(第1の実施の形態)
以下、本発明の車両のトルク制御装置を具体化した第1の実施の形態を、図3〜図6を参照して詳細に説明する。
まず、図3を参照して、本実施の形態の適用される車両の駆動系の構成を説明する。なお、本実施の形態のトルク制御装置は、ベルト式の無段変速機を備えるとともに、その無段変速機の手前にリダクションギアが設けられたインプットリダクンション方式のギアトレーン構造を採用する車両に適用されている。
同図に示すように、本実施の形態のトルク制御装置の適用される車両の駆動系には、エンジン1が駆動源として設けられている。この車両では、エンジン1として、点火プラグの放電により燃料を点火する火花点火式のエンジンが採用されている。エンジン1には、オイルポンプやオルタネーター、A/Cコンプレッサー等の補機1aが設けられ、これら補機1aは、エンジン1の出力軸であるクランクシャフト2により駆動されている。
また、クランクシャフト2は、トルク増幅作用を有した流体継ぎ手であるトルクコンバーター3、及びエンジン1側から入力された回転を減速するリダクションギア4を介して無段変速機5に接続されている。無段変速機5は、エンジン側に設けられたドライブプーリー6と、駆動輪側に設けられたドリブンプーリー7との2つの可変径プーリーと、それらにそれぞれ巻き掛けられたベルト8とを備えている。そして無段変速機5は、両プーリー(6,7)のベルト巻き掛け半径を変更することで、変速比を連続的に変更するよう構成されている。
無段変速機5のドリブンプーリー7は、Def(ディファレンシャル)ドライブギア9及びDefリングギア10からなるギア対を介して、駆動輪11のドライブシャフト12に接続されている。また、ドライブシャフト12には、左右の駆動輪11の差動を許容するディファレンシャル13が設けられている。
なお、こうした車両では、トルクコンバーター3、リダクションギア4、無段変速機5、Defドライブギア9、Defリングギア10、ドライブシャフト12により、エンジン1、駆動輪11間の動力伝達を担う動力伝達系が構成されている。
こうした車両においてエンジン1は、電子制御ユニット14により制御されている。電子制御ユニット14には、アクセル操作量(アクセルペダルの踏み込み量)、エンジン回転速度、車速などの検出信号が入力されている。そして電子制御ユニット14は、それら検出信号から把握される車両の走行状況に応じて、燃料噴射制御、点火時期制御、吸入空気量制御などのエンジン制御を行っている。
電子制御ユニット14は、エンジン制御の一環として、車両の減速時にエンジン1への燃料供給を停止する燃料カットを行っている。また、電子制御ユニット14は、燃料カットへの移行に際して、エンジントルクを徐々に減少させるエンジントルクの漸減制御を行っている。本実施の形態では、エンジン1の点火時期を徐々に遅角して行き、エンジン1の運転を継続可能な限界まで点火時期が遅角された時点でエンジン1への燃料供給を停止することで、燃料カットへの移行時のエンジントルクの漸減を行うようにしている。ちなみに、本実施の形態では、エンジントルクが、本発明における「駆動源の出力トルク」に対応している。
図4に示すように、本実施の形態での燃料カット移行時におけるエンジントルクの漸減制御は、次の4つの段階に分けて行われる。すなわち、漸減制御は、エンジントルクの漸減のための準備を行う第1段階、エンジントルクの漸減の開始から駆動状態/被駆動状態の切り換わりの直前までの第2段階、同切り換わりの直前からその直後までの第3段階、及びその切り換わりの直後からエンジントルクの漸減の終了までの第4段階の4つの段階を通じて行われる。なお、駆動状態とは、エンジン1の出力で駆動輪11が回転される状態を、被駆動状態とは、駆動輪11の回転トクルでエンジン1のクランクシャフト2が回転される状態をそれぞれ指している。また、同図(a)は、このときのアクセル操作量の推移を、同図(b)は燃料カットフラグの推移を、同図(c)は、エンジントルクの推移をそれぞれ示している。
同図では、時刻t1から時刻t2までの期間が、漸減制御の第1段階となっている。時刻t1は、燃料カットの実施条件が成立した時点であり、時刻t2は、その時刻t1から規定のディレイ時間が経過した時点となっている。この期間には、エンジントルクの漸減を行うための準備が行われる。そうした準備には、出力トルクの漸減に備えたバルブタイミングの変更などが含まれる。なお、ディレイ時間には、準備を確実に完了可能な時間が設定されている。
また同図では、時刻t2から時刻t3までの期間が、漸減制御の第2段階となっている。時刻t3は、車両の動力伝達状態が駆動状態から被駆動状態へと切り換わる直前の時刻を指している。ここでは、上記切り換わりの直前を、同切り換わりが行われるときのエンジントルクの推定値である推定切換トルクTQconよりも規定の定数α分高いトルクまでエンジントルクが低下した時点と定義している。推定切換トルクTQconの推定ロジックについては後述する。また、定数αは、車両の個体差や経時変化に拘らず、上記切換時のエンジントルクが「TQcon±α」の範囲内に確実に収まるようにその値が設定されている。この第2段階には、一定の速度でエンジントルクの漸減が行われる。本実施の形態では、こうした第2段階を、動力伝達系の回転軸ねじり方向の振動についての固有周期fの整数倍の時間をかけて行うようにしている。
