JP5732713B2 - 液体用紙容器 - Google Patents

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Description

本発明は、牛乳、乳飲料、ジュース等の液体を包装する液体用紙容器に関するものである。
紙を基材とするゲーベルトップ型や、ブリック型等の液体用紙容器は、容器としての密封性、保存性、剛度或いは強度等を確保するために各種の素材フィルムをラミネートした積層体を用いて形成される。液体用紙容器用の積層体は、低温流通タイプから、常温流通かつ長期流通の可能なタイプまで様々であり、その仕様は、内容物およびその滅菌方法、包装方法、賞味期限の設定等によりそれぞれ設計される。従来の牛乳等の低温流通(チルド流通)用として用いられる液体用紙容器の積層体の主となる構成は、低密度ポリエチレン/紙/低密度ポリエチレンである。低密度ポリエチレン(以下、LDPEともいう。)は、シーラントとして機能し、積層体を形成する際のラミネート加工性、容器を成形する時のヒートシール性が良いことから、最も多く用いられ、特に、乳製品等には乳等省令に適合する無添加のLDPEが使用されている。
しかし、牛乳等の低温流通(チルド流通)用に用いられる液体用紙容器は、製品の輸送距離が長くなった場合に衝撃等による破損や漏れが発生する可能性があり、これらに耐えられる材料構成が求められている。これに対し、接液面側の層を線状低密度ポリエチレン(以下、LLDPEともいう。)とする構成の材料を使用し、衝撃等に対する強度を上げた液体用紙容器が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2000−33679号公報
しかしながら、接液面側の層としてLLDPEの層を用いると、液体用紙容器を成形する時のトップシールによるシール強度が強くなり過ぎるため、実際に消費者が液体用紙容器を開封して内容物を取り出す際に、開封がし難くなるという不都合があった。
そこで、本発明は、製品の長距離輸送においても衝撃等による破損や漏れが発生することのない強度を有し、かつ、使用時の開封もし易い液体用紙容器を提供することを課題とする。
上記課題を解決する本発明の液体用紙容器は、紙を基材とし、内側に補強層と接液側となる接液層とからなるヒートシーラント層を形成した積層体からなるゲーベルトップ型の液体食品用紙容器であって、前記補強層が線状低密度ポリエチレン(LLDPE)からなる層であり、前記接液層が低密度ポリエチレン(LDPE)と線状低密度ポリエチレン(LLDPE)とを混合し、M.I(メルトフローインデックス)が5.3〜6.0である樹脂からなる層であり、前記接液層における低密度ポリエチレン(LDPE)と線状低密度ポリエチレン(LLDPE)との混合割合において、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)が40〜60質量%であり、前記ヒートシーラント層を形成する前記補強層と前記接液層の厚み比率(補強層の厚み/接液層の厚み)が、0.2〜5の範囲内であり、前記線状低密度ポリエチレン(LLDPE)および前記低密度ポリエチレン(LDPE)が、添加剤を加えない無添加の樹脂であることを特徴とする。
この発明によれば、補強層及び接液層にLLDPEが含まれていることにより、これらの層を共押出ラミネーション法等により形成する際の温度を低下させることができる。そのため、材料の酸化や劣化を防いで、補強層及び接液層の破断強度や衝撃強度を向上させることができ、製品の長距離輸送においても衝撃等による破損や漏れが発生することのない強度を有する液体用紙容器を提供できる。また、本発明の液体用紙容器は、接液層がLDPEとLLDPEを混合した樹脂からなる層であるため、LLDPEのみの層に比べて液体用紙容器を成形する時のトップシールによるシール強度が強くなり過ぎることがない。そのため、本発明の液体用紙容器は、消費者が液体用紙容器を使用する際の開封もし易く、実用化に適している。
この発明によれば、接液層におけるLDPEとLLDPEが特に上記範囲内の混合割合であることにより、液体用紙容器の強度がより高くなり、液体用紙容器の開封し易さも向上する。
この発明によれば、さらに、補強層と接液層の厚みの比率が上記範囲内であることにより、液体用紙容器の強度がより高くなり、液体用紙容器の開封し易さも向上する。
