は、押圧面811,811aに配置された距離センサ812の出力(すなわち、押圧面811,811aとこれに非接触状態で吸着保持されている基板Wの表面との離間距離)の監視を開始し、当該距離センサ812の計測値が、基準距離d0よりも小さくなった時点(すなわち、基板Wの裏面が保持面11と当接した時点)で、押圧板81,81aを停止させればよい。
また、上記の各実施の形態においては、吸着不良と判断された場合に、押圧面811,811aと基板Wの表面との離間距離を、押圧面811,811aに配置された距離センサ812で監視しながら、押圧板81,81aを微小量だけ下降させて、当該離間距離を、基準距離d0よりも僅かに小さい接近距離d1とする構成であったが(図12のステップS18)、押圧面811,811aと基板Wの表面との多少の接触が許容される処理条件の場合は、昇降駆動機構821の電流値が所定値を越えるまで(すなわち、押圧面811,811aが基板Wの表面と当接するまで)、押圧板81,81aを下降させる構成としてもよい。
また、上記の各実施形態では、空間光変調器441として変調単位である固定リボンと可動リボンとが一次元に配設された回折格子型の空間光変調器であるGLVが用いられていたが、このような形態には限られない。例えば、GLVに限らず、ミラーのような変調単位が、一次元に配列されている空間光変調器が利用される形態であってもよい。また、例えば、DMD(Digital Micromirror Device:デジタルマイクロミラーデバイス:テキサスインスツルメンツ社の登録商標)のような変調単位であるマイクロミラーが二次元的に配列された空間光変調器が利用されてもよい。
また、上記の各実施の形態においては、本発明が、基板Wに対して光を照射して基板Wにパターンを形成する描画装置に適用された態様を示していたが、本発明は、描画装置以外の各種の基板処理装置に適用することができる。