以下に、本発明の実施形態にかかる車両制御装置につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
(第1実施形態)
図1から図3を参照して、第1実施形態について説明する。本実施形態は、車両制御装置に関する。図1は、本実施形態の学習制御の動作を示すフローチャート、図2は、実施形態の車両制御装置が搭載されたハイブリッド車両を示す図である。
本実施形態に係るハイブリッド車両100は、同期装置40を有する常時噛合い式ギヤと摩擦式のクラッチ5とを備える。ハイブリッド車両100の車両制御装置1−1は、同期装置40の同期開始点(ボーク点)の学習を行う。従来、シフトチェンジ時にボーク点学習が行われていたが、この場合、ボーク点学習の機会がシフトチェンジ時に限られる。本実施形態の車両制御装置1−1は、EV走行時にボーク点学習を行う。これにより、シフトチェンジ時に限定されずに任意のタイミングで学習制御を実行可能となり、学習機会を適切に確保することができる。また、EV走行時に学習を行うことで、シフトチェンジ時よりもシフトストロークを緩やかに動作させて高精度でボーク点を学習することができる。
本実施形態は、下記の構成を有することを前提としている。
(1)モータ(トランスミッション出力軸に接続されているもの。ただし、入力軸への接続やニュートラル等の切替えが可能であってもよい)。
(2)トランスミッション入力軸の回転を検出できるセンサ。
(3)クラッチ操作を自動的に行う機構とアクチュエータ。
(4)シフト操作を自動的に行う機構とアクチュエータ。
図2において、符号100は、本実施形態に係る車両制御装置1−1が搭載されたハイブリッド車両を示す。車両制御装置1−1は、エンジン1、変速機2、モータジェネレータ3、クラッチ5およびECU30を備える。
エンジン1は、ハイブリッド車両100の動力源であり、燃料の燃焼エネルギーをクランクシャフト11の回転運動に変換して出力する。本実施形態のエンジン1は、第一動力源に対応する。
変速機2は、自動制御式マニュアルトランスミッション(AMT;Automated Manual Transmission)である。変速機2は、常時噛合い式の変速機であり、アクチュエータによって変速操作(ギヤ段の切り替え)が自動的に行われる。変速機2は、入力軸2A、出力軸2B、相互に変速比が異なる複数のギヤ対(第一ギヤ対21,第二ギヤ対22,第三ギヤ対23,第四ギヤ対24)および同期装置40を有する。各ギヤ対21,22,23,24は、入力軸2Aの回転をそれぞれ異なる変速比で出力軸2Bに伝達する。入力軸2Aは、クラッチ5を介してエンジン1のクランクシャフト11に接続されている。
各ギヤ対21,22,23,24は、入力軸2Aに配置された入力ギヤ21a,22a,23a,24aと、出力ギヤ21b,22b,23b,24bとを有している。入力ギヤ21a,22a,23a,24aは、入力軸2Aによって入力軸2Aに対して相対回転自在に支持されている。一方、出力ギヤ21b,22b,23b,24bは、出力軸2Bに対して相対回転不能に連結されており、出力軸2Bと一体回転する。各ギヤ対21,22,23,24は、常時噛み合っており、同期装置40によって、入力軸2Aと出力軸2Bとの間で動力を伝達する動力伝達状態と、入力軸2Aと出力軸2Bとの間で動力を伝達しない非伝達状態とに切り替えられる。
同期装置40は、シンクロメッシュ機構41,42およびシフト作動機構43を備える。シンクロメッシュ機構41は、入力軸2Aの回転と、第一ギヤ対21の入力ギヤ21aあるいは第二ギヤ対22の入力ギヤ22aのいずれか一方の回転と、を同期させるものである。シンクロメッシュ機構41は、ハブ44およびスリーブ45を有する。ハブ44およびスリーブ45は、軸方向における第一ギヤ対21と第二ギヤ対22との間に配置されている。ハブ44は、入力軸2Aに対して相対回転不能に連結されている。ハブ44は、例えば、入力軸2Aに対してスプライン嵌合している。スリーブ45は、ハブ44の外周側に嵌合している。スリーブ45は、ハブ44に対して相対回転不能かつ軸方向に相対移動可能である。つまり、ハブ44およびスリーブ45は、入力軸2Aと一体回転する回転部材である。
