JP5763865B1 - 熱可塑性エラストマー組成物及び成形体 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、特許文献1には、衝撃吸収性に優れた組成物として、2種類のスチレン系エラストマーと軟化剤とからなるゲル状組成物が記載されている。
特許文献2には、低硬度で衝撃吸収性に優れた組成物として、ビニル芳香族化合物から構成されるブロックと、イソプレンとブタジエンからなるブロックを有するブロック共重合体またはその水素添加物と、軟化剤および粘着付与樹脂を配合してなる組成物が記載されている。
特許文献3には、成形加工性、柔軟性およびゴム弾性に優れる熱可塑性エラストマー組成物として、ビニル芳香族化合物からなるブロックと、共役ジエン化合物からなるブロックを有するブロック共重合体の水素添加物と、ポリプロピレン系樹脂および非芳香族系ゴム用軟化剤からなる組成物が記載されている。
特許文献4には、スチレン−(エチレン/プロピレン)−スチレンブロックコポリマー及びエキステンダー液体を含むゲル組成物が記載されている。
特許文献5には、芳香族ビニル化合物含有量が40〜70重量%の水添ブロック共重合体、芳香族ビニル化合物含有量が40重量%未満の水添ブロック共重合体、及び非芳香族系ゴム用軟化剤を含有する熱可塑性エラストマー組成物が記載されている。
特許文献6には、水素化スチレン/ブタジエンブロックコポリマー及び非芳香族エステル油を含むオイルゲル組成物が記載されている。
特許文献7には、イソプレン/ブタジエン−スチレンブロックコポリマー及び非芳香族系ゴム用軟化剤を含む熱可塑性エラストマー組成物が記載されている。
しかして、本発明の目的は、柔軟性、成形加工性、耐候性及びゴム弾性のいずれにも優れる熱可塑性エラストマー組成物及び当該熱可塑性エラストマー組成物からなる成形体を提供することにある。
[1]水添ブロック共重合体(A)及び軟化剤(B)を含有する熱可塑性エラストマー組成物であって、水添ブロック共重合体(A)は、芳香族ビニル化合物由来の構造単位からなる重合体ブロック(a)と、ファルネセン由来の構造単位(b1)を1〜100質量%含有し、ファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位(b2)を99〜0質量%含有する重合体ブロック(b)とを含み、重合体ブロック(a)と重合体ブロック(b)との質量比[(a)/(b)]が1/99〜70/30であるブロック共重合体の水素添加物であって、重合体ブロック(b)中の炭素−炭素二重結合が50mol%以上水素添加されてなるものであり、水添ブロック共重合体(A)100質量部に対して軟化剤(B)の含有量が20〜2000質量部である、熱可塑性エラストマー組成物、及び
[2]前記熱可塑性エラストマー組成物からなる成形体、
に関する。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、水添ブロック共重合体(A)及び軟化剤(B)を含有する熱可塑性エラストマー組成物であって、水添ブロック共重合体(A)は、芳香族ビニル化合物由来の構造単位からなる重合体ブロック(a)と、ファルネセン由来の構造単位(b1)を1〜100質量%含有し、ファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位(b2)を99〜0質量%含有する重合体ブロック(b)とを含み、重合体ブロック(a)と重合体ブロック(b)との質量比[(a)/(b)]が1/99〜70/30であるブロック共重合体の水素添加物であって、重合体ブロック(b)中の炭素−炭素二重結合が50mol%以上水素添加されてなるものであり、水添ブロック共重合体(A)100質量部に対して軟化剤(B)の含有量が20〜2000質量部であるものである。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、水添ブロック共重合体としてファルネセン由来の構造単位(b1)を有する水添ブロック共重合体(A)を用いているため、他の水添ブロック共重合体を用いる場合と比べて、より少量の軟化剤の含有量で十分な柔軟性を得ることができ、また、相対的に水添ブロック共重合体(A)の含有量を増やすことができるためゴム弾性を向上させることができる。また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、当該水添ブロック共重合体(A)を用いているため、成形加工性及び耐候性にも優れる。
