JP5770545B2 - 水産練製品及び水産練製品の製造方法 - Google Patents

水産練製品及び水産練製品の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、特定の澱粉を含有する水産練製品及び水産練製品の製造方法に関する。
かまぼこ、ちくわ、さつま揚げ、はんぺん等の水産練製品は、原料魚、形態、調味、加熱法等の違いによって各種のものがあるが、基本的には、魚肉すり身を主原料とし、澱粉、山芋、卵等の副原料、食塩等の調味料及び水を加えて生地を調製し、成形後加熱して固めたものである。一般的に、しなやかな食感で弾力性があるものが好ましいとされている。
水産練製品に配合する澱粉は、つなぎ剤や増量剤として機能するだけでなく、水産練製品独特の歯切れのよい弾力に富む食感を向上させる。即ち、澱粉を含む原料が加熱されると、澱粉が周囲の魚肉すり身等の原料や配合水から水分を吸収し、糊化して弾力に富む粒子となる。この糊化した澱粉粒子による粘弾性が水産練製品に独特の食感を与えている。
水産練製品に配合する澱粉としては、馬鈴薯澱粉や小麦澱粉などが用いられているが、基本的に一期作である馬鈴薯は作付け量や天候によって収穫量が変化し易く、これを原料としている馬鈴薯澱粉は供給量や販売価格が不安定であるという問題があった。また、小麦澱粉には澱粉の性質上、硬さが向上しないという問題があった。一方、タピオカ澱粉は、多期作であるキャッサバ芋を原料とする澱粉であり供給量や販売価格が安定であるため、これを水産練製品に利用することも望まれていた。
しかしながら一般に天然の未処理澱粉には、生地の水伸ばしが悪かったり、食感付与の効果が不十分であったり、時間の経過とともに製品が硬くなったり、製品に離水が生じやすいなどの問題があった。
従来、このような課題に対しては、水産練製品に配合する澱粉にエステル化や湿熱処理等の加工を施すことによって解決しようと試みられてきた。例えば、特許文献1には、置換度0.01〜0.10の範囲にエステル化したエステル化殿粉を練製品原料に配合することによって、水伸ばし、弾力性及び耐老化性が向上した練製品が得られることが記載されている。また、特許文献2には、湿熱処理したタピオカ澱粉を使用した水産練製品が、未処理タピオカ澱粉を使用した水産練製品に比べて、耐熱性に優れており、高温で殺菌しても、ゼリー強度が低くならず、煮詰めても茹で伸びせず、冷凍耐性に優れ、経時安定性に優れ、かつ食感及び風味にも優れていることが記載されている。
特開昭58−158157号公報 特開2010−227084号公報
しかしながら、本発明者らの研究では、単にエステル化を施したり湿熱処理を施したりする従来の方法では、タピオカ澱粉を、食感や耐老化性が向上した水産練製品を得るのに適するように改良することは難しかった。
本発明の目的は、タピオカ澱粉を改良して、馬鈴薯澱粉等を用いた水産練製品に比べても遜色ないか又はそれ以上に食感等が向上した水産練製品を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究し、多期作であるキャッサバ芋を原料とする澱粉であり供給量や販売価格が安定なタピオカ澱粉に着眼して、これを微弱にエステル化したエステル化タピオカ澱粉を用いることにより、離水が抑制され、比較的硬い歯切れ感を呈しつつもしなやかで弾力性がある独特の食感の水産練製品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、6質量%でのアミログラフィー分析においてピーク粘度が800BU以上であり且つ該ピーク粘度からボトム粘度を差し引いたブレークダウンが150〜500BUであるエステル化タピオカ澱粉を含有することを特徴とする水産練製品を提供するものである。
本発明の水産練製品においては、前記エステル化タピオカ澱粉の加熱溶解度が15〜40%であることが好ましい。
また、前記エステル化タピオカ澱粉は、アセチル化アジピン酸架橋タピオカ澱粉、リン酸架橋タピオカ澱粉、及びアセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉からなる群から選ばれた1種又は2種以上であることが好ましい。
また、前記エステル化タピオカ澱粉は、アセチル基含量が0.1〜1質量%のアセチル化アジピン酸架橋タピオカ澱粉及び/又はアセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉であることが好ましい。
また、前記エステル化タピオカ澱粉は、アジピン酸基含量が0.01質量%を超えないアセチル化アジピン酸架橋タピオカ澱粉であることが好ましい。
一方、本発明のもう1つは、6質量%でのアミログラフィー分析においてピーク粘度が800BU以上であり且つ該ピーク粘度からボトム粘度を差し引いたブレークダウンが150〜500BUであるエステル化タピオカ澱粉を含有する水産練製品の生地を調製し、適宜形状に成形して、加熱処理することを特徴とする水産練製品の製造方法を提供するものである。
