JP2012159066A - 車両の駆動力制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】多くの工数を費やすことなく、再加速時に生じる駆動系の捩れ振動を容易にかつ適切に抑制できる車両の駆動力制御装置を提供する。
【解決手段】駆動力源の出力トルクを動力伝達軸を有する動力伝達機構を介して車輪に伝達する車両の駆動力制御装置において、惰力走行中もしくは減速走行中の前記車両を加速要求に応じて加速させる場合に、前記加速要求により増大される前記出力トルクが前記動力伝達軸に伝達され、その際に生じる前記動力伝達軸の捩れに起因して前記車両の前後加速度が変動することにより発生する振動の振動周期を算出し、その算出された振動周期を基に前記振動の振幅方向の極大値と極小値との差分が小さくなるように、前記加速要求により増大される前記出力トルクを制御するトルク制御手段(ステップS3,S5,S6,S13,S14,S17,S18,S20)を設ける。
【選択図】図1
【解決手段】駆動力源の出力トルクを動力伝達軸を有する動力伝達機構を介して車輪に伝達する車両の駆動力制御装置において、惰力走行中もしくは減速走行中の前記車両を加速要求に応じて加速させる場合に、前記加速要求により増大される前記出力トルクが前記動力伝達軸に伝達され、その際に生じる前記動力伝達軸の捩れに起因して前記車両の前後加速度が変動することにより発生する振動の振動周期を算出し、その算出された振動周期を基に前記振動の振幅方向の極大値と極小値との差分が小さくなるように、前記加速要求により増大される前記出力トルクを制御するトルク制御手段(ステップS3,S5,S6,S13,S14,S17,S18,S20)を設ける。
【選択図】図1
Description
この発明は、車両に発生させる駆動力を制御する制御装置に関し、特に、走行中の加速度の変動に起因するショックを低減するために駆動力源の出力を制御する車両の駆動力制御装置に関するものである。
例えば、惰力走行中あるいは減速走行中の車両を再度加速させる場合、エンジンやモータなどの駆動力源から駆動輪に至る駆動系統においては、車両を加速させるために出力される駆動力源の出力トルクが駆動系統のシャフトに伝達されると、その際にシャフトに捩れが発生する。そして、それに起因して車両に加速度変動が発生し、それが振動となって乗員にショックや違和感を与える場合がある。そこで、従来、駆動力源の出力トルクを制御して車両の駆動力を制御する駆動力制御において、上記のようないわゆる駆動系の捩れ振動によるショックを抑制するために駆動力源の出力トルクを低下させる制御が行われている。そのような駆動力制御の例が特許文献1,2に記載されている。特許文献1に記載されている車両の制御装置は、乗員に違和感を与えることなく車両を加速させることを目的として、アクセル開度の変化率を検出し、その検出されたアクセル開度の変化率に基づいて車両の目標加速度の変化率を設定し、そして、設定された目標加速度の変化率に基づいて車両の目標加速度を算出し、その算出された目標加速度に基づいて車両の駆動力を制御するように構成されている。
また、特許文献2に記載されている車両の駆動力制御装置は、燃料供給を停止しているコースト状態から燃料供給再開時にエンジンの出力を一時的に低下させて車両前後振動を低減する手段を備えており、その車両前後振動を低減する手段によるエンジンの出力制御が実行される際に、アクセル変化に対する目標駆動力の変化速度を制限するように構成されている。
上記の特許文献1,2に記載されているような駆動力制御は、車両を再加速させる際に、アクセル開度の変化率および目標加速度の変化率に基づいて目標加速度を求め、その目標加速度に基づいて車両の駆動力を制御することにより、あるいは、アクセル変化に対する目標駆動力の変化速度を制限するように制御することにより、上記のような車両の再加速時に生じる駆動系の捩れ振動を抑制することができる。
しかしながら、上記の特許文献1,2に記載されている駆動力制御では、目標加速度や目標駆動力等を求めるためにマップが設定されているが、そのマップを実際に設定する際に、事前に多くの工数や労力が必要となっていた。すなわち、上記の特許文献1,2に記載されている駆動力制御を実行する際に求められる目標加速度の変化率、あるいは目標駆動力、目標スロットル開度、目標エンジントルク等は、予め設定され内部メモリなどに記憶されたマップを基に算出されている。このような目標加速度や目標駆動力等を算出するためのマップは、通常、予め実験的もしくは経験的に求められた多数のデータを基に設定される。したがって、上記のような駆動力制御を適切に実行するためには、予めその制御に必要なマップを設定するために多くの工数を要していた。このように、上記の特許文献1,2に記載されているような駆動力制御を、事前に多くの工数や労力を費やすことなく、容易にかつ適切に実行するためには、未だ改良の余地があった。