シンクロメッシュ機構42は、シンクロメッシュ機構41のハブ44およびスリーブ45と同様のハブ46およびスリーブ47を有している。ハブ46およびスリーブ47は、軸方向における第三ギヤ対23と第四ギヤ対24との間に配置されている。シンクロメッシュ機構42は、入力軸2Aの回転と、第三ギヤ対23の入力ギヤ23aあるいは第四ギヤ対24の入力ギヤ24aのいずれか一方の回転と、を同期させるものである。
シフト作動機構43は、シンクロメッシュ機構41、42を作動させて変速を行うものである。シフト作動機構43は、シフトフォークシャフト49,51、シフトフォーク48,50およびシフトアクチュエータ52を有している。シフトアクチュエータ52は、油圧等によって発生させる力によりシフトフォークシャフト49,51を軸方向に進退させる。シフトアクチュエータ52は、例えば、シフトフォークシャフト49,51にそれぞれ接続されたピストンロッドと、シリンダとを有し、シリンダの油室に供給される油圧によってピストンロッドと共にシフトフォークシャフト49,51を軸方向に進退させるものとすることができる。
シフトアクチュエータ52は、軸方向におけるシフトフォークシャフト49,51の進退量(シフトストローク)を任意に制御可能である。同期装置40は、シフトアクチュエータ52のピストンロッドのストロークを検出するシフトストロークセンサを有する。シフトアクチュエータ52は、シフトストロークセンサの検出結果に基づいてシフトフォークシャフト49,51のシフトストロークを取得することができる。
シンクロメッシュ機構41のスリーブ45は、シフトフォーク48およびシフトフォークシャフト49を介してシフトアクチュエータ52のピストンロッドと接続されている。また、シンクロメッシュ機構42のスリーブ47は、シフトフォーク50およびシフトフォークシャフト51を介してシフトアクチュエータ52のピストンロッドと接続されている。シフトアクチュエータ52は、シフトフォークシャフト49,51のいずれか一方を選択的に作動させることができる。
シフトアクチュエータ52は、第一ギヤ対21のギヤ段(以下、「第一ギヤ段」とも記載する。)に変速する場合、シフトフォークシャフト49を第一ギヤ対21に向けて軸方向に移動させ、シフトフォークシャフト49およびシフトフォーク48を介してスリーブ45を第一ギヤ対21に向けて移動させる。スリーブ45が第一ギヤ対21の入力ギヤ21aと係合すると、ハブ44およびスリーブ45を介して入力ギヤ21aと入力軸2Aとが動力を伝達することができる。
スリーブ45と入力ギヤ21aとの間には、シンクロナイザリングが介在しており、スリーブ45が入力ギヤ21aに向けて移動すると、シンクロナイザリングによってスリーブ45の回転と入力ギヤ21aの回転とが同期される。シンクロナイザリングは、スリーブ45によって押圧されて入力ギヤ21aに対して摩擦係合することで、スリーブ45と入力ギヤ21aとを接続する。シンクロナイザリングと入力ギヤ21aとが摩擦係合し、動力の伝達を開始することで、入力軸2Aの回転と出力軸2Bの回転との同期が開始される。スリーブ45による押圧力が増加するほど同期が進行し、シンクロナイザリングと入力ギヤ21aの回転数が一致することで同期が完了する。このとき、入力軸2Aの回転数と出力軸2Bの回転数とが第一ギヤ対21の変速比に応じた回転比となる。
回転の同期が完了すると、スリーブ45に形成されたギヤと入力ギヤ21aのクラッチギヤとが噛合い、変速が完了する。このように、同期装置40は、第一ギヤ対21に係合して第一ギヤ対21の変速比で入力軸2Aの回転と出力軸2Bの回転とを同期させることができる。
シフトアクチュエータ52は、スリーブ45が第一ギヤ対21に係合している第一ギヤ段から、変速機2をニュートラルとする場合や、他のギヤ段に変速する場合、シフト抜きを行う。シフトアクチュエータ52は、シフトフォークシャフト49を第二ギヤ対22に向けて移動させてスリーブ45と入力ギヤ21aとを離間させることで、スリーブ45と入力ギヤ21aとの係合を解放させる。
第二ギヤ対22のギヤ段(第二ギヤ段)に変速する場合、シフトアクチュエータ52は、シフトフォークシャフト49を第二ギヤ対22に向けて移動させる。入力ギヤ22aとスリーブ45との回転が同期されてスリーブ45のギヤと入力ギヤ22aのクラッチギヤとが噛合うまでの動作や、第二ギヤ段からのシフト抜きの動作は、第一ギヤ対21の場合と同様である。
