JP5737288B2 - 溶融ガラスの減圧脱泡装置、溶融ガラスの製造方法、およびガラス製品の製造方法 - Google Patents

溶融ガラスの減圧脱泡装置、溶融ガラスの製造方法、およびガラス製品の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、溶融ガラスの減圧脱泡装置、その装置を用いた溶融ガラスの製造方法、およびガラス製品の製造方法に関する。
従来、溶解槽で溶融した溶融ガラスを成形装置で成形する前に、成形されたガラス製品の品質を向上させるために、溶融ガラス中の気泡を除去するために清澄工程が実施される。該清澄工程に用いられる方法として、減圧脱泡装置を用いて溶融ガラスを減圧脱泡する方法がある。
減圧脱泡装置は、溶解槽中の溶融ガラスを減圧脱泡して、次の処理槽に連続的に供給するプロセスに用いられるものである。減圧脱泡装置は、真空吸引されて内部が減圧状態に保持される減圧ハウジングを有する。減圧ハウジング内には、減圧脱泡槽がその長軸が水平方向に配向するように収納配置されている。減圧脱泡槽の下面の側端付近には、垂直方向に配向する上昇管および下降管が取り付けられている。上昇管および下降管は、その一部が減圧ハウジング内に収納配置されている。
上昇管は、減圧脱泡槽と連通しており、減圧脱泡前の溶融ガラスを溶解槽から上昇させて減圧脱泡槽に導入する導入手段である。下降管は、減圧脱泡槽に連通しており、減圧脱泡後の溶融ガラスを減圧脱泡槽から下降させて次の処理槽に導出する導出手段である。そして、減圧ハウジング内において、減圧脱泡槽、上昇管、および下降管、のそれぞれの周囲には、これらを断熱被覆する断熱用レンガなどの断熱壁が配設されている。
溶融ガラスは高温になるにつれて粘度が低くなるため、減圧脱泡槽内の溶融ガラスの温度が高温であれば、溶融ガラス内の気泡は該溶融ガラスの液面に浮上し易くでき、脱泡し易くできる。
しかし、減圧脱泡槽、上昇管、および下降管、のそれぞれの溶融ガラスの流路が耐火性炉材で構成されているとき、溶解槽中の溶融ガラスは、加熱されることなく減圧脱泡槽に導入されるため、減圧脱泡槽内の溶融ガラスの温度は低下し、脱泡し難くなる。
これを避けるため、特許文献1に開示された溶融ガラスの減圧脱泡装置では、以下に示す方法を行って、減圧脱泡槽内の溶融ガラスの温度低下を抑えている。減圧脱泡装置に溶融ガラスを導入する前に、減圧脱泡装置内を、上昇管および下降管、のそれぞれの下方に配置されたバーナによって燃焼された燃焼ガスで加熱する。減圧脱泡装置内を加熱後、上昇管および下降管、のそれぞれの下方からバーナを取り外し、減圧脱泡槽に溶融ガラスを導入する。減圧脱泡装置内を予め加熱することで、減圧脱泡槽に導入される溶融ガラスの温度低下を防止する。
特開平11−240727号公報
特許文献1に開示されているように、減圧脱泡装置内を予め加熱した後、該減圧脱泡槽内の溶融ガラスの温度は、該溶融ガラスの潜熱だけで維持される。しかしながら、減圧脱泡槽内の溶融ガラスの液面は雰囲気に晒されているため、その液面から放熱し、溶融ガラスの温度は低下し易くなる。また、減圧脱泡槽の周囲には断熱壁が配置されているが、溶融ガラスの温度を完全に維持することはできず、溶融ガラスの温度低下は避けられない。
さらに特許文献1に開示されているように、減圧脱泡槽内の溶融ガラスの温度低下を抑制するため、上昇管および下降管、のそれぞれの周囲に加熱装置を設置して溶融ガラスを加熱しているが、このような加熱装置では溶融ガラスの温度低下を抑制するには不十分である。
