(本願における記載形式・基本的用語・用法の説明)
本願において、実施の態様の記載は、必要に応じて、便宜上複数のセクション等に分けて記載するが、特にそうでない旨明示した場合を除き、これらは相互に独立別個のものではなく、記載の前後を問わず、単一の例の各部分、一方が他方の一部詳細または一部または全部の変形例等である。また、原則として、同様の部分は繰り返しの説明を省略する。また、実施の態様における各構成要素は、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、必須のものではない。
同様に実施の態様等の記載において、材料、組成等について、「AからなるX」等といっても、特にそうでない旨明示した場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、A以外の要素を含むものを排除するものではない。たとえば、成分についていえば、「Aを主要な成分として含むX」等の意味である。たとえば、「シリコン部材」等といっても、純粋なシリコンに限定されるものではなく、SiGe(シリコン・ゲルマニウム)合金やその他シリコンを主要な成分とする多元合金、その他の添加物等を含む部材も含むものであることはいうまでもない。また、金めっき、Cu層、ニッケル・めっき等といっても、そうでない旨、特に明示した場合を除き、純粋なものだけでなく、それぞれ金、Cu、ニッケル等を主要な成分とする部材を含むものとする。
さらに、特定の数値、数量に言及したときも、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、その特定の数値を超える数値であってもよいし、その特定の数値未満の数値でもよい。
また、実施の形態の各図中において、同一または同様の部分は同一または類似の記号または参照番号で示し、説明は原則として繰り返さない。
また、添付図面においては、却って、煩雑になる場合または空隙との区別が明確である場合には、断面であってもハッチング等を省略する場合がある。これに関連して、説明等から明らかである場合等には、平面的に閉じた孔であっても、背景の輪郭線を省略する場合がある。更に、断面でなくとも、空隙でないことを明示するために、ハッチングを付すことがある。
<半導体装置>
まず、本実施の形態に係る半導体装置の構造の概要について説明する。図1は、本実施の形態の半導体装置の表面を示す平面図、図2は図1に示す半導体装置の裏面を示す平面図である。また、図3は、図1に示す半導体装置の表面側の内部構造を示す平面図である。また、図4は、図3のA−A線に沿った断面図である。
本実施の形態では、配線基板(基板)10上に半導体チップ2が搭載され、配線基板10上に形成された樹脂体(封止体)4により半導体チップ2が封止された樹脂モールドタイプの半導体装置1について説明する。
半導体装置1は、配線基板10の表面10a上に搭載される半導体チップ2、半導体チップ2と配線基板10を電気的に接続する複数の導電性部材(本実施の形態ではワイヤ3)、半導体チップ2および複数のワイヤ3を封止する樹脂体4、および配線基板10の裏面10b側に形成され、且つ、半導体チップ2と電気的に接続される半田ボール(半田材)5を有している。なお、半田ボール5は、半導体装置1と実装基板(マザーボード)とを電気的に接続するための外部電極(外部接続端子)である。
配線基板10上への半導体チップ2の実装方式は、複数のパッド2cが形成された主面2a側を配線基板10の表面10aと対向させ、複数のバンプ電極を介して実装する、フェイスダウン実装方式(フリップチップ実装方式)と、図4に示すように主面2aの反対側に位置する裏面2bを表面10aと対向させて実装する、フェイスアップ実装方式に大別される。本実施の形態では、フェイスアップ実装方式を用いており、半導体チップ2と配線基板10を電気的に接続する導電性部材として、図4に示すように、例えばワイヤ3を使用している。フェイスアップ実装方式は、フェイスダウン実装方式と比較して、製造コストを低減できるというメリットがある。
フェイスアップ実装方式では、半導体チップ2と配線基板10をワイヤボンディング方式により、電気的に接続する。すなわち、半導体チップ2の主面2a上に形成された複数のパッド(電極、チップ電極)2cと、配線基板10の表面10a側に露出するように、平面視において半導体チップ2の周囲に配置される複数のボンディングリード(端子、ボンディングパッド)11を、複数のワイヤ3を介して電気的に接続する。ワイヤボンディング方式は、ワイヤ3の接合部(パッド2cやボンディングリード11との接合部)を容易に視認することができるので、接続不良が発生しても、これを容易に発見することができる。しかし、ワイヤ3が露出した状態では、衝撃等によりワイヤ3に変形が生じた場合に短絡などの原因となるため、複数のワイヤ3の変形を防止する必要がある。そこで、図4に示すように、配線基板10の表面10a上に樹脂体4を形成し、半導体チップ2およびワイヤ3を封止することで、ワイヤ3を保護している。
また、配線基板10の表面10aの反対側に位置する裏面10bには、複数の半田ボール5が形成されている。複数の半田ボール5は、配線基板10に形成された複数の配線12を介して表面10a側に形成されたボンディングリード11と電気的に接続されている。このため、半導体装置1を実装基板(図示は省略)に実装する際には、半田ボール5を実装基板の端子(図示は省略)に接合して電気的に接続する。つまり、半田ボール5は半導体装置1の外部電極(外部接続端子)となる。
また、図2に示すように、複数の半田ボール5は、配線基板10の裏面10b側に行列状に配置されている。つまり、半導体装置1は、複数の外部電極が配線基板10の裏面(実装面)10b側に行列状に配置される、所謂、エリアアレイ型の半導体装置である。エリアアレイ型の半導体装置は、配線基板10の裏面10b側を外部電極の配置スペースとして有効に活用することができる。このため、例えば、QFP(Quad Flat Package)やQFN(Quad Flat Non-leaded Package)など、半導体チップを搭載する基材としてリードフレームを用いた半導体装置と比較して、外部電極の数を増やす事ができる点で有利である。
なお、エリアアレイ型の半導体装置としては、本実施の形態の半導体装置1のように、外部電極として半田ボール5が取り付けられたBGA(Ball Grid Array)型半導体装置の他、例えば、半田などの接合部材を取り付けるためのランド13が露出した、LGA(Land Grid Array)型の半導体装置などもある。また、図示しない実装基板に容易に実装するため、LGA型であっても、ランド13の露出面に薄く半田材を塗布する場合もある。
本実施の形態の半田ボール5は、鉛(Pb)を実質的に含まない、所謂、鉛フリー半田からなり、例えば錫(Sn)のみ、錫−ビスマス(Sn−Bi)、または錫−銅−銀(Sn−Cu−Ag)などである。ここで、鉛フリー半田とは、鉛(Pb)の含有量が0.1wt%以下のものを意味し、この含有量は、RoHs(Restriction of Hazardous Substances)指令の基準として定められている。以下、本実施の形態において、半田、あるいは半田ボールについて説明する場合には、特にそうでない旨明示した場合を除き、鉛フリー半田を指す。
<配線基板>
次に、図2〜図4に示す配線基板10の詳細について説明する。図5は図3に示す配線基板の表面側を示す平面図、図6は、図5に示すB部の拡大平面図、図7は図6のC−C線に沿った拡大断面図である。
図7に示すように、配線基板10は、上面(主面)14a、上面14aの反対側に位置する下面(裏面)14b、および上面14aと下面14bの間に位置する側面14c(図4参照)を有する絶縁層(コア層)14を有している。絶縁層14は、例えば、ガラス繊維または炭素繊維に樹脂を含浸させたプリプレグからなる。また、絶縁層14の上面14aおよび下面14bは、それぞれ絶縁膜(ソルダレジスト膜、保護膜)16、17に覆われている。絶縁膜16、17は、絶縁層14の上面14aや下面14bに形成される複数の配線12を覆うように形成され、複数の配線12間の短絡や、断線などを防止する保護膜である。したがって、絶縁膜(上面側絶縁膜)16は、配線基板10の最上面である表面10aに、絶縁膜(下面側絶縁膜)17は、配線基板10の最下面である裏面10bに、それぞれ形成されている。
なお、本願では、配線基板10の最上面である絶縁膜16の上面と、配線基板10の最上層配線が形成される絶縁層14の上面14aを区別して説明する。すなわち、図7に示すように、配線基板10の表面10aとは、配線基板10の最上層に配置される絶縁膜16の上面(最表面)を指し、配線基板10内部の絶縁層の上面14aとは区別される。同様に、配線基板10の裏面10bとは、配線基板10の最下層に配置される絶縁膜17の下面(最表面)を指し、配線基板10内部の絶縁層の下面14bとは区別される。
図5に示すように、配線基板10は、平面視において四角形を成す。配線基板10の表面10aには、半導体チップ2(図3参照)を搭載するチップ搭載領域10cが設けられている。本実施の形態では、チップ搭載領域10cは、平面視において配線基板10の外形に沿った四角形を成し、例えば、表面10aの中央部に配置されている。チップ搭載領域10cの周囲には、上面14aに、複数のボンディングリード(端子、ボンディングパッド)11が形成されている。複数のボンディングリード11は、例えば、銅(Cu)からなり、その表面には、めっき膜(図示は省略)が形成されている。めっき膜は、本実施の形態では、例えば、ニッケル(Ni)膜上に金(Au)膜が積層された積層膜となっている。
また、図5に示すように、複数のボンディングリード11は、チップ搭載領域10cの各辺に沿って配置されている。なお、本実施の形態では、チップ搭載領域10cの各辺(換言すれば、半導体チップ2の各辺)に沿って、それぞれ1列で複数のボンディングリード11が配置されている。しかし、ボンディングリードの配列は図5に示す態様に限定されず、例えば、チップ搭載領域10cの各辺(換言すれば、半導体チップ2の各辺)に沿って、複数列で配置することもできる。この場合、ボンディングリード11の配置スペースの増加を抑制し、かつ、多くのボンディングリード11を配置することができるので、小型で、狭ピッチで、さらに多ピンの半導体装置に適用して有効である。
各ボンディングリード11は、図7に示すように絶縁層14の上面14aを覆う絶縁膜16に形成された開口部16aにおいて、絶縁膜16から露出している。本実施の形態では、図6に示すように、絶縁膜16のボンディングリード11と重なる位置に、ボンディングリード11よりも小さい開口部16aが形成され、ボンディングリード11の一部が露出している。
