JP5759684B2 - クレーンの巻上げギヤを制御するためのクレーン制御器 - Google Patents
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Description
DIN(ドイツ工業規格) EN 13001−2及びDIN EN 14985によれば、巻上げギヤの荷重測定軸における最大のオーバーシュート量が保証される場合には、回転するブームクレーンに使用される鉄製の構造物を低減することができる。巻上げギヤの半径に依存する最大許容巻上げ力は、地面からの荷物の持上げ時における動的オーバーシュートによってピーク値を越える可能性がある。このような最大オーバーシュートを保証するために、自動巻上げシステムを採用することができる。
以下では、自動巻き上げシステムの実施形態1に使用されるクレーンモデルについて述べる。図2は、港湾用の移動型クレーンの完成構造を示す。質量mlを有する荷物は、荷持取上げ手段を介してクレーンによって持ち上げられて、全長lrを有するロープを介して巻上げ機に接続される。上記ロープは、上記荷持取上げ手段から、ブーム頭部及びタワーのそれぞれに設けられた屈曲プーリを経て屈曲して配置されている。ロープは、ブーム頭部において巻上げ機に向けて直接屈曲されるのではなく、ブーム頭部からタワーに向かって屈曲された後に、ブーム頭部に戻ってそれからタワーを経て巻上げ機へと向かう点に注意すべきである(図2参照)。全体のロープ長さは式(1)で表される。
ここで示される自動巻上げシステムは、個別の事象(状態)を有し且つ荷物の持上がりを検出可能な有限状態機械に基づいている。荷物が持ち上げられると直ぐに、巻上げ速度が、予め設定された値に減じられて、これにより、動的に変化する巻上げ力の最大オーバーシュートが保証されることとなる。一旦、荷物が地面から十分に持ち上げられた状態になると、自動巻き上げシステムによって、巻上げギヤ速度の制限が解除される。さらに、自動巻上げシステムは、荷物のセットダウン(荷下ろし)を検出したときにも同様に巻上げギヤの速度を減じる。巻上げギアはまた、そのセットダウンに引き続いて解放(制限解除)されなければならない。
このブロックにおいては、地面から荷物を持ち上げる場合における最大許容巻上げ速度vupが計算される。この速度は、そのときに測定された巻上げ力Fl、最大許容巻上げ力mmax、及び全バネ剛性ctotalに依存している。その計算のために、荷物が地面から持ち上がった後の荷物の巻上げ動作が、一定の巻上げ運動と、これに重畳的に加わる振動とからなるものと仮定される。その振動は、非減衰のバネ−質量系システムによって記述される。これにより、上記測定された巻上げ力は式(5)にて表される。
このブロックにおいては、上記対応する所望の速度が、独立した別個の事象(状態)を有する有限状態機械によって、その時の状態に基づいて選択される。ここで、有限状態機械は図4に示される。各状態への移行及び各状態の動作を以下に述べる。個々の変数は、表1にまとめて示す。
この項で説明する計算は、上記各事象(状態)とは別に独立して行われる。以下において、測定された荷物質量mlは、動的な巻上げ力を無視して、荷重測定軸にて測定された、フックに掛けられた荷物質量(例えばml=Fl/g)であると理解される。
これは、そのときに測定された巻上げ力の時間微分値として求まる。
これは、測定された荷物質量と、測定信号の最新の最小値(以下では、mo,upとして示される)との差の絶対値である。加えて、mo,upは、有限状態機械において移行状態2が過ぎた後に更新される(mo,up=ml)。これは、荷物が持ち上げられた後に荷物が地面から上昇完了したことが検出されたときに対応するケースである。
これは、測定された荷物質量と、測定信号の最新の最大値(以下では、mo,downとして示される)との差の絶対値である。加えて、mo,downは、有限状態機械において移行状態6が過ぎた後に更新される(mo,down=ml)。これは、荷物がセットダウンされた後に巻上げギヤが再び解放(制限解除)されたときに対応するケースである。
これは、荷物の持上げの検出が可能なように、Δmupが上回らなければならない閾値である。この閾値は、各クレーンタイプ及び測定信号の最新の最小値mo,upに依存している。
これは、荷物のセットダウンの検出が可能なように、Δmdownが下回らなければならない閾値である。この閾値は、各クレーンタイプ及び測定信号の最新の最大値mo,downに依存している。