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、マップの設定等のために事前に多くの工数を費やすことなく、車両の再加速時に生じる駆動系の捩れ振動を容易にかつ適切に抑制することができる車両の駆動力制御装置を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、駆動力源の出力トルクを動力伝達軸を有する動力伝達機構を介して車輪に伝達して駆動力を発生させる車両の駆動力制御装置において、惰力走行中もしくは減速走行中の前記車両を加速要求に応じて加速させる場合に、前記加速要求により増大される前記出力トルクが前記動力伝達軸に伝達され、その際に生じる前記動力伝達軸の捩れに起因して前記車両の前後加速度が変動することにより発生する振動の振動周期を算出する振動周期算出手段と、前記振動周期算出手段により算出された前記振動周期を基に前記振動の振幅方向の極大値と極小値との差分が小さくなるように、前記加速要求により増大される前記出力トルクを制御するトルク制御手段とを備えていることを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記トルク制御手段が、前記加速要求により増大される前記出力トルクが前記動力伝達軸に伝達される時点を始点として該出力トルクを制御する期間を、前記振動周期に基づいて少なくとも2つのフェーズに分けるともに、それら各フェーズにおける前記振動の振幅方向の極値同士の差分が小さくなるように、前記加速要求により増大される前記出力トルクを制御する手段を含むことを特徴とする制御装置である。
また、請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記加速増大要求により前記出力トルクを増大させる場合に、初期の前記出力トルクを予め定めた上限値以下に制限する初期トルク制限手段を備え、前記トルク制御手段が、前記各フェーズのうち前段のフェーズにおける前記極値と後段のフェーズにおける前記極値との差分が閾値として予め定めた所定値よりも大きい場合に、前記初期の出力トルクを小さくし、前記前段のフェーズにおける前記極値と前記後段のフェーズにおける前記極値との差分が前記所定値以下の場合に、前記後段のフェーズにおける前記極値と前記後段のフェーズよりも更に後段側のフェーズにおける前記極値との差分が小さくなるように、前記初期の出力トルクを大きくする手段を含むことを特徴とする制御装置である。
そして、請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記トルク制御手段が、大きくする前記初期の出力トルクが前記上限値を超える場合に、前記前段のフェーズにおける前記出力トルクの増大勾配と異なる第2増大勾配を前記後段のフェーズにおいて設定し、前記出力トルクを増大させる手段を含むことを特徴とする制御装置である。
請求項1の発明によれば、惰力走行中もしくは減速走行中の車両が再加速される際に、動力伝達機構の動力伝達軸に駆動力源の出力トルクが伝達されて動力伝達軸に捩れが生じる場合、その動力伝達軸の捩れに起因して発生する車両の前後加速度変動による振動の振動周期が算出される。すなわち、振動周期を基に前後加速度変動による振動の波形が推定される。そして、その振動の波形がなだらかになるように出力トルクが制御される。例えば出力トルクの増大量や増大速度(増大勾配)が設定される。そのため、再加速時に生じる動力伝達軸の捩れに起因する振動を適切に抑制することができ、再加速の際に乗員に違和感やショックを与えてしまうことを回避もしくは抑制することができる。また、上記の振動周期は、車両や動力伝達機構の諸元などから計算により求めることができ、したがって、その振動周期に基づいてリアルタイムで出力トルクの制御を実行することができるので、マップ等の設定のために事前に多くの工数を費やすことなく、この駆動力制御を容易に実行することができる。
また、請求項2の発明によれば、再加速時に発生する振動の振動周期に基づいて、駆動力源の出力トルクを制御する期間が、少なくとも2つのフェーズに分けられる。1振動周期で1サイクルの振動の波形が現れるので、振動周期を基にフェーズを分けることにより、いずれかのフェーズの中に振動の振幅方向の極値が現れるようにすることができる。そして、それら極値同士の差分が小さくなるように、すなわち振動の波形がなだらかになるように、出力トルクが制御される。そのため、再加速時に生じる動力伝達軸の捩れに起因する振動を適切に抑制することができる。
また、請求項3の発明によれば、再加速のために出力トルクを増大させる場合、初期の出力トルクが上限値以下に制限される。初期の出力トルクが大き過ぎると、再加速の際の加速度が急変し運転者に違和感を与えてしまう可能性があるが、このように初期の出力トルクの大きさが制限されることにより、運転者に違和感を与えてしまうことを回避することができる。そして、前段のフェーズにおける極値と後段のフェーズにおける極値との差分の大きさに応じて、すなわち推定される振動の波形に応じて、その波形がなだらかになるように、初期の出力トルクの大きさが上限値の範囲内で適宜に増減される。そのため、再加速時に生じる動力伝達軸の捩れに起因する振動を適切に抑制することができる。
そして、請求項4の発明によれば、加速度の変動による振動の波形をなだらかにするために初期の出力トルクが増減される場合であって、大きくされる初期の出力トルクが上限値を超える場合は、前段のフェーズにおいて設定された出力トルクの増大勾配とは異なる第2増大勾配が後段のフェーズにおいて設定される。そのため、初期の出力トルクを上限値以下に制限した状態で振動の波形をなだらかにするように制御することができ、加速度の急変による乗員への違和感の発生を回避しつつ、再加速時に生じる動力伝達軸の捩れに起因する振動を適切に抑制することができる。
つぎに、この発明を具体例に基づいて説明する。図7は、この発明で制御の対象とする車両Veの駆動系統および制御系統の構成を説明する図である。図7において、符号1はこの発明における駆動力源であり、この発明においては、例えばガソリンエンジンやLPGエンジンあるいはディーゼルエンジンなどの内燃機関、あるいは電動機、さらにはそれら内何基感と電動機とを併用するハイブリッド駆動装置などが用いられる。なお、以下の説明では、駆動力源1をエンジン(E/G)1と記す。