また、各ボンディングリード11は、配線基板10の複数の配線層に形成された配線12を介して絶縁層14の下面14bに形成されたランド(端子、電極)13と電気的に接続されている。詳しくは、配線基板10は、複数の配線層を有している。図4および図7では、上面14aに形成される配線層と下面14bに形成される配線層からなる2層の配線層を示している。各配線層には、例えば、銅(Cu)からなる複数の配線12が形成され、上面14aおよび下面14bのうちの一方の面(本実施の形態では、上面14a)側から他方の面(本実施の形態では、下面14b)側に向かって形成されたビア(孔)15a内の配線(ビア内配線、層間配線)15を介して各配線層の配線12が電気的に接続されている。ビア15aは、上面14aから下面14bまで貫通するように形成されており、上面14aに形成された配線12aと下面14bに形成された配線12bを、配線15を介して電気的に接続している。図7に示すように、絶縁層14の上面14aに形成されたボンディングリード11は、同じく上面14aに形成された複数の配線(最上層配線)12aと一体に形成されている。一方、絶縁層14の下面14bに形成されるランド13は、同じく下面14bに形成された配線(最下層配線)12bと一体に形成されている。つまり、複数のボンディングリード11に接続される導電経路は、配線12、15を介して下面14b側に引き出され、複数のランド13と電気的に接続されている。各ランド13は、図7に示すように絶縁層14の下面14bを覆う絶縁膜17に形成された、開口部17aにおいて、絶縁膜17から露出している。本実施の形態では、絶縁膜17のランド13と重なる位置に、ランド13よりも小さい開口部17aが形成され、ランド13の一部が露出している。そして、図4に示すように、複数のランド13には、外部電極である複数の半田ボール5が接合するので、複数のボンディングリード11は、複数の半田ボール5と電気的に接続される。
複数のランド13は、例えば、銅(Cu)からなり、その表面には、めっき膜(図示は省略)が形成されている。めっき膜は、本実施の形態では、例えば、ニッケル(Ni)膜上に金(Au)膜が積層された積層膜となっている。また、図示は省略するが、複数のランド13は、下面14bにおいて、図2に示す半田ボール5と同様に行列状(アレイ状、マトリクス状)に配置されている。言い換えれば、行列状に配置される複数のランド13の露出部のそれぞれに、半田ボール5が接合されている。
図6および図7では、ボンディングリード11よりも配線基板10の外周側(図6あるいは図7が記載される紙面に対して左側)に向かって延在する配線12を示している。この配線12は、絶縁層14(図7)の上面14a上に配線12やボンディングリード11を電解めっき法により形成する際の給電線12cである。
なお、本実施の形態では、絶縁層14の上面14aおよび下面14bに配線12が形成された、2層の配線層を有する配線基板を示している。しかし、配線基板10の配線層数は2層には限定されず、例えば、絶縁層14内に複数層の配線層(配線12)を形成する、所謂、多層配線基板とすることもできる。この場合、最上層配線層と最下層配線層の間に、さらに配線層を形成することにより、配線を引き回すスペースを増加させることができるので、端子数が多い半導体装置に適用して特に有効である。
<半導体チップ>
次に、配線基板10上に搭載する半導体チップ2について説明する。図4に示すように本実施の形態の半導体チップ2は、主面(第1主面)2a、主面2aの反対側に位置する裏面(第2主面)2b、およびこの主面2aと裏面2bとの間に位置する側面を有している。また、図3に示すように半導体チップ2の平面形状(主面2a、裏面2bの形状)は略四角形からなる。
半導体チップ2の主面2a上には、複数のパッド(電極、チップ電極)2cが形成されている。複数のパッド2cは、半導体チップ2の各辺に沿って主面2a上の周縁部側にそれぞれ配置されている。
また、半導体チップ2の主面2aには、それぞれダイオードやトランジスタなどの複数の半導体素子(回路素子)が形成され、半導体素子上に形成された図示しない配線(配線層)を介して、複数のパッド2cとそれぞれ電気的に接続されている。このように半導体チップ2は、主面2aに形成された複数の半導体素子とこれら複数の半導体素子を電気的に接続する配線により集積回路を構成している。
なお、半導体チップ2の半導体素子形成面である主面2aを持つ基材(半導体基板)は、例えば、シリコン(Si)からなる。また、主面2a上の最表面には絶縁膜であるパッシベーション膜(図示は省略)が形成されており、複数のパッド2cのそれぞれの表面は、このパッシベーション膜に形成された開口部において、絶縁膜から露出している。
また、このパッド2cは金属からなり、本実施の形態では、例えばアルミニウム(Al)からなる。さらに、このパッド2cの表面には、めっき膜が形成されており、本実施の形態では、例えばニッケル(Ni)膜を介して、金(Au)膜が形成された多層構造の積層めっき膜である。
また、本実施の形態では、半導体チップ2は、裏面2bを配線基板10の表面10aと対向させた状態で、チップ搭載領域10c上に搭載する、所謂フェイスアップ実装方式により搭載する。半導体チップ2は、接着材6を介してチップ搭載領域10cの表面10a上に固定される。接着材6は、配線基板10の表面10aに半導体チップ2をしっかりと固定できるものであれば、特に限定されないが、本実施の形態では、例えば、エポキシ系の熱硬化性樹脂を用いている。
また、図3および図4に示すように、半導体チップ2は複数のワイヤ3を介してそれぞれ配線基板10と電気的に接続されている。詳しくは、ワイヤ3の一方の端部は、半導体チップ2の主面2a上のパッド2cに接続され、他方は、配線基板10のボンディングリード11に接続されている。本実施の形態では、ワイヤ3は金(Au)からなり、半導体チップ2のパッド2cおよび配線基板10のボンディングリード11の表面に形成された金めっき膜と、Au−Au接合を介して接合されている。
<樹脂体>
次に、半導体チップ2、複数のワイヤ3、および複数のボンディングリード11を封止する樹脂体4について説明する。図4に示すように、本実施の形態の樹脂体4は、配線基板10の表面10a上に形成され、半導体チップ2、複数のワイヤ3、および複数のボンディングリード11を封止している。樹脂体4は、例えばエポキシ系の熱硬化性樹脂に例えばシリカなどのフィラ材を添加し、半導体チップ2および複数のワイヤ3を封止した後で硬化させることで形成される。
また詳細は後述するが、本実施の形態の半導体装置1は複数のデバイス領域を一つのキャビティで覆った状態で一括封止する、所謂MAP(Mold Array Package)方式で製造された半導体装置である。このため、配線基板10の表面10a全体が樹脂体4により覆われている。
<半導体装置の製造工程>
次に、図1〜図4に示す半導体装置1の製造工程について、説明する。本実施の形態における半導体装置1は、図8に示す組立てフローに沿って製造される。図8は、図1〜図4に示す半導体装置の組み立てフローを示す説明図である。各工程の詳細については、図9〜38を用いて、以下に説明する。
1.基板準備工程
まず、図8に示す基板準備工程(S1)として、図9に示すような配線基板20を準備する。図9は、図8に示す基板準備工程で準備する配線基板の全体構造を示す平面図、図10は図9に示すD部の拡大平面図、図11は図10に示す配線基板の裏面側を示す拡大平面図である。また、図12は、図10のE−E線に沿った拡大断面図である。
図9に示すように、本工程で準備する配線基板(基板)20は、枠部(枠体)20bの内側に複数のデバイス領域20aを備えている。詳しくは、複数のデバイス領域20aが行列状に配置されている。デバイス領域20aの数は、図9に示す態様に限定されないが、本実施の形態の配線基板20は、例えば、行列状(図9では7行×16列)に配置された112個のデバイス領域20aを備えている。つまり、配線基板20は、複数のデバイス領域20aを有する、所謂、多数個取り基板である。
各デバイス領域20aは、図5に示す配線基板10に相当し、図5〜図7を用いて説明した配線基板10の各部材が形成されている。例えば、図10に示すように、各デバイス領域20aの表面10aには、チップ搭載領域10cと、チップ搭載領域10cの周囲に並べて配置され、絶縁膜16から露出する複数のボンディングリード(端子、ボンディングパッド)11が形成されている。また、図11に示すように、配線基板20の裏面10bには、各デバイス領域20aに、絶縁膜17から露出する複数のランド13が行列状に配置されている。
また、各デバイス領域20a(複数のデバイス領域20aのうちの互いに隣り合うデバイス領域間)の周囲には、図8に示す個片化工程(S7)で配線基板20を切断する予定領域であるダイシング領域(ダイシングライン、切断領域)20cが配置されている。図9に示すように、ダイシング領域20cは、隣り合うデバイス領域20aの間、および枠部20bとデバイス領域20aの間、に各デバイス領域20aを取り囲むように配置されている。各デバイス領域20aは、例えば一辺の長さが5mm〜20mmの四角形を成す。ダイシング領域20cは四角形を成す複数のデバイス領域20aそれぞれの周囲に配置されるので、例えば、図9に示すように、配線基板20は、X方向に沿って延びる複数のダイシング領域20c1と、X方向と交差(図9では直交)するY方向に沿って延びる複数のダイシング領域20c2と、を備える。そしてダイシング領域20c1とダイシング領域20c2を格子状に交差させることで、複数のデバイス領域20aを区画している。また、枠形状を成すダイシング領域20cの幅は、例えば200μm〜400μmとなっている。
ここで、ダイシング領域20cとは、後述する個片化工程(S7)において、ダイシングブレード(回転刃)によって切削加工が施される予定領域であって、個片化工程では、ダイシング領域20c内の一部を切削加工する。また、ダイシングブレードと配線基板20の位置合わせ精度や、切削加工時の熱影響などを考慮して、ダイシング領域20cの幅は、ダイシングブレードの幅よりも広くなっている。このため、完成した半導体装置1(図1参照)の配線基板10(図1参照)の周縁部には、このダイシング領域20cの切削されなかった残部が残っている場合がある。
図9〜図12に示す配線基板20は、例えば以下のように製造する。まず、コア材である絶縁層14を準備して、図12に示すように、上面14aから下面14bに向かってビア(孔、貫通孔)15aを形成した後、ビア15a内に導体を埋め込んで配線15を形成する。
次に、絶縁層14の上面14a、および下面14bにそれぞれ配線パターンを形成する。詳しくは、絶縁層14の上面14aに複数の配線12および複数のボンディングリード11を、下面14bに複数の配線12および複数のランド13を形成する。配線パターンの形成方法は、例えば、セミアディティブ法を用いた電解めっきにより形成する。
次に、絶縁層14の上面14aを覆う絶縁膜16、および下面14bを覆う絶縁膜17をそれぞれ形成する。絶縁膜16、17は、絶縁層14の上面14aあるいは下面14bに形成される配線12を覆うように配置(塗布)し、これを硬化させて形成する。このため、絶縁膜16、17の表面は、配線12の形状に倣った凹凸を有している。つまり、絶縁膜16、17の表面の平坦度は、絶縁層14の上面14aあるいは下面14bの平坦度と比較して低くなっている。
次に、絶縁膜16に開口部16a、絶縁膜17に開口部17aを形成し、複数のボンディングリード11および複数のランド13をそれぞれ露出させる。開口部16a、17aは、例えば、エッチングにより形成する。
