JP5777662B2 - 管材の接合方法 - Google Patents
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Description
本発明者らは、クラッド管材をトーチろう付けによって接合した場合に、接合部においてクラッド管材の犠牲材が優先腐食して貫通漏れに至る現象や、Zn溶射管材をトーチろう付けによって接合した場合に、接合部のろう材フィレット部に発生するZn濃化層が優先腐食して貫通漏れに至る現象についてメカニズムを検討した。具体的には図1に示すように、一端を拡管した管材1の拡管部に管材2を挿入して、トーチろう材5を用いてトーチろう付けによって両管材1、2を接合する場合について検討した。ここで、管材1、2の芯材4の外面に形成された層3は、クラッド層であるAl−Zn層又はZn溶射層を表す。
一方、Zn溶射管材における貫通漏れに対しては、接合部のろう材層にZn濃化層を存在させないことが有効であることを見出した。具体的には、トーチろう付けの前段階において、管材表面のZn溶射層のZn濃度を予め低濃度にしておくものである。
まず、被覆層としてクラッド層を用いた第一実施態様に係る各構成について、以下に詳述する。
B−1.管材
図1に示すように、端部を拡管した管材1及びその拡管部に挿入される管材2とはいずれも、心材4とその外側にクラッドされたクラッド層3から構成される。クラッド層がいずれも、Al−Zn系合金であってAlと0.50wt%〜1.00wt%のZnと不回避不純物の残部を成分とし、50μm〜100μmの厚さを有するものが用いられる。また、管材1と2とは、通常、芯材及びクラッド層の金属組成、芯材及びクラッド層の厚さ、管材全体の外径及び内径が同じ、すなわち、同じ管材が用いられる。しかしながら、芯材及びクラッド層の金属組成、芯材及びクラッド層の厚さ、管材全体の外径及び内径の少なくともいずれかが異なるものを用いても良い。
本発明において管材の芯材成分については特に限定されるものではないが、後述するAl−Znクラッド層が犠牲防食可能な電位を示す合金であって、ろう付け時に溶融しない合金が用いられる。クラッド管に大きな強度が要求されない場合にはJIS3003合金が用いられ、大きな強度が要求される場合にはCuの添加量が比較的多いJIS3105合金又はAl−1%Mn−0.5%Cu合金等が好適に用いられる。
芯材の外側に形成されるクラッド層は、Al−Zn系合金である。Alと0.50wt%〜1.00wt%のZnと不回避不純物の残部を成分とする。クラッド層の厚さは、50μm〜100μmである。Znをクラッド層に添加することで、クラッド層自身の孔食電位を卑にする。芯材との孔食電位差により芯材を防食し、管材自身の貫通寿命を長くする。Znの含有量が0.50wt%未満であると、フィンの犠牲防食効果が発揮されないRベンド部やUベンド部においてこの効果が不十分となる。一方、Znの含有量が1.00wt%を超えると、犠牲材の腐食溶解量が多くなり上記の部位での貫通寿命が短くなる。不回避不純物としては、0.4wt%以下のSi、0.7wt%以下のFeなどが挙げられる。
管材は以下のようにして作製される。まず、円筒状の芯材の外面にクラッド層となる皮材スリーブを被せて、組み合わせビレットを作製する。所望のクラッド層厚さになるように、皮材スリーブの厚さを選定する。次いで、組み合わせビレットを加熱炉で350℃〜600℃に均熱する。次いで、組み合わせビレットをダイスとラムノーズ間に狭持してコンテナ内に挿入し、ダイスとラムノーズを固定した状態で芯材内径より大きな外径をもつマンドレルを圧入し、芯材の内径を拡管して芯材と皮材間の空気を追い出す。更に、マンドレルを所定の位置に固定して、ホローシステムを前進させダイスを通して組み合わせビレットを押し出し、継ぎ目無しの中空管材とするものである。最後に、抽伸工程を経て所定の外径と内径を有するクラッド管を作製する。
これに代わって、押し出し成形によって芯材管を作製し、その外面にクラッド層を溶射によって形成してもよい。
