JP5751208B2 - ガラス板の製造方法及び製造装置 - Google Patents

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Description

本発明はガラス板の製造方法及び製造装置に関するものである。更に詳しくは、例えば携帯用デジタル機器の画像表示面に設けられる穴あきカバーガラス板の製造方法及び製造装置に関するものである。
画像表示機能を有する携帯用デジタル機器(例えば、携帯電話,スマートフォン,モバイルコンピュータ等)には、その画像表示面を保護するためのカバーガラス板が通常設けられる。そのカバーガラス板は、平板状に成形された大面積の板ガラスを所定のサイズに切断することにより製造される。このため、板ガラスの切断後にはその外形枠加工(例えば、面取り加工)や穴あけ(つまり、貫通穴の形成)等の後加工が必要になる。
ガラス製品に穴あけ加工を施す従来の方法としては、回転砥石、ドリル、超音波加工、ブラスト加工等の機械加工方法;化学的処理におけるエッチング加工方法;イオンビーム、レーザービーム、電子ビーム等によるエネルギービーム加工方法が知られている。また、ガラス成形を利用して穴をあける方法として、穴をあける部分の肉厚を他の部分の肉厚よりも薄く成形し、薄く成形された部分をバーナーで加熱して焼き切る方法(特許文献1参照);成形品の片面に必要な穴深さ以上の穴を形成し、反対面に研磨加工を施すことによって貫通穴を形成する方法(特許文献2,3参照)がある。また、内側金型と外側金型の両者をガラス受け面高さが一致する第1基準位置に配置し、両者同時にプレス成形を行った後、内側金型のみを両者のガラス受け面高さが一致しない第2基準位置までさらにプレスし、その剪断力によって内径部を抜き取って、外形形状の形成と同時に穴を形成する方法(特許文献4参照)もある。
特開2000−53435号公報 特開2003−201147号公報 特開2003−55001号公報 特開2000−319026号公報
溶融ガラスを金型で直接プレスするダイレクトプレス成形によりガラス製品の形状を形成する場合に、上記の機械加工方法、エッチング加工方法、エネルギービーム加工方法や特許文献1〜3で提案されているような穴あけ方法では、ガラス成形後に穴あけ加工が必要になったり、後加工としての研磨加工が必要になったりして、製造工程が増えてしまう。
また、特許文献4に記載の方法では、ガラス板が薄板である場合に、第1のプレス成形でガラスが固化してしまい、第2のプレスの剪断力による抜き取りでガラス板が割れる虞がある。
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであって、その目的は、ダイレクトプレス成形において、貫通穴を持つガラス板を精度よく容易に製造することを可能とする製造方法及び製造装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、第1の発明のガラス板の製造方法は、貫通穴を有するガラス板の製造方法であって、貫通穴を有する第1下型と凸部を有する第2下型とから成る下型に対し、第1下型の下側から挿入された前記凸部で前記貫通穴が塞がれた状態において、一定量の溶融ガラスを滴下する滴下工程と、前記貫通穴から前記凸部を下方向に退避させる退避工程と、凸部を有する上型を下方向に移動させて、上型の凸部が前記第1下型の貫通穴に挿入されるように上型の凸部で下型上の溶融ガラスに貫通穴をあけ、その後、上型でのプレスによりガラス面を成形するプレス工程と、を有することを特徴とする。
第2の発明のガラス板の製造方法は、上記第1の発明において、前記上型の凸部の周囲と前記第1下型の貫通穴の周囲とに面取り形状が形成されており、前記プレス工程でのガラス面の成形においてガラス板の貫通穴の周囲に面取りを付加することを特徴とする。
