JP5760283B2 - ポリスルホン組成物および成形体 - Google Patents
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Description
ポリスルホンは他の樹脂と比べても難燃性に優れた材料であるが、近年、航空機用部品、鉄道車両部品、電気・電子部品に対してより高い難燃性が要求されるようになっており、ポリスルホンにも更に高い難燃性が必要となっている。
しかし、リン化合物には赤燐やトリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート等の毒性が強いものが多く、ハロゲン含有化合物同様に廃材の処理が困難な場合がある。また、燃焼時にホスフィンガスの発生も懸念されており、安全性が十分ではない。
通常、ポリスルホンは300℃以上で成形加工する場合が多い。しかし、水酸化アルミニウムの熱分解温度は200℃であるため、ポリスルホンに難燃剤として水酸化アルミニウムを添加すると、成形前に水酸化アルミニウムが分解してガスが発生してしまうため、使用が難しい。そこで、ポリスルホンに添加する難燃剤として、熱分解温度が350℃〜400℃であり、熱安定性の高い水酸化マグネシウムが検討されている。しかし、水酸化マグネシウムは難燃性付与効果が従来の難燃剤と比較して小さいため、ポリスルホンに水酸化マグネシウムを多量に配合する必要がある。水酸化マグネシウムを多量に配合したポリスルホンは成形加工性や成形体の機械特性が低下するという問題があった。
本発明のポリスルホン組成物において、前記水酸化マグネシウムの数平均粒子径が、1μm未満であることが好ましい。
本発明のポリスルホン組成物において、前記水酸化マグネシウムの含有量が、前記ポリスルホン100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下であることも好ましい。
(1)−Ph1−SO2−Ph2−O−
(式中、Ph1及びPh2−は、それぞれ独立に、フェニレン基を表し、前記フェニレン基中の水素原子は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。)
このような場合においては、前記ポリスルホンが、これを構成する全繰返し単位の合計量に対して、前記一般式(1)で表される繰返し単位を50モル%以上有することが好ましい。
本発明の成形体は、前記いずれかの本発明のポリスルホン組成物を用いて得られたことを特徴とする。
本発明のポリスルホン組成物は、ポリスルホンと、数平均粒子径1μm以下の水酸化マグネシウムとを含有し、前記水酸化マグネシウムの含有量が、前記ポリスルホン100質量部に対して、0.5質量部以上10質量部以下であることを特徴とする。
(式中、Ph1及びPh2は、それぞれ独立に、フェニレン基を表し;前記フェニレン基中の水素原子は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。)
(式中、Ph3及びPh4は、それぞれ独立に、フェニレン基を表し;Rは、アルキリデン基、酸素原子又は硫黄原子を表し;前記フェニレン基中の水素原子は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。)
(式中、Ph5は、フェニレン基を表し;nは、1〜3の整数を表し;前記フェニレン基にある水素原子は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子で置換されていてもよく;nが2以上である場合、複数存在するPh5は、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
前記フェニレン基中の水素原子を置換していてもよいアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基及びn−デシル基が挙げられ、その炭素数は、1〜10であることが好ましい。
前記フェニレン基中の水素原子を置換していてもよいアリール基の例としては、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基が挙げられ、その炭素数は、6〜20であることが好ましい。
前記フェニレン基中の水素原子がこれらの基で置換されている場合、その数は、前記フェニレン基毎に、それぞれ独立に、2個以下であることが好ましく、1個であることがより好ましい。
例えば、繰返し単位(1)を有するポリスルホンは、ジハロゲノスルホン化合物として下記一般式(4)で表される化合物(以下、「化合物(4)」ということがある。)を用い、ジヒドロキシ化合物として下記一般式(5)で表される化合物(以下、「化合物(5)」ということがある。)を用いることにより、製造することができる。
また、繰返し単位(1)と繰返し単位(2)とを有するポリスルホンは、ジハロゲノスルホン化合物として化合物(4)を用い、ジヒドロキシ化合物として下記一般式(6)で表される化合物(以下、「化合物(6)」ということがある。)を用いることにより、製造することができる。
また、繰返し単位(1)と繰返し単位(3)とを有するポリスルホンは、ジハロゲノスルホン化合物として化合物(4)を用い、ジヒドロキシ化合物として下記一般式(7)で表される化合物(以下、「化合物(7)」ということがある。)を用いることにより、製造することができる。
(式中、X1は及びX2は、それぞれ独立に、ハロゲン原子を表し;Ph1及びPh2は、前記と同義である。)
(式中、Ph1及びPh2は、前記と同義である。)
(式中、Ph3、Ph4及びRは、前記と同義である。)
