JP5765276B2 - 耐久性に優れた電縫溶接用インピーダーの保護カバー - Google Patents
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(1) 鋼板を管状に成形加工し、前記鋼板の突合せ端面に、還元性高温層流プラズマを照射しつつ電縫溶接する際に溶接点近傍に設置されるインピーダーの保護カバーであって、
前記保護カバーが、Y2Si2O7相、Er2Si2O7相、Yb2Si2O7相の少なくとも1相を2.5〜4.8質量%、Si2N2O相を2〜6.5質量%、平均粒径0.1μm以上0.7μm以下のSiC質粒子を2〜5質量%含み、残部がβ−Si3N4及び不可避的不純物からなり、前記不可避的不純物である金属酸化物量が0.5質量%以下であり、前記β−Si 3 N 4 相の平均粒径が5μm以下かつアスペクト比が10以下であり、95%以上の相対密度を有する窒化珪素質セラミックス焼結体で構成され、前記窒化珪素質セラミックス焼結体の100kHz以上の誘電損失(tanδ)が0.30以下であり、比誘電率(εr)が40以下であることを特徴とする耐久性に優れた電縫溶接用インピーダーの保護カバー。
(2) 前記窒化珪素質セラミックス焼結体が98%以上の相対密度を有し、JIS R 1601準拠の試験片の水中急冷法により求まる耐熱衝撃性が1000℃以上であることを特徴とする(1)に記載の耐久性に優れた電縫溶接用インピーダーの保護カバー。
図1は、電縫鋼管の製造工程を示す模式図である。図1においては、帯状の鋼板101を図の奥側に向けて連続的に搬送しながら、多段ロール群を用いて鋼板101を管状に成形し、その突合せ端面104を高周波コイル102による誘導加熱、または、コンタクトチップによる直接通電加熱による溶融を行いながら、スクイズロール103によるアップセット(溶融させながら押し付ける)を加えることで、突合せ端面104に溶接シーム107を形成して電縫鋼管としている。
CxHyM+(z/2)O2→xCO2+(y/2)H2O+M+ηCO+ξH…(1)
ただし、M:燃料中のC及びH以外のその他成分、
z<4x+y、x>0、y>0、z>0、η>0、ξ>0
CxHyM+(z/2)O2→xCO2+(y/2)H2O+M…(2)
Arの主ガス中のH2は、突合せ端面における酸化反応を抑制する作用を有し、この作用を十分に得るためにはH2の含有量を5体積%以上とする。その含有量の上限は特に限定する必要はないが、通常、40%を超えるとプラズマが不安定になるためその上限は40%とする。
すなわち、Y2Si2O7相、Er2Si2O7相、Yb2Si2O7相の少なくとも1相を4.8質量%以下とすることで、高温での長期耐久性を確保できる。
但し、抗折強さ500MPa以上の高強度が維持できる温度は、特に規定をするものではないが、1550〜1600℃程度までは、高強度が十分に維持できる。
同様に、Y2Si2O7結晶相、Er2Si2O7相、Yb2Si2O7相は、粉末X線回折法により同定されるY2Si2O7結晶、Er2Si2O7結晶、Yb2Si2O7結晶と同じ型のX線回折パターンを持ち、それぞれY2O3とSiO2、Er2O3とSiO2、Yb2O3とSiO2からなる化合物の中で高温酸化雰囲気中にて最も安定な化合物である。
また、β−Si3N4結晶相はJCPDSカード33−1160で示されるβ−Si3N4結晶と同じ型のX線回折パターンを持つ。
次に、本発明の熱処理炉に用いる窒化珪素質セラミックス焼結体の製造方法について説明する。
原料として使用される窒化珪素粉末は、α型の結晶構造をもつSi3N4粉末が焼結性の点から好適であるが、β型あるいは非晶質Si3N4粉末が含まれていても構わない。焼結時に十分に高い密度とするためには、Si3N4粉末が平均粒径1μm以下の微粒子であることが望ましい。
