JP5761890B2 - シリカ系塗膜形成用塗布液の調製方法 - Google Patents

シリカ系塗膜形成用塗布液の調製方法 Download PDF

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本発明は、パターニング特性を備え、しかも比較的高い塗膜強度と比較的低い比誘電率を有し、さらには表面平坦性や耐クラック性などに優れたシリカ系塗膜を形成するための液状組成物からなるシリカ系塗膜形成用塗布液およびその調製方法に関するものである。
近年、半導体装置、液晶装置、センサー装置、表示装置などの製造業界においては、半導体基板上、多層配線構造の配線層間、素子表面および/またはPN接合部を設けてなる基板上や液晶基板上などに、絶縁膜としてのシリカ系塗膜を形成して使用することが多い。
このようなシリカ系塗膜を形成するための液状組成物としては、例えば、a)一般式RnSi(OR’)4-n(式中、R、R’は、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基またはビニル基を表し、nは0〜3の整数である。)で表されるアルコキシシランを加水分解重縮合させて得られるシリカゾルと前記アルコキシシランの部分加水分解物との反応物を含む塗膜形成用塗布液(特許文献1に記載。)や、b)シリカ微粒子、および一般式XnSi(OR)4-n(式中、Xは、H、Fまたは炭素数1〜8のアルキル基、アリール基またはビニル基を表し、Rは、Hまたは炭素数1〜8のアルキル基、アリール基またはビニル基を表し、nは0〜3の整数である。)で示されるアルコキシシランおよび/または一般式XnSiX’4-n(式中、Xは、H、Fまたは炭素数1〜8のアルキル基、アリール基またはビニル基を表し、X’はハロゲン原子を表し、nは0〜3の整数である。)で示されるハロゲン化シランまたはこれらの加水分解物、との反応物を含有することを特徴とする低誘電率シリカ系塗膜形成用塗布液(特許文献2に記載。)などがある。
しかし、本発明者らが、これらの組成物と従来公知の塗膜形成方法(スピンコート法やその他の塗布法)を用いて種々の装置を構成する基板やその他接合面にシリカ系塗膜を形成する試験を繰り返し行ったところ、前記の特性を備えた塗膜は得られるものの、塗膜中に前記シリカ微粒子が一部偏在して存在していたり、あるいは前記シリカ微粒子とアルコキシシランの部分加水分解物および/または加水分解物との反応が不十分であったりした場合には、膜全体に均一でかつ安定した強度(圧縮強度および引っ張り強度)を有する塗膜が必ずしも得られず、場合によっては塗膜にピンホールやクラックなどが発生してしまうことがあった。
また、これらの塗布液を用いて形成されたシリカ系塗膜は、当然のことながら、それ自体がパターニング特性を備えていない。
通常、このようなシリカ系塗膜にパターニングを施すためには、該塗膜上にフォトレジストを塗布した後、その上にパターニング用マスクを載置して露光、現像してレジストパターンを形成し、その後ドライエッチングなどを用いて、レジストパターンを転写して必要なパターンを施した絶縁層を得るのが一般的である。
しかし、フォトレジストを用いたパターニング方法は、そのプロセスの工程数が多く、極めて煩雑である。
このようなプロセス上の煩雑性を解消するため、感光性を備えた絶縁材料を用いて、それ自体を露光・現像してパターンを形成する方法が知られている。しかし、半導体装置などの用途に使用される絶縁材料には、比較的高い耐熱性が要求されるため、一般的にフォトレジストなどの用途に使用される感光性有機材料を用いることはできない。
そこで、比較的耐熱性が高く、しかも感光性を備えたシリコーン系塗膜形成用組成物が少なからず提案されている。
例えば、特許文献3には、ポリラダーシロキサンおよび/または末端ヒドロキシポリラダーシロキサンと、芳香族アジド化合物および/または芳香族スルホニルアジド化合物とを含む感光性シリコーン樹脂組成物が開示されており、また特許文献4には、ポリラダーシロキサンとジシラン誘導体とを含む感光性材料組成物が開示されている。
さらに、特許文献5には、(i)シロキサンポリマー、(ii)露光により酸または塩基を発生し前記シロキサンポリマーを架橋させる化合物、および(iii)熱処理により気化する、および/または光により退色反応する増感剤を含むネガ型感光性樹脂組成物が開示されており、また特許文献6には、(i)シロキサンポリマー、(ii)キノンジアジド化合物および(iii)溶剤を含むポジ型感光性シロキサン組成物が開示されている。
しかし、これらのシリコーン系塗膜形成用組成物を基板上に塗布し、さらにキセノン−水銀灯、エキシマレザー光、超高圧水銀灯などを用いて露光して現像すれば、絶縁膜上にそれなりのパターンを形成することはできるものの、上記の特許文献1や特許文献2に記載された塗膜と同様に、比較的耐熱性が高く、また比較的高い塗膜強度と比較的低い比誘電率を有し、さらには表面平坦性や耐クラック性などに優れたシリカ系塗膜を得ることは難しかった。
特許第3163579号公報 特許第3813268号公報 特公平1−36983号公報 特許第2850460号公報 特開2006−154037号公報 特開2006−178436号公報
発明者らは、上記のような問題を解決することを目的として鋭意研究を続けたところ、以下に示すようなシリカ系塗膜形成用塗布液を用いればよいことを見いだし、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、上記のような問題点を解決しようとするものであって、フォトレジストを用いることなく塗膜自体の特性でパターニングを施すことのできる、比較的高い塗膜強度と比較的低い比誘電率を有し、さらには表面平坦性、耐クラック性、耐熱性などに優れたシリカ系塗膜を形成するための液状組成物からなるシリカ系塗膜形成用塗布液およびその調製方法を提供することを目的としている。
本発明に係るシリカ系塗膜形成用塗布液の調製方法は、パターニング特性を備えたシリカ系塗膜を形成するための液状組成物からなるシリカ系塗膜形成用塗布液を調製する方法であって、
(a)下記一般式(I)で表されるアルコキシシランを塩基性触媒成分の存在下で加水分解・縮重合させて得られたシリカ系微粒子の水−アルコール系分散液に対して、限外濾過装置による濾過と濾過後における希釈液による希釈とからなる濾過、希釈操作を複数回行って、前記シリカ系微粒子中に含まれる塩基性触媒成分の含有量が400〜670重量ppmの範囲となるように、前記塩基性触媒成分の含有量を調整したシリカ系微粒子の水−アルコール系分散液を調製する工程、
(b)前記シリカ系微粒子を含む水―アルコール分散液に、下記一般式(I)で表されるアルコキシシランおよび下記一般式(II)で表されるハロゲン化シランから選ばれた少なくとも1種の有機珪素化合物またはその部分加水分解物を含む水分散液を混合したのち、30〜80℃の温度に加熱して、少なくとも前記シリカ系微粒子から放出される前記塩基性触媒成分によって前記有機珪素化合物を加水分解して得られる珪素化合物と、前記塩基性触媒成分を含むシリカ系微粒子とを含有する水系混合液を調製する工程、
(c)前記水系混合液中に含まれる水分およびアルコール成分を、溶媒置換用の有機溶媒と溶媒置換して、有機溶媒系混合液を調製する工程、および
(d)前記有機溶媒系混合液に、紫外線照射により酸を発生する酸発生剤を混合して、少なくとも前記シリカ系微粒子、前記珪素化合物および前記酸発生剤を含有する液状組成物を調製する工程
を含み、
前記珪素化合物が、少なくとも前記シリカ系微粒子から放出される塩基性触媒成分によって前記有機珪素化合物が加水分解された反応物であり、しかも該反応物の少なくとも一部が前記シリカ系微粒子の外部表面およびその細孔内表面に結合していることを特徴とする。
RnSi(OR’)4-n ・・・ (I)
RnSiX4-n ・・・ (II)
(式中、Rは水素原子、フッ素原子、または炭素数1〜8のアルキル基、フッ素置換アル
キル基、アリール基、ビニル基もしくはフェニル基を表し、R’は水素原子、または炭素
数1〜8のアルキル基、アリール基、ビニル基もしくはフェニル基を表し、Xはハロゲン
原子を表す。また、nは0〜3の整数である。)
前記工程(a)で使用される塩基性触媒成分が、アンモニア、水酸化アンモニウムおよび第4級アンモニウム化合物から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。

前記工程(d)で使用される酸発生剤は、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、2,4,6−トリメチルフェニルジフェニルスルホニウムp−トルエンスルホネートおよびビス(4−t−ブチルフェニルスルホニル)ジアゾメタンから選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
さらに、前記工程(d)において前記酸発生剤は、該酸発生剤をXで表し、さらに前記工程(b)から得られるシリカ系微粒子中に含まれる塩基性触媒成分をYで表したとき、そのモル比(X/Y)が0.02〜0.50となるような割合で混合することが好ましい。
前記工程(d)から得られる液状組成物には、さらにトリエタノールアミン、トリエチルアミンおよびトリ-n−ブチルアミンから選ばれた少なくとも1種のアミン化合物を混合することが好ましい。
また、前記アミン化合物は、該アミン化合物をZで表し、さらに前記酸発生剤をXで表したとき、そのモル比(Z/X)が0.01〜1.0となるような割合で混合することが好ましい。
前記工程(d)から得られる液状組成物には、さらにアントラセン、9,10−ジフェニルアントラセン、9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセンから選ばれた少なくとも1種の増感剤を混合することが好ましい。
また、前記増感剤は、該増感剤をWで表し、さらに前記酸発生剤をXで表したとき、そのモル比(W/X)が0.05〜0.7となるような割合で混合することが好ましい。
本発明に係るシリカ系塗膜形成用塗布液によれば、フォトレジストを用いたパターニング法を採用しなくても、それ自体がパターニング特性を備えたシリカ系塗膜を形成することができ、しかも比較的高い塗膜強度と比較的低い比誘電率を有し、さらには表面平坦性、耐クラック性、耐熱性などに優れたシリカ系塗膜を形成することができる。
さらに詳しく述べれば、次のような特性を備えたシリカ系塗膜、特にシリカ系絶縁膜を基板上に容易に形成することができる。
(1)前記シリカ系塗膜形成用塗布液を用いれば、該塗布液を基板上に塗布して乾燥させたシリカ系塗膜上にパターニング用マスクを載せて紫外線を照射したのち、該塗膜を加熱処理して現像すると、従来のフォトレジストを用いなくとも、所望のパターニングを施したシリカ系塗膜を得ることができる。これにより、従来公知の方法で採用されてきた、煩雑なフォトレジストの形成操作や除去・洗浄操作、さらには塗膜のエッチング操作を行うことが省略できるので、極めて経済的である。
(2)前記シリカ系塗膜形成用塗布液を用いれば、ヤング弾性率が3.0 GPa以上、好ましくは5.0 GPa以上の比較的高い塗膜強度と、4.0以下、好ましくは3.5以下の比較的低い比誘電率を有するシリカ系塗膜(特に、紫外線非照射領域の塗膜)を得ることができる。
(3)前記シリカ系塗膜形成用塗布液を用いれば、塗膜の表面に研磨処理などを施さなくとも、その表面粗さ(Rms)が5.0nm以下である平滑な表面を有するシリカ系塗膜(特に、紫外線非照射領域の塗膜)を得ることができる。
(4)前記シリカ系塗膜形成用塗布液を用いれば、たとえ比較的厚い塗膜(ただし、5μm以下)を基板上に形成しても、その表面にクラックやピンホールなどの発生が認められないシリカ系塗膜(特に、紫外線非照射領域の塗膜)を得ることができる。
(5)前記シリカ系塗膜形成用塗布液を用いれば、たとえ比較的高い温度(ただし、400℃以下)の雰囲気下に該塗膜を晒しても、その塗膜に劣化が認められないシリカ系塗膜(特に、紫外線非照射領域の塗膜)を得ることができる。
(6)前記シリカ系塗膜形成用塗布液を用いれば、上記の性状のほかに、半導体基板などの塗膜形成面との密着性や耐アルカリ性などの耐薬品性に優れ、さらには耐酸素プラズマ性やエッチング加工性などのプロセス適合性においても優れた特性を備えたシリカ系塗膜(特に、紫外線非照射領域の塗膜)を得ることができる。
以下、本発明によるシリカ系塗膜形成用塗布液およびその調製方法について具体的に説明する。
[シリカ系塗膜形成用塗布液]
本発明に係るシリカ系塗膜形成用塗布液は、パターニング特性を備えたシリカ系塗膜を形成するための液状組成物からなる塗布液であって、
塩基性触媒成分を含有するシリカ系微粒子、下記一般式(I)で表されるアルコキシシランおよび下記一般式(II)で表されるハロゲン化シランから選ばれた少なくとも1種の有機珪素化合物を加水分解して得られる珪素化合物および紫外線照射により酸を発生する酸発生剤とを含むものである。
nSi(OR’)4-n ・・・ (I)
nSiX4-n ・・・ (II)
(式中、Rは水素原子、フッ素原子、または炭素数1〜8のアルキル基、フッ素置換アルキル基、アリール基、ビニル基もしくはフェニル基を表し、R’は水素原子、または炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、ビニル基もしくはフェニル基を表し、Xはハロゲン原子を表す。また、nは0〜3の整数である。)
前記シリカ系微粒子中に含まれる塩基性触媒成分としては、アンモニア、水酸化アンモニウムおよび第4級アンモニウム化合物から選ばれた少なくとも1種の化合物を使用することが好ましく、この中でもアンモニアまたは水酸化アンモニウムを使用することが望ましい。これは、これらの塩基性触媒成分を含むシリカ系微粒子を加熱すると、該塩基性触媒成分が前記シリカ系微粒子中から放出され易いからである。
また、前記シリカ系微粒子は、前記塩基性触媒成分を10〜800重量ppmの範囲で含むことが好ましい。ここで、前記塩基性触媒成分の含有量が10重量ppm未満であると、後述するパターニング処理工程で塗膜に紫外線を照射した時に、紫外線照射領域で酸発生剤から発生する酸と反応可能な塩基性触媒成分が少なすぎるため、発生した酸が該紫外線照射領域の塗膜中に残ってしまい、結果としてこの残余の酸によって該塗膜中に含まれる前記珪素化合物の架橋を進ませてしまうことがあるので、鮮明なパターンを基板上に形成することが難しくなる。また、前記含有量が800重量ppmを超えると、塩基性触媒成分が多すぎるため、この塩基性触媒成分によって前記紫外線照射領域で前記珪素化合物の架橋を進めないためには、該塩基性触媒成分と充分に反応できるだけの酸が必要となり、結果として前記酸発生剤の量を増やす必要があるので、経済的に好ましくない。さらに、紫外線非照射量域に残留する酸発生剤の量が増えるため、最終的に得られる塗膜の誘電率を増加させてしまう可能性があり、また前記酸発生剤の量を増やさなかった場合には、少ない酸発生剤で塩基性触媒成分と充分に反応できるだけの酸を発生させる必要があるため、紫外線の照射量を増やすことが必要となるので、好ましくない。
