定義:
本明細書において、
「ポリエステル」とは、ジオール単位とジカルボン酸単位との重縮合反応により得られるものである。
「化石燃料ポリエステル」とは、化石燃料由来のジオールをジオール単位とし、化石燃料由来のジカルボン酸をジカルボン酸単位とするものである。
「バイオマスポリエステル」とは、ジオール単位としてバイオマス由来のエチレングリコールを含み、ジカルボン酸単位として化石燃料由来のジカルボン酸を含むものであり、バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のジカルボン酸をジカルボン酸単位とするポリエステルのみで形成されていてもよいし、バイオマス由来のエチレングリコールおよび化石燃料由来のジオールをジオール単位とし、化石燃料由来のジカルボン酸をジカルボン酸単位とするポリエステルで形成されていてもよい。
「リサイクルポリエステル」とは、ジオール単位として化石燃料由来のジオールおよび/またはバイオマス由来のエチレングリコールを含み、ジカルボン酸単位として化石燃料由来のジカルボン酸を含むポリエステルを含むポリエステル樹脂製品をリサイクルして得られるものである。
「リサイクル化石燃料ポリエステル」とは、化石燃料ポリエステルを用いて形成されたポリエステル樹脂製品をリサイクルして得られるものである。
「リサイクルバイオマスポリエステル」とは、バイオマスポリエステルを用いて形成されたポリエステル樹脂製品をリサイクルして得られるものである。
「ポリエチレンテレフタレート(PET)」とは、ポリエステルのうち、ジオールとしてエチレングリコールをジオール単位とし、ジカルボン酸単位としてテレフタル酸をジカルボン酸単位とするものである。
「化石燃料PET」とは、ジオールとして化石燃料由来のエチレングリコールをジオール単位とし、ジカルボン酸単位として化石燃料由来のテレフタル酸をジカルボン酸単位とするものである。
「バイオマスPET」とは、ジオールとしてバイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし、ジカルボン酸単位として化石燃料由来のテレフタル酸をジカルボン酸単位とするものである。
「メカニカルリサイクルPET」とは、ジオール単位として化石燃料由来のジオールおよび/またはバイオマス由来のエチレングリコールを含み、ジカルボン酸単位として化石燃料由来のジカルボン酸を含むポリエステルを含むポリエステル樹脂製品をリサイクルして得られるものである。
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)を図面に基づいて詳細に説明する。なお、下記実施形態により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
また、層構造などの説明の便宜上、下記に示す例においてはバイオマスポリエステル層を下に配置した図と共に説明がなされるが、本発明は、必ずしもこの配置で使用などがなされるわけではない。なお、以下の説明において、層の厚み方向の一方を上または上方といい、層の厚み方向の他方を下または下方という場合がある。
<ポリエステルフィルム>
本発明によるポリエステルフィルムについて説明する。本発明によるポリエステルフィルムは、少なくとも、第1の層と第2の層を備えるポリエステルフィルムである。図1は、本発明によるポリエステルフィルムの構成の実施形態を簡略に示す部分断面図である。
図1に示すように、ポリエステルフィルム10は、第1の層11と、第2の層12とを備えている。ポリエステルフィルム10は、第1の層11と第2の層12とが、この順に積層して構成されている。なお、本発明の他の実施形態として、図2に示すように、ポリエステルフィルム10が、3層以上の層(図2では、3層)からなるものであってもよい。
また、ポリエステルフィルム10は、第1の層11および第2の層12の他に、例えば、化石燃料ポリエステルなどポリエステルを含む層をさらに含んでもよい。以下の段落では、ポリエステルフィルム10の第1の層11と第2の層12とが、この順に積層されている実施形態について説明する。
ポリエステルフィルム10は、その総厚が、5μm以上、100μm未満であることが好ましい。ポリエステルフィルム10の総厚が上記範囲内であれば、包装体などの積層フィルムとして好適に用いることができる。
ポリエステルフィルム10を構成する各層について説明する。
[第1の層]
第1の層11は、バイオマスポリエステルを含む層である。第1の層11は、以下で説明するバイオマスポリエステルを含む樹脂組成物からなるものである。また、第1の層11は、さらに化石燃料ポリエステルを含んでもよい。
バイオマスポリエステルは、ジオール単位としてバイオマス由来のエチレングリコールを含み、ジカルボン酸単位として化石燃料由来のジカルボン酸を含むものである。バイオマスポリエステルを形成するジオール単位であるエチレングリコールおよびジカルボン酸単位について説明する。
バイオマス由来のエチレングリコールは、バイオマスを原料として製造されたエタノール(バイオマスエタノール)を原料としたものである。バイオマス由来のエチレングリコールは、バイオマスエタノールを、従来公知の方法により、エチレンオキサイドを経由してエチレングリコールを生成する方法などにより得ることができる。また、販売されているバイオマスエチレングリコールを使用してもよく、例えば、インディアグライコール社から販売されているバイオマスエチレングリコールを好適に使用することができる。
ジカルボン酸単位は、化石燃料由来のジカルボン酸を使用する。ジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、およびそれらの誘導体を制限なく使用することができる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、およびフタル酸などが挙げられる。芳香族ジカルボン酸の誘導体としては、芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステル、具体的には、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステルおよびブチルエステルなどが挙げられる。これらの中でも、テレフタル酸が好ましく、芳香族ジカルボン酸の誘導体としては、ジメチルテレフタレートが好ましい。
脂肪族ジカルボン酸としては、具体的には、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、アゼライン酸、ドデカジカルボン酸、およびシクロヘキサンジカルボン酸などの、通常炭素数が2以上40以下の鎖状または脂環式ジカルボン酸が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸の誘導体としては、上記脂肪族ジカルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステルおよびブチルエステルなどの低級アルキルエステル、無水コハク酸などの上記脂肪族ジカルボン酸の環状酸無水物が挙げられる。これらの中でも、脂肪族ジカルボン酸としては、アジピン酸、コハク酸、ダイマー酸またはこれらの混合物が好ましく、コハク酸を主成分とするものが特に好ましい。脂肪族ジカルボン酸の誘導体としては、アジピン酸およびコハク酸のメチルエステル、またはこれらの混合物がより好ましい。
これらのジカルボン酸は、一種または二種以上を組み合わせて使用することができる。
バイオマスポリエステルは、上記のジオール単位およびジカルボン酸単位に加えて、第3成分として共重合成分を加えた共重合ポリエステルであってもよい。共重合成分の具体的な例としては、2官能のオキシカルボン酸や、架橋構造を形成するために3官能以上の多価アルコール、3官能以上の多価カルボン酸および/またはその無水物並びに3官能以上のオキシカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の多官能化合物が挙げられる。これらの共重合成分の中では、高重合度の共重合ポリエステルが容易に製造できる傾向にあるため、特に2官能および/または3官能以上のオキシカルボン酸が好適に使用される。その中でも、3官能以上のオキシカルボン酸の使用は、後述する鎖延長剤(カップリング剤)を使用することなく、極少量で容易に高重合度のポリエステルを製造できるので、最も好ましい。
また、上記バイオマスポリエステルは、これらの共重合ポリエステルを鎖延長(カップリング)した高分子量のポリエステルでもよい。カップリング剤としては、カーボネート化合物やジイソシアネート化合物などを使用することができるが、その量は、通常、バイオマスポリエステルを構成する全単量体単位100モル%に対し、カーボネート結合ならびにウレタン結合が通常10モル%以下、好ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下である。
カーボネート化合物としては、具体的には、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチレンカーボネート、ジアミルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネートなどが挙げられる。その他、フェノール類、アルコール類のようなヒドロキシ化合物から誘導される、同種、または異種のヒドロキシ化合物からなるカーボネート化合物を使用することができる。