更に同図では、時刻t3から時刻t4までの期間が、漸減制御の第3段階となっている。時刻t4は、車両の動力伝達状態が駆動状態から被駆動状態へと切り換わった直後の時刻を指している。ここでは、上記切り換わりの直後を、上記推定切換トルクTQconよりも規定の定数α分低いトルクまでエンジントルクが低下した時点と定義している。この第3段階では、上記第2段階及び後述の第4段階よりも低い速度でエンジントルクの漸減が行われる。
また同図では、時刻t4から時刻t5までの期間が、漸減制御の第4段階となっている。時刻t5は、エンジントルクが漸減制御の終了時のエンジントルクまで低下した時点となっている。ここでは、点火時期の遅角により低下可能なエンジントルクの最小値を、漸減制御終了時のエンジントルクとしている。この第4段階には、一定の速度でエンジントルクの漸減が行われる。本実施の形態では、こうした第4段階を、動力伝達系の回転軸ねじり方向の振動についての固有周期fの整数倍の時間をかけて行うようにしている。
こうした本実施の形態では、漸減制御の第2段階及び第4段階が、すなわち漸減開始から上記切り換わりの直前までの期間、及び上記切り換わりの直後から漸減終了までの期間におけるエンジントルクの漸減がそれぞれ、上記固有周期fの整数倍の時間をかけて行われる。上述したように、駆動源から動力伝達系に伝達されるトルク(エンジントルク)の漸減期間を上記固有周期fの整数倍とすると、比較的高い速度でエンジントルクの漸減を行っても、エンジンの燃料カットへの移行に伴い発生する動力伝達系のねじり振動が、ひいては車両のしゃくりの発生が効果的に抑制されるようになる。
また本実施の形態では、漸減制御の第3段階、すなわち上記切り換わりの直前からその直後までの期間には、漸減制御の第2段階及び第4段階よりも低い速度でエンジントルクの漸減が行われる。そのため、駆動状態/被駆動状態の切り換わりの直前からその直後までの期間は、リダクションギア4の歯打ちによるショックを十分に抑制できるだけの低い速度でエンジントルクの漸減を行いつつも、それ以外の期間には、比較的高い速度でエンジントルクの漸減が行われるようになる。そのため、駆動状態/被駆動状態の切り換わりに伴うリダクションギア4の歯打ちによるショックを抑制しつつも、燃料カット移行時のエンジントルクの漸減期間の長期化が抑えられるようになる。
なお、こうした本実施の形態でのエンジン1の燃料カットへの移行は、図5に示す燃料カット移行制御ルーチンの処理を通じて行われる。同ルーチンの処理は、電子制御ユニット14により実行される。
本ルーチンの処理が開始されると、まずステップS100において、燃料カットの実施条件が成立しているか否かが判定される。本実施の形態では、アクセル操作量が「0」かつエンジン回転速度が一定値以上であることが、燃料カットの実施条件として設定されている。ここで燃料カットの実施条件が不成立であれば(S100:NO)、そのまま本ルーチンの処理が終了され、成立していれば(S100:YES)、ステップS101に処理が移行される。
ステップS101に処理が移行されると、そのステップS101において、エンジントルクの漸減制御を行うための準備が開始される。その後、上記ディレイ時間が経過すると(S102:YES)、処理がステップS103に移行される。ステップS103に処理が移行されると、そのステップS103において、上述の推定切換トルクTQconの算出が行われる。
推定切換トルクTQconが算出されると、続くステップS104において、漸減制御の第2段階におけるエンジントルクの漸減速度Vraが算出される。ここでの漸減速度Vraの算出は、下式(1)により行われる。下式(1)において「TQnow」は現在のエンジントルクを、「n」は規定の整数を、「f」は動力伝達系の回転軸ねじり方向の振動についての固有周期fを、それぞれ指している。
こうして漸減速度Vraが算出されると、続くステップS105において、その算出した漸減速度Vraでのエンジントルクの漸減が開始される。この漸減速度Vraでのエンジントルクの漸減は、エンジントルクTQnowが「TQcon+α」に減少されるまで継続される。なお、こうした漸減速度Vraでのエンジントルクの漸減が行われる期間が、上記漸減制御の第2段階となっている。
エンジントルクTQnowが「TQcon+α」まで減少されると(S106:YES)、ステップS107において、エンジントルクの漸減速度が低下される。このときの漸減速度は、後述する駆動状態/被駆動状態の切換時におけるリダクションギア4の歯打ちによるショックを確実に抑制可能な速度まで低下される。この低下された漸減速度でのエンジントルクの漸減は、エンジントルクTQnowが「TQcon−α」に低下されるまで継続される。なお、このときの低下された漸減速度によるエンジントルクの漸減が行われる期間が、上記漸減制御の第3段階となっている。
エンジントルクTQnowが「TQcon−α」まで低下されると(S108:YES)、続くステップS109において、漸減制御の第4段階におけるエンジントルクの漸減速度Vrbが算出される。ここでの漸減速度Vrbの算出は、下式(2)により行われる。下式(2)において「TQfin」は漸減制御終了時のエンジントルクを、「m」は規定の整数をそれぞれ指している。なお、本実施の形態では、漸減制御終了時のエンジントルクTQfinの値には、点火時期の遅角により低減可能なエンジントルクの最小値が設定されている。
