JP5731106B2 - 管材の接合方法、ならびに、当該接合方法により接合した管材とフィン材とを接合した熱交換器 - Google Patents
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Description
本発明者らは、Al−1wt%Znをクラッドしたクラッド管材をトーチろう付けによって接合した場合に、接合部においてクラッド管材の犠牲材が優先腐食して貫通漏れに至る現象や、Zn溶射管材をトーチろう付けによって接合した場合に、接合部のろう材フィレット部に発生するZn濃化層が優先腐食して貫通漏れに至る現象についてメカニズムを検討した。具体的には図1に示すように、一端を拡管した管材1の拡管部に管材2を挿入して、トーチろう材5を用いてトーチろう付けによって両管材1、2を接合する場合について検討した。ここで、管材1、2の芯材4の外面に形成された層3は、クラッド層であるAl−Zn層又はZn溶射層を表す。
一方、Zn溶射管材における貫通漏れに対しては、接合部のろう材層にZn濃化層を存在させないことが有効であることを見出した。具体的には、トーチろう付けの前段階において、管材表面のZn溶射層に熱拡散を加えて表層のZn濃度を予め低濃度にしておくものである。
本発明に係る管材は、Al合金からなる芯材の外面に純度99.5wt%以上の純Alのクラッド層を設けたものが用いられる。
図1に示すように、端部を拡管した管材1及びその拡管部に挿入される管材2とはいずれも、心材4とその外側にクラッドされたクラッド層3から構成される。クラッド層にはいずれも、純度99.5wt%以上の純Alが用いられる。また、管材1と2とは、通常、芯材及びクラッド層の金属組成、芯材及びクラッド層の厚さ、管材全体の外径及び内径が同じ、すなわち、同じ管材が用いられる。しかしながら、芯材及びクラッド層の金属組成、芯材及びクラッド層の厚さ、管材全体の外径及び内径の少なくともいずれかが異なるものを用いても良い。
本発明において管材の芯材成分については特に限定されるものではないが、後述する純Al層が犠牲防食可能な電位を示す合金であって、ろう付け時に溶融しない合金が用いられる。クラッド管に大きな強度が要求されない場合にはJIS3003合金が用いられ、大きな強度が要求される場合にはCuの添加量が比較的多いJIS3105合金又はAl−1%Mn−0.5%Cu合金等が好適に用いられる。芯材の成分としては、Si0.6wt%以下、Fe0.7wt%以下、Mn0.8〜1.5wt%、Cu0.05〜0.5wt%とするのが好ましい。
芯材の外側に形成されるクラッド層は、純度99.5%以上の純Al層である。Alに含有される不純物であるSiやFeの含有量が、Siで0.25wt%、Feで0.40wt%を超えると純Al層の電位が貴になり、犠牲防食効果が損なわれる場合がある。その結果、管材が腐食環境に曝されるRベンド部やUベンド部の耐食性が劣ってしまう。従って本発明においては、クラッド管材の表面に純度99.5%以上の純Alを被覆することにした。不純物には不回避的な元素も含まれる。Al純度が99.5%以上とするには、Si、Fe及び不回避的元素から成る不純物の総量は、0.5wt%以下に規定される。したがって、不純物総量が0.5wt%以下の前提のもとに、Siが最大0.25wt%まで、Feが最大0.40wt%まで、ならびに、不回避的元素が含有されるものである。
管材は以下のようにして作製される。まず、円筒状の芯材の外面にクラッド層となる皮材スリーブを被せて、組み合わせビレットを作製する。所望のクラッド層厚さになるように、皮材スリーブの厚さを選定する。次いで、組み合わせビレットを加熱炉で350℃〜600℃に均熱する。次いで、組み合わせビレットをダイスとラムノーズ間に狭持してコンテナ内に挿入し、ダイスとラムノーズを固定した状態で芯材内径より大きな外径をもつマンドレルを圧入し、芯材の内径を拡管して芯材と皮材間の空気を追い出す。更に、マンドレルを所定の位置に固定して、ホローシステムを前進させダイスを通して組み合わせビレットを押し出し、継ぎ目無しの中空管材とするものである。最後に、抽伸工程を経て所定の外径と内径を有するクラッド管を作製する。
