JP4290625B2 - アルミニウム合金押出材を用いた熱交換器用ヘッダータンク及びそれを備えた熱交換器 - Google Patents
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従来、この種の熱交換器は、離間して配置される左右一対のヘッダータンクと、これらヘッダータンクの間に互いに並行に間隔をあけて設けられたアルミニウム合金製の複数のチューブと、これら隣接するチューブとチューブの間に架設されるように設けられた波形のフィンとから構成されている。そして、熱交換器において前記ヘッダータンクとチューブは、ヘッダータンクの側面に複数形成されたスロットに各チューブの両端部を差し込み、差し込み部分周りに配置したろう材を用いて両者を相互にろう付けするとともに、熱交換器においてチューブとフィンは、互いの接触部分周りに配置したろう材を用いて両者を相互にろう付けすることで組み立てられている。
前記構造の熱交換器は、各チューブの内部空間とヘッダータンクの内部空間に冷媒を循環させ、前記フィンを介して効率良く熱交換ができるように構成されている。
しかし、熱交換器のろう付け工程では材料が600℃前後まで加熱されるために、材料自体が鈍ってしまい、前述の材料ではろう付け後に材料強度が不足する傾向にある。そのため、ろう付け後の現行押出材の強度では、ヘッダータンクの薄肉化を更に図ることができないという課題があった。
しかし、先の組成の材料からなるアルミニウム合金押出ヘッダータンク、チューブにあっては、Cuを多く含んでいて、強度面においては優れているものの、押出性に難点があり、薄肉化された場合に押出性に難点を有するとともに、軽量薄肉化された実環境で使用された場合、耐食性の面でも問題を生じるおそれがあった。
これらの背景に鑑み、従来、Mn:0.5〜1.3%、Si:0.5〜1.2%、Cu:0.3〜1%、Ti:0.1〜0.3%を含有し、残部Al及び不可避不純物の組成を有する熱交換器用アルミニウム合金押出ヘッダータンクが提案されている。(特許文献1参照)
この粉末ろう材は、接合部の形状等の制約が小さく、複雑形状品等のように従来のろう材では配置が困難な箇所にも容易に適用できるものとして注目されている。
本発明において、前記組成に加え、Ti:0.01〜0.1%、Zr:0.01〜0.05%、Zn:0.2〜0.5%のうちの1種以上を更に含有するアルミニウム合金の押出材からなるものでも良い。
前記粉末ろうにZn:1〜30%が含有されたものでも良い。
本発明において、チューブを差し込むためのスロットが側面に設けられ、少なくともチューブを差し込むためのスロットが設けられた部分の外表面に、Si粉末とZnを含有したフッ化物フラックスおよびバインダを含有するろう付用組成物が塗布されてなり、重量%でMn:1.2〜1.6%、Si:0.8〜1.2%、Cu:0.1〜0.3%未満を含有し残部がAl及び不可避不純物からなる組成を有するアルミニウム合金の押出材からなることを特徴とするものでも良い。
本発明は前述した種々の特徴を有するヘッダータンクを備えた熱交換器を提供する。
図1に示す熱交換器Aは、離間して左右に配置されている一対のヘッダータンク1、1と、これらヘッダータンク1、1の間に互いに並行に間隔をあけて設けられたアルミニウム合金製の複数の偏平型のチューブ3と、これら隣接するチューブ3とチューブ3の間に架設されるように設けられた波形のフィン5とから構成されている。
そして、熱交換器Aにおいて前記ヘッダータンク1とチューブ3は、ヘッダータンク1の側面に複数整列形成されたスロット(差込孔)1Aに各チューブ3の端部3Aを差し込み、差込部分3Aの周りに配置したろう材6を用いて両者を相互にろう付けするとともに、熱交換器Aにおいてチューブ3とフィン5は、互いの接触部分の周りに配置したろう材7を用いて両者を相互にろう付けすることで組み立てられている。
前記構造の熱交換器Aは、各チューブ3の内部空間とヘッダータンク2の内部空間に冷媒を循環させ、前記フィン5を介して効率良く熱交換ができるように構成されている。