水添ブロック共重合体(A)は、芳香族ビニル化合物由来の構造単位からなる重合体ブロック(a)と、ファルネセン由来の構造単位(b1)を1〜100質量%含有し、ファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位(b2)を99〜0質量%含有する重合体ブロック(b)とを含み、重合体ブロック(a)と重合体ブロック(b)との質量比[(a)/(b)]が1/99〜70/30であるブロック共重合体(以下、「ブロック共重合体(P)」ということがある)の水素添加物(以下、「水添ブロック共重合体(A)」ということがある)であって、重合体ブロック(b)中の炭素−炭素二重結合が50mol%以上水素添加されてなるものである。
重合体ブロック(b)は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、構成単位(b1)及び(b2)以外の構成単位を含んでいてもよいが、含んでいない方が好ましい。重合体ブロック(b)中における、構造単位(b1)及び構造単位(b2)の合計量は、好ましくは95質量%以上、より好ましくは100質量%である。
重合体ブロック(a)及び重合体ブロック(b)の結合形態は特に制限されず、直線状、分岐状、放射状、又はそれらの2つ以上の組み合わせであってもよい。中でも、各ブロックが直線状に結合した形態が好ましく、重合体ブロック(a)をa、重合体ブロック(b)をbで表したときに、(a−b)l、a−(b−a)m、又はb−(a−b)nで表される結合形態が好ましい。なお、前記l、m及びnはそれぞれ独立して1以上の整数を表す。
前記結合形態としては、柔軟性、成形加工性、耐候性,ゴム弾性及び取り扱い性等の観点から、a−b−aで表されるトリブロック共重合体が好ましい。
また、ブロック共重合体(P)が、重合体ブロック(a)を2個以上又は重合体ブロック(b)を2個以上有する場合には、それぞれの重合体ブロックは、同じ構造単位からなる重合体ブロックであっても、異なる構造単位からなる重合体ブロックであってもよい。例えば、〔a−b−a〕で表されるトリブロック共重合体における2個の重合体ブロック(a)において、それぞれの芳香族ビニル化合物は、その種類が同じであっても異なっていてもよい。
なお、本明細書におけるピークトップ分子量(Mp)は後述する実施例に記載した方法で測定した値を意味する。
かかる他の単量体としては、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン等の不飽和炭化水素化合物;アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2−アクリロイルエタンスルホン酸、2-メタクリロイルエタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、酢酸ビニル、メチルビニルエーテル等の官能基含有不飽和化合物;等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。
ブロック共重合体(P)が重合体ブロック(c)を有する場合、その含有量は、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましく、10質量%以下が最も好ましい。
水添ブロック共重合体(A)は、例えばブロック共重合体(P)をアニオン重合により得る重合工程、及び該ブロック共重合体(P)中の重合体ブロック(b)中の炭素−炭素二重結合を50mol%以上水素添加する工程により好適に製造できる。
<重合工程>
ブロック共重合体(P)は、溶液重合法又は特表2012−502135号公報、特表2012−502136号公報に記載の方法等により製造することができる。中でも溶液重合法が好ましく、例えば、アニオン重合やカチオン重合等のイオン重合法、ラジカル重合法等の公知の方法を適用できる。中でもアニオン重合法が好ましい。アニオン重合法としては、溶媒、アニオン重合開始剤、及び必要に応じてルイス塩基の存在下、芳香族ビニル化合物、ファルネセン及び/又はファルネセン以外の共役ジエンを逐次添加して、ブロック共重合体(P)を得る。
アニオン重合開始剤としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属;ランタン、ネオジム等のランタノイド系希土類金属;前記アルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタノイド系希土類金属を含有する化合物等が挙げられる。中でもアルカリ金属及びアルカリ金属を含有する化合物、有機アルカリ金属化合物が好ましい。
重合に用いる有機アルカリ金属化合物の使用量は、ブロック共重合体(P)の分子量によっても異なるが、通常、芳香族ビニル化合物とファルネセン及びファルネセン以外の共役ジエンの総量に対して0.01〜3質量%の範囲である。
重合反応は、メタノール、イソプロパノール等のアルコールを重合停止剤として添加して停止できる。得られた重合反応液をメタノール等の貧溶媒に注いでブロック共重合体(P)を析出させるか、重合反応液を水で洗浄し、分離後、乾燥することによりブロック共重合体(P)を単離できる。
