特許文献1に記載の従来の車両用制御装置にあっては、減速時燃料カットに先立つトルク制限によって、減速時燃料カット開始時のトルク段差によるショックの発生を抑制することは確かに可能である。
しかしながら、この従来の車両用制御装置では、上述のようなトルク制限を実施しても、減速時燃料カット移行時等に発生する、下記の要因によるショックについてまでは、その発生を的確に抑制することができない。
すなわち、減速時燃料カットへの移行時には、ある時点で、内燃機関の発生トルクによって駆動輪が駆動される駆動状態から、駆動輪から入力された入力トルクで内燃機関が駆動される被駆動状態へと切り換る。この切り換りに際して、内燃機関の発生トルクと駆動輪からの入力トルクとの間にトルク段差があると、内燃機関と駆動輪との間の動力伝達経路上に設けられたディファレンシャルギヤの歯打ちが発生してショックが生じてしまう。この点、減速時燃料カットに先立って内燃機関の発生トルクを単に徐減するだけでは、駆動状態から被駆動状態への切り換り時の内燃機関の発生トルクと駆動輪からの入力トルクとの間のトルク段差を解消しきることはできず、こうしたディファレンシャルギヤの歯打ちによるショックを的確には抑制できない。
こうした問題は、減速時燃料カットの移行時以外における駆動状態から被駆動状態への切り換り時にも同様に発生するものとなっている。また、上述のようなディファレンシャルギヤの歯打ちによるショックは、被駆動状態から駆動状態への切り換り時にも、やはり発生することがある。
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたもので、駆動源の駆動状態と被駆動状態との切り換り時におけるディファレンシャルギヤの歯打ちによるショックの発生を的確に抑制することができる車両用制御装置を提供することを目的とする。
本発明に係る車両用制御装置は、上記目的達成のため、(1)駆動源と駆動輪との間の動力伝達経路上にディファレンシャルギヤを備え、前記駆動源が発生した駆動トルクを前記ディファレンシャルギヤを介して前記駆動輪に伝達する車両に用いられる車両用制御装置であって、前記駆動トルクによって前記駆動輪を駆動する駆動状態と前記駆動輪から入力された入力トルクによって前記駆動源が駆動される被駆動状態との切り換りに際して、その切り換り時の前記ディファレンシャルギヤでの発生トルクを推定し、前記推定した発生トルクに基づき、前記切り換り時の前記駆動トルクを制御するトルク制御を実施する制御手段を備え、前記制御手段は、駆動源側から前記ディファレンシャルギヤに伝達される駆動トルクTinを前記車両の駆動系における前記ディファレンシャルギヤの駆動源側のイナーシャIinで除算した値と前記駆動輪から前記ディファレンシャルギヤに伝達される入力トルクToutを前記車両の駆動系における前記ディファレンシャルギヤの駆動輪側のイナーシャIoutで除算した値との比を、前記ディファレンシャルギヤの減速比ρdefと一致させるために必要な前記駆動トルクを、前記ディファレンシャルギヤの回転速度と前記駆動ギヤの回転速度とが等しくなったときの前記駆動トルクとして求め、求めた前記駆動トルクを前記発生トルクとして推定する構成を有する。
この構成により、本発明に係る車両用制御装置は、駆動状態と被駆動状態との切り換りに際して、その切り換り時のディファレンシャルギヤでの発生トルクを推定し、かつこの推定した発生トルクに基づき、切り換り時の駆動源の駆動トルクを制御するトルク制御を実施する。このトルク制御により、駆動状態と被駆動状態との切り換りに際して、駆動源の駆動トルクをディファレンシャルギヤでの発生トルクに一致させる、あるいは近づけることができれば、同切り換り時に駆動源の駆動トルクと駆動輪からの入力トルクとの間に生ずるトルク段差を抑制することができる。したがって、駆動状態および被駆動状態の切り換り時に、そのときのディファレンシャルギヤでの発生トルクに一致する、あるいは近づくように駆動源の駆動トルクを制御すれば、駆動状態と被駆動状態との切り換りに際してのディファレンシャルギヤの歯打ちを防止することができる。よって、本発明に係る車両用制御装置は、駆動状態と被駆動状態との切り換り時におけるディファレンシャルギヤの歯打ちによるショックの発生を的確に抑制することができる。
また、本発明に係る車両用制御装置は、上記(1)に記載の車両用制御装置において、(2)前記制御手段は、前記ディファレンシャルギヤの回転速度と前記ディファレンシャルギヤに噛み合う駆動源側の駆動ギヤの回転速度とが等しくなったときの前記駆動トルクを前記発生トルクとして推定する構成を有する。
この構成により、本発明に係る車両用制御装置は、駆動状態と被駆動状態との切り換り時にディファレンシャルギヤの回転速度とディファレンシャルギヤに噛み合う駆動源側の駆動ギヤの回転速度とが等しくなることに着目し、駆動状態と被駆動状態との切り換り時のディファレンシャルギヤにおける正確な発生トルクを推定することができる。