第3の発明のガラス板の製造方法は、上記第1又は第2の発明において、前記プレス工程での貫通穴成形時に発生するガラスくずを回収するガラス受けを前記第1,第2下型間に配置する準備工程を、前記退避工程とプレス工程との間に有し、前記ガラス受けを前記第1,第2下型間外に移動させて、回収したガラスくずを廃棄する廃棄工程を、前記プレス工程よりも後に有することを特徴とする。
第4の発明のガラス板の製造方法は、上記第1〜第3のいずれか1つの発明において、前記貫通穴の開口の最小寸法が0.5mm以上であることを特徴とする。
第5の発明のガラス板の製造方法は、上記第1〜第4のいずれか1つの発明において、ガラス板厚が0.7〜5mmであることを特徴とする。
第6の発明のガラス板の製造方法は、上記第1〜第5のいずれか1つの発明において、ガラス板が、α≦100×10-7(ただし、α:線膨張係数である。)、300℃≦Tg≦700℃(ただし、Tg:ガラス転移温度である。)のガラス特性を有することを特徴とする。
第7の発明のガラス板の製造方法は、上記第1〜第6のいずれか1つの発明において、前記上型の凸部のテ―パ角度が3〜10°であることを特徴とする。
第8の発明のガラス板の製造方法は、上記第1〜第7のいずれか1つの発明において、前記上型の凸部の長さがガラス板厚の3〜10倍であることを特徴とする。
第9の発明のガラス板の製造方法は、上記第1〜第8のいずれか1つの発明において、前記滴下工程で溶融ガラスを下型上に供給してから、ガラス温度が(Tg+100)℃〜(Tg+300)℃になった時に(ただし、Tg:ガラス転移温度である。)、前記プレス工程に入ることを特徴とする。
第10の発明のガラス板の製造方法は、上記第1〜第9のいずれか1つの発明において、前記退避工程における第2下型の凸部の退避を前記プレス工程における上型の下方向への移動に連動させて、退避工程における第2下型の凸部の退避を、上型の凸部が下型上の溶融ガラスに接すると同時に開始するか、あるいは上型の凸部が下型上の溶融ガラスに接する前3秒以内に開始することを特徴とする。
第11の発明のガラス板の製造方法は、上記第1〜第10のいずれか1つの発明において、ガラス板が、携帯用デジタル機器の画像表示面に設けられる薄板状のカバーガラス板であることを特徴とする。
第12の発明のガラス板の製造装置は、貫通穴を有するガラス板の製造装置であって、貫通穴を有する第1下型と、凸部を有する第2下型と、凸部を有する上型と、装置各部を制御する制御部と、を有し、第1下型の貫通穴に第2下型の凸部を第1下型の下側から挿入して第1下型の貫通穴を塞いだ状態とし、第1,第2下型から成る下型に対し、一定量の溶融ガラスを滴下させ、第1下型の貫通穴から第2下型の凸部を下方向に退避させて第1下型の貫通穴が塞がれていない状態とし、上型を下方向に移動させて、上型の凸部が第1下型の貫通穴に挿入されるように上型の凸部で下型上の溶融ガラスに貫通穴をあけ、その後、上型でのプレスによりガラス面を成形する制御を、前記制御部で行うことを特徴とする。
第13の発明のガラス板の製造装置は、上記第12の発明において、前記上型の凸部の周囲と前記第1下型の貫通穴の周囲とに面取り形状が形成されており、前記ガラス面の成形においてガラス板の貫通穴の周囲に面取りを付加することを特徴とする。
第14の発明のガラス板の製造装置は、上記第12又は第13の発明において、さらに、貫通穴成形時に発生するガラスくずを回収するガラス受けを有し、貫通穴成形前に前記ガラス受けを第1,第2下型間に配置し、貫通穴成形後に前記ガラス受けを第1,第2下型間外に移動させてガラスくずを廃棄する制御を、前記制御部で行うことを特徴とする。
本発明によれば、上型の凸部が第1下型の貫通穴に挿入されるように上型の凸部で下型上の溶融ガラスに貫通穴をあけ、その後、上型でのプレスによりガラス面を成形するので、研磨加工等の後加工を必要とせずにダイレクトプレス成形の1動作で貫通穴の形成を完了させることができる。ガラス面よりも貫通穴を先に成形するので、貫通穴成形時の割れの発生を防止することができ、また、貫通穴の成形後すぐにガラス面を成形することができるので、成形時間の短縮も可能となる。したがって、小径の貫通穴が高精度で形成されたガラス板を容易に製造することができる。