また、シフトアクチュエータ52は、シフトフォークシャフト51を軸方向に移動させることにより、第三ギヤ対23のギヤ段(第三ギヤ段)や第四ギヤ対24のギヤ段(第四ギヤ段)に変速することや、第三ギヤ段や第四ギヤ段からのシフト抜きを行うことができる。シフトアクチュエータ52は、スリーブ45を第一ギヤ対21および第二ギヤ対22のいずれとも係合させない中立状態とし、かつスリーブ47を第三ギヤ対23および第四ギヤ対24のいずれとも係合させない中立状態とすることで、変速機2をニュートラルとすることができる。このように、同期装置40は、複数のギヤ対21,22,23,24のいずれかのギヤ対に選択的に係合して入力軸2Aの回転と出力軸2Bの回転とを同期させることができる。
変速機2の出力軸2Bには、モータジェネレータ3が連結されている。モータジェネレータ3は、出力軸2Bに接続された第二動力源である。モータジェネレータ3は、出力軸2B、入力軸2Aおよびクラッチ5を介してエンジン1と接続されている。また、モータジェネレータ3は、出力軸2B、後述する差動機構12およびドライブシャフト14を介して駆動輪16と接続されている。つまり、モータジェネレータ3は、入力ギヤ21a,22a,23a,24aを介さずに駆動輪16と接続されている。
モータジェネレータ3は、ステータ3aおよびロータ3bを有する。モータジェネレータ3は、電力の供給により駆動する電動機としての機能(力行機能)と、機械エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機としての機能(回生機能)とを兼ね備えている。モータジェネレータ3としては、例えば、交流同期型のモータジェネレータを用いることができる。ロータ3bは出力軸2Bに対して一体回転可能に連結されている。バッテリ4は、充放電が可能な蓄電装置である。バッテリ4は、モータジェネレータ3と電気的に接続されており、モータジェネレータ3と電力を授受できる。
出力軸2Bには、出力軸2Bと一体に回転するドライブピニオンギヤ26が設けられている。ドライブピニオンギヤ26は、差動機構12のリングギヤ13と噛み合っている。エンジン1からクラッチ5および入力軸2Aを介して伝達される動力と、モータジェネレータ3から出力される動力とは、出力軸2Bにおいて合成され、差動機構12およびドライブシャフト14を介して駆動輪16に伝達される。
クラッチ5は、摩擦係合式のクラッチ装置であり、入力される制御量によって係合度合いを制御可能なものである。クラッチ5は、入力側係合部材55、出力側係合部材56、およびクラッチ作動機構57を有する。入力側係合部材55は、クランクシャフト11に接続されており、クランクシャフト11と一体に回転する。出力側係合部材56は、変速機2の入力軸2Aに接続されており、入力軸2Aと一体に回転する。クラッチ作動機構57は、出力側係合部材56を入力側係合部材55に向けて押圧するダイヤフラムスプリング等の押圧手段と、押圧手段に抗してクラッチ5を解放させるクラッチアクチュエータ58とを有する。クラッチアクチュエータ58は、例えば、油圧によって発生させる力により、クラッチ5を解放させる。一例として、クラッチアクチュエータ58は、ピストンロッドと、シリンダとを有し、シリンダの油室に供給される油圧によってピストンロッドを軸方向に進退させるものとすることができる。クラッチアクチュエータ58は、ピストンロッドの軸方向における進退量(クラッチストローク)に応じて、出力側係合部材56を入力側係合部材55に向けて押圧する押圧力を調整することができる。クラッチ5では、クラッチストロークに応じて伝達可能な最大トルク、すなわちクラッチ5のクラッチトルクが変化する。以下の説明では、このクラッチ5において伝達可能な最大トルクを「クラッチトルク」と記載する。クラッチ作動機構57は、クラッチストロークを検出するクラッチストロークセンサを有する。クラッチアクチュエータ58は、クラッチストロークセンサの検出結果に基づいてクラッチストロークを取得することができる。
クラッチアクチュエータ58は、クラッチ5を、完全係合状態、半係合状態、解放状態の3つの状態に制御することができる。完全係合状態とは、入力側係合部材55と出力側係合部材56とが係合し、かつ等しい回転数で一体に回転する状態である。半係合状態とは、入力側係合部材55と出力側係合部材56とが係合し、かつ互いに異なる回転数で回転する状態である。解放状態とは、入力側係合部材55と出力側係合部材56とが離間して動力を伝達しない状態である。また、クラッチアクチュエータ58は、クラッチ5の半係合状態における動力の伝達度合いを制御することが可能である。