また、このヘッダータンク1を構成する押出材は、前記組成に加え、Ti:0.01〜0.1%、Zr:0.01〜0.05%、Zn:0.2〜0.5%のうちの1種以上を更に含有する組成のアルミニウム合金から構成することができる。なお、以下の表記において合金組成の範囲を〜の符号で示す場合、特に注記しない限りは下限値と上限値を含むことを意味するので、以上、以下を意味する。従って例えば、Mn:1.2〜1.6%と表記した場合に、1.2%以上、1.6%以下を意味する。
Mn:本実施例構造のヘッダータンク1においてMnを添加するのは、金属間化合物(例えば、Al−Mn化合物、Al−Si−Mn化合物、Al−Cu−Mn化合物)を晶出または析出させてヘッダータンク1の強度を向上させるためである。但し、Mnの含有量を過剰にし過ぎると、必要量以上の金属間化合物を析出させてしまい、押出時にピックアップなどが発生するとともに、ダイス破損、押出圧力異常上昇などの不具合が発生し、押出性が低下する。このためMn含有量は1.2〜1.6%の範囲とする。この中でも1.25〜1.4%の範囲がより好ましい。
Si:Siについては、先に説明したMnとともにAl−Si−Mn金属間化合物を生成させるので、強度と押出性に影響があり、前述のAl−Mn金属間化合物が必要以上に生成されて押出性を低下させないように適度な量のAl−Si−Mn金属間化合物を生成させる必要がある。また、Al−Si−Mn金属間化合物の生成自体が強度を向上させる作用も奏する。逆にSiが過剰になりすぎると合金融点の低下やSi晶出物の生成により押出性が低下する。また、合金融点の低下に伴ってピックアップが発生する。これらのためSi含有量は0.8〜1.2%%の範囲とする。この中でも0.9〜1.1%の範囲がより好ましい。
Cu:Cuは先のMnとともにAl−Cu−Mn金属間化合物を生成し、押出性を低下させるような必要量以上のAl−Mn金属間化合物の生成を抑制し、押出性の改善に寄与する。ただし、Cuが多くなりすぎると粒界腐食が発生し易くなり、耐食性が低下する。このためCu含有量は0.1〜0.3%未満の範囲とする。この中でも0.12〜0.25%の範囲がより好ましい。
Zn:ZnはTi低濃度の部の電位を下げ、Tiによる層状腐食の効果を促進させ、耐食性の一層の向上を図るために添加するが、その含有量が0.2%未満では所望の効果が得られず、一方、0.5%を越えて含有すると腐食速度が増加して耐食性が劣るようになるので好ましくない。したがって、Znを添加する場合の好ましい含有量は0.2〜0.5%に定めた。
Zr:Zrはろう付け時に発生する結晶粒を偏平にし、腐食形態を層状にし、耐食性を向上させるとともに、金属間化合物として晶出または析出して強度を向上させる作用を有するので必要に応じて添加するが、その含有量が0.01%未満では所望の効果が得られず、一方、0.05%を越えて含有すると、巨大な金属間化合物が生成しやすくなるために押出加工性が低下するので好ましくない。したがって、Zrを添加する場合の好ましい含有量は0.01〜0.05%に定めた。
更に前記粉末ろうに、前記Siに加えてZn:1〜30%を更に含有させたものを用いても良い。また、前記フラックスとしては、Znを含有したフッ化物系フラックスを用いることができる。
ここで、Si含有量が15%以下であると、ろう材は共晶または亜共晶合金となり、母材を溶解させる作用が少なくなり、ろう材量を低減する効果が小さいなる。一方、Si含有量が60%を越えると、母材に対する侵食が過度になり強度低下等の問題が生じ、またろう材の融点が1150℃以上となり、粉末ろう材の製作時の溶解が困難となるため、過共晶Al−Si系合金を用いる場合のSi含有量として15越〜60wt%が好ましい範囲とした。なお、同様の理由で、過共晶Al−Si系合金を用いる場合に、下限を20%、上限を30%とするのが一層望ましい。これらの望ましい範囲では、母材に対する適度な溶解が生じるため、良好なろう付性を維持したままでろう材量をより効果的に減少させることが可能になる。