また、図1で、減圧脱泡槽14内の溶融ガラスGをバーナ等による燃焼ガスで加熱すると、排ガスによって減圧脱泡槽14内の減圧度が低下し、溶融ガラスGの脱泡がし難くなるため好ましくない。
減圧脱泡槽内の溶融ガラスの温度が低下すると、溶融ガラスの粘度は高くなり、該溶融ガラスの液面に浮上した気泡は破泡し難くなる。溶融ガラスの液面に浮上して破泡しなかった気泡は、溶融ガラスの液面にて泡層を形成し、溶融ガラスと共に次の処理槽に供給されるため、ガラス製品の品質が劣化する恐れがある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、減圧脱泡槽内の溶融ガラスの温度低下を防止し、溶融ガラス内の気泡を効率よく脱泡できる、溶融ガラスの減圧脱泡装置を提供することを目的とする。
本発明は、真空吸引されて内部が減圧される減圧ハウジングと、前記減圧ハウジング内に設けられ、溶融ガラスの減圧脱泡を行う減圧脱泡槽と、前記減圧脱泡槽に連通して設けられ、減圧脱泡前の溶融ガラスを吸引上昇させて前記減圧脱泡槽に導入する上昇管と、前記減圧脱泡槽に連通して設けられ、減圧脱泡後の溶融ガラスを前記減圧脱泡槽から下降させて導出する下降管と、を備える溶融ガラスの減圧脱泡装置であって、前記減圧脱泡槽内の溶融ガラスの液面よりも上方に、且つ、前記減圧脱泡槽の上壁の下面側に、通電加熱装置が設けられている溶融ガラスの減圧脱泡装置である。
また、本発明は、真空吸引されて内部が減圧される減圧ハウジングと、前記減圧ハウジング内に設けられ、溶融ガラスの減圧脱泡を行う減圧脱泡槽と、前記減圧脱泡槽に連通して設けられ、減圧脱泡前の溶融ガラスを吸引上昇させて前記減圧脱泡槽に導入する上昇管と、前記減圧脱泡槽に連通して設けられ、減圧脱泡後の溶融ガラスを前記減圧脱泡槽から下降させて導出する下降管と、を備える溶融ガラスの減圧脱泡装置であって、前記減圧脱泡槽内の溶融ガラスの液面よりも上方に、且つ、前記減圧脱泡槽の上壁の下面より下方に、通電加熱装置が設けられている溶融ガラスの減圧脱泡装置である。
また、本発明は、前記した溶融ガラスの減圧脱泡装置により溶融ガラスを脱泡処理する工程と、前記脱泡処理する工程の前にガラス原料を溶融する溶融工程とを含む溶融ガラスの製造方法である。
さらに、本発明は、前記した溶融ガラスの製造方法による溶融ガラスの製造工程と、前記溶融ガラスの製造工程よりも下流側で溶融ガラスを成形する成形工程と、成形後のガラスを徐冷する徐冷工程と、を含むガラス製品の製造方法である。
本発明に係る溶融ガラスの減圧脱泡装置によれば、減圧脱泡槽内の溶融ガラスの温度低下を防止し、溶融ガラス内の気泡を効率よく脱泡できる、溶融ガラスの減圧脱泡装置を提供することができる。また、気泡欠点の少ない高品質な溶融ガラス、およびガラス製品を提供することができる。
本発明の実施形態に係る溶融ガラスの減圧脱泡装置の側方断面図である。 図1の通電加熱装置50およびその周辺の拡大側方断面図である。 図2のA−A′線に沿った正面断面図である。 図2のB−B′線に沿った俯瞰断面図である。 図2のC−C′線に沿った正面断面図である。 加熱用部材同士の接合部の側方断面図である。 図7(A)、図7(B)、および図7(C)は、加熱用部材の断面形状の変形例を示す図である。 本発明に係る溶融ガラスの製造方法の工程の一例を示すフロー図である。 本発明に係るガラス製品の製造方法の工程の一例を示すフロー図である。