さらに、前記シリカ系微粒子は、下記一般式(I)で表されるアルコキシシランを前記塩基性触媒成分の存在下で加水分解・縮重合させて得られるシリカ系微粒子であり、しかも該シリカ系微粒子中に含まれる前記塩基性触媒成分の量を調整したものであることが好ましい。
nSi(OR’)4-n ・・・ (I)
(式中、Rは水素原子、フッ素原子、または炭素数1〜8のアルキル基、フッ素置換アルキル基、アリール基、ビニル基もしくはフェニル基を表し、R’は水素原子、または炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、ビニル基もしくはフェニル基を表す。また、nは0〜3の整数である。)
前記シリカ系微粒子中に含まれる塩基性触媒成分の調整は、200〜1100重量ppmの範囲となるように行うことが好ましい。ここで、前記含有量が200重量ppm未満であると、前記シリカ系微粒子の外部表面付近や細孔内表面付近で前記有機珪素化合物の部分加水分解反応や加水分解反応が余り進まない(すなわち、反応量が少ない)ため、このようにして得られる塗布液を用いてシリカ系被膜を形成した場合、十分な被膜強度が得られず、また1100重量ppmを超えると、前記の部分加水分解反応や加水分解反応が進みすぎるため、得られる塗布液の保存安定性が悪くなるので好ましくない。
また、前記シリカ系微粒子は、平均粒子径が5〜500nmの範囲にあることが好ましい。ここで、前記平均粒子径が5nm未満であると、フィラーとしての効果を十分に発揮することができないため、塗膜の強度向上という面で問題となり、また前記平均粒子径が500nmを超えると、均一な分散液状態で保存しておくことが困難となるので、好ましくない。
前記一般式(I)で表されるアルコキシシランとしては、例えばメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリイソプロポキシシラン、フルオロトリメトキシシラン、フルオロトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジメトキシシラン、ジエトキシシラン、ジフルオロジメトキシシラン、ジフルオロジエトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシランなどが挙げられる。この中でも、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシランまたはその混合物を使用することが好ましい。
また、前記一般式(II)で表されるハロゲン化シランとしては、例えば、テトラクロロシラン、トリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルクロロシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリクロロシラン、メチルビニルジクロロシラン、n-プロピルトリクロロシラン、トリメチルクロロシラン、メチル-3,3,3-トリフルオロプロピルジクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、メチルプロピルジクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、t-ブチルジメチルクロロシラン、メチルフェニルジクロロシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシランなどが挙げられる。この中でも、トリクロロシラン、メチルトリクロロシランまたはその混合物を使用することが好ましい。
前記珪素化合物は、前記のアルコキシシランおよびハロゲン化シランから選ばれた少なくとも1種の有機珪素化合物を加水分解して得られるものである。
さらに、前記珪素化合物は、少なくとも前記シリカ系微粒子から放出される前記塩基性触媒成分によって前記有機珪素化合物が加水分解された反応物であり、しかも該反応物の少なくとも一部が前記シリカ系微粒子の外部表面およびその細孔内表面に結合していることが好ましい。この場合、前記有機珪素化合物の加水分解は、前記シリカ系微粒子中に含まれる塩基性触媒成分の他に、前記有機珪素化合物を含む水―アルコール系分散液中に外部から所望の塩基性触媒成分および/または酸性触媒成分を添加して行わせてもよい。
また、前記珪素化合物は、ポリスチレン換算基準で400〜3000の数平均分子量を有することが好ましい。
前記シリカ系微粒子と前記珪素化合物との含有割合は、前記シリカ系微粒子の重量(SiO2換算基準)をAで表し、さらに前記珪素化合物の重量(SiO2換算基準)をBで表したとき、その重量比(A/B)が1/9〜9/1、好ましくは4/6〜6/4の範囲にあることが好ましい。ここで、前記重量比が1/9未満であると、最終的に得られる塗膜(紫外線の非照射部分)の耐クラック性が悪くなり、また前記重量比が9/1を超えると、前記塗膜の比誘電率が高まることになるので、好ましくない。
前記酸発生剤としては、該酸発生剤を含む塗膜に紫外線を照射した時に分解して酸を発生するものであれば特に制限なく使用することができ、その具体例としては、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパ−フルオロ−nーオクタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−(ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタンー2−イル)−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムピレンスルホネート、トリフェニルスルホニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、トリフェニルスルホニウム4−トルエンスルホネート、トリフェニルスルホニウムベンゼンスルホネート、トリフェニルスルホニウム10−カンファースルホネート、トリフェニルスルホニウムn−オクタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、トリフェニルスルホニウム4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、トリフェニルスルホニウムナフタレンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロベンゼンスルホネート、(4−フルオロフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、(4−フルオロフェニル)ジフェニルスルホニウムノナフルオローn−ブタンスルホネート、(4−フルオロフェニル)ジフェニルスルホニウム10−カンファースルホネート、トリス(4−フルオロフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリス(4−フルオロフェニル)スルホニウムノナフルオローn−ブタンスルホネート、トリス(4−フルオロフェニル)スルホニウム10−カンファースルホネート、トリス(4−フルオロフェニル)スルホニウム4−トルエンスルホネート、2,4,6−トリメチルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、2,4,6−トリメチルフェニルジフェニルスルホニウム2,4−ジフルオロベンゼンスルホネート、2,4,6−トリメチルフェニルジフェニルスルホニウム4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、2,4,6−トリメチルフェニルジフェニルスルホニウムp−トルエンスルホネート、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキサンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(4−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−ジメチルベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(4−t−ブチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(4−クロロベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、メチルスルホニル・4−トルエンスルホニルジアゾメタン、シクロヘキサンスルホニル・4−トルエンスルホニルジアゾメタン、シクロヘキサンスルホニル・1,1−ジメチルエタンスルホニルジアゾメタン、ビス(1,1−ジメチルエタンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1−メチルエタンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,4−ジオキサスピロ〔4.5〕デカン−7−スルホニル)ジアゾメタンなどを挙げることができる。この中でも、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、2,4,6−トリメチルフェニルジフェニルスルホニウムp−トルエンスルホネートおよびビス(4−t−ブチルフェニルスルホニル)ジアゾメタンから選ばれた少なくとも1種を使用することが好ましい。
また、前記酸発生剤は、該酸発生剤をXで表し、さらに前記シリカ系微粒子中に含まれる塩基性触媒成分をYで表したとき、そのモル比(X/Y)が0.02〜0.50、好ましくは0.05〜0.3となる範囲で含むことが望ましい。ここで、前記モル比が0.02未満であると、乾燥塗膜に紫外線を照射しても発生する酸の量が少ないため、紫外線照射領域に架橋の進んだ珪素化合物が残ってしまって鮮明なパターンを基板上に形成することが難しくなり、また前記モル比が0.5を超えると、発生する酸の量が多くなり過ぎるため、紫外線非照射領域への酸の滲みだしが多くなり、さらに紫外線照射領域においても塩基性触媒成分やアミン化合物と反応せずに残った酸によって前記珪素化合物の架橋を進ませてしまったりするので、好ましくない。
前記液状組成物中には、さらに有機溶媒を含むことが好ましい。この有機溶媒は、250℃以下の温度で蒸発するものであれば、特に制限なく使用することができるが、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートおよびヘキシレングリコールから選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
また、前記液状組成物中には、さらにアミン化合物を含むことが好ましい。このアミン化合物としては、紫外線の照射により酸発生剤から生じた酸が紫外線の非照射領域の塗膜中に拡散するのを防止できれば特に制限なく使用することができ、その具体例としては、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、ジ−n−ヘキシルアミン、ジ−n−ヘプチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジ−n−ノニルアミン、ジ−n−デシルアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−ノニルアミン、トリ−n−デシルアミン、アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、2−メチルアニリン、3−メチルアニリン、4−メチルアニリン、4−ニトロアニリン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、1−ナフチルアミンなどが挙げられる。この中でも、トリエタノールアミン、トリエチルアミンおよびトリ-n−ブチルアミンから選ばれた少なくとも1種のアミン化合物を使用することが好ましい。すなわち、このアミン化合物を前記液状組成物中に含ませておくと、前記酸発生剤から生じた酸がパターニング用マスクの下部に位置する紫外線の非照射領域に拡散するのを防止できるので、所望する鮮明なパターンを前記塗膜上に形成することができる。
また、前記アミン化合物は、該アミン化合物をZで表し、さらに前記酸発生剤をXで表したとき、そのモル比(Z/X)が0.01〜1.0、好ましくは0.05〜0.5となる範囲で含むことが望ましい。ここで、前記モル比が0.01未満であると、紫外線照射領域で発生した酸が紫外線非照射領域に滲みだすのを防止できなくなるため、鮮明なパターンを基板上に形成することが難しくなり、また前記モル比が1.0を超えると、乾燥塗膜に紫外線を照射しても発生する酸の量が不足するため、紫外線照射領域に架橋の進んだ珪素化合物が残ってしまって鮮明なパターンを基板上に形成することが難しくなる。
さらに詳しく述べれば、前記アミン化合物は、紫外線の照射領域で前記酸発生剤から生じた酸が、前記シリカ系微粒子から放出される塩基性触媒成分と該アミン化合物によって丁度中和される程度の量を添加することが望ましい。これは、前記酸が過剰に存在すると、この過剰な酸により紫外線照射領域の塗膜に含まれる前記珪素化合物の架橋が進んでしまうこととなり、また前記アミン化合物が過剰に存在すると、この過剰なアミン化合物により紫外線照射領域の塗膜に含まれる前記珪素化合物の架橋が進んでしまうことになるので、前記塗膜上に所望の鮮明なパターンを形成することができなくなるためである。
また、前記液状組成物中には、さらに増感剤を含むことが好ましい。この増感剤としては、少なくとも300〜480nmの波長域における紫外線を吸収して、前記酸発生剤に対する電子供与性を有するものであれば特に制限なく使用することができ、その具体例としては、ビフェニル、1,4−ジメチルナフタレン、9−フルオレノン、フルオレン、フェナントレン、トリフェニレン、ピレン、アントラセン、9,10−ジフェニルアントラセン、9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、ベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、アセトフェノン、4−メトキシアセトフェノン、ベンズアルデヒドなどの芳香族化合物などが挙げられる。この中でも、アントラセン、9,10−ジフェニルアントラセン、9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセンおよび9,10−ジブトキシアントラセンから選ばれた少なくとも1種の芳香族化合物を使用することが好ましい。
