JP5739165B2 - ラクチドの製造方法 - Google Patents

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本発明は、ラクチドの製造方法に関する。更に詳しくは、ポリ乳酸からその直接原料であるラクチドにリサイクルするための方法であって、ポリ乳酸からラクチドに変換して、ポリ乳酸の原料であるラクチドを容易に製造する方法に関する。
プラスチック製品の製造には、化石燃料である石油を原料としたプラスチック材料が用いられている。しかし、石油の枯渇可能性と価格の不安定さ、さらには石油からプラスチック原料への精製時やプラスチック原料からプラスチック材料への製造時に二酸化炭素(CO)が大量に排出して温暖化を促進させる、という問題がある。
石油を原料としたプラスチック材料の代替として、化石燃料である石油を原料としない植物由来のプラスチック材料が検討されている。植物由来のプラスチック材料は、植物から取れるデンプンを原料としたものであり、そのプラスチック材料から製造したプラスチック製品は燃やすと水とCOになり、そのCOは植物に吸収されて再びデンプンを作る。そのため、大気中のCO総量が増えないと言われ、22世紀に最も期待されているプラスチック材料である。代表的な植物由来のプラスチック材料としてポリ乳酸が知られており、最近では、ポリ乳酸を用いた包装容器、自動車部材、パソコン・携帯機器等のプラスチック製品が検討され、広く実用化されている。
ポリ乳酸の製造は、植物から得たデンプンを乳酸水溶液とし、その乳酸水溶液から乳酸オリゴマーを得た後、その乳酸オリゴマーからラクチドを合成し、そのラクチドからポリ乳酸を合成する方法によって行われる(後述する図1を参照)。こうしたポリ乳酸の製造方法において、デンプンから乳酸オリゴマーを得る過程で、全工程に投入されるエネルギーの9割を必要とする。そのため、プラスチック製品を燃焼又は生分解させて再びデンプンからポリ乳酸を製造する工程を経るよりも、プラスチック製品を構成するポリ乳酸を化学的にリサイクル(ケミカルリサイクルともいう。)してラクチドを製造(変換)し、得られたラクチドから再びポリ乳酸を製造する工程(後述する図1を参照)のほうがエネルギー的に有利である。
ポリ乳酸からラクチドを製造する方法として、ポリ乳酸を熱分解してラクチドを生成する方法が提案されている。一般的にプラスチックはモノマーを重合して作られるが、モノマーの重合温度を高くしていくと、ある温度以上で重合の逆反応である解重合が起こる。この解重合は高温で起こることから、「解重合」を「熱分解」と言うことがある。ポリ乳酸も同様に、350℃程度でポリ乳酸を熱分解し、ポリ乳酸の直接原料であるラクチドを製造することができる。
ポリ乳酸からラクチドへの熱分解反応時に固体触媒を加えると、反応温度を低下させることができる(例えば特許文献1を参照)。しかし、光学活性なポリ(L−乳酸)を熱分解してラクチドを生成させる際に、ラクチドの光学純度が低下(ラセミ化)するのを抑制しなければならない。この課題に対し、特許文献2,3では、光学純度の低下(ラセミ化)を防いでL,L−ラクチドに変換することができる技術を提案している。同文献2,3では、ラセミ化を最小にする温度範囲を見出しているが、その温度範囲は狭く(280℃付近)、精度よく温度コントロールできる押出成形機を必須の設備として用いている。
また、上記した特許文献1では、ポリ乳酸からラクチドへの熱分解反応時にアルコールを加えると、ポリ乳酸からラクチドへの反応効率が高まることも提案されている。
特開平9−241417号公報 WO2003−91238号国際公開パンフレット 特開2010−168415号公報
特許文献2,3の技術では、ラセミ化を最小にする温度範囲(280℃付近)が狭く、その温度範囲に高精度で制御できる反応装置が必要である。しかしながら、その反応装置は、押出成形機を改造した高価で特殊な装置であり、容易に調達できないという問題がある。
したがって、ポリ乳酸からなる使用済みのプラスチック製品(以下「ポリ乳酸製品」ともいう。)を回収しても、高精度で温度制御できる反応装置を備えた遠方のリサイクル工場に輸送しなければならない。嵩高い廃ポリ乳酸製品の遠方への輸送は、エネルギー的にリサイクルをするだけの意義を失いかねないという問題がある。そのため、どこでも簡単にリサイクルできる技術、すなわち、ポリ乳酸製品の消費地近郊で簡単にリサイクルできる技術が求められている。