カバーガラス板の製造方法及び製造装置の一実施の形態を示す製造工程図。 カバーガラス板の具体例を示す平面図。
以下、本発明を実施したガラス板の製造方法及び製造装置を、図面を参照しつつ説明する。
図1にカバーガラス板6の製造方法及び製造装置の実施の形態を示し、図2にカバーガラス板6の外観を示す。この製造方法は、図1(A)の断面図に示す滴下工程と、図1(B)の断面図に示す退避工程及び準備工程と、図1(C)の断面図に示すプレス工程と、図1(D)及び(E)の断面図に示す離型工程及び廃棄工程と、を有している。また、図1(F)の断面図は、図1(E)で得られたカバーガラス板6の要部断面を示している。カバーガラス板6は、例えば、画像表示機能を有する携帯用デジタル機器(例えば、携帯電話,スマートフォン,モバイルコンピュータ等)の画像表示面(ディスプレイ,タッチパネル等)を覆うために用いられる薄板状のガラス板であり、ダイレクトプレス成形(つまり、金型上に直接滴下された溶融ガラスのプレス成形)で小径の貫通穴(長穴を含む。)6hを有する状態としたものである。
この実施の形態では、製造装置として、溶融ガラス5を滴下するための滴下部(フィーダー)と、溶融ガラス5をダイレクトプレス成形するための金型部と、ガラスくずを廃棄するための廃棄部と、装置各部を制御する制御部10と、を備えている。滴下部は、白金ノズル7A,ブレード7B等で構成されている。金型部は、貫通穴1hを有する第1下型1と、凸部2pを有する第2下型2と、凸部4pを有する上型4と、を備えており、第1下型1と第2下型2とで下型3を構成している。廃棄部は、ガラスくず5dを回収するガラス受け8と、回収したガラスくず5dを集める回収箱9と、を備えている。
以下に、制御部10による装置各部に対する制御を説明する。まず、滴下工程(A)で、第2下型2を上方向に移動させて、第1下型1の下側から第2下型2の凸部2pを第1下型1の貫通穴1hに挿入する。凸部2pで貫通穴1hが塞がれた状態になったら、下型3に一定量の溶融ガラス5を滴下する。つまり、溶融炉で溶かして得られた溶融ガラス5を、白金ノズル7Aから流し出してブレード7Bで切断することにより、一定量の溶融ガラス5を下型3上に滴下する。
次に、退避工程(B)で、貫通穴1hから凸部2pを下方向に退避させて、第1下型1の貫通穴1hが塞がれていない状態とする。そして、準備工程(B)で、ガラス受け8を第1下型1と第2下型2との間に配置し、上型4を下型3上に移動させる。準備工程(B)で第2下型2,上型4及びガラス受け8を所定位置にセットしたら、プレス工程(C)に移行する。
プレス工程(C)では、凸部4pを有する上型4を下方向に移動させて、上型4の凸部4pが第1下型1の貫通穴1hに挿入されるように上型4の凸部4pで下型3上の溶融ガラス5に貫通穴5hをあけ、その後、上型4でのプレスによりガラス面5sを成形する。貫通穴5hの成形時に発生したガラスくず5dは、ガラス受け8上に落下して回収される。
離型工程(D)で上型4の離型(上型4の上方向移動)を行い、離型工程(E)で下型3の離型を行うと、ガラス面6sに小径の貫通穴6hを有するカバーガラス板6が得られる。廃棄工程(D)では、ガラス受け8を第1下型1と第2下型2との間から外に移動させる(図1(A)の位置に戻す。)。そして廃棄工程(E)で、ガラス受け8に回収したガラスくず5dを回収箱9へと廃棄する。
この実施の形態によれば、上型4の凸部4pが第1下型1の貫通穴1hに挿入されるように上型4の凸部4pで下型3上の溶融ガラス5に貫通穴5hをあけ、その後、上型4でのプレスによりガラス面5sを成形するので、研磨加工等の後加工を必要とせずにダイレクトプレス成形の1動作で貫通穴6hの形成を完了させることができる。ガラス面5sよりも貫通穴5hを先に成形するので、貫通穴5h成形時の割れの発生を防止することができ、また、貫通穴5hの成形後すぐにガラス面5sを成形することができるので、成形時間の短縮も可能となる。したがって、小径の貫通穴6hが高精度で形成された高強度のカバーガラス板6を容易に製造することができる。
