JP5765179B2 - 電気化学デバイス用正極材料およびこれを用いた電気化学デバイス - Google Patents

電気化学デバイス用正極材料およびこれを用いた電気化学デバイス Download PDF

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Description

本発明は、電気化学デバイス用正極材料およびこれを用いた電気化学デバイスに関する。より詳細には、電池などの電気化学デバイスの耐久性の向上のための改良に関する。
近年、地球温暖化に対処するため、二酸化炭素排出量の低減が切に望まれている。自動車業界では、電気自動車やハイブリッド電気自動車の導入による二酸化炭素排出量の低減に期待が集まっており、これらの実用化の鍵を握るモータ駆動用電池などの電気化学デバイスの開発が盛んに行われている。
モータ駆動用電池としては、比較的高い理論エネルギーを有するリチウムイオン電池が注目を集めており、現在急速に開発が進められている。リチウムイオン電池は、一般に、バインダーを用いて正極活物質等を正極集電体の両面に塗布した正極と、バインダーを用いて負極活物質等を負極集電体の両面に塗布した負極とが、電解質層を介して接続され、電池ケースに収納される構成を有している。
こうしたリチウムイオン電池を搭載した電気自動車が広く普及するためには、リチウムイオン電池を高性能にする必要がある。特に、電気自動車については、一充電あたりの走行距離をガソリンエンジン車の一給油あたりの走行距離に近づける必要があり、より高エネルギー密度の電池が望まれており、さらに、耐久性の向上も求められている。電池を高エネルギー密度にするためには、正極と負極の単位質量当たりの電気容量を大きくする必要がある。
この要請に応えられる可能性のある正極材料として、スピネル型の構造を有するLiMnなどのリチウムマンガン系複合酸化物が提案されている。しかしながら、スピネル型のリチウムマンガン系複合酸化物は、50℃を超える高温環境下で充放電したり保存したりすると容量劣化を引き起こしやすいという問題がある。このような問題を解決し、サイクル特性を向上させるために、マンガンの一部を他の元素で置換する方法が多数報告されている。この方法は、酸素過剰型のスピネル化合物の生成を促すので、この方法により室温でのサイクル特性が改善される。しかしながら、50℃以上になると単純な置換型のスピネル化合物では良好なサイクル特性を保持できない。そこで、高温でのサイクル特性を改善するために、例えば、下記特許文献1には、酸素欠損のない酸素量論性スピネル構造の化合物(酸素構造安定化スピネル)が開示されている。この酸素構造安定化スピネルを正極材料として用いることにより、60℃におけるサイクル特性が改善されたことが開示されている。
特開2005−251713号公報
しかしながら、電気自動車用電源として用いられうるリチウムイオン電池を製造するためには、特許文献1に記載の酸素構造安定化スピネルを用いても、50℃以上でのサイクル特性は十分ではなく、さらなる耐久性の改善が求められている。
そこで本発明は、高いエネルギー密度を有し、高温領域の充放電サイクル特性が改善された、電気化学デバイス用正極材料を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を行なった。その結果、LiNiMn1.5(1.3≦x≦1.5、0.4≦y≦0.5)で表されるリチウム過剰の、スピネル型構造の正極材料において、ラマン分析において所定の特徴を有するスペクトルを与える正極材料を用いることにより、上記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、LiNiMn1.5(1.3≦x≦1.5、0.4≦y≦0.5)で表され、スピネル型の結晶構造を有し、514nmのアルゴンレーザーを用いたラマン測定において、495〜505cm−1に強度Iを示すピーク、610〜620cm−1に強度Iを示すピーク、および635〜645cm−1に強度Iを示すピークを有し、I、I、およびIが、0.50<I/I≦0.60、および0.60<I/I≦0.70を満たすことを特徴とする、電気化学デバイス用正極材料である。
本発明の電気化学デバイス用正極材料によれば、Liの組成比がNi組成比に対して過剰であり、Li過剰分が、本来であれば遷移金属であるNiが占有するサイトに入る構造をとる。その結果、Mn価数が常に高い状態になって不安定なMn3+の存在割合が初期状態から小さくなり、Mn溶出による容量劣化が抑制できるため、サイクル特性が向上しうる。
本発明の代表的な一実施形態である、扁平型(積層型)の非双極型リチウムイオン二次電池の基本構成を示す概略図である。 本発明の一実施形態である積層型電池の外観を模式的に表した斜視図である。 実施例1で得られた試料のX線回折パターンである。 実施例1で得られた試料のラマンスペクトルである。 比較例1で得られた試料のラマンスペクトルである。 比較例2で得られた試料のラマンスペクトルである。 実施例1で得られた試料の充放電後に測定したラマンスペクトルである。 実施例1で得られた試料のサイクリックボルタモグラムである。 実施例1で得られた試料の(a)25℃、および(b)50℃で測定した3、10、30、50サイクルでのサイクリックボルタモグラムである。 実施例1、比較例1、2で得られた試料の(a)25℃、および(b)50℃での容量維持率を表すグラフである。