以下、本発明の溶融ガラスの減圧脱泡装置について、添付の図面に示される実施形態をもとに詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る溶融ガラスの減圧脱泡装置(以下、本発明の減圧脱泡装置という。)の概略側方断面図である。
図1に示す減圧脱泡装置10は、その内部が減圧状態に保持される減圧ハウジング12を有する。減圧ハウジング12は金属製であり、真空吸引して内部を減圧する吸引口12cが設けられている。
減圧ハウジング12内には、減圧脱泡槽14が収納配置されている。減圧脱泡槽14の上部には、減圧ハウジング12と連通する吸引孔14a,14bが設けられている。真空ポンプ(図示せず)を用いて、減圧ハウジング12を吸引口12cから真空吸引することによって、減圧脱泡槽14内は減圧状態に維持される。
減圧脱泡槽14の下面の側端付近には、垂直方向に配向する上昇管16の上端および下降管18の上端が連通して設けられている。上昇管16の下端および下降管18の下端は、それぞれ溶解槽20に連通する上流側ピット22および図示しない次の処理槽に連通する下流側ピット24の溶融ガラスG内に浸漬されている。上昇管16および下降管18は、その一部が減圧ハウジング12内に収納配置されている。
減圧ハウジング12内において、減圧脱泡槽14、上昇管16、および下降管18、のそれぞれの周囲には、これらを断熱被覆する断熱用レンガなどの断熱壁30が配設されている。この断熱壁30は、減圧脱泡槽14の真空吸引の支障とならないように、通気性を有する断熱材によって構成される。
減圧脱泡槽14内の溶融ガラスGの液面Fより上方に、且つ、減圧脱泡槽14の上壁14eの下面14cより下方には通電加熱装置50が配置されている。通電加熱装置50は、加熱用部材52と、減圧脱泡槽14の長手方向の加熱用部材52の両端に配置されている加熱用電極54と、から構成されている。図示した例は、減圧脱泡槽14の長手方向の当該加熱用部材52の両端、すなわち減圧脱泡槽14の上昇管16側、および下降管18側の上方に、対をなす加熱用電極52を設けた例であるが、減圧脱泡槽14の長手方向に伸びる当該加熱用部材を所定間隔に分割し、それぞれに通電用の電極を設けるようにしてもよい。前記加熱用部材52は、一端が加熱用部材52の上面に接続し、他端が減圧脱泡槽14の上壁に挟みこまれている吊金具56によって、該上壁から吊られている。
加熱用部材52と加熱用電極54とは電気的に接続しており、加熱用電極54は、減圧脱泡槽14、断熱壁30、および減圧ハウジング12を貫通して設けられている。減圧ハウジング12外に出ている加熱用電極54の端部は、外部電源(図示せず)と電気的に接続されており、外部電源によって加熱用部材52を通電加熱する。
減圧脱泡槽14内の加熱用部材52は、通電させることでその周辺に向かって放熱するため、減圧脱泡槽14内の溶融ガラスGは加熱される。これによって、加熱された溶融ガラスGの温度は上昇し、粘度が低下するため、溶融ガラスG内の気泡は脱泡し易くできる。
図2は図1の通電加熱装置50およびその周辺の拡大側方断面図、図3は図2のA−A′線に沿った正面断面図である。
加熱用部材52は、減圧脱泡槽14内の溶融ガラスGの液面Fに対向する全域に亘って設けられている。これによって、減圧脱泡槽14内の溶融ガラスG全体を斑なく加熱して、溶融ガラスGはその全域において脱泡し易くでき、気泡を含有した溶融ガラスGが減圧脱泡装置後の処理槽に流出することを抑制できる。
図3に示すように、加熱用部材52の減圧脱泡槽14の長手方向(図2の矢印Xの方向)から見た断面形状は、上方に凸状の円弧形状をしている。これによって、加熱用部材の強度が強くなり、高温環境下においても、自重によって撓む恐れがない。