下型3へのガラス供給時に、第1下型1の貫通穴1hを第2下型2の凸部2pで塞いでおかないと、滴下した溶融ガラス5が貫通穴1hに入り込むおそれがあり、それが穴あけを困難にする原因となる。したがって、溶融ガラス5を下型3に供給する際に、第1下型1の貫通穴1hに第2下型2の凸部2pを挿入して第1下型1の貫通穴1hを塞いだ状態とすることにより、溶融ガラス5に対する貫通穴5hの形成を容易に行うことが可能となる。
第1下型1の貫通穴1hを塞いだ状態では、貫通穴1hの開口面と同一位置に凸部2pの先端面が位置するか、あるいは貫通穴1hから凸部2pが突出した状態となるのが好ましい。貫通穴1h内において凸部2pの上方に空間があると、そこに溶融ガラス5が入り込み、入り込んだ溶融ガラス5が冷えて、それが穴あけを困難にする原因となる。また、成形時に貫通穴5hにバリが発生しやすくなる。したがって、貫通穴1hの開口面と同一位置に凸部2pの先端面をセットするか、あるいは貫通穴1hから凸部2pが突出するようにセットすることにより、溶融ガラス5に対する貫通穴5hの形成を容易に行うことが可能となる。
この実施の形態では、上型4の凸部4pの周囲と第1下型1の貫通穴1hの周囲とには、面取り形状の面取り部1c,4cが形成されている(図1(B),(E))。これにより、プレス工程(C)でのガラス面5sの成形において貫通穴6hの周囲に面取りを付加することができる。つまり、ダイレクトプレス成形の1動作で貫通穴6hの周囲に面取りを付加することができる。成形による穴及び面取りは、機械加工等による穴及び面取りよりも、クラック等の発生が少なく強度的に優れている。このため、機械加工等による穴及び面取りの後工程を無くして、良品率を上げることが可能である。
貫通穴5h成形時に発生するガラスくず5dを回収しないと、下型3周辺にガラスくず5dが溜まって貫通穴5hの成形が困難になり、例えば、上型4の凸部4pにガラスくず5dが巻き込まれてカバーガラス板6にクラックを発生させる原因となる。この実施の形態のように、ガラスくず5dを回収するガラス受け8を貫通穴5h成形前に第1,第2下型1,2間に配置し、貫通穴5h成形後にガラス受け8を第1,第2下型1,2間外に移動させて回収したガラスくず5dを廃棄すれば、ガラスくず5dを回収しながら連続成形を行うことが可能となる。
貫通穴(長穴を含む。)6hの開口の最小寸法d(図1(F),図2)を0.5mm以上とすることが好ましい。貫通穴6hの開口の最小寸法が0.5mm未満になると、上型4の凸部4pの最小寸法が0.5mm未満になるため強度が低くなる。その結果、貫通穴5hを成形プレスする際に凸部4pが曲がったり破損したりするおそれがある。貫通穴6hの開口の最小寸法を0.5mm以上にすれば、上型4の凸部4pも最小寸法が0.5mm以上になるため強度が高くなる。結果として、貫通穴5h成形時の上型4の凸部4pの曲がりや破損を防止することができる。
ガラス板厚t(図1(F))を0.7〜5mmとすることが好ましく、1〜3mmとすることが更に好ましい。下型3へのガラス供給後には、下型3の接地面でガラス冷却が生じて、貫通穴5hの成形後に貫通穴5hの周辺の溶融ガラス5の冷却が始まる。そのため、ガラス板厚tを0.7mm未満に成形することが困難になる。つまり、下型3に滴下された溶融ガラス5は、貫通穴5hの成形により貫通穴周辺部分が冷却されるので、ガラス板厚tに制限が生じてしまう。ガラス板厚を0.7〜5mmにすれば、冷却による制限を受けることなく、カバーガラス板6の強度及び貫通穴の精度を高くすることができ、ガラス板厚を1〜3mmにすれば、その効果は更に大きくなる。