ジイソシアネート化合物としては、具体的には、2,4−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートとの混合体、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの公知のジイソシアネートなどが挙げられる。
バイオマスポリエステルは、上記したジオール単位とジカルボン酸単位とを重縮合させる従来公知の方法により得ることができる。具体的には、上記のジオール単位とジカルボン酸単位とのエステル化反応および/またはエステル交換反応を行った後、減圧下での重縮合反応を行うといった溶融重合の一般的な方法、または有機溶媒を用いた公知の溶液加熱脱水縮合方法などによって製造することができる。
バイオマスポリエステルを製造する際に用いるジオール単位の使用量は、ジカルボン酸またはその誘導体100モルに対し、実質的に等モルであるが、一般には、エステル化および/またはエステル交換反応および/または縮重合反応中の留出があることから、0.1〜20モル%過剰に用いられる。
また、重縮合反応は、重合触媒の存在下で行うことが好ましい。重合触媒の添加時期は、重縮合反応以前であれば特に限定されず、原料仕込み時に添加しておいてもよく、減圧開始時に添加してもよい。
重合触媒としては、一般的に、周期表で、水素、炭素を除く第1族〜第14族金属元素を含む化合物が挙げられる。具体的には、チタン、ジルコニウム、錫、アンチモン、セリウム、ゲルマニウム、亜鉛、コバルト、マンガン、鉄、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ナトリウムおよびカリウムからなる群から選ばれた、少なくとも一種以上の金属を含むカルボン酸塩、アルコキシ塩、有機スルホン酸塩またはβ−ジケトナート塩などの有機基を含む化合物、さらには前記した金属の酸化物、ハロゲン化物などの無機化合物およびそれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、チタン、ジルコニウム、ゲルマニウム、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムおよびカルシウムを含む金属化合物、並びにそれらの混合物が好ましく、特に、チタン化合物、ジルコニウム化合物およびゲルマニウム化合物が好ましい。また、触媒は、重合時に溶融または溶解した状態であると重合速度が高くなるため、重合時に液状であるか、またはエステル低重合体やポリエステルに溶解する化合物が好ましい。
チタン化合物としては、テトラアルキルチタネートが好ましく、具体的には、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−t−ブチルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラベンジルチタネートおよびこれらの混合チタネートが挙げられる。また、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタン(ジイソプロキシド)アセチルアセトネート、チタンビス(アンモニウムラクテイト)ジヒドロキシド、チタンビス(エチルアセトアセテート)ジイソプロポキシド、チタン(トリエタノールアミネート)イソプロポキシド、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、ブチルチタネートダイマーなども好適に用いられる。さらには、酸化チタンや、チタンと珪素を含む複合酸化物も好適に用いられる。これらの中でも、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネートおよびテトラ−n−ブチルチタネート、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンビス(アンモニウムラクテイト)ジヒドロキシド、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタンラクテート、ブチルチタネートダイマー、酸化チタン、チタニア/シリカ複合酸化物(例えば、Acordis Industrial Fibers社製の製品名「C−94」)が好ましく、特に、テトラ−n−ブチルチタネート、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタニア/シリカ複合酸化物(例えば、Acordis Industrial Fibers社製の商品名「C−94」など)が好ましい。
ジルコニウム化合物としては、具体的には、ジルコニウムテトラアセテイト、ジルコニウムアセテイトヒドロキシド、ジルコニウムトリス(ブトキシ)ステアレート、ジルコニルジアセテイト、シュウ酸ジルコニウム、シュウ酸ジルコニル、シュウ酸ジルコニウムカリウム、ポリヒドロキシジルコニウムステアレート、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−t−ブトキシド、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネートならびにそれらの混合物が挙げられる。また、酸化ジルコニウムや、例えばジルコニウムと珪素を含む複合酸化物を使用してもよい。これらの中でも、ジルコニルジアセテイト、ジルコニウムトリス(ブトキシ)ステアレート、ジルコニウムテトラアセテイト、ジルコニウムアセテイトヒドロキシド、シュウ酸ジルコニウムアンモニウム、シュウ酸ジルコニウムカリウム、ポリヒドロキシジルコニウムステアレート、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−t−ブトキシドが好ましい。
ゲルマニウム化合物としては、具体的には、酸化ゲルマニウムや塩化ゲルマニウムなどの無機ゲルマニウム化合物、テトラアルコキシゲルマニウムなどの有機ゲルマニウム化合物が挙げられる。価格や入手の容易さなどの観点から、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウムおよびテトラブトキシゲルマニウムなどが好ましく、特に、酸化ゲルマニウムが好ましい。
これらの重合触媒として金属化合物を用いる場合の触媒使用量は、生成するポリエステルに対する金属量として、下限値が通常5ppm以上、好ましくは10ppm以上であり、上限値が通常30,000ppm以下、好ましくは1,000ppm以下、より好ましくは250ppm以下、特に好ましくは130ppm以下である。使用する触媒量が多すぎると、経済的に不利であるばかりでなくポリマーの熱安定性が低くなる。使用する触媒量が少なすぎると重合活性が低くなり、それに伴いポリマー製造中にポリマーの分解が誘発されやすくなる。使用する触媒量としては、その使用量を低減させる程、生成するポリエステルの末端カルボキシル基量が低減されるため、使用する触媒量を低減させることが好ましい。
ジカルボン酸単位とジオール単位とのエステル化反応および/またはエステル交換反応の反応温度は、通常、150〜260℃の範囲である。反応雰囲気は、通常窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下である。反応圧力は、通常、常圧〜10kPaである。反応時間は、通常、1時間〜10時間である。
バイオマスポリエステルの製造工程において、カップリング剤を反応系に添加してもよい。カップリング剤を用いた高分子量のバイオマスポリエステルは、公知の方法を用いて製造することができる。カップリング剤は、重縮合終了後、均一な溶融状態で無溶媒で反応系に添加し、重縮合により得られたバイオマスポリエステルと反応させる。具体的には、ジカルボン酸単位とジオール単位とを触媒反応させて得られる、末端基が実質的にヒドロキシル基を有し、質量平均分子量(Mw)が20,000以上、好ましくは40,000以上のバイオマスポリエステルプレポリマーに上記カップリング剤を反応させることにより、より高分子量化したバイオマスポリエステル系樹脂を得ることができる。Mwが20,000以上のプレポリマーであれば、少量のカップリング剤の使用で、溶融状態といった苛酷な条件下でも、残存する触媒の影響を受けないので、反応中にゲルを生ずることなく、高分子量のバイオマスポリエステルを製造することができる。
得られたバイオマスポリエステルは、固化させた後、さらに重合度を高めたり、環状三量体などのオリゴマーを除去するため、必要に応じて固相重合を行ってもよい。具体的には、バイオマスポリエステルをチップ化して乾燥させた後、100〜180℃の温度で1時間〜8時間加熱してバイオマスポリエステルを予備結晶化させ、続いて、190〜230℃の温度で、不活性ガス雰囲気下または減圧下において1時間〜数十時間加熱することにより行われる。
得られるバイオマスポリエステルの固有粘度は、0.5dl/g〜1.5dl/gであることが好ましく、より好ましくは0.6dl/g〜1.2dl/gである。固有粘度が0.5dl/g未満の場合は、引裂き強度をはじめ、半透過反射フィルム基材としてバイオマスポリエステルフィルムに要求される機械特性が不足する可能性がある。他方、固有粘度が1.5dl/gを超えると、原料製造工程およびフィルム製膜工程における生産性が損なわれる。なお、固有粘度は、オルトクロロフェノール溶液で、35℃において測定される。