これは、荷物の持上げの検出が可能なように、Fl′が上回らなければならない閾値である。この閾値は、各クレーンタイプ、全バネ剛性ctotal、荷重測定軸における許容オーバーシュートp、及び、比率ml/mmax(mmaxは、半径に依存する最大許容巻上げ力)に依存している。
状態I(巻上げギヤの解放)
この状態では、巻上げギヤは解放(制限解除)されて通常の方法で作動される。この状態では、上記システムは、初期化(クレーンの始動)の後に始動する。
Δl=0
状態Iにあるときの動作及び計算
この状態では手動レバーが解放されるので、
vdes=vhl
となる。
荷物が上昇していることが検出された後に、上記システムはこの状態になる。この状態に移行した後、l0及びm0がlrel及びmlでもって初期化される。lrelは、巻上げ機の角度の相対値であってメートルに換算される値であり、mlは、そのときに計測された荷物の質量である。
上記システムがこの状態になると直ぐに、各時間ステップにおいて、l0に対して巻き上げられたロープ長さ、及び、上昇のために理論的に必要なロープ長さΔlraiseの計算が実行される。
このケースでは、手段レバーの速度が許容範囲外にあり、
vdes=vup
となる。
このケースでは、手動レバーの速度が許容範囲内にあり、
vdes=vhl
となる。
荷物のセットダウン(荷下ろし)が検出されると直ぐに、上記システムはこの状態になる。この状態への移行後に、l0がlrelでもって初期化される。
上記システムがこの状態になると直ぐに、各時間ステップにおいて、l0に対して巻き上げられたロープ長さの計算が実行される。
この状態では、制御信号の計算上、2つのケースを区別する必要がある。現時点における手動レバー速度vhl、及び、セットダウン時における最大許容巻上げギヤ速度vdownが、これらのケースを区別するために役立つ。負のvは持上げを表し、正のvは下降を表す点に注意しなくてはならない。2つのケースは、以下の通りである。
このケースでは、手段レバーの速度が許容範囲外にあり、
vdes=vdown
となる。
このケースでは、手動レバーの速度が許容範囲内にあり、
vdes=vhl
となる。
現時点で測定された巻上げ速度vhgは、以下のように定義される点に注意すべきである。すなわち、負のvhgは、巻上げ機が持上げ動作していることを意味する。正のvhgは、巻上げ機が下降動作していることを意味する。
「巻上げギヤの解放」状態において、地面からの荷物の持上げが検出されると直ぐに作動する。以下の事象が、この移行を起こさせる。
l0=lrel
m0=ml
が実行される。
荷物持上げ時に巻上げ機が下降動作に入ると直ぐにこの移行状態になる。そして、相対巻上げロープ長さΔlは、再度完全に解かれることとなる。こうして上記システムは、荷物の持上げが再度検出されるまで初期状態になる。以下の事象が、この移行を起こさせる。
m0=0
が実行される。
荷物が地面から上昇して持ち上がったことが検出されると直ぐにこの移行状態になる。以下の事象が、この移行を起こさせる。
この移行が終了したときに、
m0=0
が実行される。
「持上げ」状態において、荷物のセットダウンが検出されるか、又は、測定荷重が荷物取上げ手段の空重量を下回ったことが検出されると直ぐに、この移行状態になる。以下の事象が、この移行を起こさせる。
l0=lrel
m0=0
が実行される。
「巻上げギヤの解放」状態において、荷物の地面からの持ち上がりが検出されると直ぐに、この移行状態になる。以下の事象が、この移行を起こさせる。
l0=lrel
m0=ml
が実行される。
「セットダウン」状態において、相対巻上げロープ長さΔlが、(移行状態7の終了前に)再度初期状態になったことが検出されると直ぐに、この移行状態になる。以下の事象が、この移行を起こさせる。
この移行が終了したときに、m0,downが、Δmdownの計算のために、現時点で測定された荷物質量mlに設定される(3.2.1を参照)。
「巻上げギヤの解放」状態において、荷物のセットダウンが検出されるか、又は、測定荷重が荷物取上げ手段の空重量を下回ったことが検出されると直ぐに、この移行状態になる。以下の事象が、この移行を起こさせる。
l0=lrel
が実行される。
測定の結果が、図5及び図6の例によって示されている。この例では、60tの荷物がロープでもって持ち上げられた結果を示している。いずれの図においても、本発明の実施形態1に係る自動巻上げシステムを有する場合と有さない場合とを示している。
以下に、本発明の実施形態2に係るクレーン制御器により実行される制御方法を示す。この方法では、作動液の圧縮性及び荷物持上げ系の弾性に基づく、巻上げギヤ、巻上げロープ及び荷物を含むシステムの動的振動を考慮に入れるようにしている。