これに代わって、押し出し成形によって芯材管を作製し、その外面にクラッド層を溶射によって形成してもよい。
トーチろう材の成分は、Si11.0wt%〜13.0wt%、Zn1.0wt%〜2.0wt%のAl−Si−Zn合金が用いられる。Si含有量が11.0wt%未満のものは、ろう材の共晶組成から外れるために、ろう付け時において液相量が不足する。その結果、トーチろう付け性が劣る。一方、含有量が13.0wt%を超えると、ろう材が過共晶組成になるためろう材中に大きなSi粒の初晶が析出してろうの流動性を阻害する。その結果、トーチろう付け性が劣る。従ってSi量を11.0wt%〜13.0wt%と規定した。
図1に示すように、一端を拡管した管材1の拡管部に、接合部にフラックスを塗布した管材2を挿入する。次いで、接合部にトーチろう材5を配置し、プロパン・エアー・トーチ等のトーチを用いたトーチろう付けによって両管材1、2をろう付け接合する。フラックスには、フッ化物系フラックス、セシウム系フラックスを用いることができる。このように、トーチろう付け方法は、一般的な方法を用いることができる。
本発明に係る熱交換器は、上述の管材とフィン材とを接合することによって得られる。フィン材としては、JISA1200合金やJISA1100合金等が用いられる。これらの合金を用いることで管材を入れるフィン穴の形状(バーリング形状)を、フィンと管を密着させる形状に成型できる。これら管材とフィン材と組み合わせて、拡管用の治具を管材内部に押し込み、管材を広げフィン穴と密着させ接合する。この後に、拡管用の治具を入れた管同士を、拡管した同構成のU字管の部品でつなぎ、接合部にワイヤーろうを配置してトーチろう付けすることによって熱交換器が製造される。
表1に、ワイヤーろう材の成分、純Alクラッド層の不純物含有量、ならびに、ろう付け条件(温度と時間)を示す。ワイヤーろう材は、所定成分に鋳造した後に、丸棒に押し出し、次いでダイスを通して抽伸を行い1.4〜2.2mm径の線材として作製した。
管材は以下のようにして作成した。芯材としてJIS3003の円筒を用い、その外面に不純物としてSiとFeを含有する純Al合金の皮材スリーブを被せ、組み合わせビレットを作製した。次いで、組み合わせビレットを加熱炉で350℃〜600℃に均熱した。更に、組み合わせビレットをダイスとラムノーズ間に狭持してコンテナ内に挿入し、ダイスとラムノーズを固定した状態で芯材内径より大きな外径をもつマンドレルを圧入し、芯材の内径を拡管して芯材と皮材間の空気を追い出した。マンドレルを所定の位置に固定して、ホローシステムを前進させダイスを通して組み合わせビレットを押し出し、継ぎ目無しの中空管材を作製した。次いで、抽伸工程を経て外径φ8mm、内径φ7mmのクラッド管を2本作製した。これらの管を用い、実際の熱交換器の接合部分と同じように、管材1を拡管し、その拡管部分に管材2を挿入した。次いで、接合部分にフッ化物系フラックスを塗布し、ワイヤーろう材を用いてトーチろう付けを行い接合試験片を得た。
(1)管材同士の接合部におけるろう付け性評価
接合試験片の断面を切断し樹脂埋め研磨した後に、10mm以上にわたって接合痕が存在していたものを○とし、接合痕が5mm以上10mm以下未満のものを△とし、5mm未満のものを×とした。○と△を合格とし、×を不合格とした。
上述のようにして作製した熱交換器ミニコアを用い、JISH8601に準じるCASS試験を2000h行なった。試験後、コアのフィン材を除去し、管材に付いた腐食生成物を濃硝酸とリン酸−クロム酸混液で除去した。次いで、図8、9に示す接合部における内側管材である管材2の腐食深さ、ならびに、非接合部であるRベンド部、Uベンド部及びフィン下部の管材の腐食深さを焦点深度法にて測定した。結果を表1に示す。未貫通のものを合格とし、貫通したものを不合格とした。