また、特許文献1の技術では、ポリ乳酸からラクチドへの熱分解反応時にアルコールを加えるが、このときの反応はアルコールが熱分解のイニシエーターの機能であることからアルコールの使用量はわずかであり、ポリ乳酸や触媒を溶解するだけの役割を果たさない。したがって、このときの熱分解反応は、ポリ乳酸の溶融温度以上の温度条件で起こるため、ラセミ化の進行を防ぐことが困難である。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、ポリ乳酸からラクチドを再生するリサイクル技術に関し、高精度で特殊な反応装置が不要で、ラセミ化を最小にできるラクチドの製造方法を提供することにある。
本発明者は、ポリ乳酸を熱分解してラクチドを生成させる際、特定の金属触媒と特定の溶媒とを用いたところ、従来より低温でかつ効率よい熱分解反応(解重合反応)を実現できることを見出し、本発明を完成させた。その知見は、熱分解反応時におけるポリ乳酸と金属触媒分子とが1分子同士で反応する分子触媒反応に起因するものであり、ポリ乳酸を原料としたラクチドの製造方法に適用することにより、ラセミ化を最小化することができたものと考えている。
上記課題を解決するための本発明に係るラクチドの製造方法は、反応容器内に、ポリ乳酸と、該ポリ乳酸に対して触媒反応する金属触媒と、前記ポリ乳酸及び前記金属触媒の両方を溶解できる溶媒とを投入する工程と、前記反応容器内の温度が110〜170℃の範囲になるように加熱してポリ乳酸からラクチドに解重合させる工程と、を含むことを特徴とする。
この発明によれば、ポリ乳酸及び金属触媒の両方を溶解することができる溶媒を反応容器内に投入することにより、ポリ乳酸と金属触媒とが1分子同士で反応する分子触媒反応とすることができる。こうした分子触媒反応により、160℃前後の低い温度でポリ乳酸を解重合してラクチドを製造することができる。従来、ポリ乳酸の解重合工程で用いられていた金属触媒は固体であり、そのため、固体表面でしか触媒反応が起こらず、反応効率を上げるため200℃以上の高い反応温度を必要としていた。本発明では、160℃前後の低い温度でポリ乳酸を解重合してラクチドを製造できるので、高精度の温度制御を要しない一般的な反応容器を用いることができる。その結果、ポリ乳酸からなるプラスチック製品を、高精度で温度制御できる反応装置を備えた遠方のリサイクル工場に輸送することを要さず、消費地近郊の化学工場でリサイクルすることが可能となる。
本発明に係るラクチドの製造方法は、前記解重合する工程において、前記反応容器内を減圧することが好ましい。この発明によれば、例えば10〜1000Paの範囲の減圧下で解重合を行うことにより、ラクチドを選択的に効率よく単離できる。
本発明に係るラクチドの製造方法によれば、ポリ乳酸及び金属触媒の両方を溶解することができる溶媒を用いることにより、金属触媒を分子触媒反応下での触媒として作用させることができる。その結果、160℃前後の低い温度で、ポリ乳酸からラクチドに変換させることができる。この反応を所定の減圧条件下で行えば、ラクチドを選択的かつ効率的に製造することができる。
本発明では、工業的に一般的に用いられている汎用性の反応容器を用いることができるので、ポリ乳酸製品の消費地近郊の化学工場であっても、ポリ乳酸を原料としてラクチドを製造することが可能となり、そのラクチドを利用したリサイクルを低コストかつ容易に行うことができる。
本発明に係るラクチドの製造方法(ケミカルリサイクル)についての説明図である。 実験に用いた反応装置である。 実験1の結果を示すグラフである。
以下、本発明に係るラクチドの製造方法について詳しく説明する。本発明で言う「ラクチドの製造方法」は、ポリ乳酸からその直接原料であるラクチドにリサイクルする方法、又は、ポリ乳酸をリサイクルしてラクチドに変換する方法、と言い換えることもできる。なお、本発明は以下の実施形態及び実験例に限定されるものではない。
図1は、本発明に係るラクチドの製造方法(ケミカルリサイクル)についての説明図である。一般的なポリ乳酸の製造は、図1に示すように、植物から得たデンプンを乳酸水溶液とし、その乳酸水溶液から乳酸オリゴマーを得た後、その乳酸オリゴマーからラクチドを合成し、そのラクチドからポリ乳酸を合成する方法によって行われている。本発明では、ポリ乳酸を化学的にリサイクル(ケミカルリサイクル)してラクチドを製造する方法を提供したものである。