バイオマスポリエステルを含む樹脂組成物は、その製造工程において、またはその製造後に、その特性が損なわれない範囲において各種の添加剤を添加することができる。添加剤として、例えば、可塑剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、糸摩擦低減剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤、着色顔料などが挙げられる。添加剤は、バイオマスポリエステルを含む樹脂組成物全体に対して、5〜50質量%、好ましくは5〜20質量%の範囲で添加されることが好ましい。
バイオマスポリエステルを含む樹脂組成物は、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量が、バイオマスポリエステル中の全炭素に対して10〜19%含まれることが好ましい。大気中の二酸化炭素には、C14が一定割合(105.5pMC)で含まれているため、大気中の二酸化炭素を取り入れて成長する植物、例えばトウモロコシ中のC14含有量も105.5pMC程度であることが知られている。また、化石燃料中にはC14が殆ど含まれていないことも知られている。したがって、バイオマスポリエステル中の全炭素原子中に含まれるC14の割合を測定することにより、バイオマス由来の炭素の割合を算出することができる。本発明においては、バイオマスポリエステル中のC14の含有量をPC14とした場合の、バイオマス由来の炭素の含有量Pbioを、下記式(1)のように定義する。
Pbio(%)=PC14/105.5×100 ・・・(1)
例えば、PETは、2炭素原子を含むエチレングリコールと8炭素原子を含むテレフタル酸とがモル比1:1で重合したものであるため、エチレングリコールとしてバイオマス由来のジオール単位のみを使用した場合、バイオマスポリエステル中のバイオマス由来の炭素の含有量Pbioは20%となる。本実施形態においては、樹脂組成物中の全炭素に対して、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量は、10〜19%であることが好ましい。樹脂組成物中のバイオマス由来の炭素含有量が10%未満であると、カーボンオフセット材料としての効果が乏しくなる。一方、上記したように、樹脂組成物中のバイオマス由来の炭素含有量は20%に近いほど好ましいが、フィルムの製造工程上の問題や物性面から、樹脂組成物中には添加剤を含む方が好ましいため、実際の上限は18%となる。
すなわち、エチレングリコールとしてバイオマス由来のジオール単位のみを使用した場合、バイオマスポリエステル中のバイオマス由来の炭素の含有量Pbioが20%であり、バイオマス由来の炭素の含有量が樹脂組成物中の全炭素に対して10〜19%であることから、ジオール単位としてバイオマス由来のエチレングリコールと、ジカルボン酸単位として石化燃料由来のジカルボン酸とを用いて得られたバイオマスポリエステルが、樹脂組成物全体に対して、50(=10%/20%)質量%〜95(=19%/20%)質量%含有されていることが好ましいことを意味する。
バイオマスポリエステルは、ジオール単位としてバイオマス由来のエチレングリコールおよびジカルボン酸単位からなるポリエステル以外に、化石燃料由来のジオール単位およびジカルボン酸単位からなるポリエステルを一部に含んでいてもよい。化石燃料由来のジオール単位としては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、デカンジオール、2−エチル−ブチル−1−プロパンジオール、ビスフェノールAなどが挙げられる。また、ジカルボン酸単位として、例えば、上記の化石燃料由来のジカルボン酸を用いることができる。
[第2の層]
第2の層12は、リサイクルポリエステルを含む層である。第2の層12は、リサイクルされるポリエステルのジオール単位が、化石燃料由来のジオールでもよいし、バイオマス由来のエチレングリコールでもよいし、化石燃料由来のジオールおよびバイオマス由来のエチレングリコールの両方が含まれたものでもよい。
リサイクルポリエステルのもとになる樹脂に使用されるバイオマス由来のエチレングリコールとしては、上記のものを使用することができる。また、化石燃料由来のジオールも、上記のものを使用することができる。
リサイクルポリエステルのもとになる樹脂に使用されるジカルボン酸単位についても、上記のものを使用することができる。
また、ジオール単位およびジカルボン酸単位以外の他の成分を含む場合においても、上記のものを使用することができる。
本実施形態においては、樹脂製品のリサイクル方法としては、メカニカルリサイクルが用いられる。メカニカルリサイクルは、一般に、回収されたPETボトル等のポリエステル樹脂製品を粉砕、アルカリ洗浄してポリエステル樹脂製品の表面の汚れ、異物を除去した後、高温・減圧下で一定時間乾燥してポリエステル樹脂の内部に留まっている汚染物質を拡散させ除染を行い、ポリエステル樹脂からなる樹脂製品の汚れを取り除き、再びポリエステル樹脂に戻す方法である。
バイオマスポリエステルおよびリサイクルポリエステルは、化石燃料ポリエステルよりもCO2排出削減効果が高く、リサイクルポリエステルは、バイオマスポリエステルよりもCO2排出削減効果が高い。そのため、第2の層12を使用することにより、ポリエステルフィルムをバイオマスポリエステルのようにリサイクルされていないポリエステルのみで形成する場合に比べて、ポリエステルフィルムを製造する際のCO2排出量の削減効果をより大きくすることができ、環境負荷をより一層低減することができる。また、第2の層12は、その一方の面に第1の層11が設けられ、ポリエステルフィルム10の外側の面にリサイクルポリエステルが表出しないようにすることができるため、ポリエステルフィルムがリサイクルポリエステルのみで形成する場合に比べて、衛生性に優れる。
また、第2の層12は、上記のリサイクルポリエステルの他に、リサイクルされていない化石燃料ポリエステル(以下、ヴァージン化石燃料ポリエステルともいう。)を含んでいてもよい。
リサイクルポリエステルとヴァージン化石燃料ポリエステルとを混合して第2の層12を成形する場合には、別々に成形機に供給する方法、ドライブレンド等で混合した後に供給する方法などがある。中でも、操作が簡便などであるという観点から、ドライブレンドで混合する方法が好ましい。
リサイクルポリエステルとヴァージン化石燃料ポリエステルとを混合して第2の層12を成形する場合には、第2の層12に含まれるリサイクルポリエステルの含有量は、ヴァージン化石燃料ポリエステルとリサイクルポリエステルとの合計量に対して、1〜85質量%であることが好ましい。より好ましくは、30〜50質量%である。リサイクルポリエステルの含有量が、上記範囲内であれば、フィルム全体としての化石燃料の使用量の軽減を図りつつ、フィルムを安定して生産することができる。
本発明によるポリエステルフィルムは、少なくとも、リサイクルされていないバイオマスポリエステル(以下、ヴァージンバイオマスポリエステルともいう。)を含む第1の層と、リサイクルポリエステルを含む第2の層とを2層以上(例えば、図2では、第1の層11と第2の層12との2層、図3では、3層)備えてなるものであり、ポリエステルフィルムの全質量に対して、リサイクルポリエステルの質量は、1〜85質量部であることが好ましく、30〜50質量部であることがより好ましい。リサイクルポリエステルの質量が上記範囲内であれば、フィルム全体としての化石燃料の使用量の軽減を図りつつ、フィルムを安定して生産することができる。
(ポリエステルフィルムの製造方法)
本発明によるポリエステルフィルムは、第1の層と第2の層とを共押出しすることにより、作製することができる。図2に示すように、ポリエステルフィルム10が、第1の層11と第2の層12との2層で形成されている場合、ポリエステルフィルム10は、例えば、共押出し成形装置を用いて、第1の層11と第2の層12とを共押出し、すなわち2層同時に押出しすることにより、作製することができる。これにより、第1の層11および第2の層12が積層されたポリエステルフィルム10が得られる。
以上の通り、本発明によるポリエステルフィルムは、少なくとも、第1の層と第2の層とを用いて形成されている。第1の層は、ヴァージンバイオマスポリエステルを含んで形成されてなる層である。また、第2の層は、リサイクルポリエステルを含んで形成されてなる層である。バイオマスポリエステルは化石燃料ポリエステルよりもCO2排出削減効果が高く、リサイクルポリエステルはバイオマスポリエステルよりも更にCO2排出削減効果が高い。そのため、本発明によるポリエステルフィルムは、フィルムの構成の一部にバイオマスポリエステルの他にリサイクルポリエステルを用いて形成されることで、ヴァージンバイオマスポリエステルやヴァージン化石燃料ポリエステルなどリサイクルされていないポリエステルを用いて包装材料を製造するよりも、CO2排出削減効果が高いポリエステルフィルムとすることができる。また、第2の層は、第1の層の一方の面側に設けることができるため、第2の層をポリエステルフィルムの外側に位置するように設けることができる。このため、本発明によるポリエステルフィルムを、食品などの商品を充填するための包装材料に用いた場合、ポリエステルフィルムをリサイクルポリエステルのみで形成した場合に比べて衛生性に優れたポリエステルフィルムとすることができる。