また、減圧脱泡槽14内の溶融ガラスGは、減圧脱泡槽14の側壁14dを介して温度低下し易いため、溶融ガラスGの減圧脱泡槽14幅方向の温度分布は、中央部は高く、端部は低くなり易い。加熱用部材の断面形状が上方に凸状の形状であれば、前記端部の溶融ガラスGは加熱し易くでき、前記中央部の溶融ガラスGは加熱し難くなる。これによって、減圧脱泡槽14内の溶融ガラスGの前記幅方向の温度分布は均一になり、溶融ガラスGは、その全域において斑なく加熱され、脱泡し易くできる。
また、図3のように、加熱用部材52の幅方向の端部が、減圧脱泡槽14内よりも外側になる形状にし、かつ前記端部に対応する部位の減圧脱泡槽の側壁に排出口(図示せず)を設けることで、加熱用部材52の下面に付着した溶融ガラスGからの揮散物が、前記下面を伝って減圧脱泡槽14外に排出できる。
図4は図2のB−B′線に沿った俯瞰断面図である。
図2および図4に示すように、加熱用部材52の表面には、補強のためのリブ58が形成されている。これによって、加熱用部材52の強度が強くなり、加熱用部材52の自重による撓みを抑制できる。さらに、加熱用部材52を薄板化、軽量化できる。
また、加熱用部材52には開口部62が形成されている。さらに、開口部62の上方に、透視できる吸引孔14a、14bを設けることによって、加熱用部材52の上方から開口部62を通じて、減圧脱泡槽14内の溶融ガラスGの様子を観察できる。また、開口部62、および吸引孔14a、14bを通じて、減圧脱泡槽14内を減圧し易くでき、溶融ガラスG内の気泡を脱泡し易くできる。これによって、減圧脱泡槽14内を減圧し易くでき、溶融ガラスGが脱泡し易くできる。
開口部62両側方の加熱用部材52の厚さは、過発熱を抑制するため、開口部62が形成されていない加熱用部材52の厚さよりも厚くする。ここで開口部62両側方の加熱用部材52とは、図4における破線で囲まれた部分Mであって、開口部62縁から加熱用部材52幅方向縁までの加熱用部材52のことを指す。図3に示すように、開口部62が形成されていない加熱用部材52(以下、加熱用部材52Aという。)において、加熱用部材52Aの減圧脱泡槽14長手方向の断面積をSaとする。図5は、図2のC−C′線に沿った正面断面図である。図5に示すように、開口部62が形成されている加熱用部材52(以下、加熱用部材52Bという。)において、加熱用部材52Bの減圧脱泡槽14長手方向の断面積をSbとする。図5において、Sbは図示の左右の加熱用部材52の断面積の和である。
加熱用部材52A、52Bの板厚が同じとき、断面積Sa、Sbの大小関係はSa>Sbとなる。加熱用部材A、Bの板厚および断面積が上述の条件において、加熱用部材52A、52Bに同じ大きさの電流を流したとき、加熱用部材52Bの断面積Sbにおける電流密度は、加熱用部材52Aの断面積Saにおける電流密度よりも高くなる。したがって、加熱用部材52Bは加熱用部材52Aよりも発熱する、つまり熱の負荷が大きくなるため、加熱用部材Aよりも劣化し易くなる。加熱用部材Bの厚さを厚くして、SaとSbとの比Sb/Saを所定範囲内にすることで上記課題を解決できる。板厚が同一のまま開口部62の有無でSb/Saが0.8未満のとき、開口部62の存在する板厚を厚くしてSb/Saが0.8〜1.5、好ましくは0.9〜1.3となるように加熱用部材Bの板厚を厚くする。
図6は、加熱用部材52同士の接合部64の側方断面図である。図6に示すように、実施形態における加熱用部材52は複数の加熱用部材52で構成され、これらの加熱用部材52同士の接合部の側方断面形状は逆Y字状である。