次に、ダイシング領域20cにエッチング処理を施し、絶縁膜16、17、およびダイシング領域20c内の配線12(給電線12c)を取り除く。これにより、ダイシング領域20cには、図12に示す開口溝16b、17bが形成され、絶縁層14の上面14aあるいは下面14bが絶縁膜16、17から露出する。また、開口溝16b、17bは、ダイシング領域20cに沿って形成され、ダイシング領域20c内の配線12(給電線12c)を取り除くことにより、デバイス領域20a内の各ボンディングリード11は、それぞれ電気的に分離される。また、デバイス領域20a内の各ランド13も、それぞれ電気的に分離される。したがって、配線基板20の各デバイス領域20aについて、例えば導通試験などの電気的試験を行うことができる。ただし、本実施の形態に対する変形例として、開口溝16b、17bを形成するためのエッチングは行わず、ダイシング領域20c内の配線12(給電線12c)およびこれを覆う絶縁膜16、17を残した状態でダイボンディング工程に供することもできる。この場合、後述する個片化工程(基板切断工程)では、ダイシング領域20c内の絶縁層14に加えて、ダイシング領域20c内の配線12(給電線12c)およびこれを覆う絶縁膜16、17に対して切削加工を施すことになる。このように、開口溝16b、17bを形成するためのエッチングを省略した場合、配線基板20が完成した段階でデバイス領域20a毎の電気的試験を行うことは難しいが、製造工程は簡略化することができる。したがって、配線基板20の端子数が少ない場合、あるいは配線構造が単純な場合には、製造効率を向上させる観点から好ましい。
2.半導体チップ準備工程
また、図8に示す半導体チップ準備工程(S2)として、図3に示す半導体チップ2を準備する。本工程では、例えば、シリコンからなる半導体ウエハ(図示は省略)の主面側に、複数の半導体素子やこれに電気的に接続される配線層からなる半導体ウエハを準備する。その後、半導体ウエハのダイシングラインに沿って、ダイシングブレードを走らせて(図示は省略)半導体ウエハを切断し、図5に示す半導体チップ2を複数個取得する。
3.ダイボンディング工程
次に、図8に示すダイボンディング工程(S3)について説明する。図13は、図10に示す配線基板上に半導体チップを搭載した状態を示す拡大平面図、図14は図13のF−F線に沿った拡大断面図である。
本工程では、半導体チップ2をチップ搭載領域10c上に搭載(接着)する(チップ搭載工程)。図14に示すように、本実施の形態では、半導体チップ2の裏面2bが、チップ搭載領域10cの表面10aと対向するように、接着材6を介してチップ搭載領域10c上に搭載する(フェイスアップ実装)。
本実施の形態では、例えば、エポキシ系の熱硬化性樹脂である接着材6を介して半導体チップ2を搭載するが、接着材6は、硬化(熱硬化)させる前には流動性を有するペースト材である。このようにペースト材をダイボンド材として用いる場合には、まず、チップ搭載領域10c上に、接着材6を塗布し、その後、半導体チップ2の裏面2bを配線基板20の表面10aに接着する。そして、接着後に、接着材6を硬化させる(例えば熱処理を施す)と、図14に示すように、半導体チップ2は接着材6を介してチップ搭載領域10c上に固定される。なお、本実施の形態では、接着材6に、熱硬化性樹脂からなるペースト材を用いる実施態様について説明したが、種々の変形例を適用することができる。例えば、ペースト材ではなく、両面に接着層を備えるテープ材(フィルム材)である接着材を、予め半導体チップ2の裏面2bに貼り付けておき、テープ材を介して半導体チップ2をチップ搭載領域10c上に搭載しても良い。
4.ワイヤボンディング工程
次に、図8に示すワイヤボンディング工程(S4)について説明する。図15は、図13に示す半導体チップと配線基板を、ワイヤボンディングにより電気的に接続した状態を示す拡大平面図、図16は、図14に示す半導体チップと配線基板を、ワイヤボンディングにより電気的に接続した状態を示す拡大断面図である。
本工程では、図15および図16に示すように、配線基板20と複数の半導体チップ2とを、複数のワイヤ3を介してそれぞれ電気的に接続する。詳しくは、半導体チップ2の主面上に形成された複数のパッド2cと、配線基板20の表面10a側に形成され、絶縁膜16から露出する複数のボンディングリード11を、複数のワイヤ3を介してそれぞれ電気的に接続する。本実施の形態では、半導体チップ2のパッド2cを第1ボンド側、配線基板20のボンディングリード11を第2ボンド側とする、所謂、正ボンディング方式によりワイヤボンディングを行い、パッド2cとボンディングリード11を電気的に接続する。ワイヤ3は、金属からなり、本実施の形態では、例えば金(Au)からなる。そのため、前記したように、半導体チップ2のパッド2cの表面に金(Au)を形成しておくことで、ワイヤ3とパッド2cとの接合性を向上できるので、ワイヤボンディング不良を防止することができる。
5.封止工程
次に、図8に示す封止工程(S5)について説明する。図17は、図16に示す配線基板を成形金型でクランプした状態を示す拡大断面図である。また、図18は、図17に示すキャビティ内に封止用樹脂を供給した状態を示す拡大断面図である。また、図19は、図15に示す半導体チップおよびワイヤを樹脂封止した状態を示す拡大平面図、図20は、図19のF−F線に沿った断面図である。なお、図17では一つのキャビティ31b内に複数のデバイス領域20aが配置された状態を示すため、図16とは縦横の縮尺を変更し、模式的に示している。
本工程では、まず、図17に示す成形金型30を準備する(金型準備工程)。成形金型30は、下面(金型面)31a、および下面31aに形成されたキャビティ(凹部、窪み部)31bを有する上金型(金型)31と、この上金型31の下面(金型面)31aと対向する上面(金型面)32aを有する下金型(金型)32とを備えている。キャビティ31bは、4つの角部が面取りされた略四角形の平面形状(矩形状、四辺形)を成す。また、上金型31には、キャビティ31bへの封止用樹脂4a(図18参照)の供給口であるゲート部(図示は省略)、およびゲート部とは異なる位置(例えば対向する位置)に配置されるエアベント部(図示は省略)が、それぞれ形成されている。ゲート部は、例えば、キャビティ31bの一つの角部に形成され、キャビティ31bの側面に接続されている。また、エアベント部はゲート部とは異なる角部に形成され、キャビティ31bの側面に接続されている。このように、ゲート部をキャビティ31bの側面に配置する方式はサイドゲート方式と呼ばれる。
次に、成形金型30の下金型32上に配線基板20を配置する(基材配置工程)。ここで、下金型32と組み合わせる上金型31に形成されたキャビティ31bは、配線基板20の各デバイス領域20aよりも面積が大きく、複数のデバイス領域20aを覆うように一つのキャビティ31bが配置される。言い換えれば、キャビティ31bの周縁部は配線基板20の枠部20b上に配置される。
次に、上金型31と下金型32の距離を近づけて、配線基板20を上金型31と下金型32でクランプする(クランプ工程)。これにより、キャビティ31b内、ゲート部、およびエアベント部以外の領域では、上金型31(上金型31の下面31a)と、配線基板20の表面10aが密着する。また、下金型32(下金型32の上面32a)と、配線基板20の裏面10bが密着する。なお、クランプ工程での密着性を向上させるため、上金型31の下面31a側に、例えば、ポリイミド樹脂などの柔らかい樹脂から成るフィルムを貼り付けて、該フィルムを介して密着させることもできる。この場合、後述する基板取り出し工程で、フィルムと樹脂体4を容易に剥離することができる。
次に、図18に示すようにキャビティ31b内に封止用樹脂4aを供給し、これを硬化させることにより樹脂体4を形成する(封止体形成工程)。本工程では、図示しないポット部に配置された樹脂タブレットを加熱軟化させて、ゲート部からキャビティ31b内に封止用樹脂4aを供給する、トランスファモールド方式により形成する。樹脂タブレットは、例えば熱硬化性樹脂であるエポキシ系の樹脂からなり、硬化温度よりも低い温度では、加熱することにより軟化して、流動性が向上する特性を有している。したがって、例えば図示しないプランジャで軟化した樹脂タブレットを押しこむと、軟化した封止用樹脂4aが成形金型30に形成されたゲート部からキャビティ31b内(詳しくは、配線基板20の表面10a側)に流れ込む。キャビティ31b内の気体は、封止用樹脂4aが流入する圧力によりエアベント部から排出され、キャビティ31b内は、封止用樹脂4aで満たされる。この結果、配線基板20の表面10a側に搭載された複数の半導体チップ2および複数のワイヤ3は、封止用樹脂4aで一括して封止される。またこの時、配線基板20のボンディングリード11(図16参照)も封止される。その後、キャビティ31b内を加熱することにより、封止用樹脂4aを加熱硬化(仮硬化)させて、樹脂体4を形成する。
次に、前記した封止体形成工程で用いた成形金型30から複数の樹脂体4が形成された配線基板20を取り出す(基板取り出し工程)。本工程では、図18に示す上金型31と下金型32を引き離して、配線基板20を取り出す。
次に、成形金型30から取り出した配線基板20をベーク炉(図示は省略)に搬送し、再び配線基板20を熱処理する(ベーク工程、本硬化工程)。成形金型30内で加熱された封止用樹脂4aは、樹脂中の硬化成分の半分以上(例えば約70%程度)が硬化する、所謂、仮硬化と呼ばれる状態となる。この仮硬化の状態では、樹脂中の全ての硬化成分が硬化している訳ではないが、半分以上の硬化成分が硬化しており、この時点で半導体チップ2やワイヤ3は封止されている。しかし、樹脂体4の強度の安定性などの観点からは全ての硬化成分を完全に硬化させることが好ましいので、ベーク工程で、仮硬化した樹脂体4を再度加熱する、所謂、本硬化を行う。このように、封止用樹脂4aを硬化させる工程を2回に分けることにより、次に成形金型30に搬送される次の配線基板20に対して、いち早く封止工程を施すことができる。このため、製造効率を向上させることができる。
上記の封止工程を施すことで、図19に示すように、複数のデバイス領域20aにそれぞれ搭載された半導体チップ2(図20参照)、複数のワイヤ3(図20参照)を一括して封止する樹脂体(封止体)4が形成される。
6.ボールマウント工程
次に、図8に示すボールマウント工程(S6)について説明する。図21は、図20に示す配線基板の裏面に、半導体装置の外部電極(外部接続端子)となる複数の半田ボールを形成(接合)した状態を示す拡大断面図である。
本工程では、図21に示す配線基板20の裏面10b側に形成された複数のランド13のそれぞれに複数の半田ボール(半田材)5を搭載する。詳しく説明すると、まず、図21に示すように配線基板20の上下を反転させて、配線基板20の裏面10bにおいて、絶縁膜17から露出する複数のランド13に複数の半田ボール5をそれぞれ配置する。続いて、半田ボール5を配置した配線基板20に熱処理(リフロー)を施し、複数の半田ボール5をそれぞれ溶融させて複数のランド13とそれぞれ接合する。リフロー工程では、配線基板20をリフロー炉に配置して、半田ボール5の融点よりも高い温度、例えば、260℃以上まで加熱する。絶縁膜17は、ソルダレジスト膜であるため、隣り合う半田ボール5同士の接合(ブリッジ)を防止することができる。
なお、本工程では半田ボール5とランド13を確実に接合するため、例えば、フラックスと呼ばれる活性剤を用いて接合する。フラックスは、例えば、半田ボール5の表面に形成された酸化膜と接触することで、これを取り除くことができるので、半田ボール5の濡れ性を向上させることができる。このようにフラックスを用いて接合した場合には、熱処理後にフラックス成分の残渣を取り除くための洗浄を行う。
7.個片化工程
次に、図8に示す個片化工程(S7)について説明する。図22は、図8に示す個片化工程の詳細なフローを示す説明図、図23は、図8に示す個片化工程を行う装置(ダイシング装置)の概要構成を示す説明図である。本実施の形態の個片化工程では、図22に示すフローに沿って、図21に示す配線基板20をデバイス領域20a毎に分割し、個片化された複数の組立体(図1〜図4に示す半導体装置1)を取得する。以下図22に示すフローに沿って説明する。
