JP5741068B2 - 電動車両 - Google Patents

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Description

本発明は、電動車両に関し、詳しくは、走行用の動力を入出力する電動機と、電動機と電力のやりとりを行なう二次電池と、二次電池に発電電力を供給可能な発電手段と、を備え、走行のために電動機に要求される動力が電動機から出力されると共に二次電池の蓄電量の全蓄電量に対する割合としての蓄電割合が目標蓄電割合となるよう電動機と発電手段とを制御する電動車両に関する。
従来、この種の電動車両としては、エンジンとモータの少なくとも一方の駆動力により走行可能なハイブリッド車両において、エンジンの駆動力を用いて発電するジェネレータと、モータに電力を供給すると共にジェネレータが発電した電力により充電されるバッテリとを備え、充電スイッチを運転者が操作したときには、バッテリの蓄電量を制御する目標値を通常の目標値より大きな目標値に変更するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この車両では、上述の制御により、バッテリの蓄電量を運転者の意志に応じた状態にしている。
特開2003−235108号公報
しかしながら、バッテリの充放電制御における制御用の目標値を運転者が変更指示したときに、運転者の変更意志に応じて目標値を変更すると不都合が生じるおそれがある。例えば、エンジンを始動している最中にバッテリの蓄電量の目標値を高くする変更指示がなされて直ちに目標値を変更すると、その目標値を達成するためにモータ出力が制限されて走行に必要な駆動力を出力できなくなってしまったり、バッテリを充電してもよい電力の上限値としての入力制限や放電してもよい電力の上限値としての出力制限の大きさ(絶対値の大きさ)が小さいときにバッテリの蓄電量の目標値を変更する変更指示がなされて直ちに目標値を変更すると、バッテリの入出力制限のために走行に必要な駆動力を出力することができなくなったり、モータによる制動力を油圧ブレーキによる制動力に置き換えている最中にバッテリの蓄電量の目標値を高くする変更指示がなされて直ちに目標値を変更すると、モータによる制動力が急変して車両にショックを生じさせ、乗員に不快感を与えてしまったり、運転者のシフト操作に対して仮想的な変速に基づいて運転者に変速感を与える仮想シフト制御を実行している最中にバッテリの蓄電量の目標値を高くする変更指示がなされて直ちに目標値を変更すると、運転者のシフト操作に拘わらずにエンジンの運転ポイントが急変して運転者に違和感を与えてしまったり、するなどの不都合が生じるおそれがある。
本発明の電動車両は、二次電池の充放電制御における目標値を操作者の操作によって変更指示したときに不都合が生じるのを抑制することを主目的とする。
本発明の電動車両は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
本発明の電動車両は、
走行用の動力を入出力する電動機と、前記電動機と電力のやりとりを行なう二次電池と、前記二次電池に発電電力を供給可能な発電手段と、走行のために前記電動機に要求される動力が該電動機から出力されると共に前記二次電池の蓄電量の全蓄電量に対する割合としての蓄電割合が目標蓄電割合となるよう前記電動機と前記発電手段とを制御する制御手段と、を備える電動車両において、
操作者による操作によって前記目標蓄電割合を変更を指示する変更指示手段と、
前記変更指示手段により前記目標蓄電割合の変更が指示された際、車両の状態が前記二次電池の充放電制御を急変すべきでない状態として予め定められた所定車両状態であるときには前記目標蓄電割合の変更を禁止し、車両の状態が前記所定車両状態ではないときには前記目標蓄電割合の変更を許可する変更禁止許可手段と、
を備えることを要旨とする。
本発明の電動車両では、操作者による操作によって二次電池の蓄電量の全蓄電量に対する割合としての蓄電割合の目標値としての目標蓄電割合の変更が指示された際に、車両の状態が二次電池の充放電制御を急変すべきでない状態として予め定められた所定車両状態であるときには目標蓄電割合の変更を禁止し、車両の状態が所定車両状態ではないときには目標蓄電割合の変更を許可する。これにより、操作者の操作によって目標蓄電割合を変更したときに生じ得る不都合、例えば、走行に必要な駆動力を出力することができなくなったり、車両にショックを生じさせたり、運転者や乗員に違和感を与えたり、するなどの不都合を抑制することができる。
ここで、所定車両状態としては、二次電池を充電してもよい最大電力としての入力制限の絶対値が所定充電電力未満の状態、二次電池から放電してもよい最大電力としての出力制限の絶対値が所定放電電力未満の状態、電動機と油圧ブレーキとにより制動力を協調して作用させている状態、発電手段を起動する処理中である状態、発電手段を停止する処理中である状態、仮想的なシフト操作により走行している状態などを考えることができる。また、発電手段としては、内燃機関と内燃機関からの動力を用いて発電する発電機との組み合わせたものや、燃料電池システムなどを考えることができる。