本発明の代表的な一実施形態は、LiNiMn1.5(1.3≦x≦1.5、0.4≦y≦0.5)で表され、スピネル型の結晶構造を有し、514nmのアルゴンレーザーを用いたラマン測定において、495〜505cm−1に強度Iを示すピーク、610〜620cm−1に強度Iを示すピーク、および635〜645cm−1に強度Iを示すピークを有し、I、I、およびIが、0.50<I/I≦0.60、および0.60<I/I≦0.70を満たすことを特徴とする、電気化学デバイス用正極材料である。
LiMnのようなスピネル型構造を有する正極材料は、金属リチウムに対して4Vを超える電位で可逆的にリチウムイオンを挿入、脱離することができ、高エネルギー材料として期待されている。
LiMnは動作電圧が高く、低コストで安定に供給することが可能であるが、充放電サイクルによる容量の低下が大きな課題であった。また、容量劣化に際してMnの溶解が併発し、溶解Mnが黒鉛系負極の特性の劣化も引き起こすという問題もあった。
従来、スピネル構造を有するLiMnのMnの一部を他の元素で置換して結晶構造を安定化させる方法が提案されている。特に、酸素欠損がサイクル特性に影響するとされており、50℃高温でのサイクル特性を改善するために、酸素欠損を有さない、また不活性ガス雰囲気下で熱処理した場合であっても酸素欠損を生成しない、構造安定型スピネルが提案されている。しかしながらこの構造安定型スピネルを用いても、50℃以上のサイクル特性は十分ではない。
これに対して、本実施形態の正極材料では、同様にMnの一部が遷移金属であるNiで置換され、MnやNiの部位の一部がさらに過剰なLiで置換されている。本実施形態の正極材料は、一般的なLiNi0.5Mn1.5の空間群であるFd−3mや、P432に現れるラマンスペクトルとは異なるラマンスペクトルを有する。ラマン分析の詳細については後述する。このような材料を用いることで、高温でのサイクル特性が改善され、さらに高エネルギー密度の正極材料を提供することができる。さらに、リチウムイオン電池などの電気化学デバイスにおいて、本実施形態の電気化学デバイス用正極材料を正極の主要な活物質として用いることにより、耐久性に優れる電池が得られうる。
Li過剰の組成であり、上記記載のラマンスペクトルを有するリチウムニッケルマンガン複合酸化物を用いることによって高温でのサイクル特性が改善される理由は明らかではない。しかしながら、Li過剰分が、本来であれば遷移金属であるNiが占有する部位に入り、Mnの価数が常に高い状態になることが考えられる。このことで不安定な+3価のマンガンの存在割合が初期状態から小さくなり、Mn溶出による容量劣化が抑制できるためと考えられる。ただし、このようなメカニズムによって材料の特性が向上する形態に限定されるわけではない。
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。ただし、本発明は以下の実施形態のみには制限されない。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
まず、本実施形態の正極材料が適用され得る電気化学デバイスの基本的な構成を、図面を用いて説明する。本実施形態では、電気化学デバイスとしてリチウムイオン電池を例示して説明する。
[電池の全体構造]
本発明において、リチウムイオン電池は、本実施形態の電気化学デバイス用正極材料を用いてなるものであればよく、他の構成要件に関しては特に制限されない。
例えば、上記リチウムイオン電池を形態・構造で区別した場合には、積層型(扁平型)電池、巻回型(円筒型)電池など、従来公知のいずれの形態・構造にも適用し得るものである。積層型(扁平型)電池構造を採用することで簡単な熱圧着などのシール技術により長期信頼性を確保でき、コスト面や作業性の点では有利である。
また、リチウムイオン電池内の電気的な接続形態(電極構造)で見た場合、非双極型(内部並列接続タイプ)電池および双極型(内部直列接続タイプ)電池のいずれにも適用し得るものである。ここで、非双極型電池では、正極活物質層または負極活物質層を正極用集電体または負極用集電体の上にそれぞれ形成して電極(正極または負極)を構成する。双極型の電池の場合には、集電体の一方の面に正極活物質層を、反対側の面に負極活物質層を積層して双極型電極を構成する。
以下の説明では、代表的な実施形態として、電気化学デバイス用正極材料を用いてなる非双極型(内部並列接続タイプ)リチウムイオン二次電池である場合を例に挙げて説明する。ただし、本発明の技術的範囲は下記の形態のみに制限されない。