また、本発明に係る車両用制御装置は、上記(2)に記載の車両用制御装置において、(3)前記制御手段は、駆動源側から前記ディファレンシャルギヤに伝達される駆動トルクTinを前記車両の駆動系における前記ディファレンシャルギヤの駆動源側のイナーシャIinで除算した値と前記駆動輪から前記ディファレンシャルギヤに伝達される入力トルクToutを前記車両の駆動系における前記ディファレンシャルギヤの駆動輪側のイナーシャIoutで除算した値との比を、前記ディファレンシャルギヤの減速比ρdefと一致させるために必要な前記駆動トルクを、前記ディファレンシャルギヤの回転速度と前記駆動ギヤの回転速度とが等しくなったときの前記駆動トルクとして求める構成を有する。
この構成により、本発明に係る車両用制御装置は、ディファレンシャルギヤの回転速度と駆動ギヤの回転速度とが等しくなったときの駆動トルクを正確に求めることができる。したがって、駆動状態と被駆動状態との切り換り時のディファレンシャルギヤにおける正確な発生トルクを推定することができる。
また、本発明に係る車両用制御装置は、上記(1)ないし(3)に記載の車両用制御装置において、(4)前記制御手段は、前記駆動トルクが前記推定した発生トルクとなったときより前記トルク制御を実施する構成を有する。
この構成により、本発明に係る車両用制御装置は、駆動源の駆動トルクが推定した発生トルクとなったときよりトルク制御を実施する。一方、駆動状態と被駆動状態との切り換りは、駆動源の駆動トルクが推定された切り換り時のディファレンシャルギヤでの発生トルクと一致したタイミングより開始される。したがって、本発明に係る車両用制御装置は、最適なタイミングでトルク制御を実施することができる。
また、本発明に係る車両用制御装置は、上記(1)ないし(4)に記載の車両用制御装置において、(5)前記駆動源が内燃機関で構成され、前記制御手段は、前記車両の減速時に前記内燃機関の燃料カットを実施するとともに、前記燃料カットの実施に先立っての前記駆動状態から前記被駆動状態への切り換り時に前記トルク制御を行う構成を有する。
この構成により、本発明に係る車両用制御装置は、車両の減速時における燃料カットの実施に先立ち発生する駆動状態と被駆動状態との切り換りにおいてトルク制御を実施する。これにより、車両の減速時の燃料カットに先立ち発生する駆動状態と被駆動状態との切り換りに伴うディファレンシャルギヤの歯打ちによるショックの発生を的確に抑制することができる。
また、本発明に係る車両用制御装置は、上記(5)に記載の車両用制御装置において、(6)前記制御手段は、前記燃料カットの実施に先立って前記内燃機関の発生する駆動トルクを徐減するトルク制限制御を実施する構成を有する。
この構成により、本発明に係る車両用制御装置は、燃料カットの実施に先立って内燃機関の駆動トルクを徐減するトルク制限制御を実施するので、燃料カットの開始に伴うトルクショックについてもその抑制が可能となる。
また、本発明に係る車両用制御装置は、上記(1)ないし(6)に記載の車両用制御装置において、(7)前記駆動源と前記ディファレンシャルギヤとの間に変速機を有し、前記駆動源の補機類の負荷トルクをTQaux、前記車両の駆動系における前記ディファレンシャルギヤの駆動源側のイナーシャをIin、前記駆動輪から前記ディファレンシャルギヤに伝達される入力トルクをTout、前記車両の駆動系における前記ディファレンシャルギヤの駆動輪側のイナーシャをIout、前記ディファレンシャルギヤの減速比をρ
def、前記変速機の伝達効率をKETT、前記変速機の変速比をRATIOとしたとき、前記切り換り時の前記発生トルクTQengは、次式(1)により求められる構成を有する。
この構成により、本発明に係る車両用制御装置は、式(1)を用いた演算によって、駆動状態と被駆動状態との切り換り時のディファレンシャルギヤにおける発生トルクをより正確に推定することができる。
また、本発明に係る車両用制御装置は、上記目的達成のため、(8)駆動源と駆動輪との間の動力伝達経路上にディファレンシャルギヤを備え、前記駆動源が発生した駆動トルクを前記ディファレンシャルギヤを介して前記駆動輪に伝達する車両に用いられる車両用制御装置であって、前記駆動トルクによって前記駆動輪を駆動する駆動状態と前記駆動輪から入力された入力トルクによって前記駆動源が駆動される被駆動状態との切り換りに際して、その切り換り時の前記駆動輪から前記ディファレンシャルギヤに入力される入力トルクを推定し、前記推定した入力トルクに基づき、前記切り換り時の前記駆動トルクを制御するトルク制御を実施する制御手段を備えた構成を有する。