本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。 ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される目標蓄電割合変更処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、ガソリンや軽油などを燃料とするエンジン22と、エンジン22を駆動制御するエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという。)24と、エンジン22のクランクシャフト26にキャリアが接続されると共に駆動輪38a,38bにデファレンシャルギヤ37を介して連結された駆動軸36にリングギヤが接続されたプラネタリギヤ30と、例えば同期発電電動機として構成されて回転子がプラネタリギヤ30のサンギヤに接続されたモータMG1と、例えば同期発電電動機として構成されて回転子が駆動軸36に接続されたモータMG2と、モータMG1,MG2を駆動するためのインバータ41,42と、インバータ41,42の図示しないスイッチング素子をスイッチング制御することによってモータMG1,MG2を駆動制御するモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという。)40と、インバータ41,42を介してモータMG1,MG2と電力をやりとりするバッテリ50と、バッテリ50を管理するバッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという。)52と、車両全体を制御するハイブリッド用電子制御ユニット70と、を備える。
バッテリECU52は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に処理プログラムを記憶するROMと、データを一時的に記憶するRAMと、入出力ポートおよび通信ポートとを備える。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧Vb,バッテリ50の出力端子に接続された電力ラインに取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流Ib,バッテリ50に取り付けられた図示しない温度センサからの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。また、バッテリECU52は、電流センサにより検出された充放電電流Ibの積算値に基づいてバッテリ50に蓄電可能な全蓄電量に対する現在蓄電されている蓄電量の割合である蓄電割合SOC(蓄電量/全蓄電量×100)を演算したり、蓄電割合SOCが目標蓄電割合SOC*を中心とする制御範囲(例えば、目標蓄電割合SOC*プラスマイナス10%など)とするためにバッテリ50を充放電するのに必要なパワーとしての充放電要求パワーPb*(バッテリ50から放電するときが正の値)を演算したり、蓄電割合SOCと電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutを演算している。なお、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、電池温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの基本値を設定し、バッテリ50の蓄電割合SOCに基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、設定した入出力制限Win,Woutの基本値に補正係数を乗じることにより設定することができる。
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に処理プログラムを記憶するROMと、データを一時的に記憶するRAMと、入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、シフトレバーのポジションを検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションやアクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度,ブレーキペダルの踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキポジション,車速センサ88からの車速V,バッテリ50の蓄電割合SOCを高めにするために目標蓄電割合SOC*を通常の値S1より高い値S2に設定するための充電スイッチ89からの指示信号SWなどが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンにより、運転者によるアクセルペダルの踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸36に出力すべき要求トルクTr*を計算し、バッテリ50の入力制限Winと出力制限Woutの範囲内で計算した要求トルクTr*が駆動軸36に出力されるように、エンジン22の目標回転数Ne*,目標トルクTe*,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定してエンジンECU24やモータECU40に送信する。エンジン22の目標回転数Ne*,目標トルクTe*を受信したエンジンECU24は、目標回転数Ne*,目標トルクTe*でエンジン22が運転されるように吸入空気量制御や燃料噴射制御,点火制御などを行ない、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、モータMG1,MG2からトルク指令Tm1*,Tm2*に相当するトルクが出力されるようインバータ41,42のスイッチング素子をスイッチング制御する。
エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求トルクTr*に駆動軸36の回転数を乗じて得られる走行用パワーPdrvがエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力されるパワーのすべてがプラネタリギヤ30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されて駆動軸36に出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや走行用パワーPdrvから充放電要求パワーPb*(バッテリ50から放電するときが正の値)を減じて得られる車両要求パワーP*がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部がプラネタリギヤ30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って走行用パワーPdrvが駆動軸36に出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2から走行用パワーPdrvを駆動軸36に出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。なお、トルク変換運転モードと充放電運転モードは、いずれもエンジン22の運転を伴って走行用パワーPdrvを駆動力36に出力するようエンジン22とモータMG1,MG2とを制御するモードであり、実質的な制御における差異はないため、以下、両者を合わせてエンジン運転モードという。
エンジン運転モードでは、ハイブリッド用電子制御ユニット70は、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accと車速センサ88からの車速Vとに基づいて駆動軸36に出力すべき要求トルクTr*を設定し、設定した要求トルクTr*に駆動軸36の回転数Nd(例えば、モータMG2の回転数Nm2や車速Vに換算係数を乗じて得られる回転数)を乗じて走行に要求される走行用パワーPrdvを計算すると共に計算した走行用パワーPdrvから充放電要求パワーPb*(バッテリ50から放電するときが正の値)を減じてエンジン22から出力すべきパワーとしての車両要求パワーP*を設定し、バッテリ50の入力制限Winと出力制限Woutの範囲内で、車両要求パワーP*を効率よくエンジン22から出力することができるエンジン22の回転数NeとトルクTeとの関係としての動作ライン(例えば燃費最適動作ライン)を用いてエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定すると共にエンジン22の回転数Neが目標回転数Ne*となるようにするための回転数フィードバック制御によりモータMG1から出力すべきトルクとしてのトルク指令Tm1*を設定し且つモータMG1をトルク指令Tm1*で駆動したときにプラネタリギヤ30を介して駆動軸36に作用するトルクを要求トルクTr*から減じてモータMG2のトルク指令Tm2*を設定する。
モータ運転モードでは、ハイブリッド用電子制御ユニット70は、モータMG1のトルク指令Tm1*に値0を設定する共にバッテリ50の入力制限Winと出力制限Woutの範囲内で要求トルクTr*が駆動軸36に出力されるようモータMG2のトルク指令Tm2*を設定する。
エンジン運転モードからモータ運転モードに移行するときには、エンジン22の運転停止処理が実行される。エンジン22の運転停止処理は、まず、エンジン22を予め定めたアイドリング回転数(例えば、1000rpm)でアイドリング運転し、吸気バルブの開閉タイミングが最も遅いタイミング(最遅角)になるのを待って、燃料噴射と点火を停止することによって行なわれる。吸気バルブの開閉タイミングを最も遅いタイミング(最遅角)とするのは、エンジン22の始動時におけるモータリングでエンジン22の回転数Neを迅速に上昇させるためである。なお、このときの駆動制御は、モータ運転モードによる。
モータ運転モードからエンジン運転モードに移行するときには、エンジン22の始動処理が実行される。エンジン22の始動処理は、エンジン22の吸気バルブの開閉タイミングを最も遅いタイミング(最遅角)とした状態でモータMG1からのトルクによりエンジン22をモータリングし、エンジン22の回転数Neが予め定めた燃料噴射回転数(例えば、1000rpmなど)に至ったときに、燃料噴射と点火を開始すると共に吸気バルブの開閉タイミングをアイドリング運転用のタイミングに進角することによって行なわれる。モータMG1によるモータリングは、エンジン22の回転数Neが車両が共振する共振回転数帯を迅速に通過するよう大きなトルクによって行なわれる。モータMG1のモータリングの最中は、モータMG1から出力されるトルクがプラネタリギヤ30を介して駆動軸36に作用するため、このトルクを打ち消すためのトルクと走行のために必要な要求トルクTr*との和のトルクをモータMG2のトルク指令Tm2*として設定する。