図1は、本発明の一実施形態である、扁平型(積層型)の非双極型リチウムイオン二次電池(以下、単に「積層型電池」ともいう)の基本構成を示す概略図である。図1に示すように、本実施形態の積層型電池10は、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素21が、外装体であるラミネートシート29の内部に封止された構造を有する。ここで、発電要素21は、負極集電体11の両面に負極活物質層13が配置された負極と、電解質層17と、正極集電体12の両面に正極活物質層15が配置された正極とを積層した構成を有している。具体的には、1つの負極活物質層13とこれに隣接する正極活物質層15とが、電解質層17を介して対向するようにして、負極、電解質層および正極がこの順に積層されている。
これにより、隣接する負極、電解質層および正極は、1つの単電池層19を構成する。したがって、本実施形態の積層型電池10は、単電池層19が複数積層されることで、電気的に並列接続されてなる構成を有するともいえる。なお、発電要素21の両最外層に位置する最外層負極集電体には、いずれも片面のみに負極活物質層13が配置されているが、両面に活物質層が設けられてもよい。すなわち、片面にのみ活物質層を設けた最外層専用の集電体とするのではなく、両面に活物質層がある集電体をそのまま最外層の集電体として用いてもよい。また、図1とは正極および負極の配置を逆にすることで、発電要素21の両最外層に最外層正極集電体が位置するようにし、該最外層正極集電体の片面または両面に正極活物質層が配置されているようにしてもよい。
負極集電体11および正極集電体12は、各電極(負極および正極)と導通される負極集電板25および正極集電板27がそれぞれ取り付けられ、ラミネートシート29の端部に挟まれるようにしてラミネートシート29の外部に導出される構造を有している。負極集電板25および正極集電板27はそれぞれ、必要に応じて負極リードおよび正極リード(図示せず)を介して、各電極の負極集電体11および正極集電体12に超音波溶接や抵抗溶接等により取り付けられていてもよい。
以下、本実施形態の電池を構成する部材について、詳細に説明する。
(電気化学デバイス用正極材料)
本発明では、前記正極(正極活物質層)の主要な活物質が、LiNiMn1.5(1.3≦x≦1.5、0.4≦y≦0.5)で表され、スピネル型の結晶構造を有し、514nmのアルゴンレーザーを用いたラマン測定において、495〜505cm−1に強度Iを示すピーク、610〜620cm−1に強度Iを示すピーク、および635〜645cm−1に強度Iを示すピークを有し、I、I、およびIが、0.50<I/I≦0.60、および0.60<I/I≦0.70を満たすことを特徴とする、電気化学デバイス用正極材料であることを特徴とする。
本実施形態の正極材料は、スピネル型の結晶構造を有する。かような構造は、活物質の電子線回折あるいはX線回折から確認することができ、X線回折では(111)のピークが18°<2θ<19°にメインピークとして現れる。また、(311)のピークが36°<2θ<37°、(400)のピークが44°<2θ<45°に比較的強いピーク強度で現れ、これらのピークからスピネル型の結晶構造であることを判断できる。
また、本実施形態の正極材料LiNiMn1.5において、Liの組成比xは、1.3以上であり、好ましくは1.4以上であり、LiNi0.5Mn1.5と比較してLi過剰の組成を有する。Li過剰の組成とすることで、例えばスピネル構造を有するLiNi0.5Mn1.5においてNiが占有する部位の一部が過剰なLiによって置換され、Mnの価数が常に高い状態になっていると考えられる。このことで、不安定な+3価のMnの存在割合が初期状態から小さくなり、Mn溶出による容量劣化が抑制できると考えられる。また、本実施形態の正極材料LiNiMn1.5において、Liの組成比xは、1.5以下である。上記範囲であれば、高エネルギー密度の正極材料が得られうる。また、Niの組成比yは、0.4〜0.5である。なお、本実施形態の正極材料の組成は、誘導結合プラズマ発光質量分析(ICP−MS)によって求めることができる。
また、本実施形態の正極材料LiNiMn1.5において、x/yの値は、好ましくは2.60〜3.75であり、より好ましくは2.80〜3.50である。上記範囲であれば、高い耐久性を示す正極材料が得られうる。
後述の実施例で説明するように、本実施形態の正極材料は、514nmのアルゴンイオンレーザーを用いたラマンスペクトルにおいて、495〜505cm−1の領域に強度Iを示すメインピークを有する。また、610〜620cm−1の領域に強度Iを有するピーク1、および635〜645cm−1の領域に強度Iを有するピーク2を有する。
さらに、本発明者らは、これらのピークの強度比が、充放電前の状態において、0.50≦I/I<0.60、および0.60≦I/I<0.70の関係を満たす正極材料が、高温において特に良好なサイクル特性を与えることを見いだした。ここで、ラマンスペクトルにおけるピークは特定の分子振動に対応する信号の極大であり、ピーク強度I、I、Iはそれぞれのピークの最大の高さである。
このようなピーク強度比は、空間群がFd−3mである構造を有するLiNi0.5Mn1.5のラマンスペクトルの強度比とも、空間群がP432である構造を有するLiNi0.5Mn1.5のラマンスペクトルの強度比とも一致しない新たなラマンスペクトルを持つ。このことから、本実施形態のLiNiMn1.5(1.3≦x≦1.5、0.4≦y≦0.5)は、既報のLiNi0.5Mn1.5とは異なる結晶構造を有する新規材料であると考えられる。