図2は、実験に用いた反応装置1である。この反応装置1は、攪拌子6の入った反応容器5と、反応容器5を加熱する油浴2と、気化した生成物(ラクチド13)を捕集するための冷却管(トラップ)4と、冷却浴7と、減圧装置3と、分留用曲管9とを備えている。反応容器5と冷却管(トラップ)4とは、分留用曲管9で連結され、その分留用曲管9には、リボンヒーター8を巻きつけて保温している。反応容器5内には、ポリ乳酸と金属触媒と溶媒が投入される。その反応容器5内では、ポリ乳酸11の一部又は全部が溶媒に溶解し、金属触媒の一部又は全部が溶媒に溶解している。
本発明に係るラクチドの製造方法は、図1及び図2に示すように、反応容器5内に、ポリ乳酸11と、ポリ乳酸11(12a)に対して触媒反応する金属触媒12bと、ポリ乳酸11(12a)及び金属触媒12bの両方を溶解できる溶媒12cとを投入する工程と、反応容器5内の温度が110〜170℃の範囲になるように加熱してポリ乳酸11からラクチド13に解重合させる工程と、を含む。
[反応容器への投入工程]
反応容器への投入工程では、反応容器内に、ポリ乳酸と金属触媒と溶媒を投入する。
(ポリ乳酸)
ポリ乳酸は、図1中の化学式で表されるポリマーであるが、リサイクル対象として回収されたポリ乳酸からなる使用済みのプラスチック製品(ポリ乳酸製品)においては、主成分として乳酸エステル構造を基本ユニットとして含む乳酸ポリマー(単独重合体又は共重合体)を意味する。また、ポリ乳酸製品には、そうした乳酸ポリマーと、その他の樹脂成分又は各種添加剤等との混合物であってもよい。混合物の場合には、乳酸ポリマー成分が20重量%以上であればよく、本発明を適用してラクチドの製造が可能である。
また、ポリ乳酸は、特許文献2と同様、乳酸エステル構造を基本ユニットとし、特にL−又はD−乳酸エステル構造ユニットが全ユニットの90%以上、好ましくは95%以上、更に好ましくは98%以上のポリマーであってもよい。L−又はD−乳酸エステル構造ユニット以外の成分についても同様、ラクチドと共重合可能なラクトン類、環状エーテル類、環状アミド類、環状酸無水物類等に由来する共重合成分ユニットが存在することが可能である。好ましい共重合成分についても同様、カプロラクトン、バレロラクトン、β−ブチロラクトン、パラジオキサノン等のラクトン類;エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、フェニルグリシジルエーテル、オキセタン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル類;ε−カプロラクタム等の環状アミド類;琥珀酸無水物、アジピン酸無水物等の環状酸無水物類等を挙げることができる。
(金属触媒)
金属触媒は、上述のポリ乳酸に対して触媒反応するものであり、かつ、後述する溶媒で一部又は全部が溶解するものである。具体的には、ジルコニウムアセチルアセトナート:Zr(acac)、オクチル酸すず:Sn(Oct)、ジブチルすずオキシド:OSn(C、モノブチルすずオキシド:OSn(C)OH、テトラオクタデシルオルトチタネート:Ti(Ostea)、コバルトアセチルアセトナート:Co(acac)、亜鉛アセチルアセトナート:Zn(acac)、ナフテン酸亜鉛:Zn(naph)、ステアリン酸亜鉛:Zn(stea)、等を挙げることができる。本発明では、これらの金属触媒から選ばれるいずれか1又は2以上のものを反応容器5内に投入する。
なお、ランタンアセチルアセトナート:La(acac)、炭酸カリウム:KCO等の金属触媒は、後述の実験結果からも分かるように、触媒効果は有するものの、異性化しやすい。酸化マグネシウム:MgO、水酸化アルミニウム:Al(OH)等の溶解度の低い金属触媒は、触媒効果が低い。
(溶媒)
溶媒は、上記のポリ乳酸及び金属触媒の両方を溶解することができるものを用いる。溶媒の具体的な適用は、用いる金属触媒を溶解可能なものを選択して用いる。溶媒の溶解能は、ポリ乳酸の一部又は全部を溶解するとともに、金属触媒の一部又は全部を溶解する。溶媒によるポリ乳酸の溶解は、熱を加えて解重合が起こるタイミングで少なくともその一部が溶媒中に溶解していればよい。溶解したポリ乳酸は、同時に溶媒に溶解している金属触媒との間で分子触媒反応が起こり、低温でラセミ化を抑制した解重合が起こる。