この発明によれば、接液層や補強層に用いられるLLDPEやLDPEが無添加の樹脂であることにより、乳等省令で規定されている牛乳等の乳製品の低温流通(チルド流通)の液体用紙容器としても、好適に用いることができる。
本発明の液体用紙容器によれば、容器内側の接液層を上述の構成としたことにより、容器に内容物を封入した製品の長距離輸送においても衝撃等による破損や漏れが発生することのない強度を有し、かつ、使用時の開封もし易い液体用紙容器を提供することができる。
本発明の液体用紙容器の実施例を示す、(a)紙容器の斜視図、(b)紙容器を構成する積層体の層構成を説明する断面図である。 図1の(a)DS部、(b)CS部を示すW−W部断面図である。
以下、本発明の具体的な実施形態を図面を参照しながら説明する。なお、本明細書においては、図面を含め、容器の形態の例としてゲーベルトップ型液体用紙容器により記載した。図1は、本発明による液体用紙容器の実施例を示す、(a)液体用紙容器の斜視図、(b)液体用紙容器を構成する積層体の層構成を説明する断面図である。図2は、図1のW−W部断面図であって、(a)DS部、(b)CS部を示す。
主として液体を内容物とするゲーベルトップ型等の液体用紙容器Pにおいては、板紙を芯素材として、種々の素材をラミネートした積層体を用いることが一般的である。その積層体1の構成は、本発明においては、図1(a)及び図1(b)に示すように、液体用紙容器Pを構成する積層体1として、紙からなる基材2の一方の面(表面)に最外層3を設け、他の面(裏面)にヒートシーラント層4を設ける。このヒートシーラント層4は、補強層5と接液側となる接液層6とからなる。ヒートシーラント層4は、接液面側が内容物に直接接触するため、内容物の物性を変化あるいは劣化させることなく、内容物が液体用紙容器Pから漏れないようにする密封機能性のあるものでなくてはならない。また、空気の流通をも遮断する気密性のあることが求められる。
密封された液体用紙容器Pにおいては、いかなる部位からも液漏れがあってはならない。例えば、ゲーベルトップ型液体用紙容器の場合、容器の構造上、漏れ易い、気密性を損ないやすい部位としては、図2に示すように、貼着板の接合端部である段差部DSにおける空隙X、及び、図2(b)に示すようにゲーベルトップ(屋根)の中のセンターシール部CSにおける空隙Yである。この段差部DSおよびセンターシール部CSに形成される空隙X、Yは、溶融樹脂により確実に密封する際に特に注意すべき部位である。液体用紙容器Pの上部の部位について説明したが、その底部にも同様の漏れやすい、あるいは、気密性を損ない易い部位が存在する。液体を封入した液体用紙容器Pの輸送時に、これらの部位が衝撃等により破損し、液漏れを起こさせることがあり、特に長距離輸送の場合にその危険性が高くなっている。このような状況に対応し、本発明は、破断強度や衝撃強度の高い本発明の液体用紙容器Pを提供するものである。
本発明の液体用紙容器Pの積層体1を構成する基材2、補強層5と接液層6とを含むヒートシーラント層4及び任意に設けられる最外層3について、以下に説明する。
基材2は紙からなり、この紙は、液体用紙容器Pを構成する基本素材となることから賦型性、耐屈曲性、剛性、腰、強度等を有するものを使用することができる。紙としては、例えば、主強度材であり、強サイズ性の晒または未晒の紙基材、あるいは、純白ロール紙、クラフト紙、板紙、加工紙、ミルク原紙等の各種の紙基材を使用することができる。基材2は、これらの紙を複数層重ねたものであってもよい。また、紙は、通常、坪量10〜600g/m程度のものが用いられ、容器としての剛性が要求される場合には、一般に板紙と言われる坪量100〜500g/m程度のものが好適に用いられる。紙の厚さは、通常、110〜860μm程度、好ましくは140〜640μm程度である。
ヒートシーラント層4は、基材2側の補強層5と内容物である液体に接する側の接液層6とからなる。補強層5は線状低密度ポリエチレン(LLDPE)からなり、接液層6は、低密度ポリエチレン(LDPE)と線状低密度ポリエチレン(LLDPE)とを混合した樹脂からなる層である。ヒートシーラント層4をこのように2層構成とすることによって、液体用紙容器として要求される性能や機能、例えば、ヒートシール性(密封性)、開封性、耐衝撃性等を付与することができる。ヒートシーラント層4は、特にヒートシールによる密封性が高く、液体用紙容器Pを成形する際のヒートシール部における段差部DSやセンターシール部CSの空隙部X、Yに溶融樹脂を充填することが可能となる。