本実施形態の正極材料は、リチウムに対して、好ましくは4.0V以上、より好ましくは4.3V以上、さらに好ましくは4.5V以上でリチウムイオンの可逆的な挿入脱離反応が進行する。リチウムイオンの挿入脱離反応が進行する電位は電気化学測定(CV)によって求めることができる。
また、本実施形態の正極材料は、好ましくは、これを用いた正極、負極、およびリチウムイオン伝導性非水電解質を含むリチウムイオン電池において少なくとも1回のSOC100%の充電を行った後、SOC20%以下において測定した514nmのアルゴンレーザーを用いたラマン測定において、I/I≧0.70を満たす。1回以上の充放電後、すなわち実際に電池が動作している状態において、上記のようなラマンスペクトルを与える結晶構造を有する正極材料であれば、高温で充放電を繰り返すことによる容量低下を抑える効果がより高い。
本実施形態の正極材料は、この材料の物性を有していれば、形状は特に制限されない。例えば、本実施形態の正極材料は、粉末粒子の形態であってもよく、薄膜の形態であってもよい。例えば、薄膜の形態の正極材料を作製し、薄型の全固体型電池の正極として用いることができる。
次に、本実施形態の正極材料の作製方法としては、特に制限されず、従来公知の作製方法を適宜利用して行うことができる。例えば、後述する実施例に示すように、薄膜状の正極材料を作製する場合、例えばDCまたはRFマグネトロンスパッタリングを用いて成膜することができる。好ましくは、RFマグネトロンスパッタリングを用いて以下のように行うことができる。
薄膜状の正極材料を作製するための基板としては、特に制限されないが、例えば白金、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス鋼(SUS)、チタンまたは銅などが用いられうる。
ターゲットとしては、リチウム過剰であるニッケルマンガン酸リチウムを用いることが好ましく、例えば、LiNi0.5Mn1.5(ここで1.15≦x≦1.5、3.5≦z≦4.5である)が好ましく用いられうる。このようなターゲットを用いることで、本実施形態のリチウム過剰な正極材料が得られうる。ターゲットの調製方法としては特に制限されず、従来公知の方法が採用されうる。
スパッタリングパワーについても特に制限されない。例えば、0.1〜2.5W/cmであり、好ましくは0.2W〜1.0W/cmである。成膜時間は、特に制限されないが、例えば、0.5〜10時間であり、好ましくは、1〜5時間である。
また、酸化物の薄膜を作製する際には、例えば、Oを混合したAr雰囲気下で行うことが好ましく、酸素濃度は好ましくは20〜30%である。上記範囲であれば安定して上記正極材料の薄膜を作製することができる。成膜圧力は、好ましくは1〜8Paである。
本実施形態の正極材料を作製する際には、スパッタ基板温度を、好ましくは700℃以上、より好ましくは720℃以上とする。スパッタ基板温度を700℃以上とすることで、調製後の充放電前の状態でのアルゴンイオンレーザーを用いたラマン測定において、上記のような新たなラマンスペクトルを示す正極材料が得られうる。スパッタ温度の上限値は特に制限されないが、例えば、850℃以下である。
上記で作製された薄膜の厚さは特に制限されないが、例えば5〜1000nmであり、好ましくは10〜100nmであり、さらに好ましくは20〜50nmである。
なお、上記で作製された正極材料の構造は、電子線回折、X線回折(XRD)、誘導結合プラズマ(ICP)元素分析を用いて分析することができる。
以上が、本実施形態のリチウムイオン電池の特徴的な構成要件に関する説明であり、他の構成要件に関しては特に制限されるものではない。よって、以下では、本発明のリチウムイオン電池の特徴的な構成要件以外の他の構成要件に関し、上記した積層型電池10の各構成要件を中心に、以下説明する。ただし、積層型電池以外の電池、例えば双極型電池の各構成要件に関しても、同様の構成要件を適宜利用して構成することができることは言うまでもない。
[集電体]
集電体(負極集電体11、正極集電体12)としては、いずれも電池用の集電体材料として従来用いられている部材が適宜採用されうる。一例を挙げると、正極集電体および負極集電体としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス鋼(SUS)、チタンまたは銅が挙げられる。中でも、電子伝導性、電池作動電位という観点からは、正極集電体としてはアルミニウムが好ましく、負極集電体としては銅が好ましい。集電体の一般的な厚さは、10〜20μmである。ただし、この範囲を外れる厚さの集電体を用いてもよい。集電板についても、集電体と同様の材料で形成することができる。
[活物質層]
活物質層(負極活物質層13、正極活物質層15)は活物質(負極活物質、正極活物質、参照極活物質)を含んで構成される。さらに、これらの活物質層は、必要に応じてバインダー、電気伝導性を高めるための導電剤、電解質(ポリマーマトリックス、イオン伝導性ポリマー、電解液など)、イオン伝導性を高めるための電解質支持塩(リチウム塩)などを含む。
(a)活物質
