JP5757425B2 - 高純度硫酸ニッケルの製造方法、及びニッケルを含む溶液からの不純物元素除去方法 - Google Patents
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Description
この不純物を除去する工程は、原料に含まれる不純物により様々な方法があるが、先ず、中和剤を用いて不純物の一部を含む中和澱物と分離後残液を形成する浄液工程を経た後、この分離後残液を、さらに不純物元素除去処理を施すもので、通常有機溶媒を用いて抽出する溶媒抽出工程が行われる。特に、原料中にコバルトが含まれる場合におけるニッケルとコバルトを効率良く分離する方法として、ホスホン酸やホスフィン酸を用いた溶媒抽出法が広く知られている。
これらのホスホン酸およびホスフィン酸による抽出は、溶液のpHに依存し、pHが上昇するほど抽出率が向上する。そして、元素により抽出に対するpH依存性が異なり、この特性を利用してコバルトやその他不純物元素を有機溶媒中へ抽出するものである。
この方法は、pH調整剤に含まれるNaなどの不純物元素がニッケル溶液へ混入し、製品を汚染することを防止する方法として有効である。
記
(1)製造工程内の溶液の一部に、硫化剤を添加することで、前記溶液に含まれるニッケルをNi硫化物とした沈殿物と、その沈殿物以外の硫化後液からなる硫化溶液を生成し、工程内の溶液からニッケル成分を回収する硫化工程。
(2)(1)の硫化工程で得られた硫化溶液を、沈殿物であるNi硫化物と硫化後液に分離する固液分離工程。
(3)(2)の固液分離工程により分離した硫化後液を、中和処理して不純物元素を含む中和澱物と前記不純物元素が除去された中和後液を生成し、製造工程内の溶液に含まれる不純物元素を回収する中和工程。
記
(1)ニッケルを含み、不純物元素としてマグネシウム、マンガン、カルシウムを含む溶液に、硫化剤を添加することで、ニッケルを含む溶液に含まれるニッケルをNi硫化物とした沈殿物と、その沈殿物以外の硫化後液からなる硫化溶液を生成し、ニッケルを含む溶液からニッケル成分を回収する硫化工程。
(2)(1)の硫化工程で得られた硫化溶液を、沈殿物であるNi硫化物と硫化後液に分離する固液分離工程。
(3)(2)の固液分離工程により分離した硫化後液を、中和処理して不純物元素を含む中和澱物と前記不純物元素が除去された中和後液を生成し、硫化後液に含まれる不純物元素を回収する中和工程。
(1)工程内の溶液に、硫化剤を添加することで、その溶液に含まれるニッケルをNi硫化物とした沈殿物と、その沈殿物以外の硫化後液からなる硫化溶液を生成し、ニッケルを含む溶液からニッケル成分を回収する硫化工程。
(2)(1)の硫化工程で得られた硫化溶液を、沈殿物であるNi硫化物と硫化後液に分離する固液分離工程。
(3)(2)の固液分離工程により分離した硫化後液を、中和処理して不純物元素を含む中和澱物を生成し工程内の溶液に含まれる不純物元素を回収する中和工程。
なお、工程内の溶液はニッケルを含む溶液でもある。
図1は、その製造フロー図を示すもので、通常白抜き矢印1に従って工程が進行して高純度硫酸ニッケル溶液が製造されるが、ニッケルを含む溶液である、溶媒抽出工程の制御により生成された高不純物濃度硫酸ニッケル溶液を元液とした白抜き矢印2の工程を採ることで、より高純度な硫酸ニッケル溶液を得ることも可能である。
以下、図1の高純度硫酸ニッケル溶液の製造フローに沿って、図2に示すニッケルを含む溶液からの不純物元素除去方法を踏まえて説明する。
この工程は、出発原料となる、ニッケルおよびコバルト混合硫化物、粗硫酸ニッケル、酸化ニッケル、水酸化ニッケル、炭酸ニッケル、ニッケル粉などから選ばれる一種、または複数の混合物から成る工業中間物などのニッケル含有物を、鉱酸(塩酸、硫酸など)により溶解して、ニッケルを浸出させて浸出液(ニッケルを含む溶液)を生成する工程で、特開2005−350766号公報などに開示された公知の方法を用いて行われる。