本発明によれば、水産練製品に配合する澱粉として、6質量%でのアミログラフィー分析においてピーク粘度が800BU以上であり且つ該ピーク粘度からボトム粘度を差し引いたブレークダウンが150〜500BUであるエステル化タピオカ澱粉を用いることにより、離水が抑制され、比較的硬い歯切れ感を呈しつつもしなやかで弾力性がある独特の食感の水産練製品を得ることができる。なお、上記エステル化タピオカ澱粉は、タピオカ澱粉を微弱にエステル化処理することにより、得られるものである。
澱粉の糊化物性を測定するアミログラフィー分析の一例を示す図表である。
本発明の水産練製品は、6質量%でのアミログラフィー分析においてピーク粘度が800BU以上であり且つ該ピーク粘度からボトム粘度を差し引いたブレークダウンが150〜500BUであるエステル化タピオカ澱粉を含有することを特徴としている。
ピーク粘度が上記範囲未満であり且つブレークダウンが上記範囲未満であると加熱時の粒の糊化や膨化の進行が過剰に抑制されて脆くて歯切れの悪い食感となり、目的とする食感が得られ難くなる傾向があり、ピーク粘度が上記範囲未満であり且つブレークダウンが上記範囲を超えると加熱時の粒の糊化や膨化の進行が過剰に促進されて柔らかい食感となり、目的とする食感が得られ難くなる傾向があるので、いずれも好ましくない。
(アミログラフィー分析)
アミログラフィー分析は以下の方法に従って行うことができる。
固形分換算で6質量%の澱粉スラリーを調製し、測定開始温度を35℃で開始、1.5℃/分で95℃まで昇温、その後95℃を30分間維持の条件で澱粉の糊化物性を測定する。得られたアミログラム(温度−澱粉粘度曲線)から、95℃到達時までに記録された最大の粘度を読み取り、これをピーク粘度とする。また、ピーク粘度の発現以降に粘度が低下した際、95℃を30分間維持した時に記録された粘度を読み取り、これをボトム粘度とする。そしてピーク粘度とボトム粘度の差をブレークダウンとする。
図1にはアミログラフィー分析の一例を示す。図中実線のアミログラムが得られた場合、そのブレークダウンは図中Aで示される粘度差の値となる。また、図中点線のアミログラムが得られた場合、そのブレークダウンは図中Bで示される粘度差の値となる。
(エステル化タピオカ澱粉)
本発明に用いるエステル化タピオカ澱粉の原資澱粉はタピオカ澱粉である。タピオカ澱粉としては、ウルチ種、ワキシー種、ハイアミロース種のように、育種的手法もしくは遺伝子工学的手法において改良された品種が存在するが、これらは特に限定されるものではない。例えば、ウルチ種のタピオカ澱粉に加え、ワキシー種のタピオカ澱粉等が挙げられる。
タピオカ澱粉のエステル化としては、アセチル化、アジピン酸エステル化、コハク酸エステル化、オクテニルコハク酸エステル化、脂肪酸エステル化、リン酸エステル化等が挙げられ、特に限定されない。これらのエステル化の2種以上が組み合わせて施されていてもよい。尚、アジピン酸エステル化、リン酸エステル化等によりジエステル化により架橋構造が付与されたものは架橋タピオカ澱粉とも称される。また、これらのエステル化と組み合わせて、本発明の効果を損なわない範囲で、エーテル化(ヒドロキシプロピル化)や酸化等といったエステル化以外の加工処理を施すことに制限はなく、湿熱処理、油脂加工、ボールミル処理、微粉砕処理、α化、加熱処理、温水処理、漂白処理、酸処理、アルカリ処理、酵素処理等の物理加工を施すことにも制限はない。
本発明に用いるエステル化タピオカ澱粉は、その加熱溶解度が15〜40%であることが好ましく、20〜40%であることがより好ましい。加熱溶解度が上記範囲未満であると加熱時の澱粉粒の糊化や膨化の進行が過剰に抑制されて脆くて歯切れの悪い食感となり、目的とする食感が得られ難くなる傾向があり、加熱溶解度が上記範囲を超えると加熱時の澱粉粒の糊化や膨化の進行が過剰に促進されて柔らかい食感となり、目的とする食感が得られ難くなる傾向があるので、いずれも好ましくない。加熱溶解度は澱粉粒を糊化させた際に粒から溶出する成分の量であり、一般的には架橋構造の付与によって溶解度が低下し、アセチル基の付与によって上昇することが知られている。従って、澱粉に付加する置換基の種類や付加量によって加熱溶解度を調整することができる。
また、エステル化タピオカ澱粉として、アセチル化アジピン酸架橋タピオカ澱粉、リン酸架橋タピオカ澱粉、又はアセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉を用いることが好ましい。これらの2種以上を併用してもよい。
エステル化タピオカ澱粉として、アセチル化アジピン酸架橋タピオカ澱粉やアセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉を用いる場合、そのアセチル基含量は0.1〜1質量%であることが好ましく、0.2〜0.6質量%であることがより好ましい。アセチル基含量が上記範囲未満であると食感の経時的劣化の防止又は抑制が不十分となる傾向があり、アセチル基含量が上記範囲を超えると食感の経時的劣化の防止又は抑制は満足できるものの、加熱時の澱粉粒の糊化や膨化の進行が過剰に促進されて柔らかい食感となり、目的とする食感が得られ難くなる傾向があるので、いずれも好ましくない。