補強層5及び接液層6の少なくともいずれかに用いられるLLDPE及びLDPEについて、その材質等を説明する。
補強層5及び接液層6に用いられるLLDPEは、エチレンとα−オレフィンとの共重合体を指す。α−オレフィンとしては、直鎖または分岐鎖状の炭素数3〜20のオレフィンが好ましく、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等を挙げることができる。特に、接液層6に用いるα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチルペンテンといった炭素数6以下を用いるのが好ましい。また、補強層5に用いるα−オレフィンとしては、直鎖または分岐鎖状の炭素数6〜20のオレフィンであり、例えば、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等が好ましい。オレフィンの直鎖または分岐鎖状の炭素数が3未満の場合、共重合体の強度が弱くなり、炭素数が20を超えた場合、製造での経済性の点で好ましくない。また、それらを2種類以上組み合わせて使用しても良い。これら共重合体の中でも、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体が強度と経済性の観点から好適である。
また、メタロセン触媒で重合したLLDPEは、チーグラーナッタ触媒で重合したLLDPEに比べて、引張り強度・引き裂き強度・突き刺し強度等の機械的特性に優れており好適に使用できる。また、メタロセン触媒で重合したLLDPEを液体用紙容器Pに用いた場合には、内容物にポリエチレン臭がつきにくく内容物のフレーバーを保持しやすい。ここで、シングルサイト触媒(メタロセン触媒、いわゆるカミンスキー触媒を含む)は、活性点が均一(シングルサイト)であるという特徴を持つ。このシングルサイト触媒は、メタロセン系遷移金属化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒であり、無機物に担持されて使用されることもある。
ここで、メタロセン系遷移金属化合物としては、例えば、IVB族から選ばれる遷移金属[チタニウム(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)]に、シクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル基、テトラヒドロインデニル基、置換テトラヒドロインデニル基、フルオニル基または置換フルオニル基が1乃至2結合しているか、あるいは、これらのうちの二つの基が共有結合で架橋したものが結合しており、他に水素原子、酸素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アセチルアセトナート基、カルボニル基、窒素分子、酸素分子、ルイス塩基、ケイ素原子を含む置換基、不飽和炭化水素等の配位子を有するものが挙げられる。
また、有機アルミニウム化合物としては、アルキルアルミニウム、または鎖状あるいは環状アルミノキサン等が挙げられる。ここで、アルキルアルミニウムとしては、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジメチルアルミニウフルオリド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、エチルアルミニウムセスキクロリド等が挙げられる。
また、鎖状あるいは環状アルミノキサンは、アルキルアルミニウムと水を接触させて生成される。例えば、重合時にアルキルアルミニウムを加えておき、後に水を添加するか、あるいは、錯塩の結晶水または有機・無機化合物の吸着水とアルキルアルミニウムとを反応させることで得られる。
また、本発明に使用可能なLLDPEは、密度が0.900〜0.945g/cm3の範囲のものが好ましく、さらに好ましくは0.905〜920g/cm3の範囲にあるものである。なお、この密度は、ISO 1872−2(JIS K6922−2)に準拠して測定された値である。LLDPEの密度が0.900g/cm3未満であると、トップシールして液体用紙容器に成形した後、シール強度が強くなりすぎ開封不良を起こし易くなる。一方、LLDPEの密度が0.945g/cm3を超えた場合、液体用紙容器を形成する時のシール性が不十分となり漏れの原因となる恐れがある。
