従来より、モータや発電機として活用される回転機として、ステータティースにコイルを巻回した固定子(ステータ)に対して、シャフトの軸回りに永久磁石を取り付けた回転子(ロータ)を回転自在に軸支したものが利用されている。このような回転機は、コイルに対する励磁電流を供給した場合に、対向するステータティースと永久磁石との間で形成される磁気回路によって回転子をシャフトの軸回りに回転させることができる。
ところで、コイルに励磁電流を供給した場合に、永久磁石自体に渦電流が発生する。この渦電流の発生要因として、回転子の回転数などに応じた基本周波数成分とインバータ制御(例えばPWMやPAMなど)及び回転子のスロット形状等で発生する高周波成分がある。この高周波成分によって永久磁石のうち磁極を構成する面、すなわちステータティースと対向する面である外表面で渦電流が多く発生することが知られている。この渦電流によって、永久磁石が発熱し高温となると、磁力が低下(減磁)することが知られている。また、渦電流によって、本来得たい磁界とは反対方向の磁界が生じ、それによっても全体としての磁力の低下が生じることが知られている。
そこで、従来の回転子では、シャフトの表面を取り囲むように複数に分割した磁石(以下「単位磁石」と称する)により永久磁石を構成していた。このように分割した複数の単位磁石で永久磁石を構成すれば、各単位磁石の外表面で渦電流が生じるものの、分割せずに1つの磁石で永久磁石を構成した場合と比較して、渦電流の経路(電流路)を細分化することにより、回転子全体として発生する渦電流量を低減することができ、渦電流による温度上昇を抑制するとともに、渦電流による反対方向の磁界も抑制することができる。
また、永久磁石の内部に磁石の磁化方向と反対方向に磁場が生じる「反磁界」が現れる。なお、反磁界は「反磁場」とも称される。ここで、反磁界の大きさは磁化の大きさに比例し、その比例定数である反磁場係数は、パーミアンス係数と同様に磁石の形状のみで決まる係数であり、パーミアンス係数が大きいほど反磁場係数は小さく、パーミアンス係数が小さいほど反磁場係数は大きく、反磁場係数が大きいほどその磁石の磁力は小さくなる(減磁し易くなる)ことが知られている。そして、磁石における着磁方向(「配向方向」あるいは「磁化方向」とも称される)の長さ(磁石厚)が磁極を構成する面である外表面の面積に比較して小さくなるほど、パーミアンス係数は小さくなり、反磁場係数は大きくなる。
シャフトの表面を取り囲むように複数に分割した磁石(以下「単位磁石」と称する)により永久磁石を構成した態様としては、ラジアル配向(固定子方向に向かう磁界が固定子に向かって拡散する配向)に着磁された単位磁石をシャフトの周方向に等間隔で設けた構成のものを挙げることができる(例えば、特許文献1)。
ラジアル配向に着磁された単位磁石は、シャフトに接触し得る面(内向き面)から磁極を構成する面である外表面に向かって漸次広がる概略扇形状をなし、各単位磁石の着磁方向の長さ(磁石厚)は均等であり、何れの単位磁石も同等のパーミアンス係数となる。
ところで、高速回転にも耐え得るように太いシャフトを適用しつつ回転子自体の外径を小さく設定して回転子全体の小型化を図りたい場合には、各単位磁石の着磁方向の長さ(磁石厚)を短く(薄く)設定せざるを得ない。ところが、ラジアル配向に着磁された単位磁石をシャフトの外表面に設けた態様であれば、各単位磁石の着磁方向の磁石厚を薄く設定することによって、磁極を構成する外表面に対する磁石厚の割合が小さくなるため、パーミアンス係数も小さくなる。その結果、反磁界が強く現れて磁力が小さくなり、動作効率の低下や予期せぬ発熱も招来し得る。
そこで、各単位磁石の磁力の低下を抑制するために、パーミアンス係数を上げて反磁界を低減すべく、パラレル配向(固定子方向に向かう磁界が互いに並行となる配向)に着磁された単位磁石をシャフトの外表面に等間隔で隙間無く並べて永久磁石を構成する態様も考えられる。