こうして漸減速度Vrbが算出されると、続くステップS110において、その算出した漸減速度Vrbでのエンジントルクの漸減が開始される。この漸減速度Vrbでのエンジントルクの漸減は、エンジントルクTQnowが「TQfin」に減少されるまで継続される。なお、こうした漸減速度Vrbでのエンジントルクの漸減が行われる期間が、上記漸減制御の第4段階となっている。
エンジントルクTQnowが「TQfin」まで低下されると(S111:YES)、続くステップS112において、エンジントルクの漸減が終了される。そしてステップS113においてエンジン1への燃料供給が停止され、ステップS114において燃料カットフラグがオンにセットされた後、本ルーチンの処理が終了される。
次に、本実施の形態での推定切換トルクTQconの算出ロジックを説明する。
図6は、リダクションギア4を中心として車両の駆動系を模式化したモデルを示している。同図の「Iin」は、リダクションギア4のエンジン1側における駆動系のイナーシャーを、「Tin」は、リダクションギア4のエンジン1側のギア(ドライブギアGe)に入力されるトルクを、「αin」は、ドライブギアGeの角加速度を表している。また同図の「Iout」は、リダクションギア4の駆動輪11側における駆動系のイナーシャーを、「Tout」は、リダクションギア4の駆動輪11側のギア(ドリブンギアGt)に入力されるトルクを、「αout」は、ドリブンギアGtの角加速度を表している。こうしたモデルでのねじりの関係式は、下式(3)、(4)の通りとなる。なお、イナーシャーIin、Ioutは、リダクションギア4を中心とした等価慣性計算で求めることができる。
ここでトルクTinは、下式(5)にて表される。下式(5)において、「TQeng」は、エンジン1の発生トルクを、「TQac」は、A/Cコンプレッサーの駆動トルクを、「TQalt」は、オルタネーターの駆動トルクを、「TQop」は、オイルポンプの駆動トルクを、「FRcold」は、冷間時におけるフリクショントルクの増加分を示している。また「TRQIin」は、無段変速機5の変速時のドライブプーリー6の変速動作(ベルト巻き掛け半径の変更)に費やされるトルクを、「TRQIout」は、無段変速機5の変速時のドリブンプーリー7の変速動作(ベルト巻き掛け半径の変更)に費やされるトルクをそれぞれ示している。更に「KETT」は、無段変速機5の伝達効率を、「RATIO」は、無段変速機5の変速比をそれぞれ示している。なお、伝達効率KETTの値は、無段変速機5の伝達効率が一定であれば定数となるが、その伝達効率が変速比によって変化する場合には、その値は、変速比に応じた変数となる。
一方、トルクToutは、下式(6)にて表される。下式(6)において、「Fr/l」は、道路負荷(Road Load)を、「Fslope」は、路面の勾配により駆動輪11が受ける抗力を、「Rtire」は、駆動輪11の半径を、「ρdef」は、ディファレンシャル13のギア比をそれぞれ示している。
ここで、駆動状態から被駆動状態への切り換わり時には、リダクションギア4のドライブギアGe及びドリブンギアGtの歯面速度が等しくなる。リダクションギア4のギア比をρredとすると、このときのドライブギアGe及びドリブンギアGtの角加速度αin、αoutの関係は、下式(7)に示す通りとなり、この関係から下式(8)が得られる。なお、下式(8)は、トルクToutをイナーシャーIoutで除算した値と、トルクTinをイナーシャーIinで除算した値との比が、リダクションギア4の減速比ρredと一致することを示している。
そして、上式(5)及び(8)から、駆動状態から被駆動状態への切り換わり時のエンジントルクは、すなわち推定切換トルクTQconは、下式(9)に示す通りとなる。
以上の本実施の形態の車両のトルク制御装置によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本実施の形態では、エンジントルクの漸減の開始から駆動状態/被駆動状態の切り換わりの直前までの時間、及びその切り換わりの直後からエンジントルクの漸減の終了までの時間がそれぞれ、動力伝達系の回転軸ねじり方向の振動についての固有周期fの整数倍とされている。こうした場合、比較的高い速度で出力トルクの漸減を行っても、エンジンの燃料カットへの移行に伴い発生する動力伝達系のねじり振動を効果的に抑制することができる。したがって、本実施の形態によれば、燃料カットの移行に要する時間の長期化を抑えつつ、車両のしゃくりの発生を効果的に抑制することができる。
(2)本実施の形態では、上記切り換わりの直前からその直後までの期間におけるエンジンの漸減速度を、それ以外の期間におけるエンジントルクの漸減速度よりも低くしている。そのため、燃料カット移行時のエンジントルクの漸減期間の長期化を抑えつつ、駆動状態/被駆動状態の切り換わり時におけるリダクションギア4の歯打ちに起因したショックの発生を好適に抑制することができる。