溶媒としては、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(TritonX−100)、ポリオキシエチレンアルキルアミン等のポリエチレングリコール又はその誘導体を用いることができる。
ポリエチレングリコールとしては、ポリエチレングリコール2000、ポリエチレングリコール1000、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600等を用いることができる。なお、数字は重量平均分子量である。
ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、エマルゲン103、エマルゲン104P、エマルゲン105、エマルゲン106、エマルゲン108、エマルゲン109P、エマルゲン120、エマルゲン123P、エマルゲン147、エマルゲン150、エマルゲン130K(以上、花王株式会社の商品名)等のポリオキシエチレンラウリルエーテル;エマルゲン210P、エマルゲン220(以上、花王株式会社の商品名)等のポリオキシエチレンセチルエーテル;エマルゲン220、エマルゲン306P(以上、花王株式会社の商品名)等のポリオキシエチレンステアリルエーテルを挙げることができる。その他のポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、エマルゲン1108、エマルゲン1118S−70、エマルゲンLS−106、エマルゲンLS−110、エマルゲンLS−114、エマルゲンMS−110、エマルゲン705,エマルゲン707、エマルゲン709等(以上、花王株式会社の商品名)等を挙げることができる
また、溶媒として、ポリオキシエチレンアルキルアミンを用いることができる。ポリオキシエチレンアルキルアミンとしては、例えば、エチレンオキサイドの付加モル数が8以上、好ましくは8〜20で、アルキル部分の炭素数がC12〜C20であるものが好ましい。また、その全アミン価が90以下のものが好ましい。このようなポリオキシエチレンアルキルアミンとしては、例えば下記式(1)で示されるポリオキシエチレンアルキルアミンを挙げることができる。
Figure 0005739165
式中Rは、C12〜C20のアルキル基を示し、エチレンオキサイドの付加モル数x+yは8以上を示す。具体的には、アミート308、アミート320、アミート110という商品名で花王株式会社より市販されている。
本発明では、これらの溶媒から選ばれるいずれか1又は2以上のものを反応容器5内に投入する。後述の実験例では、TritonX−100(ユニオンカーバイド社の商品名)、ポリエチレングリコール2000、ポリエチレングリコール1000、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600、エマルゲン106、エマルゲン109P、エマルゲン120、エマルゲンPP−290、アミート308を用いた。
本発明では、ポリ乳酸及び金属触媒の両方を溶解することができる溶媒を反応容器内に投入することにより、ポリ乳酸と金属触媒とが1分子同士で反応する分子触媒反応とすることができる。従来は、ポリ乳酸の解重合工程で用いられていた金属触媒が固体であり、そのため、固体表面でしか触媒反応(不均一系触媒反応)が起こらないが、本発明では、溶媒に金属触媒が溶解して錯体状態で媒体中に溶解しているので、同じく溶媒中に溶解しているポリ乳酸と分子触媒反応(均一触媒反応)を起こす。その結果、投入する触媒量を少なくすることができるとともに、後述する熱分解工程での反応温度を下げることができる。
以上説明したポリ乳酸と金属触媒と溶媒それぞれの反応容器への投入量は特に限定されないが、溶媒種に対するポリ乳酸及び金属触媒の溶解能によって選択される。溶媒量が多くなれば溶解するポリ乳酸量は多くなり、短時間で収率よくラクチドを得ることができる。さらに触媒量も多くすれば短時間でラクチドを高収率で得ることができる。一方、溶媒量や触媒量を低減した場合であっても、反応時間を延長することでラクチドを収率よく得ることができる。しかし、その間の消費エネルギー等と溶媒や触媒のコスト等とから、最適な使用量を決めることが望ましい。
[解重合工程]
解重合工程は、ポリ乳酸、金属触媒及び溶媒を反応容器内に投入した後の工程であり、反応容器内の温度が110〜170℃の範囲になるように加熱してポリ乳酸からラクチドに解重合させる工程である。