この構成により、本発明に係る車両用制御装置は、制御手段が駆動状態と被駆動状態との切り換りに際して駆動輪からディファレンシャルギヤに入力される入力トルクを推定し、かつこの推定した入力トルクに基づき、切り換り時の駆動源の駆動トルクを制御するトルク制御を実施する。このトルク制御により、駆動状態と被駆動状態との切り換りに際して、駆動源の駆動トルクと駆動輪からの入力トルクとを一致させる、あるいは近づけることができれば、同切り換り時に駆動源の駆動トルクと駆動輪からの入力トルクとの間に生ずるトルク段差を抑制することができる。したがって、駆動状態および被駆動状態の切り換り時に、そのときの駆動輪からの入力トルクに一致する、あるいは近づくように駆動源の駆動トルクを制御すれば、駆動状態と被駆動状態との切り換りに際してのディファレンシャルギヤの歯打ちを防止することができる。よって、本発明に係る車両用制御装置は、駆動状態と被駆動状態との切り換り時におけるディファレンシャルギヤの歯打ちによるショックの発生を的確に抑制することができる。
また、本発明に係る車両用制御装置は、上記(8)に記載の車両用制御装置において、(9)前記制御手段は、前記駆動トルクが前記推定した入力トルクとなったときより前記トルク制御を実施する構成を有する。
この構成により、本発明に係る車両用制御装置は、駆動源の駆動トルクが推定した入力トルクとなったときよりトルク制御を実施する。一方、駆動状態と被駆動状態との切り換りは、駆動源の駆動トルクが推定された切り換り時の駆動輪からの入力トルクと一致したタイミングより開始される。したがって、本発明に係る車両用制御装置は、最適なタイミングでトルク制御を実施することができる。
本発明によれば、駆動源の駆動状態と被駆動状態との切り換り時におけるディファレンシャルギヤの歯打ちによるショックの発生を的確に抑制することができる車両用制御装置を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図4を参照して説明する。
本発明の実施の形態では、車両用制御装置を駆動源として内燃機関を備えた車両に適用した例について説明する。
図1に示すように、車両1は、フロントエンジン・リヤドライブ形式のいわゆるFR駆動車で構成されており、車両1の駆動力を発生する駆動源としてエンジン2と、変速機3と、リヤディファレンシャルギヤ4と、駆動輪5L、5Rと、車両用制御装置10とを含んで構成されている。車両1は、エンジン2が発生した駆動トルクを変速機3およびリヤディファレンシャルギヤ4を介して左右の駆動輪5L、5Rに伝達可能である。なお、本実施の形態では、車両用制御装置10をFR駆動車である車両1に適用したが、FR駆動車に限らず、エンジンと駆動輪との間にディファレンシャルギヤを有する他の形式の車両にも適用可能である。
エンジン2は、例えばガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力可能な内燃機関として構成されている。エンジン2には、各種補機類として、空調装置のコンプレッサ(A/C)21と、オルタネータ(ALT)22と、オイルポンプ(O/P)23とが駆動連結されている。また、エンジン2は、変速機3およびリヤディファレンシャルギヤ4を介して左右の駆動輪5L、5Rに接続されている。このように構成されたエンジン2は、図示しない燃料噴射装置や点火装置を備え、これら燃料噴射装置および点火装置が後述するECU100によって制御されるようになっている。
変速機3は、エンジン2とリヤディファレンシャルギヤ4との間の動力伝達経路上に設けられ、エンジン2の回転数を変速してプロペラシャフト30を介してリヤディファレンシャルギヤ4に出力するようになっている。変速機3としては、クラッチおよびブレーキ等の摩擦係合装置と遊星歯車装置とを用いてギヤ段を設定する有段式(遊星歯車式)の自動変速機や、運転者のシフト操作によって任意に変速段を選択可能なマニュアルトランスミッション、いわゆる手動変速機を用いることができる。その他、変速機3として変速比を無段階に調整するベルト式無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)を用いてもよい。
リヤディファレンシャルギヤ4は、エンジン2と左右の駆動輪5L、5Rとの間の動力伝達経路上に設けられ、左右の駆動輪5L、5Rの差動を許容するようになっている。リヤディファレンシャルギヤ4は、デフケースに固定されたリングギヤ41と、一対のピニオンギヤおよび一対のサイドギヤとを備えている。リングギヤ41は、プロペラシャフト30の一端に取り付けられたドライブピニオンギヤ31と噛み合っている。本実施の形態におけるリヤディファレンシャルギヤ4は、本発明に係るディファレンシャルギヤを構成し、ドライブピニオンギヤ31は、本発明に係る駆動ギヤを構成する。
車両用制御装置10は、車両用電子制御装置(以下、単にECUという)100と、ECU100に接続された図示しないクランクポジションセンサやアクセル開度センサ等の各種センサ類とを含んで構成されている。
ECU100は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えるマイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUは、RAMの一時記憶機能を利用するとともにROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うようになっている。ROMには、各種制御定数や各種マップ等が予め記憶されている。