また、前記増感剤は、該増感剤をWで表し、さらに前記酸発生剤をXで表したとき、そのモル比(W/X)が0.05〜0.7、好ましくは0.1〜0.5となる範囲で含むことが望ましい。ここで、前記モル比が0.05未満であると、前記増感剤による増感機能(すなわち、少なくとも300〜480nmの波長域を有する紫外線を吸収してその紫外線のエネルギーにより前記酸発生剤を分解する機能)を充分に果たすことができなくなるため、鮮明なパターンを基板上に形成することが難しくなる場合がある。ただし、以下で述べる紫外線ランプを使用する場合にはこの限りでない。また、前記モル比が0.7を超えると、前記増感剤による紫外線の吸収量が多くなり過ぎて、このように吸収された紫外線のエネルギーにより前記酸発生剤が過度に分解して酸の発生量が必要以上に多くなることがあるため、紫外線非照射領域への酸の滲みだしが多くなったり、あるいは塗膜中に残存する酸の量が増大したりして、鮮明なパターンを基板上に形成することが難しくなる場合がある。
しかし、本発明に係る液状組成物においては、該液状組成物中に前記増感剤を含ませることは必ずしも必要でない。すなわち、300nm未満の低波長域、特に254nm付近の波長域を含む紫外線を照射可能な紫外線ランプ(たとえば、波長254nm付近の紫外線をフィルターでカットしていない紫外線ランプや、低圧水銀ランプ、水銀キセノンランプなど)を用いて塗膜に紫外線を照射できる環境があれば、該液状組成物中に前記増感剤を含んでいなくとも、基板上に鮮明なパターンを形成することができる。
前記液状組成物中に含まれる固形分(主に、珪素含有成分)の含有量は、その使用用途によっても異なるが、該組成物の重量に対し2〜60重量%、好ましくは10〜50重量%の範囲となるように調整することが望ましい。ここで、前記含有量が60重量%を超えると、前記組成物の経時安定性が悪くなり、また前記含有量が2重量%未満であると、均一な塗膜を基板上に形成することが難しくなる。
さらに、本発明においては、前記液状組成物中にレベリング剤としての界面活性剤やポリシリコーン樹脂などが添加されていてもよい。前記界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンジメチルポリシロキサン等のシリコーン系界面活性剤やパーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物等のフッ素系界面活性剤などが挙げられ、また前記ポリシリコーン樹脂としては、ポリエーテル変性シリコーン樹脂、アミノ変性シリコーン樹脂、エポキシ変性シリコーン樹脂、アルコキシ変性樹脂などが挙げられる。この中でも、ポリシリコーン樹脂を使用することが好ましい。
以下に、本発明に係るシリカ系塗膜形成用塗布液の調製方法について具体的に説明するが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではない。
[シリカ系塗膜形成用塗布液の調製方法]
本発明に係るシリカ系塗膜形成用塗布液の調製方法は、パターニング特性を備えたシリカ系塗膜を形成するための液状組成物からなる塗布液を調製する方法であって、
(a)下記一般式(I)で表されるアルコキシシランを塩基性触媒成分の存在下で加水分解・縮重合させて得られたシリカ系微粒子の水−アルコール系分散液を限外濾過装置にかけて、前記塩基性触媒成分の含有量を調整したシリカ系微粒子の水−アルコール系分散液を調製する工程、
(b)前記シリカ系微粒子を含む水―アルコール分散液に、下記一般式(I)で表されるアルコキシシランおよび下記一般式(II)で表されるハロゲン化シランから選ばれた少なくとも1種の有機珪素化合物またはその部分加水分解物を含む水分散液を混合したのち、30〜80℃の温度に加熱して、少なくとも前記シリカ系微粒子から放出される前記塩基性触媒成分によって前記有機珪素化合物を加水分解して得られる珪素化合物と、前記塩基性触媒成分を含むシリカ系微粒子とを含有する水系混合液を調製する工程、
(c)前記水系混合液中に含まれる水分およびアルコール成分を、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートおよびヘキシレングリコールから選ばれた少なくとも1種の有機溶媒と溶媒置換して、有機溶媒系混合液を調製する工程、および
(d)前記有機溶媒系混合液に、紫外線照射により酸を発生する酸発生剤を混合して、少なくとも前記シリカ系微粒子、前記珪素化合物および前記酸発生剤を含有する液状組成物を調製する工程
を含むものである。
nSi(OR’)4-n ・・・ (I)
nSiX4-n ・・・ (II)
(式中、Rは水素原子、フッ素原子、または炭素数1〜8のアルキル基、フッ素置換アルキル基、アリール基、ビニル基もしくはフェニル基を表し、R’は水素原子、または炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、ビニル基もしくはフェニル基を表し、Xはハロゲン原子を表す。また、nは0〜3の整数である。)
上記の各工程について具体的に述べれば、以下の通りである。
工程(a
この工程では、前記アルコキシシランを前記塩基性触媒成分の存在下で加水分解・縮重合させて得られるシリカ系微粒子を含む水―アルコール系分散液を調製するが、その調製方法については、従来公知の方法を採用することができる。すなわち、1)前記アルコキシシランを含む水―アルコール分散液に塩基性触媒成分(例えば、アンモニア)の水溶液を添加した後、得られた加水分解・縮合物を熟成させる方法や、2)前記1)で得られたシリカ系微粒子を、さらにオートクレーブなどの圧力容器中で水熱処理して熟成させる方法などがある。ただし、前記シリカ系微粒子の平均粒子径は、5〜500nmの範囲にあることが好ましい。
しかし、本発明方法においては、前記シリカ系微粒子中に含まれる前記塩基性触媒成分の含有量を調整することが必要である。その方法について具体的に述べれば、以下の通りである。ただし、本発明方法は、ここに記載された方法に限定されるものではない。
(1)先ず始めに、上記の方法で得られたシリカ系微粒子を含む水―アルコール系分散液を限外濾過装置にかけてその容量が約2分の1から約5分の1になるまで濃縮して、該分散液中に含まれる前記アルコキシシランの未反応物や中間反応物などを除去する。この場合、前記分散液中に含まれる水、アルコールおよび塩基性触媒成分(例えば、アンモニア)の一部が取り除かれる。
(2)次いで、前記(1)で得られた水―アルコール系分散液に約1〜3倍の容量の純水(温度が5〜25℃のものを使用し、以下同じ。)を加えて撹拌した後、限外濾過装置にかけてその容量が約2分の1になるまで濃縮して、該分散液中に含まれる塩基性触媒成分の一部を除去する。さらに必要に応じて、得られた水―アルコール系分散液と同容量の純水を加えて撹拌した後、限外濾過装置にかけて同様な操作を繰り返し行う。この操作を繰り返し行うことにより、前記シリカ系微粒子の中から塩基性触媒成分が徐々に前記分散液中に放出されるので、前記シリカ系微粒子中に含まれる塩基性触媒成分の含有量を調整することができる。ここで行われる前記操作の回数は、前記シリカ系微粒子中に含まれる塩基性触媒成分やその含有量、さらには該シリカ系微粒子の性状などによっても異なるが、2〜5回行うことが好ましい。
(3)次に、前記(1)または(2)で得られた水―アルコール系分散液(アルコール濃度は低い)に、同容量のアルコール(温度が5〜25℃のものを使用し、以下同じ。)を加えて撹拌した後、限外濾過装置にかけてその容量が約2分の1になるまで濃縮して、該分散液中に含まれる水とアルコールとを溶媒置換する。さらに必要に応じて、得られた水―アルコール系分散液と同容量のアルコールを加えて撹拌した後、限外濾過装置にかけて同様な操作を繰り返し行う。この操作を2〜4回程度、繰り返し行うことにより、前記水―アルコール分散液中に含まれるアルコール濃度を約60〜90重量%に調整する。これにより、前記有機珪素化合物の水分散液との混合に適した水―アルコール分散液が得られる。また、この水―アルコール分散液中に含まれる前記シリカ系微粒子の濃度は、約5〜20重量%に調整することが望ましい。
これにより、前記塩基性触媒成分の含有量が200〜1100重量ppmの範囲に調整されたシリカ系微粒子を含む水―アルコール系分散液が得られる。
しかし、前記塩基性触媒成分の必要量は、後段の工程(b)で使用される有機珪素化合物の種類や使用量、あるいはこれらを混合して得られる分散液中に含まれる触媒成分の種類やその含有量などによっても異なるので、これらの条件を考慮して前記シリカ系微粒子中に含まれる塩基性触媒成分の含有量を前記の範囲で調整することが望ましい。
なお、この水―アルコール系分散液中には、前記の加水分解・縮重合反応に使用された塩基性触媒成分が含まれている。すなわち、前記分散液中には、上記の限外濾過操作では除去されない塩基性触媒成分や、前記操作終了後に前記シリカ系微粒子から一部、放出された塩基性触媒成分を含んでいるが、後段の工程(b)で行われる加水分解反応に利用することができるので、そのまま含ませておいてもよい。
この工程で使用される前記アルコキシシランについては、前記シリカ系微粒子を得ることができれば特に制限なく用いることができるが、エチルシリケートやメチルシリケートなどを使用することが好ましい。
また、前記塩基性触媒成分としては、アンモニア、水酸化アンモニウムおよび第4級アンモニウム化合物から選ばれた少なくとも1種を使用することができるが、この中でもアンモニアまたは水酸化アンモニウムを使用することが好ましい。
さらに、前記アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコールから選ばれた少なくとも1種を使用することができるが、この中でもメチルアルコールまたはエチルアルコールを使用することが好ましい。
工程(b
この工程では、前記工程(a)で得られた前記シリカ系微粒子を含む水―アルコール分散液と、下記一般式(I)で表されるアルコキシシラン、下記一般式(II)で表されるハロゲン化シランおよびその部分加水分解物から選ばれた少なくとも1種の有機珪素化合物を含む水分散液とが混合される。これにより、前記シリカ系微粒子、前記有機珪素化合物などを含む水系混合液が得られる。
ここで、前記アルコキシシランおよび/またはハロゲン化シランは、酸性触媒成分の存在下で予め部分加水分解させてから混合してもよい。これは、初期の段階で前記有機珪素化合物を酸性触媒成分の存在下で部分加水分解および/または加水分解させた後、さらに以下に述べる塩基性触媒成分によって加水分解させて得られた珪素化合物を含む組成物を用いて塗膜を形成すると、緻密なシリカ系塗膜を得ることができるからである。
前記酸性触媒成分としては、硝酸、塩酸、酢酸および硫酸などが挙げられる。この中でも、硝酸または塩酸を使用することが好ましい。
また、この工程では、前記水系混合液中に、さらに外部から塩基性触媒成分を含有させることができる。この塩基性触媒成分としては、上記と同じものを使用することができる。
先にも述べたように、前記工程(a)で得られた水―アルコール系分散液中には、塩基性触媒成分が含まれていることが多い。しかし、前記工程(a)で得られるシリカ系微粒子に含まれる塩基性触媒成分の量が所望値より少ないときには、前記水系混合液中に、外部から前記塩基性触媒成分を添加することができる。このような場合としては、以下のようなケースがある。
(1)前記アルコキシシランを加水分解・縮重合させたシリカ系微粒子をさらにオートクレーブなどの圧力容器中で水熱処理して熟成させたシリカ系微粒子を含む水―アルコール系分散液を使用した場合であり、このケースにおいては、得られるシリカ系微粒子が比較的緻密な構造となっているため、該シリカ系微粒子中に含まれる塩基性触媒成分が幾分少なくなってしまうことがある。
(2)前記アルコキシシランを加水分解・縮重合させたシリカ系微粒子、あるいはこれをさらにオートクレーブなどの圧力容器中で水熱処理して熟成されたシリカ系微粒子を含む水―アルコール系分散液を限外濾過する際に、間違った操作(例えば、過度の操作回数等)などを行って、得られるシリカ系微粒子や水―アルコール分散液中に含まれる塩基性触媒成分の含有量が所望値より低下してしまった場合であり、このようなケースにおいては、前記塩基性触媒成分を外部から補ってやることが必要となるときがある。
さらに、この工程では、上記の水系混合液を30〜80℃の温度に加熱して、少なくとも前記シリカ系微粒子から放出される前記塩基性触媒成分によって前記有機珪素化合物が加水分解される。
前記水系混合液は、前記シリカ系微粒子中に含まれる塩基性触媒成分によっても異なるが、30〜80℃、好ましくは40〜70℃の温度に加熱することが望まれる。ここで、前記温度が30℃未満であると、前記シリカ系微粒子中に含まれる塩基性触媒成分の放出速度が遅いため、前記有機珪素化合物を部分加水分解および/または加水分解させるための時間が長くなり、また前記温度が80℃を超えると、前記シリカ系微粒子中に含まれる塩基性触媒成分の拡散が急速または急激に起こるため、前記分散液の安定性が悪くなるので、好ましくない。
このように、前記水系混合液を加熱することにより、前記シリカ系微粒子中に含まれる前記塩基性触媒成分は、前記シリカ系微粒子から徐々に放出されるが、場合によっては前記の加熱操作を段階的に行ってよい。
これにより、前記シリカ系微粒子から放出される前記塩基性触媒成分によって前記有機珪素化合物は、前記シリカ系微粒子の外部表面やその細孔内表面の付近で部分加水分解および/または加水分解されるので、前記シリカ系微粒子と十分に結合した珪素化合物を得ることができる。この場合、前記有機珪素化合物は、前記混合液中に含まれる前記塩基性触媒成分によっても加水分解されるが、本発明方法においては、少なくとも前記シリカ系微粒子から放出される前記塩基性触媒成分によって加水分解させることが重要である。
なお、前記シリカ系微粒子中に含まれる塩基性触媒成分と前記分散液中に含まれる塩基性触媒成分とは、同一であっても異なっていてもよいが、できるだけ同一なものを使用することが望ましい。
このようにして得られる水系混合液中に含まれるシリカ系微粒子は、前記工程(a)で調整された塩基性触媒成分の含有量やこの工程(b)における塩基性触媒成分の放出量などによっても異なるが、前記塩基性触媒成分を200〜1100重量ppmの範囲で含んでいることが好ましい。
また、前記珪素化合物は、ポリスチレン換算基準で400〜3000、好ましくは800〜2000の数平均分子量を有することが好ましい。この数平均分子量が上記の範囲にあれば、最終的に得られるシリカ系塗膜形成用塗布液において優れた経時安定性と良好な塗工性を示すことができる。
工程(c)
この工程では、前記工程(b)で得られた水系混合液を、ロータリーエバポレーターなどの従来公知の溶媒置換工程に供して、該分散液中に含まれる水分とアルコール成分を、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ヘキシレングリコールなどから選ばれた少なくとも1種の有機溶媒と溶媒置換して、有機溶媒系混合液を調製する。
その具体例(溶媒置換用の有機溶媒として、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(PGP)を使用した事例)を示せば、以下の通りである。しかし、本発明は、ここで述べる方法に限定されるものではない。
