JP5753812B2 - 容器用多層シート、その製造方法、及び容器 - Google Patents

容器用多層シート、その製造方法、及び容器 Download PDF

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Description

本発明は、グラタン等の加熱調理食品用容器などに適する容器用多層シート、その製造方法、及び容器に関する。
グラタン、ドリア、ラザニア、ピザ、焼きカレー、焼きおにぎり等の食品は、その調理に際して、オーブン等で加熱し、必要に応じて表面にまぶしたチーズや味噌等を有する食品表面を、焦げ目が付く程度まで加熱することにより、食品の風味や美観を一層引き立てることが行われている。
近年、ファミリーレストラン等の店舗や家庭において、各種食品を冷凍または低温で保存し、解凍または加熱調理する方法が広がっており、冷凍または低温で保存した食品の解凍や加熱調理が短時間で簡単な作業で行えるという利点から、電子レンジ等の高周波加熱による調理が主として利用されるようになっている。調理方法の変化に伴い、グラタン等の、表面に焦げ目を有することが好まれる食品については、電子レンジ等の高周波加熱調理によって、表面に美麗な焦げ色を付けることが望まれるようになってきた。
従来、冷凍調理済みグラタン等の加熱は、温度180〜200℃のオーブン中で15〜20分間程度加熱することにより行われ、解凍再加熱と表面に焦げ目を付けることが同時に行われていた。一方、短時間で調理が可能となる高周波加熱によって、グラタン等の加熱を行うと、焦げ目が不十分であったり、逆に過度の焦げ部分が生じたりなどして、通常は美麗な焦げ色が付きにくい。高周波加熱によってグラタン等の表面に美麗な焦げ色を付けるため種々の検討がされている。
例えば、冷凍グラタン等の容器上部に発熱体を配することで、グラタン等の表面にマイクロ波を集中させて焦げ目を付けることが知られているが、発熱体は高価でコスト的に見合わない。容器上へ遮蔽板を被冠して該容器を覆った後、表面のチーズのみにマイクロ波を照射できるようにして焦げ目を付けることが知られているが、極めて煩雑でコストも増加する。チーズのみに特定波長の赤外線を照射する方法も知られているが、極めて特殊な装置を必要とするので、一般的ではない。卵黄及びカラメルを含有する調理液を付着させることによって、高周波加熱で容易に焦げ目が付く加熱調理食品が知られているが、卵黄臭が強い風味となり、ホワイトソースや粉チーズを焦がしたような風味は得られない。
そこで、調理済みの食品の表面を、オーブンやバーナー等により加熱してあらかじめ焦げ目を付けた後に、冷凍または低温で保存し、所望のときに、店舗や家庭において、電子レンジ等の高周波加熱調理を行う方法が知られている。
電子レンジ等の高周波加熱調理に使用する食品容器としては、電子レンジ等で使用できるとともに、安価であって、軽量で破損しにくく、したがって運搬に便利であり、廃棄する場合の減容が可能である等の利点があることから、紙製の容器が使用されている。しかし、グラタン等、表面に焦げ目が付く程度まで加熱することが求められる食品の食品容器としては、一層高い耐熱性が求められるようになってきた。
そうした容器の一つとして、紙製基材に熱可塑性樹脂を積層した容器用多層シートから形成した容器(以下、「樹脂積層紙製容器」、または単に「紙製容器」ということがある。)がある。樹脂積層紙製容器に使用される熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂などがあげられる。中でも好ましいのは、耐熱性、保香性及び加工性等の観点から熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂である。
熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂として、ポリエチレンテレフタレート樹脂を紙製基材に積層した容器用多層シートが知られている(特許文献1、2)。また、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂として、ポリブチレンテレフタレート樹脂を紙製基材に積層した容器用多層シートも知られており(特許文献3、4)、特に、特許文献4には、耐熱紙と積層した容器用多層シートから得られる容器は、電子レンジよりも高温で加熱調理するオーブンレンジでも使用し得る耐熱性を有することが開示されている。
上記の紙製基材と熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂とを備える容器用多層シートは、紙製基材と熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂のフィルムとを接着剤を使用して接着させる方法や、紙製基材の上に熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂を溶融押出して、該樹脂が軟化状態にあるときに紙製基材に圧接させる方法などによって製造することが知られている。その際、紙製基材と熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層との接着性を向上させるために、紙製基材にコロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理、オゾン処理等の表面処理を施したり、また、紙製基材に接着用樹脂(例えば、エチレン・無水マレイン酸共重合体やエチレン・酢酸ビニル共重合体等)や接着用アンカーコート剤(例えば、イソシアネート系、ウレタン系等)を塗布したりして、紙製基材の表面を活性化する前処理を施した後に、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂のフィルムを接着させたり、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂を押出ラミネートしたりすることがある。
しかし、紙製基材と熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂とを備える容器用多層シートは、使用目的によっては、紙製基材と熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂との接着強度が不十分な場合があった。上記のように、紙製基材に前処理を施しても接着強度が十分改善されなかったり、これら前処理による紙製基材の表面活性化の効果が短時間で消滅し、その結果、接着強度が不十分となったりして、得られる紙製容器の耐熱性が不足することがあるので、改善が求められていた。特に、あらかじめ焦げ目を付けるため、または、調理のために、オーブンやバーナー等によって紙製容器を加熱する場合は、接着強度の不足により剥離が生じたり、耐熱性の不足により紙製基材に着色や焦げの発生がみられるようになったりすると、食品容器としてのイメージが大きく損なわれるとともに、容器内の食品が変質したり、風味や美観が損なわれたりするなどの原因にもなるので、改善が求められていた。
特開2003−311888号 国際公開第2011/019056号 特開平1−70620号 特開2000−93296号
本発明の課題は、紙製基材と樹脂層との接着強度が高く、グラタン等の加熱調理に適した容器用多層シート、及びその製造方法、並びに、該容器用多層シートから形成した部材を備える容器を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究した結果、紙製基材と熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層との間に、ポリエチレンイミン層を介在させることにより、前記課題を解決できることを見いだした。
すなわち、本発明によれば、紙製基材、ポリエチレンイミン層及び熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層を、この順に備えることを特徴とする容器用多層シートが提供される。
また、本発明によれば、紙製基材、ポリエチレンイミン層及び熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層を、この順に備える、加熱調理に適した耐熱性容器用多層シートであって、
該熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層に含有される熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂が、
(1)ポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートであり、かつ、
(2)白色顔料を0.1〜20質量%含有する
ことを特徴とする加熱調理に適した耐熱性容器用多層シートが提供される。
また、本発明によれば、実施の態様として、以下(1)〜(6)の容器用多層シートが提供される。
(1)熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層に含有される熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂が、白色顔料を0.1〜20質量%含有する前記の容器用多層シート。