ECU100は、各種センサ類からの入力に基づき、点火時期制御、燃料噴射制御等のエンジン制御を行うようになっている。特に、本実施の形態では、ECU100は、エンジン制御の一環として、車両1の減速時に所定の減速時燃料カット開始条件が成立するとエンジン2の燃料供給を停止する減速時燃料カット制御を行うようになっている。例えば、エンジン2の回転数が予め定められた減速時燃料カット基準回転数以上であること、およびアクセルオフ状態であることが減速時燃料カット開始条件となっている。この減速時燃料カット制御における減速時燃料カットは、図示しないインジェクタからの燃料噴射を停止もしくは制限することにより行われる。なお、ECU100は、減速時燃料カット制御中にエンジン2の回転数が減速時燃料カット基準回転数未満となるか、あるいはアクセルペダルが踏み込まれることにより減速時燃料カット終了条件が成立すると、減速時燃料カットを終了するようになっている。本実施の形態における減速時燃料カットは、本発明における燃料カットに相当する。
また、ECU100は、減速時燃料カット開始時のトルクショックを抑制するため、上述の減速時燃料カット制御の実施に先立って、エンジン2の点火時期を徐々に遅角してエンジン2の発生する駆動トルクを徐減させるトルク制限制御を実施するようになっている。なお、上記トルク制限制御は、例えば燃料噴射量や吸入空気量等を調整することにより行うようにしてもよい。また、車両1をハイブリッド車両で構成した場合には、駆動源としてのモータのトルクを調整することによりトルク制限制御を行ってもよい。
ここで、エンジン2は、減速時燃料カット制御への移行に際して、エンジン自体で発生した駆動トルクで駆動輪5L、5Rを駆動する駆動状態から、駆動輪5L、5Rから入力された入力トルクでエンジン自体が駆動される被駆動状態へと切り換わる。このような駆動状態から被駆動状態への切り換りに際しては、リヤディファレンシャルギヤ4においてギヤ同士の歯打ちが生じ、これが原因でショックが発生することがある。このようなショックは、概略的には、駆動状態から被駆動状態への切り換り時にエンジン2の駆動トルクと駆動輪5L、5Rからの入力トルクとの間にトルク段差が生じていることに起因して発生する。したがって、駆動状態から被駆動状態への切り換り時にエンジン2の駆動トルクを駆動輪5L、5Rからの入力トルクに一致させる、あるいは近づけることができれば、こうしたショックの発生を抑制することができる。換言すれば、駆動状態から被駆動状態への切り換り時にリヤディファレンシャルギヤ4で発生する発生トルクに、エンジン2の駆動トルクを一致させる、あるいは近づけることができれば上述のようなショックの発生を抑制できる。したがって、こうしたショックの発生を抑制するためには、上述のようなリヤディファレンシャルギヤ4の発生トルクを推定する必要が生ずる。
ところが、エンジン2の駆動トルクおよび駆動輪5L、5Rからの入力トルクは、そのままリヤディファレンシャルギヤ4に伝達されるわけではない。例えば、エンジン2には各種補機類が駆動連結されていることからこれら補機類の負荷トルクを考慮したり、駆動輪5L、5Rからの入力トルクに関わる路面勾配等も考慮しなければ、正確な駆動状態から被駆動状態への切り換り時のリヤディファレンシャルギヤ4の発生トルクを推定することができない。このため、上記ショックの発生を抑制するには、より詳細な発生トルクの推定が必要である。そこで、本実施の形態では、駆動状態から被駆動状態への切り換り時のリヤディファレンシャルギヤ4の歯打ちによるショックを抑制するために必要なエンジン2の駆動トルクを推定し、推定した駆動トルクに基づき、同切り換り時のエンジン2の駆動トルクを制御するトルク制御を実施するようにした。このトルク制御は、ECU100によって実行される。また、このトルク制御では、同切り換り時のエンジン2の駆動トルクをその推定した駆動トルクに一致させる、あるいは近づけるように、エンジン2の駆動トルクを制御する。
次に、図1および図2を参照して、上記ショックの抑制に必要な駆動トルクの推定ロジックについて説明する。
図2は、車両1の駆動系をリヤディファレンシャルギヤ4を中心に模式化したモデルである。同モデルにおいて、Iinは、リヤディファレンシャルギヤ4のエンジン側における駆動系のイナーシャを、Tinは、リヤディファレンシャルギヤ4のエンジン側のギヤすなわちドライブピニオンギヤ31に入力される駆動トルクを、αinは、ドライブピニオンギヤ31の角加速度を表している。また、同モデルにおいて、Ioutは、リヤディファレンシャルギヤ4の駆動輪側における駆動系のイナーシャを、Toutは、リヤディファレンシャルギヤ4の駆動輪側のギヤすなわちリングギヤ41に入力される入力トルクを、αoutは、リングギヤ41の角加速度を表している。このようなモデルにおけるねじりの関係式は、次式(2)、(3)の通りとなる。また、イナーシャIin、Ioutは、リヤディファレンシャルギヤ4を中心とした等価慣性計算により求めることができる。