(i)上記で得られた水系混合液を、ロータリーエバポレーターのフラスコ中に入れ、さらにプロピレングリコールモノプロピルエーテルをフラスコ中に入れる。
(ii)次いで、ロータリーエバポレーターを駆動して、50〜90℃、好ましくは60〜80℃の温度条件下、−0.05〜−0.1MPa、好ましくは−0.08〜−0.1MPaの減圧条件下で、前記フラスコを30〜120rpm、好ましくは60〜90rpmの速度で回転させる。すると、前記水系混合液中に含まれる水とアルコールが蒸発してくるので、これを冷却して系外に排出する。
(iii)前記操作(ii)を必要時間、続けて行うことにより、前記水およびアルコールとプロピレングリコールモノプロピルエーテルとが溶媒置換された有機溶媒系混合液が得られる。
このような溶媒置換を行うことにより、前記水系混合液中に含まれる水とアルコール、さらには前記アルコキシシランなどの加水分解で副生されるアルコール類などが分離・除去される。なお、上記の操作をロータリーエバポレーターを用いて行えば、前記の溶媒置換をほゞ完全に行うこともできるが、本発明においては、必ずしもこれを完全に行う必要はない。
これにより、前記有機溶媒系混合液中に含まれる固形分(主に、珪素含有成分)の含有量を、該混合液の重量に対し2〜60重量%、好ましくは10〜50重量%の範囲となるように調整することができる。
さらに、前記有機溶媒系混合液中に含まれるシリカ系微粒子は、前記塩基性触媒成分を10〜800重量ppmの範囲で含んでいることが好ましい。
工程(d
この工程では、前記工程(c)で得られた有機溶媒系混合液に、紫外線照射により酸を発生する酸発生剤を混合して、少なくとも前記シリカ系微粒子、前記珪素化合物および前記酸発生剤を含有する液状組成物を調製する。
前記酸発生剤としては、先にも述べたように、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、2,4,6−トリメチルフェニルジフェニルスルホニウムp−トルエンスルホネートおよびビス(4−t−ブチルフェニルスルホニル)ジアゾメタンから選ばれた少なくとも1種を使用することが好ましい。この場合、前記酸発生剤は、そのまゝ前記有機溶媒系混合液中に混合してもよいが、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ヘキシレングリコールなどの有機溶媒に溶解・分散させてから混合することが望ましい。この場合、前記酸発生剤を溶解・分散させる有機溶媒としては、前記有機溶媒系混合液中に含まれる有機溶媒と同じ種類のものを使用することが好ましい。
前記酸発生剤は、前記有機溶媒系混合液に撹拌下で添加して、さらに室温にて十分に撹拌すれば、該酸発生剤を分散させた液状組成物を得ることができる。
ここで、前記酸発生剤は、該酸発生剤をXで表し、さらに前記シリカ系微粒子中に含まれる塩基性触媒成分をYで表したとき、そのモル比(X/Y)が0.02〜0.50、好ましくは0.05〜0.3となるような割合で添加することが好ましい。その理由は、上記の通りである。
その他工程
この工程では、前記工程(d)で得られた液状組成物に、さらに必要に応じて、紫外線の照射により酸発生剤から生じた酸が紫外線の非照射領域の塗膜中に拡散するのを防止するためのアミン化合物を混合して、少なくとも前記シリカ系微粒子、前記珪素化合物、前記酸発生剤および前記アミン化合物を含有する液状組成物を調製する。
しかし、紫外線の非照射領域の塗膜中に存在する前記シリカ系微粒子中に含まれる塩基性触媒成分がその役目も果たす(ただし、その含有量と放出量に依存する)ことができるので、本発明においては、前記アミン化合物を添加することは必ずしも必須条件ではない。
前記アミン化合物としては、先にも述べたように、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、トリ-n−ブチルアミンから選ばれた少なくとも1種のアミン化合物であることが好ましい。この場合、前記アミン化合物は、そのまゝ前記有機溶媒系混合液中に混合してもよいが、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ヘキシレングリコールなどの有機溶媒に溶解・分散させてから混合することが望ましい。この場合、前記アミン化合物を溶解・分散させる有機溶媒としては、前記有機溶媒系混合液中に含まれる有機溶媒と同じ種類のものを使用することが好ましい。
前記アミン化合物は、前記工程(d)で得られた液状組成物に撹拌下で混合して、さらに室温にて十分に撹拌すれば、該アミン化合物を分散させた液状組成物を得ることができる。
ここで、前記アミン化合物は、該アミン化合物をZで表し、さらに前記酸発生剤をXで表したとき、そのモル比(Z/X)が0.01〜1.0、好ましくは0.05〜0.5となる範囲で含むことが望ましい。その理由は、上記の通りである。さらに詳しく述べれば、前記アミン化合物は、紫外線の照射領域で前記酸発生剤から生じた酸が、前記シリカ系微粒子から放出される塩基性触媒成分と該アミン化合物によって丁度中和される程度の量を添加することが望ましい。
この工程では、前記工程(d)で得られた液状組成物に、さらに必要に応じて、塗膜への紫外線照射時に少なくとも300〜480nmの波長域における紫外線を吸収してその紫外線のエネルギーにより前記酸発生剤を分解することのできる機能を備えた増感剤を混合して、少なくとも前記シリカ系微粒子、前記珪素化合物、前記酸発生剤および前記増感剤を含有する液状組成物、あるいは少なくとも前記シリカ系微粒子、前記珪素化合物、前記酸発生剤、前記アミン化合物および前記増感剤を含有する液状組成物を調製する。
しかし、本発明においては、前記工程(d)で得られた液状組成物に、前記増感剤を混合することは必ずしも必須条件ではない。ただし、該液状組成物中に前記増感剤を混合しない場合は、塗膜への紫外線照射時に、300nm未満の低波長域、特に254nm付近の波長域を含む紫外線を照射できる紫外線ランプ(たとえば、波長254nm付近の紫外線をフィルターでカットしていない紫外線ランプや、低圧水銀ランプ、水銀キセノンランプなど)を使用することが必要である。
前記増感剤としては、先にも述べたように、アントラセン、9,10−ジフェニルアントラセン、9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセンおよび9,10−ジブトキシアントラセンから選ばれた少なくとも1種の芳香族化合物を使用することが望ましい。この場合、前記増感剤は、そのまゝ前記有機溶媒系混合液中に混合してもよいが、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ヘキシレングリコールなどの有機溶媒に溶解・分散させてから混合することが望ましい。この場合、前記増感剤を溶解・分散させる有機溶媒としては、前記有機溶媒系混合液中に含まれる有機溶媒と同じ種類のものを使用することが好ましい。
前記増感剤は、前記工程(d)で得られた液状組成物に撹拌下で混合して、さらに室温にて十分に撹拌すれば、該増感剤を分散させた液状組成物を得ることができる。
ここで、前記増感剤は、該増感剤をWで表し、さらに前記酸発生剤をXで表したとき、そのモル比(W/X)が0.05〜0.7、好ましくは0.1〜0.5となる範囲で含むことが望ましい。その理由は、上記の通りである。
このようにして、パターニング特性を備え、しかも比較的高い塗膜強度と比較的低い比誘電率を有し、さらには表面平坦性や耐クラック性などに優れたシリカ系塗膜を形成するための液状組成物からなるシリカ系塗膜形成用塗布液を調製することができる。
[パターニングされたシリカ系塗膜の形成方法]
次に、本発明に係る前記シリカ系塗膜形成用塗布液を用いて、パターニングされたシリカ系塗膜を基板上に形成する方法について説明する。その方法としては、次に示すようなものがあるが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではない。
この方法は、パターニングされたシリカ系塗膜を基板上に形成する方法であって、
(1)前記シリカ系塗膜形成用組成物を基板上に塗布する工程、
(2)前記工程で基板上に形成された塗膜を乾燥する工程、
(3)前記工程で乾燥された塗膜上にパターニング用マスクを載置する工程、
(4)前記工程でマスキングされた塗膜上に紫外線を照射する工程、
(5)前記工程で紫外線が照射された塗膜を加熱する工程、
(6)前記工程で焼成された塗膜を現像液に浸漬する工程、および
(7)前記工程で現像液に浸漬された塗膜を洗浄する工程
を含むものである。
上記の各工程について具体的に述べれば、以下の通りである。
工程(1
一般に、塗膜形成用塗布液を基板上に塗布するためには、スピンコート法、ディップコート法、ロールコート法、スリットコート法、転写法等の塗布方法が採用されているが、本発明においても、このような従来公知の方法を用いて前記シリカ系塗膜形成用塗布液を基板上に塗布することができる。この中でも、半導体基板上などに塗膜形成用塗布液を塗布する場合には、スピンコート法が好適で、塗布膜厚の均一性や低発塵性などにおいて優れている。従って、本発明塗布液においては、このスピンコート法による塗布法を採用することが望ましいが、たとえば、大口径の液晶基板上などに塗布する場合には、スリットコート法などを採用してもよい。
なお、本発明塗布液において「組成物を基板上に塗布すること」の意味は、前記組成物をシリコンウェハーなどの基板上に直接、塗布するだけでなく、該基板上に形成された半導体加工用保護膜やその他の塗膜の上部に塗布することも含むものである。
工程(2
この工程では、前記工程(1)で塗布された塗膜を、25〜120℃、好ましくは40〜100℃の温度で乾燥処理する。ここで、この操作を25℃未満の温度で行うと、塗膜の乾燥が不充分であるため、後段の工程(3)においてパターニング用マスクを載置すると塗膜表面に付着したりするため、所望のパターニングを施すことができず、また120℃を超えた温度で行うと、塗膜中に含まれる塩基性触媒成分によって前記珪素化合物の架橋が進んでしまったりすることがあるため、後述する工程で鮮明なパターンを基板上に形成することが難しくなる。
また、この乾燥処理は、塗膜の膜厚などによっても異なるが、10〜300秒、好ましくは30〜180秒をかけて行うことが望ましい。ここで、この操作を10秒未満で行うと、後段の工程(3)においてパターニング用マスクを載置すると塗膜表面に付着したりするため、所望のパターニングを施すことができず、また300秒以上かけて行うと、塗膜中に含まれる塩基性触媒成分によって前記珪素化合物の架橋が進んでしまったりすることがあるため、後述する工程で鮮明なパターンを基板上に形成することが難しくなる。
さらに、この乾燥処理は、空気雰囲気下または窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下で行うことができるが、経済的には空気雰囲気下で行うことが好ましい。これは、この処理が120℃以下という低い温度条件下で短時間行われるので、たとえ酸素を比較的多量に含んでいる空気雰囲気下で加熱処理しても半導体基板等の上部に配設された金属配線などに対し金属酸化などによるダメージを与えないからである。
なお、この乾燥処理は、前記の塗布工程で得られた基板を枚葉式のホットプレート上に載置して行うことが好ましい。
工程(3
この工程では、前記工程(2)で乾燥された塗膜上にパターニング用マスクを載置する。
ここで、前記パターニング用マスクは、開口部以外は紫外線を透過せず、しかも紫外線の照射に耐えられる材料で構成されたものであれば、従来のフォトレジスト用に使用されていたものをそのまま使用することができる。たとえば、半導体層間絶縁膜用絶縁膜、素子分離用絶縁膜、液晶TFT素子用絶縁膜などに用いられる従来公知のパターニング用マスクから、その用途に応じて適宜選択して使用することができる。
工程(4
この工程では、前記工程(3)でマスキングされた塗膜上に紫外線を照射する。
この工程で使用される紫外線の照射量は、パターニングを施す塗膜の種類やパターニング用マスクのスリット間隔などによっても異なることがあるため、特に制限されるものではないが、前記塗膜の単位面積あたりの照射量が積算で2〜1000mJ/cm2(ただし、以下で定義する波長254nm付近の値と波長405nm付近の値とを含む)の範囲となるように行うことが好ましい。さらに詳しく述べれば、300nm未満の低波長域、特に254nm付近の波長域を含む紫外線を照射できる紫外線ランプを用いる場合は、積算照射量が2〜140mJ/cm2(波長254nm付近の値)の範囲にあることが好ましく、また300〜480nmの波長域を有する紫外線を照射できる紫外線ランプを用いる場合は、積算照射量が10〜1000mJ/cm2(波長405nm付近の値)の範囲にあることが好ましい。ここで、前記積算照射量が、前者の紫外線ランプで2mJ/cm2(波長254nm付近の値)未満である場合、さらに後者の紫外線ランプで10mJ/cm2(波長405nm付近の値)未満である場合は、前記酸発生剤から発生する酸が不充分となり、また前記積算照射量が、前者の紫外線ランプで140mJ/cm2(波長254nm付近の値)を超える場合、さらに後者の紫外線ランプで1000mJ/cm2(波長405nm付近の値)を超える場合は、前記酸発生剤から発生する酸が多くなり過ぎることがあり、さらには紫外線の照射に要する時間が比較的長くなるので、好ましくない。
上記において、「紫外線の照射量」とは、塗膜の単位面積(cm2)あたりに照射される紫外線の量を意味し、また「積算照射量」とは、前記塗膜に1秒間あたりに照射される紫外線の量(以下、「照度」という場合がある。)に照射時間(秒)を掛けて得られる値を意味する。また、上記において「波長254nm付近の値」とは、波長254nm付近(概ね、240〜270nm)の紫外線量をセンサーで測定して得られる値を意味し、さらに「波長405nm付近の値」とは、波長405nm付近(概ね、360〜480nm)の紫外線量をセンサーで測定して得られる値を意味する。なお、これらについては、下記においても同様に解釈するものとする。
上記の紫外線照射量を達成するには、前者の紫外線ランプを用いる場合は、塗膜表面の照度が0.5〜5.0mW/cm2(波長254nm付近の値)となるように設定して0.4〜280秒間かけて行うことが好ましく、また後者の紫外線ランプを用いる場合は、塗膜表面の照度が5〜50mW/cm2(波長405nm付近の値)となるように設定して0.2〜200秒間かけて行うことが好ましい。
これにより、前記紫外線が照射された領域(パターニング用マスクの開口部の下部に位置する)の塗膜に含まれる前記酸発生剤が分解して酸を発生する。たとえば、スルホニウム塩系酸発生剤を用いた場合の一例を示せば、以下の通りである。