また、エステル化タピオカ澱粉として、アセチル化アジピン酸架橋タピオカ澱粉を用いる場合、そのアジピン酸基含量は0.01質量%を超えないことが好ましい。アジピン酸基含量が上記範囲を超えると、加熱時の澱粉粒の糊化や膨化の進行が過剰に抑制されて脆くて歯切れの悪い食感となり、目的とする食感が得られ難くなる傾向があるので好ましくない。
本発明に用いるエステル化タピオカ澱粉は、通常知られたエステル化剤を用いる方法で調製することが可能である。例えば、アセチル化剤として無水酢酸、酢酸ビニルモノマー等を用いてアセチル化されたタピオカ澱粉を調製することができる。また、アジピン酸エステル化やリン酸エステル化されたタピオカ澱粉は、アジピン酸、無水アジピン酸、無水酢酸・酢酸・アジピン酸・無水アジピン酸の平衡混合物、トリメタリン酸ナトリウム、オキシ塩化リン等を架橋剤として用いて調製することができる。ただし、上記の範囲に属するものを得て、後述の実施例で示されるように水産練製品として良好な食感を得るためには、エステル化され過ぎないように調製する必要がある。
以下には、アセチル化アジピン酸架橋タピオカ澱粉、リン酸架橋タピオカ澱粉、及びアセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉の調製法の一例を示す。
(アセチル化アジピン酸架橋タピオカ澱粉)
未加工のタピオカ澱粉に水を加えて40質量%の澱粉スラリーを調製し、澱粉スラリーにアルカリ剤(水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム等)を添加してpH7〜10に調整する。次いで、無水酢酸にアジピン酸を溶解させて調製したアセチル化アジピン酸架橋反応液を添加する。このとき、アセチル化アジピン酸架橋反応液は、澱粉スラリーの澱粉乾燥物重量に対する添加量が無水酢酸として0.5〜6質量%となる量で添加することが好ましく、アジピン酸として0.005〜0.05質量%となる量で添加することが好ましい。そして、アセチル化アジピン酸架橋反応液は、澱粉スラリーのpHが保たれるように適宜アルカリ剤を添加しながら30〜180分間程度かけて徐々に添加することが好ましい。アセチル化アジピン酸架橋反応液の添加終了後に10分間程度pHを維持した後、塩酸等の酸を添加して澱粉スラリーを中和し、水洗浄・脱水・乾燥を行ってアセチル化アジピン酸架橋タピオカ澱粉を得る。
(リン酸架橋タピオカ澱粉)
未加工のタピオカ澱粉に水を加えて40質量%の澱粉スラリーを調製し、澱粉スラリーの澱粉乾燥物重量に対する添加量が0.1〜5質量%となる量で塩類(塩化カルシウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム等)を添加した後に、アルカリ剤(水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム等)を添加してpH9〜12に調整する。次いで、リン酸架橋剤としてトリメタリン酸ナトリウム又はオキシ塩化リンを添加する。このとき、トリメタリン酸ナトリウムを用いる場合は澱粉スラリーの澱粉乾燥物重量に対する添加量が0.01〜0.07質量%となる量で添加することが好ましく、オキシ塩化リンを用いる場合は0.002〜0.02質量%となる量で添加することが好ましい。30〜120分間程度かけて反応させた後に、塩酸等の酸を添加して澱粉スラリーを中和し、水洗浄・脱水・乾燥を行ってリン酸架橋タピオカ澱粉を得る。
(アセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉)
未加工のタピオカ澱粉に水を加えて40質量%の澱粉スラリーを調製し、澱粉スラリーの澱粉乾燥物重量に対する添加量が0.1〜5質量%となる量で塩類(塩化カルシウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム等)を添加した後に、アルカリ剤(水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム等)を添加してpH9〜12に調整する。次いで、リン酸架橋剤としてトリメタリン酸ナトリウム又はオキシ塩化リンを添加する。このとき、トリメタリン酸ナトリウムを用いる場合は澱粉スラリーの澱粉乾燥物重量に対する添加量が0.01〜0.07質量%となる量で添加することが好ましく、オキシ塩化リンを用いる場合は0.002〜0.02質量%となる量で添加することが好ましい。30〜120分間程度かけて反応させた後に、塩酸等の酸を添加して澱粉スラリーをpH7程度の中性に調整する。
上記の澱粉スラリーに対して、アセチル化剤として酢酸ビニルモノマー又は無水酢酸を添加する。
酢酸ビニルモノマーを用いる場合は、澱粉スラリーにアルカリ剤(水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム等)を添加してpH8〜11に調整し、次いで酢酸ビニルモノマーを添加する。このとき、酢酸ビニルモノマーは、澱粉スラリーの澱粉乾燥物重量に対する添加量が0.5〜5質量%となる量で添加することが好ましい。10〜60分間程度かけて反応させた後に、塩酸等の酸を添加して澱粉スラリーを中和し、水洗浄・脱水・乾燥を行ってアセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉を得る。
