JP5740980B2 - セルロースエステルフィルムの製造方法、偏光板及び液晶表示装置 - Google Patents
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Description
予め平均一次粒子径が1〜20nmの粒子を含有させたセルロースエステルを前記延伸処理工程で延伸した後に、前記カレンダー処理工程において25kg/cm以上、1000kg/cm以下の線圧でカレンダー処理することにより、
該セルロースエステルフィルム表面の算術平均粗さRaが0.5nm以上、2.0nm以下であり、かつ該Raの10倍以上の山頂高さをもつ該セルロースエステルフィルム表面凸部の個数が、該セルロースエステルフィルム0.01mm2当たり10個以下であるように制御することを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。
上記表面粗さは、光干渉式の表面粗さ測定器で測定することが好ましく、例えばWYKO社製NT3300を用いて測定することが出来る。
カレンダー処理に用いるニップロールについては、例えば特開平7−151915号公報に開示されているようなニップロールを使用することが好ましい。
本発明に係るローラを構成する材料としては、通常知られている各種材料が使用出来る。具体的には、ステンレス、クロムメッキ、チタンなど金属ローラ(変形しない)、各種ゴム(ゴム硬度により、弾性変形量を調整出来る)、フッ素樹脂(撥水性、撥油性などによりローラへのフィルム材の付着を防止出来る)など各種が使用出来る。
ローラ表面の表面状態は、鏡面状態(表面粗さが非常に小さい0.01〜2.0nm)、表面粗さ2〜30nm程度有する、或いは表面粗さ30nm以上有するなど各種の表面状態を有するローラを用いることができるが、本発明では鏡面状態のローラを使用することが好ましい。
本発明の表面形状を作るためにフィルムに加える力は、25kg/cm以上、1000kg/cm以下の線圧で行われることが好ましく、さらには50kg/cm以上、300kg/cm以下の線圧で行われることが好ましい。
また、カレンダー処理して高い山頂を有する凸部を無くすためには、フィルムをやわらかい状態にすることが好ましく、高温で処理することが好ましい。逆に温度が高すぎると大きな塑性変形が起こってしまい、フィルム変形やレターデーション変化が起こり好ましくない。本発明の表面形状を作るためにはカレンダー処理をフィルムのガラス転移温度付近で行うことが好ましく、フィルムのガラス転移温度:Tg(℃)に対しTg−20(℃)〜Tg+20(℃)の範囲でカレンダー処理が行われることが好ましい。
|Rt′|<|Rt|±5(nm)
尚、レターデーション値は、下記式(i)、(ii)で求められる。
(ii):Rt(またはRt′)=((nx+ny)/2−nz)×d
(式中、フィルム面内の遅相軸方向の屈折率をnx、面内で遅相軸に直行する方向の屈折率ny、フィルム厚み方向の屈折率をnz、dはフィルムの厚み(nm)を表す。)
尚、レターデーション値(Ro)、(Rt)は自動複屈折率計を用いて測定することができる。例えば、KOBRA−21ADH(王子計測機器(株))を用いて、23℃、55%RHの環境下で、波長590nmで求めることができる。
上記カレンダー処理は延伸処理後に行うことが重要である。上記で述べた高い凸部は、延伸時に多く発生することが本発明者の検討より分かった。延伸前にカレンダー処理を行うと、その後の延伸処理で高い凸部が発生してしまい、本発明の表面形状を作るのは困難である。
〈セルロースエステル〉
セルロースエステル(以下、セルロースエステル樹脂という場合もある)は、セルロースの低級脂肪酸エステルであることが好ましい。セルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味し、例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等や、特開平10−45804号、同08−231761号、米国特許第2,319,052号等に記載されているようなセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の混合脂肪酸エステルを用いることができる。上記記載の中でも、特に好ましく用いられるセルロースの低級脂肪酸エステルはセルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートである。これらのセルロースエステルは単独或いは混合して用いることができる。
カラム:Shodex K806,K805,K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ:L6000(日立製作所(株)製)
流量:1.0ml/min
校正曲線:標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)
Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
本発明は、フィルム表面の算術平均粗さRaを制御する為に、セルロースエステルフィルム中に粒子を含有する。該粒子は、無機粒子或いは有機粒子等、特に限定されるものではないが、平均一次粒子径が1nm〜20nmの無機粒子を用いることが好ましい。粒子は含有させることによりブロッキング性を付与する役割がもちろんあるが、本発明では粒子を含有することによって高い凸部を抑える狙いもある。
また、セルロースエステルフィルムは、含有する微粒子の分散性を極めて高く保つために、重量平均分子量(Mw)80000以上のアクリル樹脂を含有することが好ましい。