上記粉末ろう材を接合部に付着させる際には、先に説明の如く混合したバインダと必要に応じて添加する溶剤を利用して付着を容易にすることができる。溶剤としては、水、アルコール類(特に炭素数1〜8の脂肪族アルコール)などを用いることが出来る。また、バインダーとしては、接合部の特性を低下させないで、粉末を良好に固着できるものであればよく、カルボキシル基を有する水溶性高分子化合物または、アクリル系、メタクリル系樹脂等を挙げることができる。上記した合金粉末は、適当に混合されて、接合材に付着させる。その方法も本発明としては特に限定されないが、例えば、スプレー法、シャワー法、フローコーター法、ロールコータ法、刷毛塗り法、浸漬法といった手段を利用することができる。
本実施形態において過共晶Al−Si系合金ろう材を用いる場合は、Siが過剰となっているので、ろう付時にそのSiがヘッダータンク1の付着部分に拡散流入し、ヘッダータンク1の母材の融点を低下させ、その一部を溶融(浸食)する。この溶融した母材の一部が塗布されていた粉末ろうとともに流動し、ヘッダータンク1とチューブ3の接合部の隙間充填を行い、フィレットの形成を行う。すなわち、母材の一部にもろうとして作用し、接合に必要なろう材量を補完するので粉末ろう材の塗布(必要)量を減少させることができる。その結果、粉末ろう材の使用量、塗布回数を低減することでコストダウンが可能になる。
また、チューブ3を差し込むためのスロット1Aが側面に設けられ、チューブ3を差し込むためのスロット1Aが設けられた部分の外表面に、Si:5〜60%を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなる組成のAl−Si系合金の粉末ろうと、フラックスおよびバインダを含有するろう付け組成物が塗布されてなり、このろう付け組成物により先に記載の合金からなるヘッダータンク1にチューブ3が接合されているので、ろう付け強度を高くすることができる。
また、ヘッダータンクは1つの部材(ピース)からなる構成である必要はなく、図5に示すように縦割り半パイプ状のヘッダータンク半体9A、9Bを組み合わせてパイプ状とした構造の2ピース型のヘッダータンク9であっても良い。
この場合、Si粉末とZnを含有したフッ化物フラックスおよびバインダを含有するろう付用組成物を用いることもできる。ここで用いるSi粉末として、最大粒径100μm以下のものを用いることができ、Si粉末の塗布量は1〜50g/m2の範囲、Zn含有フラックスの塗布量を5g/m2〜50g/m2の範囲とすることが好ましい。また、Zn含有フラックスは、ZnF2、ZnCl2、KZnF3のうち、少なくとも1種以上のZn化合物を含むものとすることが好ましい。
このようなろう材を用いると、Si粉末とZn含有フラックスが混合されて塗布されてるので、ろう付け時にSi粉末が溶融してろう液となり、このろう液にフラックス中のZnが均一に拡散し、チューブ表面に均一に広がる。このろう液のような液相内でZnの拡散速度は固相内の拡散速度より著しく大きいので、ヘッダータンク1の表面のZn濃度をほぼ一定とすることができ、これにより均一な犠牲陽極層が形成され、熱交換器用チューブの耐食性を向上させる。
したがって、Al−Si系合金においてもSiが過量のものは上記と同様の理由で避ける必要があるが、前記組成のヘッダータンク1を用いるならば、母材の一部がろうとなってろう付後の母材板厚が多少減少しても、熱交換器として必要な強度を確保することができる。
以下の表1に示す合金組成でアルミニウム合金のビレットを製作し、厚さ2mm、外径25mmの中空丸型ヘッダータンクを押出成型し、押出性の確認を行った。押出成型して得た各ヘッダータンクにろう付け相当の熱処理(600℃×3分保持)を施した後、引張強さ(TS)を測定した
また、ろう付け相当熱処理後のヘッダータンクをSWAAT(JIS Z2371に規定)にて5日間の腐食試験を行い、腐食形態の確認を行った。その結果を以下の表1に併せて示す。
以下の表2に示す合金組成でアルミニウム合金のビレットを製作し、厚さ1mm、幅20mmのフラットバーを押出成型した。このフラットバーから図5に示す水平板(厚さ1mm、幅20mm、長さ20mm)10と垂直板(厚さ1mm、幅20mm、長さ50mm)11を切り出し、ろう付け組成物(Al−25Si粉末ろう100g/m2+フッ化物系フラックス20g/m2+バインダ10g/m2)を垂直板11の両面に塗布後、逆T字型に組み付け、ろう付け(600℃×3分保持)して図5に示す逆T字型の試験片を作製した。この試験片において水平板10と垂直板11との当接部分両側の周りに広がっている部分がフィレット12となっている。