(3)本実施の形態では、駆動状態/前記被駆動状態の切り換わり時のエンジントルク(推定切換トルクTQcon)を推定している。そして、その推定切換トルクTQconと漸減開始時のエンジントルクとの差、及びその推定切換トルクTQconと漸減終了時のエンジントルクTQfinとの差から、漸減制御の第2段階及び第4段階のエンジントルクの漸減速度Vra, Vrbをそれぞれ演算するようにしている。推定切換トルクTQconと漸減開始時のエンジントルクとの差は、漸減の開始から上記切り換わりの直前までの期間に低減されるエンジントルクの総量となる。したがって、動力伝達系の回転軸ねじり方向の振動についての固有周期fの整数倍の時間でそれらの差を割れば、車両のしゃくりを効果的に抑制するために必要な同期間のエンジントルクの漸減速度Vraを求めることができる。一方、推定切換トルクTQconと漸減終了時のエンジントルクとの差は、上記切り換わりの直後から漸減終了までの期間に低減されるエンジントルクの総量となる。したがって、動力伝達系の回転軸ねじり方向の振動についての固有周期fの整数倍の時間でそれらの差を割れば、車両のしゃくりを効果的に抑制するために必要な同期間のエンジントルクの漸減速度Vrbを求めることができる。そのため、本実施の形態によれば、燃料カット移行時の車両のしゃくりを的確に抑制できるように、各期間におけるエンジントルクの漸減速度Vra, Vrbを設定することができる。
(第2の実施の形態)
次に、本発明の車両のトルク制御装置を具体化した第2の実施の形態を、図7及び図8を併せ参照して詳細に説明する。なお、本実施の形態及び後述の第3の実施の形態にあって、上述の実施の形態と共通する構成については、同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
第1の実施の形態では、燃料カット移行時のエンジントルクの漸減制御における車両のしゃくりやリダクションギア4の歯打ちによるショックの抑制手法について説明した。なお、燃料カットからの復帰時においても、エンジン運転の再開に伴うトルク段差により、車両のしゃくりやリダクションギア4の歯打ちによるショックが発生することがあり、その抑制のため、燃料カット復帰時にエンジントルクの漸増制御を行うことがある。本実施の形態は、第1の実施の形態と同様の手法を、こうした燃料カット復帰時におけるエンジントルクの漸増制御に適用したものとなっている。
本実施の形態では、燃料カットからの復帰に際して、エンジン1の運転を継続可能な限界まで点火時期を遅角した状態でエンジン1の燃料供給を再開し、その後、徐々に点火時期の遅角量を減じて行くことで、エンジントルクの漸増を行っている。
図7に示すように、本実施の形態での燃料カット復帰時におけるエンジントルクの漸増制御は、次の4つの段階に分けて行われる。すなわち、漸増制御は、エンジントルクの漸増のための準備を行う第1段階、エンジントルクの漸増の開始から、被駆動状態から駆動状態への切り換わりの直前までの第2段階、同切り換わりの直前からその直後までの第3段階、及びその切り換わりの直後からエンジントルクの漸増の終了までの第4段階の4つの段階を通じて行われる。なお、同図(a)は、このときのアクセル操作量の推移を、同図(b)は燃料カットフラグの推移を、同図(c)は、エンジントルクの推移をそれぞれ示している。
同図では、時刻t1から時刻t2までの期間が、漸増制御の第1段階となっている。時刻t1は、燃料カットの復帰条件が成立した時点であり、時刻t2は、その時刻t1から規定のディレイ時間が経過した時点となっている。この期間には、エンジントルクの漸増を行うための準備が行われる。なお、ディレイ時間には、準備を確実に完了可能な時間が設定されている。
また同図では、時刻t2から時刻t3までの期間が、漸増制御の第2段階となっている。時刻t3は、車両の動力伝達状態が被駆動状態から駆動状態へと切り換わる直前の時刻を指している。ここでは、上記切り換わりの直前を、同切り換わりが行われるときのエンジントルクの推定値である推定切換トルクTQconよりも規定の定数α分低いトルクまでエンジントルクが増加した時点と定義している。この第2段階には、一定の速度でエンジントルクの漸増が行われる。本実施の形態では、こうした第2段階を、動力伝達系の回転軸ねじり方向の振動についての固有周期fの整数倍の時間をかけて行うようにしている。
更に同図では、時刻t3から時刻t4までの期間が、漸増制御の第3段階となっている。時刻t4は、車両の動力伝達状態が被駆動状態から駆動状態へと切り換わった直後の時刻を指している。ここでは、上記切り換わりの直後を、上記推定切換トルクTQconよりも規定の定数α分高いトルクまでエンジントルクが増加した時点と定義している。この第3段階では、上記第2段階及び後述の第4段階よりも低い速度でエンジントルクの漸増が行われる。
また同図では、時刻t4から時刻t5までの期間が、漸増制御の第4段階となっている。時刻t5は、エンジントルクが漸増制御の終了時のエンジントルクTQfinまで低下した時点となっている。漸増制御終了時のエンジントルクTQfinは、点火時期の遅角量が「0」となったときのエンジントルクを指している。この第4段階には、一定の速度でエンジントルクの漸増が行われる。本実施の形態では、こうした第4段階を、動力伝達系の回転軸ねじり方向の振動についての固有周期fの整数倍の時間をかけて行うようにしている。
こうした本実施の形態では、漸増制御の第2段階及び第4段階が、すなわち漸増の開始から上記切り換わりの直前までの期間、及び上記切り換わりの直後から漸増の終了までの期間におけるエンジントルクの漸増がそれぞれ、動力伝達系の回転軸ねじり方向の振動についての固有周期fの整数倍の時間をかけて行われる。上述したように、上記両期間のエンジントルクの漸増期間を上記固有周期fの整数倍とすると、比較的高い速度でエンジントルクの漸増を行っても、エンジン1の燃料カットからの復帰に伴い発生する動力伝達系のねじり振動が、ひいては車両のしゃくりの発生が効果的に抑制されるようになる。