補強層5のM.I(メルトフローインデックス)は3〜15が好ましく、5〜10がより好ましい。この範囲にすることにより安定した強度を確保することができる。また、接液層6のM.I(メルトフローインデックス)は5〜20が好ましく、7〜15がより好ましい。この範囲にすることにより安定した開封性を得ることができる。
さらに、乳製品用としては、乳等省令に適合する無添加LLDPEを使用するが、この無添加LLDPEは、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、難燃化剤、顔料、染料、無機および有機充填剤等の各種添加剤を含まない樹脂である。
すなわち、LLDPEの場合、イオン重合のため必ず反応触媒が使用され、一般的には、四塩化塩素を含有した塩素系触媒がされ、塩素には腐食性があるため、中和するためにステアリン酸カルシウム等を使用することになり、このことにより塩化カルシウム、ステアリン酸等が生成され、無添加のLLDPEとならなくなる。本発明で使用するLLDPEは、重合時に使用する触媒が非塩素系タイプであるため、中和剤を添加する必要がなく無添加のLLDPEとすることができる。
接液層6に用いられるLDPEとしては、一般に500〜7000気圧の高圧下でラジカル重合開始剤の存在下で重合することで得られ、多くの長鎖分岐を有することを特徴の1つとしている。その長鎖分岐を有する構造のために優れた押出特性を持っていることが知られており、押出ラミネート法には特に好適に用いられる。
さらに、乳製品用としては、乳等省令に適合する無添加LDPEを使用するが、この無添加LDPEは、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、難燃化剤、顔料、染料、無機および有機充填剤等の各種添加剤を含まない樹脂である。
ここで、接液層6の混合樹脂について説明する。混合樹脂におけるLDPEとLLDPEとの混合割合は、特に限定されないが、混合樹脂におけるLLDPEの割合が20〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは40〜60質量%である。混合樹脂の混合割合をこのような範囲内とすることにより、安定した耐衝撃性を強化することができるとともに安定した開封性を得ることができる。一方、混合樹脂におけるLLDPEの割合が20質量%未満であると、耐衝撃性を強化することができず、漏れが発生しやすくなるという問題があり、80質量%を超えると、開封性が悪くなるという問題がある。
接液層6の混合樹脂の密度は、特に限定されず、混合する各樹脂の密度や割合にもよるが、例えば、0.905〜0.925g/cm程度である。接液層6の混合樹脂密度をこの範囲とすることにより、安定した開封性を得ることができる。
ヒートシーラント層4の厚みは、25〜60μm、より好ましくは25〜40μmである。ヒートシーラント層4の厚みが25μm未満の場合、ヒートシール部の段差にピンホールが発生しやすくなる。一方、ヒートシーラント層4の厚みが60μmを超えるとヒートシールに時間がかかり、液体用紙容器Pを成形する効率が低下する。
補強層5であるLLDPEの層の厚みは、10〜50μm、より好ましくは20〜40μmである。補強層5の厚みをこの範囲内とすることにより、安定した耐衝撃性を強化することができる。一方、補強層5の厚みが10μm未満の場合には、耐衝撃性を強化する効果が見られなくなり、50μmを超えた場合には、シール強度が強くなりすぎ、使用時の開封性が低下する。
接液層6であるLDPEとLLDPEの混合樹脂層の厚みは、10〜50μm、より好ましくは20〜40μmである。接液層6の厚みをこの範囲内とすることにより、安定した耐衝撃性を強化することができ、安定した開封性を得ることができる。一方、接液層6の厚みが10μm未満の場合には、耐衝撃性を強化することができない場合があり、50μmを超えた場合には、シール強度が強くなりすぎ、使用時の開封性が悪くなるという問題がある。
ヒートシーラント層4における補強層5と接液層6の厚み比率(補強層5の厚み/接液層6の厚み)は、0.2〜5の範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは、1〜4の範囲内である。厚み比率をこの範囲内とすることにより、安定した耐衝撃性を強化することができ、安定した開封性を得ることができる。一方、補強層5と接液層6の厚み比率が0.2未満の場合には、耐衝撃性を強化することができず、漏れが発生しやすくなるという問題があり、厚み比率が5を超えた場合には、シール強度が強くなりすぎ、使用時の開封性が悪くなるという問題がある。
