JP5753599B2 - 発酵食品の非加熱殺菌による発酵停止方法 - Google Patents

発酵食品の非加熱殺菌による発酵停止方法 Download PDF

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Description

本発明は、非加熱殺菌の利点を損なわない圧力値での圧力処理によって殺菌が可能となる低耐圧性酵母を用いて製造する発酵食品の非加熱殺菌による発酵停止方法に関するものである。
味噌、醤油、酒などの発酵・醸造食品は、いずれも酵母の発酵作用を利用して製造されている。
また、これらの発酵・醸造食品は、通常、一定の発酵・熟成期間を経過した後、過発酵などを防ぐために濾過や加熱処理により酵母の分離、殺菌が行われる。
例えば、味噌は50〜70℃で60分、醤油は70〜85℃で10〜30分の加熱処理が行われる。また、清酒ではおり引き、濾過した生酒を60〜70℃で10分間加熱処理して殺菌と酵素の失活を行う。
しかし、このような従来の分離・殺菌方法では、加熱処理を伴うことで食品の風味、色合いが変化してしまう恐れがあり、加熱処理後には速やかに冷却する必要があるなど、手間を要するものであった。
さらに均一な加熱処理が必要であり、この加熱処理が不十分であると、残存する酵母による過発酵や、炭酸ガスの発生によりパック詰めされた製品の膨れが起こって商品価値が失われるなどの問題もある。
そこで、このような問題を解決するために、従来、特開平7−213277号(特許文献1)のように発酵・熟成後、0〜15℃の低温域において発酵を抑える方法や、特開2004−73063号(特許文献2)のように低温感受性酵母と乳酸菌を併用した発酵食品の製造方法が提案されている。
しかし、これらの方法では酵母が殺菌されるわけではないので、新たに発酵後の温度管理が必要となってしまうものであった。
特開平7−213277号公報 特開2004−73063号公報
発酵(醸造)食品において、発酵・熟成後に食品の有用成分を変質させず、色合いを損なわずに酵母を殺菌できる方法が望まれている。
出願人は、これまでに圧力処理(高圧処理とも称される。)をテーマに食品に対する様々な研究・実験を行っており、この圧力処理によって上記課題を解決できないかと考えていた。
この圧力処理は、およそ100MPa以上の圧力を加えて食品の加工・殺菌を行う技術で、従来から、ジャム、米飯、めんつゆ、加工玄米等のほかに、味噌、醤油などの発酵食品の製造にも用いられているという実績がある。
また、非加熱殺菌技術であるこの圧力処理は、食品の有用成分を変質させずに、酵母だけを選択的に殺菌することが可能であり、さらには、一般的に酵母の殺菌には300MPa、10分以上の圧力処理を行えばよいこともわかっている。
従って、この圧力処理によれば、発酵・熟成後に食品の有用成分を変質させず、色合いを損なわずに酵母を殺菌できるのではないかと出願人は着目したのである。
しかし、実験を繰り返したところ、300MPa、10分間の圧力処理を行っても、酵母によっては生残する可能性があり、確実とは言えない結果であった。
300MPa以上の圧力を加えれば、さらに高い殺菌効果が得られることになるのであるが、処理設備が大型化・高額化して処理コスト高ともなるほか、食品にも加熱殺菌と同様に有用成分の低減、色合いの変化が生じてしまい、非加熱殺菌としての利点を生かすことができなくなってしまう。また、圧力値が高すぎると、ケフィアヨーグルトを代表とする酵母と乳酸菌の並行複合発酵食品においては、酵母だけでなく、発酵後でも有用な乳酸菌まで死滅させてしまう恐れもある。
出願人は、このような現状に鑑み、何とか非加熱殺菌技術である圧力処理を利用して食品の変質・色合いの変化などを生じずに酵母を殺菌できる方法はないかと研究を進めた末に、発想の転換を図り、予め圧力に対して耐性の低い酵母を用いて発酵食品を製造すれば、その後の圧力処理によって確実に酵母を殺菌できるのではないかと着眼した。
即ち、本発明は、非加熱殺菌の利点を損なわない圧力値での圧力処理によって簡単に殺菌可能となる低耐圧性酵母を用いて製造した発酵食品の非加熱殺菌による発酵停止方法を提供することを目的とする。
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