また本実施の形態では、漸増制御の第3段階、すなわち上記切り換わりの直前からその直後までの期間には、漸増制御の第2段階及び第4段階よりも低い速度でエンジントルクの漸増が行われる。そのため、駆動状態/被駆動状態の切り換わりの直前からその直後までの期間は、リダクションギア4の歯打ちによるショックを十分に抑制できるだけの低い速度でエンジントルクの漸増を行いつつも、それ以外の期間には、比較的高い速度でエンジントルクの漸増が行われるようになる。そのため、駆動状態/被駆動状態の切り換わりに伴うリダクションギア4の歯打ちによるショックを抑制しつつも、燃料カット復帰時のエンジントルクの漸増期間の長期化が抑えられるようになる。
なお、こうした本実施の形態でのエンジン1の燃料カットからの復帰は、図8に示す燃料カット復帰制御ルーチンの処理を通じて行われる。同ルーチンの処理は、電子制御ユニット14により実行される。
本ルーチンの処理が開始されると、まずステップS200において、燃料カットの復帰条件が成立しているか否かが判定される。本実施の形態では、エンジン1の燃料カット中に、アクセルペダルが踏まれてアクセル操作量が「0」でなくなるか、エンジン回転速度が一定値を下回るかのいずれかとなったことを、燃料カットの復帰条件としている。ここで燃料カットの復帰条件が不成立であれば(S200:NO)、そのまま本ルーチンの処理が終了され、成立していれば(S200:YES)、ステップS201に処理が移行される。
ステップS201に処理が移行されると、そのステップS201において、エンジントルクの漸増制御を行うための準備が開始される。その後、規定のディレイ時間が経過すると(S202:YES)、処理がステップS203に移行される。そして、そのステップS203において、エンジン1の燃料供給が再開され、続くステップS204において、燃料カットフラグがオフにセットされる。なお、このときの燃料供給の再開は、エンジン1の運転を継続可能な限界まで点火時期を遅角した状態で行われる。
続いて、ステップS205において、推定切換トルクTQconが算出される。このときの推定切換トルクTQconの算出は、第1の実施の形態と同様に行われる。
推定切換トルクTQconが算出されると、続くステップS206において、漸増制御の第2段階におけるエンジントルクの漸増速度Viaが算出される。ここでの漸増速度Viaの算出は、下式(10)により行われる。下式(10)において「TQsta」は漸増制御開始時のエンジントルク、すなわち点火時期を限界まで遅角した状態のエンジントルクを、「TQnow」は現在のエンジントルクを、「n」は規定の整数を、「f」は動力伝達系の回転軸ねじり方向の固有周期fをそれぞれ指している。
こうして漸増速度Viaが算出されると、続くステップS207において、その算出した漸増速度Viaでのエンジントルクの漸増が開始される。この漸増速度Viaでのエンジントルクの漸増は、エンジントルクTQnowが「TQcon−α」に増加されるまで継続される。なお、こうした漸増速度Viaでのエンジントルクの漸増が行われる期間が、上記漸増制御の第2段階となっている。
エンジントルクTQnowが「TQcon−α」まで減少されると(S208:YES)、ステップS209において、エンジントルクの漸増速度が低下される。このときの漸増速度は、駆動状態/被駆動状態の切換時におけるリダクションギア4の歯打ちによるショックを確実に抑制可能な速度まで低下される。この低下された漸増速度でのエンジントルクの漸増は、エンジントルクTQnowが「TQcon+α」に増加されるまで継続される。なお、このときの低下された漸増速度によるエンジントルクの漸増が行われる期間が、上記漸増制御の第3段階となっている。
エンジントルクTQnowが「TQcon+α」まで増加されると(S210:YES)、続くステップS211において、漸増制御の第4段階におけるエンジントルクの漸増速度Vibが算出される。ここでの漸増速度Vibの算出は、下式(11)により行われる。下式(11)において「TQfin」は漸増制御終了時のエンジントルクを、「m」は規定の整数をそれぞれ指している。
こうして漸増速度Vibが算出されると、続くステップS212において、その算出した漸増速度Vibでのエンジントルクの漸増が開始される。この漸増速度Vibでのエンジントルクの漸増は、エンジントルクTQnowが「TQfin」に増加されるまで継続される。なお、こうした漸増速度Vibでのエンジントルクの漸増が行われる期間が、上記漸増制御の第4段階となっている。
エンジントルクTQnowが「TQfin」まで増加されると(S212:YES)、続くステップS213において、エンジントルクの漸増が終了される。そして、その終了と共に本ルーチンの処理が終了される。