窒化珪素は共有結合性の強い物質であり、単独では焼結が困難であることが多いため、一般に緻密化するために焼結助剤を添加する。
あるいは、これらに酸化物換算によって添加量が求められる、酸窒化物(Si2N2O)、及び酸化珪素、酸化イットリウム、酸化エルビウム、酸化イッテルビウムの複合酸化物(Y2SiO5やY2Si2O7、Er2SiO5やEr2Si2O7、Yb2SiO5やYb2Si2O7など)を用いてもよい。
しかし、通常の酸化層を有する窒化珪素粉末ならば、酸化珪素が3質量%未満の場合は、Y2Si2O7相、Er2Si2O7相、Yb2Si2O7相の少なくとも1相及びSi2N2O相が形成されない。
一方、酸化珪素が7質量%を超えると、Y2Si2O7相、Er2Si2O7相、Yb2Si2O7相の少なくとも1相及びSi2N2O相が形成されず、比較的低融点のSiO2相が形成され、高温での機械的強度が低下するため好ましくない。
一方、酸化イットリウム、酸化エルビウム、酸化イッテルビウムの少なくとも1種の添加量が6質量%を超えると、Y2Si2O7相、Er2Si2O7相、Yb2Si2O7相の少なくとも1相が形成されず、比較的低融点のY2SiO5相、Er2SiO5相、Yb2SiO5相が形成され、焼結体の高温での機械的強度および耐酸化性が低下する。
Y2Si2O7相、Er2Si2O7相、Yb2Si2O7相の少なくとも1相及びSi2N2O相が形成され、比較的低融点のY2SiO5相、Er2SiO5相、Yb2SiO5相が形成されない焼結体は、100kHz以上の交流電場中の誘電損失を避けるため誘電損失(tanδ)が0.30以下となり、比誘電率(εr)が40以下となり、1400℃で300MPaの4点曲げ歪速度が1×10-9/sec.以下を満たすものになる。
SiC質微粒子の生成・分散に用いるポットやボールの材質としては、実質的にSiC質焼結体の本体及び蓋からなるものが好ましく、大量製造用のポットミルではライナーとしてSiC製タイルを貼り付けたものを用いるこことができる。
また、摩耗混入質量について、混合方法、回転数、他の原料粉末の粒径等によって若干の違いは認められるが、おおよそポット内壁摩耗:ボール摩滅=1:10〜20(質量比)でボール摩滅が圧倒的に多い。
混入量としては、2質量%未満では母相結晶粒の成長抑制効果が乏しく、5質量%を超すと母相の柱状成長並びに結晶相の交差による高靭化を阻害するため好ましくない。
窒素ガスを含む雰囲気で焼結するのは、焼結中でのSi3N4の分解を抑制するためである。Si3N4は窒素ガス0.1MPa下では約1800℃以上で分解が生じるため、1800℃以上にて焼結を行う場合は、窒素ガス圧を焼結温度におけるSi3N4の臨界分解圧力以上に設定するようにする。
無加圧及び熱間静水圧プレス焼結条件としては、焼結温度が1770〜1850℃であることが望ましい。1770℃未満では、緻密な焼結体が得られず、固溶体粒子近傍に残留応力を十分に発生させることが困難となり、高靭性の焼結体とすることができない。
一方、1850℃を超える高温では、β−Si3N4結晶粒が粗大化したり、Si2N2O相、Y2Si2O7相、Er2Si2O7相、Yb2Si2O7相の分解などにより強度低下を起こし、高硬度と耐熱衝撃性が得られない。
窒化珪素(Si3N4)粉末(α化率97%以上、純度99.7%、平均粒径0.7μm)に、酸化イットリウム(Y2O3)粉末(平均粒径2.5μm)、酸化エルビウム(Er2O3)粉末(平均粒径2.4μm)、酸化イッテルビウム(Yb2O3)粉末(平均粒径1.8μm)、酸化イットリウムと酸化珪素の複合酸化物(Y2SiO5)粉末(平均粒径2.9μm)、酸化イッテルビウムと酸化珪素の複合酸化物(Yb2Si2O7)粉末(平均粒径2.7μm)、酸化珪素(SiO2)粉末(平均粒径1.9μm)を、下記表1に示す所定量(質量%)添加し、分散媒として精製水またはアセトンを用い、混合用ボールは直径10mmのSiCボールをセラミックス全粉末原料100gに対し2倍の200gの割合で用い、SiCタイルを内壁及び蓋に内貼りしたボールミルで48時間混練した。尚、精製水またはアセトンの添加量は、セラミックス全粉末原料100gに対し120gとした。