カバーガラス板6は、α≦100×10-7(ただし、α:線膨張係数である。)、300℃≦Tg≦700℃(ただし、Tg:ガラス転移温度である。)のガラス特性を有することが好ましい。ガラス線膨張係数αが100×10-7よりも大きいと、貫通穴5hを上型4の凸部4pでプレス成形した際に貫通穴5hの周辺部分のガラス収縮が大きくなり、上型4の凸部4pを貫通穴5hから抜く際にクラック等が発生しやすくなる。したがって、α≦100×10-7のガラス材料を用いれば、貫通穴5h成形時のガラス収縮を抑えて、上型4の凸部4pを溶融ガラス5から抜く際にクラック等が発生するのを防止することができる。
また、ガラス転移温度の範囲:300℃≦Tg≦700℃は、ダイレクトプレスが可能な温度域である。つまり、Tg>700℃のガラス成形では金型温度をTg:700℃付近まで上げる必要があり、金型の温度耐久性,寿命等に問題が発生する。したがって、ガラス転移温度が700℃以下のガラス材料を用いれば、ダイレクトプレスを行っても金型の温度耐久性,寿命等に問題が生じないようにすることができる。また、カバーガラス板6のガラス材料としての現実的なガラス転移温度を考慮すると、Tgは300℃以上が好ましい。
上述した観点から、貫通穴6hの開口の最小寸法d(図1(F),図2)を2mmとし、ガラス板厚t(図1(F))を1mmとし、線膨張係数αを50×10-7とし、ガラス転移温度Tgを500℃とする組み合わせが好ましい。
上型4の凸部4pのテ―パ角度を3〜10°とすることが好ましい。溶融ガラス5を打ち抜く凸部4pのテ―パ角度が3°未満になると、上型4の凸部4pを貫通穴5hから抜く際に貫通穴5hの周辺部分がガラス収縮して、クラック等が発生しやすくなる。また、テ―パ角度が10°よりも大きくなると、上側のガラス面6sと下側のガラス面6sとで貫通穴6hの開口の寸法差が大きくなりすぎてしまう。したがって、上型4の凸部4pのテ―パ角度を3〜10°にすれば、凸部4pを溶融ガラス5から抜く際に貫通穴5h周囲のガラスが収縮してクラック等が発生するのを防止することができ、また、貫通穴6Hの上面側と下面側との寸法差を小さくすることができる。
上型4の凸部4pの長さL(図1(B))をガラス板厚t(図1(F))の3〜10倍とすることが好ましい。溶融ガラス5を打ち抜く凸部4pの長さLが、ガラス板厚tに対して3倍未満になると、貫通穴5hの成形後に上型4の凸部4pが第1下型1の貫通穴1hに完全に入っていない状態で、ガラス面5sを成形することになる。その結果、凸部4pと貫通穴1hとの間に溶融ガラス5が回り込んで、貫通穴5hの周辺部分にバリやクラックが発生しやすくなる。また、10倍以上になると、上型4の凸部4pの強度が弱くなる。
したがって、凸部4pの長さLをガラス板厚tの3倍以上にすれば、貫通穴5hの成形後に凸部4pが貫通穴5hに完全に入った状態で、ガラス面5sを成形することができる。その結果、凸部4pと貫通穴1hとの間に溶融ガラス5が回り込んでバリやクラックが発生する、といった問題を回避することができる。一方、凸部4pの長さLをガラス板厚tの10倍以下にすることにより、上型4の凸部4pの強度に問題が生じないようにすることができる。
滴下工程(A)で溶融ガラス5を下型3上に供給してから、ガラス温度が(Tg+100)℃〜(Tg+300)℃になった時に(Tg:ガラス転移温度)、プレス工程(C)に入ることが好ましい。溶融ガラス5を下型3に供給してからガラス温度>(Tg+300)℃で成形すると、ガラス温度が高すぎて、上型4の凸部4pへのガラス融着が発生しやすくなり、貫通穴5hの周辺部分のバリも発生しやすくなる。また、溶融ガラス5を下型3に供給してからガラス温度<(Tg+100)℃で成形すると、ガラス温度が低すぎて、貫通穴5hとガラス面5sの成形時にクラックが発生しやすくなり、面精度も悪くなる傾向になる。
