以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1はアクティブマトリックス基板の構成を示す概略平面図である。アクティブマトリックス基板においては図に示すように複数のトランジスタがマトリックス状に形成されており、個々のトランジスタはデータライン及びスキャンラインからの信号によって独立して駆動されオンオフされるようになっている。個々のトランジスタのオンオフにより、画素電極190の電圧値としては、任意の値をとることが可能となり、この画素電極190電圧の変化により、液晶材料の相変化を促すことで描画表示を行う。また、アクティブマトリックス基板は可視光に対して透明であり、これにより液晶材料の相変化に伴う描画表示を視認することができるようになっている。
以下、このようなアクティブマトリックス基板の製造工程について順次説明する。図1乃至図14は本発明の実施形態に係るアクティブマトリックス基板の製造工程を説明する図である。
アクティブマトリックス基板を構成するトランジスタに用いられる基板110としては、アクティブマトリックス基板の用途等に応じて任意の機能を有する基板110を用いることができる。このような基板110としては、ガラス基板110等の可撓性を有さないリジット基板110であってもよく、または、プラスチック樹脂からなるフィルム等の可撓性を有するフレキシブル基板110であってもよい。本実施形態においては、このようなリジット基板110およびフレキシブル基板110のいずれであっても好適に用いられるが、なかでもフレキシブル基板110を用いることが好ましい。フレキシブル基板110を用いることにより、本実施形態の半導体層を、例えばRoll to Rollプロセスにより製造することが可能になるため、本実施形態のアクティブマトリックス基板をより生産性の高いものにすることができるからである。ここで、上記フレキシブル基板110に用いるプラスチック樹脂としては、例えば、PET、PEN、PES、PI、PEEK、PC、PPSおよびPEI等を挙げることができる。また、基板110としては、数十μmの薄ガラス、薄ガラスとプラスチック基板をラミネートで張り合わせたものなどを用いることもできる。
さらに、基板110として、ガラス基材にポリイミドなどの樹脂を数十μm塗布したものも用いることができる。この場合、ポリイミドなどの樹脂上に素子を形成した後に、ガ
ラス基材からポリイミドとその上に形成された素子を剥離し、アクティブマトリックス基板を得るようにする。
また、本実施形態に用いられる基板110は単一層からなるものであってもよく、または、複数の層が積層された構成を有するものであってもよい。
本実施形態に用いられる基板110の厚みは、通常、1mm以下であることが好ましく、なかでも50μm〜700μmの範囲内であることが好ましい。ここで、本実施形態に用いられる基板110が複数の層が積層された構成を有するものである場合、上記厚みは、各層の厚みの総和を意味するものとする。また、基板110として、ガラス基材にポリイミドなどの樹脂を数十μm塗布したものも用い場合における厚みは、2μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
図1に示す工程においては、上記のような基板の表面に対し、疎液性材料の塗布が行われる。疎液性材料としては、光の照射により純水の接触角が低下し得るものであれば特に限定されるものではなく、パターン形成体の用途や、後述の親液化工程にて形成する親液性領域の親液性の程度等に応じて適宜選択される。疎液性材料は、有機材料であってもよく、無機材料であってもよい。具体的に、疎液性材料としては、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリビニル系樹脂、表面をHMDS(ヘキサメチルジシラン)やOTS(オクダデシルトリクロロシラン)等で修飾処理したSiO2 (酸化ケイ素)等を挙げることができる。これらは、一種単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
また、疎液性材料は、上述の材料の他に、エネルギー照射により純水の接触角が低下し得る材料であり、かつエネルギー照射により劣化、分解されないような高い結合エネルギーを有する主鎖をもつ材料を含有していてもよい。このような材料としては、オルガノポリシロキサン等を挙げることができる。中でも、アルキル基、フルオロアルキル基を含有するオルガノポリシロキサンが好ましい。オルガノポリシロキサンがアルキル基、フルオロアルキル基を含有する場合には、エネルギー照射により純水の接触角が大きく低下するからである。
疎液性材料の塗布方法としては、疎液性材料の種類に応じて適宜選択される。また、疎液性材料層の厚みとしては、アクティブマトリクス基板の用途等に応じて適宜選択される。
続く、図3に示す工程においては、基板110の上面部にソースドレイン電極層120を形成する。ソースドレイン電極層120に用いる導電性材料としては、所望の導電性を有する電極を形成できるものであれば特に限定されるものではない。このような導電性材料としては、例えば、Al、Cr、Au、Ag、Ta、Cu、C、Pt、および、Ti等の金属材料と、カーボンペーストなどの遮光性導電有機物、或いはこれら任意の材料の積層体(好ましくはAlをCrやTiでサンドイッチしたもの)を挙げることができる。ソースドレイン電極層120の厚さ(積層体を採用する場合は合計厚さ)としては、10nmから数十μmの範囲内であることが好ましい。
次に、ソースドレイン電極層120の上面部に反射防止層130を設ける。反射防止層130としては、黒色の物で光を吸収することができるものであればどのような材料を用いても構わない。例えば、気相法により形成された炭素を主成分とする薄膜(例えば、ダイヤモンドライクカーボン、アモルファスカーボン)や黒色の電子材料用の有機材料膜や金属の酸化膜等が適用可能である。
気相法にて炭素を主成分とする被膜を形成する場合、エチレン、メタン等の炭化水素気体に対して、熱や電気的なエネルギーを与えて分解して被膜するが、通常形成される炭素膜は透明あるいは半透明性のものであり、そのままでは光吸収層としては使用できないので、黒色化する必要がある。この黒色化した炭素膜を形成する方法としては、プラズマCVD装置を使用して、反応性気体としては炭化水素気体(例えばアセチレン、エチレン、エタン、等の飽和不飽和炭化水素)を使用して、高周波(13.56MHz)の電力を加えて分解活性化して被膜を形成するがその際に被膜形成基板に接地電位に対してマイナスの高いバイアス電位を与えることにより、黒色化した炭素膜を形成することができる。