ここで、駆動トルクTinは、次式(4)で示される。次式(4)において、TQengは、エンジン2が発生する駆動トルクを、TQacは、コンプレッサ21の負荷トルクを、TQaltは、オルタネータ22の負荷トルクを、TQopは、オイルポンプ23の負荷トルクを、FRcoldは、冷間時におけるフリクショントルクの増加分を示している。また、KETTは、変速機3の伝達効率を、RATIOは、変速機3の変速比をそれぞれ示している。なお、上記KETTは、変速機3の伝達効率が一定であれば定数となるが、その伝達効率が変速比によって変化する場合には、変速比に応じた変数となる。
一方、入力トルクToutは、次式(5)により示される。次式(5)において、F
R/Lは、道路負荷(いわゆるRoad Load)を、F
slopeは、路面の勾配により駆動輪5L、5Rが受ける抗力を、R
tireは、駆動輪5L、5Rの半径をそれぞれ示している。
ここで、駆動状態から被駆動状態への切り換り時には、ディファレンシャルギヤ4の回転速度と該ディファレンシャルギヤ4に噛み合うエンジン側のドライブピニオンギヤ31の回転速度とが等しくなる。より詳細には、リングギヤ41とドライブピニオンギヤ31の歯面速度が等しくなる。したがって、リヤディファレンシャルギヤ4のギヤ比(減速比)をρ
defとすると、ドライブピニオンギヤ31およびリングギヤ41の角加速度αin、αoutの関係は、次式(6)に示す通りとなり、この関係から次式(7)が得られる。次式(7)は、駆動トルクTinをイナーシャIinで除算した値と入力トルクToutをイナーシャIoutで除算した値との比が減速比ρ
defと一致することを示している。
本実施の形態では、ドライブピニオンギヤ31とリングギヤ41の歯面速度が等しくなるときのエンジン2の駆動トルクを、駆動状態から被駆動状態への切り換り時においてリヤディファレンシャル4で発生する発生トルクとして推定するようにした。この発生トルクにエンジン2の駆動トルクを一致させる、あるいは近づけることができれば、駆動状態から被駆動状態への切り換り時のリヤディファレンシャル4の歯打ちによるショックを抑制することが可能である。ここで、上記ショックを抑制するために必要なエンジン2の駆動トルクをTQengとすると、駆動トルクTQengは、上記式(4)および上記式(7)から次式(8)に示す通りとなる。
ここで、上記式(8)について、各種負荷トルクTQac、TQalt、TQopおよびフリクショントルクFRcoldを、エンジン2の補機類の負荷トルクTQauxとしてまとめると、次式(9)の通りとなる。
次に、図3を参照して、上記の推定ロジックを用いて、駆動状態から被駆動状態への切り換り時のショックの発生を抑制するための制御の詳細について説明する。この制御は、図3に示すトルク制御ルーチンの処理を通じて行われる。このトルク制御ルーチンの処理は、車両1の走行中、ECU100によって所定周期毎に繰り返し実行される。
図3に示すように、ECU100は、本ルーチンが開始されると、まず減速時燃料カットへの移行状態にあるか否かを判定する(ステップS1)。例えば、ECU100は、上述の減速時燃料カット開始条件が成立したか否かを判断することで、減速時燃料カットへの移行状態にあるか否かを判定することができる。
ECU100は、減速時燃料カットへの移行状態にないと判定した場合には、以降のステップを実行することなく本ルーチンの処理を終了する。
一方、ECU100は、減速時燃料カットへの移行状態にあると判定した場合には、減速時燃料カットに先立ってのエンジン2のトルク制限制御を実施する(ステップS2)。このトルク制限制御により、エンジン2の点火時期が徐々に遅角され、エンジン2の駆動トルクが徐減される。
次いで、ECU100は、駆動状態から被駆動状態への切り換り時のリヤディファレンシャルギヤ4の歯打ちによるショックを抑制するために必要なエンジン2の駆動トルクTQengを推定する(ステップS3)。具体的には、ECU100は、上記式(9)を用いて駆動トルクTQengを推定する。
次に、ECU100は、エンジン2が駆動状態から被駆動状態への切り換り中であるか否かを判定する(ステップS4)。具体的には、ECU100は、現状のエンジン2の駆動トルクがステップS3で推定された駆動トルクTQengまで低下したか否かを判断することにより、エンジン2が駆動状態から被駆動状態への切り換り中であるか否かを判定する。ECU100は、エンジン2が駆動状態から被駆動状態への切り換り中でないと判定した場合には、以降のステップを実行することなく本ルーチンの処理を終了する。