正極活物質および負極活物質の材料(材質)としては、本発明のリチウムイオン電池の特徴的な構成要件を具備するものであればよく、特に制限されるものではなく、電池の種類に応じて適宜選択すればよい。
具体的には、正極活物質としては、本実施形態の電気化学デバイス用正極材料を正極の主要な活物質として用いる。正極活物質としては、上述の正極材料を単独で使用してもよいほか、さらに必要に応じて、従来公知の他の正極活物質を併用してもよい。本発明の効果を顕著に発揮するために、上述の正極材料を活物質中に、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上含む。
負極活物質はリチウムを可逆的に吸蔵および放出できるものであれば特に制限されず、従来公知の負極活物質をいずれも使用できる。例えば、高結晶性カーボンであるグラファイト(天然グラファイト、人造グラファイト等)、低結晶性カーボン(ソフトカーボン、ハードカーボン)、カーボンブラック(ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック等)、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、カーボンフィブリルなどの炭素材料;Si、Ge、Sn、Pb、Al、In、Zn、H、Ca、Sr、Ba、Ru、Rh、Ir、Pd、Pt、Ag、Au、Cd、Hg、Ga、Tl、C、N、Sb、Bi、O、S、Se、Te、Cl等のリチウムと合金化する元素の単体、およびこれらの元素を含む酸化物(一酸化ケイ素(SiO)、SiO(0<x<2)、二酸化スズ(SnO)、SnO(0<x<2)、SnSiOなど)および炭化物(炭化ケイ素(SiC)など)等;リチウム金属等の金属材料;リチウム−チタン複合酸化物(チタン酸リチウム:LiTi12)等のリチウム−遷移金属複合酸化物;ならびにその他の従来公知の負極活物質が使用可能である。上記負極活物質は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
各活物質層(13、15)に含まれるそれぞれの活物質の形状は特に制限されず、薄膜状であっても粒子状であってもよい。粒子状の活物質を用いる場合、平均粒子径は特に制限されないが、高容量化、反応性、サイクル耐久性の観点から、通常は0.1〜100μm程度であり、好ましくは1〜20μmである。
各活物質層(13、15)中に含まれる成分の配合比は特に限定されず、リチウムイオン二次電池またはリチウムイオン電池についての公知の知見を適宜参照することにより、調整されうる。また、活物質層の厚さについても特に制限はなく、リチウムイオン二次電池またはリチウムイオン電池についての従来公知の知見が適宜参照されうる。一例を挙げると、活物質層の厚さは、2〜100μm程度である。
(b)バインダー
バインダーは、活物質同士または活物質と集電体とを結着させて電極構造を維持する目的で添加されうる。
かようなバインダーとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ酢酸ビニル、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)およびポリアクリロニトリル(PAN)などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、およびユリア樹脂などの熱硬化性樹脂、ならびにスチレンブタジエンゴム(SBR)などのゴム系材料が挙げられる。
(c)導電剤
導電剤とは、導電性を向上させるために配合される導電性の添加物をいう。本実施形態で使用しうる導電剤は特に制限されず、従来公知のものを利用することができる。例えば、アセチレンブラック等のカーボンブラック、グラファイト、炭素繊維などの炭素材料が挙げられる。導電剤を含むと、活物質層の内部における電子ネットワークが効果的に形成され、電池の出力特性の向上、電解液の保液性の向上による信頼性向上に寄与しうる。
(d)電解質
電解質としては、後述する[電解質層]の項で説明する液体電解質、ゲルポリマー電解質、および真性ポリマー電解質を特に制限なく用いることができる。液体電解質、ゲルポリマー電解質、および真性ポリマー電解質の具体的な形態については、後述する(電解質層)の項で説明するため、詳細はここでは省略する。これらの電解質は1種単独であってもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、後述する電解質層に用いた電解質と異なる電解質を用いてもよいし、同一の電解質を用いてもよい。
[電解質層]
電解質層は、非水電解質を含む層である。電解質層に含まれる非水電解質(具体的には、リチウム塩)は、充放電時に正負極間を移動するリチウムイオンのキャリアーとしての機能を有する。非水電解質としてはかような機能を発揮できるものであれば特に限定されないが、液体電解質またはポリマー電解質が用いられうる。
液体電解質は、可塑剤である有機溶媒に支持塩であるリチウム塩が溶解した形態を有する。可塑剤として用いられうる有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)等のカーボネート類が例示される。また、支持塩(リチウム塩)としては、Li(CFSON、Li(CSON、LiPF、LiBF、LiAsF、LiTaF、LiClO、LiCFSO等の電極の活物質層に添加されうる化合物が同様に採用されうる。