したがって、溶融ガラス5を下型3上に供給してから、(Tg+300)℃以下で成形すれば、凸部4pへのガラス融着を防止して、貫通穴5hにバリが発生するのを防止することができる。一方、溶融ガラス5を下型3上に供給してから、(Tg+100)℃以上で成形すれば、貫通穴5h及びガラス面5sの成形時にクラックや面精度低下が発生するのを防止することができる。
退避工程(B)における第2下型2の凸部2pの退避をプレス工程(C)における上型4の下方向への移動に連動させて、退避工程(B)における第2下型2の凸部2pの退避を、上型4の凸部4pが下型3上の溶融ガラス5に接すると同時に開始するか、あるいは上型4の凸部4pが下型3上の溶融ガラス5に接する前3秒以内に開始すること(溶融ガラス5に接してプレスする直前に下がっておくこと)が好ましい。その際のプレス工程(C)に入るタイミングは、滴下工程(A)で溶融ガラス5を下型3上に供給してから、ガラス温度が(Tg+100)℃〜(Tg+300)℃になった時であることが更に好ましい。
上記のように、第2下型2の凸部2pは、上型4でのプレスに連動して同時に下がるのが最もよく、上型4でのプレス前の3秒以内に下がってもよい。3秒よりも前に凸部2pが下がると、下型3に供給した溶融ガラス5が第1下型1の貫通穴1hに入り込み、貫通穴5hの周辺部分にバリやクラックが発生しやすくなる。第2下型2の凸部2pが下がる前に上型4でのプレスを行うと、凸部4pが凸部2pに衝突する可能性が高くなる。したがって、第2下型2の凸部2pの退避タイミングを調整することにより、凸部2pと凸部4pとの衝突の可能性を低くするとともに、溶融ガラス5が第1下型1の貫通穴1hに入り込んでバリやクラックの発生原因となるのを防止することができる。
以下の製造条件等によりカバーガラス板6(図2等)を製造した。得られたカバーガラス板6にはクラック等の無いことを確認した。
〈ガラス溶融〉
ガラス材料:アルミノシリケートガラス
ガラス転移温度:Tg=540℃
屈伏点:At=615℃
線膨張係数α=99×10-7
〈ガラス供給〉
溶融炉からフィーダーにより下型3の金型面に供給した。
〈プレス金型〉
金型(下型3,上型4)の材質:ステンレス(STAVAX)
金型受け面,成形面には、硬質クロムメッキを形成した。
金型サイズ:250×150mm
〈成形ガラス〉
外形サイズ:200×100mm,板厚:3mm,重量:150g
〈成形条件〉
プレス圧:50kg/cm2
プレス時間:10秒
プレスタイミング:10秒(ガラス表面温度:700°)
金型(下型3,上型4)の温度:500℃
〈穴形状〉
1.2mm×5mmの長穴
1 第1下型
1h 貫通穴
1c 面取り部
2 第2下型
2p 凸部
3 下型
4 上型
4p 凸部
4c 面取り部
5 溶融ガラス
5h 貫通穴
5d ガラスくず
5s ガラス面
6 カバーガラス板
6h 貫通穴
6c 面取り部
6s ガラス面
7A 白金ノズル
7B ブレード
8 ガラス受け
9 回収箱
10 制御部

Claims (14)

  1. 貫通穴を有するガラス板の製造方法であって、
    貫通穴を有する第1下型と凸部を有する第2下型とから成る下型に対し、第1下型の下側から挿入された前記凸部で前記貫通穴が塞がれた状態において、一定量の溶融ガラスを滴下する滴下工程と、
    前記貫通穴から前記凸部を下方向に退避させる退避工程と、
    凸部を有する上型を下方向に移動させて、上型の凸部が前記第1下型の貫通穴に挿入されるように上型の凸部で下型上の溶融ガラスに貫通穴をあけ、その後、上型でのプレスによりガラス面を成形するプレス工程と、
    を有することを特徴とするガラス板の製造方法。
  2. 前記上型の凸部の周囲と前記第1下型の貫通穴の周囲とに面取り形状が形成されており、前記プレス工程でのガラス面の成形においてガラス板の貫通穴の周囲に面取りを付加することを特徴とする請求項1記載のガラス板の製造方法。