サッカロミセス属の野生酵母菌株または突然変異処理を施したサッカロミセス属の酵母菌株からスクリーニングした静水圧1MPa以上200MPa以下の非加熱での圧力処理で殺菌されることを確認した低耐圧性酵母を用いて食材を発酵させてなる発酵食品に対して、静水圧1MPa以上200MPa以下の非加熱での圧力処理を行って前記発酵食品の前記低耐圧性酵母を殺菌し発酵を停止させることを特徴とする発酵食品の非加熱殺菌による発酵停止方法に係るものである。
本発明は上述のようにしたから、発酵食品の発酵を停止させる際に、大型で高額な圧力処理設備を要しない静水圧1MPa以上200MPa以下の非加熱での圧力処理によって、即ち非加熱殺菌の利点を損なわない圧力値での圧力処理によって簡単に発酵食品の酵母を殺菌して発酵食品の発酵を停止させることが可能となり、しかも圧力処理によって有用成分が変質したり、色合いが損なわれたりすることもなく発酵食品の発酵を停止できる極めて実用性に秀れた画期的な発酵食品の非加熱殺菌による発酵停止方法となる。
具体例1に示す方法でスクリーニングした低耐圧性酵母と無処理の酵母との各圧力条件における耐圧性を検証したグラフある。 具体例2に示す方法でスクリーニングした低耐圧性酵母(平均粒形の大きい酵母)と平均粒形の小さい酵母とを示す比較顕微鏡写真である。 具体例2に示す方法でスクリーニングした低耐圧性酵母と無処理の酵母との各圧力条件における耐圧性を検証したグラフである。 具体例3に示す方法でスクリーニングした低耐圧性酵母と無処理の酵母との各圧力条件における耐圧性を検証したグラフである。 具体例4に示す方法でスクリーニングした低耐圧性酵母と無処理の酵母との各圧力条件における耐圧性を検証したグラフである。 具体例5に示す方法でスクリーニングした低耐圧性酵母と無処理の酵母との各圧力条件における耐圧性を検証したグラフである。
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
本発明に用いる発酵食品は、サッカロミセス属の野生酵母菌株または突然変異処理を施したサッカロミセス属の酵母菌株からスクリーニングした静水圧1MPa以上200MPa以下の非加熱での圧力処理で殺菌されることを確認した低耐圧性酵母を用いて食材を発酵させて成る発酵食品である。
例えば、この低耐圧性酵母を用いて、定法に従い食材を発酵させて清酒、ビール、ワイン、パン、醤油、味噌等各種の発酵食品を製造可能である。
尚、本発明でいう「発酵食品」とは、酵母による発酵作用を利用して製造される醸造食品も含む意味合いで用いている。
本発明は、この低耐圧性酵母を用いて食材を発酵させた発酵食品に対して、一定の発酵・熟成期間を経過した後、この発酵食品に静水圧1MPa以上200MPa以下の非加熱での圧力処理を行って、この発酵食品の発酵に用いた低耐圧性酵母を殺菌し、この発酵食品の発酵を停止させるものである。
このような静水圧1MPa以上200MPa以下の圧力値での圧力処理は、既存の圧力処理設備で問題なく行うことができるので、追加の設備投資を必要とせず、また、食品の変質・色合いの変化なども生じさせることがない。
即ち、本発明によれば、新たに大型で高額な設備を要せずとも、有用成分や色合いを損なわずに発酵食品の酵母(低耐圧性酵母)を殺菌でき、発酵食品の発酵を停止させることができる。
以下、本発明に用いる発酵食品の発酵に用いられる低耐圧性酵母のスクリーニング方法の具体例について説明する。
[具体例1]
具体例1は、サッカロミセス属の野生酵母菌株または突然変異処理を施したサッカロミセス属の酵母菌株について、20℃以下の低温域での増殖が可能な酵母をスクリーニングすることを特徴とする低耐圧性酵母のスクリーニング方法である。
具体的には、例えば、サッカロミセス属の野生酵母菌株または突然変異処理を施したサッカロミセス属の酵母菌株を、0℃から20℃までの低温域内で段階的に温度を変更して培養することにより、この低温域にて増殖が可能な酵母をスクリーニングする。
更に具体的には、例えば、サッカロミセス属の野生菌株(突然変異処理を施していない菌株)または突然変異処理を施したサッカロミセス属の酵母菌株をYPD寒天培地等のプレート上に、形成されるコロニー数が200個程度となるように接種する。
プレートを0℃にて7日間程度まで培養し、コロニーの形成(増殖性の良否)を確認する。0℃にて良好に形成されるコロニーがある場合は、それを白金耳等で釣菌し、低耐圧性酵母の候補として、再び培養を行う。