以上の本実施の形態の車両のトルク制御装置によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本実施の形態では、エンジントルクの漸増の開始から駆動状態/被駆動状態の切り換わりの直前までの時間、及びその切り換わりの直後からエンジントルクの漸減の終了までの時間がそれぞれ、動力伝達系の回転軸ねじり方向の振動についての固有周期fの整数倍とされている。こうした場合、比較的高い速度でエンジントルクの漸増を行っても、エンジンの燃料カットへの移行に伴い発生する動力伝達系のねじり振動を効果的に抑制することができる。したがって、本実施の形態によれば、燃料カットからの復帰に要する時間の長期化を抑えつつ、車両のしゃくりの発生を効果的に抑制することができる。
(2)本実施の形態では、上記切り換わりの直前からその直後までの期間におけるエンジンの漸増速度を、それ以外の期間におけるエンジントルクの漸増速度よりも低くしている。そのため、燃料カット復帰時のエンジントルクの漸増期間の長期化を抑えつつ、駆動状態/被駆動状態の切り換わり時におけるリダクションギア4の歯打ちに起因したショックの発生を好適に抑制することができる。
(3)本実施の形態では、駆動状態/前記被駆動状態の切り換わり時のエンジントルク(推定切換トルクTQcon)を推定している。そして、その推定切換トルクTQconと漸増開始時のエンジントルクTQstaとの差、及びその推定切換トルクTQconと漸増終了時のエンジントルクTQfinとの差から、漸減制御の第2段階及び第4段階のエンジントルクの漸増速度Via, Vibをそれぞれ演算するようにしている。推定切換トルクTQconと漸増開始時のエンジントルクTQstaとの差は、漸増の開始から上記切り換わりの直前までの期間に増加されるエンジントルクの総量となる。したがって、動力伝達系の回転軸ねじり方向の振動についての固有周期fの整数倍の時間でそれらの差を割れば、車両のしゃくりを効果的に抑制するために必要な同期間のエンジントルクの漸増速度Viaを求めることができる。一方、推定切換トルクTQconと漸増終了時のエンジントルクTQfinとの差は、上記切り換わりの直後から漸増終了までの期間に増加されるエンジントルクの総量となる。したがって、動力伝達系の回転軸ねじり方向の振動についての固有周期fの整数倍の時間でそれらの差を割れば、車両のしゃくりを効果的に抑制するために必要な同期間のエンジントルクの漸増速度Vibを求めることができる。そのため、本実施の形態によれば、燃料カット復帰時の車両のしゃくりを的確に抑制できるように、各期間におけるエンジントルクの漸増速度Via, Vibを設定することができる。
(第3の実施の形態)
続いて、本発明の車両のトルク制御装置を具体化した第3の実施の形態を、図9を併せ参照して詳細に説明する。
上記実施の形態では、燃料カット移行時及びその復帰時にエンジントルクの漸減、漸増を行うことで、車両のしゃくりや歯打ちによるショックを抑制していた。エンジン及びモーターを有したハイブリッドシステムを駆動源として備えるハイブリッド車両でも、エンジンの燃料カットを行うことがある。こうしたハイブリッド車両では、エンジントルクを一定に維持したまま、モーターに回生発電を行わせることで、駆動源であるハイブリッドシステムの出力トルク、すなわちリダクションギアやドライブシャフト等からなる動力伝達系に対してハイブリッドシステム側から入力されるトルクを低減することができる。そこで、本実施の形態では、燃料カット移行時及びその復帰時の駆動源の出力トルクの漸減、漸増を、エンジントルクを維持したまま、モーターの回生発電に供されるトルクを変化させることで行うようにしている。
図9は、本実施の形態での燃料カット移行時の制御態様を示している。なお、同図(a)は、このときのアクセル操作量の推移を、同図(b)は、燃料カットフラグの推移を、同図(c)は、エンジントルク、モータートルク及びハイブリッドシステムの総トルクの推移をそれぞれ示している。ちなみに、回生発電中のモータートルクは、負の値となる。なお、ここでは簡単のため、単純に、エンジントルクとモータートルクとの和を、ハイブリッドシステムの総トルクとしている。
本実施の形態でも、燃料カット移行時の出力トルクの漸減制御は、第1〜第4の4つの段階に分けて行われる。なお、ここでの駆動状態とは、ハイブリッドシステムの出力で駆動輪が回転される状態を、被駆動状態とは、駆動輪の回転トクルでハイブリッドシステムの出力軸が回転される状態をそれぞれ指している。
同図では、時刻t1から時刻t2までの期間が、漸減制御の第1段階となっている。時刻t1は、燃料カットの実施条件が成立した時点であり、時刻t2は、その時刻t1から規定のディレイ時間が経過した時点となっている。この期間には、エンジントルクの漸減を行うための準備が行われる。なお、ディレイ時間には、準備を確実に完了可能な時間が設定されている。
また同図では、時刻t2から時刻t3までの期間が、漸減制御の第2段階となっている。時刻t3は、車両の動力伝達状態が駆動状態から被駆動状態へと切り換わる直前の時刻を指している。ここでは、上記切り換わりの直前を、同切り換わりが行われるときのハイブリッドシステムの総トルクの推定値である推定切換トルクTQconよりも規定の定数α分高いトルクまで総トルクが低下した時点と定義している。この第2段階には、エンジントルクを維持したまま、モータートルクを一定の速度で漸減して行くことで、ハイブリッドシステムの総トルクの漸減が行われる。本実施の形態では、こうした第2段階を、動力伝達系の回転軸ねじり方向の振動についての固有周期fの整数倍の時間をかけて行うようにしている。
