JP5757001B2 - 耐熱性高分子電解質膜及びその製造方法 - Google Patents
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Description
[式中、Rは、C3〜20シクロアルキレン又はC7〜14スピロアルキレンであり、nは、20〜1000の整数である]で示される。前記グラフト鎖は、芳香族ビニル化合物、アクリル酸又はその誘導体、アクリルアミド誘導体、ビニルケトン類、アクリロニトリル類、及びビニルフッ素系化合物から選択されるモノマーを、前記主鎖に放射線グラフト重合して調製される。
[式中、Rは、C3〜20シクロアルキレン又はC7〜14スピロアルキレンであり、nは、20〜1000の整数である]で示され、かつ前記モノマーが、芳香族ビニル化合物、アクリル酸又はその誘導体、アクリルアミド誘導体、ビニルケトン類、アクリロニトリル類、及びビニルフッ素系化合物から選択されるビニルモノマーであることが好ましい。
本発明の耐熱性高分子電解質膜は、脂環式ポリベンズイミダゾールを含む主鎖と、当該主鎖に放射線グラフト重合により付加されたグラフト鎖とを含む。当該主鎖は、グラフト重合工程及びスルホン化工程における反応溶液中で膜形状を維持することができ、得られた高分子電解質膜が高い機械特性を有する脂環式ポリベンズイミダゾールからなるものであれば、その構造は特に限定されるものではない。このような脂環式ポリベンズイミダゾールは、市販されているか、又は当業者であれば化学文献に記載された方法により調製することができる。例えば、Inoue Y. et al., Die Makromolekulare Chemie 95 (1966) 236-247に記載された方法により、3,3’−ジアミノベンジジン四塩酸塩水和物等の芳香族テトラアミン類と、シクロヘキサンジカルボン酸のような脂環式炭化水素化合物のジカルボン酸と、をポリリン酸中で加熱することにより得られる。
上記式において、R’は、−O−、−C(=O)−、−C(CH3)2−、−S(=O)2−又はフェニレン基で表される二価の基である。
[式中、Rは、C3〜20シクロアルキレン又はC7〜14スピロアルキレンであり、nは、20〜1000の整数、好ましくは200〜800の整数である]で表すことができる。
(式中、X1は、−H、−CH3、−CH2CH3、−OH、−Cl、−F、−Brまたは−Iを示し、Y1は、−H、−CH3、−CH2CH3、−CH2CH2CH3、−C(CH3)3、−OCH3、−OCH2CH3、−OCH2CH2CH3、−OC(CH3)3、−CH2Cl、−CN、−SO3CH3、−Si(OCH3)3、−Si(OCH2CH3)3、−CH=CH2、−OCH=CH2、−C≡CH、−OH、−Cl、−F、−Brなどが挙げられる)。上記式(II)において、置換基Y1は、ビニル基に対して、メタ、パラ及びオルトのいずれの位置に結合してもよいことを示す。
(式中、X2は、−H、−CH3、−CH2CH3、−OH、−Cl、−F、−Br又は−Iを示し、Y2は、−H、−CH3、−CH2CH3、−CH2CH2CH3、−C(CH3)3、−CH2Cl、−Si(OCH3)3、−Si(OCH2CH3)3、及びベンゼン環などが挙げられる)で表されることを特徴とする。
(式中、X3は、−H、−CH3、−CH2CH3、−OH、−Cl、−F、−Br又は−Iを示し、Y3は−H、−CH3、−CH2CH3、−CH2CH2CH3、−C(CH3)3、−CH2Cl、及びベンゼン環などが挙げられる)で表されることを特徴とする。
(式中、X4は、−H、−CH3、−CH2CH3、−OH、−Cl、−F、−Br又は−Iを示し、mは1〜5の整数である)で表されることを特徴とする。
本発明において、燃料電池用高分子電解質膜の抵抗を下げるため、高分子電解質膜を薄くすることも考えられる。しかし現状では、過度に薄い高分子電解質膜では破損しやすく、膜自体の製作が困難である。したがって、本発明では、15〜200μmの耐熱性高分子電解質膜が好ましい。さらに好ましくは20〜100μmの範囲の耐熱性高分子電解質膜である。