減圧脱泡槽14のサイズが大きいとき、単数の加熱用部材52で構成された加熱用部材52では、加熱用部材52そのものを作製することが困難である。複数の加熱用部材52同士を接合して構成された加熱用部材52であれば、大サイズの加熱用部材52の作製は容易であり、大サイズの減圧脱泡槽に対応できる。
加熱用部材52の温度は、定常運転前の常温から定常運転時の高温まで広範囲に亘って上昇するため、温度上昇に伴って加熱用部材52は熱膨張する。複数の加熱用部材52を接合するとき、加熱用部材52の接合部64の形状が逆T字状の場合、熱膨張した加熱用部材52の膨張分の行き場が無くなり、加熱用部材52が破損する恐れがある。したがって、接合部64の形状を下部に隙間を有する逆Y字状にすることで、加熱用部材52が熱膨張しても、膨張分が隙間に収まるので、加熱用部材52が破損する恐れがない。
実施形態における吊金具56は、一端が接合部64の上端に接続され、他端が減圧脱泡槽14の上壁に固定されている。吊金具56を加熱用部材52の接合部64の上端に接続することで、加熱用部材52の撓みを抑制できる。また、高温環境下において、加熱用部材52は、その長手方向に向かって熱膨張するが、減圧脱泡槽14の上壁に固定された吊金具56を接続することで、熱膨張を抑制できる。
通電加熱装置50は、溶融ガラスGからの揮散物に対する耐腐食性、および減圧脱泡槽14内における高温耐性が必要であるため、白金または白金合金製であることが好ましく、白金ロジウム(Pt/Rh)合金であることがより好ましい。
以上、本発明における溶融ガラスの減圧脱泡装置について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良および変更を行ってもよいのはもちろんである。
例えば、減圧脱泡槽内の溶融ガラスの温度は、溶融ガラスGの物性値やガラス製品の品質に応じて決められる。
本発明における減圧脱泡槽、上昇管および下降管の形状は、少なくとも筒状管であれば特に限定されず、その断面形状は円状または角状とすることができる。
本発明における減圧脱泡槽、上昇管および下降管の少なくとも溶融ガラスと接する部分の材料は、溶融ガラスに対して耐食性のある耐火性炉材、例えば電鋳レンガで形成されると好ましい。上記耐火性炉材、特に電鋳レンガで形成することにより、一般の耐火性レンガと比べ高温での耐久性に優れ、該炉材成分から溶融ガラスへの溶出も最小限にできる。
本発明における加熱用部材は、減圧脱泡槽内の溶融ガラスGの液面Fに対向する全域に亘って設けられていることが好ましいが、減圧脱泡槽内の溶融ガラスGの液面Fに対向する全域に亘って設けられていなくてもよい。前者の構成が好ましいのは、この構成の場合に溶融ガラスの全面を均一にしやすいからである。このときの加熱用部材の長手方向のサイズおよび幅方向のサイズは、減圧脱泡槽のそれぞれのサイズと同じになる。ここで、減圧脱泡槽の長手方向(図2の矢印Xの方向)の長さLaのサイズは500mm〜20000mm、減圧脱泡槽の幅方向の長さWaのサイズは200mm〜2000mmであることが好ましい。加熱用部材の板厚は、加工と経済的理由から、好ましくは6mm以下、より好ましくは3mm以下、さらに好ましくは1.5mm以下である。また加工と強度との理由から、好ましくは0.6mm以上、より好ましくは0.8mm以上である。