一方、ポリマー電解質は、電解液を含むゲルポリマー電解質(ゲル電解質)と、電解液を含まない真性ポリマー電解質に分類される。
ゲルポリマー電解質は、イオン伝導性ポリマーからなるマトリックスポリマー(ホストポリマー)に、上記の液体電解質が注入されてなる構成を有する。電解質としてゲルポリマー電解質を用いることで電解質の流動性がなくなり、各層間のイオン伝導性を遮断することが容易になる点で優れている。マトリックスポリマー(ホストポリマー)として用いられるイオン伝導性ポリマーとしては、特に限定されない。例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体(PVDF−HFP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)およびこれらの共重合体等が挙げられる。ここで、上記のイオン伝導性ポリマーは、活物質層において電解質として用いられるイオン伝導性ポリマーと同じであってもよく、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。電解液(電解質塩および可塑剤)の種類は特に制限されず、上記で例示したリチウム塩などの電解質塩およびカーボネート類などの可塑剤が用いられうる。
真性ポリマー電解質は、上記のマトリックスポリマーに支持塩(リチウム塩)が溶解してなる構成を有し、可塑剤である有機溶媒を含まない。従って、電解質として真性ポリマー電解質を用いることで電池からの液漏れの心配がなく、電池の信頼性が向上しうる。
ゲルポリマー電解質や真性ポリマー電解質のマトリックスポリマーは、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度を発現しうる。架橋構造を形成させるには、適当な重合開始剤を用いて、高分子電解質形成用の重合性ポリマー(例えば、PEOやPPO)に対して熱重合、紫外線重合、放射線重合、電子線重合等の重合処理を施せばよい。
これらの電解質層に含まれる非水電解質は、1種単独であってもよいし、2種以上であってもよい。
なお、電解質層が液体電解質やゲルポリマー電解質から構成される場合には、電解質層にセパレータを用いる。セパレータの具体的な形態としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンからなる微多孔膜が挙げられる。
電解質層の厚さは、内部抵抗を低減させるには薄ければ薄いほどよいといえる。電解質層の厚さは、通常1〜100μm、好ましくは5〜50μm、とするのがよい。
[外装体]
リチウムイオン二次電池では、使用時の外部からの衝撃や環境劣化を防止するために、発電要素全体を外装体に収容するのが望ましい。外装体としては、従来公知の金属缶ケースを用いることができほか、アルミニウムを含むラミネートフィルムを用いた発電要素を覆うことができる袋状のケースを用いることができる。ラミネートフィルムには、例えば、PP、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。
[電池の外観]
図2は、本発明の一実施形態である積層型電池の外観を模式的に表した斜視図である。図2に示すように、積層型電池10は、長方形状の扁平な形状を有しており、その両側部からは電力を取り出すための負極集電板25、正極集電板27が引き出されている。発電要素21は、電池10の外装体29によって包まれ、その周囲は熱融着されており、発電要素21は負極集電板25および正極集電板27を引き出した状態で密封されている。ここで、発電要素21は、図2に示す積層型電池10の発電要素21に相当し、負極(負極活物質層)13、電解質層17および正極(正極活物質層)15で構成される単電池層(単セル)19が複数積層されたものである。
なお、上記実施形態では、電気化学デバイスとして、図1に示すような扁平な形状(積層型)のリチウムイオン電池を例示したが、これに制限されるわけではない。例えば、巻回型のリチウムイオン電池では、円筒型形状のものであってもよいし、こうした円筒型形状のものを変形させて、長方形状の扁平な形状にしたようなものであってもよい。上記円筒型の形状のものでは、その外装材に、ラミネートシートを用いてもよいし、従来の円筒缶(金属缶)を用いてもよく、特に制限はない。また、他のタイプの二次電池、さらには一次電池にも適用できる。また電池だけではなくキャパシターにも適用できる。
また、図2に示す集電板25、27の取り出しに関しても、特に制限されず、負極集電板25と正極集電板27とを同じ辺から引き出すようにしてもよいし負極集電板25と正極集電板27をそれぞれ複数に分けて、各辺から取り出すようにしてもよい。また、巻回型の双極型二次電池では、集電板に代えて、例えば、円筒缶(金属缶)を利用して端子を形成すればよい。
