JP5867710B2 - 高純度硫酸ニッケルの製造方法、及びニッケルを含む溶液からの不純物元素除去方法 - Google Patents
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Description
これらのホスホン酸およびホスフィン酸による抽出は、溶液のpHに依存し、pHが上昇するほど抽出率が向上する。そして、元素により抽出に対するpH依存性が異なり、この特性を利用してコバルトやその他不純物元素を有機溶媒中へ抽出するものである。
すなわち、ニッケルが抽出されるpHより低いpHに設定することにより、不純物元素を有機相へ分配させ、ニッケルは水相へ残留するため、不純物を除去したニッケル溶液を得ることができる。
この方法は、pH調整剤に含まれるNaなどの不純物元素がニッケル溶液へ混入し、製品を汚染することを防止する方法として有効である。
記
(1)製造工程内のニッケルを含む溶液の一部に、アルカリを添加してpH7.0〜7.8の範囲にすることで、その溶液に含まれるニッケルを水酸化ニッケルとした沈殿物と、その沈殿物以外の水酸化後液からなる水酸化スラリーを形成し、その製造工程内のニッケルを含む溶液からニッケル成分を回収する水酸化工程。
(2)(1)の水酸化工程で得られた水酸化スラリーを、沈殿物である水酸化ニッケルと水酸化後液に分離する固液分離工程。
(3)(2)の固液分離工程により分離した水酸化後液を、中和処理して不純物元素を含む中和澱物を生成し、製造工程内の溶液に含まれる不純物元素を回収する中和工程。
記
(1)ニッケルを含む硫酸酸性溶液に、アルカリを添加してpH7.0〜7.8の範囲にすることで、そのニッケルを含む硫酸酸性溶液に含まれるニッケルを水酸化ニッケルとした沈殿物と、その沈殿物以外の水酸化後液とからなる水酸化スラリーを形成し、そのニッケルを含む硫酸酸性溶液からニッケル成分を回収する水酸化工程。
(2)(1)の水酸化工程で得られた水酸化スラリーを、沈殿物である水酸化ニッケルと水酸化後液に分離する固液分離工程。
(3)(2)の固液分離工程により分離した水酸化後液に、pHが排水基準値以下で、且つMnを除去した中和後液と不純物元素を含む中和澱物を生成する中和処理を行って、製造工程内の溶液に含まれる不純物元素を回収する中和工程。
以下、図1の本発明の高純度硫酸ニッケルの製造フロー図、及び図2のニッケルを含む溶液からの不純物元素除去方法のフロー図を参照して、本発明の高純度硫酸ニッケル溶液の製造方法を説明する。
図1は、その製造フローを示すもので、通常は「(実線)矢印1」に従って工程が進行して高純度硫酸ニッケル溶液が製造されるが、ニッケルを含む溶液である、溶媒抽出工程より生成された高不純物濃度硫酸ニッケル溶液を元液とした「(破線)矢印2」の工程を経ることで、より高純度な硫酸ニッケル溶液を得ることが可能である。
以下、図1の高純度硫酸ニッケル溶液の製造フローに沿って、図2に示すニッケルを含む溶液からの不純物元素除去方法を踏まえて説明する。
(1)水酸化工程
先ず、本発明におけるニッケルを含む溶液とは、ニッケル酸性溶液を示すものである。
特にニッケル含有物を、酸を用いて溶解する浸出工程と、この浸出工程により生成されるニッケル酸性溶液中のニッケルとコバルトを、溶媒抽出法を用いて分離する溶媒抽出工程を有する硫酸ニッケル製造方法の製造工程内の溶液、特にニッケルを含む溶液に効果的に用いることができる。
一方、マグネシウムは沈殿するpHがニッケルよりも高いため、溶液(水酸化後液)中に残留させることができ、ニッケルと分離が可能となる。
40℃未満では反応時間が長くなりすぎ、設備が巨大化する。また、80℃以上では樹脂系の材料が使用できないため設備の材質が制限され、設備費が上昇してしまう。
また、pHは7.0〜7.8が好ましい。pH7.0未満では水酸化後液へのニッケルの残留が多すぎてニッケルの損失量が大きい。また、pH7.8以上ではマグネシウムも沈殿してしまう。
水酸化工程で生成した水酸化ニッケルと残液である水酸化後液を、固液分離装置を用いて分離回収する工程である。
用いる固液分離装置は、特に限定されるものではなく、加圧濾過装置、吸引濾過装置、遠心分離装置などを用いることができる。回収されたニッケルを主成分とする水酸化物は浸出液中の鉄、クロム、アルミを除去するための中和工程に中和剤の一部として繰り返すことにより、再利用できる。
一方、固液分離後の不純物を含む水酸化後液は、中和剤の添加による中和処理により生成する沈殿物である中和澱物と、中和後液からなる中和溶液を形成した後に、固液分離装置を用いて固液分離し、不純物元素を含む中和澱物と中和後液に分離する。
中和する際の調整するpHは8.0〜8.5の範囲とすることが望ましい。
pH8.0未満ではMnの除去が不十分であり、一方pH8.5を超えるとpHの排水基準値を超える可能性があり、最終的に排出する際にpHの再調整が必要となってしまうためである。