(式中、Ph5及びnは、前記と同義である。)
ポリスルホンを製造する重縮合の溶媒としては、ジメチルスルホキシド、1−メチル−2−ピロリドン、スルホラン(1,1−ジオキソチラン)、1,3-ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、ジフェニルスルホン等の有機極性溶媒が好ましく用いられる。
水酸化マグネシウムの表面処理としては、亜鉛化合物および/またはホウ素化合物からなる被覆層で被覆する方法や、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤または脂肪酸等により表面処理する方法が挙げられる。
水酸化マグネシウムの表面を亜鉛化合物および/またはホウ素化合物からなる被覆層で被覆する方法としては、例えば、水に水酸化マグネシウムを分散させておき、これに亜鉛化合物および/またはホウ素化合物を加えて撹拌し、濾過後乾燥する湿式法等が挙げられる。
水酸化マグネシウムの表面を、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤または脂肪酸等により処理する方法としては、例えば、シラン溶液を水酸化マグネシウムに噴霧および/または滴下して撹拌し、これを乾燥する乾式法等が挙げられる。
なお、本発明において、水酸化マグネシウムが表面処理されている場合、水酸化マグネシウムの含有量とは、表面処理層を含んだ水酸化マグネシウムの含有量を示す。
水酸化マグネシウムの数平均粒子径が1μmを超えると、ポリスルホン中での分散性が悪く、また、表面積が小さくなるので、難燃性の効果が少なくなる。なお、水酸化マグネシウムの数平均粒子径の下限は特に限定されないが、分散のしやすさの理由により、数平均粒子径を10nm以上とすることが好ましい。
ここで、「数平均粒子径」とは、水酸化マグネシウムの走査型電子顕微鏡による外観観察において、測定個数100個以上で水酸化マグネシウム粒子の直径(長径と短径の平均値)を測定し、その算術平均で得られた値を示すものである。また、水酸化マグネシウムの粒子は、一次粒子であっても二次粒子であっても、これらの混合であってもよい。なお、本発明において、粒子径とは、一次粒子の粒子径を示す。
水酸化マグネシウムの比表面積が3m2/g以上であることにより、難燃性の効果が向上する。なお、水酸化マグネシウムの比表面積の上限は特に限定されないが、分散のしやすさの理由により、比表面積数を100m2/g以下とすることが好ましい。
ここで、「比表面積」とは、株式会社島津製作所製メリティックス・ジェミニ2360を用いてBET法(粉体粒子表面に吸着占有面積の判った分子を液体窒素温度(77K)で吸着させ、その吸着量から測定試料の比表面積を求める方法)により測定した値を示す。
繊維状無機充填材の例としては、ガラス繊維;パン系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維;シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維等のセラミック繊維;及びステンレス繊維等の金属繊維が挙げられる。また、チタン酸カリウムウイスカー、チタン酸バリウムウイスカー、ウォラストナイトウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、窒化ケイ素ウイスカー、炭化ケイ素ウイスカー等のウイスカーも挙げられる。
繊維状有機充填材の例としては、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が挙げられる。
板状無機充填材の例としては、タルク、マイカ、グラファイト、ウォラストナイト、ガラスフレーク、硫酸バリウム及び炭酸カルシウムが挙げられる。マイカは、白雲母、金雲母、フッ素金雲母、四ケイ素雲母のいずれであってもよい。
粒状無機充填材の例としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、ガラスビーズ、ガラスバルーン、窒化ホウ素、炭化ケイ素及び炭酸カルシウムが挙げられる。
ポリスルホン組成物における充填材の含有量は、ポリスルホン100質量部に対して、好ましくは0質量部以上100質量部以下である。
ポリスルホン組成物における水酸化マグネシウム以外の配合剤の含有量は、ポリスルホン100質量部に対して、好ましくは0質量部以上5質量部以下である。
ポリスルホン組成物におけるポリスルホン以外の樹脂の含有量は、ポリスルホン100質量部に対して、好ましくは0質量部以上35質量部以下、より好ましくは0質量部以上20質量部以下である。
本発明のポリスルホン組成物を用いて成形体とする際の成形法としては、溶融成形法が好ましく、その例としては、射出成形法、Tダイ法やインフレーション法等の押出成形法、圧縮成形法、ブロー成形法、真空成形法及びプレス成形が挙げられる。中でも射出成形法が好ましい。
以下において、実施例1は参考例1と、実施例5は参考例5とする。
〔ポリスルホン〕
ポリスルホンとして、住友化学株式会社製の「スミカエクセルPES4100G」(還元粘度0.48dL/g)を用いた。ポリスルホンの還元粘度は、次の方法により測定した。
ポリスルホン約1gをN,N−ジメチルホルムアミドに溶解させて、その容量を1dLとし、この溶液の粘度(η)を、オストワルド型粘度管を用いて、25℃で測定した。また、溶媒であるN,N−ジメチルホルムアミドの粘度(η0)を、オストワルド型粘度管を用いて、25℃で測定した。