高分子膜基材を主鎖部、モノマーとのグラフト重合した部分をグラフト鎖部とすると、主鎖部に対するグラフト鎖部の重量比は、次式のグラフト率(Grafting[重量%])として表される。
グラフト率(Grafting )=100×(Wg−W0)/W0
W0:グラフト前の乾燥状態の重量(g)
Wg:グラフト後の乾燥状態の重量(g)
高分子電解質膜のイオン交換容量(Ion Exchange Capacity:IEC)は次式で表される。
IEC=n/Wm
n :高分子電解質膜のスルホン酸基量(mmol)
Wm:高分子電解質膜の乾燥重量(g)
80℃で、水中で24時間保存のH型の高分子電解質膜を取り出し、即ち表面の水を軽く拭き取った後含水重量WWを測定する。この膜を60℃にて16時間、真空乾燥後、重量測定することで高分子電解質膜の乾燥重量 Wdを求め、WW、Wdから次式により含水率を算出する。
含水率=100(WW−Wd)/Wd
室温で、水中で保存のH型の高分子電解質膜を取り出し、即ち両白金電極に挟み、インピーダンスよる膜抵抗を測定する。高分子電解質膜のプロトン伝導度は次式を用いて算出した。
κ=d/(Rm・S)
κ:高分子電解質膜のプロトン伝導度(S/cm)
d:両白金電極の距離(cm)
Rm: 高分子電解質膜の抵抗(Ω)
S:抵抗測定における高分子電解質膜の電気流れの断面積(cm2)
室温での水中に浸漬後の高分子電解質膜のプロトン伝導度をσ1とし、120℃の温水に浸漬後の高分子電解質膜のプロトン伝導度をσ2とする。高分子電解質膜の熱水耐性は次式を用いて算出した。
熱水耐性=100(σ2/σ1)
Inoue Y. et al., Die Makromolekulare Chemie 95 (1966) 236-247に記載された方法と同様の方法により調製した、シス型シクロヘキサンを導入した脂環式ポリベンズイミダゾール(以下、A−PBIと略す)からなる2cm×3cmのフィルム基材(厚25μm)をコック付きのガラス製セパラブル容器に入れて脱気後、ガラス容器内をアルゴンガスで置換した。この状態で、A−PBIフィルム基材に60Co線源からのγ線を室温で220kGy照射した。引き続いて、このガラス容器中に、アルゴンガスのバブリングにより脱気した50mlスチレンの1−プロパノール溶液50mlを、照射されたA−PBIフィルム基材が浸漬するよう添加した。アルゴンガスで置換した後、ガラス容器を密閉し、80℃で24時間放置した。得られたグラフト高分子フィルム基材をトルエンで洗浄した。乾燥後のフィルム基材重量から、グラフト率を算出した。次に、グラフト膜を0.05Mのクロロスルホン酸/ジクロロエタン溶液で0℃にて処理することにより電解質膜を得た。この耐熱性高分子電解質膜のグラフト率、イオン交換容量、含水率、プロトン伝導度、熱水耐性を表1に示す。
実施例1において、50ml スチレンの1−プロパノール溶液50ml 中に多官能性ビニルモノマーのジビニルベンゼンを2重量%導入し、同様な手法で耐熱性高分子電解質膜を得た。本実施例で得られた耐熱性高分子電解質膜のグラフト率、イオン交換容量、含水率、プロトン伝導度、熱水耐性を表1に示す。
実施例2と同様の手順にしたがって得られた耐熱性高分子電解質膜に、更に180℃、2時間で真空下で熱処理を行うことで、一部スルホン酸基が反応しスルホン基橋架け構造を有する多重架橋耐熱性電解質膜を得た。本実施例で得られた耐熱性高分子電解質膜のグルフト率、イオン交換容量、含水率、プロトン伝導度、熱水耐性を表1に示す。
2cm×3cmの芳香族ポリベンズイミダゾールフィルム基材(25μm)を実施例1)と同じ放射線グラフト重合条件で処理したところ、グラフト率は極端に低かった。本比較例で得られた耐熱性高分子電解質膜のグラフト率、イオン交換容量、含水率、プロトン伝導度、熱水耐性を表1に示す。
2cm×3cmの脂環式ポリイミドフィルム基材(25μm)を実施例1と同じ放射線グラフト重合条件で処理した後、同様な手法で電解質膜を得た。本比較例で得られた耐熱性高分子電解質膜のグラフト率、イオン交換容量、含水率、プロトン伝導度、熱水耐性を表1に示す。
2cm×3cmのポリエーテルエーテルケトンフィルム基材(25μm)を実施例1)と同じ放射線グラフト重合条件で処理した後、同様な手法で電解質膜を得た。本比較例で得られた耐熱性高分子電解質膜のグラフト率、イオン交換容量、含水率、プロトン伝導度、熱水耐性を表1に示す。
