JP5680880B2 - ろう付接合済Al部材の製造方法 - Google Patents
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Description
本実施形態のろう付接合済Al部材の製造方法は、複数のAl部材をAl合金ろう材ワイヤを用いて接合する工程を備えるろう付接合済Al部材の製造方法であって、前記Al合金ろう材ワイヤは、Si:9.0〜14.0mass%、Zn:0.5〜6.0mass%、Cu:0.5mass%以下、Fe:0.1〜0.9mass%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなり、前記ワイヤを用いたろう付後のフィレットと周辺のAl部材との孔食電位の関係が、(フィレットの孔食電位)−(Al部材の孔食電位)=−150〜200mV(本電位差を以下ではΔEとする。)であることを特徴とする。
本実施形態に係るAl合金ろう材ワイヤにおける、ろう材成分について説明する。
Si含有量は、9.0〜14.0mass%とする。Siは、Al合金の融点を下げるために添加する。含有量が約12%前後で最も液相線温度が低下するため、含有量が9.0mass%より少ない、あるいは14.0mass%を超えると、その効果が十分でなくなり液相線温度が高くなってしまう。したがって、Si含有量は、9.0〜14.0mass%の範囲とされ、9.5〜12.5mass%が特に好ましい。
Feは鋳造中にFe系金属間化合物として晶出し、耐食性を低下させるおそれがあるので、少ない方が望ましく、0.4mass%以下とするのが更に望ましく、0.2mass%以下とするのがさらに望ましい。0.1mass%を下限としたのは、通常の製造方法でワイヤを製造すれば、Feの含有量は0.1mass%以上になるからである。
Al合金ろう材ワイヤによって接合されるAl部材は、Al合金(Alを主成分とする合金)からなる部材である。Al合金としては、JIS1100、1200等に代表される1000系合金、JIS3003、3004等に代表される3000系合金およびJIS6061、6063等に代表される6000系合金が好適に用いられる。Al部材の表面には、一般に犠牲防食層が付与される。Zn溶射によって付与される場合その溶射量は、5〜20g/m2が望ましく、Al−Znクラッド層によって付与される場合には、Zn含有量0.5〜3%が望ましい。Al部材として、例えばJIS2024に代表される2000系合金を用いると、Al部材の電位が貴になりすぎて、ΔE<−150mVの関係になりやすい。また、Al−Znクラッド層のZn濃度が5%を超える場合には、Al部材の電位が卑になりすぎて、ΔE>200mVの関係になりやすい。
Al部材は、例えば、管材である。この管材には、通常の押出管、コンフォーム押出管、ポートフォール管のいずれもが好適に用いられる。
本発明例1〜28及び比較例1〜13では、以下の方法により、円筒状のAl合金ろう材ワイヤを用いて2つのAl管の接合を行った。
まず、表1に示された合金組成を有するAl合金のビレットを作製し、次いで、該ビレットを520℃に加熱した後、押出し、直径2mmのワイヤ状にして、合金No.1〜28のAl合金ろう材ワイヤを作製した。
次に、作製したAl合金ろう材ワイヤを用いて、2つのAl管の接合を行った。評価に用いる接合Al管は、JIS3003の円筒状のビレットを押出し、抽伸工程を経て、外径φ10mm、内径φ8mmの管(A管)及び外径φ8mm、内径φ6mmの管(B管)を作製した。次いで、A管、B管とも同量のZnを溶射し、480℃で5hの拡散処理を施した。Zn溶射量は、表2に示す通りである。
図2にあるように、断面組織観察により、A管にB管が挿入されている5mmの領域にフィレットが形成されているかを確認した。フィレットの長さが4.5mm以上、5mm以下の場合を○、フィレット長さが4.0mm以上、4.5mm未満を△、フィレット長さ4.0mm未満を×とした。
接合Al管を用い、JISのH8601に準じるCASS試験を500時間行なった。試験後、断面観察を行い、フィレットが腐食によって消失したり、Al管に貫通孔が発生したりした場合を×、それ以外を○とした。
フィレット及び周辺の管の孔食電位をアノード分極曲線によって測定した。孔食電位は、具体的には、以下の方法で測定した。3電極型セルを用い、動電位法における分極曲線の測定を室温で電位掃引速度20mV/minにて行った。アノード分極曲線の測定には、予め窒素ガスを吹き込み十分に脱気を行った5%NaCl水溶液を試験液に用いた。試験電極は供試材を所定の大きさに切り出し、露出部分1×1cm2を残し、シール及びエポキシ樹脂で被覆し使用した。対極には白金電極を、参照電極には飽和KCl溶液中の銀・塩化銀電極(Ag/AgCl)を用いた。アノード分極曲線の一例を図3に示す。図3のアノード分極曲線において、アノード電流密度が急激に上昇したときの電位を孔食電位とした。
本実施例では、フィレットの周囲で最も卑な部位は、管表面のZn溶射面であり、こことフィレットの電位差を評価した。
本発明例29〜60、比較例14〜26、及び参考例1〜4では、以下の方法により、中空部にフラックスが充填されたAl合金ろう材ワイヤを用いて2つのAl管の接合を行った。
中空部にフラックスが充填されたAl合金ろう材ワイヤは、以下の方法で作製した。まず、表3に示された合金組成を有するAl合金のビレットを作製し、次いで、該ビレットを520℃に加熱した後、押出し、直径2mmのワイヤ状にした。次いで、ビレットに中空の孔を空け、孔内部にフッ化Al系のフラックスを充填し、その後同様に押出し加工を施して合金No.30〜66の管状構造のAl合金ろう材ワイヤを作製した。ビレットに形成する中空の孔のサイズは、管状構造のAl合金ろう材ワイヤの外径と内径の比が表3に示す値になるように決定した。
作製したAl合金ろう材ワイヤを用いて、2つのAl管の接合を行い、上記の(1)〜(3)の評価を行った。Al管の接合方法は、「(1)円筒状のAl合金ろう材ワイヤを用いた接合」の項で説明した通りである。但し、フラックスはワイヤ内に含まれているので、接合部へのフラックスの塗布は行わなかった。
Claims (3)
- 複数のAl部材をAl合金ろう材ワイヤを用いて接合する工程を備えるろう付接合済Al部材の製造方法であって、
前記Al合金ろう材ワイヤは、Si:9.0〜14.0mass%、Zn:2.0〜6.0mass%、Cu:0.1〜0.5mass%、Fe:0.1〜0.9mass%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなり、
前記ワイヤを用いたろう付後のフィレットと周辺のAl部材との孔食電位の関係が、(フィレットの孔食電位)−(Al部材の孔食電位)=−150〜200mVであることを特徴とするろう付接合済Al部材の製造方法。 - 請求項1記載のAl合金ろう材ワイヤが、中空部を有する管状構造であり、当該中空部にフラックス粉末が充填されていることを特徴とするろう付接合済Al部材の製造方法。
- 請求項2に記載のAl合金ろう材ワイヤにおいて、管の外径と内径との比が、0.1〜0.55であることを特徴とするろう付接合済Al部材の製造方法。
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