溶液の粘度(η)と前記溶媒の粘度(η0)から、比粘性率((η−η0)/η0)を求め、この比粘性率を、前記溶液の濃度(約1g/dL)で割ることにより、ポリスルホンの還元粘度(dL/g)を求めた。
水酸化マグネシウムとして、次のものを用いた。
(1)サンプル1:堺化学工業株式会社製の「MGZ−1」(数平均粒子径0.8μm、比表面積8m2/g)。
(2)サンプル2:堺化学工業株式会社製の「MGZ−3」(数平均粒子径0.1μm、比表面積21m2/g)。
(3)サンプル3:タテホ化学工業株式会社製の「エコーマグZ−10」(数平均粒子径1.0μm、比表面積3m2/g)
水酸化マグネシウムの数平均粒子径および比表面積は、次の方法により測定した。
水酸化マグネシウムの走査型電子顕微鏡による外観観察において、測定個数100個以上で水酸化マグネシウム粒子の直径(長径と短径の平均値)を測定し、その算術平均で得られた値を数平均粒子径とした。
株式会社島津製作所製メリティックス・ジェミニ2360を用いてBET法(粉体粒子表面に吸着占有面積の判った分子を液体窒素温度(77K)で吸着させ、その吸着量から測定試料の比表面積を求める方法)により比表面積を測定した
ポリスルホン100質量部に対して、表1に示す種類及び量の水酸化マグネシウムを配合し、ヘンシェルミキサーでドライブレンドした。この混合物を二軸押出機(池貝鉄工株式会社製、PCM−30型)を用いて、シリンダー温度340℃で造粒し、ペレット状のポリスルホン組成物を得た。
実施例1〜5および比較例1〜3の各ポリスルホン組成物を成形して得られる成形体(試験片)について、以下の方法により難燃性、曲げ弾性率、耐衝撃性の評価を行った。
ポリスルホン組成物を、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、PS−20E5ASE)を用いて、シリンダー温度370℃、金型温度150℃で、100mm×100mm×1mmの試験片に成形した。この試験片に、コーンカロリーメーター(株式会社東洋精機製作所製 CONE III)を用いて、ISO5660に準拠した発熱量試験を行い、発熱速度(Heat Release Rate)を輻射熱条件50kW/m2で測定した。総発熱量(MJ/m2)、最高発熱速度(kW/m2)を表1に示す。総発熱量(MJ/m2)および最高発熱速度(kW/m2)が小さいほど、難燃性が高いことを示す。
ポリスルホン組成物を、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、ES−400型)を用いて、シリンダー温度370℃、金型温度150℃で、127mm×12.7mm×6.4mmの試験片に成形した。得られた試験片をASTM D790に準拠して、曲げ弾性率(GPa)を測定した。結果を表1に示す。
ポリスルホン組成物を、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、ES−400型)を用いて、シリンダー温度370℃、金型温度150℃で、127mm×12.7mm×6.4mmの試験片に成形した。この試験片を2等分し、ASTM D−256に従ってアイゾット衝撃強度を測定した。結果を表1に示す。
また、水酸化マグネシウムの数平均粒径が1μm以下である実施例1〜5のポリスルホン組成物より得られた成形体(試験片)は曲げ弾性率が向上していた。
中でも、数平均粒径が0.2μm以下の水酸化マグネシウムを5.0質量部以上10質量部以下含有する実施例3および実施例4のポリスルホン組成物より得られた成形体(試験片)は、最高発熱速度を抑制する効果が大きく優れた難燃性を有し、曲げ弾性率(機械特性)も高く、特に良好な特性を示した。
これに対し、水酸化マグネシウムの配合量が少ない比較例2では、最高発熱速度を抑制する効果が得られず、難燃性が低くなっていた。また、水酸化マグネシウムの配合量が過多である比較例3では、最高発熱速度を抑制する効果は得られるが、曲げ弾性率およびアイゾット衝撃強度が低下しており、機械特性が低くなっていた。
Claims (6)
- ポリスルホンと、数平均粒子径1μm以下の水酸化マグネシウムとを含有し、前記水酸化マグネシウムの含有量が、前記ポリスルホン100質量部に対して、0.5質量部以上10質量部以下であり、前記水酸化マグネシウムの比表面積が、20m 2 /g以上であることを特徴とするポリスルホン組成物。
- 前記水酸化マグネシウムの数平均粒子径が、1μm未満であることを特徴とする請求項1に記載のポリスルホン組成物。
- 前記水酸化マグネシウムの含有量が、前記ポリスルホン100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリスルホン組成物。
- 前記ポリスルホンが、下記一般式(1)で表される繰返し単位を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリスルホン組成物。
(1)−Ph1−SO2−Ph2−O−
(式中、Ph1及びPh2−は、それぞれ独立に、フェニレン基を表し、前記フェニレン基中の水素原子は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。) - 前記ポリスルホンが、これを構成する全繰返し単位の合計量に対して、前記一般式(1)で表される繰返し単位を50モル%以上有することを特徴とする請求項4に記載のポリスルホン組成物。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリスルホン組成物を用いて得られたことを特徴とする成形体。
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