本重合工程では、前記のように未変性のブロック共重合体(P)を得てもよいが、後述の水素添加工程の前に、前記ブロック共重合体(P)に官能基を導入して、変性したブロック共重合体(P)を得てもよい。導入可能な官能基としては、例えばアミノ基、アルコキシシリル基、水酸基、エポキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、メルカプト基、イソシアネート基、酸無水物等が挙げられる。
ブロック共重合体(P)の変性方法としては、例えば、重合停止剤を添加する前に、重合活性末端と反応し得る四塩化錫、テトラクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、2,4−トリレンジイソシアネート等のカップリング剤や、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、N−ビニルピロリドン等の重合末端変性剤、又は特開2011−132298号公報に記載のその他の変性剤を添加する方法が挙げられる。また、単離後の共重合体に無水マレイン酸等をグラフト化して用いることもできる。
官能基が導入される位置はブロック共重合体(P)の重合末端でも、側鎖でもよい。また上記官能基は1種を単独で又は2種以上を組み合わせてもよい。上記変性剤は、アニオン重合開始剤に対して、通常、0.01〜10モル当量の範囲であることが好ましい。
前記方法により得られたブロック共重合体(P)又は変性されたブロック共重合体(P)を水素添加する工程に付すことにより、水添ブロック共重合体(A)を得ることができる。水素添加する方法は公知の方法を用いることができる。例えば、水素添加反応に影響を及ぼさない溶媒にブロック共重合体(P)を溶解させた溶液に、チーグラー系触媒;カーボン、シリカ、けいそう土等に担持されたニッケル、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム金属触媒;コバルト、ニッケル、パラジウム、ロジウム、ルテニウム金属を有する有機金属錯体等を、水素添加触媒として存在させて水素化反応を行う。水素添加工程においては、前記したブロック共重合体(P)の製造方法によって得られたブロック共重合体(P)を含む重合反応液に水素添加触媒を添加して水素添加反応を行ってもよい。本発明においては、パラジウムをカーボンに担持させたパラジウムカーボンが好ましい。
水素添加反応において、水素圧力は0.1〜20MPaが好ましく、反応温度は100〜200℃が好ましく、反応時間は1〜20時間が好ましい。
本発明に用いられる軟化剤(B)の種類は特に制限されず、例えば、ゴム及びプラスチックス等に用いられる公知の軟化剤、又はポリビニルアセタール樹脂と併せて使用される公知の軟化剤等を使用することができる。
ゴム及びプラスチックス等に用いられる公知の軟化剤としては、例えばパラフィン系、ナフテン系、芳香族系のプロセスオイル;ジオクチルフタレート、ジブチルフタレートなどのフタル酸誘導体;ホワイトオイル;ミネラルオイル;エチレンとα−オレフィンとの液状コオリゴマー;流動パラフィン;ポリブテン;低分子量ポリイソブチレン;液状ポリブタジエン、液状ポリイソプレン、液状ポリイソプレン/ブタジエン共重合体、液状スチレン/ブタジエン共重合体、液状スチレン/イソプレン共重合体などの液状ポリジエンおよびそれらの水添物などが挙げられる。中でも、水添ブロック共重合体(A)との相容性の観点から、パラフィン系プロセスオイル;エチレンとα−オレフィンとの液状コオリゴマー;流動パラフィンが好ましい。
一塩基性有機酸エステルとしては、例えば、トリエチレングリコール−ジカプロン酸エステル、トリエチレングリコール−ジ−2−エチル酪酸エステル、トリエチレングリコール−ジ−n−オクチル酸エステル、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキシル酸エステルなどに代表されるトリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコールなどのグリコールと、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプチル酸、n−オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、ペラルゴン酸(n−ノニル酸)、デシル酸などの一塩基性有機酸との反応によって得られたグリコール系エステルが挙げられる。
多塩基酸有機エステルとしては、例えばセバシン酸ジブチルエステル、アゼライン酸ジオクチルエステル、アジピン酸ジブチルカルビトールエステルなどに代表されるアジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸などの多塩基性有機酸と直鎖状または分岐状アルコールのエステルなどが挙げられる。