一方、ECU100は、エンジン2が駆動状態から被駆動状態への切り換り中であると判定した場合には、推定した駆動トルクTQengに一致する、あるいは近づくようにエンジン2の駆動トルクを制御するトルク制御を実施する(ステップS5)。具体的には、ECU100は、エンジン2の駆動トルクが推定した駆動トルクTQengに一致する、あるいは近づくように点火時期を調整する。なお、ECU100は、このようなエンジン2の駆動トルクのトルク制御を、点火時期の調整の他、例えば燃料噴射量や吸入空気量等を調整することにより行うようにしてもよい。また、車両1をハイブリッド車両や電動車両で構成した場合には、ECU100は、このようなエンジン2の駆動トルクのトルク制御を、駆動源としてのモータのトルクを調整することにより行ってもよい。
こうしたエンジン2の駆動トルクのトルク制御は、移行区間フラグがオンとなっている間継続される。移行区間フラグは、エンジン2が発生する駆動トルクが推定した駆動トルクTQengとなった時点でオンとされ、その後、所定時間が経過した時点でオフとされる。移行区間フラグがオンとされる期間は、エンジン2の駆動状態から被駆動状態への切り換りに要する時間に設定されている。本実施の形態では、こうした移行区間フラグのオン期間を、駆動状態から被駆動状態への切り換りに要する時間のばらつき等を考慮して設定するようにした。
次に、図4を参照して、本実施の形態に係る車両用制御装置10の作用について説明する。
図4に示すように、車両1が減速されて減速時燃料カットへの移行状態となると、トルク制限制御により点火時期が徐々に遅角されてエンジン2の駆動トルクが徐減される。次いで、時間t1において、エンジン2の駆動トルクが推定された駆動トルクTQeng(図中、一点鎖線で示す)となり、エンジン2の駆動状態から被駆動状態への切り換りが開始されると、移行区間フラグがオンとされる。
移行区間フラグがオンされると、点火時期の調整を通じて、駆動状態から被駆動状態への切り換り時のリヤディファレンシャルギヤ4の歯打ちによるショックの抑制に必要な駆動トルクTQengに一致する、あるいは近づくようにエンジン2の駆動トルクが制御される(トルク制御)。例えば本実施の形態では、エンジン2の駆動トルクが駆動トルクTQengに一致する、あるいは近づくように点火時期が進角側に調整される。このエンジン2の駆動トルクのトルク制御は、エンジン2の駆動状態から被駆動状態への切り換りが行われている間、すなわち時間t1から時間t2までの間継続される。このように、エンジン2の駆動トルクが駆動トルクTQengに制御されると、駆動状態から被駆動状態への切り換りの間、リヤディファレンシャルギヤ4のエンジン側と駆動輪側とのトルク段差が解消され、リヤディファレンシャルギヤ4の歯打ちによるショックが有効に抑制される。
その後、時間t2において、エンジン2の駆動状態から被駆動状態への切り換りが完了して移行区間フラグがオフされると、再びトルク制限制御が実施され、エンジン2の駆動トルクが時間の経過とともに徐減される。そしてエンジン2の駆動トルクが十分に低減された時点で減速時燃料カットが開始される。
なお、図4中、点線で示される駆動トルクおよび点火時期は、それぞれ駆動状態から被駆動状態への切り換り時にエンジン2の駆動トルクを駆動トルクTQengに一致させる、あるいは近づけるトルク制御を行わない従来制御の同切り換り時の駆動トルクおよび点火時期を示すものである。従来制御では、駆動状態から被駆動状態への切り換り時において、駆動トルクTQengすなわち同切り換り時にリヤディファレンシャルギヤで発生する発生トルクと実際のエンジンの駆動トルクとの間に比較的大きなトルク段差があり、これが原因で上記のようなショックが生ずる。これに対して、本実施の形態では、図4からも明らかなように、駆動状態から被駆動状態への切り換り時における駆動トルクTQengと実際のエンジン2の駆動トルクとの間のトルク段差がないか、あるいは限りなく小さいため、上述のようなショックが抑制される。
以上のように、本実施の形態に係る車両用制御装置10は、駆動状態と被駆動状態との切り換りに際して、ECU100がその切り換り時のディファレンシャルギヤ4での発生トルクを推定し、かつこの推定した発生トルクに基づき、切り換り時のエンジン2の駆動トルクを制御するトルク制御を実施する。このトルク制御により、駆動状態と被駆動状態との切り換りに際して、エンジン2の駆動トルクをディファレンシャルギヤ4での発生トルクに一致させる、あるいは近づけることができれば、同切り換り時にエンジン2の駆動トルクと駆動輪5L、5Rからの入力トルクとの間に生ずるトルク段差を抑制することができる。したがって、駆動状態および被駆動状態の切り換り時に、そのときのディファレンシャルギヤ4での発生トルクに一致する、あるいは近づくようにエンジン2の駆動トルクを制御すれば、駆動状態と被駆動状態との切り換りに際してのディファレンシャルギヤ4の歯打ちを防止することができる。よって、本実施の形態に係る車両用制御装置10は、駆動状態と被駆動状態との切り換り時におけるディファレンシャルギヤ4の歯打ちによるショックの発生を的確に抑制することができる。