7−1.ダイシング装置準備工程
図22に示すダイシング装置準備工程(S71)では、例えば図23に示すダイシング装置DMを準備する。ダイシング装置DMは、ダイシングブレードを用いた切断処理を複数回行って切断対象物に対して個片化処理を施すダイサー部(個片化処理部、ダイシング装置)50を備えている。またダイシング装置DMは、ダイサー部50の隣に位置し、ダイサー部50に搬送する切断対象物(配線基板20)をダイシング治具41上に配置する基板準備部(切断対象物準備部)51を備えている。また、ダイシング装置DMは、ダイサー部50の隣に位置し、ダイサー部50で個片化された組立体(半導体装置1)をそれぞれ個別に取り出すピックアップ処理部(後処理部)52を備えている。また、ダイシング装置DMは、ダイシング治具41およびダイシング治具41上に配置された配線基板20を保持した状態で、基板準備部51からダイサー部50まで搬送する搬送部53を備えている。また、ダイシング装置DMは、個片化された状態でダイシング治具41上に配置された複数の半導体装置(個片化された組立体)1およびダイシング治具41を保持した状態でダイサー部50からピックアップ処理部まで搬送する搬送部54を備えている。なお、本実施の形態では、ダイサー部50、基板準備部51、ピックアップ処理部52、および搬送部53、54を含めてダイシング装置DMとして説明するが、図21に示す配線基板20および樹脂体4を切断し個片化する処理は、図23に示すダイサー部50において行うので、ダイサー部50をダイシング装置として考えることができる。
7−2.治具セット工程
図22に示す治具セット工程(S72)では、図23に示す基板準備部51において、切断対象物である配線基板20をダイシング治具41上に配置する。図24は、図23に示すダイシング治具の上面を示す拡大平面図、図25は図24のG部の拡大平面図である。また、図26は図25に示すダイシング治具上に図21に示す配線基板を配置した状態を示す拡大断面図である。なお図26では見易さのため、図21に示す半導体チップ2およびワイヤ3は図示を省略している。以下、個片化工程を説明する各図において、半導体チップ2およびワイヤ3は図示を省略する。
ダイシング治具41は、本実施の形態の個片化工程において、図21に示す配線基板20がデバイス領域20a毎に個片化され、個片化された組立体(半導体装置1)をそれぞれ個別に搬送するまでの間(図22に示す治具セット工程S72〜個片ピックアップ工程(S77)までの間)、配線基板20をハンドリングするための治具である。したがって、個片化前および個片化後の配線基板20を搬送する搬送治具としての機能を備えている。また、図22に示す基板切断工程(S74)において、切断処理中の基板をステージ(ダイシングステージ)42(図23参照)に固定するための固定治具としての機能を備えている。本実施の形態では、基板切断工程(S74)において、配線基板20をダイシング治具41上に吸着固定するので、ダイシング治具41は吸着固定するために必要な構造を備えている。以下、図24〜図26を用いてダイシング治具41の構造例について説明する。
ダイシング治具41の上面(配線基板20の配置面)41aには、複数の凹部41bが形成されている。複数の凹部41bは、配線基板20を吸着固定するための窪みであって、各凹部41b内には、通気孔(吸気孔)41fが形成されている。図22に示す基板切断工程(S74)では、通気口41fから凹部41b内の気体を吸引することで、配線基板20を含む構造体の表面10a側(図26に示す例では、樹脂体4の表面4b)をダイシング治具41の上面41a側(詳しくは凸部41cの上面41e)に密着させて固定する。また、ダイシング治具41は、切断対象物との密着性を向上させるため、切断対象物を配置する面である上面41a側は例えば硬質ゴムなどのゴム部材からなる。また、ステージ(ダイシングステージ、処理台、切断処理台)42(図23参照)上に吸着固定する際にダイシング治具41が過剰に変形することを抑制するため、上面41aの反対側の面(下面)は例えばステンレス鋼などの金属部材でゴム部材を覆うことで、ダイシング治具41の剛性を向上させている。
また、図22に示す基板切断工程(S74)で個片化された後の組立体が周囲に飛散することを防ぐため、切断対象部である配線基板20(図9参照)のデバイス領域20a(図9参照)の数に対応して、複数の凹部41bが形成されている。本実施の形態では、112個のデバイス領域20a(図9参照)を有する配線基板20(図9参照)を配置する例を示しているので、112個の凹部41bが形成されている。また、複数の凹部41bは、それぞれ離間して形成され、隣り合う凹部41bの間には、凸部41cが形成されている。凹部41bは平面視において、デバイス領域20aに沿った形状(本実施の形態では四辺形)を成し、凹部41bの周囲は、凸部41cに囲まれている。また、隣り合う凸部41cの間には、基板切断工程でダイシングブレード40(図23参照)を挿入する溝部(空間)41dがある。溝部41dは図9に示すダイシング領域20cの配置に対応し、格子形状を成すように配置されている。
治具セット工程(S72)では、図26に示すように配線基板20の表面10a側が、ダイシング治具41の上面41aと対向するように配線基板20をダイシング治具41上に配置する。また、ダイシング領域20cがダイシング治具41の溝部と重なるように配線基板20をダイシング治具41上に配置して樹脂体4の表面(上面)4bと凸部41cの上面(押さえ面、支持面)41eを当接させる。言い換えれば、配線基板20の複数のデバイス領域20aとダイシング治具41の凹部41bがそれぞれ重なるように配線基板20をダイシング治具41上に配置して樹脂体4の表面4bと凸部41cの上面41eを当接させる。言い換えれば、ダイシング治具41に固定する配線基板20のダイシング領域20cと重なる位置には、配線基板20を切断するダイシングブレード40(図23参照)を挿入する溝部41dが形成されている。ダイシング治具41は、凸部41cの上面41eと樹脂体4の表面4bを当接させて配線基板20を支持(固定)する構造となっている。
本実施の形態のようにBGA型の半導体装置の製造工程では、個片化工程の前に半田ボール5を形成することで、半田ボール5を効率的に形成することができる。また、本実施の形態に対する変形例として、配線基板20の裏面10b側を下に向けて(ダイシング治具41と対向させて)配置することができる。しかし、半田ボール5が形成された配線基板20の裏面10b側をダイシング治具41と対向させた状態で固定すると、個片化工程において半田ボール5が損傷し、電気的信頼性が低下する原因となる場合がある。したがって、半田ボール5の損傷を抑制する観点からは図26に示すように表面10a側をダイシング治具41と対向させた状態で個片化することが好ましい。
本工程において、ダイシング領域20cと凸部41cが重なるように配置した場合、あるいはデバイス領域20aと溝部41dが重なるように配置した場合、図22に示す切断工程で切断不良が発生する原因となる。例えば、基板切断工程で配線基板20のアライメントマークを基準として切断位置を位置合わせする場合には、ダイシングブレード40(図23参照)が凸部41cと衝突して損傷する。また例えば、基板切断工程でダイシング治具のアライメントマークを基準として切断位置を位置合わせする場合、デバイス領域20aの一部が切断されてしまう。このような切断不良を防止するため、図25に示す溝部41dに沿ってダイシング領域20c(図9参照)が配置されるように配線基板20とダイシング治具41の相対的な位置関係を調整する位置合わせを行うことが好ましい。図25に示す溝部41dに沿ってダイシング領域20c(図9参照)が配置することができれば、位置合わせの方法は特に限定されないが、例えば、配線基板20とダイシング治具41にそれぞれアライメントマークを付し、アライメントマークの認識結果に基づいて位置合わせすることができる。
7−3.基板固定工程
次に、図22に示す基板固定工程(S73)では、図26に示す配線基板20を図23に示す基板準備部51からダイサー部50まで搬送し、ダイサー部50のステージ42上にダイシング治具41を介して配置し、ステージ42に固定する。図27は図23に示すダイサー部の詳細を示す平面図、図28は、図27のH−H線に沿った断面構造を模式的に示す説明図である。
図27に示すようにダイサー部50は、ステージ42上にダイシング治具41を介して切断対象物である配線基板20を固定(吸着固定)する供給部(切断対象物供給部)50aを備えている。また、ダイサー部50は、供給部50aの隣に設けられ、配線基板20に対して切断処理を施すカット部(切断処理部)50bを備えている。また、ダイサー部50は、供給部50aの隣に設けられ、個片化後の配線基板20に対して乾燥処理(乾燥処理の前に洗浄処理を行う場合もある)を施す乾燥部(後処理部)50cを備えている。また、ダイサー部50は、個片化後の配線基板20およびダイシング治具41をステージ42上から取り外す排出部(切断対象物排出部)50dを備えている。図23および図27では、供給部50aと排出部50dを兼用する例を示している。つまり、カット部50bで個片化が完了した配線基板20は乾燥部50cに搬送され乾燥処理を行った後、再び供給部50aに搬送されてステージ42上から取り外される。供給部50aおよび排出部50dは、それぞれ図23に示す搬送部53、54を挿入し、ステージ42上に固定する、あるいはステージ42上から取り外す作業をする空間が必要となる。このため、供給部50aと排出部50dを兼用化することで、ダイサー部50の占有面積を小さくすることができる。ただし、供給部50a、排出部50dのレイアウトは図23および図27に示す態様に限定されず、例えば、乾燥部50cを排出部50dとして用いる構成、あるいは乾燥部50cの隣に別途排出部50dを設ける構成とすることができる。これらの方法によれば、例えば乾燥処理を行っている間に、次の配線基板の切断処理を行うことができるので、製造効率を向上させることができる。
また、ダイサー部50は、ダイサー部50内で切断処理、(洗浄処理)、および乾燥処理を行う処理台であるステージ(ダイシングステージ、処理台、切断処理台)42を備えている。ステージ42は、上面側に切断対象物を保持する保持部(チャックステージ)42a(図28参照)を備え、保持部42aでダイシング治具41を保持することで配線基板20およびダイシング治具41をステージ42上に固定することができる。また、ステージ42には駆動部42b(図28参照)が接続され、ステージ42は駆動部42bの駆動力によりカット部50bと供給部50a(排出部50d)の間を図27および図28に示すX方向に沿って往来できるようになっている。また、ステージ42は駆動部42bの駆動力により供給部50a(排出部50d)と乾燥部50cの間を図27に示すY方向に沿って往来できるようになっている。また、ステージ42は駆動部42bの駆動力により、図27に示すX−Y平面においてθ方向に回転できるようになっている。また、ステージ42には、エア通路(気体流路、排気経路)42cが形成され、エア通路42cは例えば、真空ポンプなどの吸気装置VPに接続されている。また、ステージ42上にダイシング治具41を固定すると、ダイシング治具41の複数の通気孔41fとエア通路42cが連通し、吸気経路が形成される。したがって、ステージ42上にダイシング治具41を固定すると、図26に示す凹部41b内の気体を吸気する吸気経路が形成される。このため、複数の通気孔41fから吸気すると、樹脂体4の表面4bと凸部41c(詳しくは凸部41cの上面41e)が密着し、配線基板20をダイシング治具41を介してステージ42(図28参照)上に吸着固定する事ができる。また各凹部41bは、それぞれ通気孔41fと接続されている。言い換えれば、通気孔41fは、図26に示す配線基板20のデバイス領域20a毎に形成されている。つまり、図26に示すように、配線基板20のデバイス領域20a毎に固定することができるので、個片化された後の各デバイス領域20aが周囲に飛散することを防止することができる。