しかしながら、高速回転にも耐え得るように太いシャフトを適用しつつ回転子自体の外径を小さく設定したい場合には、シャフトの外表面に周方向に沿って等ピッチで並べた単位磁石のうち、単位磁石の並び方向における回転子の中央部領域に配置される単位磁石は、その着磁方向の長さ(磁石厚)が、単位磁石の並び方向における回転子の両側縁部領域に配置される永久磁石の磁石厚よりも小さく(薄く)なるため、パーミアンス係数が必然的に小さくなり、反磁界が強く現れ易いという問題が生じ得る。したがって、回転子の小径化及び小型化を図ることが困難である。
本発明は、このような問題に着目してなされたものであって、主たる目的は、永久磁石の磁力低下の原因となる渦電流を極力小さいものとし、渦電流による温度上昇を抑制し、温度上昇に伴う減磁を好適に抑制することができるとともに、渦電流による反対方向の磁界も抑制することができ、さらには、磁石の形状で決まるパーミアンス係数を大きくすることで反磁界を抑制し、高速回転化の実現に伴う設計条件を満たす回転機、つまり、太いシャフトを適用しつつ回転子の小径化を実現できる回転機を提供することにある。
すなわち本発明は、シャフト及びシャフトの外表面に取り付けられて磁極を構成する永久磁石を有する回転子と、シャフトの軸回りで回転自在な回転子を内部空間に収容する回転不能な固定子とを備えた回転機に関するものである。ここで、「回転子を内部空間に収容する」には、回転子のうち少なくとも永久磁石を取り付けている領域の全部または大半を内部空間に収容し、シャフトのうち永久磁石が取り付けられていない領域の全部または大半は固定子の内部空間外に配置する態様、或いは回転子全体を収容する態様、これら何れも含む概念である。
そして、本発明の回転機は、永久磁石として、パラレル配向に着磁した複数の単位磁石をこれら全ての単位磁石が同一方向となるように並べたパラレル異方性磁石を適用し、単位磁石のうち、並び方向において回転子の中央部領域に配置される単位磁石の磁石幅を、並び方向において回転子の側端部領域に配置される単位磁石の最大磁石幅よりも小さく設定していることを特徴としている。
ここで、「磁石幅」とは、着磁方向に直交する方向の長さ、言い換えれば、単位磁石の並び方向の長さである。また、並び方向において回転子の中央部領域に配置される単位磁石は、磁極を構成する面(外表面)とは反対側の面(以下「内向き面」と称する)がシャフトに接触し得る単位磁石でもある。
本発明者らは、パラレル配向に着磁した複数の単位磁石によって永久磁石を構成し、単位磁石のうち、回転子の中央部領域に配置されて内向き面がシャフトに接触(面接触)する単位磁石(以下、「センター側単位磁石」と称する)は、回転子の側端部領域に配置されてシャフトと接触(面接触)しない単位磁石(以下、「サイド側単位磁石」と称する)と比較して、着磁方向の長さ(以下、「磁石厚」と称する)が短い(薄い)ために、パーミアンス係数が小さく、反磁界が強く現れ易いという点に着目し、センター側単位磁石の磁石幅を、サイド側単位磁石の最大磁石幅よりも小さく設定するという斬新な技術的思想を想到するに至った。なお、請求項における「並び方向において回転子の側端部領域に配置される単位磁石の最大磁石幅」とは、並び方向において回転子の側端部領域に配置される単位磁石(サイド側単位磁石)のうち、並び方向の長さが最も長いサイド側端単位磁石の磁石幅を意味する。
そして、センター側単位磁石の磁石幅をサイド側単位磁石の最大磁石幅よりも相対的に小さく設定することによって、各センター側単位磁石の外表面の面積も小さくなり、この外表面の面積に対する磁石厚の比率を大きくすることができる。その結果、各センター側単位磁石のパーミアンス係数が大きくなり、各センター側単位磁石で生じ得る反磁界を抑制することができる。さらには、渦電流が磁石のうち特に外表面で多く発生することから、各センター側単位磁石の外表面の面積を相対的に小さく設定することによって、発生し得る渦電流量自体を極力抑制して、渦電流による温度上昇を抑制するとともに、渦電流による反対方向の磁界も抑制することも期待できる。