ここで、ポリエステルフィルムの総厚が同じ場合に、本実施形態のポリエステルフィルムと、比較形態のポリエステルフィルムとについて、CO2排出量の削減率の比較を行った。表1に、本実施形態のポリエステルフィルムと、比較形態のポリエステルフィルムとの層構成および各層の組成を示す。表1に示す、組成1〜3の各組成のPET樹脂の構成と、本実施形態のポリエステルフィルムおよび比較形態のポリエステルフィルムの層構成とは、以下の通りである。なお、以下で用いる、「PET樹脂」とは、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる樹脂であり、「化石燃料PET樹脂」とは、化石燃料PETからなる樹脂であり、バイオマスPET樹脂とは、バイオマスPETからなる樹脂であり、「メカニカルリサイクルPET樹脂」とは、メカニカルリサイクルPETからなる樹脂である。
<組成1>
バイオマス由来のエチレングリコールと化石燃料由来のテレフタル酸とを用いて得られたリサイクルされていないバイオマスPET樹脂(以下、ヴァージンバイオマスPET樹脂ともいう。)である。
<組成2>
化石燃料由来のエチレングリコールと化石燃料由来のテレフタル酸とを用いて得られたPETをメカニカルリサイクルして得られたメカニカルリサイクルPET樹脂である。
<組成3>
化石燃料由来のエチレングリコールと化石燃料由来のテレフタル酸とを用いて得られたリサイクルされていない化石燃料PET樹脂(以下、ヴァージン化石燃料PET樹脂ともいう。)である。
<本実施形態>
本実施形態のポリエステルフィルムは、1層目として第1の層と、2層目として第2の層とを有し、1層目は67質量部、2層目は33質量部である。また、1層目は組成1のヴァージンバイオマスPET樹脂100%で構成され、2層目は組成2のメカニカルリサイクルPET樹脂100%で構成される。
<比較形態1>
比較形態1のポリエステルフィルムは単層であり、組成3のヴァージン化石燃料PET樹脂100%で構成されるものであり、リサイクルされていない化石燃料PET(以下、ヴァージン化石燃料PETともいう。)に相当する。
<比較形態2>
比較形態2のポリエステルフィルムは単層であり、組成1のヴァージンバイオマスPET樹脂67%と組成3のヴァージン化石燃料PET樹脂33%をブレンドしたPET樹脂で構成され、リサイクルされていないバイオマスPET(以下、ヴァージンバイオマスPETともいう。)に相当する。
<比較形態3>
比較形態3のポリエステルフィルムは単層であり、組成2のメカニカルリサイクルPET樹脂100%で構成されるものであり、メカニカルリサイクルPETに相当する。
本実施形態のポリエステルフィルムと、比較形態1〜3のポリエステルフィルムについて、CO2排出量の削減率を算出した結果を表2に示す。表2から分かるように、本実施形態のポリエステルフィルムは、比較形態1のポリエステルフィルムに比べて約24%、比較形態2のポリエステルフィルムに比べて約15%CO2排出量が少ない値となっている。
<積層フィルム>
次に、本発明によるポリエステルフィルムを適用した積層フィルムについて説明する。
本発明によるポリエステルフィルムを適用した積層フィルムは、本発明によるポリエステルフィルムと、本発明によるポリエステルフィルムの何れか一方または両方の面側に設けられるシーラント層とを有するものである。本発明によるポリエステルフィルムを適用した積層フィルムの構成の一例を簡略に示す断面図を図3に示す。図3に示すように、積層フィルム20は、ポリエステルフィルム10およびシーラント層21を備え、ポリエステルフィルム10の上にシーラント層21を積層して構成されている。なお、図3に示す実施形態においては、積層フィルム20は、ポリエステルフィルム10の面の上方にシーラント層21を積層した構成としているが、積層フィルム20は、ポリエステルフィルム10の面の下方にシーラント層21が積層するように構成してもよく、また、ポリエステルフィルム10の面の上方および下方の両面にシーラント層が設けられていてもよい。
また、積層フィルム20は、ポリエステルフィルム10を構成する第1の層11および第2の層12の間に、例えば、シーラント層21、バリア層、支持体、樹脂層、印刷層などその他の層を少なくとも一層有してもよい。これらその他の層の説明については、後述する。
積層フィルム20を構成するポリエステルフィルム10は、シーラント層21と接する面側である、一方の最外層に第2の層12を設け、他方の最外層に第1の層11が設けられるように構成されてもよい。例えば、ポリエステルフィルム10が、図1に示すように、第1の層11および第2の層12の2層で構成されている場合には、ポリエステルフィルム10は、シーラント層21と接する面側に第2の層12を設け、他方に第1の層11が設けられる。これにより、第2の層12が表出しないため、更に衛生性に優れた積層フィルムとすることができる。また、ポリエステルフィルム10は、一方の最外層に第1の層11を設け、他方の最外層に第1の層11を設け、一方の最外層と他方の最外層の間に第2の層12を設けるように構成されていてもよい。例えば、ポリエステルフィルム10が、3層で構成されている場合には、ポリエステルフィルム10は、図2に示すように、シーラント層21と接する面側から順に、第1の層11、第2の層12、および第1の層11が、この順に積層して設けられる。この場合も第2の層12が表出しないため、更に衛生性に優れた積層フィルムとすることができる。
シーラント層21は、図3に示すように、積層フィルム20のポリエステルフィルム10の面上に設けられている。シーラント層21は、熱によって相互に融着し得るヒートシール性樹脂のフィルムにより形成される層である。
シーラント層21を形成する材料としては、熱によって相互に融着し得る樹脂であれば、特に限定されず、具体的には、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン触媒を利用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、エチレン・ポリプロピレンのランダムもしくはブロック共重合体、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、アイオノマー樹脂、ヒートシール性エチレン・ビニルアルコール樹脂、または、共重合した樹脂メチルペンテン系樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレンまたは環状オレフィンコポリマーなどのポリオレフィン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、その他などの樹脂などが挙げられる。これらは、単独でも二種以上の混合物として使用してもよい。シーラント層21は、上記のような樹脂のフィルムないしシート、あるいはそのコーティング膜などとして使用することができる。
シーラント層21を形成する材料として、ポリエチレンを用いる場合、その原料として、化石燃料から得られるエチレンの他に、バイオマス由来のエチレンを重合したものを用いてもよい。バイオマス由来のエチレンとしては、具体的には、例えば、特開2012―251006号公報に記載のものを使用することができる。バイオマス由来のエチレンを重合して得られたポリエチレンを、シーラント層21を構成する材料として用いることにより、カーボンニュートラルな材料からなる層で形成できるため、上記したバイオマス由来の原料を用いて得られたポリエステルとの併用によって、より一層、化石燃料の使用量を大幅に削減することができ、環境負荷を減らすことができる。
バイオマス由来のエチレンとしては、市販のものを使用してもよく、例えば、ブラスケム社製の「C4LL−LL118(d=0.916、MFR=1.0g/10分)」のサトウキビ由来直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂を使用することができる。
なお、本実施形態においては、シーラント層21は一層としているが、シーラント層21は二層以上設けられていてもよい。シーラント層21を二層以上有する場合、それぞれが、同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。
シーラント層21の厚さとしては、20〜200μmが好ましく、30〜130μmがより好ましい。
積層フィルム20の上面側(内面側)にシーラント層21をラミネートする方法としては、例えば、ドライラミネーション法、溶融押出しラミネーション法などが挙げられる。
また、上記の積層を行う際に、必要に応じて、例えば、コロナ処理、オゾン処理、フレーム処理、その他などの前処理をフィルムに施すことができる。中でも、ドライラミネーション法が、接着強度に優れ、より好ましいものである。
また、本実施形態においては、積層フィルム20が、ポリエステルフィルム10およびシーラント層21を備えた構成としているが、これに限定されるものではなく、これらの層を備えていれば、積層フィルム20は、ポリエステルフィルム10およびシーラント層21以外に、その他の層を少なくとも一層有してもよい。例えば、積層フィルム20は、ポリエステルフィルム10とシーラント層21との間、シーラント層21のポリエステルフィルム10が積層されている面とは反対側の面、またはポリエステルフィルム10のシーラント層21が積層されている面側とは反対側の面などに、包装体の形態に応じて、他の層を有していてもよい。
その他の層としては、例えば、バリア層、支持体、樹脂層、印刷層などを挙げることができる。その他の層を二層以上有する場合、それぞれが、同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。これら他の層は、ドライラミネーション法により接着層を介して、あるいは溶融押出しラミネーション法により接着樹脂層を介して互いに積層することができる。