有機リン酸エステルとしては、例えばトリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート、トリイソプロピルホスフェートなどが挙げられる。
これらの軟化剤(B)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、前述の水添ブロック共重合体(A)及び軟化剤(B)の他に、必要に応じてポリオレフィン系樹脂(C)を含有していてもよい。使用できるポリオレフィン系樹脂(C)の種類は特に制限されず、従来既知のオレフィン系重合体を用いることができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリヘキセン−1、ポリ−3−メチル−ブテン−1、ポリ−4−メチル−ペンテン−1、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィン(例えばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、6−メチル−1−ヘプテン、イソオクテン、イソオクタジエン、デカジエンなど)の1種または2種以上との共重合体、エチレン/プロピレン/ジエン共重合体(EPDM)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体等が好ましい。これらの中でも、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン等のポリプロピレン系樹脂及び高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等のポリエチレン系樹脂が好ましく、ポリプロピレン系樹脂がより好ましい。ポリオレフィン系樹脂(C)は、1種類を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
この態様に係る熱可塑性エラストマー組成物によれば、JIS K6253−3に準拠して測定したタイプA硬度が10を超えるか又はJIS K6253−3に準拠して測定したアスカーC硬度が30を超える、適度な硬度を有する成形体を得ることができる。
この態様に係る熱可塑性エラストマー組成物において、水添ブロック共重合体(A)100質量部に対する軟化剤(B)の含有量は、適度な硬度を有しかつオイル保持率の高い成形体を得る観点から、好ましくは20〜150質量部、より好ましくは20〜100質量部、更に好ましくは25〜80質量部である。
また、この態様に係る熱可塑性エラストマー組成物は、成形加工性を向上させる観点から、更にポリオレフィン系樹脂(C)を含有することが好ましい。水添ブロック共重合体(A)100質量部に対するポリオレフィン系樹脂(C)の含有量は、好ましくは5〜200質量部である。5質量部以上であると成形加工性が向上し、200質量部以下であると柔軟性及びゴム弾性に優れる。当該観点から、水添ブロック共重合体(A)100質量部に対するポリオレフィン系樹脂(C)の含有量は、より好ましくは10〜150質量部、更に好ましくは20〜100質量部、より更に好ましくは20〜60質量部である。
この態様に係る熱可塑性エラストマー組成物によれば、柔軟性に著しく優れる成形体を得ることができる。また、当該熱可塑性エラストマー組成物は、水添ブロック共重合体としてファルネセン由来の構成単位(b1)を有する水添ブロック重合体(A)を用いているため、他の水添ブロック重合体を用いた熱可塑性エラストマー組成物と比べて、より少量の軟化剤(B)の含有量で同等の柔軟性を有する成形体を得ることができる。そのため、水添ブロック共重合体(A)が多量の軟化剤に溶解してしまうことが抑制され、固体状態を保持することができ、結果として著しく柔軟性に優れかつ固体状態を保持した成形体を得ることができる。また、この他の一態様に係る熱可塑性エラストマー組成物によると、得られる成形体中における軟化剤(B)の含有量を抑えつつ著しい柔軟性を得ることができるため、軟化剤(B)の流出量も少量に抑えることができ、得られる成形体のオイル保持率が向上すると共にゴム弾性も向上する。
この態様に係る熱可塑性エラストマー組成物において、水添ブロック共重合体(A)100質量部に対する軟化剤(B)の含有量は、柔軟性及びオイル保持率が高く、かつ成形加工性、耐候性及びゴム弾性にも優れる熱可塑性エラストマー組成物を得る観点から、より好ましくは200〜1500質量部、更に好ましくは200〜1000質量部、より更に好ましくは200〜500質量部である。
この態様に係る熱可塑性エラストマー組成物中における、水添ブロック共重合体(A)及び軟化剤(B)の合計含有量は、柔軟性、成形加工性、耐候性及びゴム弾性のいずれにも優れる熱可塑性エラストマー組成物を得る観点から、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、99質量%以上が更に好ましい。