基板固定工程(S73)では、図23に示す搬送部53のハンド(保持部)53aで配線基板20およびダイシング治具41を保持する。次に配線基板20およびダイシング治具41を保持した状態でアーム(支持部)53bを基板準備部51からダイサー部50(詳しくはダイサー部50の供給部50a)まで搬送し、供給部50aに配置された(セットされた)ステージ42上に配線基板20およびダイシング治具41を配置する。ハンド53aで保持する際には、ダイシング治具41と配線基板20の平面的位置関係がずれないように、配線基板20をハンド53aで押さえながら保持することが好ましい。また、図28に示すように供給部50aは、搬送部53を挿入するための開口部50a1を備え、開口部50a1を塞ぐ扉(シャッタ)50a2を開放することで、搬送部53を供給部50a内に挿入することができる。供給部50a内において、ステージ42上にダイシング治具41および配線基板20を配置すると、前記したように図26に示す凹部41b内の気体を吸気する吸気経路が形成されるため、配線基板20は、ダイシング治具41を介してステージ42上に吸着固定される。
7−4.基板切断工程
次に、図22に示す基板切断工程(S74)では、図28に示す配線基板20が配置(吸着固定)されたステージ42を供給部50aからカット部50bに向かって移動させ、ダイシングブレード40が配線基板20のダイシング領域20c(図9参照)内を走行することで、配線基板20に切削加工を施して切断する。図29は図28に示す配線基板をダイシング領域に沿って切断した状態を示す拡大断面図である。また、図30は図28に示すダイシングブレード周辺の構造を示す説明図であって、ダイシングブレードを下面側から見た状態を示している。また、図31は、図28に示すステージを移動させて配線基板を切断している状態を模式的に示す説明図である。
本工程では、図29に示すように、表面10a側に複数の樹脂体4が形成された配線基板20を、ダイシング治具41上に固定した状態で、配線基板20をダイシング領域20cに沿って移動させて切削加工する。配線基板20をダイシング領域20cに沿って切断するためには、ダイシングブレード40、配線基板20のいずれか一方、または両方を、ダイシング領域20cに沿って移動させて切削加工すれば良い。したがって、変形例としてはダイシングブレード40を移動させて切断する実施態様も考えられる。しかし、装置小型化の観点からは、ダイシングブレード40は移動させず、ステージ42を移動させることが好ましい。また、ダイシング領域20cに沿って正確にダイシングブレード40を走行させる観点からは、本実施の形態のように、切断対象物である配線基板20を移動させ、ダイシングブレード40は、切削加工中は移動させない方が好ましい。また、ダイシングブレード40の下端がダイシング治具41の溝部41d内に挿入される高さで走行させることにより、配線基板20および樹脂体4を確実に切断することができる。ダイシングブレード40は、略円形の外形形状を成す薄板の外周に、ダイヤモンドなどの砥粒を固着させた切削加工治具(回転刃)であって、薄板を回転させることにより、外周に固着した砥粒が切断対象物(本実施の形態では配線基板20および樹脂体4)の切断領域を切削加工して切断する。
図27および図28に示すようにダイサー部50のカット部50bには、ダイシングブレード40が取り付けられた切削加工器(ブレードユニット、切削加工装置)43が配置されている。切削加工器43はダイシングブレード40の上部を覆うカバーであるケース(カバー、蓋体)44を備え、ダイシングブレード40はケース44内に配置される。
また、図28に示すように、切削加工器43はダイシングブレード40による切削加工中にダイシングブレード40の表面(例えば側面)に向かって液体(例えば水)を供給するノズル45を備えている。ノズル45は切削加工中のダイシングブレード40の温度上昇を抑制する冷却用ノズルであって、図30に示すようにノズル45の先端(吐出口)は、ダイシングブレード40の側面40bに向けて配置されている。また、図30に示すようにノズル45は、ダイシングブレード40の二つの側面40bにそれぞれ配置されている。これにより、切削加工中にダイシングブレード40の二つの側面40bに向かってそれぞれ冷却液(液体、水、冷却水)45aを吹き付ける(供給する)ことができる。二つのノズル45からの冷却液45aの供給速度は、例えば、それぞれ毎分1.0〜2.0リットル程度である。ノズル45の吐出部は、ダイシングブレード40までの距離を短くするため、ケース44内に配置されている。また、変形例として、冷却液45aの供給圧力を上昇させるためにノズル45に加圧用の流体(気体、例えば空気)を供給する構成が考えられる。しかし、ノズル45からの冷却液45aの供給圧力が高すぎると、切削屑を巻き上げてケース44内が汚染する原因となるので、本実施の形態ではノズル45には加圧用の流体(気体、例えば空気)は供給されていない。
また、図28に示すように、切削加工器43はダイシングブレード40による切削加工中にダイシングブレード40の端部(端面、円周面)に向かって液体(例えば水)を供給するノズル46を備えている。ノズル46は切削加工中に発生する切削屑を取り除く洗浄用ノズルであって、図30に示すようにノズル46の先端(吐出口)は、ダイシングブレード40の端面(2つの側面40bの間に位置する円周面)40aと対向する位置に配置され、端面40aに向けて配置されている。これにより切削加工中にダイシングブレード40の端部(端面40a)に向かってそれぞれ洗浄液(液体、水、洗浄水)46aを吹き付ける(供給する)ことができる。切削加工中に洗浄液46aを供給することで、切削加工で発生する切削屑(多くは図29に示す樹脂体4や配線基板20を構成する細かい樹脂屑)が配線基板20上に滞留することを抑制できる。また、洗浄液46aをダイシングブレード40の主たる切削面である端面40aに吹き付けることで、ダイシングブレード40の表面に露出した複数の砥粒の間の隙間が切削屑で埋まってしまうことを抑制できる。ノズル46からの洗浄液46aの供給速度は、ノズル45から冷却液45aを供給する供給速度よりも小さく、例えば、それぞれ毎分1.0〜2.0リットルである。また、変形例として、洗浄液46aの供給圧力を上昇させるためにノズル46に加圧用の流体(気体、例えば空気)を供給する構成が考えられる。しかし、ノズル46からの冷却液46aの供給圧力が高すぎると、切削屑を巻き上げてケース44内が汚染する原因となるので、本実施の形態ではノズル46には加圧用の流体(気体、例えば空気)は供給されていない。
また、ダイサー部50のカット部50bは、配線基板20の位置を特定するアライメント部(基板位置認識部)47を備えている。基板切断工程では、切削加工を開始する前に切断対象物である配線基板20とダイシングブレード40の相対的な位置関係を調整(位置合わせ)する必要があるが、アライメント部47により配線基板20に形成されたアライメントマークを検出し、配線基板20の位置を特定することで位置合わせを行うことができる。
また、ダイサー部50のカット部50bは、ダイシングブレード40による切削加工の後で切削対象物である配線基板20に向かって液体(例えば水)を供給するノズル48を備えている。ノズル48は切削加工時に配線基板20の周囲から取り除かれなかった異物を取り除く異物除去用ノズルであって、図30に示すようにノズル48の先端(吐出口)は、ケース44から離間した位置に配置されている。詳しくは、ノズル48は供給部50aとダイシングブレード40の間、更に詳しくは、供給部50aとカット部50bを隔てる隔壁のカット部側に取り付けられている。ノズル48は、切削加工時に取り除くことができなかった異物を取り除くため、ノズル45、46よりも高い圧力で液体(例えば水)を供給する。ノズル48の更に詳細な構成は後述する。
基板切断工程(S74)では、図31に示すようにダイシング治具41を介してステージ42上に配線基板20を固定(吸着固定)して、例えば、ダイシングブレード40を矢印D1で示す回転方向に回転させながら、配線基板20を固定したステージ42を矢印D2で示す方向に向かって(供給部50aからカット部50bに向かって)移動させる。したがって、図29に示すように、配線基板20のダイシング領域20cと、溝部41dとが、重なるように配線基板20を固定することで、ダイシングブレード40を溝部41d内まで貫通させて、配線基板20を切断することができる。また、凸部41cは配線基板20のダイシング領域20cに沿って延びるように配置されるため、ダイシングブレード40による切削加工時に、ダイシング領域20cの周辺をしっかりと固定することができる。
なお、ダイシングブレード40の回転方向は、一般に2種類ある。すなわち、1つは、図31に矢印D1として示すように、配線基板20の裏面10bから表面10aに向かって回転するダウンカット方式である。ダウンカット方式では、被切削物である配線基板20を移動させる切削方法の場合において、ダイシングブレード40が、配線基板20の切削方向(移動方向)44に対して前方に切削物を削り出すように回転する。そして、図示は省略するが、もう1つは、配線基板20の表面10aから裏面10bに向かって回転するアッパカット方式である。アッパカット方式では、被切削物である配線基板20を移動させる切削方法の場合において、ダイシングブレード40が、配線基板20の切削方向(移動方向)44に対して後方に切削物を削り出すように回転する。図31に示すダウンカット方式は、配線基板20の切削加工領域をダイシング治具41に抑えつけるように回転するので、アッパカット方式よりも配線基板20を固定し易い。このため、本実施の形態では、ダウンカット方式を採用している。
また、図9に示すように配線基板20には、平面視においてX方向に沿って延びる複数の(図9では8本)のダイシング領域(切断領域)20c1と、X方向と直交するY方向に沿って延びる複数(図9では17本)のダイシング領域(切断領域)20c2が設けられている。したがって、本工程で各ダイシング領域20cを切断し、マトリクス状に配置されるデバイス領域20a毎に分割するためには、図9に示すX方向およびY方向についてそれぞれ複数回ずつダイシングブレード40(図29参照)を走行させる必要がある。したがって、図22に示すX方向切断工程(S741)とY方向切断工程(S744)はそれぞれ複数回繰り返して行う。例えば図31を用いて説明すると、供給部50aからカット部50bに向かう方向(矢印D2)にステージ42を移動させて配線基板20を一方の端部から反対側の端部まで切断した後、カット部50bから供給部50aに向かう方向(矢印D3)にステージ42を移動させる。そして、第1回目に切断したダイシング領域20cとは異なるダイシング領域20内をダイシングブレード40が走行するように図27に示すY方向に位置合わせを行った後、第2回目の切削加工を行う。すなわち、供給部50aからカット部50bに向かう方向(矢印D2)にステージ42を移動させて配線基板20をダイシング領域20cに沿って一方の端部から反対側の端部まで切断する。これをダイシング領域20cの本数に応じて繰り返し行う。また、X方向切断工程(S741)とY方向切断工程(S744)の間には、図27に示すステージ42をθ方向に90°回転させる方向転換工程(S743)を少なくとも1回以上行う。なお、図22に示す異物洗浄工程(S742、S745)は、X方向切断工程(S741)やY方向切断工程(S744)で発生した異物を図31に示すノズル48を用いてステージ42(図28参照)上から取り除く工程である。この異物洗浄工程(S742、S745)の詳細は後述する。