芯材としてJIS3003の円筒を用い、その外面にAl−1%Zn合金の皮材スリーブを被せ、組み合わせビレットを作製した。次いで、組み合わせビレットを加熱炉で350℃〜600℃に均熱した。更に、組み合わせビレットをダイスとラムノーズ間に狭持してコンテナ内に挿入し、ダイスとラムノーズを固定した状態で芯材内径より大きな外径をもつマンドレルを圧入し、芯材の内径を拡管して芯材と皮材間の空気を追い出した。マンドレルを所定の位置に固定して、ホローシステムを前進させダイスを通して組み合わせビレットを押し出し、継ぎ目無しの中空管材を作製した。次いで、抽伸工程を経て外径φ8mm、内径φ7mmのクラッド管を2本作製した。これらの管を用い、実際の熱交換器の接合部分と同じように、管材1を拡管し、その拡管部分に管材2を挿入した。次いで、接合部分にフッ化物系フラックスを塗布し、ワイヤーろう材を用いて600℃、3秒保持のトーチろう付けを行い接合試験片を得た。
管材としてJIS3003のビレットを作製し、これを加熱炉で350℃〜600℃に均熱した。次いで、ビレットをコンテナ内に挿入してダイスを通してビレットを押し出し中空管材を作製した。更に、Zn溶射ガンの中を通して付着量10g/m2のZn溶射管を作製した。このZn溶射管に、430℃で8時間の予備加熱処理を施した。このようにして、外径φ8mm、内径φ7mmのZn溶射管を2本作製した。これらの管を用い、実際の熱交換器の接合部分と同じように、管材1を拡管し、その拡管部分に管材2を挿入した。次いで、接合部分にフッ化物系フラックスを塗布し、ワイヤーろう材を用いて600℃、5秒保持のトーチろう付けを行い接合試験片を得た。
比較例10では、純Alクラッド層のSi量が本発明範囲を超えるため、Rベンド部とUベンド部の耐食性が劣り貫通腐食を生じた。
比較例11では、純Alクラッド層のFe量が本発明を超えるため、Rベンド部とUベンド部の耐食性が劣り、貫通腐食を生じた。
比較例12では、ろう材ワイヤーのSi量が本発明未満のため、ろう材の液相線温度が下がるためトーチろう付け性が不良であった。
比較例13では、ろう材ワイヤーのSi量が本発明を超えるため、ろう材の液相線温度が下がるためトーチろう付け性が不良であった。
比較例14では、ろう材ワイヤーのZn量が本発明未満のため、Zn濃縮層とろう材部の電位差が大きくなり接合部に優先腐食が発生して接合部での耐食性に劣った。
比較例15では、ろう材ワイヤーのZn量が本発明を超えるため、ろう材中のZn量が多くなりフィレット部の腐食量が多くなるため、接合部での耐食性に劣った。
比較例16では、トーチろう付けの保持時間が本発明未満のため、接合部ののろう付け性が不良であった。
比較例17では、トーチろう付けの保持時間が本発明を超えるため、接合部のろう付けが不良であった。
比較例18では、トーチろう付けの温度が本発明未満のため、接合部のろう付けが不良であった。
比較例19、20では、純度99.5wt%の純Alクラッド層を用いていないため、フィン下部での耐食性に劣った。
2……管材
3……クラッド層、Zn溶射層、犠牲陽極材
31……Al−Zn層
32……Al−Zn層
4……芯材
5……ろう材、トーチろう材
51……Zn濃化層
52……Zn濃化層
6……フィン
7……拡管用の治具
A……接合部
B……Rベンド部
C……Uベンド部
D……フィン下部
Claims (2)
- Al合金からなる芯材の外面に、当該芯材に対して犠牲防食可能な電位を有し、純度99.5wt%以上で0.5wt%以下の不純物を含有し、当該不純物がSiとして0.25wt%以下、Feとして0.40wt%以下で残部不回避不純物からなる厚さ50μm〜100μmの純Alのクラッド層を設けた管材を2本用意し、一方の管材の端部を拡管し、当該拡管部に他方の管材を挿入してトーチろう付けによって両管材を接合する方法において、トーチろう付けに用いるろう材が、Si11.0wt%〜13.0wt%、Zn1.0wt%〜2.0wt%で残部不回避不純物からなるAl合金であり、トーチろう付けが600℃に到達してから3〜8秒保持し、ろう材によりクラッド層を侵食させて接合することを特徴とする管材の接合方法。
- 請求項1に記載の接合方法により接合した管材とフィン材とを接合した熱交換器。
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