(1)硫化工程
先ず、本発明におけるニッケルを含む溶液とは、ニッケル酸性溶液を示すものである。
特に、ニッケル含有物を酸を用いて溶解する浸出工程と、この浸出工程により生成されるニッケル酸性溶液中のニッケルとコバルトを溶媒抽出法を用いて分離する溶媒抽出工程を有する硫酸ニッケル製造方法の製造工程内の溶液、特にニッケルを含む溶液に効果的に用いることができる。
一方、マグネシウム、マンガン、カルシウム、クロム、アルミニウム、ナトリウム、カリウムなどは硫化物を形成せず、これらの元素は溶液(硫化後液)中に残留するため、ニッケルと分離が可能となる。
このとき使用する硫化剤は、特に限定はされないが、硫化水素ガス、水硫化ソーダ、硫化ナトリウムなどが工業的に広く用いられており、大量かつ容易に入手できる点で望ましい。
40℃未満では反応時間が長くなりすぎ、設備が巨大化する。また、80℃以上では樹脂系の材料が使用できないため設備の材質が制限され、設備費が上昇してしまう。
硫化工程で生成した硫化溶液中の沈殿物であるNi硫化物と残液である硫化後液を、固液分離装置を用いて分離回収する工程である。
用いる固液分離装置は、特に限定されるものではなく、加圧濾過装置、吸引濾過装置、デンカンターなどを用いることができる。回収されたニッケルを主成分とする硫化物は、浸出工程に繰り返すことにより、再利用できる。
固液分離により生成した沈殿物のNi硫化物は、硫酸による再溶解処理によりニッケルが浸出して生成された粗硫酸ニッケル溶液を経て、溶媒抽出工程に供給される。
一方、固液分離後の不純物を含む硫化後液は、中和剤の添加による中和処理により生成するMnなどの重金属を含む沈殿物である中和澱物と、中和後液からなる中和溶液を形成した後に、固液分離装置を用いて固液分離し、不純物元素を含む中和澱物と中和後液に分離する。
ここで、使用する中和剤は、特に限定されるものではないが、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどが安価であり、工業的に用いるのに適している。
pH7.0未満ではMnの除去が不十分であり、一方pH8.5を超えると排水基準値を超える可能性があり、最終的に排出する際にpHの再調整が必要となってしまうためである。
図1中の「溶媒抽出」と表記される溶媒抽出工程は、水相と有機相を接触させ、各相中の成分を交換することで、水相中のある成分の濃度を高め、他の異なる成分の濃度を低くするもので、本発明では水相に、沈殿物であるNi硫化物を再溶解処理して得られる不純物元素濃度が未だ高い粗硫酸ニッケル溶液を用い、有機相にホスホン酸やホスフィン酸などの有機溶媒、或いは特許文献1乃至特許文献3に示されるようなニッケルを含む有機溶媒を用いた溶媒抽出法によって行われ、硫酸ニッケル溶液と逆抽液が得られる。
原料のニッケル中間物をオートクレーブに装入し、これに酸素を供給して、以下の条件で高温加圧浸出の浸出工程を行い、浸出液(ニッケルを含む硫酸酸性溶液)を作製した。
次いで、その浸出液をpH調整後、溶媒抽出工程において塩酸を用いて逆抽出して塩酸酸性溶液を得た。これらの組成を表1に纏めて示す。
浸出温度:165℃
浸出時間:240分
スラリー濃度:200g/l
オートクレーブ容量:1L
次に、表1に示す組成のニッケルを含む塩酸酸性溶液(以下、塩酸酸性溶液と称す)を元液として、ビーカーに400mlを採り分けた。
元液(塩酸酸性溶液)を400ml入れたビーカーを、ウォーターバスを用いて、その液温が40℃になるように保持し、300rpmの回転数で撹拌しながら、硫化剤に硫化ナトリウム9水和物を用い、水に溶解して500[g/L]に調整した硫化剤溶液を、ビーカー内の元液に滴下して反応させた。