ヒートシーラント層4の形成方法は、特に限定されないが、例えば、補強層5としてのLLDPEと、接液層6としてのLDPE及びLLDPEの混合樹脂と、の2種類を、共押出しによるフィルム成形法を用いて形成してもよく、フィルムラミネーション成形法を用いて形成してもよい。共押出しによるフィルム成形法としては、具体的に、共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法等が挙げられ、フィルムラミネーション成形法としては、具体的にドライラミネーション法が挙げられる。
これらの成形法のうち、共押出によるフィルム成形法が好ましく、共押出ラミネーション法が特に好ましく用いられる。この共押出成形法では、フィルムラミネーション法のように、加工時に使用される接着剤中の溶剤を乾燥させる必要がなく、溶媒乾燥工程が不要であり、フィルムラミネーション法と比較して生産性に優れる。インフレーション法あるいはTダイ法によってフィルム化して層を構成することもできるが、その場合は、その製膜工程と紙にラミネートする工程との2工程となる。従って、共押出装置を搭載したラミネーターを用いて、紙面に直接共押出しラミネーションして積層体とする方法が好ましく、その結果、一度の加工工程で積層体1とすることが可能である。なお、補強層5と接液層6とを一層ずつ形成することも可能であり、各層について押出ラミネーションやフィルムラミネーション等が用いられる。
上記各手法を用いたヒートシーラント層4を形成する際の温度は、特に限定されないが、270〜310℃程度、好ましくは280〜300℃程度に低くすることができる。すなわち、補強層5と接液層6にLLDPEが含まれていることにより、これらの層の形成温度を低下させることができる。そのため、材料の酸化や劣化を防いで、補強層5及び接液層6の破断強度や衝撃強度を向上させることができ、製品の長距離輸送においても衝撃等による破損や漏れが発生することのない強度を有する液体用紙容器Pを提供できる。
さらに、ヒートシーラント層4を形成する際に、基材2である紙面と補強層5であるLLDPEとの接着を高めるために、接合面にコロナ処理、オゾン処理、フレーム処理、低温プラズマ処理、電子線照射処理、紫外線照射処理など各種の前処理を施こすことが好ましい。この中では比較的簡便で効果の高いフレーム処理が好適に用いられる。
最外層3は、積層体1に任意に設けられる層であり、基材2の外部を保護し、積層体1の端の部分においては、加熱されてヒートシーラント層4と貼り合わせるために設けられる。そのため、最外層3の材料としては、通常、ポリエチレン(PE)、特に低密度ポリエチレン(LDPE)が用いられ、裏面側のヒートシーラント層4とのヒートシール性が良好となるように、ヒートシーラント層4の接液層6に含まれるLDPEと同様のLDPEを用いることが好ましい。このLLDPEの密度は、通常、低密度ポリエチレンといわれる範囲であれば特に限定されないが、0.91〜0.94g/cm程度であり、そのメルトインデックスM.I.も、特に限定されないが、通常、1〜20程度である。
最外層3の形成方法は、特に限定されないが、例えば、基材2の一方の面に押出コート、押出ラミネーション等をすることにより形成される。最外層3の厚さは、特に限定されないが、通常、10〜25μm程度である。
本発明の液体用紙容器Pの積層体1には、上述した各層が設けられていれば、他の構成は特に限定されず、例えば、基材2と最外層3との間に文字、図形、記号、その他の所望の絵柄等を示す印刷層等が設けられていてもよいし、基材2とヒートシーラント層4との間にバリア層等が設けられていてもよい。また、最外層3のさらに表面に印刷層を設けることもでき、この場合には、印刷層に用いられる印刷インキの密着性の向上を図るために表面に例えばコロナ処理等の表面処理を施すことが好ましい。
積層体1を用いた液体用紙容器Pの製造方法は、特に限定されないが、通常、前述の層構成からなる積層体1のシートを作製した後、所定の形状に打ち抜き、端面をスカイブ・ヘミングして内容物が端面に接触しないようにし、液体の充填装置内で底部及びトップ部を熱風加熱、火炎加熱等によりヒートシールして液体用紙容器Pとする。