バリア層は、酸素ガスなどガスの透過を阻止するガスバリア性、あるいは水蒸気などの透過を阻止する水蒸気バリア性を有する層として機能する。バリア層としては、例えば、アルミニウム箔など金属を圧延して得られた金属箔からなる層、アルミニウムなどの金属の蒸着膜からなる層、アルミナなどの無機酸化物の蒸着膜からなる層、ガスバリア性塗布膜からなる層、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物(EVOH)などを使用することもできる。また、バリア層が、アルミナなどの無機酸化物の蒸着膜からなる層で形成される場合、ガスバリア性を付与ないし向上させるため、前記ガスバリア性塗布膜からなる層を前記無機酸化物の蒸着膜からなる層の少なくとも何れか一方の面に設けてもよい。バリア層は、従来公知の方法により形成することができ、その組成および形成方法は、特に限定されない。バリア層を構成する金属箔、蒸着膜としては、具体的には、例えば、特開2012―96469号公報に記載のものを使用することができる。ガスバリア性塗布膜は、1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコ−ル系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコ−ル共重合体とを含有し、ゾルゲル法によって重縮合して得られる膜であり、具体的には、例えば、特開2012―96469号公報に記載のものを使用することができる。バリア層を構成するEVOHとしては、具体的には、例えば、特開2008―307847号公報に記載のものを使用することができる。なお、バリア層は二層以上設けられてもよい。バリア層を二層以上有する場合、それぞれが、同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。また、バリア層は、ポリエステルフィルム10の両面にそれぞれ一層以上設けられてもよい。
支持体は、延伸ポリエステル系樹脂層、延伸ポリアミド系樹脂層、延伸ポリオレフィン系樹脂層、紙基材(紙層)など、積層フィルム20を支持し、積層フィルム20の強度特性や耐衝撃性などを向上させることができるものであれば、特に限定されるものではなく、公知のものを用いて形成することができる。また、支持体として、バイオマス由来の材料を用いてもよい。また、支持体は、これらの層を一層単独または二層以上を組み合わせて使用することができる。
支持体として用いることができるポリエステル系樹脂層は、従来公知の化石燃料由来のポリエステルの他、バイオマス由来のポリエステルを用いることができる。また、ポリエステル系樹脂層は、従来の化石燃料由来の原料を含む樹脂材料とバイオマス由来の原料を含む樹脂材料とを混合してなる層であってもよい。
なお、接着性を向上させるため、ジカルボン酸成分として、スルホン酸基含有ジカルボン酸を含むものを使用してもよい。スルホン酸基含有ジカルボン酸としては、スルホン酸金属塩含有ジカルボン酸などが挙げられる。スルホン酸金属塩含有ジカルボン酸としては、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、5−〔4−スルホフェノキシ〕イソフタル酸などの金属塩(アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩など)が挙げられる。特に、良好な接着性および耐変形性を得る観点からは、ナトリウムスルホテレフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を使用することが好ましい。スルホン基含有ポリエステルにおいて、スルホン酸基含有ジカルボン酸の共重合比率は、全酸成分に対して、好ましくは0.5〜10モル%である。また、その極限粘度は、好ましくは0.3〜0.8dl/gである。
本発明によるポリエステルフィルムを適用した積層フィルムを備える包装体の用途に応じて、種々のポリエステル系樹脂を使用することができ、二種以上の混合物であってもよい。例えば、ポリエステルを使用する場合には、優れた熱寸法安定性、保香性および耐熱性を有する支持体が得られる。また、スルホン基含有ポリエステルを使用する場合、高い層間接着強度を有する共押出しフィルムが得られる。
ポリエステル系樹脂層には、必要に応じて、例えば滑剤など種々の添加剤を含有していてもよい。
また、支持体として用いることができるポリアミド系樹脂層としては、主として、脂肪族ポリアミドを用いてもよいが、その他のポリアミド成分、例えば、芳香族ポリアミドなどを含有してもよい。脂肪族ポリアミドとしては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,3−または1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(p−アミノシクロヘキシルメタン)などの脂肪族、脂環式などのジアミン類と、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などのジカルボン酸またはその誘導体との重縮合反応で得られる脂肪族ポリアミド、ε−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸などの縮合によって得られるポリアミド樹脂、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム化合物から得られるポリアミド樹脂、または、これらの混合物などを用いることができる。具体的には、例えば、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6/66、ナイロン66/610、ナイロンMXD6などの脂肪族ポリアミド系樹脂を使用することができる。中でも、好適な脂肪族ポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン−6/6,6などが挙げられる。二種以上の脂肪族ポリアミドとしては、ナイロン6とナイロン6/6,6との任意の割合の組み合わせが挙げられる。
また、支持体として用いることができる延伸ポリオレフィン系樹脂層としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)、メタロセン触媒を利用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、エチレン・ポリプロピレンのランダムもしくはブロック共重合体などを用いることができる。
ポリエステル系樹脂層やポリアミド系樹脂層を支持体として用いて形成した場合、支持体をシーラント層21との接着性を向上させるために、支持体とシーラント層21との間には、変性ポリオレフィンからなる変性ポリオレフィン系樹脂層を設けてもよい。変性ポリオレフィンは、主成分であるポリオレフィンの一部を共重合または共縮合などにより他の物質(モノマー)で置換するか、または、適当な物質(モノマー)を局所的に反応させるなどの方法により変性したポリオレフィン樹脂である。具体的には、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン(PP)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリエチレン、ポリエチレン系樹脂、または、ポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂を、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸その他の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂が挙げられる。なお、上記したポリエチレン系樹脂としては、上記したバイオマス由来のエチレンをモノマー単位として用いたものを使用できることは言うまでもない。
好ましい変性ポリオレフィンとしては、ポリオレフィンセグメントとオレフィン以外の極性を有するセグメントとがブロック状および/またはグラフト状および/またはランダム状に結合している構造を有する共重合体であり、例えば、プロピレン系ポリオレフィンセグメントと乳酸を構成成分として含むセグメントとの共重合体、エチレン系ポリオレフィンセグメントとアクリル酸単位を構成成分として含むセグメントとの共重合体、プロピレン系ポリオレフィンセグメントとアクリル酸単位を構成成分として含むセグメントとの共重合体などが挙げられる。具体的には、例えば、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂として、三井化学(株)製のアドマーSE800、SF740、SF731、SF730を用いることができる。
また、支持体を構成するバイオマス由来の材料としては、上記以外にも、市販されているポリ乳酸フィルムを使用してもよく、例えば、三井化学東セロ社から販売されているポリ乳酸フィルムを好適に使用することができる。
また、支持体として用いることができる紙基材(紙層)としては、所望の剛性などに応じて任意の紙を使用することができ、例えば、上質紙、模造紙、アート紙、コート紙、純白ロール紙、クラフト紙、耐水性を高めたラベル用紙、コップ原紙、カード紙、アイボリー紙、マニラボールなどの板紙、ミルクカートン原紙、カップ原紙、合成紙、クレイコート紙などの公知の紙を使用することができる。