本実施形態によれば、高温でのサイクル特性が良好な正極材料を正極活物質として用いるため、耐久性に優れるリチウムイオン電池が提供されうる。本実施形態のリチウムイオン電池は、電気自動車やハイブリッド電気自動車や燃料電池車やハイブリッド燃料電池自動車などの大容量電源として、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に好適に利用することができる。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
1.正極材料の作製
<実施例1>
Li1.2Ni0.5Mn1.5(3.5≦z≦4.5)のLi過剰なターゲットを用い、Pt基板上にマグネトロンスパッタリングにより正極材料を薄膜として作製した。スパッタ基板温度は750℃であり、RFパワーは0.6W/cm、雰囲気はAr希釈の25%O混合雰囲気下で1.5〜3時間のスパッタ時間で行った。
<比較例2>
ターゲットにLi1.1Ni0.5Mn1.5(3.5≦z≦4.5)を用い、他の条件は実施例1と同様にして正極材料を作製した。
<比較例3>
スパッタ基板温度を650℃にしたことを除いては、実施例1と同様にして正極材料を作製した。
2.正極材料の分析
実施例1、比較例1、2で得られた正極材料についてX線回折測定を行った。XRD測定条件は、連続法で加速電圧45kV、電流値200mA、0.2°/minのスキャン速度で2θが10〜70°の範囲において測定を行った。図3に、実施例1で作製された正極材料の薄膜試料のXRDスペクトルを示す。図3に示すように、実施例1で作製された正極材料は、典型的なスピネル型結晶の回折パターンを示すことが確認された。また、従来のLiNi0.5Mn1.5(N.Amdouni et al.,Ionics 12(2006)117)と比較すると、ピーク角度がわずかに広角側にシフトしていた。また、不純物となる相の存在は確認されなかった。なお、比較例1、2で得られた正極材料についても同様に測定を行い、いずれもスピネル型の結晶構造をとることを確認した。
(2)元素分析
得られた試料について誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS)を行った。ICP−MSの測定条件は、作製したPt上の正極材料をそのまま硝酸系分解液に浸し、加温し、Li含有金属酸化物を溶解した後に測定した。得られた試料の組成を下記表1に示す。表1の結果から、各実施例、比較例で得られた試料の組成はLiNi0.5Mn1.5と比較してリチウム過剰の組成となっていることがわかった。
(3)ラマン測定
実施例1、比較例1、比較例2で得られた試料の顕微ラマン分析(HORIBA社製HR−800)を行った。測定条件は、10倍の対物レンズを用い、514nmの波長のアルゴンイオンレーザーを入射光に用い、スリット幅は0.1mmとした。測定範囲は200〜800cm−1とし、測定時間は60秒、積算回数を3回とした。
充放電後のラマン測定は、1回の充放電試験の終了後にジメチルカーボネート(DMC)で試料を洗浄し、洗浄後に空気雰囲気下で上記と同様の測定条件で行った。
図4A〜図4Cに、実施例1、比較例1、比較例2で作製した薄膜の充放電前のラマンスペクトルをそれぞれ示す。さらに、図5に、実施例1で作製した薄膜の充放電後のスペクトルを示す。
図4Aの実施例1の材料のラマンスペクトルは、499、614、638cm−1に鋭いピークを示し、580cm−1にショルダーピークを示す。これらのピークは、そのピーク波数や相対強度比が、空間群P432のLiNi0.5Mn1.5と空間群Fd−3mのLiNi0.5Mn1.5のラマンスペクトル(L.Wang,H.Li、X.Huang,E.Baudrin,Solid State Ionics,193,36(2011)、X.Y.Feng,C.Shen,X.Fang and C.H.Chen,J.Alloys and Compounds,509,3623(2011))を併せ持つようなスペクトルを示した。具体的には、614cm−1のピークは、空間群P432のLiNi0.5Mn1.5のラマンスペクトルに類似しており、得られた正極材料が空間群P432の構造を有していると推定される。また、580〜600cm−1のピーク形状や、220〜330cm−1の低波数領域に明確なピークがみられなかったことは、空間群Fd−3mのLiNi0.5Mn1.5のラマンスペクトルと共通することから、得られた正極材料が空間群Fd−3mの構造をも有していると推定される。
一方、比較例1で作製した試料のラマンスペクトルは、実施例1と同様の上記の特徴を示した(図4B)。しかしながら、比較例2の試料では、580cm−1近傍のショルダーがみられなかった点、400〜450cm−1近傍の低波数側の領域にピークが見られなかった点で実施例1の試料のスペクトルと異なっていた(図4C)。これらの結果から、比較例1の正極材料は、Liの組成比が実施例1の正極材料よりも小さいが、実施例1の材料と同様の構造を持つ材料であることがわかる。一方で比較例2の正極材料は、Li過剰なニッケルマンガン酸リチウムであるが、実施例1の材料とは異なる構造を有する材料であると考えられる。
また、実施例1、比較例1、比較例2の正極材料のラマンスペクトルは、それぞれ、499〜500cm−1のメインピーク、611〜614cm−1のピーク1、637〜638cm−1にピーク2を有する。それぞれのピーク強度(高さ)をI、I、Iとして、Iに対するI、Iの強度は下記表2のようになった。