図1中の「溶媒抽出工程」と表記される溶媒抽出工程は、水相と有機相を接触させ、各相中の成分を交換することで、水相中のある成分の濃度を高め、他の異なる成分の濃度を低くするもので、本発明では水相に、浸出工程、pH調整を経て得られたニッケルを含む溶液を用い、有機相にホスホン酸やホスフィン酸などの有機溶媒、或いは特許文献1乃至特許文献3に示されるようなニッケルを含む有機溶媒を用いた溶媒抽出法によって行われ、高純度硫酸ニッケル溶液と高不純物濃度硫酸ニッケル溶液、およびコバルト回収液が得られる。
そこで、不純物元素を濃縮した高不純物濃度硫酸ニッケル溶液を溶媒抽出により生成し、不純物元素除去方法を施すことで、高純度な硫酸ニッケル溶液を作製することが可能である(図1の(破線)矢印2で示される工程)。
(1)水酸化工程
ニッケルを含む溶液(元液)として、表1に示す硫酸酸性溶液を400ml準備した。
ウォーターバスを用いて、その液温が40℃になるように保持し、スターラーで撹拌しながら、アルカリとして水酸化カルシウム(200g/L)を用い、ビーカー内の元液に滴下して反応させた。液のpHが7.5となるまでアルカリの添加を行なった。
次に、不純物元素濃度の除去具合を知る目的で、形成したスラリーを、濾過による固液分離を実施後、得られた水酸化後液をICP発光分光分析法により、含まれる各元素の定量分析を行なった。
その結果を表1に併せて示す。なお、水酸化後液の濃度はサンプリングとアルカリ溶液を加えたことによる液量の増減を補正している。
原料のニッケル中間物をオートクレーブに装入し、これに酸素を供給して、以下の条件で高温加圧浸出の浸出工程を行い、浸出液(ニッケルを含む硫酸酸性溶液)を作製した。
(浸出条件)
浸出温度:165℃
浸出時間:240分
スラリー濃度:200g/L
次いで、その浸出液をpH調整後、溶媒抽出工程において硫酸を用いて逆抽出して不純物を高濃度含む高不純物濃度硫酸ニッケル溶液を得た。これらの組成を表2に示す。
[水酸化工程]
図1の「破線矢印2」に示すように、得られた高不純物濃度硫酸ニッケル溶液の液温を40℃に保持しつつ、水酸化ナトリウム水溶液を添加し、pH7.8に調整した水酸化スラリーを形成した。次に、この水酸化スラリーを固液分離した後に得られた水酸化後液の組成を表2に示す。また、回収した水酸化ニッケル澱物は、浸出液をpH調整する際の中和剤の一部として全量を繰り返した。
以上の工程により得られた、溶媒抽出工程から産出された高純度硫酸ニッケル溶液の組成を表2に示す。
Claims (6)
- ニッケルを含む溶液から高純度硫酸ニッケルを生成する製造方法における製造工程において、
製造工程内のニッケルを含む溶液に対して、下記(1)から(3)に示す不純物元素除去処理工程を施すことを特徴とする高純度硫酸ニッケルの製造方法。
記
(1)前記製造工程内のニッケルを含む溶液の一部に、アルカリを添加してpH7.0〜7.8の範囲にすることで、前記溶液に含まれるニッケルを水酸化ニッケルとした沈殿物と、その沈殿物以外の水酸化後液とからなる水酸化スラリーを形成し、前記製造工程内のニッケルを含む溶液からニッケル成分を回収する水酸化工程。
(2)(1)の水酸化工程で得られた水酸化スラリーを、沈殿物である水酸化ニッケルと水酸化後液に分離する固液分離工程。
(3)(2)の固液分離工程により分離した水酸化後液を、中和処理して不純物元素を含む中和澱物を生成し、製造工程内の溶液に含まれる不純物元素を回収する中和工程。 - 前記不純物元素が、マグネシウムであることを特徴とする請求項1に記載の高純度硫酸ニッケルの製造方法。
- 前記製造工程が、ニッケル含有物を溶解する浸出工程と、ニッケルとコバルトを溶媒抽出法により分離する溶媒抽出工程を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の高純度硫酸ニッケルの製造方法。
- 前記ニッケル含有物が、ニッケルおよびコバルト混合硫化物、工業中間物である粗硫酸ニッケル、酸化ニッケル、水酸化ニッケル、炭酸ニッケル、ニッケル粉であることを特徴とする請求項3に記載の高純度硫酸ニッケルの製造方法。
- ニッケルを含む硫酸酸性溶液から不純物元素を除去するために、下記(1)から(3)に示す処理工程を施すことを特徴とするニッケルを含む溶液からの不純物元素除去方法。
記
(1)前記ニッケルを含む硫酸酸性溶液に、アルカリを添加してpH7.0〜7.8の範囲にすることで、前記ニッケルを含む硫酸酸性溶液に含まれるニッケルを水酸化ニッケルとした沈殿物と、その沈殿物以外の水酸化後液とからなる水酸化スラリーを形成し、前記ニッケルを含む硫酸酸性溶液からニッケル成分を回収する水酸化工程。
(2)(1)の水酸化工程で得られた水酸化スラリーを、沈殿物である水酸化ニッケルと水酸化後液に分離する固液分離工程。
(3)(2)の固液分離工程により分離した水酸化後液に、pHが排水基準値以下で、且つMnを除去した中和後液と不純物元素を含む中和澱物を生成する中和処理を行って、製造工程内の溶液に含まれる不純物元素を回収する中和工程。 - 前記不純物元素が、マグネシウムであることを特徴とする請求項5に記載のニッケルを含む溶液からの不純物元素除去方法。
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