支持体としての上記したポリエステル系樹脂層等の厚みは、積層フィルムの使用用途によって適宜調整してよく、例えば、剛性が要求される用途の包装材として積層フィルムを使用する場合には、厚手の支持体とすることができる。
また、支持体をバイオマス由来の原料を含む樹脂材料を用いて形成することで、支持体はカーボンニュートラルな樹脂からなる層となる。積層フィルムが、ポリエステルフィルム10および支持体がカーボンニュートラルな樹脂からなる層で形成されることで、カーボンニュートラルな樹脂からなる層を2つ以上有する積層フィルムを製造することができる。これにより、支持体の形成に用いるための化石燃料の使用量を大幅に削減することができ、環境負荷を減らすことができる。
支持体の形成方法は、従来公知の方法を用いることができ、特に限定されるものではない。支持体は、これらの材料を押出しラミネート法を用いて形成してもよいし、予め、Tダイ法またはインフレーション法などを用いて製膜したフィルムとして、ドライラミネート法などを用いて印刷層に積層してもよい。
印刷層は、必要に応じて設けることができ、例えば、ポリエステルフィルム10と支持体との間に設けることができる。印刷層は、装飾、内容物の表示、賞味期間の表示、製造者、販売者などの表示、その他などの表示のために、文字、絵柄、図形、記号、模様などの所望の任意の印刷模様を形成する層である。印刷層は、全面に設けてもよく、あるいは一部に設けてもよい。
印刷層は、従来公知の顔料や染料を用いて形成することができ、通常のインクビヒクルの一種または二種以上を主成分とし、必要に応じて、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、硬化剤、架橋剤、滑剤、帯電防止剤、充填剤、その他などの添加剤の一種または二種以上を任意に添加し、更に、染料・顔料などの着色剤を添加し、溶媒、希釈剤などで充分に混練して得たインキ組成物を用いることができる。
上記のインキビヒクルとしては、公知のもの、例えば、あまに油、きり油、大豆油、炭化水素油、ロジン、ロジンエステル、ロジン変性樹脂、シェラック、アルキッド樹脂、フェノール系樹脂、マレイン酸樹脂、天然樹脂、炭化水素樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリルまたはメタクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アミノアルキッド系樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、塩化ゴム、環化ゴム、その他などの一種または二種以上を併用することができる。
印刷層の形成方法は、特に限定されるものではなく、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、凸版印刷、スクリーン印刷、転写印刷、フレキソ印刷その他などの通常の印刷法を用いることができる。このような印刷層の形成方法を用いてインキ組成物を支持体の外面側に所望の印刷模様を印刷して印刷層を形成することができる。
インキ組成物の塗布量は、塗布後の乾燥状態で1μm〜8μm位が好ましく、塗布部において2g/m2〜3g/m2であることがより好ましい。
印刷層は、予め、支持体の印刷層形成側に表面処理を行った後に形成することが好ましい。このような表面処理としては、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガスまたは窒素ガスなどを用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品などを用いて処理する酸化処理、その他などの前処理などがある。また、予め、プライマーコート剤、アンダーコート剤、アンカーコート剤などを任意に塗布し、表面処理することもできる。
ドライラミネーション法により2層を接着する際に設ける接着層は、積層しようとする層の表面に、ラミネートに用いられる接着剤(ラミネート用接着剤)を塗布して乾燥させることにより形成することができる。ラミネート用接着剤としては、例えば、1液型あるいは2液型の硬化ないし非硬化タイプのビニル系、(メタ)アクリル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリウレタン系、エポキシ系、ゴム系、その他などの溶剤型、水性型、あるいは、エマルジョン型などの接着剤を用いることができる。上記のラミネート用接着剤のコーティング方法としては、例えば、ダイレクトグラビアロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、リバースロールコート法、フォンテン法、トランスファーロールコート法、その他の方法で積層フィルムを構成する層の塗布面に塗布することができる。塗布量としては、0.1g/m2〜10g/m2(乾燥状態)が好ましく、1g/m2〜5g/m2(乾燥状態)がより好ましい。
溶融押出しラミネーション法により2層を接着する際に設ける接着樹脂層は、熱可塑性樹脂を用いて溶融押出しラミネーション法により形成される。接着樹脂層に使用できる熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、または環状ポリオレフィン系樹脂、またはこれら樹脂を主成分とする共重合樹脂、変性樹脂、または、混合体(アロイでを含む)を用いることができる。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)、メタロセン触媒を利用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、エチレン・ポリプロピレンのランダムもしくはブロック共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン・マレイン酸共重合体、アイオノマー樹脂、また、層間の密着性を向上させるために、上記したポリオレフィン系樹脂を、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂などを用いることができる。また、ポリオレフィン樹脂に、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物、エステル単量体をグラフト重合、または、共重合した樹脂などを用いることができる。これらの材料は、一種単独または二種以上を組み合わせて使用することができる。環状ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、ポリメチルペンテン、ポリブテン、ポリノルボネンなどの環状ポリオレフィンなどを用いることができる。これらの樹脂は、単独または複数を組み合せて使用できる。なお、上記したポリエチレン系樹脂としては、上記したバイオマス由来のエチレンをモノマー単位として用いたものを使用できることは言うまでもない。
接着樹脂層には、必要に応じて、例えば、フィルムの加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、強度、その他などを改良、改質する目的で、種々のプラスチック配合剤や添加剤などを添加することができ、その添加量としては、ごく微量から数十%まで、その目的に応じて、任意に添加することができる。上記において、一般的な添加剤としては、例えば、滑剤、可塑剤、充填剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、染料、顔料などの着色剤、その他などを使用することができ、更には、改質用樹脂なども使用することができる。
接着樹脂層の厚さとしては、通常、5〜800μm、好ましくは10〜500μmの範囲内で適宜設定することができ、厚い場合には多層構成としてよい。厚さがこの範囲未満では、水分バリア性が不足し、この範囲以上では、過剰品質となり、また成形性も低下する。
なお、接着樹脂層として、上記したような酸変性ポリオレフィン系樹脂などの極性基を有するポリオレフィン系樹脂を用いて溶融押出しラミネート法によりポリエステルフィルム10の面上に接着樹脂層を積層する場合には、アンカーコート剤などの表面処理を行うことなく接着樹脂層を積層させることができる。
また、積層フィルム20の一方または両方の面には、化学的機能、電気的機能、磁気的機能、力学的機能、摩擦/磨耗/潤滑機能、光学的機能、熱的機能、生体適合性などの表面機能などの付与を目的として、二次加工を施すことができる。二次加工の例としては、例えば、エンボス加工、塗装、接着、印刷、メタライジング(めっきなど)、機械加工、表面処理(帯電防止処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、フォトクロミズム処理、物理蒸着、化学蒸着、コーティングなど)などが挙げられる。また、積層フィルム20に、ラミネート加工(ドライラミネートや押出しラミネート)、製袋加工、およびその他の後処理加工を施して、包装体などの成型品を製造することもできる。
このように、積層フィルム20は、ポリエステルフィルム10およびシーラント層21を備えたフィルムであり、ポリエステルフィルム10が、カーボンニュートラルな材料からなる層で形成され、かつ衛生性に優れているため、積層フィルム20を包装体材料として用いることにより、フィルム全体としての化石燃料の使用量の軽減を図り、CO2排出削減効果が高く、かつ衛生性に優れた積層フィルムを実現することができる。