0℃にてコロニーの形成が見られないか、各コロニーの生育能の有意差が見られない場合は培養温度を2℃程度上げて、再度7日間程度まで培養を行い、コロニーの形成を確認する。
2℃での培養において、コロニーの形成が良好であるものが認められる場合は、そのコロニーを釣菌し、低耐圧性酵母の候補として培養を行う。
以下、同様にして0℃から20℃程度までの適宜選択した低温域で3日から7日程度培養後にコロニーの形成の有無を確認し、コロニーの形成が良好であれば低耐圧性酵母の候補として培養し、コロニーの形成が見られないか、各コロニーの生育能の有意差が見られない場合は培養温度を段階的に上げて培養を行うという手順を繰り返して、低温にて増殖が良好であるコロニーを選抜する。
このようにして選抜された酵母は、静水圧1MPa以上200MPa以下の非加熱での圧力処理を施すことによって殺菌されることが出願人の実験により確認されている。即ち、一般的な酵母の培養至適温度が30℃前後であるのに対し、低耐圧性の酵母は、0℃〜20℃程度の低温域にて良好に増殖するという特性を有することを見い出し、この特性を利用して低耐圧性菌株をスクリーニングすることに成功した。
以下、更に詳しく説明する。
スクリーニングの対象菌株としては、例えば、サッカロミセス・セレビシエに属する酵母菌株で、突然変異処理を施していない野生菌株、または突然変異処理した株を対象とすることができる。突然変異処理は、X線、UV照射、エチルメタンスルホン酸(EMS)、ニトロソグアニジン(NTG)処理など何らかの方法で行うものとする。通常、変異処理後の生存率が10%以下となるように処理を行う。これ以上生存率を低くすると、余分な変異が生じ、好ましくない。変異処理は、2倍体の酵母でもよいが、1倍体の胞子株を用いる方がより効率的である。
また、使用する培地としては、炭素源、窒素源、無機イオン、さらに必要に応じて有機微量栄養素を含有する通常の培地が使用できる。例えば、YPD寒天培地(酵母エキス、グルコース、ポリペプトン、寒天、蒸留水)、YM寒天培地(酵母エキス、麦芽エキス、ペプトン、グルコース、寒天、蒸留水、pH5〜6)等が用いられる(液体培地では寒天を除く)。培養方法として、例えば30℃、3日間培養し、遠心分離(3000rpm、10分)にて集菌後、生理食塩水で2回遠心洗浄し、適当な菌濃度になるように生理食塩水に懸濁する。
培養は一般的な条件でよく、培養温度は一般に20〜30℃、好ましくは30℃前後、培養日数は1〜7日間、好ましくは3日間程度である。
変異処理を行う場合、この懸濁液をUV、NTG、EMSなどの変異剤を用いて、生存率がおよそ10%以下になるように処理し、遠心集菌後、生菌数が約4×10程度になるように液体培地に懸濁し、30℃、12時間振とう培養する。
尚、以上の点は、後述の具体例2〜5においても同様である。
Saccharomyces cerevisiae NBRC1136(生物基盤技術評価研究所 分譲株)の野生菌株をYM培地にて30℃、3日間初期培養を行った。
菌体を3000rpm、3分間の遠心分離により回収した後、滅菌水を5ml添加して洗浄した。
この洗浄操作を2回繰返した後、適当な濃度となるように生理食塩水に懸濁した。
懸濁液を希釈した後、プレート上に形成されるコロニー数が200程度となるように接種した。
0℃で3日から7日間程度培養を行い、コロニーの形成の有無を日々確認した。
コロニーの形成が認められない場合、20℃までの低温域内で温度を2℃ずつ段階的に上げながら培養を行い、低温域にて増殖可能なコロニーを形成させた。
その結果、10℃、5日から7日間にて目視で確認できる程度のコロニーが形成され、その中より、特に生育の良好なものを複数個(10〜20個程度)白金耳にて採取し、YM培地にて再び30℃、3日間培養を行い、これを低耐圧性株として取得した。
その後、取得した低耐圧性株に200MPaの圧力処理を行って耐圧性を評価した。
図1は、具体例1でスクリーニングした酵母と無処理の酵母との各圧力条件における耐圧性を検証したグラフである。
この結果から、無処理の酵母は、殺菌に300MPa程度の圧力処理を要するが、具体例1でスクリーニングした酵母は、200MPa程度の圧力処理で殺菌が可能であることが確認された。