また、当該他の一態様に係る熱可塑性エラストマー組成物において、水添ブロック共重合体(A)100質量部に対するポリオレフィン系樹脂(C)の含有量は、得られる成形体の柔軟性及びゴム弾性を向上させる観点から、好ましくは100質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは20質量部未満、より更に好ましくは10質量部以下であり、ポリオレフィン系樹脂(C)を含まないことがより更に好ましい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法には特に制限はなく、従来からの各種製造法が挙げられる。例えば、水添ブロック共重合体(A)軟化剤(B)及び必要に応じて使用されるその他の成分をドライブレンドした後、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ロールなどの混練機を用いて溶融混練することにより、好適に熱可塑性エラストマー組成物を製造することができる。
本発明の成形体は、本発明の熱可塑性エラストマー組成物からなる。成形体の形状は、本発明の熱可塑性エラストマー組成物を用いて製造できる成形体であればいずれでもよく、例えばペレット、フィルム、シート、プレート、パイプ、チューブ、棒状体、粒状体など種々の形状に成形することができる。この成形体の製造方法は特に制限はなく、従来からの各種成形法、例えば、射出成形、ブロー成形、プレス成形、押出成形、カレンダー成形などにより成形することができる。本発明の熱可塑性エラストマー組成物は成形加工性に優れるため、ハイサイクルの射出成形により、好適に成形体を得ることができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物及び成形体は、柔軟性、成形加工性、耐候性及びゴム弾性のいずれにも優れるため、粘接着剤、シート、フィルム、チューブ、ホース、ベルト等の成形品として好適に用いることができる。具体的には、ホットメルト接着剤、粘着テープ、保護フィルムの粘着層等の粘接着材;防振ゴム、マット、シート、クッション、ダンパー、パッド、マウントゴム等の各種防振、制振部材;スポーツシューズ、ファッションサンダル等の履物;テレビ、ステレオ、掃除機、冷蔵庫等の家電用品部材;建築物の扉、窓枠用シーリング用パッキン等の建材;バンパー部品、ボディーパネル、ウェザーストリップ、グロメット、インパネ等の表皮、エアバッグカバー等の自動車内装、外装部品;はさみ、ドライバー、歯ブラシ、スキーストック等のグリップ;食品ラップフィルム等の食品用包装材;輸液バッグ、シリンジ、カテーテル等の医療用具;食品、飲料、薬等を貯蔵する容器用の栓、キャップライナー等に好適に用いることができる。
スチレンブロックのピークトップ分子量(Mp)並びに水添ブロック共重合体のピークトップ分子量(Mp)及び分子量分布(Mw/Mn)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により標準ポリスチレン換算分子量で求め、分子量分布のピークの頂点の位置からピークトップ分子量(Mp)を求めた。測定装置及び条件は以下のとおりである。
・装置 :東ソー株式会社製GPC装置「GPC8020」
・分離カラム :東ソー株式会社製「TSKgelG4000HXL」
・検出器 :東ソー株式会社製「RI−8020」
・溶離液 :テトラヒドロフラン
・溶離液流量 :1.0ml/分
・サンプル濃度:5mg/10ml
・カラム温度 :40℃
各実施例及び比較例において、ブロック共重合体(P)及び水素添加後の水添ブロック共重合体(A)をそれぞれ重クロロホルム溶媒に溶解し、日本電子社製「Lambda−500」を用いて50℃で1H−NMRを測定した。水添ブロック共重合体(A)中の重合体ブロック(b)の水素添加率は、得られたスペクトルの4.5〜6.0ppmに現れる炭素−炭素二重結合が有するプロトンのピークから、下記式により算出した。
水素添加率={1−(水添ブロック共重合体(A)1molあたりに含まれる炭素−炭素二重結合のmol数)/(ブロック共重合体(P)1molあたりに含まれる炭素−炭素二重結合のmol数)}×100(mol%)
(3−1)MFR(200℃、98N)
各実施例及び比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物をメルトインデクサL244(テクノ・セブン製)を用いて、200℃、98N、ノズル寸法=直径1mm×長さ10mmの条件で測定した。なお、MFR値が高いほど成形加工性に優れる。
(3−2)MFR(160℃、49N)
各実施例及び比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物をメルトインデクサL244(テクノ・セブン製)を用いて、160℃、49N、ノズル寸法=直径1mm×長さ10mmの条件で測定した。なお、MFR値が高いほど成形加工性に優れる。