<包装体>
本発明によるポリエステルフィルムを適用した積層フィルムは、上記のように、化石燃料の使用量の軽減を図り、CO2排出削減効果が高く、かつ衛生性に優れるため、食品などの包装材料として有用であり、例えば、包装体の包装用フィルムとして好適に用いることができる。包装体としては、例えば、包装製品(包装袋)、蓋材、ラミネートチューブ、液体用容器、紙カップ、および各種ラベル材料などを挙げることができる。包装袋として、例えば、スタンディングパウチ型、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、ガゼット型などの種々の形態の包装袋が挙げられる。積層フィルムの厚さは、その用途に応じて、適宜決定することができる。例えば、30〜300μm、好ましくは35〜180μmの厚みのフィルムの形態で用いられる。積層フィルム20を適用した包装体の一例について、以下説明する。なお、本実施形態においては、以下に例示する包装体のシーラント層21以外の各層は、一層としているが、これに限定されるものではなく、二層以上有していてもよい。また、以下に例示する包装体は印刷層を備えているが、これに限定されるものではなく、印刷層を備えていなくてもよい。
[スタンディングパウチ]
本発明によるポリエステルフィルムを適用した積層フィルムをスタンディングパウチに適用した場合について説明する。図4は、スタンディングパウチの構成の一例を簡略に示す図である。図4に示すように、スタンディングパウチ30は、2枚の胴部(側面シート)31と、底部(底面シート)32とで構成されている。スタンディングパウチ30は、側面シート31と底面シート32とが別部材で構成されている。スタンディングパウチ30は、側面シート31を構成する積層フィルムのシーラント層が最内層となるように製袋して形成された包装体である。なお、本実施形態においては、スタンディングパウチ30は、側面シート31と底面シート32とが別部材で構成されているが、これに限定されるものではなく、側面シート31および底面シート32が同一部材で構成されていてもよい。
側面シート31は、本発明によるポリエステルフィルムを適用した積層フィルムを用いて形成することができる。図5は、胴部を形成する積層フィルムの部分断面図である。図5に示すように、側面シート31を形成する積層フィルム20Bは、例えば、シーラント層21、支持体33、印刷層34、およびポリエステルフィルム10を備え、シーラント層21、支持体33、印刷層34、およびポリエステルフィルム10を、内面側から外面側に向かってこの順に積層して構成することができる。スタンディングパウチ30は、側面シート31のシーラント層21同士をヒートシールして接着させることにより製袋される。また、積層フィルム20Bは、上記バリア層を、例えばポリエステルフィルム10と印刷層34との間など積層フィルム20Bを構成する層の何れかの間に設けてもよい。
なお、本実施形態においては、印刷層34がポリエステルフィルム10と支持体33との間に設けられているが、支持体33が透明である場合には、印刷層34はシーラント層21と支持体33との間に設けられてもよい。
また、本実施形態においては、側面シート31が、本発明によるポリエステルフィルムを適用した積層フィルムを用いて形成されているが、これに限定されるものではなく、底面シート32が、本発明によるポリエステルフィルムを適用した積層フィルムを用いて形成されていてもよいし、側面シート31および底面シート32の両方が、本発明によるポリエステルフィルムを適用した積層フィルムを用いて形成されていてもよい。
また、側面シート31を形成する積層フィルム20Bは、図5に示すような層構成に限定されるものではなく、図3に示した層構成であってもよいし、上記したようなその他の層を備えるものを使用してもよい。また、支持体33を構成する材料に応じて、各層を適宜任意の位置に変更してもよく、例えば、図6に示すように、側面シート31を形成する積層フィルム20Cは、シーラント層21、ポリエステルフィルム10、支持体33、および印刷層34を備え、積層フィルム20Cは、シーラント層21、ポリエステルフィルム10、支持体33、印刷層34を内面側から外面側に向かってこの順に積層した層構成であってもよい。また、積層フィルム20Cにおいても、上記バリア層を、例えばポリエステルフィルム10とシーラント層21との間など積層フィルム20Cを構成する層の何れかの間に設けてもよい。
スタンディングパウチ30は、従来公知の製造方法を用いて製造することができ、例えば、2枚の側面シート31をシーラント層21が最内層となるように側面シート31同士を対向させて重ね合わせると共に、2枚の側面シート31の間に底面シート32を挿入し、側面シート31および底面シート32をヒートシールして製造する。
ヒートシールの方法としては、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シールなどの公知の方法で行うことができる。
スタンディングパウチ30は、液体を充填する包装袋として、化成品、医薬品、医薬部外品、化粧品、食品などの包装のために、例えば、貼付剤の外袋として、または液体洗剤、液体柔軟剤、液体石鹸などの詰め替え用内容物に使用されるスタンディングパウチとして好適に使用することができる。
また、積層フィルムをヒートシールする形態に応じて、スタンディングパウチ以外に種々の包装袋とすることができる。図7は、ピロー袋の一例を簡略に示す図であり、図8は、3方シール袋の一例を簡略に示す図であり、図9は、4方シール袋の一例を簡略に示す図である。なお、図7〜図9中、ヒートシール箇所をハッチングで表示する。図7に示すように、ピロー袋41は、図3、図5および図6に示すような積層フィルム20A〜20Cのシーラント層21が最内層となるように製袋して、積層フィルムの対向する2面をヒートシールして接着させることで得られる。また、図8に示すように、3方シール袋42は、図3、図5および図6に示すような積層フィルム20A〜20Cのシーラント層21が最内層となるように製袋して、積層フィルム20A〜20Cの3方をヒートシールして接着させることで得られる。また、図9に示すように、4方シール袋43は、図3、図5および図6に示すような積層フィルム20A〜20Cのシーラント層21が最内層となるように製袋して、積層フィルム20の4方をヒートシールして接着させることで得られる。
[蓋材]
次に、本発明によるポリエステルフィルムを適用した積層フィルムを用いて蓋材を形成した場合について説明する。蓋材は、積層フィルムを構成する支持体33が紙層で構成される場合であり、図3、図5および図6に示すような層構成の積層フィルム20A〜20Cを用いて形成することができる。
蓋材は、カップ形状の包装容器、特に、カップラーメンやカップ焼きそばなどの熱湯を注ぎ加食化するインスタント食品、電子レンジで加熱する食品その他の即席食品、加温された飲料、電子レンジで加熱する飲料、スナック菓子、菓子、ゼリーなどの内容物を密封するための包装容器の蓋材として好適に使用することができる。
[チューブ容器]
次に、本発明によるポリエステルフィルムを適用した積層フィルムを用いてチューブ容器を形成した場合について説明する。図10は、チューブ容器の一例を簡略に示す部分断面図である。図10に示すように、チューブ容器50は、頭部51と、筒状胴部52とを備えている。
頭部51は、中空円錐型の肩部53と注出口部54とからなり、一体に形成されている。
筒状胴部52は、頭部51の肩部53と連接している。筒状胴部52は、積層フィルムを用いて形成することができる。チューブ容器の筒状胴部を形成する積層フィルムの部分断面図を図11に示す。図11に示すように、筒状胴部52を形成する積層フィルム20Dは、第1のシーラント層21A、ポリエステルフィルム10、印刷層34、および第2のシーラント層21Bを備え、第1のシーラント層21A、ポリエステルフィルム10、印刷層34、第2のシーラント層21Bを、筒状胴部52の内面側から外面側に向かってこの順に積層して構成されている。また、積層フィルム20Dは、上記バリア層を、例えばポリエステルフィルム10と印刷層34との間など積層フィルム20Dを構成する層の何れかの間に設けられていてもよい。
また、筒状胴部52を形成する積層フィルム20Dは、図11に示すような層構成に限定されるものではなく、積層フィルム20Dの層構成は、適宜任意に調整することができる。筒状胴部52を形成する積層フィルムの他の層構成の一例を図12に示す。図12に示すように、筒状胴部52を形成する積層フィルム20Eは、図11に示した積層フィルム20Dにおいて、ポリエステルフィルム10と印刷層34との間に接着樹脂層55を設け、印刷層34と第2のシーラント層21Bとの間に支持体33を設けたものである。また、積層フィルム20Eにおいても、上記バリア層を、例えばポリエステルフィルム10と接着樹脂層55との間など積層フィルム20Eを構成する層の何れかの間に設けられていてもよい。
筒状胴部52は、筒状胴部52の両端部の第1のシーラント層21Aと第2のシーラント層21Bとを重ね合わせ、その重ね合せ部分をヒートシールして溶着することで作製される。筒状胴部52は、その一方の開口部の上部に頭部51が連結される。なお、筒状胴部52の両端部は、第1のシーラント層21Aと第2のシーラント層21Bとを重ね合わせる方法に限定されるものではなく、第2のシーラント層21B同士を重ね合わせてもよい。
