JP4001368B2 - ろう付け性、機械加工性に優れる高硬度アルミニウム合金押出材とその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用の熱交換器等に好適な、ろう付け性及び機械加工性に優れた高硬度アルミニウム合金押出材に関し、特に不活性ガス雰囲気中でフッ化物系フラックスを使用してろう付けを行う場合に適したろう付け性及び機械加工性に優れた高硬度アルミニウム合金押出材とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウム合金は上記熱交換器用の材料として純Al系、Al−Mn系、Al−Mg−Si系が多く使用されているがそのほとんどがブレージングシートやクラッド材といった圧延材を使用したものである。
【0003】
また、コネクタ等の部材にはAl−Zn−Mg系のアルミニウム合金、例えばA7N01、A7003合金等や、A1−Mn−Mg系のA3004合金が使用されている。Al−Zn−Mg系合金(例えば、特許文献1参照)についてはろう付け後、高硬度が得られるもののZnが融点を下げるために押出時にテアリング等の不良を発生する。
【0004】
Al−Mn−Mg系合金(例えば特許文献2参照)についてはMgを多く含むためろう付け性を低下させるという問題が生じる。その他、Cuを多く含むと耐食性が劣ったり、添加元素が多くなると押出時の変形抵抗が増加して生産性に影響を及ぼす。また、その他にも熱交換器のコネクタ用合金が提案されているが(例えば、特許文献3参照)、コネクタの強度の面で未だ不十分である。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−49374号公報
【特許文献2】
特開2000−119784号公報
【特許文献3】
特開平1−225736号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、Zn、Mgを含有する従来の熱交換器用のアルミニウム合金の欠点を解消するためになされたものであり、十分なろう付け性、押出性と共に、十分な強度、硬度、耐熱性を備えたアルミニウム合金押出材を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、アルミニウム合金の成分として、Zn、Mgを含有させないようにすることでろう付け性、押出性を確保すると共に、Mn、Cu、Fe、Siを最適な量比で含有させることによって強度、硬度、耐熱性を確保することができること、更に合金成分によって形成される化合物による再結晶化の遅延によって押出材中に形成される繊維状組織と、Mn、Cuの固溶強化とによって、高い硬度が維持されることを見出して本発明を完成したものである。
【0008】
すなわち、本発明は次の構成を有する。
(1)質量%でMn:1.2%以上2.0%以下、Cu:0.25%以上2.0%以下、Si:0.3%以上1.0%以下、Fe:0.10%以上0.5%以下を含有し、残部Alと不可避的不純物からなり、押出し後の組織が繊維状組織を有し、押出し後の硬度が55Hv以上、引張り強度が18kgf/mm2以上であることを特徴とするろう付け性、機械加工性に優れる高硬度アルミニウム合金押出材。
【0010】
(2)質量%でMn:1.2%以上1.5%以下、Cu:0.3%以上1.0%以下、Si:0.5%以上1.0%以下、Fe:0.10%以上0.3%以下を含有し、残部Alと不可避的不純物からなることを特徴とする上記(1)記載のろう付け性、機械加工性に優れる高硬度アルミニウム合金押出材。
【0011】
(3)前記押出材が熱交換器用コネクタ製品であること特徴とする上記(1)または(2)に記載のろう付け性、機械加工性に優れる高硬度アルミニウム合金押出材
【0012】
(4)600℃の温度で暴露後も硬度が55Hv以上、引張り強さが18kgf/mm2以上であることを特徴とする上記(3)記載のろう付け性、機械加工性に優れるアルミニウム合金押出材。
【0013】
(5)アルミニウム合金のビレットを400〜600℃で4〜6時間の均質化処理を行い、450〜550℃にて熱間押出することを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のろう付け性、機械加工性に優れる高硬度アルミニウム合金押出材の製造方法。
【0014】
【発明の実施の形態】
まず、本発明のアルミニウム合金押出材を構成する各合金成分の意義及び含有量の限定理由について述べる。