図5は、実施例1で作製した薄膜を電極として用いて、下記(4)の手順でセルを作製し、SOC100%まで充電し、その後SOC20%以下まで放電した後に測定した、充放電後の電極のラマンスペクトルを示す。充放電後の材料では、メインピークの強度Iに対するピーク2の強度Iの比(I/I)が充放電前よりも大きくなっていることがわかった。
(4)電気化学測定
電気化学評価には、サイクル試験としてサイクリックボルタンメトリーを25℃、50℃で50サイクル行い、3、10、30、50の各サイクルでの容量維持率を測定した。電気化学測定条件は、以下のようにして行った。
電気化学測定は三極式セルを用いて行い、作用極を実施例、比較例で作製した正極材料の薄膜を用い、参照極および対極をLi金属とした。作用極の電極面積は0.44cmであった。電解液として1mol dm−3のLiPFをエチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC)=1:1(体積%)に溶解させた溶液を用いた。サイクル試験は、電位範囲を4.4〜5.0V vs.Li/Li、走査速度は1mV/sでCV測定を行った。このとき、得られたサイクリック得られたサイクリックボルタモグラムから酸化還元反応の合計の電荷量を求め、これを容量とした。
実施例1で作製した薄膜電極を用い、酸化還元電位を測定した。図6に、25℃で測定した低速走査サイクリックボルタモグラムを示す。測定条件は、電位範囲を4.4V〜5.0Vvs.Li/Liとし、走査速度は0.1mV/sとした。Li/Li電極電位に対して、4.66V付近および4.73Vに対称的な酸化還元電流対が認められた。これらは、実施例1で作製された正極材料における可逆的なリチウムイオンの脱離・挿入反応による酸化・還元電流と考えられる。したがって、本実施形態のLi過剰な試料においてLi過剰分が遷移金属占有サイトの一部を置換していても、4.5V以上の高電位でリチウムイオンの脱離・挿入反応が可能であることが確認された。
図7(a)、(b)に、実施例1で作製した薄膜電極の25℃および50℃でのサイクル試験の結果をそれぞれ示す。上述の図6と同様に25℃、50℃のいずれの場合も、4.68V付近および4.75V付近にリチウムイオンの脱離・挿入反応による対称的な酸化還元電流対が認められた。また、初期酸化掃引時に15μA/cm程度のバックグラウンド電流が認められたが、その後のサイクルでは高電位領域での電解液の酸化による目立った酸化電流は見られず、50℃の場合でも50サイクル目まできわめて可逆的なボルタモグラムが得られた。また、試料中の不純物の影響による酸化還元電流も観察されなかった。
これらの結果から、実施例1の正極材料は、比較例1、2の正極材料と比較して、高温下であっても容量低下の少ない優れたサイクル特性を有することが明らかになった。
図8に、実施例1および比較例1、2で作製した正極材料について、(a)25℃および(b)50℃でのサイクル試験による容量維持率を示す。図8の結果から、25℃、50℃の両方のサイクル試験において、実施例1で作製した試料は比較例1、2で作製した試料と比較して容量維持率が高いことが明らかになった。下記表2に、実施例、比較例で作製した正極材料の50サイクル後の容量維持率の比較を示す。
したがって、本願発明の正極材料を用いた正極を用いることによって、高温領域の充放電サイクル特性が向上することが明らかになった。
10 積層型電池、
11 負極集電体、
12 正極集電体、
13 負極活物質層(負極)、
15 正極活物質層(正極)、
17 電解質層、
19 単電池層(単セル)、
21 発電要素、
25 負極集電板、
27 正極集電板、
29 外装体(ラミネートシート)。

Claims (4)

  1. LiNiMn1.5(1.3≦x≦1.5、0.4≦y≦0.5)で表され、スピネル型の結晶構造を有し、
    514nmのアルゴンレーザーを用いたラマン測定において、495〜505cm−1に強度Iを示すピーク、610〜620cm−1に強度Iを示すピーク、および635〜645cm−1に強度Iを示すピークを有し、
    、I、およびIが、0.50<I/I≦0.60、および0.60<I/I≦0.70を満たすことを特徴とする、電気化学デバイス用正極材料。
  2. 2.60≦x/y≦3.75を満たす、請求項1に記載の電気化学デバイス用正極材料。
  3. 前記正極材料を用いた正極と、負極と、リチウムイオン伝導性非水電解質を有するリチウムイオン電池において少なくとも1回SOC100%の充電を行い、SOC20%以下まで放電した後の、514nmのアルゴンレーザーを用いたラマン測定において、I/I≧0.70となる、請求項1または2に記載の電気化学デバイス用正極材料。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気化学デバイス用正極材料を正極活物質として用いてなる電気化学デバイス。
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