(4−1)タイプA硬度
各実施例及び比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物を200℃、1.0MPaにて3分間圧縮成形することによって、シート(成形体)(縦150mm、横150mm、厚さ1mm)を得た。このシートをタイプAデュロメータの圧子を用い、JIS K6253−3に準拠して測定した。なお、硬度が低いほど、柔軟性に優れる。
(4−2)アスカーC硬度
上記(4−1)と同様の方法で作製したシートを、高分子計器株式会社製アスカーゴム硬度計C型の圧子を用い、JIS K7312に準拠して測定した。なお、硬度が低いほど、柔軟性に優れる。
(4−3)Shore OO硬度
上記(4−1)と同様の方法で作製したシートを、タイプOOデュロメータの圧子を用い、ASTM D2240に準拠して測定した。なお、硬度が低いほど、柔軟性に優れる。
各実施例及び比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物を200℃、3分間圧縮成形し、直径13.0±0.5mm、厚さ6.3±0.3mm(d0)の円柱状試験片を作製した。JIS K6262に準拠し、この円柱状試験片をスペーサー厚み4.8mm(d1)を用い25%圧縮変形し、23℃の雰囲気下に22時間保持した後、圧縮を開放した。その後、23℃、相対湿度50%雰囲気下に30分間放置したときの、円柱状試験片の厚さ(d2:mm)を測定し、圧縮永久歪み(%)=100×(d0−d2)/(d0−d1)により求めた。数値が低いほどゴム弾性に優れる。
(6)圧縮永久歪み(70℃,22時間)の測定方法
圧縮時の温度を70℃としたこと以外は上記(5)と同様にして圧縮永久歪みを測定した。数値が低いほどゴム弾性に優れる。
(7)圧縮永久歪み(40℃,22時間)の測定方法
圧縮時の温度を40℃としたこと以外は上記(5)と同様にして圧縮永久歪みを測定した。数値が低いほどゴム弾性に優れる。
(4)と同じ操作を行ってシート(成形体)(縦150mm、横150mm、厚さ1mm)を得た。このシートを温度200℃の雰囲気下に60分放置した。放置前後の色の変化を目視及び触指にて観察し、下記基準によって評価した。
1:変化なし
2:若干の黄変が見られる。
3:黄変が見られる。
4:黄変が激しく、かつシート表面のタックの増加が見られる。
(9)オイル保持率
(4)と同じ操作を行ってシート(成形体)(縦150mm、横150mm、厚さ1mm)を得た。このシートから直径40mmの円柱状試験片を打ち抜き、その重量(w1)を秤量した。この円柱状試験片を定量分析用ろ紙5種Cにて挟み、23℃、相対湿度50%雰囲気下に168時間放置したのち、ろ紙を取り除いて重量(w2)を秤量し、オイル保持率(%)=100×w2/w1により求めた。
〔製造例1〕
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン50.0kg、アニオン重合開始剤としてsec−ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)36.9g(sec−ブチルリチウム3.9g)を仕込み、50℃に昇温した後、スチレン(1)1.87kgを加えて1時間重合させ、引き続いてβ−ファルネセン8.75kgを加えて2時間重合を行い、更にスチレン(2)1.87kgを加えて1時間重合することにより、ポリスチレン−ポリ(β−ファルネセン)−ポリスチレントリブロック共重合体を含む反応液を得た。この反応液に、水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を前記ブロック共重合体に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で10時間反応を行った。放冷、放圧後、濾過によりパラジウムカーボンを除去し、濾液を濃縮し、更に真空乾燥することにより、ポリスチレン−ポリ(β−ファルネセン)−ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物(以下、水添ブロック共重合体(I)−1と称する)を得た。水添ブロック共重合体(I)−1について上記した評価を行った。結果を表1に示す。
なお、水添ブロック共重合体(I)−1におけるスチレンブロックのピークトップ分子量(Mp)は、上記のポリスチレン−ポリ(β−ファルネセン)−ポリスチレントリブロック共重合体を重合する過程において、スチレン(1)を重合した後、サンプリングして得たポリスチレンのピークトップ分子量(Mp)の測定値を、上記水添ブロック共重合体(I)−1におけるスチレンブロックのピークトップ分子量(Mp)とした。