(2)紙製基材の熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層の反対側の面に、更にポリエチレンイミン層を備える前記の容器用多層シート。
(3)熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層に含有される熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂が、ポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートである前記の容器用多層シート。
(4)更に印刷層を備える前記の容器用多層シート。
(5)ポリエチレンイミン層が、数平均分子量1,000〜150,000であるポリエチレンイミンから形成されたものである前記の容器用多層シート。
(6)熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層が、あらかじめポリエチレンイミン層を形成した紙製基材の該ポリエチレンイミン層の上面に溶融押出して得られたものである前記の容器用多層シート。
さらに、本発明によれば、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂を、あらかじめポリエチレンイミン層を形成した紙製基材の該ポリエチレンイミン層の上面に溶融押出する工程を含む前記の容器用多層シートの製造方法が提供される。
また、本発明によれば、実施の態様として、以下(a)〜(d)の容器用多層シートの製造方法が提供される。
(a)pHが6以上であるポリエチレンイミン層の上面に、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂を溶融押出する前記の容器用多層シートの製造方法。
(b)紙製基材に、コロナ放電処理、フレーム処理、プラズマイオン処理またはオゾン処理を施す工程を含む前記の容器用多層シートの製造方法。
(c)紙製基材の表面に、温度25℃における粘度が5〜5,000mPa・sであるポリエチレンイミン水溶液を塗布する工程を含む前記の容器用多層シートの製造方法。
(d)ポリエチレンイミン層に、コロナ放電処理、フレーム処理、プラズマイオン処理またはオゾン処理を施す工程を含む前記の容器用多層シートの製造方法。
更にまた、本発明によれば、前記の容器用多層シートから形成された部材、特に、胴部材または底部材を備える容器、好ましくは加熱調理食品用である容器が提供される。
本発明によれば、紙製基材、ポリエチレンイミン層及び熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層を、この順に備えることを特徴とする容器用多層シートとすることにより、紙製基材と熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層との接着強度が高く、グラタン等の加熱調理食品に適した容器用多層シートが提供されるという効果が奏される。特に、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層に含有される熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂が、ポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートであることにより、及び/または、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層を、白色顔料を0.1〜20質量%含有する熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂からなるものとすることによって、得られる紙製容器の耐熱性が向上し、オーブンやバーナー等による加熱によっても、紙製基材に着色や焦げがみられないようになるので、食品容器としてのイメージが改善されるという効果が奏される。
さらに、本発明によれば、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂を、あらかじめポリエチレンイミン層を形成した紙製基材の該ポリエチレンイミン層の上面に溶融押出する工程を含む前記の容器用多層シートの製造方法であることにより、オーブンやバーナー等による加熱によっても、紙製基材に着色や焦げがみられず、食品容器としてのイメージが改善される容器用多層シートが得られるという効果が奏される。更にまた、本発明によれば、前記の容器用多層シートから形成された部材、特に、胴部材または底部材を備える容器であることにより、耐熱性が向上し、紙製基材に着色や焦げがみられない容器が提供されるという効果が奏される。
図1は、本発明の容器用多層シートの製造方法を示す模式図である。 図2は、本発明の容器用多層シートの層構成の具体例を示す断面図である。 図3は、本発明の容器用多層シートから形成された部材を備える容器の具体例を示す斜視図である。
1.紙製基材
本発明の容器用多層シートが備える紙製基材は、特に制限がなく、一般に、紙製容器、特に加熱調理食品用の容器に使用される紙製基材を使用することができる。例えば、木材パルプ紙、レーヨン紙、合成パルプ紙、合成繊維紙、無機繊維紙、無機粉体紙などを使用することができ、更に、木材パルプ紙としては、上質紙、クラフト紙、晒クラフト紙、段ボール原紙、白板紙、グラシン紙、和紙等を使用することができ、塗工紙でも非塗工紙でもよい。木材パルプ紙の表面にポリエチレン樹脂をコーティングしたポリラミ紙は、容器用多層シートの耐水性が向上するので好ましく使用することができる。剛性及び強度の観点から、カップ原紙が、特に好ましく使用される。
紙製基材の坪量は、30〜600g/mの範囲が好ましく、より好ましくは100〜500g/m、更に好ましくは150〜400g/mの範囲である。紙製基材の坪量が小さすぎると、耐熱性や強度が不足することがあり、坪量が大きすぎると、加工適性が悪くなることがある。紙製基材の厚みは、通常50μm〜2mmの範囲であり、好ましくは100μm〜1.5mm、より好ましくは150〜800μm、更に好ましくは200〜600μmの範囲である。また、本発明の容器用多層シートを製造するために用いる紙製基材の含水率は、2〜15質量%の範囲が好ましく、より好ましくは3〜10質量%、更に好ましくは4〜8質量%の範囲である。
2.熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層
本発明の容器用多層シートが備える熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層は、一般に、紙製容器、特に加熱調理食品用の容器において使用される熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂を使用して形成することができる。すなわち、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層に含有される熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、1,4−シクロヘキサンジメタノールを共重合成分とする非晶性ポリエチレンテレフタレート共重合体(PETG)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート・イソフタレート共重合体(PCTA)、及びこれらの2種以上の混合物を使用することができ、PETまたはPBT、これらの混合物または共重合体が好ましい。
PETとしては、単独重合体だけではなく、酸成分の一部をイソフタル酸やナフタレンジカルボン酸で置き換えた共重合体、及び/または、グリコール成分の一部をジエチレングリコール等のジオールに置き換えた共重合体なども使用することができる。これらの中でも、PET単独重合体またはエチレンテレフタレート単位を90モル%以上の割合で含有する共重合体が好ましい。PBTについても、同様である。
熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂の固有粘度(IV値)は、通常0.5〜1.5dl/g、好ましくは0.6〜1.4dl/g、より好ましくは0.7〜1.2dl/gの範囲のものである。熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂のIV値は、温度30℃でフェノール/クロロエタン(60/40質量%)の混合溶媒を用いて測定した溶液粘度から算出する。PETまたはPBT等の熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層の厚みは、通常2〜200μm、好ましくは5〜150μm、より好ましくは10〜100μm、更に好ましくは15〜50μmの範囲内である。
熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層は、後に詳述するように、必要に応じて配合されるその他の添加剤を含有してもよい、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂からあらかじめ形成した熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂フィルムまたはシート、好ましくは二軸延伸フィルムを、紙製基材に接着剤を使用して接着させる方法や、紙製基材の上に、前記の熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂(必要に応じて配合されるその他の成分を含有してもよい。)を溶融押出して、該樹脂が結晶固化前の軟化状態にあるときに紙製基材に圧接させる方法などによって得たものとすることができる。効率性及び十分な接着強度を得られることから、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂を溶融押出して、該樹脂が、結晶固化前の軟化状態にあるときに紙製基材に圧接させる方法によって得たものが好ましく、特に、あらかじめポリエチレンイミン層を形成した紙製基材の該ポリエチレンイミン層の上面に溶融押出して得られた熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層が好ましい。
〔白色顔料〕
熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層は、PETまたはPBT等の熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂に白色顔料を添加して、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層に含有される熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂が、白色顔料を0.1〜20質量%含有するものであることが好ましい。白色顔料としては、酸化チタン、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、シリカ等があげられ、その形状は、板状、球状、紡錘状等であり、特に限定されない。熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂に、白色顔料を添加することにより、本発明の容器用多層シートから形成された部材を備える容器の耐熱性が向上し、特に、紙製基材の着色が防止され、また、例えば、オーブンやバーナー等による加熱によって、紙製基材に部分的に焦げが生じる場合であっても、焦げが視認しにくくなるので、食品容器としてのイメージが損なわれるおそれがなくなるという効果が奏される。熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂中の白色顔料の含有量は、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂、白色顔料、及び、必要に応じて更に配合されるその他の成分の合計量に対して、好ましくは0.5〜18質量%であり、より好ましくは1〜15質量%である。含有量が少なすぎる場合には、容器用多層シート及び容器の耐熱性向上や紙製基材の着色防止、更に紙製基材に部分的に生じた焦げが視認しにくくなる効果が不十分となることがある。他方、白色顔料の含有量が多すぎる場合は、紙製基材と熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層との接着性が悪くなったり、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層の耐衝撃性が低下したりする場合があり、また20質量%を超える白色顔料を配合しても、先の耐熱性向上、紙製基材の着色防止や焦げが視認しにくくなる効果の更なる改善はみられない。
熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層を形成する熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂において、白色顔料を配合させる方法としては、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂の製造段階、例えば、溶融重縮合時、溶融重縮合直後、予備結晶化直後、固相重合時、固相重合直後等のいずれかの段階、または、製造段階を終えてから製膜段階に至るまでの工程など、種々の段階で配合させることができる。また、製膜段階で、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂原料に、白色顔料を粉粒体として直接に添加する方法で配合させることもできるが、白色顔料を、例えば50〜70質量%と多量に含有するマスターバッチとしてあらかじめ形成しておき、これを熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂原料に添加して溶融混練する方法が好ましい。さらに、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂と白色顔料とをバンバリーミキサー等で加熱混合後、ペレット化する方法によってもよいし、押出混合機等で溶融混合してからペレット状に押し出す方法によってもよい。
〔他の添加剤〕
熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層には、得られる容器の耐熱性や着色防止の効果を損なわない限り、PETまたはPBT等の熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂に、必要に応じて、その他の添加剤、例えば、白色顔料以外の顔料(クレー、タルクなど)、公知の紫外線吸収剤、酸化防止剤、酸素吸収剤、酸素捕獲剤、アルデヒド類の捕獲剤、外部より添加する滑剤や反応中に内部析出させた滑剤、離型剤、核剤、安定剤、帯電防止剤、顔料などの各種の添加剤を、更に配合してもよい。例えば、滑剤等の機能を有する飽和脂肪酸モノアミド、不飽和脂肪酸モノアミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド等を添加することもできる。また、紫外線遮断性樹脂、耐熱性樹脂等の他の樹脂を適当な割合で混合することも可能である。これらの他の添加剤の配合量は、必要とする機能の種類によって異なり、通常10ppb〜30質量%、多くの場合0.01〜20質量%、大半の場合0.1〜15質量%の範囲である。
3.ポリエチレンイミン層
本発明の容器用多層シートは、紙製基材、ポリエチレンイミン層及び熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層を、この順に備える点に特徴を有する。ポリエチレンイミンは、下記の式(1)
Figure 0005753812
で表されるエチレンイミンを、酸触媒を用いて開環重合させたものであり、下記の式(2)
Figure 0005753812
で表される繰り返し単位を有する、通常水溶性の重合体である。ポリエチレンイミンとしては、変性したポリエチレンイミンを用いることが可能であり、例えば、下記の式(3)
Figure 0005753812
で表される繰り返し単位を有する変性ポリエチレンイミンなどを使用することができる。
ポリエチレンイミン層を形成するポリエチレンイミンは、エチレンイミンを重合して調製してもよいし、市販の製品を使用してもよい。市販の製品は、低分子量(数平均分子量が10,000以下のものなど)のものは、液体状のポリエチレンイミンとして、また、高分子量(数平均分子量が50,000以上のものなど)のものは、濃度30質量%程度の水溶液などとして、それぞれ入手することができ、これらを必要に応じて水などの溶剤で希釈して使用することができる。
本発明の容器用多層シートが備えるポリエチレンイミン層を形成するポリエチレンイミンは、数平均分子量が、好ましくは1,000〜150,000、より好ましくは5,000〜140,000、更に好ましくは10,000〜120,000、最も好ましくは40,000〜100,000の範囲のものである。数平均分子量が小さすぎると、紙製基材と熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層との接着強度が不足することがある。数平均分子量が大きすぎると、加工性が悪くなるためポリエチレンイミン層の形成が阻害されることがある。
ポリエチレンイミン層は、後に詳述するように、液体状のポリエチレンイミンまたはポリエチレンイミン溶液、好ましくはポリエチレンイミン水溶液を、紙製基材の表面に塗布する方法を採用して形成することができる。
ポリエチレンイミン水溶液等の塗布は、乾燥後のポリエチレンイミン量として、通常0.001〜2g/m、好ましくは0.005〜1g/m、より好ましくは0.01〜0.5g/mの範囲となるように塗布量を調整すればよい。塗布後のポリエチレンイミン層の厚みは、ポリエチレンイミンが、紙製基材の表面凹凸に埋没したり、紙目に吸収されたりするので、正確に測定するのは困難であるが、通常、0.001〜1.9μm、好ましくは0.005〜0.96μm、より好ましくは0.009〜0.48μmの範囲である。ポリエチレンイミン水溶液等の塗布量が少なすぎると、紙製基材と熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層との接着強度が不足することがある。塗布量が多すぎると、得られる容器用多層シートの紙製基材の着色が強くなることがある。