エンジン1の出力側には、変速機(T/M)2が連結されている。変速機2は、エンジン1の出力を変速して出力側に動力を伝達する動力伝達装置であり、例えば手動変速機や有段式の自動変速機、あるいはベルト式やトロイダル式の無段変速機などが用いられる。この具体例では、例えば図8に示すような有段式の自動変速機2が用いられている。
すなわち、自動変速機2は、エンジン1の出力トルクの回転速度を減速もしくは増速して複数の変速段を設定できるものであって、従来知られているものと同様の構成である。例えばこの図8に示す例では、2組のプラネタリギヤ、すなわちシングルピニオン型のプラネタリギヤ21およびラビニョ型のプラネタリギヤ22と、それら各プラネタリギヤ21,22の各回転要素同士の連結を接断するクラッチC1,C2、および各プラネタリギヤ21,22のいずれかの回転要素を固定するブレーキB1,B2,B3、ならびに一方向のみの動力伝達を許容するワンウェイクラッチF1などの締結装置とから構成されている。
自動変速機4の出力側には、プロペラシャフト3およびデファレンシャル4ならびにドライブシャフト5を介して車輪6が動力伝達可能に連結されている。したがって、この車両Veは、エンジン1の出力トルクが、変速機2およびプロペラシャフト3およびデファレンシャル4ならびにドライブシャフト5などから構成される動力伝達軸を有する動力伝達機構を介して、車輪6へ伝達されるようになっている。
そして、上記のエンジン1の運転状態、変速機2で変速状態等を制御するための電子制御装置(ECU)7が設けられている。この電子制御装置7は、一例として中央演算処理装置および記憶装置ならびに入出力インターフェースを主体とするマイクロコンピュータにより構成されている。
この電子制御装置7には、例えば、運転者によるアクセル操作量を検出するアクセル開度センサ8、車両Veの前後加速度を検出する加速度センサ9、エンジン1の出力軸回転数あるいは変速機2の入力軸回転数や出力軸回転数を検出する回転数センサ(図示せず)などの出力信号が、制御データとして入力されるようになっている。一方、電子制御装置7からは、上述したエンジン1の運転状態を制御するためにそのスロットル開度や燃料噴射量あるいは吸排気弁の開閉動作や点火時期などを変更する制御信号、および変速機2の変速比を変更する制御信号などを出力するように構成されている。
前述したように、惰力走行あるいは減速走行している車両Veを再加速させる場合、エンジン1から車輪6に至る駆動系統においては、動力伝達の際のシャフトの捩れに起因するいわゆる駆動系の捩れ振動が発生する場合がある。そのような駆動系の捩れ振動が発生すると、乗員にショックや違和感を与え、車両Veのドライバビリティが低下してしまう要因となる。そこで、この発明の車両の駆動力制御装置では、上記の図7に示すような駆動系統および制御系統の車両Veを対象にして、上記のようないわゆる駆動系の捩れ振動を容易にかつ適切に抑制するために、以下の制御を実行するように構成されている。
図1は、この発明の駆動力制御装置による駆動力制御の一例を説明するためのフローチャートであって、このフローチャートで示されるルーチンは、所定の短時間毎に繰り返し実行される。そして、車両Veが再加速されることの判定条件が成立することにより、このルーチンが開始される。再加速の判定条件とは、例えば、車両Veが惰力走行もしくは減速走行している状態で、運転者による所定量以上のアクセル操作が行われたことなどである。そのような再加速の判定条件が成立したことによりこのルーチンが開始されると、図1のフローチャートにおいて、先ず、差回転が算出される(ステップS1)。差回転とは、同期回転数すなわち変速機2の出力軸回転数にその時点の変速機2のギヤ比を掛けた値と、変速機2の入力軸回転数との回転数差である。
次いで、この駆動力制御での“フェーズ0”および“フェーズ1”におけるトルク制限値TT1が算出される(ステップS2)。ここでの“フェーズ”とは、図3のタイムチャートに示すように、この発明における駆動力制御において、エンジン1の出力トルク(エンジントルク)、言い換えると、駆動系統への入力トルクを制御する際のそれぞれの期間もしくは段階を示している。“フェーズ0”は、アクセル開度がONとなった後から駆動系統にエンジン1の出力トルクが伝達される時点Sまでの間のいわゆる空走期間を示している。
“フェーズ0”終了時点以降、すなわち駆動系統へのエンジン1の出力トルクの伝達開始時点S以降の各“フェーズ”は、車両Veの前後加速度の変動による振動の振動周期Tに基づいて設定される。“フェーズ1”は、前記の出力トルクの伝達開始時点Sから振動周期Tの4分の1(T/4)の期間を示している。また、“フェーズ2”は、前記の“フェーズ1”終了時点から振動周期Tの2分の1(T/2)の期間を示し、フェーズ3”は、前記の“フェーズ2”終了時点から振動周期Tの2分の1(T/2)の期間を示している。そして、フェーズ4”は、前記の“フェーズ3”終了時点以降の期間を示している。なお、前後加速度変動による振動の振動周期Tは、車両Veの構造・諸元に応じて決まる車両Ve固有の値であり、この制御の実行に先立って予め算出しておくことができる。あるいは、この制御と並行してリアルタイムで算出することもできる。
上記の“フェーズ0”および“フェーズ1”において設定されるトルク制限値TT1は、前述のステップS1で算出された差回転と、運転者のアクセル操作に基づくアクセル開度とから求められる。具体的には、図8に示す自動変速機2を用いた場合、ワンウェイクラッチF1が空転している状態での運動方程式から自動変速機2の入力回転数dωtと入力トルク(すなわちエンジン1の出力トルク)Ttとの関係式が求められる。すなわち、自動変速機2の各部のイナーシャトルクをIt(=Ii+Io),Ir,Iudr,Ids、各歯車対部の歯数比をρs,ρud,ρd、フリクショントルクをTfrc(=Tc2f+Tb1f+Tb2f+Tb3f)とすると、次の(1)式が成立する。