このように、本発明に係る回転子は、センター側単位磁石の磁石幅をサイド側単位磁石の最大磁石幅よりも小さくする構成、換言すれば、パラレル異方性磁石である永久磁石を構成する単位磁石のうち、着磁方向に直交する方向における回転子の中央部領域に並べるセンター側単位磁石を、回転子の側端部領域に並べるサイド側単位磁石のうち磁石幅が最も大きいものよりも細かく分割するという構成により、磁石厚が相対的に薄いという形状に基づくセンター側単位磁石のデメリット、つまり反磁界に弱いというデメリットを解消することができる。
特に、高回転化を実現すべく、太いシャフトを適用しつつ回転子自体の外径を小さく設定する場合には、必然的にセンター側単位磁石の磁石厚を薄く設定せざるを得ないが、この場合においても、本発明であれば、センター側単位磁石の磁石幅をサイド側単位磁石の最大磁石幅よりも小さくすることによって、反磁界を好適に抑制することができ、動作効率を低下させ得ることなく、回転子の小径化及び小型化を図ることが可能になる。
また、本発明の回転機において、シャフトとして円柱状のものを適用する場合には、当該シャフトの直径範囲内に相当する領域に配置される単位磁石が、回転子の中央部領域に配置されるセンター側単位磁石となり、シャフトの直径範囲外に相当する領域に配置される単位磁石が、回転子の側端部領域に配置されるサイド側単位磁石となる。
また、本発明の回転機では、センター側単位磁石の磁石幅を適宜設定することができるが、各センター側単位磁石の外表面で生じる渦電流を効果的に低減して、渦電流による温度上昇を抑制するとともに、磁石の形状で決まるパーミアンス係数を大きくすることで反磁場を低減できるようにするには、センター側単位磁石の磁石幅を当該センター側単位磁石の磁石厚(着磁方向の長さ)の二分の一以下に設定することが好ましい。
本発明によれば、パラレル異方性磁石である永久磁石を分割した複数の単位磁石で構成し、着磁方向に直交する方向における回転子の中央部領域に並べるセンター側単位磁石を、回転子の側端部領域に並べるサイド側単位磁石の最大磁石幅よりも磁石幅を小さく設定して、回転子の中央部領域における磁石分割数を多くするという構成により、渦電流による温度上昇を抑制することができるとともに、渦電流による反対方向の磁界も抑制することができ、さらには、磁石の形状で決まるパーミアンス係数を大きくすることで反磁界を低減することが可能であり、回転子の小径化をも実現でき、高速回転可能な回転機を提供することができる。
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る回転機1は、図1に示すように、ステータ2(本発明の「固定子」に相当)と、ステータ2に対して回転可能なロータ3(本発明の「回転子」に相当)とを備え、例えばモータや発電機として活用可能なブラシレス高速回転機である。また、本実施形態の回転機1は、ステータ2の内側にロータ3を配置したいわゆるインナーロータ型のブラシレス回転機である。
ステータ2は、概略円筒状のステータ基材21と、ステータ基材21の内周面から周方向等間隔で突出するように設けたステータティース22と、ステータティース22に巻回されたステータコイル23とを備えたものである。
本実施形態では、ステータ基材21の軸心をロータ3の回転軸心3Jと一致させ、ステータ基材21の両端(開口端)には中央部に軸挿通用孔24aを形成した概略円盤状のカバー24を取り付けている。また、カバー24の内向き面には、軸受け支持リング25を設け、この軸受け支持リング25に、ロータ3のシャフト4を回転自在に支持する軸受け26を装着している。軸受け26としては、周知のボール軸受け等を用いることができる。
ステータティース22は、ステータ基材21の内周面からロータ3側に向かって突出し、軸方向に沿って延伸する突形状のものである。本実施形態では、このようなステータティース22をステータ基材21の内周面において周方向に等間隔で所定数設けている。