一方、無水酢酸を用いる場合は、澱粉スラリーにアルカリ剤(水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム等)を添加してpH7〜10に調整し、次いで無水酢酸を添加する。このとき、無水酢酸は、澱粉スラリーの澱粉乾燥物重量に対する添加量が0.5〜6質量%となる量で添加することが好ましい。そして、無水酢酸は、澱粉スラリーのpHが保たれるように適宜アルカリ剤を添加しながら30〜180分間程度かけて徐々に添加することが好ましい。無水酢酸の添加終了後に10分間程度pHを維持した後、塩酸等の酸を添加して澱粉スラリーを中和し、水洗浄・脱水・乾燥を行ってアセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉を得る。
以下には、本発明における、加熱溶解度、アセチル基含量、及びアジピン酸基含量の測定について説明する。
(加熱溶解度の測定)
加熱溶解度とは、澱粉を加熱糊化させた際に澱粉粒から溶出する糖量度合であり、以下の方法で算出される。
固形分換算の試料0.2gを蒸留水19.8mlに分散して、沸騰水浴中で30分間加熱を行った後、25℃水道水浴中で30分間冷却する。次いで、この液を遠心分離(3000rpm、10分間)して沈澱層と上層に分ける。この上層に含まれる全糖量をフェノール硫酸法で測定し、その容量に対する質量%濃度として加熱溶解度を算出する。
(アセチル基含量の測定)
アセチル基含量は以下の方法で求めることができる。
澱粉試料5.0gを精密に量り、水50ml(水可溶性の場合は100ml)に懸濁し、フェノールフタレイン試液数滴を加え、液が微紅色を呈するまで0.1mol/l水酸化ナトリウム溶液を滴下後、0.45mol/l水酸化ナトリウム溶液25mlを正確に加え、温度が30℃以上にならないように注意しながら栓をして30分間激しく振り混ぜる。0.2mol/l塩酸で過量の水酸化ナトリウムを滴定する。終点は液の微紅色が消えるときとする。別に空試験を行い補正する。下記式(1)により遊離アセチル基含量を求め、更に乾燥物換算を行う。
アセチル基含量(%)=(e−f)×n×0.043×100/w…(1)
上記式(1)中、eは空試験滴定量(ml)を、fは試料滴定量(ml)を、nは0.2mol/l塩酸の力価を、wは試料乾燥物重量(g)を意味する。
(アジピン酸基含量の測定)
アジピン酸基含量は以下の方法で求めることができる。
澱粉試料約1gを精密に量り、共栓三角フラスコに入れ、水50mlを加え、更に内標準溶液1mlを正確に加え、よく振り混ぜて澱粉試料を分散させた後、4mol/l水酸化ナトリウム溶液50mlを加え、5分間振とうする。内標準溶液には、グルタル酸0.10gを正確に量り、水を加えて溶かし、正確に100mlとしたものを用いる。三角フラスコを室温の水浴に入れ、塩酸20mlを注意しながら加える。冷後、内容物を分液漏斗に移し、三角フラスコを少量の水で洗い、洗液を分液漏斗に入れる。酢酸エチル100mlずつで3回抽出し、酢酸エチル層を合わせ、無水硫酸ナトリウム20gを加えて時々振り混ぜながら10分間放置した後、ろ過する。容器及びろ紙上の残留物を酢酸エチル50mlで2回洗い、洗液をろ紙に合わせ、6.7kPaの減圧下、40℃以下で酢酸エチルを留去し、更に窒素気流で酢酸エチルを完全に除去する。酢酸エチルの留去はできるだけ速やかに行う。次いで、残留物にピリジン2ml及びN,O−ビストリメチルシリルトリフルオロアセタミド1mlを加えて栓をし、残留物を溶解する。1時間放置後、2mlをガラス製バイアル瓶にとり、直ちに密封し、総アジピン酸測定用検液とする。
一方で、澱粉試料約5gを精密に量り、共栓三角フラスコに入れ、水100mlを加え、更に上記内標準溶液1mlを正確に加える。1時間振とう後、メンブレンフィルター(孔径0.45μm)でろ過し、ろ液に塩酸1mlを加え、分液漏斗に移す。ただし、α化澱粉及び水可溶澱粉の場合は、メンブレンフィルターでろ過せず、懸濁液に塩酸1mlを加え、分液漏斗に移す。以下、総アジピン酸測定用検液と同様に操作し、遊離アジピン酸測定用検液とする。
アジピン酸0.10gを正確に量り、温湯90mlに溶かし、室温まで冷却した後、正確に100mlとする。この液1ml、5ml、10ml及び20mlを正確に量り、水を加えてそれぞれ正確に50mlとし、4濃度の標準原液とする。4個の共栓三角フラスコに、澱粉試料と同じ植物を基原とする未加工澱粉1.0gずつを量り、水50mlを加え、更に内標準溶液1mlを正確に加える。各フラスコに、濃度の異なる標準原液5mlを正確に加え、よく振り混ぜて澱粉を分散させた後、4mol/l水酸化ナトリウム溶液50mlを加え、5分間振とうする。各フラスコを室温の水浴に入れ、塩酸20mlを注意しながら加える。冷後、内容物を分液漏斗に移す。以下、総アジピン酸測定用検液と同様に操作し、4濃度の標準液とする。