解重合工程での温度が110℃未満の場合は、反応速度が遅くなり、短時間の反応では収率が低くなる。一方、解重合工程での温度が170℃を超える場合は、溶媒の熱分解や溶媒と触媒との反応により収率が低くなる。解重合工程での温度の好ましい範囲は、140〜170℃の範囲である。この範囲で高い収率でラクチドを生成できた。
この解重合工程において、反応容器内を減圧することが好ましい。減圧条件としては、10〜1000Paの範囲が好ましく、100〜300Paの範囲がより好ましい。この範囲の減圧下で解重合を行うことにより、ラクチドを選択的に効率よく単離できる。圧力が1000Paより大きいと処理効率が低下し、圧力を10Paより下げても無用に高価な設備を必要とするだけで意味がない。
以上説明したように、本発明に係るラクチドの製造方法は、ポリ乳酸及び金属触媒の両方を溶解することができる溶媒を反応容器内に投入することにより、ポリ乳酸と金属触媒とが1分子同士で反応する分子触媒反応とすることができる。こうした分子触媒反応により、160℃前後の低い温度でポリ乳酸を解重合してラクチドを生成させることができる。この反応を所定の減圧条件下で行えば、ラクチドをより選択的かつ効率的に単離できる。
本発明では、工業的に一般的に用いられている汎用性の反応容器を用いることができるので、ポリ乳酸製品の消費地近郊の化学工場であっても、ラクチドの製造が可能となり、リサイクルを低コストかつ容易に行うことができる。
以下の実験によって本発明をさらに詳しく説明する。以下の実験では、本発明を構成する各構成要素を変化させたときの収率とラセミ化の程度について評価した。反応は、図2に示す反応装置で行った。反応生成物は、H−NMR(400MHz)及びガスクロマトグラフィー(CP−CYCLODEX B 236M、内径0.25mm、長さ50m、膜厚0.25μm)により、定性、定量及び異性体生成比を算出した。
[実験1/反応温度の検討]
反応温度による収率の変化について検討した。反応温度の検討は、ポリ乳酸(PLLA 0.50g:0.1×2×10mmの樹脂チップ)、触媒としてジルコニウムアセチルアセトナート(0.06g)、溶媒としてTritonX−100(0.2g、ユニオンカーバイド社の商品名)を用いて行った。これらを、撹拌子を加えた50mLのなす型フラスコに投入した。そのなす型フラスコとトラップとを、リボンヒーターを巻きつけた分留用曲管で接続し、所定温度のオイルバスで加熱撹拌しながら1Torr(133Pa)に減圧し、所定の温度で15分間加熱した。生成したラクチドを、冷却したトラップに集めた。その結果を表1と図3に示す。
Figure 0005739165
[実験2/触媒種の検討]
触媒種による収率の違いについて検討した。触媒種の検討は、ポリ乳酸(PLLA 2.0g:0.1×2×10mmの樹脂チップ)、表2に示す触媒(1mol%:ここでのmol%は、ポリ乳酸の繰り返し単位をポリ乳酸の分子量としてポリ乳酸のモル数を算出し、ポリ乳酸のモル数に対する割合を示している。以下同じ。)、溶媒としてエマルゲン106(0.8g)を用いて行った。これらを、撹拌子を加えた50mLのなす型フラスコに投入した。そのなす型フラスコとトラップとを、リボンヒーターを巻きつけた分留用曲管で接続し、160℃のオイルバスで加熱撹拌しながら1Torr(133Pa)に減圧し、1時間加熱した。生成したラクチドを、冷却したトラップに集めた。その結果を表2に示す。
Figure 0005739165
なお、ここで生成したラクチドの異性体生成比は、No.2−1〜2−15まではLL体:DD体:meso体=99:0:1であり、No.2−16はLL体:DD体:meso体=55:23:22であり、No.2−17はLL体:DD体:meso体=52:24:24であり、No.2−18はLL体:DD体:meso体=93:2:5であった。
[実験3/溶媒種の検討]
溶媒種による収率の違いについて検討した。溶媒種の検討は、ポリ乳酸(PLLA 2.0g:0.1×2×10mmの樹脂チップ)、表3に示す触媒(1mol%)、表3に示す溶媒(0.8g)を用いて行った。これらを、撹拌子を加えた50mLのなす型フラスコに投入した。そのなす型フラスコとトラップとを、リボンヒーターを巻きつけた分留用曲管で接続し、160℃のオイルバスで加熱撹拌しながら1Torr(133Pa)に減圧し、1時間加熱した。生成したラクチドを、冷却したトラップに集めた。その結果を表3に示す。
Figure 0005739165
[実験4/溶媒量の検討]