また、実施例のハイブリッド自動車20では、シフトレバーのシフトポジションSPとして、駐車時に用いる駐車ポジション(Pポジション)、後進走行用のリバースポジション(Rポジション)、中立のニュートラルポジション(Nポジション)、前進走行用の通常のドライブポジション(Dポジション)の他に、アクセルオン時の駆動力の設定等はDポジションと同一であるが走行中のアクセルオフ時に作用させる制動力がDポジションより大きく設定されるブレーキポジション(Bポジション)、アップシフト指示ポジションおよびダウンシフト指示ポジションを有するシーケンシャルシフトポジション(Sポジション)が用意されている。ここで、Sポジションは、アクセル開度Accに対する実行用アクセル開度A*や走行中のアクセルオフ時の制動力を例えば6段階(SP1〜SP6)に変更するポジションであり、アップシフト指示ポジションを操作してアップシフトする毎にアクセル開度Accに対する実行用アクセル開度A*と走行中のアクセルオフ時の制動力は小さくなり、ダウンシフト指示ポジションを操作してダウンシフトする毎にアクセル開度Accに対する実行用アクセル開度A*と走行中のアクセルオフ時の制動力は大きくなる。このように、Sポジションでは、シフトレバーの操作に対して仮想的な有段変速機による変速感を運転者に与えることができる。
また、実施例のハイブリッド自動車20では、走行中にアクセルオフして減速するときには、エンジン22の運転を停止すると共にシフトポジションSPとブレーキペダルの踏み込み量とに応じた制動力のうち、バッテリ50の入力制限Winの範囲内でモータMG2の定格値の範囲内でモータMG2を回生制御すると共にモータMG2の回生制御による制動力では不足する制動力が図示しない油圧ブレーキ装置から出力されるよう油圧ブレーキ装置を制御する。そして、車速Vが小さくなると車両にショックなどを生じさせずに車両をスムーズに停止するために、モータMG2による制動力を油圧ブレーキ装置による制動力に置き換える処理が行なわれる。これらのモータMG2と油圧ブレーキ装置とによる制動力の作用やモータMG2による制動力を油圧ブレーキ装置による制動力に置き換えを総じてブレーキ協調制御という。こうしたブレーキ協調制御を行なうことにより、運動エネルギの多くをモータMG2により電力として回生し、バッテリ50に蓄えることができると共に、車両にショックを与えることなくスムーズに停車することができる。
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特に操作者の充電スイッチ89の操作によりバッテリ50の蓄電割合SOCを高めにするために目標蓄電割合SOC*を通常の値S1より高い値S2に設定する指示がなされたときの動作について説明する。図2は、ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される目標蓄電割合変更処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、操作者の充電スイッチ89の操作により目標蓄電割合SOC*を通常の値S1より高い値S2に設定する指示がなされたときに実行される。
目標蓄電割合変更処理ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70は、まず、バッテリ50の入出力制限Win,Woutやシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,エンジン22の状態、ブレーキ状態など目標蓄電割合SOC*の変更処理に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS100)。ここで、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、バッテリ50の電池温度Tbと蓄電割合SOCとに基づいて設定されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした。エンジン22の状態としては、実施例では、エンジン22の始動処理の最中であるか否かエンジン22の停止処理の最中であるか否かが相当し、例えば、図示しない始動処理ルーチンの実行を開始したときに値1が設定され始動処理ルーチンを終了するときに値0が設定される始動中フラグFstartや、図示しない停止処理ルーチンの実行を開始したときに値1が設定され停止処理ルーチンを終了するときに値0が設定される停止中フラグFstopによって表わされる。こうした始動中フラグFstartや停止中フラグFstopは、ハイブリッド用電子制御ユニット70がエンジン22の始動処理や停止処理を実行したときにハイブリッド用電子制御ユニット70の図示しないRAMの所定アドレスに書き込むことによって記憶することができるから、本ルーチンのステップS100ではその所定アドレスから読み込むことによってエンジン22の状態を得ることができる。ブレーキ状態は、例えば、モータMG2や図示しない油圧ブレーキ装置により制動力を付与しているときに値1が設定されモータMG2や図示しない油圧ブレーキ装置による制動力が解除されたときに値0が設定されるブレーキフラグFbにより表わされる。ブレーキフラグFbは、走行中に運転者がアクセルオフしたりブレーキペダルを踏み込んだときにハイブリッド用電子制御ユニット70がブレーキ協調制御を実行したときにハイブリッド用電子制御ユニット70の図示しないRAMの所定アドレスに書き込むことによって記憶することができるから、本ルーチンのステップS100が実行されたときにその所定アドレスから読み込むことによってブレーキ状態を得ることができる。