ステータコイル23は、ステータティース22に対して所定の形態(重巻、波巻、鎖巻、集中巻など)で巻回したものであり、このステータコイル23の一部がステータティース22の両端面からループ状に突出してコイルエンドとして機能している。
ロータ3は、図2乃至図4(図2はロータ3の全体概略図であり、図3は図2のA方向矢視図であり、図4は図3のB方向矢視図である)に示すように、シャフト4と、シャフト4の外周面に設けた永久磁石5とを備えたものである。
シャフト4は、概略円柱状を有しており、その軸心がロータ3の回転軸心3Jとなる。本実施形態では、このシャフト4の両端部近傍を上述の軸受け26で支持している(図1参照)。
永久磁石5は、配向方向(着磁方向)が平行となるパラレル配向に着磁された複数の単位磁石6によって構成したパラレル異方性磁石である。本実施形態では、図3に示すように、シャフト4の周方向に並べた全ての単位磁石6の着磁方向が、永久磁石5の並び方向6Aに直交する方向となるように設定している。すなわち、全ての単位磁石6の着磁方向が互いに平行となるように設定している。なお、図3では各永久磁石5の着磁方向を矢印で示している。このように、全ての単位磁石6をそれぞれの着磁方向が互いに平行となるようにシャフト4の周方向に分割して配置してなる本実施形態の永久磁石5は2極の磁石界磁を構成する。また、シャフト4の周方向に沿って並べた複数の単位磁石6は、全体として、軸心がシャフト4の軸心と合致する概略円筒状となるようにそれぞれの形状を定めている(図2及び図3参照)。また、本実施形態の永久磁石5は、概略円筒状となる単位磁石6の集合体6G(単位磁石群、図2参照)をシャフト4の軸方向に沿って等間隔で複数組設けている。各単位磁石6はシャフト4の外周面に接着剤などで接着して固定することもできるが、本実施形態では単位磁石6及びシャフト4の相互に引き合う磁力を利用して単位磁石6をシャフト4の周方向に並べた状態で取り付けている。
永久磁石5のうちシャフト4の軸心方向の両端にはバランスリング7を設けている。また、永久磁石5の外周に、各単位磁石6がシャフト4から離脱して飛散することを防止する飛散防止部材8を設けることもできる。本実施形態では、飛散防止部材8としては、シャフト4の外周面に配置した全ての単位磁石6を内部空間に収容し得る筒状のものを用いている。また、ステータ2とロータ3との間、具体的には、ステータティース22と飛散防止部材8との間には所定の間隙を確保している。
永久磁石5を複数の単位磁石6で構成すること、つまり、永久磁石5を複数に分割した構成とすることは、渦電流対策として有効であり、図5には、磁石の分割数と磁石損失(渦電流損失)との一般的な関係を示す。磁極を形成する永久磁石5を分割することによって渦電流の低減を図ることができる理由としては、分割により渦電流の経路(電流路)を細分化していることが挙げられる。なお、図5における横軸、縦軸は、それぞれ磁石の分割数、磁石損失であり、同図では、分割数が1である場合の磁石損失を1とし、分割数に応じた磁石損失を比率で示している。
そして、本実施形態の回転機1は、図3及び図4に示すように、シャフト4の周方向に並べた単位磁石6のうち、ロータ3に正対した場合に単位磁石6の並び方向6Aにおいてロータ3におけるシャフト4の直径の範囲内に相当する中央部領域3Cに配置されるセンター側単位磁石61の磁石幅61Wを、ロータ3を正対した場合に並び方向6Aにおいてロータ3におけるシャフト4の直径の範囲外に相当する側端部領域3Sに配置されるサイド側単位磁石62の最大磁石幅62Wよりも小さく(短く)設定している。本実施形態では、センター側単位磁石61の磁石幅61Wをサイド側単位磁石62の磁石幅62Wの2分の1以下程度に設定している。逆に言えば、サイド側単位磁石62の磁石幅62Wをセンター側単位磁石61の磁石幅61Wの2倍以上程度に設定している。