クラッチストロークが最も小さい領域では、クラッチトルクは最も大きく、クラッチ5は完全係合状態とる。クラッチストロークが増加するにつれてクラッチトルクは減少し、入力されるトルクよりもクラッチトルクが小さくなるとクラッチ5は半係合状態となる。クラッチストロークが最も大きい領域では、クラッチトルクは0となり、クラッチ5が解放され、動力を伝達しない解放状態となる。
ECU30は、周知のコンピュータを有する電子制御ユニットである。ECU30は、ハイブリッド車両100の走行制御を行う走行制御装置としての機能を有している。また、本実施形態のECU30は、同期装置40に関する学習制御を行う学習部としての機能を有している。ECU30には、エンジン1、モータジェネレータ3、シフトアクチュエータ52およびクラッチアクチュエータ58が接続されており、エンジン1、モータジェネレータ3、シフトアクチュエータ52およびクラッチアクチュエータ58は、それぞれECU30によって制御される。
また、ECU30には、シフトストロークセンサ、クラッチストロークセンサ、変速機2の入力軸2Aの回転数を検出する入力軸回転数センサ、エンジン1の回転数を検出するエンジン回転数センサが接続されている。以下の説明では、変速機2の入力軸2Aの回転数を単に「入力軸回転数」と記載する。シフトストロークセンサによって検出されたシフトストロークを示す信号、クラッチストロークセンサによって検出されたクラッチストロークを示す信号、入力軸回転数センサによって検出された入力軸回転数を示す信号およびエンジン回転数センサによって検出されたエンジン回転数を示す信号は、それぞれECU30に出力される。また、ECU30には、バッテリ4の充放電状態や電圧等を検出するセンサが接続されている。ECU30は、このセンサによる検出結果に基づいて、バッテリ4の充電状態SOCを取得することができる。
ECU30は、ハイブリッド車両100においてEV走行およびエンジン走行(EHV走行)を選択的に実行させることができる。エンジン走行とは、少なくともエンジン1の動力によってハイブリッド車両100を走行させる走行モードである。EV走行とは、エンジン1の動力によらずにモータジェネレータ3の動力によってハイブリッド車両100を走行させる走行モードであり、所定走行に対応する。
ECU30は、車速およびアクセル開度などの条件に基づいて、駆動輪16に伝達するべき要求トルクあるいは要求駆動力を算出し、その算出結果に基づいて、エンジン1、モータジェネレータ3、およびクラッチ5を制御する。エンジン走行においてエンジン1のトルクを駆動輪16に伝達する際には、クラッチ5が係合状態とされる。エンジン走行では、モータジェネレータ3を発電機として機能させ、発生した電力をバッテリ4に充電することができる。また、ECU30は、ハイブリッド車両100の運動エネルギーによってモータジェネレータ3を発電させてバッテリ4を充電する回生制御を実行することができる。
エンジン走行では、さらに、モータジェネレータ3を電動機として駆動させ、その動力を駆動輪16に伝達することができる。モータジェネレータ3は、ハイブリッド車両100の加速時等にエンジン1のトルクが不足する場合に、これをアシストすることができる。モータジェネレータ3は電動機として作動する場合、ハイブリッド車両100を前方に向けて駆動する正のトルクを出力する。
また、モータジェネレータ3は、単独でもハイブリッド車両100の走行用の動力源として機能することができる。すなわち、ハイブリッド車両100は、エンジン1の動力によらずにモータジェネレータ3が出力する動力によって走行するEV走行が可能である。EV走行において、モータジェネレータ3は、バッテリ4からの電力を消費して出力する動力によってハイブリッド車両100を走行させる。ECU30は、バッテリ4の充電状態(SOC)や走行状態等に基づいて、エンジン走行あるいはEV走行のいずれの走行モードでハイブリッド車両100を走行させるかを決定する。例えば、軽負荷や低速での走行時にはEV走行が選択され、中高負荷や中高速での走行時には、エンジン走行が選択される。EV走行では、ECU30は、変速機2の入力軸2Aとエンジン1とで動力が伝達されないように、例えばクラッチ5を解放状態に制御する。