総アジピン酸測定用検液、遊離アジピン酸測定用検液及び4種類の標準液をそれぞれ1μlずつ量り、次の操作条件でガスクロマトグラフィーを行う。4種類の標準液のグルタル酸のピーク面積に対するアジピン酸のピーク面積比と標準液に含まれるアジピン酸の量から検量線を作成する。総アジピン酸測定用検液及び遊離アジピン酸測定用検液のグルタル酸のピーク面積に対するアジピン酸のピーク面積比を求め、検量線より両検液中のアジピン酸の量(g)を求める。下記式(2)によりアジピン酸基含量を求める。
アジピン酸基含量=(CT/WT−CF/WF)×100 (質量%)…(2)
上記式(2)中、CTは総アジピン酸測定用検液中のアジピン酸の量(g)を、CFは遊離アジピン酸測定用検液中のアジピン酸の量(g)を、WTは総アジピン酸測定用検液中の乾燥物換算した澱粉試料の採取量(g)を、WFは遊離アジピン酸測定用検液中の乾燥物換算した澱粉試料の採取量(g)を意味する。
以下にガスクロマトグラフィーの操作条件を示す。
検出器:水素炎イオン化検出器
検出器温度:250℃
カラム:内径0.25mm、長さ15mのケイ酸ガラス製の細管に、ガスクロマトグラフィー用50%ジフェニル−50%ジメチルポリシロキサンを0.25μmの厚さで被覆したもの。
カラム温度:120℃で5分間保持、その後150℃まで毎分5℃で昇温する。
注入口温度:250℃
注入方式:スプリット(30:1)
キャリヤーガス:ヘリウム又は窒素、流量:アジピン酸の保持時間が約8分に、グルタル酸の保持時間が約5分になるように調整する。
(水産練製品)
本発明の水産練製品は、原料配合中に少なくとも上記エステル化タピオカ澱粉を配合して水産練製品の生地を調製し、適宜形状に成形して、加熱処理することにより得ることができる。エステル化タピオカ澱粉の配合量は、水産練製品の種類によって適宜設定し得るが、典型的には、澱粉の乾燥物換算で加熱処理前の水産練製品の生地中1〜15質量%が好ましく、5〜10質量%がより好ましい。また、本発明の効果を損なわない範囲で、上記エステル化タピオカ澱粉のほか、馬鈴薯澱粉、その他の澱粉、穀粉、小麦粉、米粉等、又はそれらのエステル化、エーテル化(ヒドロキシプロピル化)、酸化、湿熱処理、油脂加工、ボールミル処理、微粉砕処理、α化、加熱処理、温水処理、漂白処理、酸処理、アルカリ処理、酵素処理等の加工物等の他の澱粉質原料を配合してもよい。
水産練製品の種類に特に制限はなく、かまぼこ、ちくわ、さつま揚げ、はんぺん、魚肉ソーセージ、だて巻き、なると巻き、つみれなどを例示することができる。その原料の配合組成、添加方法、生地の成形方法、加熱方法等は、水産練製品の種類に応じて、従来から知られている方法に準じて行えばよく、特に制限されるものではない。一例を挙げると次の通りである。
原料魚としてスケソウダラ、グチ、サメ、ヒラメ、ホッケ、イカ等の肉身や、それを加工した冷凍すり身を、ミートチョッパーでチョッピングした後、フードカッターで粗ずりを行う。これに食塩を2〜3%程度を氷又は氷水とともに添加して、フードカッターでカッティングした後、上記エステル化タピオカ澱粉と残りの氷水とを添加して、更にカッティングして、水産練り製品の生地を調製する。水産練製品の種類によっては、必要に応じて、油脂、グルタミン酸ソーダ、砂糖、みりん、卵白、山芋、増粘剤等の副原料と、野菜の細切り等の種物とを添加し、攪拌機によって練成する。なお、はんぺんを製造する場合には、生地中に気泡を抱き込むように攪拌を行う。
このように調製した生地を、例えば押出成形機、ドラム成形機、球天器などを用いて適宜形状に成形し、必要に応じて坐り、二段加熱を行い、製品の種類に応じた加熱処理を行う。加熱処理は、例えば、かまぼこの場合は、蒸煮あるいは焼成が好ましく採用され、はんぺんの場合は湯中浸漬が好ましく採用され、さつま揚げの場合は油ちょうが採用される。また、魚肉ソーセージの場合は、ケーシングに充填した後、湯中浸漬等の手段で加熱処理する。
本発明の水産練製品は、上記のようにして得られた製品を、更に冷凍したものであってもよい。冷凍することによって、保存、流通性をより高めることができる。
以下に実施例を挙げて本発明の詳細を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
表1に示す各種澱粉を用いた水産練製品について、評価を行った。
各澱粉は以下のようにして調製し又は入手した。
(澱粉No.1)
未加工のタピオカ澱粉に水を加えて40質量%の澱粉スラリーを調製し、アルカリ剤(水酸化ナトリウム水溶液)を添加してpH8.5に調整した。次いで、無水酢酸にアジピン酸を溶解させて調製したアセチル化アジピン酸架橋反応液を、澱粉スラリーの澱粉乾燥物重量に対する添加量が無水酢酸として1〜2質量%、アジピン酸として0.03質量%となる量で添加した。このときアセチル化アジピン酸架橋反応液は、澱粉スラリーのpHが保たれるように適宜アルカリ剤を添加しながら50〜100分間かけて徐々に添加した。アセチル化アジピン酸架橋反応液の添加終了後に10分間程度pHを維持した後に、塩酸で澱粉スラリーを中和し、水洗浄・脱水・乾燥を行ってアセチル化アジピン酸架橋タピオカ澱粉を得た。
(澱粉No.2)