ここで、本実施形態におけるセンター側単位磁石61は、単位磁石6の並び方向6Aにおいてロータ3の中央部領域3Cに配置されて磁極を構成する面とは反対側の面(内向き面)がシャフト4に面接触し得る単位磁石である。また、サイド側単位磁石62は、単位磁石6の並び方向6Aにおいてロータ3の側端部領域3Sに配置されてシャフト4に面接触し得ない単位磁石である。また、単位磁石6の「磁石幅」とは、単位磁石6の着磁方向に直交する方向の長さ、言い換えれば、単位磁石6の並び方向6Aの長さである。
本実施形態では、永久磁石5の分割態様として、ロータ3の中央部領域3Cを等しい幅に分割するとともに、ロータ3の側端部領域3Sを等しい幅に分割している。したがって、本実施形態の回転機1では、複数のセンター側単位磁石61相互の磁石幅61Wが等しく、複数のサイド側単位磁石62相互の磁石幅62Wが等しく、「サイド側単位磁石62の最大磁石幅」は「サイド側単位磁石61の磁石幅62W」と同義となる。
また、本実施形態では、センター側単位磁石61の磁石幅61Wをセンター側単位磁石61の磁石厚の2分の1以下、より具体的には3分の1乃至4分の1程度に設定している。逆に言えば、センター側単位磁石61の磁石厚をセンター側単位磁石61の磁石幅61Wの2倍以上、より具体的には3乃至4倍程度に設定している。
以上のような構成を有する本実施形態の回転機1は、ステータコイル23に励磁電流を供給すると、ステータティース22及びステータ基材21と永久磁石5との間に磁気回路を形成し、各ステータコイル23に対して供給する励磁電流の強度を適宜変更することによってロータ3全体を軸心3J回りに高速回転(もちろん仕様や用途等に応じて低速回転も可能)させることができる。
ここで、ステータコイル23に励磁電流を供給した場合には、永久磁石5の外表面に渦電流が生じ、永久磁石5の内部に磁石の磁化方向(着磁方向)と反対方向に磁場が発生するいわゆる反磁界が生じ得る。特に、単位磁石6の着磁方向の長さ、言い換えれば、単位磁石6の並び方向6Aに直交する方向の長さである「磁石厚」が薄い部分では強い反磁界が現れる傾向があり、このような反磁界が磁石自体の磁化を弱める方向に作用する。そして、パラレル配向に着磁された複数の単位磁石6をシャフト4の周方向に並べて永久磁石5を構成している場合、単位磁石6の並び方向6Aにおいてロータ3の中央部領域3Cに配置されて磁極を構成する面とは反対側の面(内向き面)がシャフト4に面接触し得るセンター側単位磁石61は、シャフト4に面接触し得ないサイド側単位磁石62と比較して、設計上、磁石厚を相対的に薄く設定せざるを得ないため、強い反磁界が生じるおそれがある。
しかしながら、本実施形態に係る回転機1は、センター側単位磁石61の磁石幅61Wをサイド側単位磁石62の磁石幅62Wよりも小さく(短く)設定しているため、各センター側単位磁石61内部の反磁界を低減することができる。これは、センター側単位磁石61の磁石幅61Wをサイド側単位磁石62の磁石幅62Wよりも短く設定することにより、センター側単位磁石61の外表面の面積に対する磁石厚の比率を高めて、外表面の面積に対する磁石厚の比率で決まるパーミアンス係数を大きくするという技術的思想に基づくものである。このように、各センター側単位磁石61の磁石幅61Wを小さくしてパーミアンス係数を大きくすれば、反磁場係数は小さくなり、反磁界を低減することができる。また、各センター側単位磁石61の磁石幅61Wを小さくすることによって、各センター側単位磁石61の外表面積も狭くなることから、渦電流の発生量を低減することができ、渦電流による温度上昇を抑制することができ、温度上昇に伴う減磁を抑制することができるとともに、渦電流による反対方向の磁界も抑制することができる。