尚、ここでいう圧力処理は、水などの液体を媒体とした静水圧処理をいい、以下に記載する具体例2〜5の圧力処理もすべてこれを意味している。
[具体例2]
具体例2は、サッカロミセス属の野生酵母菌株または突然変異処理を施したサッカロミセス属の酵母菌株について、栄養型細胞のサイズが、その菌株内の各酵母が持つ栄養型細胞の平均サイズよりも大きい酵母をスクリーニングすることを特徴とする低耐圧性酵母のスクリーニング方法である。
具体的には、例えば、サッカロミセス属の野生酵母菌株または突然変異処理を施したサッカロミセス属の酵母菌株を培養し集菌した後、生理食塩水に懸濁し、この懸濁液から自然沈下法あるいは遠心分離法あるいは密度勾配遠心法あるいはエルトリエータロータ分離により形態サイズが大きい酵母(栄養型細胞のサイズが大きい酵母は形態サイズが大きい。)をスクリーニングする。
更に具体的には、例えば、サッカロミセス属の野生酵母菌株または突然変異処理を施したサッカロミセス属の酵母菌株を培養し、集菌、洗浄後に、適当な菌濃度になるように生理食塩水に懸濁する。
懸濁液の菌濃度は好ましくは10〜10/ml程度であり、菌体の凝集塊を解離させるために、懸濁液を超音波装置に低出力条件にて15〜30秒程度かけるとよい。
このようにして調整した懸濁液から、例えば、自然沈降法、遠心分離法、密度勾配遠心法、エルトリエータロータなどの方法により形態上のサイズが大きい酵母を選抜する。
例えば、自然沈降法としては、適当な濃度に調整したショ糖溶液等に菌液を懸濁し、一定時間静置し、細胞密度の大きいものを沈降させる。酵母等の微生物においては、概して栄養型細胞のサイズの大きいものの方が細胞密度が大きく、細胞密度の小さいものはサイズが小さい。
よって一定時間静置後の沈殿物を採取することにより、栄養型細胞のサイズの大きい酵母を分離することが可能である。
また、密度勾配遠心法としては、例えば60%ショ糖溶液などの密度の高い液体を遠沈管の底におき、15%ショ糖などの密度の低い液体を上部において、その間を密度が順次変わるように調整する。
また、もう一つの密度勾配を作る方法として、塩化セシウム溶液のように強い遠心を施すとその遠心力により自然に密度勾配が生じるものもある。
このような方法により形成した密度勾配液の上層部に適当に希釈した菌液を静かに重層し、一定時間放置した後、遠心分離機にかけると、各溶液層の密度に応じて酵母を密度ごとに分離することができる。
また、エルトリエータロータは、遠心力と懸濁液を流す流速に応じて、種々の大きさに応じて、各フラクションとして分離することができる。
酵母のサイズとして、出芽酵母であるサッカロミセス・セレビシエの一倍体細胞では長径5μm程度の卵形をしており、二倍体細胞はそれより若干大きく、両端が多少とがったようなレモン形をしている。
上記のような方法により、酵母を栄養型細胞のサイズごとに分離する場合、予め光学顕微鏡、ミクロメーター等で混在する酵母のサイズ、形態等を観察しておく必要があり、好ましくはフローサイトメトリー法などにより懸濁液中の酵母の粒度分布を計測しておくことが望ましい。
酵母の分離、分画は、好ましくは1μm程度ごとの範囲が望ましいが、手法や使用する装置にもよるため、確認した懸濁液中の酵母サイズ、形態をもとに、適切な手法、装置を選択することとする。
選抜する酵母のサイズの基準として、特に明確なものはないが、概ね全体の細胞サイズの粒径分布のうち、サイズの大きい方から10%以下の範囲を対象に選抜を行うものとする。
このようにして選抜された酵母は、静水圧1MPa以上200MPa以下の非加熱での圧力処理によって殺菌されることが出願人の実験により確認されている。即ち、低耐圧性の酵母は、栄養型細胞のサイズが、菌株内の各酵母が持つ栄養型細胞の平均サイズよりも大きいという特性を有することを見い出し、この特性を利用して低耐圧性菌株をスクリーニングすることに成功した。
以下、更に詳しく説明する。
具体例1と同様にして調整した懸濁液を、CR22GII形高速冷却遠心機(日立工機(株)製)、R5E形エルトリエータロータ(日立工機(株)製)からなるエルトリエータ分離システムにより、栄養細胞のサイズによる各フラクションごとに分画を行い、栄養型細胞のサイズが、菌株内に存在する菌の栄養型細胞の平均サイズよりも大きい酵母(低耐圧性株)を取得した(図2参照。)。処理条件として、温度4℃、回転速度3000rpm、流速9ml/min〜23ml/minである(表1参照。)。