本発明の容器用多層シートは、紙製基材の熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層の反対側の面に、更にポリエチレンイミン層を備えるものとしてもよい。この場合、容器用多層シートは、紙製基材の両面にポリエチレンイミン層を備えるものとなる。また、更に備えるものとされたポリエチレンイミン層は、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層との接着性に優れ、また、紙製基材の表面を平坦化することにより紙製基材の幅方向及び/または長さ方向の厚み斑を是正する効果を有するので、容器用多層シート同士の接着面として好ましく用いることができる。例えば、容器用多層シートの両面にポリエチレンイミン層を設けることによって、丸めたシートの両端部を重ねて接着して容器の胴部材を得るときの接着強度を確保したり、また、容器の底部材として使用して、容器の胴部材との接続・接合箇所の強度を確保したりすることができる。
さらに、ポリエチレンイミン層は、食品衛生上安全なものであるとともに、グラビア印刷等による印刷面への付着性が良好であるので、本発明の容器用多層シートは、後述する印刷層を介し、または介さずに、容器用多層シートの最外表面層としてポリエチレンイミン層を備えるものであってもよい。
4.印刷層
本発明の容器用多層シートは、更に印刷層を備える容器用多層シートであってもよい。該印刷層は、紙製基材の片面または両面に備えることができる。本発明の容器用多層シートが、更に印刷層を備える容器用多層シートであると、美麗な外観イメージを有するものとすることができ、また、隠蔽性を有する印刷層を備えることによって、仮に、紙製基材に汚れや焦げ目があってもこれらが目立たなくなる効果も期待できる。更に印刷層を備える容器用多層シートは、容器の胴部材または底部材のいずれにも使用することができるが、胴部材として使用することが好ましい。
本発明の容器用多層シートが、更に備える印刷層は、文字、模様、絵などを形成したものでもよいし、単なる着色層でもよい。印刷層を形成するために使用するインクは、水性インク、油性インク、昇華性インクなどを使用することができるが、本発明の容器用多層シートが、食品用容器を形成するためのものである場合は、水性インクまたは昇華性インクを使用することが好ましい。印刷層の形成方法は特に限定されず、グラビア印刷、ロール印刷、スプレー印刷その他の通常の印刷方法でよいが、グラビア印刷により形成された印刷層が好ましい。印刷層の厚みは、特に限定されないが、通常0.01〜200μm、好ましくは0.05〜150μm、より好ましくは0.1〜100μmの範囲とすればよい。
本発明の容器用多層シートが、更に印刷層を備えるものである場合は、該印刷層は、容器用多層シートの最外表面に備えられるものでもよい。また、該印刷層の上面に、ポリエチレンイミン層を形成し、次いで、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層を形成することもできる。
したがって、本発明の容器用多層シートが印刷層を備える場合の好ましい態様としては、i)紙製基材、印刷層、ポリエチレンイミン層及び熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層を、この順に備える容器用多層シート、ii)印刷層、紙製基材、ポリエチレンイミン層及び熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層を、この順に備える容器用多層シート、iii)ポリエチレンイミン層、紙製基材、印刷層、ポリエチレンイミン層及び熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層を、この順に備える容器用多層シート、iv)ポリエチレンイミン層、印刷層、紙製基材、ポリエチレンイミン層及び熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層を、この順に備える容器用多層シート、または、v)ポリエチレンイミン層、印刷層、紙製基材、印刷層、ポリエチレンイミン層及び熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層を、この順に備える容器用多層シートなどがあげられる。
5.その他の層
本発明の容器用多層シートは、必要に応じて、更に他の層を備えるものとすることができる。例えば、本発明の容器用多層シートは、バリア層、印刷インキ受理層や接着剤層などを備えることができる。これらのその他の層の厚みは、特に限定されないが、通常0.01〜200μm、好ましくは0.05〜150μm、より好ましくは0.1〜100μm程度の範囲である。
〔バリア層〕
本発明の容器用多層シートは、該容器用多層シートから形成した部材を備える容器に対して、外部から侵入する酸素に対する酸素バリア性や、内容物の香味成分を容器外に散逸させないフレーバーバリア性を付与するために、バリア層を更に備えるものとすることができる。バリア層は、アルミニウム箔等の金属薄膜、二酸化ケイ素等の無機酸化物薄膜などを使用することができるが、電子レンジ加熱特性の観点から金属薄膜の使用は、望ましくないことがある。
また、本発明の容器用多層シートが備えるバリア層は、バリア性樹脂から形成したものとすることができる。バリア性樹脂としては、ポリアミド(MXDナイロン等)、ポリ塩化ビニリデン、エチレン・ビニルアルコール共重合体(いわゆるEVOH)、アクリル酸系バリア性樹脂などがあげられる。酸素バリア性、フレーバーバリア性及び加工適性のバランスを考慮すると、EVOHやMXDナイロンが好ましい。
〔インキ受理層〕
本発明の容器用多層シートは、印刷層を形成する面に、顔料とバインダーを含有するインキ受理層を更に設けてなるものでもよい。
〔接着剤層〕
本発明の容器用多層シートは、必要に応じて、接着剤から形成される接着剤層を備えてもよいが、容器用多層シートから形成した部材を備える容器に充填した食品を加熱調理するに際して、有機溶剤が揮発するおそれなどがあることから、接着剤の使用が好ましくないこともある。使用できる接着剤としては、カルボキシル基、酸無水物基、水酸基、カルボニル基、グリシジル基(エポキシ基)、イソシアネート基、アミノ基、イミド基、ウレタン結合基などの官能基を有する接着性樹脂等が好ましい。例えば、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂、グリシジル基含有エチレンコポリマー、熱可塑性ポリウレタン、ポリアミド・アイオノマー、ポリアクリルイミド樹脂、酸変性線状低密度ポリエチレンなどの接着性樹脂をあげることができる。
6.容器用多層シート
本発明の容器用多層シートとしては、例えば、図2(a)に示す紙製基材1、ポリエチレンイミン層2及び熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層3からなる容器用多層シート、図2(b)に示す印刷層4、紙製基材1、ポリエチレンイミン層2及び熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層3からなる容器用多層シート、図2(c)に示すポリエチレンイミン層2’、紙製基材1、ポリエチレンイミン層2及び熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層3からなる容器用多層シートなどがある。容器用多層シートの全体厚みは、通常52μm〜2.2mm、好ましくは100μm〜1.5mm、より好ましくは150μm〜1mm、更に好ましくは200〜700μmの範囲から適宜選定することができる。容器用多層シートの厚みは、断面写真を利用して測定する(容器用多層シートの各層の厚みについても同様である。)。なお、図2は、本発明の容器用多層シートの層構成の理解を容易とするための模式図であり、厚みの比率は、正確な縮尺となってはいない。
〔容器用多層シートの接着強度〕
本発明の容器用多層シートは、紙製基材と熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層との間の接着強度(以下、単に「容器用多層シートの接着強度」ということがある。)が高いものである。容器用多層シートの接着強度は、以下の方法により測定し、評価する。すなわち、容器用多層シートから幅15mm長さ150mmに切り出した試料を、JIS K6854−3に準拠して、T型剥離強度を測定し、n=5の平均値を、容器用多層シートのT型剥離強度とする。測定条件は、チャック間距離100mm、引張速度200mm/分とし、接着強度はgf/15mmを単位として表す。接着強度(T型剥離強度)が250gf/15mm以上であるか、紙製基材の材料破壊であれば、容器用多層シートは、接着強度が高いと評価でき、加熱調理食品用の容器に適用するのに好適である。容器用多層シートの接着強度は、好ましくは290gf/15mm以上、より好ましくは300gf/15mm以上である。
〔容器用多層シートの耐熱性〕