また、反射防止層130は金属配線の露出している表面を直接酸化することにより、形成してもよい、例えば金属配線がアルミニウムの場合、表面をアルマイト処理して、黒色のアルマイトを表面に形成してもよい。また、一般には金属配線の表面を酸化して、完全な酸化膜ではなく低級酸化膜とすると表面が黒色化して、光吸収層を形成できる。
また、反射防止層130には、Crの酸化膜や窒化膜に加えて、Ni−Fe、Ni−Co、Fe−Co、Ni−Fe−Co、Ni−Mo、Ni−W、Ni−Ta、Fe−Mo、Fe−W、Fe−Nb、Ni−Mo−Ta等の合金や、Ni、Fe、Co、Mo、Ta、Nb等の金属を用いることができる。このような反射防止層130は、スパッタリングにより成膜される。また、スパッタリング時に使用されるアルゴン、窒素、酸素ガス、二酸化炭素などのガスの流量比を変えることで、性質の異なる所望の膜を得ることができる。
以上のような反射防止層130は、単独の材料で一層の構成としてもよいが、複数の異なる材料からなる複数の層から構成してもよい。なお、以下においては反射防止層130として絶縁性を有する材料が選択されていることを前提に説明する。
次の図4に示す工程においては、ソースドレイン電極層120のパターニング、及び、反射防止層130のパターニングを行う。このようなパターニング工程において、ソースドレイン電極層120及び反射防止層130をパターン状にエッチングする方法としては、ソースドレイン電極層120及び反射防止層130を所望のパターンにエッチングできる方法であれば特に限定されるものではない。このようなエッチング方法としては、例えば、レジスト材料を用いたリソグラフィー法やレーザーアブレーション法等を挙げることができる。本工程においてはこれらのいずれの方法であっても好適に用いることができるが、なかでも上記レジスト材料を用いたリソグラフィー法が最も好適に用いられる。上記リソグラフィー法によれば高精細なパターン状のソースドレイン電極層120及び反射防止層130を容易に製造することができるからである。また、このような方法によれば本工程を連続プロセスとして実施することも可能になるからである。
次の図5に示す工程においてはパターン状のレジスト層135を反射防止層130の上面部に形成する。レジスト層135に用いるフォトレジストは、ポジ型およびネガ型のいずれであってもよい。中でも、フォトレジストパターン剥離工程でのフォトレジストパターンの剥離し易さを考慮すると、ポジ型フォトレジストが好ましい。フォトレジストとしては、一般的なものを用いることができる。図16は図5に示した工程の概略平面図である。図16において、Sはソース電極、Dはドレイン電極を示している。
中でも、フォトレジストがフッ素基を含む界面活性剤を含有することが好ましい。こ
のようなフォトレジストであれば、フォトレジストの表面張力を効果的に低減することが可能なため、先の工程で塗布した疎液性材料の疎液性が高くとも、疎液性材料上にフォトレジストを良好に塗布することができるからである。フッ素基を含む界面活性剤としては、フォトレジストに対して可溶であれば特に限定されるものではなく、高分子系および低分子系のいずれも用いることができ、一般的なフッ素系界面活性剤を使用することができ
る。
フォトレジストの塗布方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、スピンコート、キャスティング、ディップコート、バーコート、ブレードコート、ロールコート、グラビアコート、スプレーコート、フレキソ印刷等が用いられる。
フォトレジストの膜厚は、後述の親液化工程でのエネルギー照射に耐え得る厚みであれば特に限定されるものではない。
フォトレジストのパターニングは、通常、フォトレジストをパターン露光し、現像する方法が用いられる。
フォトレジストをパターン露光する方法としては、例えば、フォトマスクを介して露光する方法、レーザー描画法など、一般的な方法を用いることができる。
フォトレジストを現像する方法としては、例えば現像液を用いる方法を適用することができる。現像液としては、一般的に使用されている有機アルカリ系現像液を使用できる。また、現像液として、無機アルカリ系現像液や、水溶液を使用することもできる。フォトレジストを現像した後は、水で洗浄するのが好ましい。
次の図6に示す工程においては、反射防止層130のパターニングを行う。このパターニング工程においては、反射防止層130に用いられた材料に応じたエッチング液が用いられる。また、エッチング時間等のエッチング条件ついても反射防止層130に用いられた材料による。
続く、図7に示す工程においては、基板110におけるRに示す領域を親液化する工程が実施される。本発明における親液化工程は、基板110に塗布した疎液性材料の表面を光によって照射して親液化し、親液性領域を形成する工程である。図17は図6及び図7に示した工程の概略平面図である。
疎液性材料の表面に照射されるエネルギーとしては、疎液性材料の表面を親液化することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、紫外線、電子線等が挙げられる。中でも、真空紫外線が好ましい。真空紫外線はエネルギーが高く、より効果的に酸素の活性種を発生させることが可能であり、短時間で効率良く疎液性材料表面を親液化することができるからである。
真空紫外線の波長は、塗布された疎液性材料を親液化することができる波長であればよく、疎液性材料の種類に応じて適宜選択される。通常は、100nm〜250nmの範囲内であることが好ましく、中でも150nm〜200nmの範囲内であることが好ましい。波長が上記範囲よりも長いと、酸素ラジカルの発生効率が低くなり、疎液性材料の種類によっては感度が低くなってしまう場合があるからである。また、波長が上記範囲よりも短いと、安定した真空紫外線の照射が困難となる可能性があるからである。
真空紫外線の照射に用いることができる光源としては、例えば、エキシマランプ、低圧水銀ランプ、その他種々の光源を挙げることができる。
真空紫外線の照射量としては、疎液性材料の種類に応じて適宜調整される。
真空紫外線を基板110上の疎液性材料に照射する方法としては、疎液性材料に均一な照射量で真空紫外線を照射できる方法であれば特に限定されず、例えば、疎液性材料の全
面を同時に照射する方法、および、光源または疎液性材料が形成された基板110の少なくとも一方を移動させながら、疎液性材料を順次に照射する方法を挙げることができる。中でも、疎液性材料を順次に照射する方法が好ましい。その理由は次の通りである。
すなわち、真空紫外線は指向性のない分散光であるため、疎液性材料の全面を同時に照射する方法では、例えば、大面積の疎液性材料に真空紫外線を照射する場合に、中央部と端部とで真空紫外線の照射量に差が生じてしまう可能性がある。しかしながら、基板110上の疎液性材料を順次に照射する方法によれば、たとえ大面積の疎液性材料に真空紫外線を照射する場合であっても、全面に対して均一に照射することが容易になるからである。