更に同図では、時刻t3から時刻t4までの期間が、漸減制御の第3段階となっている。時刻t4は、車両の動力伝達状態が駆動状態から被駆動状態へと切り換わった直後の時刻を指している。ここでは、上記切り換わりの直後を、上記推定切換トルクTQconよりも規定の定数α分低いトルクまでハイブリッドシステムの総トルクが低下した時点と定義している。この第3段階でも、やはり、エンジントルクを維持したまま、モータートルクを漸減して行くことで、ハイブリッドシステムの総トルクの漸減が行われる。ただし、このときのモータートルクの漸減は、すなわちハイブリッドシステムの総トルクの漸減は、上記第2段階及び後述の第4段階よりも低い速度で行われる。
また同図では、時刻t4から時刻t5までの期間が、漸減制御の第4段階となっている。時刻t5は、ハイブリッドシステムの総トルクが漸減制御の終了時の値まで低下した時点となっている。なお、ここでは、ハイブリッドシステムの総トルクが「0」まで低下した時点で漸減制御を終了している。この第4段階にも、エンジントルクを維持したまま、モータートルクを一定の速度で漸減して行くことで、ハイブリッドシステムの総トルクの漸減が行われる。本実施の形態では、こうした第4段階を、動力伝達系の回転軸ねじり方向の振動についての固有周期fの整数倍の時間をかけて行うようにしている。
時刻t5において、ハイブリッドシステムの総トルクが「0」に減少されると、エンジンの燃料供給が停止され、これと同時にモーターの回生発電も停止される。以上により、エンジンの燃料カットへの移行が完了することになる。
こうした場合、燃料カット移行時のトルク漸減制御の第2段階及び第4段階が、すなわち漸減開始から上記切り換わりの直前までの期間、及び上記切り換わりの直後から漸減終了までの期間におけるハイブリッドシステムの総トルクの増減がそれぞれ、上記固有周期fの整数倍の時間をかけて行われる。上述したように、これら両段階におけるハイブリッドシステムの総トルクの漸減期間を上記固有周期fの整数倍とすると、比較的高い速度で漸減を行っても、エンジンの燃料カットへの移行に伴い発生する動力伝達系のねじり振動が、ひいては車両のしゃくりの発生が効果的に抑制されるようになる。
また本実施の形態では、漸減制御の第3段階、すなわち上記切り換わりの直前からその直後までの期間には、漸減制御の第2段階及び第4段階よりも低い速度でハイブリッドシステムの総トルクの漸減が行われる。そのため、駆動状態/被駆動状態の切り換わりの直前からその直後までの期間は、リダクションギアの歯打ちによるショックを十分に抑制できるだけの低い速度で総トルクの漸減を行いつつも、それ以外の期間には、比較的高い速度で総トルクの漸減が行われるようになる。そのため、駆動状態/被駆動状態の切り換わりに伴うリダクションギアの歯打ちによるショックを抑制しつつも、燃料カット移行時の総トルクの漸減期間の長期化が抑えられるようになる。
また、エンジンの燃料カットからの復帰時のハイブリッドシステムの総トルクの漸増も、これに準じた態様で行うことができる。この場合のハイブリッドシステムの総トルクの漸増制御は、次のように行われる。
燃料カット復帰条件が成立すると、まず漸増制御の第1段階として、燃料カット復帰の準備が行われる。その準備が完了すると、エンジンの燃料供給が再開される。またこれと同時に、その再開により発生するエンジントルクを相殺する負のモータートルクが発生されるようにモーターの回生発電が開始される。
その後、漸増制御の第2段階として、車両の動力伝達状態が被駆動状態から駆動状態へと切り換わる直前の状態となるまで、モータートルクの漸増によるハイブリッドシステムの総トルクの漸増が行われる。この第2段階は、動力伝達系の回転軸ねじり方向の振動についての固有周期fの整数倍の時間をかけて行われる。
続いて、漸増制御の第3段階として、車両の動力伝達状態が被駆動状態から駆動状態へと切り換わった直後の状態となるまで、モータートルクの漸増によるハイブリッドシステムの総トルクの漸増が行われる。このときの総トルクの漸増は、上記第2段階及び後述の第4段階よりも低い速度で行われる。
その後、漸増制御の第4段階として、ハイブリッドシステムの総トルクが漸増制御終了時の値となるまで、すなわちモータートルクが「0」に増加されるまで、モータートルクの漸増によるハイブリッドシステムの総トルクの漸増が行われる。この第4段階は、動力伝達系の回転軸ねじり方向の振動についての固有周期fの整数倍の時間をかけて行われる。
こうした場合、燃料カット復帰時のトルク漸減制御の第2段階及び第4段階が、すなわち漸増の開始から上記切り換わりの直前までの期間、及び上記切り換わりの直後から漸増の終了までの期間におけるハイブリッドシステムの総トルクの増減がそれぞれ、上記固有周期fの整数倍の時間をかけて行われる。上述したように、上記両期間のハイブリッドシステムの総トルクの漸増期間を上記固有周期fの整数倍とすると、比較的高い速度で漸減を行っても、エンジンの燃料カットへの移行に伴い発生する動力伝達系のねじり振動が、ひいては車両のしゃくりの発生が効果的に抑制されるようになる。