そして、この(1)式を誤差が許容できる範囲で簡略化するとともにそれを積分し、入力トルクTtを「Tt=TT1(一定)」として、ワンウェイクラッチF1の空転時間が所定値tlag_gd以内となるようにトルク制限値TT1が求められる。すなわち、上記の(1)式を誤差が許容できる範囲で簡略化し、差回転を(ωt1−ωt0)、Cを定数とすると、次の(2)式を満たすようなトルク制限値TT1が求められる。
なお、上記の(2)式を満たす範囲を図示すると、図4に示す目標トルクと差回転との関係図においてハッチングで示す範囲となる。
トルク制限値TT1が算出されると、エンジン1の出力トルクをトルク制限値TT1から徐々に増大させる際の増大勾配(増大速度)である第1スイープ勾配TTswが求められる(ステップS3)。この第1スイープ勾配TTswは、アクセル開度から決まる目標トルクTT_tgtとトルク制限値TT1との差分を振動周期Tの2分の1(T/2)で除算することにより算出される。すなわち、「TTsw=(TT_tgt−TT1)/(T/2)」として算出される。したがって、“フェーズ0”および“フェーズ1”においてトルク制限値TT1まで増大された出力トルクが、“フェーズ2”の期間内でアクセル開度から決まる目標トルクTT_tgtまで増大されるように、その増大の際の増大勾配が第1スイープ勾配TTswとして設定される。なお、このステップS3で求められる第1スイープ勾配TTswの初期値は0に設定されている。
上記のようにして求められた第1スイープ勾配TTswが、所定値a以下であるか否か、すなわち、「TTsw≦a」が成立するか否かが判断される(ステップS4)。ここでの所定値aは、エンジン1の出力性能上の制約から決められる上限値である。そして、第1スイープ勾配TTswが所定値a以下であることにより、このステップS4で肯定的に判断された場合は、ステップS5へ進み、上記の各ステップで求められたトルク制限値TT1および第1スイープ勾配TTswを基に、車両Veの前後加速度Gc,Gd,Geがそれぞれ算出される。前後加速度Gc,Gd,Geは、車両Veの前後加速度が振動的に変動する際に、その振動の振幅方向の極大値もしくは極小値となる点として推定される前後加速度の値であり、具体的には、以下のような各運動方程式に基づいて算出される。
先ず、この振動系(振動モデル)を、例えば図5に示すようなドライブシャフト5に捩れが生じる2自由度の軸−フライホイール系と見なし、図5に示すように、エンジン1および自動変速機2ならびにデファレンシャル4を1つのフライホイールと見なした質量体(すなわちドライブシャフト5よりもエンジン1側の部分)の慣性モーメントをI1、回転角をθ1、同期回転数を(dθ1/dt)(0)とし、車体および車輪6を1つのフライホイールと見なした質量体(すなわちドライブシャフト5よりも車輪6側)の慣性モーメントをI2、回転角をθ2とし、ドライブシャフト5の軸トルクをTds、捩れ角をθ、弾性係数をκ、減衰係数をcとすると、次の運動方程式が導出される。
I1・(d2θ1/dt2)+c・(dθ/dt)+κ・θ=Tds
I1・(d2θ2/dt2)−c・(dθ/dt)−κ・θ=0
θ=θ1−θ2
d2θ/dt2=(d2θ1/dt2)−(d2θ2/dt2)
I1・(d2θ1/dt2)+c・(dθ/dt)+κ・θ=Tds
I1・(d2θ2/dt2)−c・(dθ/dt)−κ・θ=0
θ=θ1−θ2
d2θ/dt2=(d2θ1/dt2)−(d2θ2/dt2)
上記の各運動方程式において、車輪6の回転加速度d2θ2/dt2が車両Veの前後加速度Gに相当するので、この加速度d2θ2/dt2について上記の運動方程式を解くと、以下の(3),(4),(5)式が得られ、これらの式から、軸トルクTdsと回転加速度d2θ2/dt2との関係、すなわち、入力トルク(すなわちエンジンの出力トルク)Ttと前後加速度Gとの関係が求められる。
なお、上記の(3),(4),(5)式中で、「A」および「B」は、以下の(6),(7)式によりそれぞれ算出される係数である。
また、上記の(3)〜(7)式中の変数は、それぞれ、
d2θ2/dt2:車輪6の回転加速度
(車輪6の径を乗算して車両の前後加速度Gに換算される)
θ :ドライブシャフト5の捩れ角(“フェーズ1”での初期値は0)
dθ/dt :ドライブシャフト5の捩れ角速度(“フェーズ1”での初期値は0)
τ :出力トルクの伝達開始時点S以降の各“フェーズ”開始時点からの時間
(“フェーズ1”では「τ=t」)
(“フェーズ2”では「τ=t−(T/2)」)
(“フェーズ3”では「τ=t−(3/4)・T」)
(“フェーズ4”では「τ=t−(5/4)・T」)
Tds_st :各“フェーズ”開始時のドライブシャフト5のトルク
α :出力トルクのスイープアップ時のドライブシャフト5のトルク換算値
ωd :固有振動数(=2π/振動周期T)
ωn :減衰がない場合の固有振動数(={1/(1−ζ2)1/2}・ωd)
ζ :減衰定数
dθ0/dt :ドライブシャフト5の捩れ角速度dθ/dtの各“フェーズ”での初期値
θ0 :ドライブシャフト5の捩れ角θの各“フェーズ”での初期値
である。
d2θ2/dt2:車輪6の回転加速度
(車輪6の径を乗算して車両の前後加速度Gに換算される)
θ :ドライブシャフト5の捩れ角(“フェーズ1”での初期値は0)