また、本実施の形態に係る車両用制御装置10は、駆動状態と被駆動状態との切り換り時にディファレンシャルギヤ4の回転速度とディファレンシャルギヤ4に噛み合うエンジン側のドライブピニオンギヤ31の回転速度とが等しくなることに着目し、駆動状態と被駆動状態との切り換り時のディファレンシャルギヤ4における正確な発生トルクを推定することができる。
また、本実施の形態に係る車両用制御装置10は、駆動トルクTinをイナーシャIinで除算した値と入力トルクToutをイナーシャIoutで除算した値との比を、リヤディファレンシャルギヤ4の減速比ρdefと一致させるために必要なエンジン2の駆動トルクTQengを、ディファレンシャルギヤ4の回転速度とドライブピニオンギヤ31の回転速度とが等しくなったときの駆動トルクとして求めている。このため、本実施の形態に係る車両用制御装置10は、ディファレンシャルギヤ4の回転速度とドライブピニオンギヤ31の回転速度とが等しくなったときの駆動トルクを正確に求めることができる。したがって、駆動状態と被駆動状態との切り換り時のディファレンシャルギヤ4における正確な発生トルクを推定することができる。
また、本実施の形態に係る車両用制御装置10は、エンジン2の駆動トルクが推定した発生トルクすなわち駆動トルクTQengとなったときよりトルク制御を実施する。一方、駆動状態と被駆動状態との切り換りは、エンジン2の駆動トルクが推定された切り換り時のディファレンシャルギヤ4での発生トルクすなわち駆動トルクTQengと一致したタイミングより開始される。したがって、本実施の形態に係る車両用制御装置10は、最適なタイミングでトルク制御を実施することができる。
また、本実施の形態に係る車両用制御装置10は、車両1の減速時における減速時燃料カットの実施に先立ち発生する駆動状態と被駆動状態との切り換りにおいてトルク制御を実施する。すなわち、トルク制御は、減速時燃料カットの実施に先立っての駆動状態から被駆動状態への切り換り時に行われる。これにより、減速時燃料カットに先立ち発生する駆動状態と被駆動状態との切り換りに伴うディファレンシャルギヤ4の歯打ちによるショックの発生を的確に抑制することができる。
また、本実施の形態に係る車両用制御装置10は、減速時燃料カットの実施に先立ってエンジン2の駆動トルクを徐減するトルク制限制御を実施するので、減速時燃料カットの開始に伴うトルクショックについてもその抑制が可能となる。
また、本実施の形態に係る車両用制御装置10は、上記式(8)を用いた演算によって、駆動状態と被駆動状態との切り換り時のディファレンシャルギヤ4における発生トルクすなわち駆動トルクTQengをより正確に推定することができる。
また、本実施の形態に係る車両用制御装置10は、エンジン2に駆動連結された補機類の負荷トルク(例えば、負荷トルクTQac、TQalt、TQop)や変速機3の変速比や伝達効率を考慮して、駆動トルクTQengの推定を行っている。したがって、補機類の負荷トルクの変化や変速機3の変速比や伝達効率の変化に関わらず、上記ショックの抑制に必要な駆動トルクTQengの推定を的確に行うことができる。また、エンジン2に駆動連結される補機類の数や種類が異なる場合には、これら各補機類の負荷トルクを考慮して駆動トルクTQengの推定を行えば、本実施の形態と同様、上記ショックの抑制に必要な駆動トルクTQengの推定を的確に行うことができる。
また、本実施の形態に係る車両用制御装置10は、冷間時のフリクショントルクの増加分を考慮して駆動トルクTQengの推定を行っている。したがって、暖機状態に応じたフリクショントルクの変化に関わらず、上記ショックの抑制に必要な駆動トルクTQengの推定を的確に行うことができる。
また、本実施の形態に係る車両用制御装置10は、駆動状態から被駆動状態への切り換り時に、上記の通り、駆動トルクTQengに一致させる、あるいは近づけるようエンジン2の駆動トルクを制御するので、同切り換り時以外の減速時燃料カット移行区間において従来と比較してエンジン2の駆動トルクを早期に低下させることが可能となる。したがって、減速時燃料カットが開始されるまでのディレイ時間を短縮することができ、結果として車両1の燃費向上につながる。
さらに、本実施の形態に係る車両用制御装置10は、上述のようにディレイ時間が短縮されることで、運転者のアクセル操作に応じた車両1の減速状態を実現可能である。つまり、従来は、例えばエンジンの駆動トルクを徐々に低下させる制御しか実施していなかったため、ディレイ時間が比較的長くなる傾向にあった。このため、運転者がアクセル操作量をゼロとしているにも関わらず、車両がなかなか減速しないといった事態が生じ得る。この場合、ドライバビリティが悪化するおそれがあった。これに対し、本実施の形態に係る車両用制御装置10は、上述のようにディレイ時間が短縮されることで、運転者の要求に応じて車両1を従来よりも早期に減速させることが可能となる。この結果、ドライバビリティが向上する。