図3は、具体例2でスクリーニングした酵母と無処理の酵母との各圧力条件における耐圧性を検証したグラフである。
この結果から、無処理の酵母は、殺菌に300MPa程度の圧力処理を要するが、具体例2でスクリーニングした酵母は、200MPa程度の圧力処理で殺菌が可能であることが確認された。
[具体例3]
具体例3は、サッカロミセス属の野生酵母菌株または突然変異処理を施したサッカロミセス属の酵母菌株について、湿度20%以下の低湿度条件下での増殖(生育)が困難な酵母、あるいは湿度80%以上の高湿度条件下での増殖(生育)が可能な酵母をスクリーニングすることを特徴とする低耐圧性酵母のスクリーニング方法である。
具体的には、例えば、サッカロミセス属の野生酵母菌株または突然変異処理を施したサッカロミセス属の酵母菌株を、湿度20%以下の低湿度条件下で培養してこの低湿度条件下で増殖が困難な酵母をスクリーニングするか、若しくはサッカロミセス属の野生酵母菌株または突然変異処理を施したサッカロミセス属の酵母菌株を、湿度80%以上の高湿度条件下で培養してこの高湿度条件下で増殖が可能な酵母をスクリーニングする。
更に具体的には、例えば、サッカロミセス属の野生酵母菌株または突然変異処理を施したサッカロミセス属の酵母菌株をYPD培地等のプレート上に形成されるコロニー数が200程度となるように接種する。
プレートを30℃などの適当な温度と、湿度10%以下の低湿度条件下にて3日から7日間程度の培養を行い、生育が悪く増殖性の悪い菌株、つまり形成されるコロニーの小さいものを選抜する。
あるいは30℃、湿度90%以上の高湿度条件下にて良好に生育し増殖する菌株、つまり形成されるコロニーの大きいものを選抜する。
本方法により、低湿度条件下にて増殖が困難である酵母、高湿度条件下にて増殖が良好である酵母、つまり乾燥に対して耐性の弱い酵母を選抜することが可能である。
このようにして選抜された酵母は、静水圧1MPa以上200MPa以下の非加熱での圧力処理によって殺菌されることが出願人の実験により確認されている。即ち、低耐圧性の酵母は、湿度20%以下の低湿度条件下にて増殖が特に困難であり、湿度80%以上の高湿度条件下にて増殖が良好であること、即ち乾燥に対して耐性が弱いという特性を有することを見い出し、この特性を利用して低耐圧性菌株をスクリーニングすることに成功した。
以下、更に詳しく説明する。
具体例1と同様に調整した菌液を形成されるコロニー数が200程度となるようにプレートに接種する。30℃、湿度90%にて培養を開始し、経時的にコロニー形成の様子を確認した。
3日から7日間程度の培養にて目視でコロニーの形成が確認でき、その中で特に生育性の良好であるものを10〜20個程度を白金耳にて採取し、YM培地にて再び30℃、3日間培養を行い、これを低耐圧性株として取得した。
その後、取得した低耐圧性株を含む菌液を200MPaまでの圧力処理を行って耐圧性を評価した。
図4は、具体例3でスクリーニングした酵母と無処理の酵母との各圧力条件における耐圧性を検証したグラフである。
この結果から、無処理の酵母は、殺菌に300MPa程度の圧力処理を要するが、具体例3でスクリーニングした酵母は、200MPa程度の圧力処理で殺菌が可能であることが確認された。
[具体例4]
具体例1と同様にして調整した懸濁液について、凝集塊を破壊したり、また成熟した出芽娘細胞をその母細胞より分離したりするために、菌の希釈液を軽く超音波処理(低出力で10〜15秒)し、その後無菌ペトリ皿に移し紫外線照射を行った。
紫外線照射は、滅菌シャーレに5ml採取し、5cmの距離から出力15Wの殺菌灯にて行った。殺菌灯は松下電工製のGL-15殺菌灯を用いた。
処理後の菌液をYM寒天培地に段階希釈した後に接種し、30℃、3日間培養した。
コロニーの形成されたプレートをマスタープレートとして、レプリカを作製した。
レプリカした平板培地を無菌的にパウチに封入し、なるべく空気を排出しつつ、ヒートシールして密封した。
密封した平板培地ごと200MPaの圧力処理を行なった後、無菌的に開封し、再び滅菌シャーレに移して、30℃、3日程度培養させてコロニーを形成させた。
無処理区と比較して、コロニーの形成されないものを低耐圧性酵母として取得した。