また、各実施例において、X線回折パターンより求められる結晶相割合と比較を行った。尚、各種結晶相の比率に関して、予めX線回折ピーク高さから求めた検量線に従って求めた。100kHz以上の交流電場中の誘電損失(tanδ)及び比誘電率(εr)、JIS-R1601準拠の試験片の大気中1400℃で300MPaの4点曲げ負荷をかけた際の歪速度を測定した結果を表2に示す。同準拠の試験片を用いて、水中急冷法により求まる耐熱衝撃性と、大気中、1250℃×64時間保持後の酸化増量を求めた結果も表2に示す。
実施例3〜5については、窒素ガス0.4MPa加圧雰囲気中にて、表1中に示す温度で8時間保持のガス圧焼結を行い、表1記載の常温までの降温時放冷を行った後に、窒素雰囲気中1550℃まで再加熱し表1記載の保持時間の後、降温時放冷を行い、実施例1〜5の焼結体を得た。
比較例6、7は実施例1〜5と同一原料を用いるが、ポットの内壁や蓋もボールもSiC材を用いずSi3N4材を用い、同じく精製水またはアセトンで調製したが、それぞれ異常粒成長により相対密度が98%を下回った場合(比較例6)、Si2N2O相、Y2Si2O7相が得られなかった場合(比較例7)の各比較例である。これらを併せて表1、2に示す。
また、実施例1〜5、および、比較例6、7の焼結体を、図2に示した実操業設備である電縫鋼管製造ラインのインピーダー保護カバーに適用した。実機搭載後、耐久性を確認した結果、実施例1〜5の焼結体は、稼働時間100時間でも、破損や酸化層の形成による粗面化、クリープ変形等は観測されなかった。本発明のセラミックス保護カバーによってインピーダーの性能低下が認められないことも確認できた。
これに対し、比較例6、7の焼結体を搭載した場合、誘電損失が大きく、耐クリープ性と耐酸化性が劣ることから5時間以内に破損やクリープ変形、酸化層の形成による粗面化などが観測された。
Claims (2)
- 鋼板を管状に成形加工し、前記鋼板の突合せ端面に、還元性高温層流プラズマを照射しつつ電縫溶接する際に溶接点近傍に設置されるインピーダーの保護カバーであって、
前記保護カバーが、Y2Si2O7相、Er2Si2O7相、Yb2Si2O7相の少なくとも1相を2.5〜4.8質量%、Si2N2O相を2〜6.5質量%、平均粒径0.1μm以上0.7μm以下のSiC質粒子を2〜5質量%含み、残部がβ−Si3N4及び不可避的不純物からなり、前記不可避的不純物である金属酸化物量が0.5質量%以下であり、前記β−Si 3 N 4 相の平均粒径が5μm以下かつアスペクト比が10以下であり、95%以上の相対密度を有する窒化珪素質セラミックス焼結体で構成され、
前記窒化珪素質セラミックス焼結体の100kHz以上の誘電損失(tanδ)が0.30以下であり、比誘電率(εr)が40以下であることを特徴とする耐久性に優れた電縫溶接用インピーダーの保護カバー。 - 前記窒化珪素質セラミックス焼結体が98%以上の相対密度を有し、JIS R 1601準拠の試験片の水中急冷法により求まる耐熱衝撃性が1000℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の耐久性に優れた電縫溶接用インピーダーの保護カバー。
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