なお、本発明においては、上記の各工程、すなわち前記工程(1)〜(4)のいずれかにおいて操作上の過ちやその他で不具合が発生した場合には、次の加熱工程、すなわち工程(5)に供することなく、直接、以下の各工程、すなわち工程(6)および(7)に供することが望ましい。これは、前記工程(1)〜(4)で基板上に形成されたシリカ系塗膜は、現像液中に浸漬すると、該塗膜中に含まれる珪素化合物の架橋が進んでいないため、前記現像液中に溶出してしまうためである。
これにより、比較的高価な基板、たとえば半導体基板や液晶TFT基板などを簡単に再生することができるので、歩留まりがよくなり極めて経済的である。すなわち、このようにして再生された基板を再び上記の各工程に供すれば、パターニングされたシリカ系塗膜を有する基板を容易に得ることができる。よって、これも本発明の一つの利点である。
工程(5
この工程では、前記工程(4)で紫外線が照射された塗膜を100〜200℃、好ましくは130〜190℃の温度で加熱処理する。ここで、この操作を100℃未満の温度で行うと、紫外線非照射領域の塗膜に含まれる前記珪素化合物の架橋の進行が不充分となるため、後段の工程(6)で現像液に浸漬した際にこれらが溶解してしまい、また200℃を超えた温度で行うと、紫外線照射領域の塗膜に含まれる前記珪素化合物の架橋が熱により進行してしまうため、後段の工程(6)で現像液に浸漬してもこれらが溶解しなくなるので、好ましくない。
また、この加熱処理は、塗膜の膜厚などによっても異なるが、10〜300秒、好ましくは30〜180秒をかけて行うことが望ましい。ここで、この操作を10秒未満で行うと、紫外線非照射領域の塗膜に含まれる前記珪素化合物の架橋の進行が不充分となるため、後段の工程(6)で現像液に浸漬した際にこれらが溶解してしまい、また300秒以上かけて行うと、紫外線照射領域の塗膜に含まれる前記珪素化合物の架橋が熱により進行してしまうため、後段の工程(6)で現像液に浸漬してもこれらが溶解しなくなるので、好ましくない。
さらに、この加熱処理は、空気雰囲気下または窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下で行うことができるが、経済的には空気雰囲気下で行うことが好ましい。これは、この処理が200℃以下という低い温度条件下で短時間行われるので、たとえ酸素を比較的多量に含んでいる空気雰囲気下で加熱処理しても半導体基板上に配設された金属配線などに対し金属酸化などによるダメージを与えないからである。
なお、この加熱処理は、前記の塗布工程で得られた基板を枚葉式のホットプレート上に載置して行うことが好ましい。
これにより、前記シリカ系微粒子中に含まれる塩基性触媒成分(例えば、アンモニア)が粒子外に放出されて、前記酸と反応する。さらに、前記アミン化合物も前記酸と反応するため、紫外線の照射を行った塗膜中には、前記珪素化合物の架橋を推し進めることのできる酸化合物やアルカリ化合物は単独で殆ど存在しないか、或いは少量しか存在しないことになる。
一方、紫外線の非照射領域における塗膜中では、前記酸発生剤が分解して発生しないため、上記のような中和反応は起こらず、結果として前記シリカ系微粒子から放出される塩基性触媒成分(例えば、アンモニア)と前記アミン化合物の作用効果により前記珪素化合物の架橋を推し進めることができる。よって、この領域では、−O−Si−O−結合の架橋が或る程度、進んだシリカ系塗膜が形成される。また、前記アミン化合物は、紫外線の照射を行った塗膜中で発生した酸が、紫外線を照射していない塗膜中に滲み出してきた場合、これと反応して該塗膜中に拡散するのを防止する役目を果たす。
工程(6
この工程では、前記工程(4)で加熱処理された塗膜を現像液に浸漬して、紫外線の照射領域における塗膜(すなわち、珪素化合物の架橋が進んでいない箇所)を溶解する。
この工程で用いられる現像液は、従来公知の市販品から適宜選択して使用することができる。すなわち、紫外線の照射領域における塗膜を溶解して洗い流すことのできるものであれば特に制限なく使用することができるが、テトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムから選ばれた少なくとも1種のアルカリ化合物の水溶液であることが好ましい。この中でも、特にテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドやテトラエチルアンモニウムハイドロオキサイドなどのテトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイドからなるアルカリ化合物を使用することが望ましい。
また、現像液への浸漬時間は、現像液の種類によっても異なるが、1〜20分であることが好ましい。ここで、前記浸漬時間が1分未満であると、紫外線の照射領域における塗膜の溶解が不充分となる可能性があり、また前記浸漬時間が20分を超えると、紫外線の非照射領域における塗膜中へ現像液が浸入してしまい、ごく僅かに存在する未架橋成分を溶解してしまう可能性があるため、好ましくない。
工程(7
この工程では、前記工程(6)で現像液に浸漬された塗膜や基板を洗浄する。これにより、架橋が殆ど進んでいない珪素化合物やシリカ系微粒子を現像液で溶解させた後の残留物(中和反応物等)をきれいに洗い流すと共に、前記の現像液などを塗膜や基板上から洗浄・除去する。
この工程で使用される洗浄液は、形成されるシリカ系塗膜(例えば、半導体層間絶縁膜用塗膜)の用途によっても異なるが、純水(イオン交換水)や超純水などを用いることが好ましく、またこの洗浄操作は、前記の現像液などを完全に除去するまで行うことが望ましい。
これにより、前記塗膜上に所望のパターンを形成することができ、さらには従来のポジ型レジストをパターニングしてエッチングし、ポジ型レジストを剥離する操作を行わなくとも、溝(凹部)を塗膜上に築くことができる。
本発明塗布液を用いてパターニングされたシリカ系塗膜を形成する方法は、上記の通りであるが、さらに以下の工程に処することが望ましい。
浸漬工程
上記したように、前記工程(2)で乾燥された塗膜上にパターニング用マスクを載置して紫外線を照射すると、前記酸発生剤が分解して酸を発生するため、この塗膜をそれ以降の工程(5)〜(7)で処理すれば、所望のパターニングを施したシリカ系塗膜を得ることができる。しかし、前記工程(2)における塗膜の乾燥度合いが高すぎたりすると、所望のパターンを塗膜上に形成できないことがあった。
そこで、本発明者らは鋭意検討を繰り返したところ、前記工程(2)で乾燥された塗膜を純水や超純水などに浸漬してからこれをそれ以降の工程(3)〜(7)で処理すれば、このような問題が生じないことが分かった。その理由は必ずしも明らかではないが、前記乾燥塗膜に紫外線を照射したときに起こる前記酸発生剤の分解や酸の生成などに水分が関与していることが考えられる。
よって、上記のシリカ系塗膜の形成方法では、さらに前記工程(2)で乾燥された塗膜を純水や超純水などに浸漬して該塗膜を湿らせておくことが好ましい。ただし、前記乾燥塗膜中に或る程度の水分を含む場合には、必ずしもこの浸漬処理を行う必要はない。ここで、純水とはイオン交換水をいい、また超純水とは純水中に含まれる不純物をさらに取り除いたもので、不純物の含有量が0.01μg/L以下のものいう。
なお、前記乾燥塗膜の浸漬時間は、前記工程(2)における塗膜の乾燥度合いなどによっても異なるが、5〜30分であることが好ましい。ここで、前記浸漬時間が5分未満であると、該乾燥塗膜を充分に湿らすことができず、また前記浸漬時間が30分を超えると、後述する焼成工程のような方法で焼成処理を施した塗膜の比誘電率を高くさせる可能性があるため、好ましくない。
焼成工程
前記工程(1)〜(6)の各工程(さらに、必要に応じ前記浸漬工程)に処すれば、その表面に所望のパターニングを施したシリカ系塗膜を得ることができる。
しかし、このシリカ系塗膜(前記紫外線の非照射領域の塗膜)は、前記工程(4)のところで説明したように、前記珪素化合物の架橋が或る程度進んだものとして得られるが、この工程(4)では、100〜200℃の温度でしか加熱していないため、十分に架橋が進んだシリカ系塗膜を得ることはできない。よって、このシリカ系塗膜を、比較的高い塗膜強度や比較的低い比誘電率、さらには比較的高い耐吸湿性(疎水性)などが要求される用途にそのまま使用することはできない。
そこで、このような用途(例えば、半導体層間絶縁膜など)に使用する場合には、前記工程(6)で得られたシリカ系塗膜を、さらに乾燥したのち300〜450℃、好ましくは350〜400℃の温度で焼成処理することが望ましい。ここで、この操作を300℃未満の温度で行うと、前記珪素化合物の架橋がよく進まないため充分な塗膜強度を有する塗膜が得られず、また450℃を超えた温度で行うと、たとえば、半導体基板を構成するアルミニウム配線や銅配線などが酸化されたり、あるいは溶融されたりして、当該配線層に致命的な損傷を与えることがあるので、好ましくない。
また、この焼成処理は、前記珪素化合物の種類や塗膜の膜厚などによっても異なるが、 5〜90分、好ましくは10〜60分をかけて行うことが望ましい。ここで、この操作を 5分未満で行うと、前記珪素化合物の架橋がよく進まないため充分な塗膜強度を有する塗膜が得られず、また90分以上かけて行うと、たとえば、半導体基板などを構成するアルミニウム配線や銅配線などが酸化されたり、あるいは溶融されたりして、当該配線層に致命的な損傷を与えることがあるので、好ましくない。
さらに、この焼成処理は、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。ただし、これに酸素ガスまたは空気を加えて、少量の酸素(たとえば、500〜10000容量ppm程度の酸素)を含む不活性ガス(国際出願W0 01/48806 A1に記載)を使用することもできる。これは、この焼成処理を、比較的高い温度(たとえば、400℃以上)の空気雰囲気下で行うと、半導体基板上に配設された金属配線などに対し金属酸化などによるダメージを与えてしまうからである。
なお、この加熱処理は、前記の塗布工程で得られた基板を枚葉式のホットプレート上に載置して行うことが好ましい。
[パターニングされたシリカ系塗膜]
次に、上記の方法から得られたシリカ系塗膜について説明する。
先にも述べたように、本発明に係るシリカ系塗膜形成用塗布液を用いれば、フォトレジストを用いたパターニング法を採用しなくても、それ自体がパターニング特性を備えたシリカ系塗膜を形成することができ、しかも比較的高い塗膜強度と比較的低い比誘電率を有し、さらには表面平坦性、耐クラック性、耐熱性などに優れたシリカ系塗膜を形成することができる。
すなわち、前記シリカ系塗膜形成用塗布液を使用すれば、従来より採用されてきた煩雑なフォトレジストの形成操作や除去・洗浄操作、さらには塗膜のエッチング操作などを行わなくとも、所望のパターニングを施したシリカ系塗膜を容易に得ることができる。
また、前記焼成工程から得られるシリカ系塗膜(特に、紫外線非照射領域の塗膜)は、ヤング弾性率が3.0 GPa以上、好ましくは5.0 GPa以上の比較的高い塗膜強度と、4.0以下、好ましくは3.5以下の比較的低い比誘電率を有しており、さらには該塗膜の表面に研磨処理などを施さなくとも、その表面粗さ(Rms)が5.0nm以下である平滑な表面を備えている。
さらに、前記シリカ系塗膜(特に、紫外線非照射領域の塗膜)は、たとえ比較的厚い膜(ただし、5μm以下)になっても、その塗膜表面にクラックやピンホールなどの発生が認められず、またたとえ比較的高い温度(ただし、400℃以下)の雰囲気下に晒しても、その塗膜に劣化が認められないという特性を有している。
また、前記シリカ系塗膜(特に、紫外線非照射領域の塗膜)は、上記の性状のほかに、半導体基板などの塗膜形成面との密着性や耐アルカリ性などの耐薬品性に優れ、さらには耐酸素プラズマ性やエッチング加工性などのプロセス適合性においても優れた特性を備えている。
このような特性を備えたシリカ系塗膜を形成できる本発明塗布液は、半導体基板上、多層配線構造の配線層間、素子表面および/またはPN接合部を設けてなる基板上、あるいは当該基板上に設けられた多層の配線層間などにシリカ系塗膜、特にシリカ系絶縁膜を形成するために使用される。この中でも、半導体用層間絶縁膜、液晶TFT素子用絶縁膜、センサー装置用絶縁膜、表示装置用絶縁膜などを形成する用途に用いることが好適である。
〔測定方法〕
次に、本発明の実施例その他で採用された測定方法を具体的に述べれば、以下の通りである。
(1)シリカ系微粒子の平均粒子径
水―アルコール分散液(試料)中に含まれるシリカ系微粒子の10万倍拡大画像を透過型電子顕微鏡(TEM)(日立ハイテック社製H−800)にて撮影したTEM写真をルーゼックス自動画像処理解析装置(ニコレ社製LUZEX−AP)で解折し、さらに付属の解析ソフトを使用して前記シリカ微粒子の平均粒子径を算出する。
(2)シリカ系微粒子中に含まれる塩基性触媒成分の含有量
(a)塩基性触媒成分を含むシリカ系微粒子が分散された水―アルコール分散液(試料)中に含まれる塩基性触媒成分の全量(例えば、アンモニア量)を測定するため、水酸化ナトリウム水溶液を添加して前記シリカ系微粒子を溶解した後、加熱して発生した塩基性ガスを希硫酸(H2SO4:0.05mol/L)を含む水溶液に吸収させる。次いで、これにメチルレッド溶液を2〜3滴たらして、水酸化ナトリウム水溶液(NaOH:0.1mol/L)で滴定し、該分散液中に含まれる塩基性触媒成分の全量(Q1)を測定する。
(b)次に、前記水―アルコール分散液(試料)を3000rpmの回転速度で遠心分離(遠心濃縮器:アズワン社製VS2001、遠心分離機:KUBOTA社製 KUBOTA6930)して、該分散液中に含まれるシリカ系微粒子を分離する。次いで、得られた分散媒中に含まれる塩基性触媒成分の量(例えば、アンモニア量)を、前記(a)と同様な方法で、該分散媒中に含まれる塩基性触媒成分の全量(Q2)を測定する。
(c)前記(a)で測定された塩基性触媒成分量(Q1)から前記(b)で測定された塩基性触媒成分量(Q2)を差し引き、前記シリカ系微粒子中に含まれる塩基性触媒成分の量(Q)を算出する。
(3)液状組成物のpH測定
pHメーター(HORIBA社製:D−54)を用いて測定する。水素イオン濃度が既知である水溶液を電極ガラス管の中に充填しておき、測定試料である液状組成物中にその電極を接触させて、該液状組成物と電極ガラス管内に充填された前記水溶液との電位差を測定する。次いで、測定した電位差から前記液状組成物中の水素イオン濃度を算出して、pHを求める。
(4)珪素化合物の数平均分子量
分子量測定装置(東ソー社製:GPC8020)を用いて、GPC(Gel Phase Chromatography)法により測定する。すなわち、試料としての液状組成物1mLを溶離液に乗せて、ゲルカラム(東ソー社製:TSKgel、東ソー社製:G5000Hxl、TSKgel G3000Hxlを連結)に通すことで、該試料中の分子成分を流体力学的体積の大きさに従って分離し、時間毎のリファレンスとの屈折率差により分子量分布を測定する。次いで、測定した分子量分布を予め測定した既知の分子量を持つポリスチレンの分布と比較して換算することにより、ポリスチレン換算の数平均分子量を算出する。
(5)液状組成物のイオン濃度測定