ヒートシールする方法としては、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール、火炎シールなどの従来公知の方法で行うことができる。
チューブ容器50の製造方法の一例を説明する。筒状胴部52の一方の開口部に、例えば、圧縮成形法などの通常の方法によって、頭部51を連結する。その後、筒状胴部52の頭部51と連結した他方の開放端から内容物を充填し、開放端を熱溶着して底シール部56を形成する。これにより、内容物が充填包装されたチューブ容器50を得ることができる。注出口部54には、注出口部54の形状に対応して、例えば螺合させ、または嵌合させるなど、各種の方法によりキャップを装着することができる。
チューブ容器50は、例えば、練り歯磨き、化粧品、糊、練り辛子、練りわさび、クリーム、絵の具、軟骨、医薬品、およびその他の従来公知の製品などのチューブ容器として好適に使用することができる。
[液体紙容器]
次に、本発明によるポリエステルフィルムを適用した積層フィルムを用いて液体紙容器を形成した場合について説明する。図13は、液体紙容器の一例を示す斜視図である。図13に示すように、液体紙容器60は、側面を含む四角筒状の胴部61と、四角板状の底部62と、上部63とを有している。
上部63は、対向する一対の傾斜板63aと、傾斜板63a間に位置するとともに傾斜板63a間に折込まれる一対の折込部64とを有している。一対の傾斜板63aには各々の上端にのりしろ65が設けられ、一対の傾斜板63aは各々の上端に設けられたのりしろ65により互いに接着されている。なお、一対の傾斜板63aのうちの一方の傾斜板63aに注出口を取付け、注出口にキャップで密封するようにしてもよい。
液体紙容器60は、積層フィルムを用いて形成することができる。図14は、液体紙容器に用いられる積層フィルムの構成の一例を示す断面図である。図14に示すように、液体紙容器60を形成する積層フィルム20Fは、第1のシーラント層21A、ポリエステルフィルム10、接着樹脂層55、紙基材(紙層)66、第2のシーラント層21B、および印刷層34を備え、第1のシーラント層21A、ポリエステルフィルム10、接着樹脂層55、紙層66、第2のシーラント層21B、および印刷層34を、液体紙容器60の内面側から外面側に向かってこの順に積層して構成することができる。また、積層フィルム20Fは、上記バリア層を、例えばポリエステルフィルム10と接着樹脂層55との間など積層フィルム20Fを構成する層の何れかの間に設けてもよく、例えば、ポリエステルフィルム10に、金属の蒸着膜からなる層や、無機酸化物の蒸着膜からなる層およびガスバリア性塗布膜からなる層を設けてもよい。
紙層66としては、所望の剛性などに応じて任意の紙を使用することができ、例えば、上質紙、模造紙、アート紙、コート紙、純白ロール紙、クラフト紙、耐水性を高めたラベル用紙、コップ原紙、カード紙、アイボリー紙、マニラボールなどの板紙、ミルクカートン原紙、カップ原紙、合成紙、クレイコート紙などの公知の紙を使用することができる。
また、紙層66上に第2のシーラント層21Bを積層させる前に、紙層66の表面にコロナ放電処理、フレーム処理などを施してもよい。これらの処理を施すことで層間の接着強度を向上させることができる。コロナ放電処理は、公知のコロナ放電処理器を用い、発生させたコロナ雰囲気中に紙基材を通過させることにより行うことができる。フレーム処理は、公知のフレーム処理器を用い、紙基材表面を火で炙ることにより行うことができる。
液体紙容器60は、上記した積層フィルムを用いて従来公知の方法により製造することができ、例えば、積層フィルムを製函して、ゲーブルトップ型、ブリック型など種々の形状の液体紙容器60を製造することができる。
液体紙容器60は、日本酒、焼酎、ワインなどのアルコール類、牛乳などの乳飲料、オレンジジュースやお茶などの清涼飲料などの食品、カーワックス、シャンプーや洗剤などの化学製品など液体全般の包装紙容器として好適に用いることができる。
[紙カップ]
本発明によるポリエステルフィルムを適用した積層フィルムを用いて紙カップを形成した場合について説明する。図15は、紙カップの一部を切除した斜視図である。図15に示すように、紙カップ70は、上部にフランジ部71を有し、かつ直径が開口部へ向かって徐々に広がる円筒状の胴部72と、胴部72の下端(一端)に設けられた底部73とを備えている。胴部72は、その上端が外側に丸められたフランジ部71が設けられている。なお、紙カップ70は、内容物を収納した後に、胴部72のフランジ部71に沿って蓋材が貼着されることにより密封される。蓋材はガスバリア性を有していることが好ましく、従来公知のガスバリア性することもできる。
胴部72は、本発明によるポリエステルフィルムを適用した積層フィルムを用いて形成することができる。図16は、紙カップの胴部に用いられる積層フィルムの構成の一例を示す部分断面図である。図16に示すように、胴部72を形成する積層フィルム20Gは、シーラント層21、ポリエステルフィルム10、接着樹脂層55、紙基材(紙層)66、および印刷層34を備え、シーラント層21、ポリエステルフィルム10、接着樹脂層55、紙層66、および印刷層34を、胴部72の内面側から外面側に向かってこの順に積層して構成することができる。また、積層フィルム20Gは、上記バリア層を、例えばポリエステルフィルム10と接着樹脂層55との間など積層フィルム20Gを構成する層の何れかの間に設けてもよく、例えば、ポリエステルフィルム10に、金属の蒸着膜からなる層や、無機酸化物の蒸着膜からなる層およびガスバリア性塗布膜からなる層を設けてもよい。
胴部72を形成する積層フィルム20Gは、例えば、シーラント層21として低密度ポリエチレン、ポリエステルフィルム10、接着樹脂層55として低密度ポリエチレン、および支持体33を、この順に積層した積層フィルムを用いることができる。また、底部73についても、胴部72と同様に、シーラント層21として低密度ポリエチレン、ポリエステルフィルム10、接着樹脂層55として低密度ポリエチレン、および紙層66を、この順に積層した積層フィルムを用いることができる。
本実施形態においては、積層フィルム20Gは、紙層66の外面側に印刷層34を設けているが、これに限定されるものではなく、印刷層34の外面側または紙層66と印刷層34との間にさらにシーラント層21を設けるようにしてもよい。
紙カップの製造方法の概略の一例を図17に示す。図17に示すように、図16に示す積層フィルムから扇形状に切り出されて所定の輪郭が与えられた胴部ブランク72’の印刷層34が外側に、印刷層34が内側に位置するようにして円筒状に丸め、両端部72a’を重ね合わせた状態でヒートシール加工によりこれらを接着する。これにより、胴部2には胴貼部75が形成される。
また、不図示のカップ原紙から円形状に底部ブランク73’を切り出し、底部ブランク73’の外周縁を下方に屈曲させ、屈曲部73a’を形成する。なお、底部ブランク73’を、積層フィルム20Gから切り出してもよい。
次に、円筒状に加工された胴部ブランク72’の下部に成形加工済の底部ブランク73’を配置する。そして、底部ブランク73’の屈曲部73a’が胴部ブランク72’の下端部で包み込まれるように、胴部ブランク72’の下端部を折り曲げる。その状態を保持しつつ底部ブランク73’の屈曲部73a’と胴部ブランク72’の下端部とが重なり合う部分をホットエアーにて溶融し、その部分に所定の圧力を加えることによりこれらを一体化する。その後、胴部72の上端部にフランジ部71を形成することにより、紙カップ70が完成する。胴部72を形成する積層フィルム20Gは、紙カップ70の内面側から外面側に向かって、シーラント層21、ポリエステルフィルム10、接着樹脂層55、紙層66、および印刷層34の順に積層され、印刷層34が最も外側に位置するように構成される。
紙カップ70は、スナック菓子、熱湯を注ぎ加食化するインスタント食品、電子レンジで加熱する食品その他の即席食品、加温された飲料、電子レンジで加熱する飲料などを入れる容器として好適に用いることができる。
本実施形態においては、胴部72が積層フィルム20Gを用いて形成される場合について説明したが、これに限定されるものではなく、底部73のみ、または胴部72および底部73が積層フィルム20Gを用いて形成されていてもよい。
<本発明の他の実施態様>
[1]少なくとも2層の層を備えてなるポリエステルフィルムであって、
ジオール単位としてバイオマス由来のエチレングリコールを含み、ジカルボン酸単位として化石燃料由来のジカルボン酸を含むバイオマスポリエステルを含む第1の層と、
ジオール単位として化石燃料由来のジオールおよび/またはバイオマス由来のエチレングリコールを含み、ジカルボン酸単位として化石燃料由来のジカルボン酸を含むポリエステルを含むポリエステル樹脂製品をリサイクルして得られるリサイクルポリエステルを含む第2の層と、
を含むことを特徴とする、ポリエステルフィルム。
[2]前記第1の層、前記第2の層、および前記第1の層が、この順に積層されている、[1]のポリエステルフィルム。
[3]前記ポリエステルフィルムの総厚が、5μm以上、100μm未満である、[1]または[2]のポリエステルフィルム。
[4]前記ジカルボン酸がテレフタル酸である[1]〜[3]の何れかのポリエステルフィルム。
[5][1]〜[4]の何れかのポリエステルフィルムと、
前記ポリエステルフィルムの何れか一方または両方の面側に設けられるシーラント層とを有する、積層フィルム。