なお、本実施の形態では、エンジン2の駆動トルクが駆動トルクTQengとなったことをもって、エンジン2の駆動状態から被駆動状態への切り換りのタイミングを確認していたが、この切り換りのタイミングは、その他の方法により確認するようにしてもよい。
また、減速時燃料カット開始時のトルク段差に起因したショックの抑制が特に必要でない場合には、上述のようなトルク制限制御を実施せずに減速時燃料カットを実施するようにしてもよい。
また、本実施の形態では、駆動トルクTQengの推定にあたって、無段変速機の変速動作に費やされる負荷トルクを考慮していないが、例えば変速機3を無段変速機で構成した場合には、無段変速機の変速動作に費やされる負荷トルクを考慮してもよい。すなわち、上記式(8)に、無段変速機の変速動作に費やされる負荷トルクを加えて駆動トルクTQengを推定してもよい。同負荷トルクとしては、無段変速機の変速時のプライマリーシーブの変速動作(ベルト巻き掛け半径の変更)に費やされるトルクや、同変速機の変速時のセカンダリーシーブの変速動作(ベルト巻き掛け半径の変更)に費やされるトルクが挙げられる。もちろん、こうしたトルクの影響を無視できる場合には、これらトルクを考慮しなくともよい。
また、本実施の形態では、駆動トルクTQengの推定にあたって、冷間時のフリクショントルクの増加分を考慮したが、こうしたフリクショントルクの増加分を無視できる場合、例えば減速時燃料カットが暖機完了後にのみ行われる場合等には、フリクショントルクの増加分を考慮せずに駆動トルクTQengを推定してもよい。すなわち、上記式(8)からFRcoldの項を除外したものを用いて駆動トルクTQengを推定してもよい。
また、本実施の形態では、減速時燃料カットへの移行に伴う駆動状態から被駆動状態への切り換り時のエンジン2の駆動トルクを駆動トルクTQengに一致させる、あるいは近づける例について説明した。もっとも、減速時燃料カットへの移行時以外の状況における駆動状態から被駆動状態への切り換りに際しても、同様のリヤディファレンシャルギヤ4の歯打ちによるショックが発生することがある。したがって、このような切り換り時にあっても、エンジン2の駆動トルクを駆動トルクTQengに一致させる、あるいは近づけるようにすれば、同ショックを的確に抑制することができる。
また、本実施の形態では、エンジン2の駆動状態から被駆動状態への切り換り時について説明したが、被駆動状態から駆動状態への切り換り時にも同様のリヤディファレンシャルギヤ4の歯打ちによるショックが発生することがある。このようなショックについても、その切り換り時のエンジン2の駆動トルクを駆動トルクTQengに一致させる、あるいは近づけるようにすることで抑制が可能となる。例えば減速時燃料カットからの復帰時におけるエンジン2の被駆動状態から駆動状態への切り換り時にも、駆動トルクTQengに一致する、あるいは近づくようにエンジン2の駆動トルクを制御すれば、その切り換りに伴うリヤディファレンシャルギヤ4の歯打ちによるショックを的確に抑制することができる。
また、本実施の形態では、車両用制御装置10を駆動源としてエンジン2を備えた車両1に適用した例について説明したが、これに限らず、例えばモータを駆動源として備えるハイブリッド車両や電動車両にも適用可能である。
さらに、本実施の形態では、駆動状態と被駆動状態との切り換り時のエンジン2の駆動トルクTQengをディファレンシャルギヤ4での発生トルクとして推定し、その切り換り時のエンジン2の駆動トルクを推定した駆動トルクTQengに一致させる、あるいは近づけるようにしていた。ここで、エンジン2の駆動トルク、駆動輪5L、5Rからの入力トルクがそのままリヤディファレンシャルギヤ4に伝達されるとみなせる場合には、次のようにトルク制御を実施することで、その切り換り時のリヤディファレンシャルギヤ4の歯打ちによるショックを的確に抑制することが可能である。すなわち、駆動状態と被駆動状態との切り換り時の駆動輪5L、5Rからの入力トルクを推定するとともに、この推定した入力トルクに基づき、同切り換り時のエンジン2の駆動トルクを制御するトルク制御を実施する。具体的には、ECU100が推定した入力トルクにエンジン2の駆動トルクを一致させる、あるいは近づけるように、同切り換り時のエンジン2の駆動トルクを制御する。この場合、エンジン2の駆動トルクが推定した入力トルクとなったことで、駆動状態と被駆動状態との切り換りの開始を確認することができる。したがって、このような例では、エンジン2の駆動トルクが推定した入力トルクとなったときよりトルク制御を実施するようにすることができる。
以上説明したように、本発明に係る車両用制御装置は、駆動源の駆動状態と被駆動状態との切り換り時におけるディファレンシャルギヤの歯打ちによるショックの発生を的確に抑制することができ、駆動源の発生したトルクをディファレンシャルギヤを介して駆動輪に伝達する車両に用いられる車両用制御装置に有用である。