こうしてデータを入力すると、バッテリ50の入力制限Winの大きさ(絶対値の大きさ)がバッテリ50をあまり充電することができないとして予め定められた閾値Wiref未満であるか否か(ステップS110)、バッテリ50の出力制限Woutの大きさ(絶対値の大きさ)がバッテリ50からあまり放電することができないとして予め定められた閾値Woref未満であるか否か(ステップS120)、エンジン22の始動処理中であるか否か(ステップS130)、エンジン22の停止処理中であるか否か(ステップS140)、シフトポジションSPはSポジションであるか否か(ステップS150)、ブレーキ協調制御の実行中であるか否か(ステップS160)、を判定する。バッテリ50の入力制限Winの大きさ(絶対値の大きさ)が閾値Wiref未満のときやバッテリ50の出力制限Woutの大きさ(絶対値の大きさ)が閾値Woref未満のときに目標蓄電割合SOC*を変更すると、バッテリ50の充放電制御が急変し、走行に要求される要求トルクTr*を駆動軸36に出力することができなくなったり、車両にトルク変動に伴うショックを生じさせて運転者や乗員に違和感を生じさせたりする。また、エンジン22の始動処理中のときやエンジン22の停止処理中のときにも同様である。シフトポジションSPはSポジションのときは、運転者のシフトレバーの操作に対して仮想的な有段変速機による変速感が運転者に与えられるように制御されているため、目標蓄電割合SOC*を変更すると、バッテリ50の充放電制御の急変に伴ってエンジン22の運転ポイントが変更される結果、運転者に違和感を与えてしまう。ブレーキ協調制御を実行している最中は、モータMG2と油圧ブレーキ装置とによって制動力を作用させていたり、モータMG2による制動力を油圧ブレーキ装置による制動力に置き換えが行なわれていたりすることから、目標蓄電割合SOC*を変更すると、バッテリ50の充放電制御の急変に伴って走行に要求されるモータMG2から制動トルクを駆動軸36に出力することができなくなったり、車両にトルク変動に伴うショックを生じさせて運転者や乗員に違和感を生じさせたりする。
したがって、本ルーチンでは、バッテリ50の入力制限Winの大きさ(絶対値の大きさ)が閾値Wiref未満のときやバッテリ50の出力制限Woutの大きさ(絶対値の大きさ)が閾値Woref未満のとき、エンジン22の始動処理中のときやエンジン22の停止処理中のとき、シフトポジションSPがSポジションのとき、ブレーキ協調制御の実行中のときには、目標蓄電割合SOC*の変更を禁止して(ステップS170)、本ルーチンを終了し、バッテリ50の入力制限Winの大きさ(絶対値の大きさ)が閾値Wiref以上であり、バッテリ50の出力制限Woutの大きさ(絶対値の大きさ)が閾値Woref以上であり、エンジン22の始動処理中ではなく、エンジン22の停止処理中でもなく、シフトポジションSPがSポジションではなく、ブレーキ協調制御も実行していないときには、目標蓄電割合SOC*の変更を許可して、通常時の目標蓄電割合SOC*として用いられる値S1より大きな値S2を目標蓄電割合SOC*として設定して(ステップS180)、本ルーチンを終了する。目標蓄電割合SOC*が変更されると、変更された目標蓄電割合SOC*がバッテリECU52に送信され、バッテリECU52により蓄電割合SOCが変更された目標蓄電割合SOC*を中心とする制御範囲となるよう充放電要求パワーPb*が設定される。この結果、バッテリ50の蓄電割合SOCは変更された目標蓄電割合SOC*を中心とする制御範囲に制御されることになる。
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、操作者の充電スイッチ89の操作により目標蓄電割合SOC*を通常の値S1より高い値S2に設定する指示がなされたときに、バッテリ50の入力制限Winの大きさ(絶対値の大きさ)が閾値Wiref未満であったり、バッテリ50の出力制限Woutの大きさ(絶対値の大きさ)が閾値Woref未満であったり、エンジン22の始動処理中であったり、エンジン22の停止処理中であったり、シフトポジションSPがSポジションであったり、ブレーキ協調制御を実行中であったりしたときには、目標蓄電割合SOC*の変更を禁止するから、これらの状態のときに目標蓄電割合SOC*を変更することによって生じ得る不都合、例えば、走行に要求される要求トルクTr*を駆動軸36に出力することができなくなる不都合や車両にトルク変動に伴うショックを生じさせて運転者や乗員に違和感を生じさる不都合、ンジン22の運転ポイントが予期せずに変更されるために運転者に違和感を与えてしまう不都合などを抑制することができる。もとより、バッテリ50の入力制限Winの大きさ(絶対値の大きさ)が閾値Wiref以上であり、バッテリ50の出力制限Woutの大きさ(絶対値の大きさ)が閾値Woref以上であり、エンジン22の始動処理中ではなく、エンジン22の停止処理中でもなく、シフトポジションSPがSポジションではなく、ブレーキ協調制御も実行していないときには、目標蓄電割合SOC*の変更を許可して、通常時の目標蓄電割合SOC*として用いられる値S1より大きな値S2を目標蓄電割合SOC*として設定するから、バッテリ50の蓄電割合SOCを運転者の意志に応じたものとすることができる。