dθ/dt :ドライブシャフト5の捩れ角速度(“フェーズ1”での初期値は0)
τ :出力トルクの伝達開始時点S以降の各“フェーズ”開始時点からの時間
(“フェーズ1”では「τ=t」)
(“フェーズ2”では「τ=t−(T/2)」)
(“フェーズ3”では「τ=t−(3/4)・T」)
(“フェーズ4”では「τ=t−(5/4)・T」)
Tds_st :各“フェーズ”開始時のドライブシャフト5のトルク
α :出力トルクのスイープアップ時のドライブシャフト5のトルク換算値
ωd :固有振動数(=2π/振動周期T)
ωn :減衰がない場合の固有振動数(={1/(1−ζ2)1/2}・ωd)
ζ :減衰定数
dθ0/dt :ドライブシャフト5の捩れ角速度dθ/dtの各“フェーズ”での初期値
θ0 :ドライブシャフト5の捩れ角θの各“フェーズ”での初期値
である。
したがってこのステップS5では、上記のように導出される各関係式に基づいて、前後加速度Gc,Gd,Geがそれぞれ算出される。すなわち、図3のタイムチャートで、振動の振幅方向の極大値もしくは極小値として推定されるC点,D点,E点における車両Veの前後加速度G(Gc,Gd,Ge)がそれぞれ算出される。
前後加速度Gc,Gd,Geが求められると、前後加速度Gcと前後加速度Gdとの差分が所定値b以下であるか否か、すなわち、「(Gc−Gd)≦b」が成立するか否かが判断される(ステップS6)。ここでの所定値bは、例えば0に近い小さな数値であり、図3のタイムチャートで示す前後加速度のC点とD点との間の振動の波形が、乗員にショックや違和感を与えない程度になだらかであるか否かを判断するために設定される閾値である。
前後加速度Gcと前後加速度Gdとの差分が所定値bよりも大きいことにより、このステップS6で否定的に判断された場合は、ステップS7へ進み、トルク制限値TT1が所定値cだけ低下させられて再設定される。すなわち、“フェーズ0”および“フェーズ1”において増大される初期の出力トルクの上限値が低くされて、その初期の出力トルクが小さくされる。そしてその後、前述のステップS3へ戻り、従前の制御が繰り返し実行される。
このように、前後加速度Gcと前後加速度Gdとの差分が所定値bよりも大きい場合、すなわち、振動の波形が大きく乗員にショックや違和感を与える可能性があると判断された場合には、トルク制限値TT1が低下され、初期の出力トルクが小さくされる。初期の出力トルクが大き過ぎると、再加速の際の前後加速度が急変し運転者や乗員に違和感やショックを与えてしまう可能性があるが、上記のように初期の出力トルクの大きさが制限されることにより、この前後加速度変動による振動を抑制し、違和感やショックの発生を防止することができる。
一方、第1スイープ勾配TTswが所定値aよりも大きいことにより、前述のステップS4で否定的に判断された場合には、ステップS8へ進み、第1スイープ勾配TTswが所定値aに設定される。すなわち、第1スイープ勾配TTswが、エンジン1の出力性能上の制約から決められる上限値に設定される。また、トルク制限値TT1が、アクセル開度から決まる目標トルクTT_tgtから、第1スイープ勾配TTswと振動周期Tの2分の1(T/2)とを乗じた値を引いた値に再設定される(ステップS9)。すなわち、「TT1={TT_tgt−TTsw・(T/2)}」として算出される。
上記のステップS9でトルク制限値TT1が再設定されると、そのトルク制限値TT1が所定値d以下であるか否か、すなわち、「TT1≦d」が成立するか否かが判断される(ステップS10)。前述のように、トルク制限値TT1は、この駆動力制御の“フェーズ0”および“フェーズ1”において増大される初期の出力トルクの上限値であり、その初期の出力トルクが過大になると、車両Veの加速度も大きくなり、いわゆる飛び出し感のような違和感を乗員に与えてしまう場合がある。そのため、初期の出力トルクは、乗員に違和感を与えることがない程度に低く抑制する必要がある。したがって、ここでの所定値dは、初期の出力トルクが大き過ぎることによるいわゆる飛び出し感を防止するために設定される初期の出力トルクの上限値である。
上記のステップS9で再設定されたトルク制限値TT1が所定値d以下であることにより、このステップS10で肯定的に判断された場合は、ステップS11へ進み、上記のステップS9で再設定されたトルク制限値TT1および第1スイープ勾配TTswを基に、車両Veの前後加速度Gc,Gd,Geがそれぞれ算出される。これら前後加速度Gc,Gd,Geは、前述のステップS5において前後加速度Gc,Gd,Geを算出する場合と同様の方法で算出することができる。
上記のステップS11で前後加速度Gc,Gd,Geが求められると、前後加速度Gcと前後加速度Gdとの差分が所定値eよりも小さいか否か、すなわち、「(Gc−Gd)<e」が成立するか否かが判断される(ステップS12)。また、前述のステップS6で、前後加速度Gcと前後加速度Gdとの差分が所定値b以下であることにより肯定的に判断された場合も、このステップS12へ進み、同様に、前後加速度Gcと前後加速度Gdとの差分が所定値eよりも小さいか否かが判断される。ここでの所定値dは、例えば0であり、図3のタイムチャートで示す前後加速度のC点とD点との間の位置関係を判断するため、具体的には、“フェーズ2における”前後加速度のC点が極大点となっているか否かを判断するために設定される閾値である。