表1に記載の配合にしたがったこと以外は、製造例1と同様にして水添ブロック共重合体(I)−2〜(I)−8、(I’)−11〜(I’)−13、(I’)−15〜(I’)−16及び(I’)−19を製造した。得られた水添ブロック共重合体(I)−2〜(I)−8、(I’)−11〜(I’)−13及び(I’)−15〜(I’)−16について、上記した評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
水添ブロック共重合体(I)−9は水素添加反応時間を4時間、(I’)−10は水素添加反応時間を2時間に変更し、表1及び表2に記載の配合にしたがった以外は、製造例1と同様にして水添ブロック共重合体(I)−9、(I’)−10を製造した。得られた水添ブロック共重合体(I)−9、(I’)−10について、上記した評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
水添ブロック共重合体(I’)−14はシクロヘキサン50.0kgにテトラヒドロフラン72gを混合した混合溶媒を、(I’)−17はシクロヘキサン50.0kgにテトラヒドロフラン288gを混合した混合溶媒を、(I’)−18はシクロヘキサン50.0kgにテトラヒドロフラン103g混合した混合溶媒を用い、各成分についてはそれぞれ表2に記載の配合にしたがった以外は、製造例1と同様にして水添ブロック共重合体(I’)−14、(I’)−17、(I’)−18を製造した。得られた水添ブロック共重合体(I’)−14、(I’)−17、(I’)−18について、上記した評価を行った。結果を表2に示す。
・軟化剤−1;ダイアナプロセスPW−90(水添パラフィン系オイル)、動粘度95mm2/s(40℃)(出光興産株式会社製)
・軟化剤−2;ダイアナプロセスPW−32(水添パラフィン系オイル)、動粘度31mm2/s(40℃)(出光興産株式会社製)
<ポリオレフィン系樹脂(C)>
・ホモポリプロピレン;J106、MFR=18g/10分[230℃, 21N](プライムポリマー社製)
・ランダムポリプロピレン;F327、MFR7.0g/10分[230℃, 21N](プライムポリマー社製)
・ブロックポリプロピレン;J707G、MFR30g/10分[230℃, 21N](プライムポリマー社製)
・HDPE;ノバテックHB112R、MFR0.04g/10分[190℃, 21N](日本ポリプロ社製)
・LLDPE;ウルトゼックス2022L、MFR2.0g/10分[190℃, 21N](プライムポリマー社製)
水添ブロック共重合体(A)又は(A)’として上記の水添ブロック共重合体(I)−1〜(I)−9及び(I’)−10〜(I’)−17を用い、当該水添ブロック共重合体(A)又は(A)’と、上記軟化剤(B)及びポリオレフィン系樹脂(C)を表3〜表6に示す配合にてドライブレンドした後、2軸押出機(株式会社日本製鋼所製「TEX−44XCT」)を使用して、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数200rpmで溶融混練した後、ストランド状に押し出し、切断して、熱可塑性エラストマー組成物を得た。得られた熱可塑性エラストマー組成物について、上記した評価を行った。結果を表3〜表6に示す。
水添ブロック共重合体(A)又は(A)’として、表7及び表8に示す水添ブロック共重合体を用いた。当該水添ブロック共重合体(A)又は(A)’及び上記軟化剤(B)を表7及び表8に示す配合にてスーパーミキサー「SMV−100」(株式会社カワタ製)を使用して予備混合した。次いで、2軸押出機(株式会社日本製鋼所製「TEX−44XCT」)を使用して、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数200rpmで溶融混練した後、ストランド状に押し出し、切断して、熱可塑性エラストマー組成物を得た。得られた熱可塑性エラストマー組成物につい
これに対し、比較例1〜3及び16の熱可塑性エラストマー組成物は、水添ブロック共重合体(A)’との水素添加率が45.0%と低いため、耐候性に劣る。
比較例4の熱可塑性エラストマー組成物は、水添ブロック共重合体(A)’の重合体ブロック(a)と重合体ブロック(b)との質量比[(a)/(b)]が80/20であり、本発明の範囲外であるため、硬度が高く柔軟性に劣り、またゴム弾性(圧縮永久歪)にも劣る。
比較例5〜11及び13の熱可塑性エラストマー組成物は、水添ブロック共重合体(A)’がファルネセン由来の構造単位(b1)を有しないため、特に高温における圧縮永久歪みが高く、ゴム弾性に劣る。
比較例12の熱可塑性エラストマー組成物は、水添ブロック共重合体(A)’がファルネセン由来の構造単位(b1)を有しないため、ゴム弾性は良いが流動性が悪く、成形加工性に劣る。
比較例14の熱可塑性エラストマー組成物は、軟化剤(B)を含まないため流動性が悪く、成形加工性に劣る。