【0015】
(a)Mn:1.2〜2.0% (好ましくは1.2〜1.5%)
Mnは強度を得るために重要な元素である。
Mnは、マトリックス中で微細なAl−Mn系金属間化合物を析出させることによって合金素材の強度を向上させると共に該化合物の存在により切削性も良好となる。更にMnはマトリックス中に固溶することにより再結晶温度を上昇させ、高温硬度を上昇させる。1.2%より少ないと強度が不十分となり、2.0%を超えると、化合物が大きく量も多くなり押出性を著しく劣化させる。押出性を良好にするためには、その含有量は1.5%以下であることが好ましい。
【0016】
(b)Cu:0.25〜2.0% (好ましくは0.3〜1.0%)
Cuは強度を得るために重要な元素である。
Cuはマトリックスに固溶してろう付け後の強度を向上させる。十分な強度を得るためには0.25%以上含有させることが必要であり、0.25%より少ないと、銅の固溶による十分な固溶強化が得られない、逆に2.0%を超えると、融点を低下させてろうによる母材浸食性を助長し、また、ろう付け後にCuが粒界析出して粒界腐食を起こしやすいことから2.0%を上限とする。硬度、ろう付け性を良好にするためには、その含有量は0.3%以上1.0%以下であることがより好ましい。
【0017】
(c)Si:0.3〜1.0% (好ましくは0.5〜1.0%)
Siは強度、硬度及び押出性を向上させるために重要な元素である。
Siを含有させるとAl−Mn−Si系3元化合物が形成されて、再結晶化を遅延させ、高温でも繊維状組織を安定化させるため、ろう付け時の高温暴露があっても高い硬度を維持することができる。Siを含有させると、Al−Mn−Si系化合物が形成され、押出性を低下させるAl−Mn系化合物の形成を防ぐため、押出性を向上させることができる。0.3%より少ないと、強化が不十分となり、逆に1.0%を超えると、融点の低下によるろう付け性の不良、部分溶解によるテアリング問題が発生する。またより高い硬度、押出し性を考慮するならば0.5%以上1.0%以下とするのが好ましい。
【0018】
(d)Fe:0.10〜0.5% (好ましくは0.10〜0.3%)
Feは強度、切削性及び押出性を向上させるために重要な元素である。
FeはAl−Mn系晶出物の生成を助け、A16(Mn,Fe)で存在し、結晶粒を微細化し、強度を上げると共に、切削性を良好にする効果もある。また、MnのAlへの固溶量を下げることにより押出面圧が低下するという効果が得られる。0.10%より少ないと、不純物として混入するFeを避けねばならず、材料費の上昇を招くと共に、強化が不十分となる。0.5%を超えると、化合物が大きく量も多くなり、耐食性、押出性を劣化させる。また、耐食性、押出し性をより良好にするには、その含有量は0.3%以下さらに0.2%以下より好ましくは0.18%以下であることが好ましい。
【0019】
(e)Ti,Cr,Zr: 0.3%以下
Ti、Cr、Zrは組織を微細化して強度を高めると共に、耐食性を向上させる効果を有する。Ti、Cr、Zrから選ばれる少なくとも1種の元素の含有量が0.3%を超えるとアルミニウム合金の押出性が低下するので、その含有量は0.3%以下とする。
【0020】
次に、本発明のアルミニウム合金押出材を製造するための製造条件について述べる。
(均質化処理条件)
均質化処理条件は、温度を400〜600℃、処理時間を4〜6時間とする。鋳塊の均質化処理温度が600℃を超えた場合、再結晶抑制の効果を奏さなくなる(押出後の組織が繊維状組織ではなくなる)ため強度が低下する。また、400℃より低いい場合には、均質化処理による押出前で高硬度が得られない。又、均質化処理時間は4時間未満では押出性が低下し、6時間を超えると再結晶を起こし易く強度が低下する場合がある。
【0021】
(熱間押出条件)
熱間押出の際の温度条件は450〜550℃とする。
鋳塊の押出温度が550℃を超えると、温度が高すぎるために、押出用金型に負担がかかる。押出温度が450℃より低いと、温度が低いために、面圧が大きくなり、更に押出し後の表面状態も荒れる。
【0022】
【実施例】
以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではないことはもとよりである。
まず、実施例及び比較例の供試材の調製方法及び供試材の評価方法について述べる。
【0023】
<供試材の調製方法>