アセチル化アジピン酸架橋反応液を、澱粉スラリーの澱粉乾燥物重量に対する添加量がアジピン酸として0.02質量%となる量で添加した以外は澱粉No.1と同様にしてアセチル化アジピン酸架橋タピオカ澱粉を得た。
(澱粉No.3)
アセチル化アジピン酸架橋反応液を、澱粉スラリーの澱粉乾燥物重量に対する添加量がアジピン酸として0.01質量%となる量で添加した以外は澱粉No.1と同様にしてアセチル化アジピン酸架橋タピオカ澱粉を得た。
(澱粉No.4)
アセチル化アジピン酸架橋反応液を、澱粉スラリーの澱粉乾燥物重量に対する添加量が無水酢酸として3〜4質量%、アジピン酸として0.01質量%となる量で添加した以外は澱粉No.1と同様にしてアセチル化アジピン酸架橋タピオカ澱粉を得た。
(澱粉No.5)
未加工のタピオカ澱粉に水を加えて40質量%の澱粉スラリーを調製し、澱粉スラリーの澱粉乾燥物重量に対する添加量が0.5質量%となる量で塩類(塩化カルシウム)を添加した後に、アルカリ剤(水酸化ナトリウム水溶液)を添加してpH10に調整した。次いで、リン酸架橋剤としてトリメタリン酸ナトリウムを澱粉スラリーの澱粉乾燥物重量に対する添加量が0.05質量%となる量で添加した。60分間反応後に塩酸で澱粉スラリーを中和し、水洗浄・脱水・乾燥を行ってリン酸架橋タピオカ澱粉を得た。
(澱粉No.6)
リン酸架橋剤としてトリメタリン酸ナトリウムを、澱粉スラリーの澱粉乾燥物重量に対する添加量が0.03質量%となる量で添加した以外は澱粉No.5と同様にしてリン酸架橋タピオカ澱粉を得た。
(澱粉No.7)
リン酸架橋剤としてトリメタリン酸ナトリウムを、澱粉スラリーの澱粉乾燥物重量に対する添加量が0.02質量%となる量で添加した以外は澱粉No.5と同様にしてリン酸架橋タピオカ澱粉を得た。
(澱粉No.8)
未加工のタピオカ澱粉に水を加えて40質量%の澱粉スラリーを調製し、澱粉スラリーの澱粉乾燥物重量に対する添加量が0.5質量%となる量で塩類(塩化カルシウム)を添加した後に、アルカリ剤(水酸化ナトリウム水溶液)を添加してpH10に調整した。次いで、リン酸架橋剤としてトリメタリン酸ナトリウムを澱粉スラリーの澱粉乾燥物重量に対する添加量が0.05質量%となる量で添加し、60分間反応後に塩酸で澱粉スラリーをpH7に調整した。この澱粉スラリーに対して、アルカリ剤(炭酸ナトリウム水溶液)を添加してpH10に調整し、アセチル化剤として酢酸ビニルモノマーを澱粉スラリーの澱粉乾燥物重量に対する添加量が1〜2質量%となる量で添加した。30分間反応後に塩酸で澱粉スラリーを中和し、水洗浄・脱水・乾燥を行ってアセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉を得た。
(澱粉No.9)
リン酸架橋剤としてトリメタリン酸ナトリウムを、澱粉スラリーの澱粉乾燥物重量に対する添加量が0.03質量%となる量で添加した以外は澱粉No.8と同様にしてアセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉を得た。
(澱粉No.10)
リン酸架橋剤としてトリメタリン酸ナトリウムを、澱粉スラリーの澱粉乾燥物重量に対する添加量が0.02質量%となる量で添加した以外は澱粉No.8と同様にしてアセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉を得た。
(澱粉No.11)
リン酸架橋剤としてトリメタリン酸ナトリウムを、澱粉スラリーの澱粉乾燥物重量に対する添加量が0.03質量%となる量で添加し、アセチル化剤として酢酸ビニルモノマーを、澱粉スラリーの澱粉乾燥物重量に対する添加量が3〜4質量%となる量で添加した以外は澱粉No.8と同様にしてアセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉を得た。
(澱粉No.12)
未加工の馬鈴薯澱粉である士幌町農業協同組合製の「マル特 士幌」を使用した。
(澱粉No.13)
未加工のタピオカ澱粉であるAsia Modified Starch Co., Ltd.製の「TAPIOCA STARCH」を使用した。
(澱粉No.14)
アセチル化アジピン酸架橋反応液を、澱粉スラリーの澱粉乾燥物重量に対する添加量が無水酢酸として4〜5質量%、アジピン酸として0.1質量%となる量で添加した以外は澱粉No.1と同様にしてアセチル化アジピン酸架橋タピオカ澱粉を得た。
(澱粉No.15)
アセチル化アジピン酸架橋反応液を、澱粉スラリーの澱粉乾燥物重量に対する添加量がアジピン酸として0.08質量%となる量で添加した以外は澱粉No.1と同様にしてアセチル化アジピン酸架橋タピオカ澱粉を得た。
(澱粉No.16)
アセチル化アジピン酸架橋反応液を、澱粉スラリーの澱粉乾燥物重量に対する添加量がアジピン酸として0.004質量%となる量で添加した以外は澱粉No.1と同様にしてアセチル化アジピン酸架橋タピオカ澱粉を得た。
(澱粉No.17)
リン酸架橋剤としてトリメタリン酸ナトリウムを、澱粉スラリーの澱粉乾燥物重量に対する添加量が0.08質量%となる量で添加した以外は澱粉No.5と同様にしてリン酸架橋タピオカ澱粉を得た。
(澱粉No.18)