Claims (11)
- 下記式(I):
[式中、Rは、C 3〜20 シクロアルキレン又はC 7〜14 スピロアルキレンであり、nは、20〜1000の整数である]で示される脂環式ポリベンズイミダゾールを含む主鎖と、前記主鎖に室温〜150℃の温度条件下で、5〜1000kGyのγ線を照射して放射線グラフト重合により付加されたグラフト鎖と、を含む耐熱性高分子電解質膜であって、前記グラフト鎖は脂環式ポリベンズイミダゾール主鎖に対し30〜120重量%のグラフト率で付加され、少なくとも前記グラフト鎖の一部がスルホン酸基を有することを特徴とする、耐熱性高分子電解質膜。 - 前記C 3〜20 シクロアルキレンが、1,4−シクロへキシレン、ノルボルニレン、ジノルボルニレン、アダマンチレン、ジアダマンチレン又はビシクロ[2.2.2]オクチレンであり、C 7〜14 スピロアルキレンが、スピロ[3,3]ヘプチレンである請求項1に記載の耐熱性高分子電解質膜。
- 前記グラフト鎖が、芳香族ビニル化合物、アクリル酸又はその誘導体、アクリルアミド誘導体、ビニルケトン類、アクリロニトリル類、及びビニルフッ素系化合物から選択されるモノマーを、前記主鎖に放射線グラフト重合して調製される請求項1又は2に記載の耐熱性高分子電解質膜。
- 前記モノマーが、付加的にモノマー全体の10重量%以下の量の多官能性モノマーを含み、当該多官能性モノマーが、ビス(ビニルフェニル)エタン、ジビニルベンゼン、2,4,6−トリアリロキシ−1,3,5−トリアジン(トリアリルシアヌレート)、トリアリル−1,2,4−ベンゼントリカルボキシレート、ジアリルエーテル、ビス(ビニルフェニル)メタン、ジビニルエーテル、1,5−ヘキサジエン、及びブタジエンから選択される請求項3に記載の耐熱性高分子電解質膜。
- 下記式(I):
[式中、Rは、C 3〜20 シクロアルキレン又はC 7〜14 スピロアルキレンであり、nは、20〜1000の整数である]で示される脂環式ポリベンズイミダゾールを含む高分子基材に室温〜150℃の温度条件下で、5〜1000kGyのγ線を照射する工程、
当該照射された基材を、芳香族ビニル化合物、アクリル酸又はその誘導体、アクリルアミド誘導体、ビニルケトン類、アクリロニトリル類、及びビニルフッ素系化合物から選択される1種又は2種以上のモノマーと接触させて当該モノマーを放射線グラフト重合する工程、ここで、前記グラフト鎖は脂環式ポリベンズイミダゾール主鎖に対し30〜120重量%のグラフト率で付加され、及び
前記放射線グラフト重合により導入されたグラフト鎖をスルホン化する工程、
を含むことを特徴とする、耐熱性高分子電解質膜の製造方法。 - 前記C 3〜20 シクロアルキレンが、1,4−シクロへキシレン、ノルボルニレン、ジノルボルニレン、アダマンチレン、ジアダマンチレン又はビシクロ[2.2.2]オクチレンであり、C 7〜14 スピロアルキレンが、スピロ[3,3]ヘプチレンである請求項5に記載の製造方法。
- 前記高分子基材を調製するために、脂環式ポリベンズイミダゾールと塩化リチウムとを含むリオトロピック液晶性の溶液を調製し、そして当該溶液を薄膜状のフィルムに流延及び乾燥する工程をさらに含む請求項5又は6に記載の方法。
- 前記スルホン化工程が、前記高分子基材を、10℃以下の温度で、0.005〜0.1mol/Lのスルホン化剤を含むスルホン化溶液と接触させることからなる請求項5〜7何れか1項に記載の方法。
- 前記スルホン化工程に続いて、前記高分子基材を真空下、120〜250℃の温度で、1〜12時間熱処理する工程を含み、導入したグラフト鎖間に多重架橋構造を付与する請求項5〜8何れか1項に記載の方法。
- 請求項5〜9の何れか1項に記載の方法で製造され、イオン交換容量が0.5〜3.3mmol/gであり、かつ120℃で、4時間インキュベートした後の熱水耐性が90%以上である耐熱性高分子電解質膜。
- 請求項1〜4又は10に記載の耐熱性高分子電解質膜を備える燃料電池。
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