トーチろう材の成分は、Si11.0wt%〜13.0wt%、Zn1.0wt%〜2.0wt%のAl−Si−Zn合金が用いられる。Si含有量が11.0wt%未満のものは、ろう材の共晶組成から外れるために、ろう付け時において液相量が不足する。その結果、トーチろう付け性が劣る。一方、含有量が13.0wt%を超えると、ろう材が過共晶組成になるためろう材中に大きなSi粒の初晶が析出してろうの流動性を阻害する。その結果、トーチろう付け性が劣る。従ってSi量を11.0wt%〜13.0wt%と規定した。
図1に示すように、一端を拡管した管材1の拡管部に、接合部にフラックスを塗布した管材2を挿入する。次いで、接合部にトーチろう材5を配置し、プロパン・エアー・トーチ等のトーチを用いたトーチろう付けによって両管材1、2をろう付け接合する。フラックスには、フッ化物系フラックス、セシウム系フラックスを用いることができる。このように、トーチろう付け方法は、一般的な方法を用いることができる。
次に、被覆層としてZn溶射層を用いた本発明の第二実施態様に係る各構成について以下に詳述するが、第一実施態様と異なる部分についてのみ説明する。
図1に示す3がZn溶射層である以外は、第一実施態様と同じである。
第二実施態様の芯材成分も特に限定されるものではないが、溶射Zn層が犠牲防食のできる電位を示す合金、又はろう付け時に溶融しない合金が用いられる。具体的には、Al−Mn系合金が望ましい、ここで管材に大きな強度が要求されない場合にはJIS3003合金が用いられ、大きな強度が要求される場合にはCuの添加量が比較的多いJIS3105合金またはAl−1%Mn−0.5%Cu合金等が用いられる。
Zn付着量は、10.0〜18.0g/m2とする。溶射したZnの付着量が10.0g/m2未満の場合、溶射されるZnの付着量が少なく芯材表面全体を覆うことができずまばらとなる。その結果、溶射されたZnの犠牲防食効果が発揮できない。一方、18.0g/m2を超えると、後の処理である予備加熱処理においてZnが拡散しても、Znが多く残存して依然としてZn濃化層が形成されている。その結果、接合部の優先腐食が防止できない。
管材は以下のようにして作製する。管材としてJIS3003のビレットを作製し、これを加熱炉で350℃〜600℃に均熱した。次いで、ビレットをコンテナ内に挿入してダイスを通してビレットを押し出し中空管材を作製した。更に、Zn溶射ガンの中を通して所定付着量のZnを溶射する。次いで、400〜500℃で1〜8時間予備加熱処理を施す。このようにして、所定の外径と内径を有するZn溶射管を作製した。
トーチろう材の成分は、Si11.0wt%〜13.0wt%、Zn1.0wt%〜2.0wt%のAl−Si−Zn合金が用いられる。Si含有量については、第一実施態様と同じである。Zn含有量については、1.0wt%未満の場合、Zn濃縮層とろう材部の電位差が大きくなるため、接合部においてZn濃化層の優先腐食が発生する。2.0wt%を超えると、ろう付け後形成されたろう材層中のZn含有量が多くなるため、ろう材層自身の腐食溶解量が多くなり、ろう材層が腐食溶解して接合部において貫通腐食を生じる。従ってトーチろう材に含有されるZn量を1.0wt%〜2.0wt%と規定した。
トーチろう付けの方法及び条件は、第一実施態様と同じである。なお、600℃に到達してからの保持時間が3秒未満の場合には、トーチろう付け部に均一に熱がいきわたらないため、ろう付けが不完全となる。
まず、上記第一実施態様の例について説明する。
表1に、ワイヤーろう材の成分とワイヤー径、管材の犠牲材であるクラッド層の厚さとZn含有量、ならびに、ろう付け条件(温度と時間)を示す。
ワイヤーろう材は、所定成分に鋳造した後に、丸棒に押し出し、次いでダイスを通して抽伸を行い所定径の線材として作製した。