前後加速度Gcと前後加速度Gdとの差分が所定値eよりも小さいことにより、このステップS12で肯定的に判断された場合は、ステップS13へ進み、前後加速度Gdと前後加速度Geとの差分が所定値b以下であるか否か、すなわち、「(Gd−Ge)≦b」が成立するか否かが判断される。ここでの所定値bは、前述のステップS6と同様に、例えば0に近い小さな数値であり、したがってこのステップS13は、図3のタイムチャートで示すD点とE点との間の振動の波形が、乗員にショックや違和感を与えない程度になだらかであるか否かを判断する制御ステップである。
前後加速度Gdと前後加速度Geとの差分が所定値b以下であることにより、このステップS13で肯定的に判断された場合は、ステップS14へ進み、上記の各ステップで求めたトルク制限値TT1および第1スイープ勾配TTswに基づいて、エンジン1の出力トルクが制御される。すなわち、トルク制限値TT1および第1スイープ勾配TTswに基づいて、エンジン1の出力を制御するアクチュエータに対して制御信号が出力される。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
これに対して、前後加速度Gdと前後加速度Geとの差分が所定値bよりも大きいことにより、ステップS13で否定的に判断された場合には、ステップS15へ進み、トルク制限値TT1が所定値fだけ増大させられて再設定される。すなわち、“フェーズ0”および“フェーズ1”において増大される初期の出力トルクの上限値が高くされて、その初期の出力トルクが大きくされる。
このように、再加速のために出力トルクを増大させる場合、前述のステップS6,S7の制御のように、初期の出力トルクが上限値(所定値b)以下に制限される。そして、前後加速度の前段の“フェーズ2”における極値と後段の“フェーズ3”における極値との差分(すなわち「Gc−Gd」)の大きさに応じて、言い換えると、推定される振動の波形に応じて、その波形がなだらかになるように、初期の出力トルクの大きさが上限値(所定値b)の範囲内で適宜に増減される。そのため、再加速時に生じるドライブシャフト5の捩れに起因する振動を適切に抑制することができる。
上記のステップS15でトルク制限値TT1が再設定されると、そのトルク制限値TT1が所定値d以下であるか否か、すなわち、「TT1≦d」が成立するか否かが判断される(ステップS16)。ここでの所定値dは、前述のステップS10と同様に、初期の出力トルクが大き過ぎることによるいわゆる飛び出し感を防止するために設定される初期の出力トルクの上限値である。
上記のステップS15で再設定されたトルク制限値TT1が所定値d以下であることにより、このステップS16で肯定的に判断された場合は、ステップS17へ進み、上記のステップS15で再設定されたトルク制限値TT1を基に、第1スイープ勾配TTswおよび車両Veの前後加速度Gd,Geがそれぞれ再度算出される。これら第1スイープ勾配TTswおよび前後加速度Gd,Geは、前述した各ステップにおいて第1スイープ勾配TTswおよび前後加速度Gc,Gd,Geを算出する場合と同様の方法で算出することができる。
上記のステップS17で第1スイープ勾配TTswおよび前後加速度Gd,Geが求められると、前後加速度Gdと前後加速度Geとの差分が所定値b以下であるか否か、すなわち、「(Gd−Ge)≦b」が成立するか否かが判断される(ステップS18)。ここでの所定値bは、前述のステップS6およびステップS13と同様に、例えば0に近い小さな数値であり、したがってこのステップS18でも、前述ステップS13と同様に、図3のタイムチャートで示すD点とE点との間の振動の波形が、乗員にショックや違和感を与えない程度になだらかであるか否かが判断される。
上記のステップS17で求められた前後加速度Gdと前後加速度Geとの差分が所定値b以下であることにより、このステップS18で肯定的に判断された場合は、ステップS14へ進み、同様に、上記の各ステップで求めたトルク制限値TT1および第1スイープ勾配TTswに基づいて、エンジン1の出力トルクが制御される。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
これに対して、上記のステップS17で求められた前後加速度Gdと前後加速度Geとの差分が所定値bよりも大きいことにより、ステップS18で否定的に判断された場合には、前述のステップS15へ戻り、従前の制御が繰り返し実行される。
一方、前述のステップS15で再設定されたトルク制限値TT1が所定値dよりも大きいことにより、ステップS16で否定的に判断された場合には、ステップS19へ進み、トルク制限値TT1が所定値dに設定される。すなわち、初期の出力トルクが大き過ぎることによるいわゆる飛び出し感を防止するための上限値として設定された所定値dにより、トルク制限値TT1がその上限値で固定される。また、前述のステップS9で再設定されたトルク制限値TT1が所定値dよりも大きいことにより、前述のステップS10で否定的に判断された場合も、このステップS19へ進み、同様に、トルク制限値TT1が所定値dに設定される。
そして、上記の各ステップで求められた第1スイープ勾配TTswが、“フェーズ2”において出力トルクを増大させる際の増大勾配として設定されるとともに、“フェーズ3”において出力トルクを増大させる際の増大勾配として、第1スイープ勾配TTswとは異なる第2スイープ勾配TTsw2が算出されて設定される(ステップS20)。すなわち、前述のステップS15で、所定値fだけ増大させられて再設定されるトルク制限値TT1が、あるいは、前述のステップS9で第1スイープ勾配TTswに応じて再設定されるトルク制限値TT1が、上限値である所定値dを超える場合に、前段の“フェーズ2”における第1スイープ勾配TTswと異なる第2スイープ勾配TTsw2が、後段の“フェーズ3”において設定される。