この液体用紙容器Pの形状については、用途・目的等に応じて適宜決定すればよく、図1に示すゲーベルトップ型や、その他にブリック型、フラットトップ型等が挙げられる。また、この紙容器の注出口には、たとえばポリエチレン製のキャップ、プルタブ型の開封機構等を適宜に設けてもよい。
液体用紙容器Pの内容物も、特に限定されず、牛乳、ジュース、ミネラルウォーター、緑茶、紅茶、ウーロン茶、日本酒、焼酎等の飲料や、食用油、醤油、みりん、食酢、固形物の入った調味料等の食品、シャンプー、リンス、機械油等の非食品等、様々な液体を内容物とすることができる。
本発明を実施例により説明する。以下からの実施例と比較例、および参考例の積層体を作製し、液体用紙容器を成形、内容物を充填して、それぞれの項目について評価した。
参考例1)
基材として、坪量320g/m2のミルクカートン原紙を用い、その表面側に、最外層として、無添加のLDPE(LC520(日本ポリエチレン株式会社製)、密度0.923g/cm3、M.I3.8)を厚さ17μmで310℃にて押出コーティングした。基材の裏面側に、ヒートシーラント層を290℃にて共押出コーティングした。ヒートシーラント層は、基材側の補強層と接液側の接液層とからなり、補強層は無添加のLLDPE(NH745N(日本ポリエチレン株式会社製)、密度0.913g/cm3、M.I8)、厚さ20μmであった。接液層は無添加のLDPE(LC520(日本ポリエチレン株式会社製)、密度0.923g/cm3、M.I3.8)と無添加のLLDPE(NH745N(日本ポリエチレン株式会社製)、密度0.913g/cm3、M.I8)との混合樹脂(密度0.921g/cm3、M.I4.5)である。接液層におけるLLDPEの割合が20質量%であり、LDPEの割合が80質量%である。接液層の厚さは20μmであった。このようにして、下記の構成の参考例1の積層体を作製した。
LDPE17μm/紙320g/m2/LLDPE20μm/(LDPE+LLDPE)
20μm
次に、この積層体を使用して、公知の方法で容量1000mlのゲールトップ型の紙容器を作製し、中に内容物として緑茶を充填して密封して参考例1の液体用紙容器とした。
(実施例
接液層におけるLLDPEの割合を40質量%、LDPEの割合を60質量%とした他は、参考例1と同様にして、実施例の積層体及び液体用紙容器を作製した。
(実施例
接液層におけるLLDPEの割合を60質量%、LDPEの割合を40質量%とした他は、参考例1と同様にして、実施例の積層体及び液体用紙容器を作製した。
参考例2
接液層におけるLLDPEの割合を80質量%、LDPEの割合を20質量%とした他は、参考例1と同様にして、参考例2の積層体及び液体用紙容器を作製した。
なお、上記実施例1〜2および参考例1〜2の接液層におけるLLDPEとLDPEの配合比に対するM.Iは以下の表の通りである。
Figure 0005732713
(比較例1)
接液層におけるLLDPEの割合を0質量%、すなわち、接液層をLDPEからなる層とし、ヒートシーラント層の共押出ラミネーション温度を320℃とした他は、参考例1と同様にして、比較例1の積層体及び液体用紙容器を作製した。
(比較例2)
接液層におけるLLDPEの割合を100質量%、すなわち、補強層と接液層を合わせてLLDPEからなる厚さ40μmの層とし、ヒートシーラント層の共押出ラミネーション温度を290℃とした他は、参考例1と同様にして、比較例2の積層体及び液体用紙容器を作製した。
上記実施例1〜2、参考例1〜2および比較例1〜2の各項性をまとめると以下の通りである。
参考例1:
LDPE17μm/紙320g/m2/LLDPE20μm/(LDPE80%+LLDPE20%)20μm(接液面側))
実施例
LDPE17μm/紙320g/m2/LLDPE20μm/(LDPE60%+LLDPE40%)20μm(接液面側)
実施例
LDPE17μm/紙320g/m2/LLDPE20μm/(LDPE40%+LLDPE60%)20μm(接液面側)
参考例2
LDPE17μm/紙320g/m2/LLDPE20μm/(LDPE20%+LLDPE80%)20μm(接液面側)
比較例1:
LDPE17μm/紙320g/m2/LLDPE20μm/LDPE20μm(接液面側)
比較例2:
LDPE17μm/紙320g/m2/LLDPE20μm/LLDPE20μm(接液面側)
(評価方法)