セルロースエステルフィルムやセルロースエステル樹脂・アクリル樹脂フィルムには、下記のような可塑剤を含有することが好ましい。可塑剤としては、例えば、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤等を好ましく用いることができる。
セルロースエステルフィルムやセルロースエステル樹脂・アクリル樹脂フィルムには紫外線吸収剤を含有させても良い。次に紫外線吸収剤について説明する。
UV−2:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−3:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−4:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−5:2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−6:2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)
UV−7:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−8:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール(TINUVIN171、チバ・ジャパン社製)
UV−9:オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物(TINUVIN109、チバ・ジャパン社製)
また、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては以下の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
UV−11:2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
UV−12:2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン
UV−13:ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)
上記紫外線吸収剤としては、透明性が高く、偏光板や液晶の劣化を防ぐ効果に優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましく用いられる。
ドープには、製膜性や生産性の点から、有機溶媒を含有することが好ましい。有機溶媒としては、セルロースエステル、その他の添加剤を同時に溶解するものであれば制限なく用いることができる。例えば、塩化メチレン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることができる。これら有機溶媒の中でも塩化メチレン、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトンが好ましく用いられる。
溶液流延法によるフィルム製造では、樹脂、例えばセルロースエステル樹脂やアクリル樹脂、及び添加剤を溶剤に溶解させてドープを調製する工程、ドープをベルト状もしくはドラム状の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸または幅保持する工程、更に本発明に係るカレンダー処理を行う工程、次いで乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻き取る工程により行われる。カレンダー処理は前述のように、巻き取られたフィルムを再度繰り出して行ってもよい。
尚、Mはウェブまたはフィルムを製造中または製造後の任意の時点で採取した試料の質量で、NはMを115℃で1時間の加熱後の質量である。
本発明に係るセルロースエステルフィルムは、偏光板保護フィルムの機能を併せ持つ光学フィルムとして使用することが出来る。本発明のセルロースエステルフィルムを用いることで、鹸化処理後の乾燥性を大幅に改善し生産ラインの短縮化ができる。
本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法により製造されたフィルムを偏光板に用いることにより、種々の視認性に優れた液晶表示装置を作製することができる。
〔セルロースエステルフィルムの作製:表1、2中フィルムと略す〕
〈セルロースエステルフィルム1の作製〉
(溶液流涎法)
セルロースエステルA(セルローストリアセテート:アセチル基置換度2.82、Mw=200000) 100質量部
トリフェニルホスフェート 10質量部
メチレンクロライド 380質量部
エタノール 70質量部
粒子:日本アエロジル(株)R812(一次粒径7nm)
0.1質量部
上記材料をディゾルバーで15分間撹拌混合した後、撹拌して完全に溶解した。そのまま脱泡のために8時間放置した。
上記作製したドープ液を、ベルト流延装置を用い、温度22℃、2m幅でステンレスバンド支持体に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶剤量が100%になるまで溶媒を蒸発させ、剥離張力162N/mでステンレスバンド支持体上から剥離した。
〈セルロースエステルフィルム2〜26の作製〉
上記セルロースエステルフィルム1の作製において、セルロースエステル樹脂を表3のA〜E、粒子を表4のA〜E、可塑剤を表5のA〜Eに記載のものに代えた以外は同様にして、表1、表2に記載のセルロースエステルフィルム2〜26を作製した。
上記セルロースエステルフィルム1の作製において、カレンダー処理を行わず製造した以外は同様にして、セルロースエステルフィルム27、28を作製した。
上記セルロースエステルフィルム1の作製において、カレンダー処理でのフィルムに与える線圧を表2のように変えた以外は同様にして、セルロースエステルフィルム29〜31を作製した。