7−5.基板乾燥工程
次に、図22に示す基板乾燥工程(S75)では、デバイス領域20a毎に複数に分割された配線基板20を図27に示すようにステージ42上に吸着固定した状態で供給部50a(排出部50d)から乾燥部50cに移動させ、配線基板20の周辺に付着した水分を取り除く(配線基板20の周辺を乾燥させる)。配線基板20の周囲に水分を取り除くことが出来れば乾燥方法は特に限定されないが、例えば乾燥空気(大気中の水分を取り除いた空気)を配線基板20に吹き付ける方法、ヒータなどの加熱部(図示は省略)を乾燥部50c内に配置して、配線基板20の周囲を加熱する方法、あるいはこれらの組み合わせを用いることができる。ステージ42、ダイシング治具41、および配線基板20に付着した水分を取り除いたらステージ42を乾燥部50cから排出部50d(供給部50a)に移動させる。本工程は、配線基板20はダイシング治具41を介してステージ42上に吸着固定した状態で行う。
なお、本実施の形態では、基板切断工程(S74)の後、乾燥部50cで配線基板20の周囲を乾燥させる実施態様について説明したが、変形例としては配線基板20を乾燥させる前に、他の処理を施すことができる。例えば、配線基板20の周囲を再洗浄し(再洗浄工程を施し)、その後、配線基板20を乾燥させる(乾燥工程)ことができる。この再洗浄工程や乾燥工程はデバイス領域20a毎に個片化された配線基板20に対して処理を施す、後処理工程に含まれる。
7−6.治具搬出工程
次に、図22に示す治具搬出工程(S76)では、図27に示す排出部50d(供給部50a)から個片化された配線基板20およびダイシング治具41を搬出する。図32は、図28に示す排出部において搬送部で配線基板およびダイシング治具を保持した状態を示す拡大断面図である。
図32に示すように個片化された配線基板20およびダイシング治具41を排出部50dから搬出する搬送部54は、ダイシング治具41および個片化された配線基板20(デバイス領域20a)を保持するハンド(保持部)54aおよびハンド54aを移送するアーム(支持部)54bを備えている。また、搬送部54のハンド54aは、搬送対象物(ダイシング治具41)に当接して吸着保持する吸着部54cおよびダイシング治具41を吸着保持する際に配線基板20(個片化された複数のデバイス領域20a)が動かないようにダイシング治具41に押さえる押さえ部54dを備えている。搬送部54はハンド54aの吸着部54cによりダイシング治具41を吸着保持し、押さえ部54dとダイシング治具41の間で個片化された配線基板20(デバイス領域20a)をクランプすることで、個片化された配線基板20(デバイス領域20a)を保持する構造となっている。図28に示す搬送部53と、図32に示す搬送部54は、同様の構造になっている。このため、本実施の形態に対する変形例として、搬送部53および搬送部54を兼用化し、図27に示す供給部50aへの搬入と排出部50dからの搬出を一つの搬送部(搬送部53または搬送部54)で行うことができる。ただし、ダイシング装置DM(図23参照)は、供給部50aへの搬入を行う搬送部53と、排出部50dからの搬出を行う搬送部54を別々に備えていることが好ましい。これにより、搬送部54は、個片化、洗浄、および乾燥が終了した配線基板20およびダイシング治具41を専ら搬送することとなるため、搬送部54を介した個片化後の製品の汚染を防止ないしは抑制できる。
また排出部50dは搬送部54を挿入するための開口部50d1を備え、開口部50d1を塞ぐ扉(シャッタ)50d2を開放することで、搬送部54(ハンド54a)を排出部50d内に挿入することができる。治具搬出工程(S76)では、ハンド54aを排出部50d内に挿入し、ステージ42上に吸着固定されたダイシング治具41上に配置する。そしてハンド54aの複数の吸着部54cをダイシング治具41に当接させてダイシング治具41を吸着保持する。また押さえ部54dを個片化された配線基板20に押し当てて、ダイシング治具41上に固定する。この状態で、ステージ42のエア通路42cに接続される吸気装置VPからの吸気を遮断れば、図32に示すようにダイシング治具41および個片化された配線基板20をステージ42上に持ち上げることができる。次にハンド54aにより配線基板20およびダイシング治具41を保持した状態でアーム(支持部)53bを動作させて、排出部50dから搬出する。本実施の形態では次工程は、個片ピックアップ工程(S77)(図22参照)となっているので、次にハンド54aにより配線基板20およびダイシング治具41を保持した状態でアーム(支持部)53bを移動させて排出部50dから図53に示すピックアップ処理部52まで搬送する。
7−7.個片ピックアップ工程
次に、図22に示す個片ピックアップ工程(S77)では、図33に示すようにダイシング治具41上から個片化された配線基板20(デバイス領域20a、半導体装置1)をそれぞれ吸着保持して個別に取り出す。図33は、図32に示すダイシング治具上から個片化された半導体装置をピックアップする状態を示す拡大断面図である。
個片ピックアップ工程(S77)では、例えば、図33に示すように、ピックアップ治具(個片保持部)55で個片化された配線基板20(デバイス領域20a、半導体装置1)をそれぞれ吸着保持する。そして、吸着保持された半導体装置1を持ち上げてダイシング治具41上から取り出す。本工程でピックアップされた各半導体装置1は、ピックアップ治具55に保持された状態、あるいは、図示しないトレーに収納された状態で次工程(例えば、検査工程)に搬送する。そして、外観検査など必要な検査、試験を行い、図1に示す半導体装置1が完成する。一方、全ての半導体装置1が取り出されたダイシング治具41は、基板準備部51に搬送され、新たな切断対象物である配線基板20をダイシング治具41上に配置する。ここで、例えばダイシング治具41の溝部41dなどに髭状の異物が残留し、その一部が凸部41c上にはみ出している場合、新たな配線基板20とダイシング治具41の間に髭状の異物が挟まって、吸着不良や切断不良の原因となる。しかし、本実施の形態によれば、前記した基板切断工程において髭状の異物を除去することができるので、これを防止ないしは抑制することができる。ただし、図35に示すようにノズル48から高圧の液体48aを吹き付けても溝部41d(図29参照)内に髭状の異物の一部が残留した場合に備え、基板準備部51に搬送する前にダイシング治具41を洗浄することが好ましい。つまり、ピックアップ工程の後、ダイシング治具41を洗浄し、乾燥させた後で、基板準備部51に搬送することが好ましい。
<基板切断工程で生じる課題>
図1〜図4に示す半導体装置1は上記のように製造されるが、本願発明者の検討によれば、個片化工程(S7)において、ダイシング治具41上に配線基板20を固定した状態でダイシングブレード40を走行させて配線基板20を切断する方式で個片化する場合、以下の課題が生じることが判った。すなわち、ダイシングブレード40で配線基板20を切断する際に、切削屑よりも大きい髭状の異物や切断された配線基板20の端材が発生し、これらの異物が個片化工程以降の製造工程において不具合の発生原因となることが判った。前記した基板切断工程(S74)では、切断対象物の切断領域(ダイシング領域20c)の部材はダイシングブレード40により切削加工され大部分が細かい切削屑となって排出されるが、一部が髭状(紐状)の異物として切断対象物の近傍に残留する。本願発明者がこの髭状の異物について調査した所、配線基板20の絶縁層を構成する材料(絶縁層材料)に由来することが判った。本願発明者がこの髭状の異物について分析した所、紐状の異物は、被切削物の構成材料のうち、配線基板20の構成材料(例えば、配線基板20の絶縁層14)から成る。また、異物の厚さは20μm〜30μm程度、幅はダイシングブレード40の幅と同程度(例えば約200μm〜300μm程度)の断面形状を有し、紐状(帯状)に長く延在した形状となっていた。また異物の長さは、最も長い物は、切断された配線基板20の切断方向に沿った長さと同程度の長さとなっていた。また、発生した髭状の異物を取り出して観察すると、円弧状(比較的径の大きいコイル状)に巻かれた外観形状、あるいは棒状の外観形状となっていた。
本願発明者の検討によれば、この髭状の異物は、以下のメカニズムで発生すると考えられる。個片化工程では、図29に示すようにダイシングブレード40を押し当てて、配線基板20の裏面10b側から表面10a側に向かって順次切削加工を施す。したがって、切削加工時は、配線基板20に対してダイシングブレード40からの押圧力が裏面10bから表面10aに向って加わることになる。ここで、配線基板20の裏面10bから樹脂体4の表面4bまで順々に切削されて細かい切削屑になれば、上記髭状の異物は発生しないが、切削加工により切断対象物(切削対象物)の厚さが薄くなるとダイシングブレード40からの押圧力により切断対象物が細かく切削させるよりも先に破断してしまう。ここで、ダイシング治具41を用いた基板切断工程では、図29に示すように切断対象物である配線基板20とダイシング治具41の間(樹脂体4と溝部41dの底面の間)にダイシングブレード40を挿入するための空間(溝部)がある。このため切断対象物の一部が破断すると、破断した部分(未切削部分)はダイシングブレード40からの押圧力を受けて溝部41d内に押し出される。この結果、溝部41d内に押し出された未切削部分にはダイシングブレード40からの押圧力が十分に伝達されず、細長い髭状の異物が形成されたと考える。また、樹脂体4を構成する封止用の樹脂は、配線基板20の絶縁層(コア層)14を構成するプリプレグ材よりも脆く細かく砕けやすい。このため、髭状の異物は主として配線基板20の材料で構成されていると考えられる。また、本実施の形態では、前記したように、ダウンカット方式を採用しているが、ダウンカット方式は、配線基板20をダイシング治具41に向かって押しつける方向に回転するので、アッパカット方式よりも破断が発生しやすい。
また、個片化前の配線基板20は、図19に示すように枠部20bを備えているが、基板切断工程でデバイス領域20a毎に個片化された後には、この枠部20bが端材として図31に示すステージ42上(ダイシング治具41上を含む)に残ってしまう場合がある。