また、疎液性材料を順次に照射する方法の中でも、疎液性材料が形成された基板110を固定し、光源を移動させながら照射する方法が好ましい。このような方法によれば、大面積の疎液性材料に均一に真空紫外線を照射することが容易になるからである。
真空紫外線の照射は、通常、酸素の存在下において行われる。
親液性領域の親液性としては、親液性領域表面の25℃での純水の接触角が、親液化工程前の疎液性材料表面の25℃での純水の接触角よりも低ければ特に限定されるものではない。中でも、親液性領域表面の25℃での純水の接触角は、30°以下であることが好ましく、10°以下であることがより好ましく、5°以下であることがさらに好ましい。また、親液性領域表面の25℃での純水の接触角と、親液化工程前の疎液性材料表面の25℃での純水の接触角との差は、50°以上であることが好ましく、より好ましくは70°以上、さらに好ましくは80°以上であり、特に好ましくは90°以上である。上記接触角および上記接触角の差が上述の範囲であることにより、アクティブマトリクス基板を製造する場合に、機能性部形成用塗工液をより選択性高く親液性領域上に付与させることができ、高精度で機能性部を形成することが可能になるからである。
次の図8においては、レジスト層135を除去する工程を実施する。図8におけるフォトレジストパターン剥離工程は、フォトレジストパターンを剥離し、反射防止層130を露出させる工程である。なお、図18は図8に示した工程の概略平面図である。
フォトレジストを剥離する方法としては、例えば、アセトン、トルエン等の有機溶剤、剥離液等を用いる方法を適用することができる。剥離液としては、一般的に使用されている剥離液を使用できる。
疎液性領域表面の25℃での純水の接触角と、親液性領域表面の25℃での純水の接触角との差は、50°以上であることが好ましく、より好ましくは70°以上、さらに好ましくは80°以上であり、特に好ましくは90°以上である。上記接触角の差が上記範囲であることにより、アクティブマトリクス基板を製造する場合に、親液性領域上のみに機能性部を形成することが容易になるからである。
続く、図9に示す工程おいては、基板110とソースドレイン電極層120とに接触する半導体層150が形成される。この工程では、親液化された領域Rに対して、半導体層150を構成する材料が溶媒に溶かされた塗工液をインクジェット式噴射装置によって、噴射するインクジェット法が用いられる。先の工程により、基板110上の領域Rが親液化されているので、インクジェット法を用いることで、前記塗工液が意図する箇所に収容されることとなり、生産効率及び歩留まりが向上する。上記のような塗工液としては、例えば、有機半導体材料(ポリチオフェン)を固形分濃度0.2wt%でトリクロロベンゼン溶媒に溶解させた塗工液を用いることができる。また、インクジェット法によって、塗
工液を塗膜した後には、N2雰囲気下などの不活性ガス雰囲気下で所定温度・所定時間の
乾燥させることで半導体層150を得ることができる。
図9に示す工程においては、基板110上に形成された親液化領域Rに対して、半導体層150を形成する成分が溶解された溶液を塗布して、半導体層150を形成する際に、上記のようなインクジェット法による塗布を行うようにしたが、その他の方法も用いることができる。例えば、溶液を親液性領域Rに塗布するために、ノズル塗布法、ノズルインクジェット塗布法、スピンコーター、グラビアコーター、コンマコーター、バーコーター等により塗布方法を、必要に応じて採用することができる。
図9に示すように、本発明に係るアクティブマトリクス基板においては、基板110側と反対側に反射防止層130が形成された反射防止層130が形成された電極(図9のAに相当するソースドレイン電極層)と、基板110側と反対側に反射防止膜が形成されていない反射防止膜除去電極(図9のBに相当するソースドレイン電極層)と、基板110上に設けられた親液性領域Rと、反射防止膜除去電極とに接するように形成された半導体層150と、を有している。すなわち、半導体層150と導通する必要がないソースドレイン電極層には、反射防止層130が直接的に形成された構造となっている。すなわち、従来技術のように電極と離れた位置に遮光膜が形成された構造ではないので、本発明に係るアクティブマトリクス基板によれば、電極からの反射がなく、表示画像が悪化することがない。
以下、本実施形態に用いられる半導体層150について説明する。
本実施形態に用いられる半導体層150では有機半導体材料が用いられており、この有機半導体材料としては、本実施形態のアクティブマトリクス基板の用途等に応じて、所望の半導体特性を備える有機半導体層を形成できる材料であれば特に限定されるものではなく、一般的に有機半導体トランジスタに用いられる有機半導体材料を用いることができる。このような有機半導体材料としては、例えば、π電子共役系の芳香族化合物、鎖式化合物、有機顔料、有機ケイ素化合物等を挙げることができる。より具体的には、ペンタセン等の低分子系有機半導体材料、および、ポリピロール、ポリ(N−置換ピロール)、ポリ(3−置換ピロール)、ポリ(3,4−二置換ピロール)等のポリピロール類、ポリチオフェン、ポリ(3−置換チオフェン)、ポリ(3,4−二置換チオフェン)、ポリベンゾチオフェン等のポリチオフェン類、ポリイソチアナフテン等のポリイソチアナフテン類、ポリチェニレンビニレン等のポリチェニレンビニレン類、ポリ(p−フェニレンビニレン)等のポリ(p−フェニレンビニレン)類、ポリアニリン、ポリ(N−置換アニリン)等のポリアニリン類、ポリアセチレン等のポリアセチレン類、ポリジアセチレン、ポリアズレン等のポリアズレン類等の高分子系有機半導体材料を挙げることができる。なかでも本実施形態においては、ペンタセンまたはポリチオフェン類を好適に用いることができる。
また、本実施形態に用いられる半導体層150の厚みについては、有機半導体材料の種類等に応じて所望の半導体特性を備える有機半導体層を形成できる範囲であれば特に限定されない。なかでも本実施形態においてはチャネル領域上に形成された半導体層150の厚みが、1000nm以下であることが好ましく、なかでも1nm〜300nmの範囲内であることが好ましく、特に1nm〜100nmの範囲内であることが好ましい。
続く、図10に示す工程おいては、ゲート絶縁層160の形成とそのパターニングが行われる。ゲート絶縁層160に用いる絶縁材料としては、ゲート絶縁層160に所望の絶縁性を付与することができ、半導体層150上にゲート絶縁層160を形成する際に、上記半導体層150の性能を損なわないものであれば特に限定されるものではない。このような絶縁性樹脂材料としては、例えば、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、フッ素系樹