試料としての液状組成物10mLを精製純水90mLと混合して、室温で1時間攪拌した後、この混合液を濾過し、さらに濾過後の濾材に100mLの精製純水を通して濾液を回収する。次いで、この回収濾液に含まれている金属イオンなどの陽イオン濃度を原子吸光法で測定し、塩基性触媒成分などの陰イオン濃度をイオンクロマトグラフィー法で測定する。
(6)シリカ系塗膜の比誘電率
試料としての液状組成物をシリコンウェハ上にスピンコート法にて4000rpmの回転速度で塗布し、120℃の温度で5分間乾燥させた後、窒素雰囲気下にて350℃の温度で30分間焼成して塗布膜(シリカ系塗膜)を形成する。次いで、水銀プローブ法(Solid State Measurements 製SSM495、周波数1MHz)により測定する。すなわち、前記塗布膜に水銀電極を接触させて、電圧を変えて該塗布膜の電気容量を測定して、得られた電気容量と膜厚から塗布膜の比誘電率を算出する。
(7)シリカ系塗膜の塗膜強度
試料としての液状組成物をシリコンウェハ上にスピンコート法にて4000rpmの回転速度で塗布し、120℃の温度で5分間乾燥させた後、窒素雰囲気下にて350℃の温度で30分間焼成して塗布膜(シリカ系塗膜)を形成する。次いで、ナノインデンテーション法(MTS Systems Corp製ナノインデンターXP)によりヤング弾性率(Young’s Modulus)を測定する。すなわち、ダイヤモンド製の圧子を前記塗布膜に押し込み、該圧子と塗布膜の接触面積および押し込み強度を測定して、ヤング弾性率を算出する。
(8)シリカ系塗膜のクラック耐性限界膜厚
試料としての液状組成物をシリコンウェハ上にスピンコート法にて300〜700rpmの回転速度で塗布し、120℃の温度で5分間乾燥させた後、窒素雰囲気下にて350℃の温度で30分間焼成して塗布膜(シリカ系塗膜)を形成する。次いで、得られた塗布膜を顕微鏡(倍率:50倍)で観察し、クラックの有無を確認する。さらに、接触式段差膜厚測定法(ACCRETECH社製 SURFCOM1400D)により、クラックが発生しない限界膜厚を測定する。
(9)シリカ系塗膜の表面粗さ
試料としての液状組成物をシリコンウェハ上にスピンコート法にて4000rpmの回転速度で塗布し、120℃の温度で5分間乾燥させた後、窒素雰囲気下にて350℃の温度で30分間焼成して塗布膜(シリカ系塗膜)を形成する。次いで、前記塗布膜に導電性が付与された探針付きカンチレバー(日本ビーコ(株)製 NCH-10V)を走査させ、探針と塗布膜の分子間力から表面形状を観測して、表面粗さ(Rms)を算出する。
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[調製例1]
99.9重量%濃度のメタノール(関東化学(株)製)508gと純水760gからなる敷き水1268gを調製した。99.9重量%濃度のメタノール16048gとエチルシリケート(多摩化学工業(株)製)を8452g加えて撹拌したエチルシリケート溶液24500gを調製した。
次に、前記敷き水1268gを65℃の温度に加熱して保持し、これに前記エチルシリケート溶液24500gおよび1.9重量%濃度のアンモニア水9490gを同時に5時間かけて撹拌下で添加した。添加終了後、さらに前記温度に保って3時間、熟成操作を行い、7.4重量%のシリカ微粒子を含む水−メタノール分散液(以下、「水−メタノール分散液」という。)35258gを得た。
次いで、得られた水−メタノール分散液を室温まで冷却し、該水−メタノール分散液のうち31860gに、純水20340gを加えて撹拌した後、25℃の温度条件下で限外濾過フィルタ(旭化成(株)製、ACP−2013)を用いて、その重量が18711gになるまで濃縮した。これにより、該水−メタノール分散液中に含まれる前記エチルシリケートの未反応物や中間反応物などを除去した水−メタノール分散液(以下、「水−メタノール精製液」という。)18711gを得た。
次いで、上記で得られた水−メタノール精製液のうち10395gに、99.5重量%濃度のエタノール(和光純薬工業(株)製)13860gを加えて撹拌した後、25℃の温度条件下で前記限外濾過フィルタを用いて、その重量が10395gになるまで濃縮した。さらに、得られた分散液にエタノール13860gを加えて撹拌した後、再度、前記限外濾過フィルタを用いて、その重量が10395gになるまで濃縮した。これにより、前記水−メタノール精製液中に含まれる水とメタノールを溶媒置換させた、シリカ微粒子を含む水―エタノール分散液(以下、「水−エタノール分散液」という。)10395gを得た。
この水―エタノール分散液にエタノール2703gを加えて該分散液中に含まれるシリカ系微粒子の濃度を10重量%に調整し、さらにロータリーエバポレーター(柴田科学(株)製 RE20EU)を用いて濃縮して、シリカ微粒子を19.4重量%含む水−エタノール分散液の試料1A6752gを得た。
このようにして得られた試料1A中に含まれるシリカ系微粒子の平均粒子径を測定したところ、概ね20nmであった。
さらに、前記試料1A中に含まれるアンモニアの全含有量および前記シリカ系微粒子中に含まれるアンモニアの含有量を測定したところ、表1に示す通りであった。
[調製例2]
調製例1と同様な方法で、水―メタノール精製液18711gを調製した。
次に、調製した前記水―メタノール精製液を10150g取り出し、29重量%濃度のアンモニア水47gを加えて撹拌した後、オートクレーブ(耐圧ガラス工業(株)製、TAS−13型)に入れて、150℃の温度で15時間、処理して、該水―メタノール精製液中に含まれるシリカ微粒子の熟成を行った。
次に、これを室温まで冷却して得られた水―メタノール精製液(熟成液)を10045g取り出し、純水13020gを加えて撹拌した後、25℃の温度条件下で限外濾過フィルタを用いて、その重量が9998gになるまで濃縮した。更に純水13020gを加えて攪拌した後、再度、前記限外濾過フィルタを用いて、その重量が9998gになるまで濃縮する作業を2回繰り返した。これにより、前記シリカ系微粒子中に含まれるアンモニアを一部除去した水―メタノール精製液9998gを得た。
次いで、上記で得られた水―メタノール精製液9998gに、エタノール(和光純薬工業(株)製)13331gを加えて撹拌した後、25℃の温度条件下で限外濾過フィルタを用いて濾過し、その重量が9998gになるまで濃縮した。さらに、エタノール13331gを加えて撹拌した後、再度、前記限外濾過フィルタを用いて、その重量が9998gになるまで濃縮した。これにより、前記水―メタノール分散液中に含まれる水とメタノールを溶媒置換させた水―エタノール分散液9998gを得た。
この水―エタノール分散液にエタノール2600gを加えて該分散液中に含まれるシリカ系微粒子の濃度を10重量%に調整し、さらにロータリーエバポレーター(柴田科学(株)製 RE20EU)を用いて濃縮して、シリカ微粒子を19.4重量%含む水−エタノール分散液の試料2A6494gを得た。
このようにして得られた前記試料2A中に含まれるシリカ系微粒子の平均粒子径を測定したところ、概ね25nmであった。
さらに、調製例1の場合と同様に、前記試料2A中に含まれるアンモニアの全含有量および前記シリカ系微粒子中に含まれるアンモニアの含有量を測定したところ、表1に示す通りであった。
[調製例3]
水−メタノール精製液を得るまでは、調製例1と同様な方法で、水−メタノール精製液18711gを得た。
次いで、得られた水−メタノール精製液9998gを取り出し、アンモニア濃度を減らすために、再度、純水13331gを加えて撹拌した後、25℃の温度条件下で限外濾過フィルタを用いて、その重量が9998gになるまで濃縮した。次いで、エタノール(和光純薬工業(株)製)13331gを加えて撹拌した後、25℃の温度条件下で限外濾過フィルタを用いて、その重量が9998gになるまで濃縮した。さらに、エタノールを13331g加えて撹拌した後、再度、前記限外濾過フィルタを用いて、その重量が9998gになるまで濃縮した。これにより、前記水−メタノール精製液中に含まれる水とメタノールを溶媒置換させた水―エタノール分散液9998gを得た。
この水―エタノール分散液にエタノール2600gを加えて、該分散液中に含まれるシリカ系微粒子の濃度を10重量%に調製し、さらにロータリーエバポレーター(柴田科学(株)製 RE20EU)を用いて濃縮して、シリカ微粒子を19.4重量%含む水−エタノール分散液の試料3A6494gを得た。
このようにして得られた試料3A中に含まれるシリカ系微粒子の平均粒子径を測定したところ、概ね25nmであった。
さらに、調製例1の場合と同様に、前記試料3A中に含まれるアンモニアの全含有量および前記シリカ系微粒子中に含まれるアンモニアの含有量を測定したところ、表1に示す通りであった。
[調製例4]
水−メタノール精製液を得るまでは、調製例1と同様な方法で、水―メタノール精製液の試料18711gを調製した。
次に、前記水−メタノール精製液のうち10150gを取り、該試料中のアンモニア濃度を増やすために、前記水―メタノール精製液に29重量%濃度のアンモニア水190gを加えて撹拌した後、オートクレーブ(耐圧ガラス工業(株)製、TAS−13型)に入れて、150℃の温度で15時間、処理して、該水―メタノール精製液中に含まれるシリカ微粒子の熟成を行った。
次に、これを室温まで冷却して得られた水―メタノール精製液(熟成液)10340gのうち、10045gを取り出し、純水13020gを加えて撹拌した後、25℃の温度条件下で限外濾過フィルタを用いて、その重量が9861gになるまで濃縮した。更に純水13020gを加えて攪拌した後、再度、前記限外濾過フィルタを用いて、その重量が9861gになるまで濃縮する作業を2回繰り返した。これにより、前記シリカ系微粒子中に含まれるアンモニアを一部除去した水―メタノール精製液9861gを得た。
次いで、上記で得られた水―メタノール精製液9861gに、エタノール(和光純薬工業(株)製)13147gを加えて撹拌した後、25℃の温度条件下で限外濾過フィルタを用いて、その重量が9861gになるまで濃縮した。さらに、エタノールを13147g加えて撹拌した後、再度、前記限外濾過フィルタを用いて、その重量が9861gになるまで濃縮した。これにより、前記水―メタノール精製液中に含まれる水とメタノールを溶媒置換させた水―エタノール分散液をそれぞれ9861gを得た。
この水―エタノール分散液にエタノール2564gを加えて、該分散液中に含まれるシリカ系微粒子の濃度を10重量%に調製し、さらにロータリーエバポレーター(柴田科学(株)製 RE20EU)を用いて濃縮して、シリカ微粒子を19.4重量%含む水−エタノール分散液の試料4A6404gを得た。
このようにして得られた試料4A中に含まれるシリカ系微粒子の平均粒子径を測定したところ、概ね25nmであった。
さらに、調製例1の場合と同様に、前記試料4A中に含まれるアンモニアの全含有量および前記シリカ系微粒子中に含まれるアンモニアの含有量を測定したところ、表1に示す通りであった。
[実施例1]
調製例1で調製された前記試料1Aおよび調製例2で調製された前記試料2A(共に、シリカ微粒子を19.4重量%含む水−エタノール分散液)をそれぞれ6050gずつ取り出し、これらにメチルトリメトキシシラン(MTMS、信越化学工業(株)製)1778gと0.44重量%濃度の硝酸(関東化学(株)製)の水溶液1409gとを混合して、室温から徐々に50℃の温度まで加熱した。さらに、この温度(50℃)に保って200rpmの速度で15時間、攪拌しながら、前記メチルトリメトキシシランの部分加水分解および/または加水分解を行った。
この時の混合液のpHを測定したところ、前記試料1Aを使用したものは、当初(加熱前)、酸性触媒成分として加えた硝酸の影響でpH2.1であったが、温度の上昇とともにpH7.8となり、その状態で安定化した。また、前記試料2Aを使用したものは、当初(加熱前)、酸性触媒成分として加えた硝酸の影響でpH2.4であったが、温度の上昇とともにpH8.0となり、その状態で安定化した。すなわち、前記試料中に含まれるシリカ系微粒子から塩基性触媒成分としてのアンモニアが放出され、前記メチルトリメトキシシランの部分加水分解反応および/または加水分解反応に寄与していることが分かった。
次いで、得られた水−エタノール分散液をロータリーエバポレーター(柴田科学(株)製 RE20EU)に供して、該分散液中に含まれる水やエタノールなどをプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM、ダイセル化学工業(株)製)と溶媒置換した。さらに、この溶媒置換されたPGM溶液中に含まれる珪素化合物の含有量を、SiO2基準で25重量%に調整して、有機溶媒系混合液1B(前記試料1Aを使用して調製されたもの)および有機溶媒系混合液2B(前記試料2Aを使用して調製されたもの)を得た。
次に、これらの有機溶媒系混合液1Bおよび2Bから200gを採取し、これらにトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート(和光純薬工業(株)製)0.05gをプロピレングリコールモノメチルエーテル0.45gに分散させた酸発生剤溶液0.5gを撹拌下で添加した。次いで、十分に撹拌して混合して、液状組成物1Cおよび2Cを得た。
このようにして得られた液状組成物中に含まれる珪素化合物(加水分解物)の数平均分子量(ポリスチレン換算基準)、シリカ系微粒子中の塩基性触媒成分(アンモニア)の含有量および酸発生剤(X)/塩基性触媒成分(Y)のモル比を測定・算出したところ、表2に示す通りであった。
[実施例2]
調製例2で調製された前記試料2Aと、メチルトリメトキシシランの代わりにフェニルトリメトキシシラン(PhTMS、信越化学工業(株)製)とフェニルトリクロロシラン(PhTCS、信越化学工業(株)製)とをそれぞれ使用した以外は、実施例1の場合と同様な方法で、反応物である珪素化合物をSiO2基準で25重量%含む有機溶媒系混合液3B(前記試料2Aとフェニルトリメトキシシランを使用して調製されたもの)および有機溶媒系混合液4B(前記試料2Aとフェニルトリクロロシランを使用して調製されたもの)を得た。
次に、これらの有機溶媒系混合液3Bおよび4Bから200gを採取し、これらにトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート0.05gをプロピレングリコールモノメチルエーテル0.45gに分散させた酸発生剤溶液0.5gを撹拌下で添加した。次いで、十分に撹拌して混合して、液状組成物3Cおよび4Cを得た。
このようにして得られた液状組成物中に含まれる珪素化合物(加水分解物)の数平均分子量(ポリスチレン換算基準)、シリカ系微粒子中の塩基性触媒成分(アンモニア)の含有量および酸発生剤(X)/塩基性触媒成分(Y)のモル比を測定・算出したところ、表2に示す通りであった。
[実施例3]
実施例1の場合と同様な方法で、有機溶媒系混合液5B(前記試料1Aを使用して調製されたもの)および有機溶媒系混合液6B(前記試料2Aを使用して調製されたもの)を得た。