このような髭状の異物や端材は、個片化工程以降の製造工程において不具合の発生原因となる。例えば、前記した基板搬出工程において図32に示すハンド54aの吸着部54cとダイシング治具41の間に異物や端材が介在すると、ハンド54aで吸着保持できなくなり、吸着不良の原因となる。また、押さえ部54dと配線基板20の間に髭状の異物が挟まると、図29に示すように配線基板20の裏面10bに形成された半田ボール5に髭状の異物が絡まって、半田ボール5が損傷する懸念がある。また、前記した基板搬出工程で吸着保持できた場合でも、次工程に搬送する際に、異物や端材が一緒に搬送されると次工程(例えば個片ピックアップ工程)で同様の不具合が発生する原因となる。また、図31に示すステージ42上に上記異物や端材が残留すれば、次の切断対象物(配線基板20)を切断する際に、ステージ42とダイシング治具41の間に異物や端材が挟まって切断対象物が傾いてしまう。
上記のような不具合を解決するため、基板切断工程で発生する髭状の異物や端材を治具搬出工程よりも前(特に好ましくは基板乾燥工程よりも前)に取り除くことが好ましい。そこで、本願発明者は基板切断工程において髭状の異物や端材を取り除く技術について検討を行った。本願発明者はまず、切削加工中の配線基板20に対して高い圧力で水を吹き付けることで、髭状の異物や端材を取り除く方法について検討した。詳しくは、図31に示すノズル46から供給する水の圧力を高くした。また、ノズル46とは別に、ケース44内にノズル46よりも高い圧力で水を供給するノズル(図示は省略)を設け、該ノズルから切削加工中の配線基板20に対して高い圧力で水を吹き付ける方法についても検討を行った。ところが、以下の課題があることが判った。すなわち、切削加工中に髭状の異物を除去できる程の高い圧力で液体を配線基板20に吹き付けると、切削屑が巻きあがってケース44内の各部材が汚染されるため、個片化後の配線基板20が汚染される原因となる。また、切削加工中に複数のノズルから異なる圧力で水を供給する場合、供給圧力によっては、互いの水の流れを阻害してしまうことが判った。特に、髭状の異物や端材を除去するためには、ノズル45やノズル46よりも高い圧力で液体(例えば水)を供給する必要があるので、異物除去用のノズルをノズル45、46の近くに配置すると、ノズル45、46から供給される液体の流れが阻害され易い。逆に言えば、ノズル45、46から供給される液体の流れが阻害されないように、異物除去用のノズルからの液体の供給圧力を低く抑えると、髭状の異物や端材を十分に除去できない。
<基板切断工程の詳細>
本願発明者は上記検討結果を踏まえ、本実施の形態の基板切断工程の構成を見出した。図34は、図22に示すX方向切断工程またはY方向切断工程時のダイシング装置内の動作について示す拡大断面図である。また、図35は、図22に示す異物洗浄工程時のダイシング装置内の動作について示す拡大断面図である。また図36は、図35に示す異物除去用ノズルの構造を示す断面図、図37は図35に示す異物除去用ノズルの上面図である。
図22に示すX方向切断工程(S741)では、図34に示すように、配線基板20が吸着固定されたステージ42を供給部50aからカット部50bに向かって移動させて、例えば、図9に示すようにX方向に沿って延びるダイシング領域20c1を切断する。この時、図34に示すダイシングブレード40は、矢印D1で示す回転方向(ダウンカット方向)に回転しながらダイシング領域20c1内を走行する。またこの時、図34に示すように、ノズル45、46からはそれぞれ液体(冷却液45aおよび洗浄液46a)を供給しながらダイシングブレード40により切削加工を施す。またこの時、図34に示すように、異物除去用ノズルであるノズル48からは液体を供給しない。すなわち、ノズル48からの液体(例えば水)の供給を停止した状態で、ステージ42を移動させる(切削加工を施す)。言い換えれば、ノズル48は稼働していない状態でステージ42を移動させる(切削加工を施す)。このように、切削加工時に異物除去用ノズルであるノズル48からの液体の供給を停止させることにより、ノズル45、46から供給される液体(冷却液45aおよび洗浄液46a)の流れが阻害されることを防止ないしは抑制できる。言い換えれば、ノズル45から供給される冷却液45a(例えば水)によりダイシングブレード40を冷却することができる。また、ノズル46から供給される洗浄液46a(例えば水)により、切削加工で発生する細かい切削屑を除去することができる。なお、切削加工により上記した髭状の異物が発生するが、この時点では髭状の異物が除去されなくても良い。
次に、図22に示す異物除去工程(S742)では、図35に示すように、ノズル48から液体48aを供給しながら配線基板20が吸着固定されたステージ42をカット部50bから供給部50aに向かって移動させる。前記したように、複数のダイシング領域20cを切断し、マトリクス状に配置されるデバイス領域20a毎に分割するためには、図9に示すX方向およびY方向についてそれぞれ複数回ずつダイシングブレード40(図29参照)を走行させる必要がある。図22に示すX方向切断工程(S741)とY方向切断工程(S744)はそれぞれ複数回繰り返して行う。言い換えれば、第1本目のダイシング領域20cを切断した後は、ステージ42を供給部50aに向かって移動させて第2本目のダイシング領域20cを切断する。本実施の形態では、供給部50aに向かってステージ42を移動させる際にノズル48から配線基板20に向かって液体(除去)48aを吹き付けることで配線基板20の周辺に残留する髭状の異物や端材をステージ42上から取り除く。
また本工程は、切削加工中に取り除くことが難しい髭状の異物や端材を取り除く工程なので、ノズル48から供給される液体48aの供給圧力は図34に示す冷却液45aや洗浄液46aの供給圧力よりも高く設定することが好ましい。本実施の形態では、ノズル48からの供給圧力を向上させるため、ノズル48内で複数の流体を混合して吹き出す方式を採用している。詳しくは図36に示すように、ノズル48は、例えば空気などの気体(流体)48a1を供給する経路と、例えば水などの液体(流体)48a2を供給する経路を備えている。また、気体48a1の供給経路と液体48a2の供給経路は、ノズル48内で一体化し、吐出口48bに接続されている。言い換えれば、吐出口48bは、空気などの気体(流体)48a1を供給する供給口48c、および水などの液体(流体)48a2を供給する供給口48dと連通している。このように複数の流体を混合して吹き出すことで、容易に液体48aの供給圧力を上昇させることができる。例えば本実施の形態では、供給口48cに空気を300Pa程度の圧力で供給し、供給口48dには水を毎分0.5〜1.5リットル程度の流速(供給速度)で供給している。これにより、ノズル48からの液体48aの供給圧力は、図34に示すノズル45やノズル46のからの供給圧力に対して2倍以上となる。このように複数の流体を混合して供給する方法は供給圧力を調整し易くなる点で好ましい。また、同じ供給圧力で液体を供給する場合、液体のみで供給するよりも液体と気体を混合して供給した方が吹き付け対象物(配線基板20)に与えるダメージが小さくなる。例えば、気体48a1を供給せずに、ノズル48からの供給圧力をノズル46からの供給圧力に対して2倍以上にする場合、ノズルの吐出口の開口径が一緒とすれば、液体の供給速度を2倍以上にする必要がある。このため、液体の重さが増大するので吹き付け対象物に与えるダメージが大きくなる。したがって、変形例として一流体(液体48a2)のみを吹き付ける実施態様も考えられるが、異物を除去する際の配線基板20のダメージを低減する観点からは本実施の形態のように複数の流体を混合して供給する方がより好ましい。
このように本実施の形態によれば、X方向切断工程(S741)と異物除去工程(S742)を別々のタイミングで実施するので、ノズル48から高い圧力で液体48aを供給することができる。この結果、髭状の異物や端材を確実に除去することができる。また、X方向切断工程(S741)ではノズル48からの液体の供給を停止するので、切削加工時にはノズル48から供給される液体48aの影響を受けない。このため、高圧の液体48aを切断対象物に吹き付けることによる切断不良を防止ないしは抑制できる。つまり、基板切断工程で切断不良を発生させることを抑制しつつ、かつ、基板切断工程以降の工程で不具合の原因となる髭状の異物や端材を確実に取り除くことができる。この結果、半導体装置の製造効率を向上させることができる。
また、図37に示すようにノズル48は、図35に示すステージ42の移動方向(矢印D3)に対して交差(直交)する方向に並べて配置される複数の吐出口48bを備えていることが好ましい。変形例として1つの吐出口48bを備えるノズル48を用いることもできるが、吐出口48bが1つの場合、液体48aの吹き付け範囲が狭くなる。あるいは吐出口48bが1つの場合、液体48aの供給圧力が低下する。一方、図37に示すように複数の吐出口48bを並べて配置すれば、広範囲に液体48aを一括して吹き付けることができるので、髭状の異物や端材を除去し易くなる。また、広範囲に液体48aを一括して吹き付けることで、図22に示す異物除去工程(S742)の繰り返し回数を低減することができる。例えば、ノズル48から図27に示すステージ42の長辺よりも広い範囲に一括して液体48aを吹きつけられる場合には、図22に示すX方向切断工程を複数回繰り返した後で、異物除去工程を一回行うような実施態様とすることができる。したがって、ノズル48の複数の吐出口48bから供給される液体48a(図35参照)の吹き付け範囲の幅は、ステージ42の長辺よりも長い方が好ましい。
また、本工程では、ダイシングブレード40を配線基板20と接触させる必要はないので、例えば図35に示すように、ダイシングブレード40の位置をX方向切断工程の時よりも上方に移動させておくことが好ましい。
次に、図22に示す方向転換工程(S743)では、図27に示すステージ42をθ方向に90°回転させる。これにより供給部50aからカット部50bに向かう方向に沿って、図9に示すダイシング領域20c2が配置される。つまり、本工程の次に行うY方向切断工程(S744)では、X方向切断工程(S741)と同様に供給部50aからカット部50bに向かってステージ42を移動させれば、図9に示すダイシング領域20c2を切断することができる。
次に図22に示すY方向切断工程(S741)では、X方向切断工程(S741)と同様な動作で図9に示すダイシング領域20c2を切断する。つまり、図34に示すように、配線基板20が吸着固定されたステージ42を供給部50aからカット部50bに向かって移動させて、図9に示すようにY方向に沿って延びるダイシング領域20c2を切断する。この時、図34に示すダイシングブレード40は、矢印D1で示す回転方向(ダウンカット方向)に回転しながらダイシング領域20c2内を走行する。またこの時、図34に示すように、ノズル45、46からはそれぞれ液体(冷却液45aおよび洗浄液46a)を供給しながらダイシングブレード40により切削加工を施す。またこの時、図34に示すように、異物除去用ノズルであるノズル48からは液体を供給しない。すなわち、ノズル48からの液体(例えば水)の供給を停止した状態で、ステージ42を移動させる(切削加工を施す)。言い換えれば、ノズル48は稼働していない状態でステージ42を移動させる(切削加工を施す)。
次に図22に示す異物除去工程(S745)では、異物除去工程(S742)と同様な動作でステージ42上の髭状の異物および端材を取り除く。つまり、図35に示すように、ノズル48から液体48aを供給しながら配線基板20が吸着固定されたステージ42をカット部50bから供給部50aに向かって移動させる。Y方向切断工程(S741)をX方向切断工程(S741)の後で行う場合、切断対象物である配線基板20は図9に示すダイシング領域20c1に沿って細かく分割されている。このため、Y方向切断工程の際に発生する異物や端材の長さはX方向切断工程際に発生する異物や端材の長さよりも短くなる。このように異物や端材の長さが短い場合、除去し易くなるので、例えば、図22に示す異物除去工程(S745)の繰り返し回数は、異物除去工程(S742)の繰り返し回数よりも少なくすることができる。ただし、より確実に異物や端材を取り除く観点からは、異物除去工程(S742、S745)の繰り返し回数を同数としても良い。