上記のステップS20における制御内容を、図2のフローチャートにより、より具体的に説明する。ステップS19で、トルク制限値TT1が上限値である所定値dに固定されて設定されると、先ず、“フェーズ2”においてエンジン1の出力トルクをトルク制限値TT1から徐々に増大させる際の増大勾配(増大速度)である第1スイープ勾配TTswが設定される(ステップS20-1)。この第1スイープ勾配TTswは、前述のステップS3と同様にして、すなわち、「TTsw=(TT_tgt−TT1)/(T/2)」として求めることができる。
次いで、その第1スイープ勾配TTswが所定値a以下であるか否か、すなわち、「TTsw≦a」が成立するか否かが判断される(ステップS20-2)。ここでの所定値aは、前述のステップS4と同様、エンジン1の出力性能上の制約から決められる上限値である。
第1スイープ勾配TTswが所定値a以下であることにより、このステップS20-2で肯定的に判断された場合は、ステップS20-3へ進み、“フェーズ3”において出力トルクを徐々に増大させる際の増大勾配(増大速度)である第2スイープ勾配TTsw2が求められる。この第2スイープ勾配TTsw2は、アクセル開度から決まる目標トルクTT_tgtと、“フェーズ2”において増大させられた分の出力トルクとの差分を振動周期Tの2分の1(T/2)で除算することにより算出される。すなわち、「TTsw2={TT_tgt−TTsw・(T/2)}/(T/2)」として算出される。
これに対して、第1スイープ勾配TTswが所定値aよりも大きいことにより、ステップS20-2で否定的に判断された場合には、ステップS20-4へ進み、第1スイープ勾配TTswが所定値aに設定される。すなわち、第1スイープ勾配TTswが、エンジン1の出力性能上の制約から決められる上限値に設定される。そしてその後、ステップS20-3へ進み、上記と同様に、“フェーズ3”における第2スイープ勾配TTsw2が求められる。なお、このステップS20-3で求められる第2スイープ勾配TTsw2の初期値は0に設定されている。
上記のようにして“フェーズ3”における第2スイープ勾配TTsw2が求められると、車両Veの前後加速度Gd,Geがそれぞれ再度算出される(ステップS20-5)。これら前後加速度Gd,Geは、前述したステップS5,S11,S17等において前後加速度Gc,Gd,Geを算出する場合と同様の方法で算出することができる。
上記のステップS20-5で前後加速度Gd,Geが求められると、前後加速度Gdと前後加速度Geとの差分が所定値b以下であるか否か、すなわち、「(Gd−Ge)≦b」が成立するか否かが判断される(ステップS20-6)。ここでの所定値bは、前述のステップS6,S13,S18等と同様に、例えば0に近い小さな数値であり、したがってこのステップS20-6でも、前述の各S6,S13,S18と同様に、図3のタイムチャートで示すD点とE点との間の振動の波形が、乗員にショックや違和感を与えない程度になだらかであるか否かが判断される。
上記のステップS20-5で求められた前後加速度Gdと前後加速度Geとの差分が所定値b以下であることにより、このステップS20-6で肯定的に判断された場合は、前述のステップS14へ進み、同様に、上記の各ステップで求めたトルク制限値TT1および第1スイープ勾配TTswならびに第2スイープ勾配TTsw2に基づいて、エンジン1の出力トルクが制御される。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
これに対して、上記のステップS20-5で求められた前後加速度Gdと前後加速度Geとの差分が所定値bよりも大きいことにより、このステップS20-6で否定的に判断された場合には、ステップS20-7へ進み、第1スイープ勾配TTswが所定値gだけ低下させられて再設定される。すなわち、“フェーズ2”において出力トルクが徐々に増大される際の増大勾配(増大速度)が緩やかに(遅く)なるように設定される。そしてその後、前述のステップS20-3へ戻り、従前の制御が繰り返し実行される。したがって、上記のステップS20-6で、上記のステップS20-5で求められた前後加速度Gdと前後加速度Geとの差分が所定値b以下になるまで、すなわち、図3のタイムチャートで示すD点とE点との間の振動の波形が、乗員にショックや違和感を与えない程度になだらかになるまで、上記のステップS20-3およびステップS20-5ないしS20-7における制御が繰り返し実行される。
このように、車両Veの前後加速度の変動による振動の波形をなだらかにするために初期の出力トルクすなわちトルク制限値TT1が増減される場合であって、特にそのトルク制限値TT1が上限値(上記の具体例では所定値d)を超えてしまうような場合は、前段の“フェーズ2”において設定された第1スイープ勾配TTswとは異なる第2スイープ勾配TTsw2が、後段の“フェーズ3”において設定される。そのため、初期の出力トルクを上限値以下に制限した状態で振動の波形をなだらかにするように制御することができ、前後加速度の急変による乗員への違和感やショックの発生を回避しつつ、再加速時に生じるドライブシャフト5の捩れに起因する振動を適切に抑制することができる。