上記実施形態では、クレーンの巻上げ機は、油圧により作動するロータリモータによって駆動される。巻上げ機の動的モデル及び制御則は、以下の項において導かれる。
巻上げ力は、荷物の移動により直接的に影響を受けるので、荷物の動的な動きを考慮に入れる必要がある。図2に示すように、質量mlを有する荷物は、フックに取り付けられて、クレーンによってロープ長さlrに応じて上昇又は下降可能である。ロープは、ブーム先端及びタワーの屈曲プーリにて屈曲している。しかしながら、ロープは、ブームの端部から巻上げ機に向けて直接屈曲されるのではなく、ブームの端部からタワーに向かい、そこからブームの端部に戻ってそれからタワーを経て巻上げ機へと向かう(図2参照)。ロープの全長は式(38)で与えられる。
巻上げ機の動的モデルは、平坦性ベースフィードフォワード制御器を設計するために、以下に示す状態空間に変換される。制御則の導出は、減衰を無視する。したがって、D=0とされる。クレーンの巻上げギヤの状態ベクトルは、以下のように定義される。
Claims (13)
- クレーンの巻上げギヤを制御するためのクレーン制御器であって、
上記巻上げギヤの制御において、巻上げロープの弾性に起因する動的振動を考慮して、該動的振動を低減させるように上記巻上げギヤを制御し、
上記巻上げギヤの駆動速度を、オーバーシュートを抑制するために最大許容駆動速度に制限し、
上記最大許容駆動速度を、巻上げギヤ、ロープ及び荷物を含むシステムの動的振動を表す物理モデルに基づいて決定することを特徴とするクレーン制御器。 - 請求項1記載のクレーン制御器において、
上記最大許容駆動速度を、クレーンデータを基に動的に決定することを特徴とするクレーン制御器。 - 請求項1又は2記載のクレーン制御器において、
上記最大許容駆動速度を、現時点で測定された巻上げ力及びロープ長さの少なくとも一方に基づいて決定することを特徴とするクレーン制御器。 - 請求項1〜3のいずれか1つに記載のクレーン制御器において、
状況認識システムを備え、
上記状況認識システムを基に上記クレーン制御器の制御挙動を決定することを特徴とするクレーン制御器。 - 請求項4記載のクレーン制御器において、
上記状況認識システムは、オーバーシュートを回避するために上記巻上げギヤの駆動速度が制限されている持上げ状態を認識することを特徴とするクレーン制御器。 - 請求項4記載のクレーン制御器において、
上記状況認識システムは、上記巻上げギヤの駆動速度の制限が解除されている解除状態を認識することを特徴とするクレーン制御器。 - 請求項4記載のクレーン制御器において、
上記状況認識システムは、荷物をセットダウンするときにロープが不必要に解かれるのを防止するために巻上げギヤの駆動速度が制限されているセットダウン状態を認識することを特徴とするクレーン制御器。 - 請求項1〜7のいずれか1つに記載のクレーン制御器において、
荷物の持上げの動きを入力変数として使用して、該入力変数に基づいて、上記巻上げギヤを制御するための制御パラメータを算出するとともに、
上記制御パラメータの算出において、自然振動を低減するべく、上記巻上げロープの弾性に起因する動的振動を考慮することを特徴とするクレーン制御器。 - 請求項8記載のクレーン制御器において、
上記巻上げギヤは、油圧により駆動され、
上記制御パラメータの算出において、上記油圧作動油の圧縮性に起因する動的振動を考慮することを特徴とするクレーン制御器。 - 請求項8又は9記載のクレーン制御器において、
上記制御パラメータの算出において、変化するロープ長さ及び測定された巻上げ力の少なくとも一方を考慮することを特徴とするクレーン制御器。 - 請求項8〜10のいずれか1つに記載のクレーン制御器において、
上記巻上げギヤの制御パラメータに依存する上記荷物の持上げの動きを含む、クレーンの物理モデルに基づいて、上記巻上げギヤを制御することを特徴とするクレーン制御器。 - 請求項1〜11のいずれか1つに記載のクレーン制御器によって、クレーンの巻上げギヤを制御する方法であって、
上記巻上げギヤの制御において、巻上げロープの弾性に起因する動的振動を考慮して、該動的振動を低減させるように上記巻上げギヤを制御することを特徴とする方法。 - 請求項1〜11のいずれか1つに記載のクレーン制御器を備えることを特徴とするクレーン。
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