このような構成である本実施形態に係る回転機1は、永久磁石5の分割数(単位磁石6の数)を増大することによって、渦電流を効果的に低減することができ、渦電流による温度上昇を抑制し、温度上昇に伴う減磁を抑制することができるとともに、渦電流による反対方向の磁界も抑制することができ、さらには、各単位磁石61,62のパーミアンス係数を大きくして反磁界を抑制することができる。したがって、反磁界が強く現れて磁力が小さくなった場合に生じ得る事態、すなわち、動作効率の低下や不要な発熱を効果的に防止・抑制することができる。
また、高速回転にも対応できるように太いシャフト4を適用しつつロータ3全体の外径を小さく設定する必要がある場合には、各単位磁石6の磁石厚を薄く設定しなければならない。このような場合、センター側単位磁石61は、サイド側単位磁石62と比較して磁石厚がより一層薄くなるため、特に反磁場の影響を受け易い形状となってしまう。
しかしながら、本実施形態に係る回転機1では、上述したように、センター側単位磁石61の磁石幅61Wをサイド側単位磁石62の磁石幅62Wよりも小さく設定し、さらに、センター側単位磁石61の磁石幅61Wをセンター側単位磁石61Wの磁石厚の2分の1以下、より具体的には3分の1乃至4分の1程度に設定することによって、センター側単位磁石61のパーミアンス係数を大きくし、反磁界を低減することができる。したがって、本実施形態に係る回転機1を用いることによって、太いシャフト4を適用してロータ3自体の外径を小さく設定しつつも、反磁界の影響を受け難く、動作効率の低下や発熱を好適に防止・抑制できる。
さらに、本実施形態の回転機1のように、永久磁石5により磁極数が2極のロータ3を構成する場合には、上述したロータ3の外径を小さくするという条件とともに、永久磁石5により磁極数が例えば4以上である多極のロータ3を構成する場合と比較して、1極あたりの磁石が大きい(シャフト4の半周分(180度)に相当)ため、磁石厚を薄くしなければならないという制約を受ける。しかしながら、本実施形態に係る回転機1では、永久磁石5を構成する単位磁石6の磁石厚を薄く設定しなければならない場合であっても、センター側単位磁石61の磁石幅61Wをサイド側単位磁石62の磁石幅62Wよりも狭く設定して、単位磁石6の並び方向6Aにおけるロータ3の中央領域の磁石分割数を多くすることによって、渦電流による温度上昇を抑制することができるとともに、渦電流による反対方向の磁界も抑制することができ、さらには、磁石の形状で決まるパーミアンス係数を大きくすることで反磁界を低減することができる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、永久磁石の分割数は適宜変更することができる。この際、センター側単位磁石の磁石幅がサイド側単位磁石の最大磁石幅よりも小さいという条件(以下「磁石幅条件」と称する)を満たす範囲内で、センター側単位磁石やサイド側単位磁石の磁石幅を適宜変更することができる。
また、上述の実施形態では、各センター側単位磁石の磁石幅を同一に設定し、各サイド側単位磁石の磁石幅を同一に設定した態様を例示したが、前記磁石幅条件を満たせば、センター側単位磁石相互の磁石幅を異ならせたり、サイド側単位磁石相互の磁石幅を異ならせた態様であってもよい。この場合、前記磁石幅条件を満たせば、センター側単位磁石の磁石幅が「サイド側単位磁石の最小磁石幅」(複数のサイド側単位磁石のうち並び方向の長さが最も短いサイド側端単位磁石の磁石幅)よりも大きくてもよい。
また、シャフトとして、断面形状が多角形状(例えば六角形や八角形等)のものを適用することもでき、シャフトの断面形状に応じて、センター側単位磁石のうち磁極を構成する外表面とは反対側の面(内向き面)をシャフトの外表面の形状に応じて適宜変更すればよい。
また、回転子及び固定子を共通のケーシングに収容した回転機であっても構わない。
また、本発明の回転機を、自動車試験装置のダイナモメータ、大容量高速モータ、大容量高速発電機等として活用することもできる。
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。