この反応中、35%塩酸を適宜添加して、pHを2.5に保持しつつ、濃度500[g/L]の硫化ナトリウム溶液(硫化剤溶液)を68ml添加してスラリーを形成した。
次に、不純物元素濃度の除去具合を知る目的で、形成したスラリーをサンプリング、濾過による固液分離を実施後、得られた硫化後液をICP発光分光分析法により、含まれる各元素の定量分析を行なった。
その結果を表1に併せて示す。なお、硫化後液の濃度はサンプリングと硫化剤を加えたことによる液量の増減を補正している。
ニッケルおよびコバルトは沈殿しているのに対して、マンガンは元液と硫化後液中濃度が変化なく、硫化後液に残留しているのがわかる。即ち沈殿したNi硫化物からは不純物元素であるマンガンが除去されたこととなる。
ニッケルを含む溶液(元液)として、表2に示す硫酸酸性溶液を400ml準備した。
ウォーターバスを用いて液温を40℃に保持しつつ、回転数300rpmで撹拌しながら硫化ナトリウム9水和物を水に溶解し、500[g/L]に調整した硫化剤溶液を、元液に滴下した。なお、その反応中pHを3.0に保持するため、濃度500[g/L]の硫酸を添加した。
硫化剤溶液の硫化ナトリウム溶液を136ml添加した後、スラリーをサンプリング、濾過後、硫化後液をICP発光分光分析法により各元素の定量分析を行なった。
その結果を表2に併せて示す。
Claims (4)
- ニッケルを含み、不純物元素としてマグネシウム、マンガン、カルシウムを含む溶液から高純度硫酸ニッケルを生成する製造方法における製造工程において、
製造工程内の溶液に対して、下記(1)から(3)に示す不純物元素除去処理工程を施すことを特徴とする高純度硫酸ニッケルの製造方法。
記
(1)前記工程内の溶液の一部に、硫化剤を添加することで、前記溶液に含まれるニッケルをNi硫化物とした沈殿物と、前記沈殿物以外の硫化後液からなる硫化溶液を生成し、前記溶液からニッケル成分を回収する硫化工程。
(2)(1)の硫化工程で得られた硫化溶液を、沈殿物であるNi硫化物と硫化後液に分離する固液分離工程。
(3)(2)の固液分離工程により分離した硫化後液を、中和処理して前記不純物元素を含む中和澱物と前記不純物元素が除去された中和後液を生成し、前記硫化後液に含まれる不純物元素を回収する中和工程。 - 前記製造工程が、ニッケル含有物を溶解してニッケルを含む浸出液を生成する浸出工程と、ニッケルとコバルトを溶媒抽出法により分離する溶媒抽出工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の高純度硫酸ニッケルの製造方法。
- 前記ニッケル含有物が、ニッケルおよびコバルト混合硫化物、工業中間物である粗硫酸ニッケル、酸化ニッケル、水酸化ニッケル、炭酸ニッケル、ニッケル粉であることを特徴とする請求項2に記載の高純度硫酸ニッケルの製造方法。
- ニッケルを含み、不純物元素としてマグネシウム、マンガン、カルシウムを含む溶液から不純物元素を除去するために、下記(1)から(3)に示す処理工程を施すことを特徴とするニッケルを含む溶液からの不純物元素除去方法。
記
(1)前記ニッケルを含む溶液に、硫化剤を添加することで、前記ニッケルを含む溶液に含まれるニッケルをNi硫化物とした沈殿物と、前記沈殿物以外の硫化後液からなる硫化溶液を生成し、ニッケルを含む溶液からニッケル成分を回収する硫化工程。
(2)(1)の硫化工程で得られた前記硫化溶液を、沈殿物であるNi硫化物と硫化後液に分離する固液分離工程。
(3)(2)固液分離工程により分離した硫化後液を、中和処理して前記不純物元素を含む中和澱物と前記不純物元素が除去された中和後液を生成し、前記硫化後液に含まれる不純物元素を回収する中和工程。
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