表1に示す本発明の実施例の供試材は、以下のようにして作製した。また、比較例の供試材も同様にして作製した。
まず表1に示す組成を有するアルミニウム合金を溶解し、DC鋳造により得られた鋳塊を450℃で4.5時間の均質化処理を行った後、500℃で熱間押出加工して厚さ20mm、幅35mmの角柱状の供試材を得た。
【0024】
<供試材の評価方法>
上記のようにして得た実施例及び比較例の供試材について、次に示すような評価方法を用いてその評価を行った。
【0025】
〔組織観察〕
600℃窒素雰囲気中に5分間暴露後1ヶ月放置した供試材から採取した供試材の組織を光学顕微鏡により観察を行った。
なお評価の基準として組織断面を観察し、再結晶組織が確認された場合をR、再結晶組織が確認されなかった場合をFと判断した。
【0026】
〔硬度測定〕
600℃窒素雰囲気中に5分間暴露後1ヶ月放置した供試材から採取した供試材表面を鏡面研磨して、マイクロビッカース硬さ計にて、荷重5kg、時間15secで硬度測定を行った。
【0027】
〔引張り強さ試験〕
引張り試験はJISZ2201に規定する14A号試験片に準じ、600℃窒素雰囲気中で、5分間暴露後1ヶ月放置した供試材の両端部をつかみ、試験した。
【0028】
〔融解開始温度測定〕
融解開始温度測定は、供試材から約5mg程度切り出し、それらを試料として示差走査熱量測定をおこなった。
【0029】
〔ろう付け性〕
ろう付け性は供試材とJIS3003合金のパイプを組み合わせ、JIS4045のろう材を接合部に配置し、電気炉で600℃、3分間のろう付けを行い、接合部の状態及び表面状態より総合的に評価し、○(良好)、×(不良)で評価した。
【0030】
[押出性]
押出し温度は500℃で、押出す際の面圧と押出速度および十分な形状が得られているかどうかを総合的に評価し、○(良好)、×(不良)で評価した。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
<供試材の評価>
表2に見られるように、比較例1〜4及び7は硬度が不十分であり、比較例5及び6は部分融解温度が低くろう付け性及び押出し性が悪く、比較例8及び9は押出し性が悪いのに対し、本発明の条件に従う実施例1〜11はいずれも熱処理後の硬度が55Hv以上、引張り強さが18kgf/mm2以上で、かつ部分融解温度が620℃以上で良好なろう付け性及び押出性を示した。
【0033】
【発明の効果】
本発明によれば、ろう付け後に高硬度を保持し、押出性が良好であり、フッ化物フラックスを使用するろう付けを行った楊合に優れたろう付け性が得られ、特に自動車用熱交換器として使用できるアルミニウム合金押出材およびその製造方法を提供される。本発明のアルミニウム合金押出材は自動車用熱交換器のコネクタなど接続部材用材料として好適に使用でき、熱交換器の生産性の向上が可能となる。
Claims (5)
- 質量%でMn:1.2%以上2.0%以下、Cu:0.25%以上2.0%以下、Si:0.3%以上1.0%以下、Fe:0.10%以上0.5%以下を含有し、残部Alと不可避的不純物からなり、押出し後の組織が繊維状組織を有し、押出し後の硬度が55Hv以上、引張り強度が18kgf/mm2以上であることを特徴とするろう付け性、機械加工性に優れる高硬度アルミニウム合金押出材。
- 質量%でMn:1.2%以上1.5%以下、Cu:0.3%以上1.0%以下、Si:0.5%以上1.0%以下、Fe:0.10%以上0.3%以下を含有し、残部Alと不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1記載のろう付け性、機械加工性に優れる高硬度アルミニウム合金押出材。
- 前記押出材が熱交換器用コネクタ製品であること特徴とする請求項1または2に記載のろう付け性、機械加工性に優れる高硬度アルミニウム合金押出材
- 600℃の温度で暴露後も硬度が55Hv以上、引張り強さが18kgf/mm2以上であることを特徴とする請求項3記載のろう付け性、機械加工性に優れるアルミニウム合金押出材。
- アルミニウム合金のビレットを400〜600℃で4〜6時間の均質化処理を行い、450〜550℃にて熱間押出することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のろう付け性、機械加工性に優れる高硬度アルミニウム合金押出材の製造方法。
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