また、燃料カット復帰時のトルク漸増制御の第3段階、すなわち上記切り換わりの直前からその直後までの期間には、同漸増制御の第2段階及び第4段階よりも低い速度でハイブリッドシステムの総トルクの漸減が行われる。そのため、駆動状態/被駆動状態の切り換わりの直前からその直後までの期間は、リダクションギアの歯打ちによるショックを十分に抑制できるだけの低い速度で総トルクの漸減を行いつつも、それ以外の期間には、比較的高い速度で総トルクの漸減が行われるようになる。そのため、駆動状態/被駆動状態の切り換わりに伴うリダクションギアの歯打ちによるショックを抑制しつつも、燃料カット移行時の総トルクの漸減期間の長期化が抑えられるようになる。
なお、上記各実施の形態は以下のように変更して実施することもできる。
・上記実施の形態では、上式(9)から推定切換トルクTQconを、すなわち駆動状態/被駆動状態の切り換わり時のエンジントルクを求めていたが、その切り換わり時のエンジントルクを十分な精度で求められるのであれば、それ以外の算出ロジックを用いてその算出を行うようにしても良い。
・上記実施の形態では、アクセル操作量が「0」かつエンジン回転速度が一定値以上であることを燃料カットの実施条件とし、燃料カット中にアクセル操作量が「0」でなくなるか、エンジン回転速度が一定値未満となるかしたことを燃料カットの復帰条件としていた。これら実施/復帰条件は、これに限らず、適宜に変更しても良い。
・上記実施の形態では、駆動状態/被駆動状態の切り換わり時の駆動源の出力トルクを推定し、その推定結果から漸減/漸増制御の第2段階、第4段階の出力トルクの漸減/漸増速度を求めていた。上記切り換わり時の出力トルクが予め判っている場合には、漸減/漸増制御の第2段階、第4段階の出力トルクの漸減/漸増速度を予め定めておくようにしても良い。その場合でも、漸減/漸増制御の第2段階及び第4段階が、動力伝達系の回転軸ねじり方向の振動についての固有周期fの整数倍の時間をかけてそれぞれ行われるようになっていれば、燃料カット移行/復帰時のトルク漸減、漸増期間の長期化を抑えつつ、車両のしゃくりの発生を効果的に抑制することが可能である。
・第1及び第2の実施の形態では、点火時期の遅角量を変化させることでエンジントルクの漸減、漸増を行うようにしていた。こうしたエンジントルクの漸減、漸増を、他の方法で行うようにしても良い。例えば、燃料カット移行時/復帰時のエンジントルクの漸減/漸増を、エンジン1の吸入空気量を漸減/漸増することで行うことも可能である。また、ディーゼルエンジンのような燃料噴射量の制御によりエンジン出力を調整するエンジンでは、燃料噴射量を漸減/漸増することで、燃料カット移行時/復帰時のエンジントルクの漸減/漸増を行うことができる。
・駆動状態/被駆動状態の切り換わり時の駆動源の出力トルクを正確に求められるのであれば、漸減/漸増制御の第3段階における出力トルクの漸減/漸増速度を「0」とするように、すなわちこのときの出力トルクを一定に保持するようにしても良い。この場合にも、このときの出力トルクの保持時間が、駆動状態/被駆動状態の切り換わりに要する時間以上となっていれば、リダクションギアの歯打ちによるショックの発生を効果的に抑制することが可能である。
・第1の実施の形態では、漸減終了時のエンジントルクTQfinを、エンジン1の運転を持続可能な限界まで点火時期を遅角したときのエンジントルクとしていたが、その値は適宜変更しても良い。エンジントルクが「0」となるまで、その漸減を行うことが可能であれば、エンジントルクが「0」となった時点で漸減を終了するようにしても良い。また、限界まで点火時期を遅角する以前であっても、燃料供給の停止に伴うトルク段差がショックを生じさせない程度までエンジントルクが低下した時点で、エンジントルクの漸減を終了するようにしても良い。
・第2の実施の形態では、エンジン1の運転を持続可能な限界まで点火時期を遅角した状態でエンジン1の燃料供給を再開していた。尤も、限界まで点火時期を遅角せずとも、エンジン1の再稼動に伴うトルク段差がショックを生じさせない程度にエンジントルクが小さくされた状態で燃料供給を再開すれば、好適に燃料カットからの復帰を行うことが可能である。
・漸減/漸増制御に準備期間が不要な場合には、漸減/漸増制御の第1段階を割愛し、第2段階から漸減/漸増制御を開始するようにしても良い。
・駆動状態/被駆動状態の切り換わり時のリダクションギアの歯打ちによるショックが問題とならない場合には、漸減/漸増制御の第3段階を割愛し、第2段階、第4段階を連続して行うようにしても良い。この場合であれ、漸減/漸増制御の第2段階及び第4段階が、動力伝達系の回転軸ねじり方向の振動についての固有周期fの整数倍の時間をかけてそれぞれ行われるようになっていれば、燃料カット移行/復帰時のトルク漸減、漸増期間の長期化を抑えつつ、車両のしゃくりの発生を効果的に抑制することが可能である。
・上記実施の形態では、車両の減速時に行われる燃料カットの場合を説明したが、上記実施の形態におけるトルクの漸減/漸増制御は、それ以外の状況で行われるエンジンの燃料カット、例えばエンジンのオーバーレブを防止するために行われる燃料カットにも同様或いはそれに準じた態様で適用することができる。
・上記実施の形態では、無段変速機の手前にリダクションギアが設けられたインプットリダクンション方式のギアトレーン構造を採用する車両に本発明を適用した場合を説明したが、無段変速機の駆動輪側にリダクションギアが設けられた車両にも、本発明は同様に適用することができる。また、ベルト式以外の無段変速機や自動又は手動の有段変速機を変速機として採用する車両にも、本発明は同様に適用することができる。