上記実施例1〜2、参考例1〜2および比較例1、2の液体用紙容器について、下記の項目の各試験を行った。その評価結果を表1に示す。
(1)フィルム強度比較
ヒートシーラント層のフィルムの破断強度と伸度の比較をした。試験条件およびその結果は以下の通りである。
(試験条件)
サンプル:15mm巾
引張りスピード:300mm/min
(結果)
Figure 0005732713
Figure 0005732713
(評価)
比較例1に比べ接液層にLLDPEをブレンドすることにより破断強度が強くなっていることが確認できた。また、伸度についても破断強度同様LLDPEをブレンドすることによって伸び易いことが確認できた。
(2)振動試験
サンプルを12本入りのクレートに入れ、3ケースを15分単位で60分まで縦方向のみの振動を加えた時の洩れを比較した。試験条件およびその結果は以下の通りである。
(試験条件)
振動数:0.8Hz、
振幅:5.5mm
(結果)
Figure 0005732713
(評価)
比較例1に比べ接液層にLLDPEをブレンドすることにより振動による洩れに対し優れていることが確認できた。
特にLLDPEのブレンドを40%以上にすることにより効果があることが確認できた。
(3)落下試験
高さ60cmからコンクリート面への底面単体落下を行い洩れるまでの落下回数を比較した。その結果は以下の通りである。
(結果)
Figure 0005732713
(評価)
比較例1に比べ接液層にLLDPEをブレンドすることにより落下による洩れに対し優れていることが確認できた。
(4)シール性試験
(株)中部機械製作所製(能力:1500本/H)の充填機にてシール性の比較をした。試験条件およびその結果は以下の通りである。
(試験条件)
適性シール温度:460℃
(結果)
Figure 0005732713
(評価)
比較例1に比べ接液層にLLDPEをブレンドすることによりシール性が良好で、耐ピンホール性も良好であることが確認できた。
(5)開封性試験
上記シール性試験でトップシール温度を変化させたサンプルについて開封性を比較した。試験条件およびその結果は以下の通りである。
(試験条件)
適性シール温度:460℃
(結果)
Figure 0005732713
(評価)
開封性については、比較例2以外は実用レベルであることが確認できた。
(6)滑り性試験
内面(接液面)の滑り性について比較をした。その結果は以下の通りである。
(結果)
Figure 0005732713
(評価)
滑り性については、比較例2以外は実用レベルであることが確認できた。
(総合評価)
以上の各試験結果より、LLDPEとLDPEの混合樹脂からなる補強層を有する本願実施例1〜4の液体用紙容器は、破断強度、衝撃強度が高く、開封性もよいものであった。
本発明は、容器の成形性、密封性等に優れた、牛乳、乳飲料、ジュース等を包装する液体用紙容器に広く利用可能である。特に、長距離輸送が行われるチルド流通用に用いられる乳製品を内容物とする液体用紙容器に好適に適用できるものである。
1 積層体
2 基材
3 最外層
4 ヒートシーラント層
5 補強層
6 接液層
P 液体用紙容器
X、Y 空隙
DS 段差部
CS センターシール部

Claims (1)

  1. 紙を基材とし、内側に補強層と接液側となる接液層とからなるヒートシーラント層を形成した積層体からなるゲーベルトップ型液体食品用紙容器であって、
    前記補強層が線状低密度ポリエチレン(LLDPE)からなる層であり、
    前記接液層が低密度ポリエチレン(LDPE)と線状低密度ポリエチレン(LLDPE)とを混合し、M.I(メルトフローインデックス)が5.3〜6.0である樹脂からなる層であり、
    前記接液層における低密度ポリエチレン(LDPE)と線状低密度ポリエチレン(LLDPE)との混合割合において、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)が40〜60質量%であり、
    前記ヒートシーラント層を形成する前記補強層と前記接液層の厚み比率(補強層の厚み/接液層の厚み)が、0.2〜5の範囲内であり、
    前記線状低密度ポリエチレン(LLDPE)および前記低密度ポリエチレン(LDPE)が、添加剤を加えない無添加の樹脂であることを特徴とするゲーベルトップ型の液体食品用紙容器。
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