この逆T字型の試験片において、垂直板11を水平板10から引き離す方向に両者を引っ張る引張試験を行い、接合部近傍(図5に示す鎖線Hの位置、垂直板11においてフィレット12の端部近傍)で破断した試験片の引張強さ(TS)を測定した。また、フラットバー(素材)単体でのろう付け後の引張強さも測定した。
なお、フラットバー(素材)単体でのろう付け後の引張強さとは、JISZ2201 13号試験片に相当する形状において引張試験した結果を示す。
以下の表2にそれらの試験結果を示す。
試料11はCuを0.05%含む試料であるが、TSが低下した。
なお、一般に断面積の変化する基材を引張試験した場合、断面積の最も小さな部分に応力集中する。従って今回の引張試験の場合、図12に示すフィレット部分の断面積が最も狭くなったH部分に応力が集中し、破断したものと思われる。
試料DはMnを少なくした試料であるが逆T字試験片とした場合の引張強さの向上は認められず、試料EはSiも少なくした試料であるが、引張強さ自体が大幅に低下した。
5…フィン、6、7…ろう材、8、9…ヘッダータンク、8B…スロット(差込孔)。
Claims (8)
- 重量%でMn:1.2〜1.6%、Si:0.8〜1.2%、Cu:0.1〜0.3%未満を含有し残部がAl及び不可避不純物からなる組成を有するアルミニウム合金の押出材からなることを特徴とする熱交換器用ヘッダータンク。
- Ti:0.01〜0.1%、Zr:0.01〜0.05%、Zn:0.2〜0.5%のうちの1種以上を更に含有するアルミニウム合金の押出材からなることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器用アルミニウム合金押出ヘッダータンク。
- チューブを差し込むためのスロットが側面に設けられ、少なくともチューブを差し込むためのスロットが設けられた部分の外表面に、Si:5〜60%を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなる組成のAl−Si系合金の粉末ろうと、フラックスおよびバインダを含有するろう付け組成物が塗布されてなり、
重量%でMn:1.2〜1.6%、Si:0.8〜1.2%、Cu:0.1〜0.3%未満を含有し残部がAl及び不可避不純物からなる組成を有するアルミニウム合金の押出材からなることを特徴とする熱交換器用アルミニウム合金押出ヘッダータンク。 - 前記押出材が、Ti:0.01〜0.1%、Zr:0.01〜0.05%、Zn:0.2〜0.5%のうちの1種以上を更に含有するアルミニウム合金の押出材からなることを特徴とする請求項3に記載の熱交換器用アルミニウム合金押出ヘッダータンク。
- 前記粉末ろうにZn:1〜30%が含有されたことを特徴とする請求項3又は4に記載のアルミニウム合金押出ヘッダータンク。
- 前記フラックスが、Znを含有したフッ化物系フラックスであることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載のアルミニウム合金押出ヘッダータンク。
- チューブを差し込むためのスロットが側面に設けられ、少なくともチューブを差し込むためのスロットが設けられた部分の外表面に、Si粉末とZnを含有したフッ化物フラックスおよびバインダを含有するろう付用組成物が塗布されてなり、
重量%でMn:1.2〜1.6%、Si:0.8〜1.2%、Cu:0.1〜0.3%未満を含有し残部がAl及び不可避不純物からなる組成を有するアルミニウム合金の押出材からなることを特徴とする熱交換器用アルミニウム合金押出ヘッダータンク。 - 請求項1〜7のいずれかに記載のアルミニウム合金押出ヘッダータンクを備えたことを特徴とする熱交換器。
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