リン酸架橋剤としてトリメタリン酸ナトリウムを、澱粉スラリーの澱粉乾燥物重量に対する添加量が0.008質量%となる量で添加した以外は澱粉No.5と同様にしてリン酸架橋タピオカ澱粉を得た。
(澱粉No.19)
リン酸架橋剤としてトリメタリン酸ナトリウムを、澱粉スラリーの澱粉乾燥物重量に対する添加量が0.08質量%となる量で添加した以外は澱粉No.8と同様にしてアセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉を得た。
(澱粉No.20)
リン酸架橋剤としてトリメタリン酸ナトリウムを、澱粉スラリーの澱粉乾燥物重量に対する添加量が0.008質量%となる量で添加した以外は澱粉No.8と同様にしてアセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉を得た。
(澱粉No.21)
アセチル化タピオカ澱粉である日本食品化工株式会社製の「日食MT−01HL」を使用した。
(澱粉No.22)
ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉である Asia Modified Starch Co., Ltd. 製の「CLEARTEXT SA−1L」を使用した。
(澱粉No.23)
ヒドロキシプロピル化リン酸架橋タピオカ澱粉である Asia Modified Starch Co., Ltd.製の「CLEARTEXT SD-2」を使用した。
(澱粉No.24)
未加工のワキシーコーンスターチである日本食品化工株式会社製の「日食ワキシースターチY」を使用した。
(澱粉No.25)
リン酸架橋ワキシーコーンスターチである日本食品化工株式会社製の「日食ネオビスC−10」を使用した。
(澱粉No.26)
ウルチ米澱粉である上越スターチ株式会社製の「ファインスノウ」を使用した。
(澱粉No.27)
モチ米澱粉である上越スターチ株式会社製の「モチールB」を使用した。
(澱粉No.28)
リン酸架橋ウルチ米澱粉である Asia Modified Starch Co., Ltd. 製の「Neovis R-400」を使用した。
(澱粉No.29)
リン酸架橋モチ米澱粉である Asia Modified Starch Co., Ltd. 製の「Neovis G-800」を使用した。
(澱粉No.30)
アセチル化モチ米澱粉である Asia Modified Starch Co., Ltd. 製の「MG-09」を使用した。
表1には、各澱粉について、アミログラフィー分析でのピーク粘度及びブレークダウン、加熱溶解度、アセチル基含量、アジピン酸基含量の測定結果を示す。なお、参考例に用いた馬鈴薯澱粉は、加熱溶解度の測定において遠心分離によって液を沈澱層と上層に分けることができなかったため、測定不能とした。
一般に澱粉粒に架橋構造を付与することで加熱による膨潤が抑制され、ピーク粘度が低下することが知られている。また、架橋構造により澱粉粒の崩壊が生じ難くなるため、ブレークダウンが生じ難くなる。即ち、架橋構造を付与するとピーク粘度及びブレークダウンが抑制される。これに対して、上記澱粉No.1〜11(実施例1〜11)に調製した程度に微弱に架橋構造を付与したタピオカ澱粉では、表1に示すように、ピーク粘度が上昇しつつ、ブレークダウンが適度に抑制されたものを得ることができた。これはその架橋構造によって、加熱による膨潤の抑制を伴わずに、澱粉粒の崩壊を抑制できるためであると考えられた。
なお、架橋構造の程度との関係を測るため、アジピン酸基含量又はリン酸基含量にして測定しようとしても、それらの下限値は、用いた通常の測定方法では検出限界以下であった。これは上記効果が、極僅かな架橋構造の付与による効果であるためと考えられた。
[試験例1]
水産練製品に配合する澱粉として上記表1に示した各種澱粉を使用し、かまぼこを製造した。具体的には、冷凍スケソウダラのすり身を解凍し、直径4.8cmのプレートを取り付けたミートチョッパーでチョッピングした。さらにフードカッターで粗ずりを行った。そこに、表2の配合により、食塩と半量の氷を添加しカッティングした後、澱粉と残り半量の氷水を添加し、カッティングした。得られた生地を直径45mm厚さの筒状の塩化ビニリデン製フィルムに充填し、92℃の蒸し器で中心温度が85℃となるまで加熱し、ケーシングかまぼこを得た。
得られたかまぼこについて、一週間冷蔵保存又は冷凍保存した後、離水試験及び食感の官能評価を行った。
離水試験は、かまぼこを厚さ5mmにスライスし、重さ1kgの荷重を30分間かけ、染み出した水分量を測定して、かまぼこ質量当たりの圧出水分(%)を算出することにより行った。その評価基準は、圧出水分7以上8%未満を5点、8以上9%未満を4点、9以上10%未満を3点、10以上11%未満を2点、11%以上を1点とした。