本発明の容器用多層シートは、耐熱性が優れたものである。容器用多層シートの耐熱性は、以下の方法により測定し、評価する。すなわち、容器用多層シートから幅10cm長さ10cmに切り出した試料を、温度150℃に保持したオーブン中に水平に置き、15分間経過後に取り出し、室温で30分間冷却した後、JIS P8148に準拠して、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層側の白色度を測定し、n=5の平均値を、容器用多層シートの白色度とする。測定された白色度が70%以上であれば、耐熱性があると評価でき、特に白色度が75%であれば、耐熱性が優れていると評価でき、例えば温度280℃で3分間加熱するなど、温度300℃近くに達することがあるグラタン等の加熱調理を行っても、紙製基材が着色したり、焦げの発生が目立ったりすることがない。
7.容器用多層シートの製造方法
本発明の容器用多層シートの製造方法は、紙製基材、ポリエチレンイミン層及び熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層を、この順に備える容器用多層シートを得ることができる限り、特に限定されない。例えば、あらかじめポリエチレンイミン層を形成した紙製基材の該ポリエチレンイミン層の上に、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂フィルムまたはシート(二軸延伸フィルム、一軸延伸フィルム、無延伸フィルム等)を、接着剤による接着、または、加熱加圧溶着などの方法によって積層する製造方法でもよいが、好ましくは、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂を、あらかじめポリエチレンイミン層を形成した紙製基材の該ポリエチレンイミン層の上面に溶融押出する工程を含む容器用多層シートの製造方法である。
〔あらかじめポリエチレンイミン層を形成した紙製基材の形成〕
あらかじめポリエチレンイミン層を形成した紙製基材は、紙製基材(片面または両面に印刷層を備えてもよい。)の表面に、液体状のポリエチレンイミンまたはポリエチレンイミン溶液を塗布することによって製造することができる。食品衛生及び作業の安全とコストの観点から、ポリエチレンイミン水溶液を塗布することが好ましい。均一な厚みのポリエチレンイミン層を形成することができることから、ポリエチレンイミン水溶液として、温度25℃における粘度が、好ましくは5〜5,000mPa・s、より好ましくは10〜3,000mPa・s、更に好ましくは15〜2,000mPa・s、特に好ましくは20〜1,000mPa・sの範囲であるポリエチレンイミン水溶液を塗布すると、均一な厚みのポリエチレンイミン層を得ることができる。ポリエチレンイミン水溶液の粘度は、ザーンカップ#3を使用して、温度25℃で測定したものである。
使用するポリエチレンイミンとしては、紙製基材と熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層との接着強度、及び加工性の観点から、数平均分子量が、好ましくは1,000〜150,000、より好ましくは5,000〜140,000、更に好ましくは10,000〜120,000、最も好ましくは40,000〜100,000の範囲のものを使用するとよい。また、上記の好ましい粘度の水溶液を得るために、ポリエチレンイミン水溶液中のポリエチレンイミンの濃度は、通常0.1〜30質量%、好ましくは0.5〜20質量%、より好ましくは1.0〜10質量%とするとよい。所定の特性が得られる場合は、液体状のポリエチレンイミンやポリエチレンイミン水溶液を調製することなく、市販のポリエチレンイミン水溶液を使用し、または、必要に応じてこれを水で希釈する方法によってもよい。
紙製基材の表面に、液体状のポリエチレンイミンまたはポリエチレンイミン溶液を塗布する方法は、特に限定されず、グラビアコート、フレキソコート、ロールコート、スプレーコート、ナイフコート、ディップコートその他の通常の塗布方法が採用できる。液体状のポリエチレンイミンまたはポリエチレンイミン溶液、特にポリエチレンイミン水溶液の塗布量は、乾燥後のポリエチレンイミン量として、通常0.001〜2g/m、好ましくは0.005〜1g/m、より好ましくは0.01〜0.5g/mの範囲である。
紙製基材の表面にポリエチレンイミン層を形成すると、ポリエチレンイミンが塩基性であるために、紙製基材の表面(実質的には、ポリエチレンイミン層である。)のpHが大きくなる。例えば、ポリエチレンイミン層を形成する前の紙製基材の表面のpHが5程度である場合、ポリエチレンイミン層を形成した後の紙製基材の表面、すなわちポリエチレンイミン層のpHが7を超える程度に上昇する。上述のとおり、ポリエチレンイミン層の厚みは極めて小さく、断面写真等によっても視認が難しいが、pHの上昇によって、紙製基材の表面にポリエチレンイミン層が形成されていることが分かる。本発明によれば、あらかじめポリエチレンイミン層を形成した紙製基材の該ポリエチレンイミン層の上面に熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層を形成することによって、紙製基材と熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層との接着強度が高い容器用多層シートが得られる。あらかじめポリエチレンイミン層を形成した紙製基材を得てから、該ポリエチレンイミン層の上面に熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層を形成する時期まで、該あらかじめポリエチレンイミン層を形成した紙製基材は、多くの場合数日間、場合によっては数週間、更に条件によっては数か月間、常温〜温度40℃程度の環境下に保存保管されることがある。保存保管をしている間にポリエチレンイミン層のpHが変化することがあるが、ポリエチレンイミン層のpHが、6以上、好ましくは6.5以上、より好ましくは7以上であれば、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層の形成に支障がなく、紙製基材と熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層との間の接着強度が高く、耐熱性にも優れた容器用多層シートを得ることができるので、加熱調理食品用の容器に適用するのに好適である。
本発明の容器用多層シートが、紙製基材の熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層の反対側の面に、更にポリエチレンイミン層を備えるものである場合は、紙製基材の両面に順次ポリエチレンイミンを塗布してもよいし、紙製基材の両面に同時にポリエチレンイミンを塗布してもよい。
紙製基材に対するポリエチレンイミンの付着性を向上させるために、ポリエチレンイミンの塗布に先だって、紙製基材の表面に、コロナ放電処理、フレーム処理、プラズマイオン処理またはオゾン処理を施す工程を含むものとしてもよい。これらコロナ放電処理等の処理を施す工程は、常法に従って行うことができる。
〔熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層の形成〕
本発明の容器用多層シートが備える熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層の形成は、上記の方法によって得られたあらかじめポリエチレンイミン層を形成した紙製基材の該ポリエチレンイミン層の上に、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂を溶融押出する工程を含むことによって行うことが好ましい。熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂を溶融押出する工程を含む熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層を形成する方法は、常法に従って行うことができる。具体的には、汎用の押出機を使用して、PETまたはPBT等の熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂を、シリンダー内で融点以上に加熱して溶融し、前記の紙製基材の上に、Tダイを通して溶融樹脂を層状に押し出したり、ノズル状のダイを幅方向に往復動させながら溶融樹脂を棒状に押し出して、該溶融樹脂を層状に展開したりした後に、該樹脂が結晶固化前の軟化状態にあるときに、一対のロールの間で、またはロールとプレートとの間で押圧等を行って、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂を紙製基材に層状に圧接させる方法などがある。熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層の厚みは、使用する熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂の固有粘度や組成、シリンダー内での加熱温度、ダイからの押出温度や押出速度、紙製基材に圧接するときの温度や移送速度等を調整することによって、所望の範囲とすることができる。ポリエチレンイミン層に対する熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂の付着性を向上させるために、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層の形成に先だって、ポリエチレンイミン層に、コロナ放電処理、フレーム処理、プラズマイオン処理またはオゾン処理を施す工程を含むものとしてもよい。