なお、上記の図2のフローチャートでサブルーチンとして示したステップS20の制御は、例えば、図6に示すようなマップを用いて実行することもできる。すなわち、上記のように、“フェーズ2”および“フェーズ2”においてエンジン1の出力トルクを増大させる際の第1スイープ勾配TTswおよび第2スイープ勾配TTsw2が、車両Veの前後加速度変動は小さくなるように、すなわち前後加速度変動による振動の波形がなだらかになるように、予めシミュレーションにより、アクセル開度から決まる目標トルクTT_tgtをパラメータとする制御マップが設定される。そして、その制御マップに基づいて、“フェーズ2”における第1スイープ勾配TTsw、および“フェーズ2”における第2スイープ勾配TTsw2が求められる。このようにマップを用いて制御を行うことにより、この発明における駆動力制御を実行する際の電子制御装置7に対する演算負荷を低減することができる。
以上のように、この発明に係る制御装置によれば、惰力走行中もしくは減速走行中の車両Veが再加速される際に、例えば車両Veの動力伝達機構のドライブシャフト5にエンジン1の出力トルクが伝達されてドライブシャフト5に捩れが生じる場合、そのドライブシャフト5の捩れに起因して発生する車両Veの前後加速度変動による振動の振動周期Tが算出される。すなわち、振動周期Tを基に前後加速度変動による振動の波形が推定される。そして、その振動の波形がなだらかになるように出力トルクが制御される。
具体的には、再加速時に発生する振動の振動周期Tに基づいて、エンジン1の出力トルクを制御する期間が、例えば“フェーズ1”から“フェーズ4”の段階に分けられる。1つの振動周期Tで1サイクルの振動の波形が現れるので、このように振動周期Tを基に“フェーズ”を分けることにより、いずれかの“フェーズ”の中に(上記の具体例では、“フェーズ2”および“フェーズ3”)、振動の振幅方向の極値が現れるようにすることができる。そして、それら極値同士の差分が小さくなるように、すなわち振動の波形がなだらかになるように、出力トルクが制御される。より具体的には、振動の波形がなだらかになるように、出力トルクを増大させる際のトルク制限値TT1や第1スイープ勾配TTswあるいは第2スイープ勾配TTsw2が設定される。
そのため、再加速時に生じるドライブシャフト5の捩れに起因する振動を適切に抑制することができる。その結果、再加速の際に乗員に違和感やショックを与えてしまうことを回避もしくは抑制することができ、車両Veのドライバビリティを向上させることができる。また、上記の振動周期Tは、車両Veや動力伝達機構の諸元などから予めもしくは別に計算により求めることができる。したがって、その振動周期Tに基づいてリアルタイムで出力トルクの制御を実行することができるので、マップ等の設定のために事前に多くの工数を費やすことなく、この発明に係る駆動力制御を容易に実行することができる。
ここで、上述した具体例とこの発明との関係を簡単に説明すると、上述したステップS3,S5,S6,S13,S14,S17,S18,S20の機能的手段が、この発明のトルク制御手段に相当し、ステップS6,S7,S10,S15,S16,S19の機能的手段が、この発明の初期トルク制限手段に相当する。
1…エンジン(駆動力源)、 2…変速機、 3…プロペラシャフト、 4…デファレンシャル、 5…ドライブシャフト、 6…車輪、 7…電子制御装置、 8…アクセル開度センサ、 9…加速度センサ、 Ve…車両。
Claims (4)
- 駆動力源の出力トルクを動力伝達軸を有する動力伝達機構を介して車輪に伝達して駆動力を発生させる車両の駆動力制御装置において、
惰力走行中もしくは減速走行中の前記車両を加速要求に応じて加速させる場合に、前記加速要求により増大される前記出力トルクが前記動力伝達軸に伝達され、その際に生じる前記動力伝達軸の捩れに起因して前記車両の前後加速度が変動することにより発生する振動の振動周期を算出する振動周期算出手段と、
前記振動周期算出手段により算出された前記振動周期を基に前記振動の振幅方向の極大値と極小値との差分が小さくなるように、前記加速要求により増大される前記出力トルクを制御するトルク制御手段と
を備えていることを特徴とする車両の駆動力制御装置。 - 前記トルク制御手段は、前記加速要求により増大される前記出力トルクが前記動力伝達軸に伝達される時点を始点として該出力トルクを制御する期間を、前記振動周期に基づいて少なくとも2つのフェーズに分けるともに、それら各フェーズにおける前記振動の振幅方向の極値同士の差分が小さくなるように、前記加速要求により増大される前記出力トルクを制御する手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の車両の駆動力制御装置。
- 前記加速増大要求により前記出力トルクを増大させる場合に、初期の前記出力トルクを予め定めた上限値以下に制限する初期トルク制限手段を備え、
前記トルク制御手段は、前記各フェーズのうち前段のフェーズにおける前記極値と後段のフェーズにおける前記極値との差分が閾値として予め定めた所定値よりも大きい場合に、前記初期の出力トルクを小さくし、前記前段のフェーズにおける前記極値と前記後段のフェーズにおける前記極値との差分が前記所定値以下の場合に、前記後段のフェーズにおける前記極値と前記後段のフェーズよりも更に後段側のフェーズにおける前記極値との差分が小さくなるように、前記初期の出力トルクを大きくする手段を含む
ことを特徴とする請求項2に記載の車両の駆動力制御装置。 - 前記トルク制御手段は、大きくする前記初期の出力トルクが前記上限値を超える場合に、前記前段のフェーズにおける前記出力トルクの増大勾配と異なる第2増大勾配を前記後段のフェーズにおいて設定し、前記出力トルクを増大させる手段を含む
ことを特徴とする請求項3に記載の車両の駆動力制御装置。
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-
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