比較例15の熱可塑性エラストマー組成物は、軟化剤(B)の含有量が本発明の範囲外であるため、流動性が悪く成形加工性に劣り、また硬度が高く柔軟性に劣る。
比較例17及び18の熱可塑性エラストマー組成物は、水添ブロック共重合体(A)’がファルネセン由来の構造単位(b1)を有しないため、同配合比の実施例11及び12に比べ、流動性が悪く成形加工性に劣り、また硬度が高く柔軟性に劣る。
比較例19〜22の熱可塑性エラストマー組成物は、水添ブロック共重合体(A)’がファルネセン由来の構造単位(b1)を有しないため、同配合比の実施例13〜16に比べ特に高温における圧縮永久歪みが高く、ゴム弾性に劣る。
表8において、比較例27は、軟化剤−2の含有量が2500質量部と多いため、ポリマーが軟化剤に溶融した液体状であった。そのため、MFRの測定において、熱可塑性重合体組成物をシリンダーに充填することができず、測定不可であった。
Claims (12)
- 水添ブロック共重合体(A)及び軟化剤(B)を含有する熱可塑性エラストマー組成物であって、
前記水添ブロック共重合体(A)は、芳香族ビニル化合物由来の構造単位からなる重合体ブロック(a)と、ファルネセン由来の構造単位(b1)を1〜100質量%含有し、ファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位(b2)を99〜0質量%含有する重合体ブロック(b)とを含み、前記重合体ブロック(a)と前記重合体ブロック(b)との質量比[(a)/(b)]が1/99〜70/30であるブロック共重合体の水素添加物であって、前記重合体ブロック(b)中の炭素−炭素二重結合が50mol%以上水素添加されてなるものであり、
前記水添ブロック共重合体(A)100質量部に対して前記軟化剤(B)の含有量が20〜2000質量部である、熱可塑性エラストマー組成物。 - 前記熱可塑性エラストマー組成物が更にポリオレフィン系樹脂(C)を含み、前記水添ブロック共重合体(A)100質量部に対して、前記ポリオレフィン系樹脂(C)の含有量が5〜200質量部である、請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- 前記水添ブロック共重合体(A)100質量部に対して前記軟化剤(B)の含有量が200〜2000質量部であり、
JIS K6253−3に準拠して測定したアスカーC硬度が30以下である、請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。 - 熱可塑性エラストマー組成物中における、前記水添ブロック共重合体(A)及び前記軟化剤(B)の合計含有量が90質量%以上である、請求項3に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- 前記ファルネセンがβ−ファルネセンである、請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- 前記重合体ブロック(b)中の炭素−炭素二重結合の水素添加率が70mol%以上である、請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- 前記水添ブロック共重合体(A)のピークトップ分子量(Mp)が4,000〜1,500,000である、請求項1〜6のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- 前記水添ブロック共重合体(A)の分子量分布(Mw/Mn)が1〜4である、請求項1〜7のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- 前記芳香族ビニル化合物がスチレンである、請求項1〜8のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- 前記ファルネセン以外の共役ジエンがイソプレン、ブタジエン及びミルセンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜9のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- 前記水添ブロック共重合体(A)が、前記重合体ブロック(a)を少なくとも2個と、前記重合体ブロック(b)を少なくとも1個含有するブロック共重合体の水素添加物である、請求項1〜10のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- 請求項1〜11のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物からなる成形体。
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