次に、これらの有機溶媒系混合液5Bおよび6Bから200gを採取し、これらに2,4,6−トリメチルフェニルジフェニルスルホニウムp−トルエンスルホネート0.05gをプロピレングリコールモノメチルエーテル0.45gに分散させた酸発生剤溶液0.5gを撹拌下で添加した。次いで、十分に撹拌して混合して、液状組成物5Cおよび6Cを得た。
このようにして得られた液状組成物中に含まれる珪素化合物(加水分解物)の数平均分子量(ポリスチレン換算基準)、シリカ系微粒子中の塩基性触媒成分(アンモニア)の含有量および酸発生剤(X)/塩基性触媒成分(Y)のモル比を測定・算出したところ、表2に示す通りであった。
[実施例4]
実施例1の場合と同様な方法で、有機溶媒系混合液7B(前記試料1Aを使用して調製されたもの)および有機溶媒系混合液8B(前記試料2Aを使用して調製されたもの)を得た。
次に、これらの有機溶媒系混合液7Bおよび8Bから200gを採取し、これらにビス(4−t−ブチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン0.05gをプロピレングリコールモノメチルエーテル0.45gに分散させた酸発生剤溶液0.5gを撹拌下で添加した。次いで、十分に撹拌して混合して、液状組成物7Cおよび8Cを得た。
このようにして得られた液状組成物中に含まれる珪素化合物(加水分解物)の数平均分子量(ポリスチレン換算基準)、シリカ系微粒子中の塩基性触媒成分(アンモニア)の含有量および酸発生剤(X)/塩基性触媒成分(Y)のモル比を測定・算出したところ、表2に示す通りであった。
[比較例1]
調製例3で調製された試料3Aを使用した以外は、実施例1の場合と同様な方法で、前記メチルトリメトキシシランの部分加水分解および/または加水分解を行った。
前記試料3Aを用いた場合の混合液のpHを測定したところ、当初(加熱前)は、酸性触媒成分として加えた硝酸の影響でpH2.2であったが、温度の上昇とともに徐々に増加してpH4.1となった。すなわち、シリカ系微粒子から塩基性触媒成分として放出されるアンモニアの量が不充分であり、前記メチルトリメトキシシランの部分加水分解反応および/または加水分解反応に寄与する塩基性触媒が少ないことが分かった。
次いで、得られた水−エタノール分散液をロータリーエバポレーター(柴田科学(株)製 RE20EU)に供して、該分散液中に含まれる水やエタノールなどをプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM、日本乳化剤(株)製)と溶媒置換した。さらに、この溶媒置換されたPGM溶液中に含まれる珪素化合物の含有量を、SiO2基準で25重量%に調整して、有機溶媒系混合液9B(前記試料3Aを使用して調製されたもの)を得た。
次に、これらの有機溶媒系混合液9Bから200gを採取し、これにトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート0.05gをプロピレングリコールモノメチルエーテル0.45gに分散させた酸発生剤溶液0.5gを撹拌下で添加した。次いで、十分に撹拌して混合して、液状組成物9Cを得た。
このようにして得られた液状組成物中に含まれる珪素化合物(加水分解物)の数平均分子量(ポリスチレン換算基準)、シリカ系微粒子中の塩基性触媒成分(アンモニア)の含有量および酸発生剤(X)/塩基性触媒成分(Y)のモル比を測定・算出したところ、表2に示す通りであった。
[比較例2]
調製例4で調製された前記試料4Aを使用した以外は、実施例1の場合と同様な方法で、前記メチルトリメトキシシランの部分加水分解および/または加水分解を行った。
前記試料4Aを用いた場合の混合液のpHを測定したところ、当初(加熱前)は、pH8.3であり、温度の上昇とともに少し増加してpH8.5になった。このように、酸性触媒としての硝酸を同量、混合したにもかかわらず、当初からpH値が高く、しかもその値が殆ど変化しなかった理由は、前記試料4Aの水−エタノール分散液中に含まれるアンモニア量が多いばかりでなく、シリカ系微粒子中にも塩基性触媒成分としてのアンモニアが多量に存在しているためである。これにより、前記メチルトリメトキシシランの加水分解反応が、過剰のアンモニア(塩基性触媒成分)によって進みすぎていることが予想される。
次いで、得られた水−エタノール分散液をロータリーエバポレーター(柴田科学(株)製 RE20EU)に供して、該分散液中に含まれる水やエタノールなどをプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM、日本乳化剤(株)製)に溶媒置換した。さらに、この溶媒置換されたPGM溶液中に含まれる珪素化合物の含有量を、SiO2基準で25重量%に調整して、有機溶媒系混合液10B(前記試料4Aを使用して調製されたもの)を得た。
次に、これらの有機溶媒系混合液10Bから200gを採取し、これにトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート0.05gをプロピレングリコールモノメチルエーテル0.45gに分散させた酸発生剤溶液0.5gを撹拌下で添加した。次いで、十分に撹拌して混合して、液状組成物10Cを得た。
このようにして得られた液状組成物中に含まれる珪素化合物(加水分解物)の数平均分子量(ポリスチレン換算基準)、シリカ系微粒子中の塩基性触媒成分(アンモニア)の含有量および酸発生剤(X)/塩基性触媒成分(Y)のモル比を測定・算出したところ、表2に示す通りであった。また、この液状組成物は、長期保存するとゲル化して安定性に欠けることが分かった。
[実施例5および比較例3]
実施例1の場合と同様な方法で、有機溶媒系混合液11B、12B、13Bおよび14B(共に、前記試料2Aを使用して調製されたもの)を得た。
次いで、これらの有機溶媒系混合液11B、12B、13Bおよび14Bから200gづつを採取し、これらに前記酸発生剤溶液(トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート5gをプロピレングリコールモノメチルエーテル45gに分散させたもの)をそれぞれ0.03g、0.38g、1.26gおよび9.47gづつ添加した以外は、実施例1の場合と同様な方法で、液状組成物11C、12C、13Cおよび14Cを得た。
このようにして得られた液状組成物中に含まれる珪素化合物(加水分解物)の数平均分子量(ポリスチレン換算基準)、シリカ系微粒子中の塩基性触媒成分(アンモニア)の含有量および酸発生剤(X)/塩基性触媒成分(Y)のモル比を測定・算出したところ、表3に示す通りであった。
[実施例6]
実施例1の場合と同様な方法で、有機溶媒系混合液15B(前記試料1Aを使用して調製されたもの)および有機溶媒系混合液16B(前記試料2Aを使用して調製されたもの)を得た。
次に、これらの有機溶媒系混合液15Bおよび16Bから200gを採取し、これらにトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート0.05gをプロピレングリコールモノメチルエーテル0.45gに分散させた酸発生剤溶液0.5gを撹拌下で添加した。次いで、十分に撹拌して混合して、液状組成物15Cおよび16Cを得た。
次いで、これらの液状組成物15Cおよび16Cに、トリエタノールアミン0.5gをプロピレングリコールモノメチルエーテル49.5gに分散させたアミン化合物溶液のうち0.5gを撹拌下で添加した。次いで、十分に撹拌して混合して、液状組成物15Dおよび16Dを得た。
このようにして得られた液状組成物中に含まれるシリカ系微粒子中の塩基性触媒成分(アンモニア)の含有量、酸発生剤(X)/塩基性触媒成分(Y)のモル比およびアミン化合物(Z)/酸発生剤(X)のモル比を測定・算出したところ、表4に示す通りであった。
[実施例7および比較例4]
実施例1の場合と同様な方法で、有機溶媒系混合液17B、18B、19Bおよび20B(共に、前記試料2Aを使用して調製されたもの)を得た。
次に、これらの有機溶媒系混合液17B、18B、19Bおよび20Bから200gづつを採取し、これらに前記酸発生剤溶液(トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート0.5gをプロピレングリコールモノメチルエーテル4.5gに分散させたもの)を0.5gづつ添加した。次いで、十分に撹拌して混合して、液状組成物17C、18C、19Cおよび20Cを得た。
次いで、これらの液状組成物液状組成物17C、18C、19Cおよび20Cに、前記アミン化合物溶液(トリエタノールアミン0.5gをプロピレングリコールモノメチルエーテル49.5gに分散させたもの)をそれぞれ0.01g、0.11g、0.37gおよび2.76gづつ添加した以外は、実施例6の場合と同様な方法で、液状組成物17D、18D、19Dおよび20Dを得た。
このようにして得られた液状組成物中に含まれるシリカ系微粒子中の塩基性触媒成分(アンモニア)の含有量、酸発生剤(X)/塩基性触媒成分(Y)のモル比およびアミン化合物(Z)/酸発生剤(X)のモル比を測定・算出したところ、表4に示す通りであった。
[実施例8および比較例5]
実施例1の場合と同様な方法で、有機溶媒系混合液21B、22B、23B、24Bおよび25B(共に、前記試料2Aを使用して調製されたもの)を得た。
次に、これらの有機溶媒系混合液21B、22B、23B、24Bおよび25Bから200gづつを採取し、これらに前記酸発生剤溶液(トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート0.5gをプロピレングリコールモノメチルエーテル4.5gに分散させたもの)を0.5gづつ添加した。次いで、十分に撹拌し混合して、液状組成物21C、22C、23C、24Cおよび25Cを得た。
次に、前記アミン化合物溶液(トリエタノールアミン0.5gをプロピレングリコールモノメチルエーテル49.5gに分散させたもの)を0.5gづつ添加した。次いで、十分に撹拌し混合して、液状組成物21D、22D、23D、24Dおよび25Dを得た。
次に、これらの液状組成物21D、22D、23D、24Dおよび25Dに、増感剤として9,10−ジプロポキシアントラセン0.3gをプロピレングリコールモノメチルエーテル9.7gに分散させた増感剤溶液をそれぞれ0.02g、0.15g、0.24g、0.5gおよび1.07gづつ添加した。次いで、十分に撹拌し混合して、液状組成物21E、22E、23E、24Eおよび25Eを得た。
このようにして得られた液状組成物中に含まれるシリカ系微粒子中の塩基性触媒成分(アンモニア)の含有量、酸発生剤(X)/塩基性触媒成分(Y)のモル比、アミン化合物(Z)/酸発生剤(X)のモル比、増感剤(W)/酸発生剤(X)のモル比を測定・算出したところ、表5に示す通りであった。
[実施例9]
実施例1の場合と同様な方法で、有機溶媒系混合液26B(前記試料2Aを使用して調製されたもの)を得た。
次いで、実施例8と同様な方法で、前記酸発生剤溶液(トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート0.5gをプロピレングリコールモノメチルエーテル4.5gに分散させたもの)0.5gおよび前記アミン化合物溶液(トリエタノールアミン0.5gをプロピレングリコールモノメチルエーテル49.5gに分散させたもの)0.5gを含む液状組成物26Dを得た。
次に、この液状組成物26Dに、増感剤としての9,10−ジブトキシアントラセン 0.3gをプロピレングリコールモノメチルエーテル9.7gに分散させた増感剤溶液を0.26g添加した。次いで、十分に撹拌し混合して、液状組成物26Eを得た。
このようにして得られた液状組成物中に含まれるシリカ系微粒子中の塩基性触媒成分(アンモニア)の含有量、酸発生剤(X)/塩基性触媒成分(Y)のモル比、アミン化合物(Z)/酸発生剤(X)のモル比、増感剤(W)/酸発生剤(X)のモル比を測定・算出したところ、表5に示す通りであった。
[実施例10および比較例6]
実施例1〜6で調製された前記液状組成物1C〜8C、12C、13C、15D、16D、18Dおよび19D、さらには比較例1〜4で調製された前記液状組成物9C、10C、11C、14C、17Dおよび20Dをそれぞれ5mlずつ従来公知のスピンコート法(MIKASA社製:1H−360S)を用いて6インチサイズのシリコンウェハー基板上に滴下して、500rpmの速度で15秒間、塗布処理を行った。このような操作を繰り返し行い、塗布処理を施した基板1C〜8C、12C、13C、15D、16D、18Dおよび19D、さらには基板9C、10C、11C、14C、17Dおよび20Dを得た。
次いで、これらの基板をホットプレート(IUCHI社製:EC−1200)上に載置して大気雰囲気下で100℃にて1分間、乾燥処理を施した。この乾燥処理工程では、塗膜中に含まれる有機溶媒(PGM)などが蒸発してくるので、これらを系外に排出した。
次に、得られた乾燥塗膜付き基板を超純水に20分間、浸漬して、シリカ系塗膜(膜厚:約1.5μm)を得た。
次いで、このシリカ系塗膜上に、50μm幅のラインアンドスペース1:1のパターンを形成するためのパターニング用マスク(大日本印刷(株)製)を載置して、G線(波長435nm)、H線(波長405nm)、I線(波長365nm)および殺菌線(波長254nm)の波長域を有する紫外線ランプ((株)オーク製作所製、AHD200)を用いて、該塗膜上に紫外線を20秒間かけて照射した。この時、前記紫外線ランプに取り付けられた2基のセンサー、すなわち波長405nm付近の紫外線量を測定するためのセンサー(岩崎電気(株)製、UVPF−A1 PD−405)および波長254nm付近の紫外線量を測定するためのセンサー(岩崎電気(株)製、UVPF−A1 PD−254)を用いて塗膜表面における紫外線の照度と積算照射量を測定したところ、前者のセンサーでは、照度が7.6mW/cm2、積算照射量(照度x照射時間)が152mJ/cm2であり、また後者のセンサーでは、照度が1.0mW/cm2、積算照射量(照度x照射時間)が20mJ/cm2であった。これにより、前記シリカ系塗膜(乾燥塗膜)中に含まれる酸発生剤が分解して酸を発生させることになる。
次に、得られたシリカ系塗膜付き基板を大気雰囲気下で180℃の温度にて1分間、加熱処理した。これにより、前記シリカ系塗膜中に含まれるシリカ系微粒子中の塩基性触媒成分(アンモニア)が粒子外に放出されて、前記紫外線の照射領域においては前記酸との反応(中和反応)が進み、また前記紫外線の非照射領域においては前記シリカ系塗膜中に含まれる珪素化合物の架橋が進むことになる。さらに、前記基板15D〜20D上に形成されたシリカ系塗膜においては、該塗膜中に含まれるアミン化合物が前記の中和反応と架橋をさらに推し進めると共に、前記酸が紫外線の非照射領域に滲み出すのを抑制することになる。