脂、エポキシ系樹脂、カルド系樹脂、ビニル系樹脂、イミド系樹脂、ノボラック系樹脂等を挙げることができる。
本実施形態に用いられるゲート絶縁層160の厚みは、ゲート絶縁層160を構成する絶縁性樹脂材料の種類等に応じて、ゲート絶縁層160に所望の絶縁性を付与できる範囲内であれば特に限定されるものではない。半導体層150上に形成されるゲート絶縁層160の厚みは、0.01μm〜5μmの範囲内であることが好ましく、特に0.01μm〜3μmの範囲内であることが好ましく、さらに0.01μm〜1μmの範囲内であることが好ましい。
図11に示す工程では、ゲート絶縁層160の上面部にゲート電極層140を形成し、さらに、ゲート電極層140の上面部に反射防止層130を設け、これらのパターニングを行う。ゲート電極層140及び反射防止層130に用いる材料、形成方法、パターニング方法などはソースドレイン電極層120とその反射防止層130と同様とすることができる。
図12に示す工程では、パッシベーション層170の形成とそのパターニングが行われる。本実施形態に用いられるパッシベーション層170を構成する材料としては、空気中の水分や酸素を透過しにくく、上記半導体層150の劣化を所望の程度に防止できるものであれば特に限定されるものではない。このような材料としては、例えば、PVA、PVA等の水溶性樹脂や、フッ素系樹脂等を挙げることができる。
本実施形態の有機半導体素子に上記パッシベーション層170が形成されている態様としては、パッシベーション層170を構成する材料や、本実施形態のアクティブマトリクス基板の用途等に応じて、上記半導体層150が劣化することを所望の程度に防止できる態様であれば特に限定されるものではない。
また、本実施形態に用いられるパッシベーションの厚みは、パッシベーション層170を構成する材料等に依存して決定されるものであるが、通常、0.1μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、なかでも0.5μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、さらに1μm〜10μmの範囲内であることが好ましい。
図13に示す工程では、反射防止層130のパターニング工程が実行される。反射防止層130のパターニングにはこれまで説明した方法を適宜用いることができる。
図14では、画素電極190と、この画素電極190とソースドレイン電極層120とを導通接続するビアホール導通部180が形成される。
画素電極190に用いる導電性材料としては、所望の導電性を有し、かつ、透明なものであれば特に限定されるものではない。このような導電性材料としては、例えばITO、IZO、ZnOや、これらの酸化物を主成分とした酸化物や、これらの酸化物を混合した酸化物、或いは、透明導電性樹脂などを挙げることができる。画素電極190の厚さとしては、10nmから数十μmの範囲内であることが好ましい。
以上のような本発明に係るアクティブマトリクス基板は、基板110側と反対側に反射防止層130が形成された反射防止層130が形成された電極(図14のAに相当するソースドレイン電極層)と、基板110側と反対側に反射防止膜が形成されていない反射防止膜除去電極(図14のBに相当するソースドレイン電極層)と、基板110上に設けられた親液性領域Rと、反射防止膜除去電極とに接するように形成された半導体層150と、を有している。すなわち、半導体層150と導通する必要がないソースドレイン電極層
には、反射防止層130が直接的に形成された構造となっている。すなわち、従来技術のように電極と離れた位置に遮光膜が形成された構造ではないので、本発明に係るアクティブマトリクス基板によれば、電極からの反射がなく、表示画像が悪化することがない。
また、本発明のアクティブマトリックス基板の製造方法によれば、電極からの反射がなく、表示画像が良好なアクティブマトリックス基板を効率的に生産することが可能となる。
次に、以上のように構成されるアクティブマトリックス基板による液晶表示装置について説明する。図15は本発明の実施形態に係るアクティブマトリックス基板によって構成される液晶表示装置構成の概要を示す図である。液晶材料240としてコレステリック液晶が用いられる例で説明するが、液晶材料240としてはこのほかにネマティック液晶なども用いることができる。
本実施形態に係る液晶表示装置においては、アクティブマトリックス基板と、これに対向する透明電極250との間に、液晶材料240としてコレステリック液晶を挟み込むようにして設けている。また、基板110の下面側には、光を吸収する吸収層260が設けられる。
コレステリック液晶は、トランジスタの動作により画素電極190が第1の電圧とされているときには、透明電極250を通過する光を反射する。一方、トランジスタの動作により画素電極190が第2の電圧とされると、透明電極250から通過する光をそのまま透過させるように機能する。本実施形態に係る液晶表示装置においては、各画素でこのような2態をとることにより、表示装置全体として描画表示を行うものである。なお、コレステリック液晶の透過率は、第2の電圧を変化させることによっても、変化させることができ、この透過率の変化によっても表示装置における表示を変更させることが可能である。
以上のような本発明に係る液晶表示装置によれば、従来技術のように電極と離れた位置に遮光膜が形成された構造ではないので、電極からの反射がなく、表示画像が悪化することがない。
次に、本発明に係る他の実施形態について説明する。図19は本発明の他の実施形態に係るアクティブマトリックス基板の積層構造を示す図である。
先の実施形態においては、反射防止層130としては絶縁性を有する材料が用いられていたが、図19に示す実施形態においては反射防止層130としては導電性を有するものが用いられている。この場合、画素電極190とソースドレイン電極層120とを導通接続するために、反射防止層130をエッチングする工程を省き、画素電極190と反射防止層130とをビアホール導通部180によって導通接続する。
このような実施形態によっても、先の実施形態と同様の効果を享受することができると共に、反射防止層130のエッチング工程を省略でき、製造工程を簡略化することができる、というメリットもある。
次に、本発明の他の実施形態について説明する。以下、他の実施形態に係るアクティブマトリックス基板の製造工程について順次説明する。図20乃至図28は本発明の実施形態に係るアクティブマトリックス基板の製造工程を説明する図である。本実施形態においては、アクティブマトリックス基板の積層構造として、ボトムゲート・ボトムコンタクト構造が採用されている。