以上述べたところを総合すると、本発明の容器用多層シートは、典型的には、図1に模式的に示される製造ラインにより製造することができる。すなわち、紙製基材1(あらかじめ印刷層4を形成したものでもよい。)をロールから繰り出す。紙製基材1を送りロール(図示しない)で支持した状態で、塗装機6を使用して、紙製基材1の表面に、ポリエチレンイミン水溶液61を供給し、ポリエチレンイミンを塗布して、あらかじめポリエチレンイミン層2を設けた紙製基材1を得る。次いで、紙製基材1の表面に形成したポリエチレンイミン層2を、コロナ放電処理機7を用いてコロナ放電処理する。続いて、押出成形機8内で、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂(白色顔料を含有してもよい。)81を加熱溶融させ、Tダイから、先のあらかじめポリエチレンイミン層2を形成した紙製基材1の該ポリエチレンイミン層の上面に、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂81を層状に押し出す。熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂81が結晶固化する前の溶融軟化状態にあるときに、一対のロール9、9’間で押圧して、紙製基材1、ポリエチレンイミン層2及び熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層3を備える容器用多層シート5を得て、ロールに巻き取る。
容器用多層シート5が、紙製基材の熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層の反対側の面に、更にポリエチレンイミン層2’を備える容器用多層シートである場合には、紙製基材1に対して、塗装機6と対向する位置にポリエチレンイミン水溶液61を塗装することができる塗装装置を設けて、紙製基材1の両面に同時にポリエチレンイミン層2、2’を形成するようにしてもよいし、紙製基材1の両面に時期をずらせてポリエチレンイミン層2、2’を形成するようにしてもよい。
図1に示した製造ラインの模式図においては、紙製基材にポリエチレンイミン層を形成した後、連続的に、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層の形成を行っている。しかし、紙製基材へのポリエチレンイミン層の形成から熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層の形成までを、一連のラインで実施する方法(1パス方式)のほかに、紙製基材へのポリエチレンイミン層の形成と熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層の形成とを、別々のラインで実施する方法(2パス方式)によることもできる。2パス方式による場合は、紙製基材へのポリエチレンイミン層の形成を行うラインにおいて、紙製基材への印刷層の形成を併せて実施してもよい。2パス方式によって容器用多層シートを製造する方法は、あらかじめポリエチレンイミン層を形成した紙製基材を、常温雰囲気下に適宜の期間保存した後に、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層の形成を行うことができるので、製造工程管理の諸事情を考慮して、容器用多層シートを製造することができ、効率的である。上記の保存期間としては、通常1か月間以内であればよく、好ましくは14日間以内、より好ましくは10日間以内とすることが多い。半年間程度の保存期間の後に、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層の形成を行っても、紙製基材と熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層との間の接着強度が高く、耐熱性にも優れた本発明の容器用多層シートを得ることができる。
8.容器
本発明によれば、本発明の容器用多層シートから形成された部材を備える容器を得ることができる。そのような容器としては、カップ状容器、皿状容器、箱状容器などの種々の形状のものがあり、グラタン、ドリア、ラザニア、ピザ、焼きカレー、焼きおにぎり等の加熱調理食品用の容器としても使用できる。容器用のシートから容器を製造する方法は、それ自体広く知られており、例えば、1枚の容器用のシートに所定の切り込みや切り欠きを入れた後、折りたたみ及び接着を施すことによって容器を得る方法、1枚の容器用のシートを軟化させて熱成形(真空成形、圧空成形、深絞り等)することによって容器を得る方法、容器用のシートから胴部材または底部材の一方または両方をそれぞれ形成した後、胴部材と底部材とを一体化させることにより容器を得る方法などがある。
本発明によれば、本発明の容器用多層シートから形成された胴部材または底部材を備える容器を得ることができ、該容器は、グラタン等の加熱調理食品用の容器としても使用できる。
グラタン等の加熱調理食品用などに使用される容器としても知られる胴部材及び底部材を備える容器は、例えば図3に示されるような、比較的高さが低い略筒状の胴部材と、該胴部材と接合された底部材とを備える皿状容器10などである。こうした容器は、それ自体広く知られたものであり、通常、胴部材の上端は外側に巻かれ、胴部材の下端は内側に折り返されている(図示しない)。一方、底部材の周縁は外側に屈曲しており、胴部材の下端の折り返し部分と、底部材の周縁の屈曲部分とが接合されている(図示しない)。胴部材及び/または底部材には、各種印刷を施しておくことができる。図3では、略円筒状の短い胴部材と、略円形状の底部材とからなる略円形皿状の容器が例示されている。このような略円形皿状の容器を製造する方法も、それ自体広く知られたものであり、例えば、あらかじめ形成した広幅(例えば、幅1000mm程度)の容器用多層シートの原反を、印刷位置に合わせてライン取りスリットし、次いで、パンチング機(打ち抜き機)を使用して、印刷したカットマークに合わせて扇状にブランクカットを行う。続いて、容器成形機を使用して、ブランクカットしたシート材の両端部を接合して略円筒状の短い胴部材を形成し、該胴部材の下端部を所定の形状に折り曲げ、また、別途形成した略円形状の底部材の周縁部を所定の形状に折り曲げ、接合部を熱板で加熱圧着により接合して皿状容器を得ることができる。胴部材を形成するシート材(容器用多層シートの原反)と、底部材を形成するシート材(容器用多層シートの原反)とは、同一のシート材を使用してもよいし、層構成及び/または組成を異にするシート材を使用してもよい。
〔容器の耐熱性〕
本発明の容器は、耐熱性が優れたものである。容器の耐熱性は、容器用多層シートの耐熱性と同様の方法により白色度を測定して、評価することができる。すなわち、胴部材と底部材とから形成された容器から幅10cm長さ10cmに切り出した試料を、温度150℃に保持したオーブン中に水平に置き、15分間経過後に取り出し、室温で30分間冷却した後、JIS P8148に準拠して、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層側の白色度を測定し、n=5の平均値を、容器の白色度とする。測定された白色度が70%以上であれば、耐熱性があると評価でき、特に白色度が75%であれば、耐熱性が優れていると評価でき、例えば温度280℃で3俯瞰加熱するなど、温度300℃近くに達することがあるグラタン等の加熱調理を行っても、容器の紙製基材が着色したり、焦げの発生が目立ったりすることがない。
以下、実施例及び比較例をあげて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。容器用多層シート及び容器等の特性等は、以下の方法によって測定した。
〔ポリエチレンイミン層のpH〕
ポリエチレンイミン層のpHは、株式会社共立理化学研究所製の紙面用pH測定セットを使用して測定した。具体的には、あらかじめポリエチレンイミン層を形成した紙製基材のポリエチレンイミン層の上に、滴ビンから試験液を一滴落とし、落下した液滴を脱脂綿または綿棒等で塗り広め、試験液が生乾きになったときに標準色と比色して、最も近い色を示すpHの値を読み取って、ポリエチレンイミン層のpHとした。
〔ポリエチレンイミン水溶液の粘度〕
ポリエチレンイミン水溶液の粘度は、ザーンカップ#3を使用して、温度25℃で測定した。
〔容器用多層シートの接着強度(T型剥離強度)〕
容器用多層シートの接着強度の測定は、容器用多層シートから幅15mm長さ150mmに切り出した試料を、JIS K6854−3に準拠して、T型剥離強度を測定し、n=5の平均値を、容器用多層シートの接着強度とした。測定条件は、チャック間距離100mm、引張速度200mm/分とし、接着強度(T型剥離強度)はgf/15mmを単位として表した。
〔容器用多層シート及び容器の耐熱性(オーブン加熱後の白色度)〕