溶媒量による収率の違いについて検討した。溶媒量の検討は、ポリ乳酸(PLLA 4.0g:0.1×2×10mmの樹脂チップ)、触媒としてオクチル酸スズ(0.25mol%)、溶媒として表4に示す量のエマルゲン106を用いて行った。これらを、撹拌子を加えた50mLのなす型フラスコに投入した。そのなす型フラスコとトラップとを、リボンヒーターを巻きつけた分留用曲管で接続し、160℃のオイルバスで加熱撹拌しながら1Torr(133Pa)に減圧し、1時間加熱した。生成したラクチドを、冷却したトラップに集めた。その結果を表4に示す。
Figure 0005739165
[実験5/触媒量の検討]
触媒量による収率の違いについて検討した。触媒量の検討は、ポリ乳酸(PLLA 4.0g:0.1×2×10mmの樹脂チップ)、触媒として表5に示す量のオクチル酸スズ、溶媒としてエマルゲン106(0.8g)を用いて行った。これらを、撹拌子を加えた50mLのなす型フラスコに投入した。そのなす型フラスコとトラップとを、リボンヒーターを巻きつけた分留用曲管で接続し、160℃のオイルバスで加熱撹拌しながら1Torr(133Pa)に減圧し、1時間加熱した。その結果を表5に示す。
Figure 0005739165
[実験6/反応時間の検討]
反応時間による収率の違いについて検討した。反応時間の検討は、ポリ乳酸(PLLA 4.0g:0.1×2×10mmの樹脂チップ)、触媒として表5に示す量のオクチル酸スズ(0.5mol%)、溶媒としてエマルゲン106(0.8g)を用いて行った。これらを、撹拌子を加えた50mLのなす型フラスコに投入した。そのなす型フラスコとトラップとを、リボンヒーターを巻きつけた分留用曲管で接続し、160℃のオイルバスで加熱撹拌しながら1Torr(133Pa)に減圧し、所定時間加熱した。その結果を表6に示す。
Figure 0005739165
以上のように、実験1〜実験6まで、各種の実験を行った。その結果、(1)反応温度の検討結果からは、浴温160℃で収率が最も高くなった。また、浴温160℃付近である浴温150〜180℃の範囲でも高い収率を得ることができることが分かった。(2)触媒種の検討結果からは、特にオクチル酸すずを用いた場合に高い収率が得られた。この理由は、溶媒への溶解度がこれらの中で最も高いことが一因であると考えられる。(3)溶媒種の検討結果からは、特にエマルゲン106を用いた場合に高い収率が得られた。この理由は、ポリ乳酸と触媒とをともに比較的よく溶解するためであると考えられる。(4)溶媒量の検討結果からは、特にエマルゲン106を多く用いた場合に高い収率が得られた。この理由はポリ乳酸の溶解量が多くなるためであると考えられる。(5)触媒量の検討結果からは、特にオクチル酸すずを0.5mol%以上用いた場合に短時間で高い収率が得られた。この理由は、溶媒に溶解したポリ乳酸と触媒が効率のよい分子触媒反応で解重合をおこした結果であると考えられる。(6)反応時間の検討結果からは、反応時間を延長しても触媒作用が衰えず、より高い収率となることがわかった。
本発明に係るラクチドの製造方法は、省エネルギーと二酸化炭素の排出減による環境問題に対して有効であり、プラスチック産業、プラスチックを利用する自動車産業、電気産業及び食品産業に利用できる。また、アジピン酸の製造、長鎖カルボン酸及び奇数長鎖カルボン酸の製造等の石油化学産業、医薬品中間体の製造、化粧品及び香料等の製造に有効であると考えられる。
1 反応装置
2 油浴
3 減圧装置
4 冷却管
5 反応容器
6 撹拌子
7 冷却浴
8 リボンヒーター
9 分留用曲管
11 ポリ乳酸
12 ポリ乳酸及び金属触媒が溶解した溶媒
12a 溶解したポリ乳酸
12b 溶解した金属触媒
12c 溶媒
13 ラクチド

Claims (2)

  1. 反応容器内に、ポリ乳酸と、該ポリ乳酸に対して触媒反応する金属触媒と、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとを投入する工程と、前記反応容器内の温度が110〜170℃の範囲になるように加熱してポリ乳酸からラクチドに解重合させる工程と、を含むことを特徴とする、ラクチドの製造方法。
  2. 前記解重合する工程において、前記反応容器内を減圧する、請求項1に記載のラクチドの製造方法。
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