また、本実施の形態では、図9に示すように長方形を成す配線基板20の長手方向(長辺に沿った方向、X方向)を先に切断し、その後で短辺に沿った方向(Y方向)を切断する実施態様について説明した。しかし切削加工時に発生する髭状の異物や端材の長さを短くして除去し易くする観点からは、短辺に沿った方向(Y方向)を先に切断し、その後長辺に沿った方向(X方向)を切断することが好ましい。つまり、図22に示すX方向切断工程とY方向切断工程の順序を入れ替えて行うことが好ましい。
また、別の変形例として、複数のデバイス領域20aが連結されたブロック毎に島状に分割(切断)し、その後、各ブロックのダイシング領域20cを切断する変形例を適用することができる。つまり、各ダイシング領域20cを端から順次切断するのではなく、例えば1本置き、あるいは複数本置きにダイシング領域20c2(図9参照)を切断する。そして方向転換工程を行って、1本置き、あるいは複数本置きにダイシング領域20c1(図9参照)を切断することで、配線基板20を複数のデバイス領域20aが連結されたブロック毎に島状に分割(切断)することができる。その後各ブロックに残されたダイシング領域20cを切断して個片化する。この変形例によれば、予め細かいブロックに分割してから個片化することで、切断工程で発生する異物や端材の長さを短くすることができる。
<変形例>
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
例えば、前記実施の形態では、所謂MAP(Mold Array Package)方式で製造された半導体装置1を例に取り上げて説明したが、半導体装置の封止方式はMAP方式には限定されず、種々の変形例を適用することができる。図38は図4に対する変形例である半導体装置を示す断面図である。また、図39は、図29に対する変形例である基板切断工程を示す拡大断面図である。また、図40は図39に示す切削加工部周辺を拡大して示す拡大断面図、図41は図40のJ−J線に沿った断面図である。
図38に示す半導体装置は、樹脂体4が配線基板10の表面10a全体を覆うのではなく、配線基板10の周縁部(言い換えると、配線基板10の表面10aに搭載された半導体チップ2の周囲)が樹脂体4から露出している点で図4に示す半導体装置1と相違する。その他の点は図1〜図4を用いて説明した半導体装置1と同様である。半導体装置60のように配線基板10の一部(周縁部)が樹脂体4から露出する半導体装置の封止工程では、デバイス領域毎にキャビティを配置してそれぞれに封止用樹脂を供給して樹脂体4を形成する、所謂、個片モールド方式で製造する。このため、個片モールド方式で封止した場合、例えば図30に示すように配線基板20の表面10a側には複数の樹脂体4が形成される。言い換えれば、個片モールド方式で封止した場合、ダイシング領域20cは隣り合う樹脂体4の間に配置される。
また、個片モールド方式で封止する場合、個片化工程(基板切断工程)において、図39に示すように配線基板20の表面10aをダイシング治具41の凸部41cの上面41eに当接させて切断する。つまり、配線基板20の表面10a上に形成された複数の樹脂体4が複数の凹部41b内に収まるように配置するので、ダイシング領域20cの周辺において配線基板20とダイシング治具41の間には樹脂体4が介在しない。この場合、基板切断工程(S74)(図22参照)では配線基板20のみを切削することになるため、前記したMAP方式よりもさらに髭状の異物が発生し易くなる。すなわち、図40および図41に示すように切断対象物である配線基板20の上面は樹脂体4(図39参照)を介さずにダイシングブレード40を挿入するための空間(溝部41d)と対向している。このため切削加工中に配線基板20の一部が破断すると、破断した部分(未切削部分)はダイシングブレード40からの押圧力を受けて溝部41d内に押し出され易い。この結果、溝部41d内に押し出された未切削部分にはダイシングブレード40からの押圧力が十分に伝達されず、図41に示すように細長い髭状の異物100が形成される。
このように個片モールド方式で封止する場合には、基板切断工程で髭状の異物100が形成され易い。そこで、前記実施の形態で説明した個片化工程を適用することで、この髭状の異物に起因した不具合を抑制することができる。
また、前記実施の形態では基板切断工程において、配線基板20をステージ42に固定する方法として、ダイシング治具41を介して吸着固定する、吸着固定方式を適用した実施態様について説明したが、ステージ42に固定する方法は、吸着固定方式には限定されず、例えば、粘着テープを用いて固定する、所謂、テープダイシング方式(接着固定方式)を適用することができる。図42は図24に示すダイシング治具に対する変形例であるダイシングテープに配線基板を接着固定した状態を示す平面図、図43は図42のK−K線に沿った断面図である。また、図44は図43に示すテープ材に固定した状態で配線基板を切断する際のダイシング領域周辺を示す拡大断面図である。
接着固定方式を適用する場合、図42および図43に示すように切断対象物である配線基板20をテープ材(ダイシングテープ)DTに接着固定する点で前記実施の形態で説明した吸着固定方式とは異なる。テープ材DTは、一方の面に例えば紫外線硬化性樹脂などを含む接着層(粘着層)DT1が配置され、接着層DT1を配線基板20(詳しくは樹脂体4の表面4b)に貼り付けることで配線基板20をテープ材DTに接着固定する。また、配線基板20の周囲には、例えばステンレスなどの金属製のフレーム(枠体)RFが配置され、フレームRFの一方の面がテープ材DTの接着層DT1に接着されている。つまり、切断対象物である配線基板20は接着層DT1を有するテープ材DTを介してフレームRFに固定されている。そして、接着固定方式を適用した場合の個片化工程では、前記実施の形態で説明したダイシング治具41をテープ材DTおよびフレームRFに置き換えて適用することができる。なお、フレームRFおよびテープ材DTをステージ42(図28参照)に固定する方法は、例えば前記実施の形態と同様に吸着固定方式を用いることができる。
使い捨てのテープ材DTを用いて切断対象物を接着固定する方式の場合、基板切断工程において、ダイシングブレード40によりテープ材DTの一部(接着層DT1が形成された接着面側の一部)を切削することができる。このため、前記実施の形態で説明したMAP方式の半導体装置の製造方法の場合、基板切断工程において、配線基板20のダイシング領域20cと治具(テープ材DT)の間に隙間を生じさせずに切削加工を施すことができる。この結果、切削加工中に破断が生じ難くなるため髭状の被物は発生しない。しかし、図39に示す個片モールド方式を適用した半導体装置60の製造方法では、テープ材DTを用いた場合であっても髭状の異物が発生する。すなわち、図44に示すようにダイシング領域20cは、隣り合う樹脂体4の間に配置されるため、ダイシング領域20cにおいては治具であるテープ材DTと配線基板20の間にダイシングブレード40を挿入する空間がある。このため、図44に示すように髭状の異物100が発生する。
このように個片モールド方式で封止し、かつテープ材DTを用いた接着固定方式で切断する場合には、基板切断工程で髭状の異物100が形成され易い。そこで、前記実施の形態で説明した個片化工程を適用することで、この髭状の異物に起因した不具合を抑制することができる。
また、前記実施の形態では図4に示すように、外部電極として半田ボール5が取り付けられたBGA型の半導体装置1について説明した。BGA型の半導体装置1の製造工程においては、半田ボール5を配線基板20に取り付けた後で個片化工程を行うので、髭状の異物が半田ボール5に絡まって除去し難い。また、半田ボール5に髭状の異物が絡まると半田ボール5が損傷する原因となる。このため、BGA型の半導体装置1の製造方法において、前記実施の形態で説明した個片化工程を適用すれば、半田ボール5の損傷による半導体装置1の信頼性低下を抑制することができる。ただし、髭状の異物は、半田ボール5の有無に係わらず発生するので、半田ボール5が形成されていない半導体装置の製造方法に適用することができる。このような半導体装置の例としては、例えば図45に示す半導体装置61のように、半田などの接合部材を取り付けるためのランド13が露出した、LGA型の半導体装置61を例示することができる。また、LGA型の半導体装置61の更なる変形例として、個片モールド方式により封止する方法、あるいは個片モールド方式で封止し、かつ、テープ材DT(図43参照)を用いた接着固定方式により配線基板20を切断する半導体装置の製造方法に適用することができる。
また、図28〜図30に示す例では、冷却用ノズルであるノズル45と、洗浄用ノズルであるノズル46の2種類のノズルを設けた実施態様について説明したが、ノズル45の数は図28〜図30に示す例には限定されず、例えば図46および図47に示すようにさらに増やす事ができる。図46は、図30に対する変形例を示す説明図、図47は、図31に対する変形例を示す説明図である。図46および図47に示す例では、ノズル45、46から供給される液体の流れが乱れて、配線基板20全体に広がることを抑制する観点から、液体の流れ方向調整用のノズル49が設けられている。ノズル49はノズル46の両隣に設けられ、ノズル49からは、配線基板20に向かって液体(流れ方向制御液、例えば水)49aを供給する。二つのノズル49からの液体49aの供給速度は、例えば、それぞれ毎分0.5〜1.2リットル程度である。ノズル49の先端(吐出部)は、ノズル45、46から供給される液体の拡散範囲を抑制するため、ケース44内に配置されている。また、変形例としては、液体49aの供給圧力を上昇させるためにノズル49に加圧用の流体(気体、例えば空気)を供給する構成が考えられる。しかし、ノズル49からの液体49aの供給圧力が高すぎると、切削屑を巻き上げてケース44内が汚染する原因となるので、ノズル49には加圧用の流体(気体、例えば空気)は供給しないことがより好ましい。このように、切削加工中にノズル49から液体49aを供給することで、ノズル45、46から供給される液体が配線基板20全体に広がることを抑制できる。
また、例えば、切断対象物である配線基板20に切削屑が滞留することを、より確実に防止する観点から、ダイシングブレード40による切削加工中にダイシングブレード40と配線基板20の接触部周辺に向かって液体(例えば水)を供給するノズル(図示は省略)をさらに追加することができる。言い換えれば、切削加工中に発生する切削屑を取り除く複数の洗浄用ノズルをケース44内に配置して、複数の洗浄用ノズルのうちの一部は、ダイシングブレード40の端面(端部)40bに向かって洗浄液を供給させ、他部はダイシングブレード40と配線基板20の接触部周辺に向かって洗浄液を供給させることができる。
ただし、切削加工時に多数のノズルから液体を供給すると、液体の供給圧力によっては、互いの水の流れを阻害してしまう場合がある。したがって、互いの水の流れを阻害しないようにする観点からノズルの数は必要最小限とすることが好ましい。