容器用多層シート及び容器の耐熱性の測定は、白色度の測定によって行った。すなわち、容器用多層シートから幅10cm長さ10cmに切り出した試料を、温度150℃に保持したオーブン(東京理化器械株式会社製の送風定温乾燥機)中に水平に置き、15分間経過後に取り出し、室温で30分間冷却した後、JIS P8148に準拠して、日本平版機材株式会社製の分光濃度計X−rite500を使用して、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層側の白色度を測定し、n=5の平均値を、容器用多層シートの白色度とした。容器の耐熱性は、オーブン加熱後の容器から試料を切り出して、同様の方法で白色度を測定した。また、オーブン中における加熱前の容器用多層シートの白色度も測定した。
[製造例1]容器用多層シート(1)の製造
〔あらかじめポリエチレンイミン層を形成した紙製基材の形成〕
紙製基材として、日本製紙株式会社製の幅1030mmのカップ原紙(坪量250g/m、厚み278μm)を原紙ロールから巻き出し、該紙製基材の上面に、樹脂分濃度30質量%のポリエチレンイミン水溶液〔株式会社日本触媒製のエポミン(登録商標)P−1000。ポリエチレンイミンの数平均分子量70,000、温度25℃における粘度700mPa・s、pH11.8〕を純水で更に1/10の濃度となるように希釈した(樹脂分濃度3質量%)ポリエチレンイミン水溶液(温度25℃における粘度30mPa・s)を、グラビア印刷機(富士機械工業株式会社製)を使用して、樹脂分として0.09g/mとなるように塗布し、乾燥して、あらかじめポリエチレンイミン層を形成した紙製基材を得て、ロールに巻き取った。ポリエチレンイミン層のpHは、7.3であった。
〔白色顔料を含有するPET層の形成〕
常温で1日間(24時間)保管した上記のあらかじめポリエチレンイミン層を形成した紙製基材をロールから巻き出した。Tダイを備える押出成形機(住友重機械モダン株式会社製。シリンダー径90mm)のホッパーに、PET(日本ユニペット株式会社製。固有粘度0.75dl/g)と、酸化チタン濃度60質量%である白色顔料混合PET用マスターバッチ(大日精化工業株式会社製)とを、PET95質量部及びマスターバッチ5質量部の比率で供給して、温度280〜300℃で溶融し、前記のあらかじめポリエチレンイミン層を形成した紙製基材のポリエチレンイミン層(pH7.3)の上面に、Tダイ(幅1300mm、リップ間隙0.8mm)から押し出し、紙製基材を覆うように層状に広げた。次いで、PETが結晶固化する前の軟化状態にある間に、表面温度18℃の冷却ロール9と押圧ロール9’との間で、厚み35μmとなるように押圧することによって、紙製基材、ポリエチレンイミン層及び白色顔料を含有するPET層(白色顔料3質量%含有)を、この順に備える厚み313μmの容器用多層シート(1)を得た。
[製造例2]容器用多層シート(2)の製造
常温で1日間(24時間)保管したあらかじめポリエチレンイミン層を形成した紙製基材に代えて、常温で3日間保存したあらかじめポリエチレンイミン層を形成した紙製基材を使用したことを除いて、実施例1と同様にして、紙製基材、ポリエチレンイミン層及び白色顔料を含有するPET層を、この順に備える容器用多層シート(2)を得た。常温で3日間保存後のポリエチレンイミン層はpH7.3であった。
[製造例3]容器用多層シート(3)の製造
常温で1日間(24時間)保管したあらかじめポリエチレンイミン層を形成した紙製基材に代えて、常温で7日間保存したあらかじめポリエチレンイミン層を形成した紙製基材を使用したことを除いて、実施例1と同様にして、紙製基材、ポリエチレンイミン層及び白色顔料を含有するPET層を、この順に備える容器用多層シート(3)を得た。常温で7日間保存後のポリエチレンイミン層はpH7.2であった。
[製造例4]容器用多層シート(4)の製造
白色顔料混合PET用マスターバッチを使用せず、上記のPETを使用してPET層を形成したことを除いて、製造例1と同様にして、紙製基材、ポリエチレンイミン層及びPET層を、この順に備える容器用多層シート(4)を得た。
[製造例5]容器用多層シート(5)の製造
白色顔料混合PET用マスターバッチを使用せず、上記のPETを使用してPET層を形成したことを除いて、製造例2と同様にして、紙製基材、ポリエチレンイミン層及びPET層を、この順に備える容器用多層シート(5)を得た。
[製造例6]容器用多層シート(6)の製造
白色顔料混合PET用マスターバッチを使用せず、上記のPETを使用してPET層を形成したことを除いて、製造例3と同様にして、紙製基材、ポリエチレンイミン層及びPET層を、この順に備える容器用多層シート(6)を得た。
[比較製造例1]多層シート(7)の製造
紙製基材として、あらかじめポリエチレンイミン層を形成した紙製基材を使用せず、上記のカップ原紙を使用したことを除いて、製造例1と同様にして、紙製基材及び白色顔料を含有するPET層からなる多層シート(7)を得た。紙製基材の表面はpH5.0であった。
[比較製造例2]多層シート(8)の製造
ポリエチレンイミン水溶液に代えて、ポリウレタン系アンカーコート剤〔日本曹達株式会社製の2液溶剤型ポリウレタン系アンカーコート剤。チタボンド(登録商標)T−120A、硬化剤:T−300、希釈剤:酢酸エチル〕を乾燥樹脂量として、0.16g/mの塗布量で使用したことを除いて、製造例1と同様にして、すなわち、常温で1日間(24時間)保管した、あらかじめポリウレタン層を形成した紙製基材を使用して、紙製基材、ポリウレタン層及び白色顔料を含有するPET層を、この順に備える多層シート(8)を得た。得られた多層シート(8)は、僅かに、ポリウレタン系アンカーコート剤に基づく有機溶剤臭があった。
[比較製造例3]多層シート(9)の製造
常温で3日間保管したあらかじめポリウレタン層を形成した紙製基材を使用したことを除いて、比較製造例2と同様にして、紙製基材、ポリウレタン層及び白色顔料を含有するPET層を、この順に備える多層シート(9)を得た。得られた多層シート(9)は、僅かに、ポリウレタン系アンカーコート剤に基づく有機溶剤臭があった。
[比較製造例4]多層シート(10)の製造
常温で7日間保管したあらかじめポリウレタン層を形成した紙製基材を使用したことを除いて、比較製造例2と同様にして、紙製基材、ポリウレタン層及び白色顔料を含有するPET層を、この順に備える多層シート(10)を得た。得られた多層シート(10)は、僅かに、ポリウレタン系アンカーコート剤に基づく有機溶剤臭があった。
[実施例1]
製造例1で得た容器用多層シート(1)について、容器用多層シートの接着強度及び耐熱性(オーブン加熱前及び加熱後の白色度)を測定した。結果を表1に示す。
[実施例2、3、実施例4〜6(本発明では参考例となる。)
製造例2〜6で得た容器用多層シート(2)〜(6)について、それぞれ容器用多層シートの接着強度及び耐熱性(オーブン加熱前及び加熱後の白色度)を測定した。結果を表1に示す。
[比較例1〜4]
比較製造例1〜4で得た多層シート(7)〜(10)について、それぞれ多層シートの接着強度及び耐熱性(オーブン加熱前及び加熱後の白色度)を測定した。結果を表1に示す。なお、比較製造例2で得た多層シート(8)は、試料により接着強度のバラツキが大きかった。また、比較製造例1で得た多層シート(7)と比較製造例3及び4で得た多層シート(9)及び(10)は、手で軽く折り曲げると紙製基材とPET層が剥離した。
Figure 0005753812
表1の結果から、本発明の紙製基材、ポリエチレンイミン層及びPET層(熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層)を、この順に備える実施例1〜6の容器用多層シート(1)〜(6)は、あらかじめポリエチレンイミン層を形成した紙製基材を、常温で1日間、3日間または7日間保管した後に、PET層を形成して得られた容器用多層シートのいずれについても、紙製基材とPET層(熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層)との接着強度(T型剥離強度)が、295〜350gf/15mmであり、接着強度が高いものであることが確認され、また、耐熱性も70〜78%であり、グラタン等の加熱調理に適した容器用多層シートであることが分かった。
特に、紙製基材、ポリエチレンイミン層及び白色顔料を含有するPET層(熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層)を、この順に備える実施例1〜3の容器用多層シートは、紙製基材とPET層(熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層)との接着強度が高く、また、オーブン加熱後の白色度が77〜78%であって、接着強度と耐熱性とのバランスに優れた容器用多層シートであることが分かった。
これに対して、あらかじめポリエチレンイミン層を形成した紙製基材を使用することなく得られた、紙製基材及びPET層からなる比較例1の多層シート(7)は、紙製基材とPET層とのT型剥離強度が、65gf/15mmであり、接着強度が極めて不十分であることが分かった。