本発明における加熱用部材の減圧脱泡槽の長手方向から見た断面形状は、上方に凸状の形状であってもよく、平板状であってもよいが、図3のような、加熱用部材の断面形状が上方に凸状の形状であることが好ましい。加熱用部材の強度が強くなり、さらに、減圧脱泡槽14内の溶融ガラスGの前記幅方向の温度分布を均一に加熱できるためである。
また、本発明における加熱用部材の減圧脱泡槽の長手方向から見た断面形状は、図3のような上方に凸状の円弧形状に限定されない。図7に加熱用部材の断面形状の変形例を示す。図7に示すように、上方に凸状の円弧形状以外の加熱用部材の断面形状として、(A)逆V字形状、(B)放射形状、および(C)逆台形状が例示される。
本発明における加熱用部材の表面には、リブが形成されていてもよく、形成されていなくてもよいが、リブが形成されていることが好ましい。加熱用部材の強度が強くできるためである。
本発明における加熱用部材には、開口部62が形成されていてもよく、形成されていなくてもよいが、形成されていることが好ましい。開口部62を通して、減圧脱泡槽内の溶融ガラスの様子を観察でき、さらに、減圧脱泡槽内を減圧し易くできるためである。開口部62の半径Φのサイズは、5mm〜300mmであることが好ましい。
本発明における加熱用部材は、単数の部材で構成されても複数の部材で構成されてもよい。減圧脱泡槽のサイズが大きく、単数の加熱用部材で構成された加熱用部材では対応し難いとき、加熱用部材は複数の加熱用部材で構成されていることが好ましい。
複数の加熱用部材同士の接合部において、隙間の幅Wbのサイズは、5mm〜50mmであることが好ましく、接合面の幅Wcのサイズは、5mm〜50mmであることが好ましく、隙間の高さHのサイズは、10mm〜100mmであることが好ましく、ピッチPのサイズは、200mm〜2000mmであることが好ましい。
なお、本発明の通電加熱装置は、減圧脱泡槽内の溶融ガラスの液面よりも上方に、且つ、前記減圧脱泡槽の上壁14eの下面側に設けられていればよく、前述した減圧脱泡槽内の溶融ガラスの液面より上方に、且つ、減圧脱泡槽の上壁14eの下面より下方に配置される態様に限定されない。すなわち、本発明での減圧脱泡槽の上壁の下面側とは、上壁の下面および上壁下面より下方を含む。例えば、通電加熱装置が、減圧脱泡槽の上壁の下面に形成され、加熱用部材が減圧脱泡槽の上壁の下面に形成されていてもよい。より具体的には、例えば、減圧脱泡槽の上壁の下面にそのまま加熱用部材としてヒータを設置してもよい。また、減圧脱泡槽の上壁の下面に凹部を設けて、そこに加熱用部材としてヒータを埋設してもよい。
次に、本発明の溶融ガラスの製造方法について説明する。図8は、本発明の溶融ガラスの製造方法の一実施形態のフロー図である。本発明の溶融ガラスの製造方法は、前述の本発明の溶融ガラスの減圧脱泡装置を用いることを特徴とする。一例として、前述の減圧脱泡装置の前段の溶融手段(溶解槽)により溶融ガラスを溶融して溶融ガラスを製造する溶融工程S1と、前述の溶融ガラスの減圧脱泡装置により溶融ガラスを減圧脱泡処理する脱泡工程S2と、溶融ガラスS3を得る溶融ガラスの製造方法である。前記脱泡工程S2においては、減圧脱泡槽の上壁の下面側、あるいは減圧脱泡槽の上壁の下面より下方に設けられた通電加熱装置を通電加熱し、溶融ガラスの温度低下を防止して、溶融ガラスを所定温度に維持、制御する。本発明の溶融ガラスの製造方法は、前述した溶融ガラスの減圧脱泡装置を利用することの他は、公知技術の範囲である。たとえば、溶融手段は、所望の組成になるように調整したガラス原料を溶融槽に投入し、ガラスの種類に応じた所定の温度、たとえば、建築用や車両用等のソーダライムガラスの場合、約1400〜1600℃に加熱してガラス原料を溶融して溶融ガラスを得る。