また、食感の官能評価は、一般的に使用されることが多い馬鈴薯澱粉を使用した時の硬さや弾力と比較することにより行った。具体的には、その評点基準は、澱粉として馬鈴薯澱粉を用いたかまぼこを参考例として、参考例の一週間冷蔵もしくは冷凍後と同等程度の硬さを呈した場合を3点、参考例よりもやや硬い食感を呈した場合を4点、参考例よりもかなり硬い食感をした場合を5点、参考例よりもやや柔らかな食感を呈した場合を2点、参考例よりもかなり柔らかい食感を呈した場合を1点とした。また、澱粉として馬鈴薯澱粉を用いたかまぼこを参考例として、参考例の一週間冷蔵もしくは冷凍後と同等程度の弾力を呈した場合を3点、参考例よりもややしなやかな弾力を呈した場合を4点、参考例よりもかなりしなやかな弾力を呈した場合を5点、参考例よりもやや脆い食感を呈した場合を2点、参考例よりもかなり脆い食感を呈した場合を1点とした。なお、食感の官能評価は8名のパネラーにより実施し、パネラーの評点の平均点を採用した。
その結果を表3に示す。
表3に示すように、6質量%でのアミログラフィー分析においてピーク粘度が800BU以上であり且つブレークダウンが150〜500BUのエステル化タピオカ澱粉を用いた実施例1〜11のかまぼこでは、馬鈴薯澱粉を用いた参考例や未加工のタピオカ澱粉を用いた比較例1に比べて圧出水分が抑制され、離水が顕著に改善された。また、実施例1〜11のかまぼこでは、馬鈴薯澱粉を用いた参考例に比べて、比較的硬い歯切れ感を呈しつつもしなやかで弾力のある独特の食感が得られた。
一方、実施例1〜4と同じアセチル化アジピン酸架橋タピオカ澱粉であって、その加工の程度によって上記アミログラフィー分析における澱粉の粘度特性の範囲に入らないものを用いた比較例2〜4では、一部では離水の程度が改善したものの、食感面で、しなやかで弾力のある独特の食感は得られなかった。実施例5〜7と同じリン酸架橋タピオカ澱粉であって、その加工の程度によって上記アミログラフィー分析における澱粉の粘度特性の範囲に入らないものを用いた比較例5、6や、実施例8〜11と同じアセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉であって、その加工の程度によって上記アミログラフィー分析における澱粉の粘度特性の範囲に入らないものを用いた比較例7、8や、アジピン酸架橋を施さずに上記アミログラフィー分析における澱粉の粘度特性の範囲に入らないアセチル化タピオカ澱粉を用いた比較例9でも、同様に、一部では離水の程度が改善したものの、食感面で、しなやかで弾力のある独特の食感は得られなかった。
他方、別種の加工によって上記アミログラフィー分析における澱粉の粘度特性の範囲に入らないタピオカ澱粉を用いた比較例10、11や、コーンスターチ、ウルチ米澱粉、モチ米等他の種類の澱粉やその加工澱粉を用いた比較例12〜18では、かまぼことしての歯ごたえや弾力に欠けるものであった。
以上の結果から、上記実施例の試験区に用いられたエステル化タピオカ澱粉は、馬鈴薯澱粉とは粒径や粒強度が異なるタピオカ澱粉を原料としつつも、微弱なエステル化の加工が施されることで、加熱時の粒の糊化や膨化の進行度合いが、水産練製品に独特の食感を付与するうえで最適な物性に調節されたと考えられた。また、上記実施例の試験区に用いられたエステル化タピオカ澱粉は、糊化や膨化した後の保存中の物性変化が起こり難く、離水を抑制する効果にも優れているものと考えられた。

Claims (5)

  1. 6質量%でのアミログラフィー分析においてピーク粘度が800BU以上であり且つ該ピーク粘度からボトム粘度を差し引いたブレークダウンが150〜500BUであるエステル化タピオカ澱粉であって、下記(1)〜(3)からなる群から選ばれた1種又は2種以上の該エステル化タピオカ澱粉を含有することを特徴とする水産練製品。
    (1)アセチル化アジピン酸架橋タピオカ澱粉
    (2)リン酸架橋タピオカ澱粉
    (3)アセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉
  2. 前記エステル化タピオカ澱粉の加熱溶解度が15〜40%である請求項1記載の水産練製品。
  3. 前記エステル化タピオカ澱粉は、アセチル基含量が0.1〜1質量%のアセチル化アジピン酸架橋タピオカ澱粉及び/又はアセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉である請求項1又は2記載の水産練製品。
  4. 前記エステル化タピオカ澱粉は、アジピン酸基含量が0.01質量%を超えないアセチル化アジピン酸架橋タピオカ澱粉である請求項1〜のいずれか1つに記載の水産練製品。
  5. 6質量%でのアミログラフィー分析においてピーク粘度が800BU以上であり且つ該ピーク粘度からボトム粘度を差し引いたブレークダウンが150〜500BUであるエステル化タピオカ澱粉であって、下記(1)〜(3)からなる群から選ばれた1種又は2種以上の該エステル化タピオカ澱粉を含有する水産練製品の生地を調製し、適宜形状に成形して、加熱処理することを特徴とする水産練製品の製造方法。
    (1)アセチル化アジピン酸架橋タピオカ澱粉
    (2)リン酸架橋タピオカ澱粉
    (3)アセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉
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