また、ポリエチレンイミン層に代えて、従来、紙製基材に対する熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層の接着性を高めるために、容器用多層シート材の製造に際して、広く使用されているアンカーコート剤であるポリウレタンを使用して得られた、紙製基材、ポリウレタン層及び白色顔料を含有するPET層を、この順に備える比較例2〜4の多層シート(8)〜(10)は、紙製基材とPET層とのT型剥離強度が、100〜240gf/15mmであり、接着強度が十分でなく、しかも、保存期間が1日間から7日間に延びるにつれて、接着性が、急速に低下することが分かった。なお、先に述べたように、多層シート(9)及び(10)は、手で軽く折り曲げると紙製基材とPET層が剥離するので、容器を形成するための成型加工をすることが困難であることが推察された。
[製造例7]印刷層を備える容器用多層シート(7)の製造
製造例1において使用したカップ原紙の片面にグラビア印刷によって焦げ茶色単色インキ(東洋インキ株式会社製)の印刷層(厚み1μm)を形成し、次いで、印刷層の反対側の面に上記のポリエチレンイミン層を形成したことを除いて、製造例1と同様にして、あらかじめ印刷層とポリエチレンイミン層とを形成した紙製基材を得た。続いて、製造例1と同様にして、印刷層、紙製基材、ポリエチレンイミン層及び白色顔料を含有するPET層を、この順に備える容器用多層シート(7)(厚み314μm)を得た。
[製造例8]更にポリエチレンイミン層を備える容器用多層シート(8)の製造
製造例1において使用したカップ原紙の両面にポリエチレンイミン層を形成したことを除いて、製造例1と同様にして、ポリエチレンイミン層、紙製基材、ポリエチレンイミン層及び白色顔料を含有するPET層を、この順に備える容器用多層シート(8)(厚み313μm)を得た。容器用多層シート(8)は、ポリエチレンイミン層を最外層に備える容器用多層シートである。
[実施例7](皿状容器の製造)
製造例7で得た印刷層を備える容器用多層シート(7)を、印刷位置に合わせてライン取りスリットし、パンチング機(打ち抜き機)を使用して、印刷したカットマークに合わせて扇状にブランクカットを行った。次いで、容器成形機を使用して、ブランクカットした容器用多層シート(7)を、印刷層が外側、PET層が内側となるように丸め、両端部を熱板で加熱圧着して接合し、下部の径150mm、上部の径160mm及び高さ50mmの略円錐台形である容器の胴部材を調製した。一方、製造例8で得た更にポリエチレンイミン層を備える容器用多層シート(8)(ポリエチレンイミン層を最外層に備える容器用多層シート)から、パンチング機(打ち抜き機)を使用して、径160mmの円状のシートを打ち抜いて、容器の底部材を調製した。続いて、容器成形機を使用して、前記容器の胴部材の下端部を所定の形状に折り曲げ、次いで、別途形成した前記容器の底部材の周縁部を所定の形状に折り曲げ、接合部を熱板で加熱圧着により接合して、下部の径150mm、上部の径160mm及び高さ約40mmの略円錐台形の皿状容器を得た。この皿状容器は、温度150℃に保持したオーブン(東京理化器械株式会社製の送風定温乾燥機)中に水平に置き、15分間経過後に取り出し、室温で30分間冷却した後、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層側の白色度を測定したところ、オーブン加熱後の白色度は77%であり、胴部材、底部材及び胴部材と底部材との接合部分のいずれにも、変形や変色や焦げはみられなかった。
本発明によれば、紙製基材、ポリエチレンイミン層及び熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層を、この順に備えることを特徴とする容器用多層シートとすることにより、紙製基材と樹脂層との接着強度が高く、グラタン等の加熱調理に適した容器用多層シートが提供され、特に、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層に含有される熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂が、ポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートであることにより、及び/または、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層を、白色顔料を0.1〜20質量%含有する熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂からなるものとすることによって、得られる紙製容器の耐熱性が向上し、オーブンやバーナー等による加熱によっても、紙製基材に着色や焦げがみられないようになるので、食品容器としてのイメージが改善され、産業上の利用可能性が高い。
さらに、本発明によれば、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂を、あらかじめポリエチレンイミン層を形成した紙製基材の該ポリエチレンイミン層の上面に溶融押出する工程を含む前記の容器用多層シートの製造方法であることにより、紙製基材と樹脂層との接着強度が高く、オーブンやバーナー等による加熱によっても、紙製基材に焦げがみられず、食品容器としてのイメージが改善される容器用多層シートの製造方法が提供されるので、産業上の利用可能性が高い。
1: 紙製基材
2、2’: ポリエチレンイミン層
3: 熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層
4: 印刷層
5: 容器用多層シート
6: 塗装機
61: ポリエチレンイミン水溶液
7: コロナ放電処理機
8: 押出成形機
81: 熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂
9: 冷却ロール
9’:押圧ロール
10: 容器

Claims (12)

  1. 紙製基材、ポリエチレンイミン層及び熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層を、この順に備える、加熱調理食品容器用多層シートであって、
    該熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層に含有される熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂が、
    (1)ポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートであり、かつ、
    (2)白色顔料を0.1〜20質量%含有する
    ことを特徴とする加熱調理食品容器用多層シート。
  2. 紙製基材の熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層の反対側の面に、更にポリエチレンイミン層を備える請求項1記載の加熱調理食品容器用多層シート。
  3. 更に印刷層を備える請求項1または2記載の加熱調理食品容器用多層シート。
  4. ポリエチレンイミン層が、数平均分子量1,000〜150,000であるポリエチレンイミンから形成されたものである請求項1乃至3のいずれか1項に記載の加熱調理食品容器用多層シート。
  5. 熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂層が、あらかじめポリエチレンイミン層を形成した紙製基材の該ポリエチレンイミン層の上面に溶融押出して得られたものである請求項1乃至4のいずれか1項に記載の加熱調理食品容器用多層シート。
  6. 熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂を、あらかじめポリエチレンイミン層を形成した紙製基材の該ポリエチレンイミン層の上面に溶融押出する工程を含む請求項1乃至5のいずれか1項に記載の加熱調理食品容器用多層シートの製造方法。
  7. pHが6以上であるポリエチレンイミン層の上面に、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂を溶融押出する請求項6記載の加熱調理食品容器用多層シートの製造方法。
  8. 紙製基材に、コロナ放電処理、フレーム処理、プラズマイオン処理またはオゾン処理を施す工程を含む請求項6または7記載の加熱調理食品容器用多層シートの製造方法。
  9. 紙製基材の表面に、温度25℃における粘度が5〜5,000mPa・sであるポリエチレンイミン水溶液を塗布する工程を含む請求項6乃至8のいずれか1項に記載の加熱調理食品容器用多層シートの製造方法。
  10. ポリエチレンイミン層に、コロナ放電処理、フレーム処理、プラズマイオン処理またはオゾン処理を施す工程を含む請求項6乃至9のいずれか1項に記載の加熱調理食品容器用多層シートの製造方法。
  11. 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の加熱調理食品容器用多層シートから形成された部材を備える加熱調理食品用容器。
  12. 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の加熱調理食品容器用多層シートから形成された胴部材または底部材を備える加熱調理食品用容器。
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