上記セルロースエステルフィルム1の作製において、カレンダー処理を延伸の前に同じ条件で行った。それ以外は同様にして、セルロースエステルフィルム32を作製した。
上記セルロースエステルフィルム1の作製において、乾燥ゾーンの温度を120℃から115℃、100℃にそれぞれ変更し、カレンダー処理時の残留溶媒を表1の通り変更させてカレンダー処理を行った。それ以外は同様にして、セルロースエステルフィルム33、34を作製した。
上記セルロースエステルフィルム1の作製において、カレンダー処理の温度を150℃にしてカレンダー処理を行った。それ以外は同様にして、セルロースエステルフィルム35を作製した。
得られたセルロースエステルフィルム1〜35について、以下の評価を実施し、結果を表6に示した。
上記作製した各々のフィルム試料について、フィルム試料1枚を温度23℃、湿度50%±5%において、WYKO社製NT3300を用いて測定した。対物レンズ50倍、イメージズーム1.0倍で120μm×90μmの領域の表面を測定し表面粗さを求めた。
セルロースエステルフィルムのカレンダー処理前の面内方向のレターデーション値(Re)、厚さ方向のレターデーション値(Rt)、カレンダー処理後の面内方向のレターデーション値(Re′)、厚さ方向のレターデーション値(Rt′)を下記方法いより測定した。
(ii):Rt(またはRt′)=((nx+ny)/2−nz)×d
(式中、フィルム面内の遅相軸方向の屈折率をnx、面内で遅相軸に直行する方向の屈折率ny、フィルム厚み方向の屈折率をnz、dはフィルムの厚み(nm)を表す。)
尚、レターデーション値(Re)、(Rt)、(Rt′)、(Re′)は自動複屈折率計を用いて測定した。KOBRA−21ADH(王子計測機器(株))を用いて、23℃、55%RHの環境下で、波長590nmで求めた。
濁度計(NDH2000,日本電色工業(株))を用いて、23℃、55%RHの環境下24時間放置したフィルムにおいて、同環境下、フィルムのヘイズ測定を行った。
巻き取ったフィルム原反試料をポリエチレンシートで2重に包み、25℃、50%RHの条件下で30日間保存した。その後、ポリエチレンシートを開け、フィルムを巻きだし、ブロッキングの発生を下記基準にて目視で評価した。
△ :変形はないがサンプルに少し跡が残る
× :変形がありサンプルに凹凸が残る
<鹸化処理>
KOHの2.0規定水溶液を鹸化液として用いた。これを50℃に調温し、セルロースエステルフィルムを2分間浸漬した。この後、水洗浴を2分間通した。
得られたフィルムの切片(7mm×35mm)を、水分測定器、試料乾燥器(CA−03,VA−05、共に三菱化学(株)製)にてカールフィッシャー法にて含水量を求め、試料質量に対する水分量の比率からフィルムの含水率を算出した。
<偏光板および液晶表示装置の作製>
(アルカリケン化処理)
上記作製したセルロースエステルフィルム1〜35を、下記に記載するアルカリケン化処理した。
水洗工程 水 30℃ 45秒
中和工程 10質量部HCl 30℃ 45秒
水洗工程 水 30℃ 45秒
ケン化処理後、水洗、中和、水洗の順に行い、次いで80℃15分乾燥した。
厚さ120μmの長尺ロールポリビニルアルコールフィルムを沃素1質量部、ホウ酸4質量部を含む水溶液100質量部に浸漬し、50℃で6倍に製膜方向に延伸して偏光子を作った。
得られた偏光板はソニー株式会社製32型液晶テレビ“BRAVIA”KDL−32J5000にあらかじめ貼合されていた視認側の偏光板を注意深く剥がし、もともと貼ってあった偏光板の透過軸にあわせ、液晶セル側に粘着剤を介して貼り付け液晶表示装置を作製した。
2 予熱ローラ
3 駆動ローラ(第1ロール)
4 追随回転ローラ(第2ロール)
5 巻き取りロール
Claims (6)
- セルロースエステルの延伸処理工程と、該延伸処理工程で延伸されたセルロースエステルフィルムにカレンダー処理を施すカレンダー処理工程を有するセルロースエステルフィルムの製造方法であって、
予め平均一次粒子径が1〜20nmの粒子を含有させたセルロースエステルを前記延伸処理工程で延伸した後に、前記カレンダー処理工程において25kg/cm以上、1000kg/cm以下の線圧でカレンダー処理することにより、
該セルロースエステルフィルム表面の算術平均粗さRaが0.5nm以上、2.0nm以下であり、かつ該Raの10倍以上の山頂高さをもつ該セルロースエステルフィルム表面凸部の個数が、該セルロースエステルフィルム0.01mm2当たり10個以下であるように制御することを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。 - 前記カレンダー処理が、フィルムのガラス転移温度:Tg(℃)に対しTg−20(℃)〜Tg+20(℃)の範囲で行われることを特徴とする請求項1に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
- 前記カレンダー処理を行うときのフィルムの残留溶媒が0.1質量%以上、20質量%以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
- セルロースエステルフィルムが、アシル基の総置換度が2.0以上、3.0以下のセルロースエステルを含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法で製造されたセルロースエステルフィルムを偏光膜の少なくとも一方の面に有することを特徴とする偏光板。
- 請求項5に記載の偏光板を液晶セルの少なくとも一方の面に有することを特徴とする液晶表示装置。
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