また、ECU30は、エンジン走行において、変速機2の変速制御を行うことができる。変速機2の目標ギヤ段は、運転者の変速操作に応じたギヤ段であっても、ハイブリッド車両100の走行状態に応じてECU30によって選択されたギヤ段であってもよい。ECU30は、目標ギヤ段を実現するように、クラッチ5のクラッチアクチュエータ58および変速機2のシフトアクチュエータ52を制御する。変速機2において変速を行う場合、ECU30は、クラッチ5を解放させ、変速機2において変速前の目標ギヤ段に対応するギヤ段をシフト抜きにより非伝達状態とし、変速後の目標ギヤ段に対応するギヤ段を動力伝達状態とする。ECU30は、目標ギヤ段へのギヤ段の切替えがなされると、クラッチ5を係合状態とする。
ここで、変速機2の変速を行う場合に、同期装置40によって入力軸2Aの回転と出力軸2Bの回転とを同期させるときの動力伝達の開始点を精度よく把握できることが好ましい。同期装置40では、経年変化や摩耗等により、動力伝達が開始されるシフトストロークに変化が生じることがある。本実施形態では、シフトストロークにおける動力伝達の開始点、すなわち動力伝達が開始されるシフトストローク位置を「ボーク点」および「同期開始点」とも記載する。
従来、ボーク点の学習制御は、トルク変動等により搭乗者に違和感を与えることがないようにシフトチェンジ時に行われていたが、この場合、ボーク点学習の機会がシフトチェンジ時に限られる。また、学習精度を向上させる観点からはシフトストロークの速度を低速とすることが好ましいが、学習のためにシフトストロークの速度を低下させると、シフトチェンジを遅らせてしまうという問題がある。このため、従来は早く学習を完了させる必要から、微小な学習時期のずれが発生していた。これにより、正確な同期開始点を検出することができない場合があった。
本実施形態の車両制御装置1−1は、ボーク点学習をEV走行時に行う。具体的には、EV走行時に、クラッチ5を解放させ、変速機2をニュートラルとした状態から、学習対象のギヤ段を成立させるように対応するシフトフォークシャフトのシフトストロークを変化させる。学習対象のギヤ段において動力伝達が開始されることによる入力軸回転数の変化、例えば入力軸回転数の増加に基づいて、ボーク点を検出可能である。本実施形態のボーク点学習の方法によれば、EV走行時に任意のタイミングでボーク点の学習制御を実行することができる。これにより、ボーク点に関する十分な学習機会を確保することができる。
また、本実施形態のボーク点の学習制御における同期装置40のシフトストロークの変化速度が、変速時の同期装置40のシフトストロークの変化速度よりも低速である。これにより、ボーク点に関して精度の高い学習を行うことが可能である。
図1を参照して、第1実施形態の動作について説明する。図1に示す制御フローは、例えば、EV走行中でかつ実シフトポジションが前進段あるいはニュートラルである状態が一定以上維持された場合に実行される。なお、その他に学習が必要な場合、例えば学習が不足したギヤ段がある場合に本制御フローが実行されてもよい。なお、EV走行中であるため、本制御フローの実行時にクラッチ5は解放した状態である。
図3は、本実施形態の学習制御に係るタイムチャートである。図3において、(a)はシフトポジション、(b)はシフトストローク、(c)は入力軸回転数、(d)はエンジン回転数をそれぞれ示す。(a)シフトポジションには、要求シフトポジション(破線)および実シフトポジション(実線)が示されている。また、(b)シフトストロークには、要求シフトストローク(破線)および実シフトストローク(実線)が示されている。
まず、ステップS1では、ECU30により要求シフトポジションがニュートラル(N)とされる。ステップS1では、学習を行うためにシフトが抜かれる。図3では、時刻t1において要求シフトポジションがニュートラルとされる。なお、EV走行中にシフトポジションがニュートラルとされるハイブリッド車両100であれば、ステップS1からステップS3を省略して後述するステップS4から開始するようにしてもよい。
次に、ステップS2では、ECU30により実ポジション(実シフトポジション)がニュートラルであるか否かが判定される。ECU30は、例えば、シフトストロークセンサの検出結果に基づいてステップS2の判定を行う。図3では、時刻t2において実ポジションがニュートラルであると判定される。ステップS2の判定の結果、実ポジションがニュートラルであると判定された場合(ステップS2−Y)にはステップS3に進み、そうでない場合(ステップS2−N)にはステップS1に移行する。なお、ニュートラルとするのは一例であって、学習を開始するにあたりギヤの噛合いがなく入力軸2Aと出力軸2Bとで動力の伝達がなされない状態とされていればよい。