アクティブマトリックス基板を構成するトランジスタに用いられる基板110としては、アクティブマトリックス基板の用途等に応じて任意の機能を有する基板110を用いることができる。このような基板110としては、ガラス基板110等の可撓性を有さないリジット基板110であってもよく、または、プラスチック樹脂からなるフィルム等の可撓性を有するフレキシブル基板110であってもよい。本実施形態においては、このようなリジット基板110およびフレキシブル基板110のいずれであっても好適に用いられるが、なかでもフレキシブル基板110を用いることが好ましい。フレキシブル基板110を用いることにより、本実施形態の半導体層を、例えばRoll to Rollプロセスにより製造することが可能になるため、本実施形態のアクティブマトリックス基板をより生産性の高いものにすることができるからである。ここで、上記フレキシブル基材に用いるプラスチック樹脂としては、例えば、PET、PEN、PES、PI、PEEK、PC、PPSおよびPEI等を挙げることができる。また、基板110としては、数十μmの薄ガラス、薄ガラスとプラスチック基板をラミネートで張り合わせたものなどを用いることもできる。
さらに、基板110として、ガラス基材にポリイミドなどの樹脂を数十μm塗布したものも用いることができる。この場合、ポリイミドなどの樹脂上に素子を形成した後に、ガラス基材からポリイミドとその上に形成された素子を剥離し、アクティブマトリックス基板を得るようにする。
また、本実施形態に用いられる基板110は単一層からなるものであってもよく、または、複数の層が積層された構成を有するものであってもよい。
本実施形態に用いられる基板110の厚みは、通常、1mm以下であることが好ましく、なかでも50μm〜700μmの範囲内であることが好ましい。ここで、本実施形態に用いられる基板110が複数の層が積層された構成を有するものである場合、上記厚みは、各層の厚みの総和を意味するものとする。また、基板110として、ガラス基材にポリイミドなどの樹脂を数十μm塗布したものも用い場合における厚みは、2μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
続く、図20に示す工程においては、基板110の上面部にゲート電極層140を形成する。ゲート電極層140に用いる導電性材料としては、所望の導電性を有する電極を形成できるものであれば特に限定されるものではない。このような導電性材料としては、例えば、Al、Cr、Au、Ag、Ta、Cu、C、Pt、および、Ti等の金属材料と、カーボンペーストなどの遮光性導電有機物、或いはこれら任意の材料の積層体(好ましくはAlをCrやTiでサンドイッチしたもの)を挙げることができる。ゲート電極層140の厚さ(積層体を採用する場合は合計厚さ)としては、10nmから数十μmの範囲内であることが好ましい。
次に、ゲート電極層140の上面部に反射防止層130を設ける。反射防止層130としては、黒色の物で光を吸収することができるものであればどのような材料を用いても構わない。例えば、気相法により形成された炭素を主成分とする薄膜(例えば、ダイヤモンドライクカーボン、アモルファスカーボン)や黒色の電子材料用の有機材料膜や金属の酸化膜等が適用可能である。
気相法にて炭素を主成分とする被膜を形成する場合、エチレン、メタン等の炭化水素気体に対して、熱や電気的なエネルギーを与えて分解して被膜するが、通常形成される炭素膜は透明あるいは半透明性のものであり、そのままでは光吸収層としては使用できないので、黒色化する必要がある。この黒色化した炭素膜を形成する方法としては、プラズマC
VD装置を使用して、反応性気体としては炭化水素気体(例えばアセチレン、エチレン、エタン、等の飽和不飽和炭化水素)を使用して、高周波(13.56MHz)の電力を加えて分解活性化して被膜を形成するがその際に被膜形成基板に接地電位に対してマイナスの高いバイアス電位を与えることにより、黒色化した炭素膜を形成することができる。
また、反射防止層130は金属配線の露出している表面を直接酸化することにより、形成してもよい、例えば金属配線がアルミニウムの場合、表面をアルマイト処理して、黒色のアルマイトを表面に形成してもよい。また、一般には金属配線の表面を酸化して、完全な酸化膜ではなく低級酸化膜とすると表面が黒色化して、光吸収層を形成できる。
また、反射防止層130には、Crの酸化膜や窒化膜に加えて、Ni−Fe、Ni−Co、Fe−Co、Ni−Fe−Co、Ni−Mo、Ni−W、Ni−Ta、Fe−Mo、Fe−W、Fe−Nb、Ni−Mo−Ta等の合金や、Ni、Fe、Co、Mo、Ta、Nb等の金属を用いることができる。このような反射防止層130は、スパッタリングにより成膜される。また、スパッタリング時に使用されるアルゴン、窒素、酸素ガス、二酸化炭素などのガスの流量比を変えることで、性質の異なる所望の膜を得ることができる。
以上のような反射防止層130は、単独の材料で一層の構成としてもよいが、複数の異なる材料からなる複数の層から構成してもよい。なお、以下においては反射防止層130として絶縁性を有する材料が選択されていることを前提に説明する。
さらに、図20に示す工程においては、ゲート電極層140のパターニング、及び、反射防止層130のパターニングを行う。このようなパターニング工程において、ゲート電極層140及び反射防止層130をパターン状にエッチングする方法としては、ゲート電極層140及び反射防止層130を所望のパターンにエッチングできる方法であれば特に限定されるものではない。このようなエッチング方法としては、例えば、レジスト材料を用いたリソグラフィー法やレーザーアブレーション法等を挙げることができる。本工程においてはこれらのいずれの方法であっても好適に用いることができるが、なかでも上記レジスト材料を用いたリソグラフィー法が最も好適に用いられる。上記リソグラフィー法によれば高精細なパターン状のゲート電極層140及び反射防止層130を容易に製造することができるからである。また、このような方法によれば本工程を連続プロセスとして実施することも可能になるからである。
続く、図21に示す工程においては、ゲート絶縁層160の形成とそのパターニングが行われる。ゲート絶縁層160に用いる絶縁材料としては、ゲート絶縁層160に所望の絶縁性を付与することができ、半導体層150上にゲート絶縁層160を形成する際に、上記半導体層150の性能を損なわないものであれば特に限定されるものではない。このような絶縁性樹脂材料としては、例えば、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、カルド系樹脂、ビニル系樹脂、イミド系樹脂、ノボラック系樹脂等を挙げることができる。