  3. 前記プレス工程での貫通穴成形時に発生するガラスくずを回収するガラス受けを前記第1,第2下型間に配置する準備工程を、前記退避工程とプレス工程との間に有し、前記ガラス受けを前記第1,第2下型間外に移動させて、回収したガラスくずを廃棄する廃棄工程を、前記プレス工程よりも後に有することを特徴とする請求項1又は2記載のガラス板の製造方法。
  4. 前記貫通穴の開口の最小寸法が0.5mm以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラス板の製造方法。
  5. ガラス板厚が0.7〜5mmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のガラス板の製造方法。
  6. ガラス板が、α≦100×10-7(ただし、α:線膨張係数である。)、300℃≦Tg≦700℃(ただし、Tg:ガラス転移温度である。)のガラス特性を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のガラス板の製造方法。
  7. 前記上型の凸部のテ―パ角度が3〜10°であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のガラス板の製造方法。
  8. 前記上型の凸部の長さがガラス板厚の3〜10倍であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のガラス板の製造方法。
  9. 前記滴下工程で溶融ガラスを下型上に供給してから、ガラス温度が(Tg+100)℃〜(Tg+300)℃になった時に(ただし、Tg:ガラス転移温度である。)、前記プレス工程に入ることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のガラス板の製造方法。
  10. 前記退避工程における第2下型の凸部の退避を前記プレス工程における上型の下方向への移動に連動させて、退避工程における第2下型の凸部の退避を、上型の凸部が下型上の溶融ガラスに接すると同時に開始するか、あるいは上型の凸部が下型上の溶融ガラスに接する前3秒以内に開始することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のガラス板の製造方法。
  11. ガラス板が、携帯用デジタル機器の画像表示面に設けられる薄板状のカバーガラス板であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のガラス板の製造方法。
  12. 貫通穴を有するガラス板の製造装置であって、
    貫通穴を有する第1下型と、凸部を有する第2下型と、凸部を有する上型と、装置各部を制御する制御部と、を有し、
    第1下型の貫通穴に第2下型の凸部を第1下型の下側から挿入して第1下型の貫通穴を塞いだ状態とし、第1,第2下型から成る下型に対し、一定量の溶融ガラスを滴下させ、第1下型の貫通穴から第2下型の凸部を下方向に退避させて第1下型の貫通穴が塞がれていない状態とし、上型を下方向に移動させて、上型の凸部が第1下型の貫通穴に挿入されるように上型の凸部で下型上の溶融ガラスに貫通穴をあけ、その後、上型でのプレスによりガラス面を成形する制御を、前記制御部で行うことを特徴とするガラス板の製造装置。
  13. 前記上型の凸部の周囲と前記第1下型の貫通穴の周囲とに面取り形状が形成されており、前記ガラス面の成形においてガラス板の貫通穴の周囲に面取りを付加することを特徴とする請求項12記載のガラス板の製造装置。
  14. さらに、貫通穴成形時に発生するガラスくずを回収するガラス受けを有し、貫通穴成形前に前記ガラス受けを第1,第2下型間に配置し、貫通穴成形後に前記ガラス受けを第1,第2下型間外に移動させてガラスくずを廃棄する制御を、前記制御部で行うことを特徴とする請求項12又は13記載のガラス板の製造装置。
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