ステップS3では、ECU30により、入力軸回転数が一定以下であるか否かが判定される。ECU30は、例えば、入力軸回転数が0近傍の回転数となった場合にステップS3で肯定判定を行う。なお、ステップS3の判定のための閾値は、0近傍の値には限定されない。入力軸回転数の閾値は、ボーク点における入力軸回転数の変化を検出しやすい回転数に基づいて定められた回転数であればよい。すなわち、閾値は、その後に同期装置40によって同期がなされるときの同期開始時の入力軸回転数の変化を確認できる回転数であればよい。図3では、時刻t3において入力軸回転数が一定以下であると判定される。ステップS3の判定の結果、入力軸回転数が一定以下であると判定された場合(ステップS3−Y)にはステップS4に進み、そうでない場合(ステップS3−N)にはステップS3の判定が繰り返される。
ステップS4では、ECU30により、シフトポジションが目標ポジションとされる。ECU30は、学習を行うギヤ段を目標ポジションとして、シフトを目標ポジションへ緩やかに動作させる。ここでは、目標ポジションが第一ギヤ段である場合を例に説明する。ECU30は、シフトアクチュエータ52を制御してスリーブ45を第一ギヤ対21に向けて軸方向に移動させる。シフトアクチュエータ52がシフトフォークシャフト49を軸方向に移動させる移動速度、すなわちシフトストロークの速度は、エンジン走行において第一ギヤ段に変速するときのシフトストローク速度よりも低速とされる。なお、このときに、現在の学習値の手前、すなわちこれまでの学習結果に基づくボーク点の手前までは素早い動作を行ってもよい。
図3では、時刻t3から要求シフトストローク(破線)が徐々に増加され、これに対応して実シフトストローク(実線)が徐々に増加している。なお、図3では、目標ポジション(学習対象のギヤ段)は学習制御に入る前のシフトポジションと同一とされているが、これには限定されない。ECU30は、各シフトポジションの学習回数を記憶しておき、学習が不足したシフトポジションを目標ポジションとしてもよい。ステップS4が実行されると、ステップS5に進む。
ステップS5では、ECU30により、入力軸回転加速度が一定以上であるか否かが判定される。ステップS5では、入力軸回転数の上昇開始が判定される。入力軸回転加速度によって、入力軸回転数が上昇に転じる変曲点を判定することができる。図3では、時刻t4において入力軸回転加速度が一定以上であると判定される。ステップS5の判定の結果、入力軸回転加速度が一定以上であると判定された場合(ステップS5−Y)にはステップS6に進み、そうでない場合(ステップS5−N)にはステップS4に移行する。なお、ステップS5において、入力軸回転加速度に基づく判定に代えて、入力軸回転数が一定以上上昇した場合に肯定判定を行うようにしてもよい。
ステップS6では、ECU30により、同期開始点が学習される。ECU30は、シフトアクチュエータ52における現在のシフトストロークを取得し、学習値を更新する。ECU30は、シフト制御量マップにおける目標ポジションに対応するシフトポジションの学習値に対して取得したシフトストロークを上書きする。なお、取得したシフトストロークで上書きすることに代えて、取得したシフトストロークに基づきなましをかけて学習値を更新するようにしてもよい。例えば、更新前の学習値と取得したシフトストロークとの間の値、一例として両者の平均値で学習値を上書きするようにしてもよい。ステップS6が実行されると、本制御フローは終了する。
ECU30は、学習制御が終了すると、学習開始前のシフトポジションに変速させる。図3では、時刻t5において要求シフトポジションが学習開始前のシフトポジションとされる。なお、学習開始前のシフトポジションに変速させることに代えて、ニュートラルや他のシフトポジションへの変速がなされてもよい。また、学習すべきシフトポジションが他に存在する場合、そのシフトポジションに関する学習制御に移行してもよい。