本実施形態に用いられるゲート絶縁層160の厚みは、ゲート絶縁層160を構成する絶縁性樹脂材料の種類等に応じて、ゲート絶縁層160に所望の絶縁性を付与できる範囲内であれば特に限定されるものではない。半導体層150上に形成されるゲート絶縁層160の厚みは、0.01μm〜5μmの範囲内であることが好ましく、特に0.01μm〜3μmの範囲内であることが好ましく、さらに0.01μm〜1μmの範囲内であることが好ましい。
次の図22に示す工程においては、ソースドレイン電極層120をゲート絶縁層160の上面部に形成し、さらに、ソースドレイン電極層120の上面部に反射防止層130を
設け、これらのパターニングを行う。ソースドレイン電極層120及び反射防止層130に用いる材料、形成方法、パターニング方法などはゲート電極層140とその反射防止層130と同様とすることができる。
続く、図23に示す工程においては、隔壁層155を形成し、これをパターニングする工程が実施される。図30は図23に示した工程の概略平面図である。図23において、Sはソース電極、Dはドレイン電極を示している。また、rは開口部に相当する。
まず、本実施形態に用いられる隔壁層155について説明する。本実施形態に用いられる隔壁層155は、絶縁性材料からなり、かつ、少なくとも後述するソースドレイン電極層120によって構成されるチャネル領域上が開口部となるように形成されたものである。また、本実施形態に用いられる隔壁層155は、高さが0.1μm〜1.5μmの範囲内であることを特徴とするものである。また、本実施形態に用いられる隔壁層155は層間絶縁層をとしての機能を備えるものである。
以下、このような隔壁層155について説明する。
本実施形態に用いられる隔壁層155は、層間絶縁層としての機能を備えるものであるが、ここで、層間絶縁層としての機能とは、開口部外の領域においてソース電極に接続されるデータラインと、ゲート電極とを絶縁する機能を意味するものである。
本実施形態に用いられる隔壁層155は、高さが0.1μm〜1.5μmの範囲内であることを特徴とするものであるが、本実施形態において隔壁層155の高さをこのような範囲内に規定するのは、高さが上記範囲よりも高いと、上述したように上記開口部内に形成される半導体層150が開口部の壁面付近に局在化してしまい、形成される有機半導体トランジスタの性能が損なわれてしまうからである。また、高さが上記範囲よりも低いと、開口部内に形成される半導体層150の厚みが薄くなりすぎて、所望の性能を発揮できない場合があるからである。また、上記範囲よりも薄いと、例えば、本実施形態に用いられる隔壁層155に撥液性を付与する場合に、十分な撥液性を付与することが困難になる場合があるからである。
ここで、本実施形態に用いられる隔壁層155の高さとしては、上記範囲内であれば特に限定されるものではないが、なかでも0.1μm〜1.5μmの範囲内であることが好ましく、0.1μm 〜 0.5μm の範囲内であることがより好ましい。
隔壁層155が形成されている態様としては、少なくともソース電極およびドレイン電極によって構成されるチャネル領域上が開口部となるように形成されている態様であれば特に限定されるものではない。ここで、上記「チャネル領域」とは、後述するソース電極およびドレイン電極のチャネル部によって挟まれた領域のみを意味するものである。
本実施形態において、上記チャネル領域上が開口部となるように隔壁層155が形成されている態様としては、上記チャネル領域上の少なくとも一部が開口部となるように形成されている態様であれば特に限定されるものではない。したがって、本実施形態において隔壁層155が形成されている態様としては、チャネル領域の一部が開口部内に収納されるように形成されている態様であってもよく、あるいは、チャネル領域の全部が開口部内に収納されるように形成されている態様であってもよい。なかでも本実施形態における隔壁層155はチャネル領域の全部が開口部内に収納される態様で形成されていることが好ましい。その理由は次の通りである。
すなわち、上記隔壁層155の開口部内には後述する半導体層150が形成されること
になるが、上記開口部の壁面近傍においてはこのような半導体層150の厚みのバラツキが大きくなる傾向にある。したがって、本発明における隔壁層155が、チャネル領域の一部が開口部内に収納されるように形成されている場合は、当該厚みのバラツキの影響によりトランジスタ性能が損なわれる可能性がある。しかしながら、チャネル領域の全部が開口部内に収納されるように形成されている場合は、このような問題が少ないからである。
本実施形態において上記隔壁層155が形成されている態様としては、層間絶縁層としての機能を発現できる態様であれば特に限定されるものではない。
本実施形態における隔壁層155に用いられる絶縁性材料としては、ソース電極およびドレイン電極とを所望の程度に絶縁できる絶縁性を備えるものであれば特に限定されるものではなく、隔壁層155の高さ等に応じて任意の材料を適宜選択して用いることができる。なかでも本実施形態に用いられる絶縁性材料は、絶縁破壊強さが10V/μm〜300V/μmの範囲内であるものが好ましく、特に100V/μm〜300V/μmの範囲内であるものが好ましい。
また、本実施形態に用いられる絶縁性材料は、体積固有抵抗値が1×1015Ω・cm以上であるものが好ましく、なかでも1×1017Ω・cm以上であるものが好ましい。ここで、上記体積固有抵抗値は、JIS K 6911に準じて測定した値を示すものとする。
また、本実施形態に用いられる絶縁性材料は、上記絶縁性および体積固有抵抗値を備えるもののなかでも光硬化型樹脂を用いることが好ましい。光硬化型樹脂を用いることにより、本実施形態のアクティブマトリクス基板を製造する工程において、上記隔壁層155をフォトリソグラフィー法によって形成することが可能となるため、微細にパターニングされた隔壁層155を形成することが容易になるからである。
このような絶縁性材料としては、例えば、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、カルド系樹脂、ビニル系樹脂、イミド系樹脂、ノボラック系樹脂等を挙げることができる。なかでも本実施形態においては、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、または、カルド系樹脂が好適に用いられる。
また、本実施形態に用いられる隔壁層155は撥液性を有することが好ましい。上記隔壁層155が撥液性を有することにより、例えば、上記半導体層150をインクジェット法によって形成する際に、仮にインクが上記隔壁層155から多少ずれた位置に滴下された場合であっても、撥液性の作用により当該インクを上記隔壁層155の内側へ導入することでき、インクジェット法を用いることによって生じる欠陥を少なくできる等の利点を有するからである。