次いで、得られたシリカ系塗膜付き基板を、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH(25%)、多摩化学工業(株)製)11.9gと超純水488.1gを混合して調製した2.38重量%TMAH水溶液(現像液)500g中に5分間、浸漬して、前記シリカ系塗膜の現像を行った。これにより、少なくとも実施例に基づく基板上に形成されたシリカ系塗膜においては、紫外線の照射領域に存在する珪素化合物や中和反応物などが前記現像液によって溶解されて洗い流されることになる。
次に、前記シリカ系塗膜付き基板を超純水を用いて1分間洗浄して、パターニングを施したシリカ系塗膜を有する実施例基板1C〜8C、12C、13C、15D、16D、18Dおよび19D、さらには比較例基板9C、10C、11C、14C、17Dおよび20Dを得た。
このようにして得られたこれらの基板を走査型電子顕微鏡(日本電子データム(株)製、JSM−5600)を用いて観測・評価した結果を表6に示す。なお、これらの結果は、以下の評価基準に基づき評価したものである。
(a)パターン形成の有無
○ 何ら問題なく、パーターンが形成されている。
△ 紫外線照射領域に一部、異物が見られるが、パーターンは形成されている。
x パーターンが形成されていない。
(b)紫外線非照射領域への酸の滲み出しの有無
○ 酸の滲み出しは、何ら見られない。
△ 酸の滲み出しが、一部見られる。
× 酸の滲み出しが、多く見られる。
また、比較例基板9Cおよび実施例基板16Dを用いてパターニングを施したシリカ系塗膜の表面を光学顕微鏡(オリンパス(株)製、MX50)で撮影した倍率500倍の写真を、それぞれ図1および図2に示す。
さらに、実施例基板16Dを用いてパターニングを施したシリカ系塗膜の断面を走査型電子顕微鏡(日本電子データム(株)製、JSM−5600)で撮影した倍率1500倍の写真(SEM写真)を図3に示す。
[実施例11および比較例7]
実施例8で調製された前記液状組成物22E〜24E、実施例9で調製された前記液状組成物26E、さらには比較例5で調製された前記液状組成物21Eおよび25Eをそれぞれ5mlずつ従来公知のスピンコート法(MIKASA社製:1H−360S)を用いて6インチサイズのシリコンウェハー基板上に滴下して、500rpmの速度で15秒間、塗布処理を行った。このような操作を繰り返し行い、塗布処理を施した基板22E〜24E、基板26E、さらには基板21Eおよび25Eを得た。
さらに、実施例10と同様な方法で、前記液状組成物16Dおよび19Dを用いて塗布処理を施した基板16Dおよび19Dを得た。
次いで、これらの基板をホットプレート(IUCHI社製:EC−1200)上に載置して大気雰囲気下で100℃にて1分間、乾燥処理を施した。この乾燥処理工程では、塗膜中に含まれる有機溶媒(PGM)などが蒸発してくるので、これらを系外に排出した。
次に、得られた乾燥塗膜付き基板を超純水に20分間、浸漬して、シリカ系塗膜(膜厚:約1.5μm)を得た。
次いで、このシリカ系塗膜上に、50μm幅のラインアンドスペース1:1のパターンを形成するためのパターニング用マスク(大日本印刷(株)製)を載置して、G線(波長435nm)、H線(波長405nm)およびI線(波長365nm)の波長域(すなわち、300nm未満、特に254nm付近の低波長域の紫外線をフィルターでカットしたもの)を有する紫外線ランプ((株)オーク製作所製、AHD200)を用いて、該塗膜上に紫外線を26.3秒間かけて照射した。この時、前記紫外線ランプに取り付けられた2基のセンサー、すなわち波長405nm付近の紫外線量を測定するためのセンサー(岩崎電気(株)製、UVPF−A1 PD−405)および波長254nm付近の紫外線量を測定するためのセンサー(岩崎電気(株)製、UVPF−A1 PD−254)を用いて塗膜表面における紫外線の照度と積算照射量を測定したところ、前者のセンサーでは、照度が7.6mW/cm2、積算照射量(照度x照射時間)が200mJ/cm2であり、また後者のセンサーでは、照度が0mW/cm2、積算照射量(照度x照射時間)が0mJ/cm2であった。
これにより、前記シリカ系塗膜(乾燥塗膜)中に含まれる増感剤が紫外線照射により励起状態に達し、励起電子が酸発生剤に伝播することにより、該シリカ系塗膜中に含まれる酸発生剤が分解して酸を発生させることになる。一方、前記シリカ系塗膜(乾燥塗膜)中に増感剤が含まれない基板(すなわち、基板16Dおよび19D)においては、前記紫外線ランプ(主として300〜480nmの波長域の紫外線が照射されるもの)を用いて紫外線を照射しても、前記酸発生剤の分解が進まず、酸の発生が見られなかった。
次に、得られたシリカ系塗膜付き基板を大気雰囲気下で180℃の温度にて1分間、加熱処理した。これにより、前記シリカ系塗膜中に含まれるシリカ系微粒子中の塩基性触媒成分(アンモニア)が粒子外に放出されて、前記紫外線の照射領域においては前記酸との反応(中和反応)が進み、また前記紫外線の非照射領域においては前記シリカ系塗膜中に含まれる珪素化合物の架橋が進むことになる。しかし、前記基板16Dおよび19D上に形成されたシリカ系塗膜においては、前記紫外線の照射領域においても、前記紫外線の非照射領域と同様に、前記シリカ系塗膜中に含まれる珪素化合物の架橋が進むことになる。これは、前記紫外線を照射しても、前記酸発生剤の分解に基づく酸が発生しないので、前記シリカ系微粒子から放出される塩基性触媒成分(アンモニア)との中和反応が進まないためである。
次いで、得られたシリカ系塗膜付き基板を、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH(25%)、多摩化学工業(株)製)11.9gと超純水488.1gを混合して調製した2.38重量%TMAH水溶液(現像液)500g中に5分間、浸漬して、前記シリカ系塗膜の現像を行った。これにより、少なくとも増感剤を用いて形成されたシリカ系塗膜においては、紫外線の照射領域に存在する珪素化合物や中和反応物などが前記現像液によって溶解されて洗い流されることになる。
次に、前記シリカ系塗膜付き基板を超純水を用いて1分間洗浄して、パターニングを施したシリカ系塗膜を有する実施例基板22E〜24E、実施例基板26E、さらには比較例基板21Eおよび25Eを得た。さらに、パターニングを施すことのできなかったシリカ系塗膜を有する比較例基板16Dおよび19Dを得た。
このようにして得られたこれらの基板を走査型電子顕微鏡(日本電子データム(株)製、JSM−5600)を用いて観測・評価した結果を表7に示す。なお、これらの結果は、実施例10に示す評価基準と同じ評価基準に基づき評価したものである。
[実施例12]
実施例1で調製された液状組成物2Cおよび実施例6で調製された液状組成物16Dをそれぞれ5mlずつ従来公知のスピンコート法を用いて6インチサイズのシリコンウェハー基板上に滴下して、300rpmの速度で15秒間、塗布処理を行った。このような操作を繰り返し行い、塗布処理を施した基板27Cおよび28Dを得た。
次いで、これらの基板をホットプレート上に載置して大気雰囲気下で100℃の温度にて1分間、乾燥処理を施した。この乾燥処理工程では、塗膜中に含まれる有機溶媒(PGM)などが蒸発してくるので、これらを系外に排出した。
次に、得られた乾燥塗膜付き基板を超純水に20分間、、浸漬して、シリカ系塗膜(膜厚:約3.2μm)を得た。次に、前記シリカ系塗膜を大気雰囲気下で180℃の温度にて1分間、加熱処理した。次いで、得られたシリカ系塗膜付き基板を、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH(25%))11.9gと超純水488.1gを混合して調製した2.38重量%TMAH水溶液(現像液)500g中に5分間、浸漬したのち、超純水を用いて1分間洗浄してシリカ系塗膜を有する実施例基板27Xおよび28Yを得た。
このようにして、本発明塗布液を用いて得られるシリカ系塗膜の比誘電率、塗膜強度および表面粗さを簡便に測定するために、紫外線非照射であること以外は実施例10と同じ条件下で、パターニング用マスクを載置して紫外線を照射した際の紫外線非照射領域と同等の性状を有するシリカ系塗膜付き基板を作製した。
さらに、これらの基板をホットプレート上に載せたまま、その処理環境を大気雰囲気下から窒素ガス雰囲気下に変更して、350℃にて30分間、焼成処理を施した。次に、これらの基板を室温近くの温度まで冷却した後、系外に取り出した。
なお、このようにして得られたシリカ系塗膜の膜厚は、約3.1μmであった。
次いで、基板上に形成されたシリカ系塗膜の比誘電率、塗膜強度(ヤング弾性率)および表面粗さを上記の方法で測定した。さらに、この塗膜にクラックが発生しているかどうかを観察した。これらの測定結果および観察結果を表8に示す。
なお、前記液状組成物2Cを使用した場合の限界膜厚は、4.5μm程度であることが分かった。
図1は、比較例基板9Cを用いてパターニングを施したシリカ系塗膜の表面を光学顕微鏡で撮影した倍率500倍の写真である。 図2は、実施例基板16Dを用いてパターニングを施したシリカ系塗膜の表面を光学顕微鏡で撮影した倍率500倍の写真である。 図3は、実施例基板16Dを用いてパターニングを施したシリカ系塗膜の断面を走査型電子顕微鏡で撮影した倍率1500倍の写真(SEM写真)である。

Claims (10)

  1. パターニング特性を備えたシリカ系塗膜を形成するための液状組成物からなるシリカ系塗膜形成用塗布液を調製する方法であって、
    (a)下記一般式(I)で表されるアルコキシシランを塩基性触媒成分の存在下で加水分解・縮重合させて得られたシリカ系微粒子の水−アルコール系分散液に対して、限外濾過装置による濾過と濾過後における希釈液による希釈とからなる濾過、希釈操作を複数回行って、前記シリカ系微粒子中に含まれる塩基性触媒成分の含有量が400〜670重量ppmの範囲となるように、前記塩基性触媒成分の含有量を調整したシリカ系微粒子の水−アルコール系分散液を調製する工程、
    (b)前記シリカ系微粒子を含む水―アルコール分散液に、下記一般式(I)で表されるアルコキシシランおよび下記一般式(II)で表されるハロゲン化シランから選ばれた少なくとも1種の有機珪素化合物またはその部分加水分解物を含む水分散液を混合したのち、30〜80℃の温度に加熱して、少なくとも前記シリカ系微粒子から放出される前記塩基性触媒成分によって前記有機珪素化合物を加水分解して得られる珪素化合物と、前記塩基性触媒成分を含むシリカ系微粒子とを含有する水系混合液を調製する工程、
    (c)前記水系混合液中に含まれる水分およびアルコール成分を、溶媒置換用の有機溶媒と溶媒置換して、有機溶媒系混合液を調製する工程、および
    (d)前記有機溶媒系混合液に、紫外線照射により酸を発生する酸発生剤を混合して、少なくとも前記シリカ系微粒子、前記珪素化合物および前記酸発生剤を含有する液状組成物を調製する工程
    を含み、
    前記珪素化合物が、少なくとも前記シリカ系微粒子から放出される塩基性触媒成分によって前記有機珪素化合物が加水分解された反応物であり、しかも該反応物の少なくとも一部が前記シリカ系微粒子の外部表面およびその細孔内表面に結合していることを特徴とするシリカ系塗膜形成用塗布液の調製方法。
    RnSi(OR’)4-n ・・・ (I)
    RnSiX4-n ・・・ (II)
    (式中、Rは水素原子、フッ素原子、または炭素数1〜8のアルキル基、フッ素置換アルキル基、アリール基、ビニル基もしくはフェニル基を表し、R’は水素原子、または炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、ビニル基もしくはフェニル基を表し、Xはハロゲン原子を表す。また、nは0〜3の整数である。)
  2. 前記工程(a)で使用される塩基性触媒成分が、アンモニア、水酸化アンモニウムおよび第4級アンモニウム化合物から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のシリカ系塗膜形成用塗布液の調製方法。
  3. 前記工程(d)で使用される酸発生剤が、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、2,4,6−トリメチルフェニルジフェニルスルホニウムp−トルエンスルホネートおよびビス(4−t−ブチルフェニルスルホニル)ジアゾメタンから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載のシリカ系塗膜形成用塗布液の調製方法。
  4. 前記工程(d)において前記酸発生剤を、該酸発生剤をXで表し、さらに前記工程(b)から得られるシリカ系微粒子中に含まれる塩基性触媒成分をYで表したとき、そのモル比(X/Y)が0.02〜0.50となるような割合で混合することを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載のシリカ系塗膜形成用塗布液の調製方法。
  5. 前記工程(d)から得られる液状組成物に、さらにトリエタノールアミン、トリエチルアミンおよびトリ-n−ブチルアミンから選ばれた少なくとも1種のアミン化合物を混合することを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載のシリカ系塗膜形成用塗布液の調製方法。
  6. 前記アミン化合物を、該アミン化合物をZで表し、さらに前記酸発生剤をXで表したとき、そのモル比(Z/X)が0.01〜1.0となるような割合で混合することを特徴とする請求項に記載のシリカ系塗膜形成用塗布液の調製方法。
  7. 前記工程(d)から得られる液状組成物に、さらにアントラセン、9,10−ジフェニルアントラセン、9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセンから選ばれた少なくとも1種の増感剤を混合することを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載のシリカ系塗膜形成用塗布液の製造方法。
  8. 前記増感剤を、該増感剤をWで表し、さらに前記酸発生剤をXで表したとき、そのモル比(W/X)が0.05〜0.7となるような割合で混合することを特徴とする請求項に記載のシリカ系塗膜形成用塗布液の製造方法。
  9. 前記珪素化合物が、ポリスチレン換算基準で400〜3000の数平均分子量を有することを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載のシリカ系塗膜形成用塗布液の調製方法。
  10. 前記溶媒置換用の有機溶媒は、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートおよびヘキシレングリコールから選ばれた少なくとも1種の有機溶媒であることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載のシリカ系塗膜形成用塗布液の調製方法。
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