本実施形態の学習制御によれば、EV走行中の任意のタイミングでボーク点の学習を行うことができる。これにより、学習機会を十分に確保して学習精度を向上させることができる。また、エンジン走行中にシフトチェンジに合わせてボーク点を学習しようとする場合と異なり、走行条件に規制されずに任意のギヤ段についてのボーク点を学習することができる。このため、各ギヤ段についての学習頻度に偏りが生じることが抑制される。また、学習制御において、クラッチ5を解放して入力軸2Aとエンジン1との動力の伝達を遮断することで、ショックを生じさせることなく同期装置40によって入力軸2Aの回転と出力軸2Bの回転とを同期させることができる。
このように、本実施形態のハイブリッド車両100は、入力軸2Aの回転をそれぞれ異なる変速比で出力軸2Bに伝達する複数のギヤ対と、いずれかのギヤ対に選択的に係合して入力軸2Aの回転と出力軸2Bの回転とを同期させる制御可能な同期装置40と、を有する常時噛合い式の変速機2と、入力軸2Aに接続されたエンジン1(第一動力源)と、出力軸2Bに接続されたモータジェネレータ3(第二動力源)と、EV走行(所定走行)時に同期装置40によって入力軸2Aの回転と出力軸2Bの回転とを同期させるときの動力伝達の開始点について学習制御を行うECU30(学習部)とを備えている。
よって、本実施形態のハイブリッド車両100では、実際に変速を行うときに限らず、同期装置40に関する学習制御を行うことができる。特に、ハイブリッド車両100は、エンジン1と入力軸2Aとの間の動力伝達を接続あるいは遮断する制御可能なクラッチ5を備えている。これにより、クラッチ5を解放しておくことで、学習制御においてショックを生じさせることなく同期装置40によって入力軸2Aの回転と出力軸2Bの回転とを同期させることができる。
なお、本実施形態では、EV走行時に同期装置40についての学習制御が行われたが、更に、エンジン走行時に同期装置40についての学習制御がなされてもよい。エンジン走行時の学習制御としては、例えば、実際に変速機2において変速を行うときにボーク点について学習することができる。EV走行時におけるボーク点についての学習と、エンジン走行時におけるボーク点についての学習とを併用することで、より多くの学習機会を確保することができる。
なお、本実施形態では、第一動力源がエンジン1であり、第二動力源がモータジェネレータ3であったが、第一動力源および第二動力源は、これらには限定されず、それぞれ他の公知の動力源であってもよい。
本実施形態では、モータジェネレータ3が変速機2の出力軸2Bに接続されているが、モータジェネレータ3の位置はこれには限定されない。モータジェネレータ3は、学習制御を実行するときに入力ギヤ21a,22a,23a,24aを介さずに駆動輪16と接続されることができるものであればよい。例えば、モータジェネレータ3は、入力軸2Aあるいは出力軸2Bのいずれかに選択的に接続可能なものであってもよい。この場合、ボーク点についての学習制御を行うときに、モータジェネレータ3が出力軸2Bに対して接続されるようにしてもよい。また、モータジェネレータ3は、変速機2と動力の伝達を行わないニュートラル状態に切替え可能なものであってもよい。
本実施形態の同期装置40は、入力ギヤ21a,22a,23a,24aの回転と入力軸2Aの回転とを同期させるものであったが、これに代えて、出力ギヤ21b,22b,23b,24bの回転と出力軸2Bの回転とを同期させるものであってもよい。また、同期装置40は、入力軸2Aの回転と出力軸2Bの回転とを同期させるその他の機構であってもよい。
(第2実施形態)
図4および図5を参照して、第2実施形態について説明する。第2実施形態については、上記実施形態で説明したものと同様の機能を有する構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。本実施形態において、上記第1実施形態と異なる点は、学習制御においてエンジンを停止させ、かつクラッチ5を係合させて入力軸回転数を低下させる点である。クラッチ5を係合させてエンジン1を入力軸2Aに対する負荷とすることにより、クラッチ5を解放したままで入力軸回転数の低下を待つ場合よりも短時間で入力軸回転数を低下させることができる。その結果、速やかにボーク点の学習を開始することができ、学習制御に要する時間を短縮することができる。
図4は、本実施形態の学習制御の動作を示すフローチャート、図5は、本実施形態の学習制御に係るタイムチャートである。図5において、(a)(b)は図3と同様にシフトポジション、シフトストロークをそれぞれ示す。また、(c)はエンジントルク(実線)およびクラッチトルク(破線)、(d)は入力軸回転数、(e)はエンジン回転数をそれぞれ示す。