ここで、上記「撥液性」とは、本実施形態の有機半導体素子を製造する際に、上記隔壁層155の開口部内に塗工される塗工液に対する撥液性を意味するものである。
上記撥液性の程度としては、本実施形態のアクティブマトリクス基板を製造する際に、上記隔壁層155内に塗工される塗工液の表面張力等に応じて適宜調整すればよいが、なかでも本実施形態においては、蒸留水に対する接触角が80°以上であることが好ましい。
ここで、上記接触角は、例えば、協和界面科学社製:Drop Master 700を用いて測定することができる。
本実施形態に用いられる隔壁層155が撥液性を備える態様としては、隔壁層155の表面が所望の撥液性を発現できる態様であれば特に限定されるものではない。このような態様としては、例えば、上記絶縁性材料として撥液性を有する材料が用いられた態様と、上記絶縁性材料として撥液性を有さない樹脂材料が用いられ、当該樹脂材料を用いて隔壁層155を形成した後、隔壁層155の表面が撥液化処理されることにより撥液性が付与された態様とを挙げることができる。本実施形態においては上記のいずれの態様で撥液性が付与された隔壁層155であっても好適に用いることができる。
ここで、上記撥液性を有する絶縁性材料としては、例えば、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、および、カルド系樹脂を挙げることができる。
また、上記撥液化処理としては、例えば、フッ素化合物を導入ガスとしたプラズマ照射をする方法が用いることができる。上記導入ガスに用いられるフッ素化合物としては、例えば、CF4、SF6、CHF3、C2F6、C3H8、C5F8等を挙げることができる。
上記プラズマ照射を照射する方法としては、上記隔壁層155の撥液性を向上できる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、減圧下でプラズマ照射してもよく、または、大気圧下でプラズマ照射してもよい。
なお、このようなプラズマ照射による撥液化処理を用いる場合、本実施形態に用いられる隔壁層155は表面にフッ素が存在することになるが、このようなフッ素の存在は、X線光電子分光分析装置(XPS:ESCALAB 220i−XL)による分析により確認することができる。
図24に示す工程においては、反射防止層130のパターニングを実施する。図31は図24に示した工程の概略平面図である。このパターニング工程においては、反射防止層130に用いられた材料に応じたエッチング液が用いられる。また、エッチング時間等のエッチング条件ついても反射防止層130に用いられた材料による。
次の図25に示す工程においては、基板110とソースドレイン電極層120とに接触する半導体層150が形成される。この工程では、前記開口部に対して、半導体層150を構成する材料が溶媒に溶かされた塗工液をインクジェット式噴射装置によって、噴射するインクジェット法が用いられる。先の工程により、開口部周辺における隔壁層155が撥液化されているので、インクジェット法を用いることで、前記塗工液が意図する箇所に収容されることとなり、生産効率及び歩留まりが向上する。上記のような塗工液としては、例えば、有機半導体材料(ポリチオフェン)を固形分濃度0.2wt%でトリクロロベンゼン溶媒に溶解させた塗工液を用いることができる。また、インクジェット法によって、塗工液を塗膜した後には、N2雰囲気下などの不活性ガス雰囲気下で所定温度・所定時
間の乾燥させることで半導体層150を得ることができる。
図25に示す工程においては、撥液性領域である隔壁層155に囲まれた基板110上の領域に対して、半導体層150を形成する成分が溶解された溶液を塗布して、半導体層150を形成する際に、上記のようなインクジェット法による塗布を行うようにしたが、その他の方法も用いることができる。例えば、溶液を親液性領域Rに塗布するために、ノズル塗布法、ノズルインクジェット塗布法、スピンコーター、グラビアコーター、コンマコーター、バーコーター等により塗布方法を、必要に応じて採用することができる。
図25に示すように、本発明に係るアクティブマトリクス基板においては、前記基板110側と反対側に反射防止層130が形成された反射防止層形成電極(図25のAに相当
するソースドレイン電極層)と、前記基板110側と反対側に反射防止層が形成されていない反射防止層非形成電極(図25のBに相当するソースドレイン電極層)と、反射防止層形成電極上に設けられた撥液性領域である隔壁層155と、反射防止層非形成電極とに接するように形成された半導体層150と、を有している。すなわち、半導体層150と導通する必要がないソースドレイン電極層には、反射防止層130が直接的に形成された構造となっている。すなわち、従来技術のように電極と離れた位置に遮光膜が形成された構造ではないので、本発明に係るアクティブマトリクス基板によれば、電極からの反射がなく、表示画像が悪化することがない。
以下、本実施形態に用いられる半導体層150について説明する。
本実施形態に用いられる半導体層150では有機半導体材料が用いられており、この有機半導体材料としては、本実施形態のアクティブマトリクス基板の用途等に応じて、所望の半導体特性を備える有機半導体層を形成できる材料であれば特に限定されるものではなく、一般的に有機半導体トランジスタに用いられる有機半導体材料を用いることができる。このような有機半導体材料としては、例えば、π電子共役系の芳香族化合物、鎖式化合物、有機顔料、有機ケイ素化合物等を挙げることができる。より具体的には、ペンタセン等の低分子系有機半導体材料、および、ポリピロール、ポリ(N−置換ピロール)、ポリ(3−置換ピロール)、ポリ(3,4−二置換ピロール)等のポリピロール類、ポリチオフェン、ポリ(3−置換チオフェン)、ポリ(3,4−二置換チオフェン)、ポリベンゾチオフェン等のポリチオフェン類、ポリイソチアナフテン等のポリイソチアナフテン類、ポリチェニレンビニレン等のポリチェニレンビニレン類、ポリ(p−フェニレンビニレン)等のポリ(p−フェニレンビニレン)類、ポリアニリン、ポリ(N−置換アニリン)等のポリアニリン類、ポリアセチレン等のポリアセチレン類、ポリジアセチレン、ポリアズレン等のポリアズレン類等の高分子系有機半導体材料を挙げることができる。なかでも本実施形態においては、ペンタセンまたはポリチオフェン類を好適に用いることができる。
また、本実施形態に用いられる半導体層150の厚みについては、有機半導体材料の種類等に応じて所望の半導体特性を備える有機半導体層を形成できる範囲であれば特に限定されない。なかでも本実施形態においてはチャネル領域上に形成された半導体層150の厚みが、1000nm以下であることが好ましく、なかでも1nm〜300nmの範囲内であることが好ましく、特に1nm〜100nmの範囲内であることが好ましい。