次に、本発明のガラス製品の製造方法について説明する。図9は、本発明のガラス製品の製造方法の一実施形態のフロー図である。本発明のガラス製品の製造方法は、前述の溶融ガラスの製造方法を用いることを特徴とする。本発明のガラス製品の製造方法は、一例として、前述の溶融ガラスの製造方法による溶融ガラスの製造工程K1と、前述の溶融ガラスの製造工程K1よりも下流側で溶融ガラスを成形する成形工程K2と、その後工程において溶融ガラスを徐冷する徐冷工程K3と、徐冷後のガラスを切断する切断工程K4と、ガラス製品K5を得るガラス製品の製造方法である。前記製造工程K1においては、減圧脱泡槽の上壁の下面側、あるいは減圧脱泡槽の上壁の下面より下方に設けられた通電加熱装置を通電加熱し、溶融ガラスの温度低下を防止して、溶融ガラスを所定温度に維持、制御する。
本発明のガラス製品の製造方法は、前述した溶融ガラスの製造方法を利用することの他は、公知技術の範囲である。たとえば、成形工程としては、フロート法、フュージョン法またはダウンロード法などが挙げられる。前記の中でもフロート法のためのフロートバスを用いた成形手段がガラス薄板からガラス厚板までの広範囲の厚さの高品質なガラス板を大量に製造できる理由から好ましい。たとえば、徐冷工程としては、成形後のガラスの温度を徐々に下げるための機構を備えた徐冷炉によって一般に行われる。徐々に温度を下げる機構は、燃焼ガスまたは電気ヒータにより、その出力が制御された熱量を、炉内の必要位置に供給して成形後のガラスを徐冷する。これによって、成形後のガラスに内在する残留応力を無くすることができる。図9では、本発明のガラス製品の製造方法の構成要素である溶融工程、および成形工程ならびに徐冷工程に加えて、さらに必要に応じて用いる切断工程、その他の後工程も示している。
本発明の溶融ガラスの減圧脱泡装置は、気泡が少ない溶融ガラスを製造できるため、気泡欠点が少ない高品質なガラス製品の製造装置に有用である。
なお、2010年5月19日に出願された日本特許出願2010−115450号の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の開示として取り入れるものである。
10 減圧脱泡装置
12 減圧ハウジング
12c 吸引口
14 減圧脱泡槽
14a,14b 吸引孔
14c 減圧脱泡槽上壁下面
14d 減圧脱泡槽側壁
14e 減圧脱泡槽上壁
16 上昇管
18 下降管
20 溶解槽
22 上流側ピット
24 下流側ピット
30 断熱壁
50 通電加熱装置
52、52A、 52B 加熱用部材
Sa、Sb 断面積
54 加熱用電極
56 吊金具
58 リブ
62 開口部
64 接合部

Claims (16)

  1. 真空吸引されて内部が減圧される減圧ハウジングと、
    前記減圧ハウジング内に設けられ、溶融ガラスの減圧脱泡を行う減圧脱泡槽と、
    前記減圧脱泡槽に連通して設けられ、減圧脱泡前の溶融ガラスを吸引上昇させて前記減圧脱泡槽に導入する上昇管と、
    前記減圧脱泡槽に連通して設けられ、減圧脱泡後の溶融ガラスを前記減圧脱泡槽から下降させて導出する下降管と、を備える溶融ガラスの減圧脱泡装置であって、
    前記減圧脱泡槽内の溶融ガラスの液面よりも上方に、且つ、前記減圧脱泡槽の上壁の前記溶融ガラスの液面に対向する下面側の少なくともその一部に、面状の、溶融ガラスを直接加熱可能な加熱用部材と、前記加熱用部材の両端に設けられている加熱用電極と、で構成される通電加熱装置が設けられている溶融ガラスの減圧脱泡装置。