具体例4での紫外線照射後の生菌数は2.3×10(処理前は6.3×10)であり、紫外線照射による殺菌率は99.9%である。
また、紫外線照射後に形成されたコロニー100個をレプリカし、そのうち200MPaの圧力処理で死滅するコロニーを2個取得した。
また、取得した2個のコロニーを増殖させ、100MPaの圧力処理で死滅するものは0個であった。
図5は、具体例4でスクリーニングした酵母と無処理の酵母との各圧力条件における耐圧性を検証したグラフである。
この結果から、無処理の酵母は、殺菌に300MPa程度の圧力処理を要するが、具体例4でスクリーニングした酵母は、200MPa程度の圧力処理で殺菌が可能であることが確認された。
[具体例5]
具体例5は、前記具体例1〜4のいずれか2以上の低耐圧性酵母のスクリーニング方法を併用して酵母をスクリーニングすることを特徴とする低耐圧性酵母のスクリーニング方法である。
上記した低耐圧性酵母のスクリーニング方法のうちのいずれか2つ以上を併用して酵母をスクリーニングすると、より精度良く効果的に低耐圧性酵母をスクリーニングできる。
尚、これらスクリーニング方法の併用数や、順序は特に限定されるものではない。また、選択した2つ以上の各スクリーニング方法を順序だてて行う必要性はなく、例えば2つの方法を同時的に行うことも可能である。
具体的には、具体例5は、前記具体例1と前記具体例4を組み合わせた場合である。
具体例1と同様に調整した菌液を形成されるコロニー数が200程度となるようにプレートに接種する。
10℃にて7日間程度培養を行い、形成されるコロニーのうち、特に生育の良好なもの約300個を採取して、プレートに移し、マスタープレートとした。
マスタープレートより、レプリカを作製し、具体例4と同様に圧力処理を施し、低耐圧性酵母を取得した。
具体例5では低耐圧性酵母の一次スクリーニングとして具体例1の方法により、約300個のコロニーを分離した。
その後、二次スクリーニングとして具体例4の方法により、4個の低耐圧性酵母を取得した。
具体例1あるいは具体例4単独でのスクリーニング方法に比べて、高確率で低耐圧性酵母をスクリーニングすることができた。
図6は、具体例5でスクリーニングした酵母と無処理の酵母との各圧力条件における耐圧性を検証したグラフである。
この結果から、無処理の酵母は、殺菌に300MPa程度の圧力処理を要するが、具体例5でスクリーニングした酵母は、200MPa程度の圧力処理で殺菌が可能であることが確認された。
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
本実施例は、低耐圧性酵母を用いた発酵食品の非加熱殺菌による発酵停止方法である。
具体的には、発酵食品は、例えば上記した具体例1〜5のスクリーニング方法のいずれかの方法により得た低耐圧性酵母を使用して発酵させた発酵食品を用いる。
例えばこの低耐圧性酵母を用いて、定法に従い食材を発酵させて得られる発酵食品としては、清酒、ビール、ワイン、パン、醤油、味噌等各種の発酵食品がある。
本実施例は、この発酵食品が一定の発酵・熟成期間を経過した後、静水圧1MPa以上200MPa以下の非加熱での圧力処理を行うことで、この発酵食品の発酵に用いた低耐圧性酵母を殺菌し発酵を停止させている。
このような1MPa以上200MPa以下圧力値での圧力処理は、既存の圧力処理設備で問題なく行うことができるので、追加の設備投資を必要とせず、また、食品の変質・色合いの変化なども生じない。
従って、新たに大型で高額な設備を要せずとも、有用成分を変質させず、色合いを損なわずに発酵食品の発酵を停止させることができる。
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。

Claims (1)

  1. サッカロミセス属の野生酵母菌株または突然変異処理を施したサッカロミセス属の酵母菌株からスクリーニングした静水圧1MPa以上200MPa以下の非加熱での圧力処理で殺菌されることを確認した低耐圧性酵母を用いて食材を発酵させてなる発酵食品に対して、静水圧1MPa以上200MPa以下の非加熱での圧力処理を行って前記発酵食品の前記低耐圧性酵母を殺菌し発酵を停止させることを特徴とする発酵食品の非加熱殺菌による発酵停止方法。
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