図26に示す工程では、パッシベーション層170の形成とそのパターニングが行われる。本実施形態に用いられるパッシベーション層170を構成する材料としては、空気中の水分や酸素を透過しにくく、上記半導体層150の劣化を所望の程度に防止できるものであれば特に限定されるものではない。このような材料としては、例えば、PVA、PVA等の水溶性樹脂や、フッ素系樹脂等を挙げることができる。
本実施形態の有機半導体素子に上記パッシベーション層170が形成されている態様としては、パッシベーション層170を構成する材料や、本実施形態のアクティブマトリクス基板の用途等に応じて、上記半導体層150が劣化することを所望の程度に防止できる態様であれば特に限定されるものではない。
また、本実施形態に用いられるパッシベーションの厚みは、パッシベーション層170を構成する材料等に依存して決定されるものであるが、通常、0.1μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、なかでも0.5μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、さらに1μm〜10μmの範囲内であることが好ましい。
図27に示す工程では、パッシベーション層170の上面部に遮光層200を設ける。
この遮光層200は、積層方向からみて半導体層150を含むような広さを有している。このため、半導体層150に入射する光を遮光層200により遮ることができ、半導体層150の動作特性が安定する。
このような遮光層200を形成するための材料としては、樹脂、或いは、金属と酸化物の積層体を用いることができる。前記樹脂としては、黒色顔料を含んだ感光性樹脂を用いることができる。遮光層200を形成する際には、このような感光性樹脂を用いて、露光及び現像により遮光層200のパターニングを行う。また、前記金属と酸化物の積層体としては、例えば、クロムと酸化クロムの積層体を用いることができる。このようなクロムと酸化クロム膜はフォトリソグラフィーによって構成することが可能である。
図28では、画素電極190と、この画素電極190とソースドレイン電極層120とを導通接続するビアホール導通部180が形成される。
画素電極190に用いる導電性材料としては、所望の導電性を有し、かつ、透明なものであれば特に限定されるものではない。このような導電性材料としては、例えばITO、IZO、ZnOや、これらの酸化物を主成分とした酸化物や、これらの酸化物を混合した酸化物、或いは、透明導電性樹脂などを挙げることができる。画素電極190の厚さとしては、10nmから数十μmの範囲内であることが好ましい。
以上のような本発明に係るアクティブマトリクス基板は、前記基板110側と反対側に反射防止層130が形成された反射防止層形成電極(図28のAに相当するソースドレイン電極層)と、前記基板110側と反対側に反射防止層が形成されていない反射防止層非形成電極(図28のBに相当するソースドレイン電極層)と、反射防止層形成電極上に設けられた撥液性領域である隔壁層155と、反射防止層非形成電極とに接するように形成された半導体層150と、を有している。すなわち、半導体層150と導通する必要がないソースドレイン電極層には、反射防止層130が直接的に形成された構造となっている。すなわち、従来技術のように電極と離れた位置に遮光膜が形成された構造ではないので、本発明に係るアクティブマトリクス基板によれば、電極からの反射がなく、表示画像が悪化することがない。
また、本発明のアクティブマトリックス基板の製造方法によれば、電極からの反射がなく、表示画像が良好なアクティブマトリックス基板を効率的に生産することが可能となる。
次に、以上のように構成されるアクティブマトリックス基板による液晶表示装置について説明する。図29本発明の実施形態に係るアクティブマトリックス基板によって構成される液晶表示装置構成の概要を示す図である。液晶材料240としてコレステリック液晶が用いられる例で説明するが、液晶材料240としてはこのほかにネマティック液晶なども用いることができる。
本実施形態に係る液晶表示装置においては、アクティブマトリックス基板と、これに対向する透明電極250との間に、液晶材料240としてコレステリック液晶を挟み込むようにして設けている。また、基板110の下面側には、光を吸収する吸収層260が設けられる。
コレステリック液晶は、トランジスタの動作により画素電極190が第1の電圧とされているときには、透明電極250を通過する光を反射する。一方、トランジスタの動作により画素電極190が第2の電圧とされると、透明電極250から通過する光をそのまま透過させるように機能する。本実施形態に係る液晶表示装置においては、各画素でこのよ
うな2態をとることにより、表示装置全体として描画表示を行うものである。なお、コレステリック液晶の透過率は、第2の電圧を変化させることによっても、変化させることができ、この透過率の変化によっても表示装置における表示を変更させることが可能である。
以上のような本発明に係る液晶表示装置によれば、従来技術のように電極と離れた位置に遮光膜が形成された構造ではないので、本発明に係るアクティブマトリクス基板同様、電極からの反射がなく、表示画像が悪化することがない。
次に、本発明に係る他の実施形態について説明する。図32は本発明の他の実施形態に係るアクティブマトリックス基板の積層構造を示す図である。
図20乃至図28で示した実施形態においては、反射防止層130としては絶縁性を有する材料が用いられていたが、図32に示す実施形態においては反射防止層130としては導電性を有するものが用いられている。この場合、画素電極190とソースドレイン電極層120とを導通接続するために、反射防止層130をエッチングする工程を省き、画素電極190と反射防止層130とをビアホール導通部180によって導通接続する。
このような実施形態によっても、先の実施形態と同様の効果を享受することができると共に、反射防止層130のエッチング工程を省略でき、製造工程を簡略化することができる、というメリットもある。
以上、本発明のアクティブマトリックス基板及び液晶表示装置によれば、反射防止膜が直接的に形成された反射防止膜形成電極が用いられており、従来技術のように電極と離れた位置に遮光膜が形成された構造ではないので、電極からの反射がなく、表示画像が悪化することがない。
また、本発明のアクティブマトリックス基板の製造方法によれば、電極からの反射がなく、表示画像が良好なアクティブマトリックス基板を効率的に生産することが可能となる。