  2. 真空吸引されて内部が減圧される減圧ハウジングと、
    前記減圧ハウジング内に設けられ、溶融ガラスの減圧脱泡を行う減圧脱泡槽と、
    前記減圧脱泡槽に連通して設けられ、減圧脱泡前の溶融ガラスを吸引上昇させて前記減圧脱泡槽に導入する上昇管と、
    前記減圧脱泡槽に連通して設けられ、減圧脱泡後の溶融ガラスを前記減圧脱泡槽から下降させて導出する下降管と、を備える溶融ガラスの減圧脱泡装置であって、
    前記減圧脱泡槽内の溶融ガラスの液面よりも上方に、且つ、前記減圧脱泡槽の上壁の下面より下方に、前記溶融ガラスの液面の少なくとも一部に対向する、面状の、溶融ガラスを直接加熱可能な加熱用部材と、前記加熱用部材の両端に設けられている加熱用電極と、で構成される通電加熱装置が設けられている溶融ガラスの減圧脱泡装置。
  3. 前記加熱用部材が、前記上壁から吊られている請求項2に記載の溶融ガラスの減圧脱泡装置
  4. 前記減圧脱泡槽の少なくとも溶融ガラスと接する部分は、耐火性炉材で形成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の溶融ガラスの減圧脱泡装置
  5. 前記通電加熱装置が、白金または白金合金製である請求項1〜4のいずれか一項に記載の溶融ガラスの減圧脱泡装置
  6. 前記加熱用部材は、前記溶融ガラスの液面に対向する全域に亘って設けられている請求項1〜5のいずれか一項に記載の溶融ガラスの減圧脱泡装置
  7. 前記加熱用部材は、前記減圧脱泡槽の長手方向から見た断面形状が上方に凸状である請求項1〜6のいずれか一項に記載の溶融ガラスの減圧脱泡装置
  8. 前記加熱用部材は、表面にリブが形成されている請求項1〜7のいずれか一項に記載の溶融ガラスの減圧脱泡装置
  9. 前記加熱用部材は、開口部が形成されている部材である請求項1〜8のいずれか一項に記載の溶融ガラスの減圧脱泡装置
  10. 前記加熱用部材は、開口部が該加熱用部材を略上下に貫通して形成されている部材である請求項9に記載の溶融ガラスの減圧脱泡装置
  11. 前記加熱用部材を複数有し、前記加熱用部材同士の接合部の側方断面形状が逆Y字状である請求項1〜10のいずれか一項に記載の溶融ガラスの減圧脱泡装置
  12. 請求項1に記載の溶融ガラスの減圧脱泡装置により溶融ガラスを脱泡処理する工程と、前記脱泡処理する工程の前にガラス原料を溶融する溶融工程とを含む溶融ガラスの製造方法
  13. 前記脱泡処理する工程において、減圧脱泡槽の上壁の下面側に設けられた通電加熱装置を通電加熱し、溶融ガラスを所定温度に制御する請求項12に記載の溶融ガラスの製造方法
  14. 請求項2に記載の溶融ガラスの減圧脱泡装置により溶融ガラスを脱泡処理する工程と、前記脱泡処理する工程の前にガラス原料を溶融する溶融工程とを含む溶融ガラスの製造方法
  15. 前記脱泡処理する工程において、減圧脱泡槽の上壁の下面より下方に設けられた通電加熱装置を通電加熱し、溶融ガラスを所定温度に制御する請求項14に記載の溶融ガラスの製造方法
  16. 請求項12〜15のいずれか一項に記載の溶融ガラスの製造方法による溶融ガラスの製造工程と、前記溶融ガラスの製造工程よりも下流側で溶融ガラスを成形する成形工程と、成形後のガラスを徐冷する徐冷工程と、を含むガラス製品の製造方法
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