実施例のハイブリッド自動車20では、操作者の充電スイッチ89の操作により目標蓄電割合SOC*を通常時の値S1からこれより大きな値S2に変更するものとしたが、放電スイッチを設け、操作者の放電スイッチの操作により目標蓄電割合SOC*を通常時の値S1からこれより小さな値S3に変更するものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22からの動力をプラネタリギヤ30を介して駆動輪38a,38bに接続された駆動軸36に出力すると共にモータMG2からの動力を駆動軸36に出力するものとしたが、走行用の動力を入出力する電動機と、電動機と電力のやりとりを行なう二次電池と、二次電池に発電電力を供給可能な発電手段と、を備える電動自動車であれば如何なる構成としてもよい。この場合、発電手段としては、エンジンとエンジンのクランクシャフトに取り付けられた発電機としてもよいし、燃料電池システムとしてもよい。
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、モータMG2が「電動機」に相当し、バッテリ50が「二次電池」に相当し、エンジン22とモータMG1とが「発電手段」に相当し、エンジン運転モードやモータ運転モードによりエンジン22とモータMG1,MG2とを駆動制御するハイブリッド用電子制御ユニット70とエンジンECU24とモータECU40とバッテリECU52とが「制御手段」に相当し、充電スイッチ89が「変更指示手段」に相当し、操作者の充電スイッチ89の操作により目標蓄電割合SOC*を通常の値S1より高い値S2に設定する指示がなされたときに、バッテリ50の入力制限Winの大きさ(絶対値の大きさ)が閾値Wiref未満であったり、バッテリ50の出力制限Woutの大きさ(絶対値の大きさ)が閾値Woref未満であったり、エンジン22の始動処理中であったり、エンジン22の停止処理中であったり、シフトポジションSPがSポジションであったり、ブレーキ協調制御を実行中であったりしたときには、目標蓄電割合SOC*の変更を禁止し、バッテリ50の入力制限Winの大きさ(絶対値の大きさ)が閾値Wiref以上であり、バッテリ50の出力制限Woutの大きさ(絶対値の大きさ)が閾値Woref以上であり、エンジン22の始動処理中ではなく、エンジン22の停止処理中でもなく、シフトポジションSPがSポジションではなく、ブレーキ協調制御も実行していないときには、目標蓄電割合SOC*の変更を許可して、通常時の目標蓄電割合SOC*として用いられる値S1より大きな値S2を目標蓄電割合SOC*として設定する図2の目標蓄電割合変更処理ルーチンを実行するハイブリッド用電子制御ユニット70が「変更禁止許可手段」に相当する。
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
本発明は、電動車両の製造産業などに利用可能である。
20 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、30 プラネタリギヤ、36 駆動軸、37 デファレンシャルギヤ、38a,38b 駆動輪、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、50 バッテリ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、82 シフトポジションセンサ、84 アクセルペダルポジションセンサ、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、89 充電スイッチ、MG1,MG2 モータ。

Claims (1)

  1. 走行用の動力を入出力する電動機と、前記電動機と電力のやりとりを行なう二次電池と、前記二次電池に発電電力を供給可能な発電手段と、走行のために前記電動機に要求される動力が該電動機から出力されると共に前記二次電池の蓄電量の全蓄電量に対する割合としての蓄電割合が目標蓄電割合となるよう前記電動機と前記発電手段とを制御する制御手段と、を備える電動車両において、
    操作者による操作によって前記目標蓄電割合の変更を指示する変更指示手段と、
    前記変更指示手段により前記目標蓄電割合の変更が指示された際、車両の状態が前記電動機と油圧ブレーキとにより制動力を協調して作用させている状態または仮想的なシフト操作により走行している状態であるときには前記目標蓄電割合の変更を禁止する変更禁止許可手段と、
    を備える電動車両。
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