まず、ステップS11では、ECU30により、要求シフトポジションがニュートラルとされる。図5では、時刻t11において要求シフトポジションがニュートラルとされる。ステップS11が実行されると、ステップS12に進む。
ステップS12では、ECU30により、実ポジションがニュートラルであるか否かが判定される。図5では、時刻t12において実ポジションがニュートラルと判定される。ステップS12の判定の結果、実ポジションがニュートラルであると判定された場合(ステップS12−Y)にはステップS13に進み、そうでない場合(ステップS12−N)にはステップS11に移行する。
ステップS13では、ECU30は、クラッチトルクを増加させる。ステップS13では、入力軸回転数を検出しやすい状態にするためにクラッチ5を係合させて入力軸2Aの回転をエンジン回転(停止)に同期させる。ECU30は、クラッチアクチュエータ58によってクラッチ5を係合させる方向にクラッチストロークを変化させる。この際のクラッチストロークの増加量や増加速度は、クラッチ係合によるショックや音が発生しない範囲でできるだけ大きな増加量や増加速度とすることが好ましい。図5では、時刻t12からクラッチトルクの増加が開始される。ステップS13が実行されると、ステップS14に進む。
ステップS14では、ECU30により、入力軸回転数が一定以下であるか否かが判定される。ステップS14における判定のための閾値は、例えば、ステップS3と同様とすることができる。図5では、時刻t13において入力軸回転数が一定以下と判定される。ステップS14の判定の結果、入力軸回転数が一定以下であると判定された場合(ステップS14−Y)にはステップS15に進み、そうでない場合(ステップS14−N)にはステップS13に移行する。
ステップS15では、ECU30は、クラッチトルクを減少させる。ECU30は、シフトが可能な範囲までクラッチトルクを減少させる。ECU30は、クラッチアクチュエータ58によってクラッチ5を解放(動力伝達を遮断)させる方向にクラッチストロークを変化させる。図5では、時刻t13においてクラッチトルクの減少が開始される。ステップS15が実行されると、ステップS16に進む。
ステップS16では、ECU30により、クラッチトルクが一定以下であるか否かが判定される。ステップS16におけるクラッチトルクの閾値は、例えば、ボーク点において動力の伝達が開始されたとしてもショックが感じられない程度の値とされる。図5では、時刻t14においてクラッチトルクが一定以下と判定される。ステップS16の判定の結果、クラッチトルクが一定以下であると判定された場合(ステップS16−Y)にはステップS17に進み、そうでない場合(ステップS16−N)にはステップS15に移行する。
ステップS17からステップS19は、上記第1実施形態(図1)のステップS4からステップS6と同様とすることができる。すなわち、ステップS17でシフトポジションが目標ポジションとされ、ステップS18で入力軸回転加速度が一定以上であると判定されると、ステップS19で同期開始点が学習される。ステップS19が実行されると、本制御フローは終了する。図3では、時刻t15において入力軸回転数が一定以上であると判定されて学習が開始される。学習値の更新方法は、例えば、上記第1実施形態と同様とすることができる。
ECU30は、学習制御が終了すると、学習開始前のシフトポジションに変速させる。なお、学習開始前のシフトポジションに変速させることに代えて、ニュートラルや他のシフトポジションへの変速がなされてもよい。また、学習すべきシフトポジションが他に存在する場合、そのシフトポジションに関する学習制御に移行してもよい。
本実施形態の学習制御では、エンジン1を停止させ、かつクラッチ5を係合して入力軸回転数を低下させてから、クラッチ5を解放した状態でボーク点の学習がなされる。クラッチ5を係合することで入力軸回転数を短時間で十分に低下させることができる。よって、同期装置40によって入力軸2Aの回転と出力軸2Bの回転とを同期させるときの動力伝達の開始点について入力軸回転数に基づいて精度よく検出することができる。
上記の各実施形態に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。