管材は以下のようにして作成した。芯材としてJIS3003の円筒を用い、その外面にAl−1%Zn合金の皮材スリーブを被せ、組み合わせビレットを作製した。次いで、組み合わせビレットを加熱炉で350℃〜600℃に均熱した。更に、組み合わせビレットをダイスとラムノーズ間に狭持してコンテナ内に挿入し、ダイスとラムノーズを固定した状態で芯材内径より大きな外径をもつマンドレルを圧入し、芯材の内径を拡管して芯材と皮材間の空気を追い出した。マンドレルを所定の位置に固定して、ホローシステムを前進させダイスを通して組み合わせビレットを押し出し、継ぎ目無しの中空管材を作製した。次いで、抽伸工程を経て外径φ8mm、内径φ7mmのクラッド管を2本作製した。これらの管を用い、実際の熱交換器の接合部分と同じように、管材1を拡管し、その拡管部分に管材2を挿入した。次いで、接合部分にフッ化物系フラックスを塗布し、ワイヤーろう材を用いてトーチろう付けを行い接合試験片を得た。
(1)ろう付け性評価
接合試験片の断面を切断し樹脂埋め研磨した後に10mm以上にわたって接合が存在していたものを○とし、5mm以上〜10mm未満のものを△、5mm未満を×とした。○と△を合格とし、×を不合格とした。
接合部の腐食試験として、接合試験片の端部をマスキングテープ及び接着材にてマスキングした後に、JISH8601に準じるCASS試験を2000h行なった。試験後、腐食生成物を濃硝酸とリン酸−クロム酸混液で除去した後に、接合部及び非接合部の腐食深さを焦点深度法にて測定した。腐食深さが貫通していない場合を耐腐食性が良好とし、貫通腐食が生じたものを不良とした。
参考比較例No.15では、ろう材ワイヤーのSi含有量が本発明範囲を超えるため、ろう材の液相線温度が下がるためトーチろう付け部のろう付け性が不合格であった。
参考比較例No.16では、ろう材ワイヤーのZn含有量が本発明未満のため、ろう材の固相線温度が高くなりクラッド層に対するろうの侵食が不十分となる。その結果、接合部にクラッド層が残存しクラッド層が優先腐食して接合部において貫通腐食が生じた。
参考比較例No.17では、ろう材ワイヤーのZn含有量が本発明を超えるため、接合部にクラッド層は残存していなかったが、ろう材の腐食量が多くなるため、接合部において貫通腐食が生じた。
参考比較例No.18では、ろう付け時間が600℃で3秒未満のため、接合部にクラッド層が残存し、腐食試験でその部分が優先腐食して接合部において貫通腐食が生じた。
参考比較例No.19では、ろう付け時間が600℃で8秒を超えるため、接合部において管材がろう材により過剰に侵食されてろう付け性が不合格であった。
参考比較例No.20では、ろう付け温度が600℃未満のため、ろうが十分に流動せずろう付け性が不合格であった。
次に、上記第二実施態様の例について説明する。
表2に、ワイヤーろう材の成分と、Zn溶射層におけるZn溶射量、Zn溶射管材の予備加熱条件、ならびに、ろう付け条件(温度と時間)を示す。
ワイヤーろう材は、所定成分に鋳造した後に、丸棒に押し出し、次いでダイスを通して抽伸を行い所定径の線材として作製した。
管材は以下のようにして作製した。管材としてJIS3003のビレットを作製し、これを加熱炉で350℃〜600℃に均熱した。次いで、ビレットをコンテナ内に挿入してダイスを通してビレットを押し出し中空管材を作製した。更に、Zn溶射ガンの中を通して表1に示す付着量のZn溶射管を作製した。このZn溶射管に、表1に示す加熱処理を施した。このようにして、外径φ8mm、内径φ7mmのZn溶射管を2本作製した。これらの管を用い、実際の熱交換器の接合部分と同じように、管材1を拡管し、その拡管部分に管材2を挿入した。次いで、接合部分にフッ化物系フラックスを塗布し、ワイヤーろう材を用いてトーチろう付けを行い接合試験片を得た。
比較例31では、管材の予備加熱温度が低かったため、接合部で貫通腐食が生じた。比較例32では、管材の予備加熱温度が高かったため、非接合部で貫通腐食が生じた。
比較例33では、管材の予備加熱時間が短かったため、接合部で貫通腐食が生じた。比較例34では、管材の予備加熱時間が長かったため、非接合部で貫通腐食が生じた。
比較例No.35は、ろう材ワイヤーのSi量が本発明未満のため、ろう材の液相線温度が下がりトーチろう付け部のろう付け状況が不良であった。
比較例No.36は、ろう材ワイヤーのSi量が本発明を超えるため、ろう材の液相線温度が下がりトーチろう付け部のろう付け状況が不良であった。
比較例No.37は、ろう材ワイヤーのZn量が本発明未満のため、Zn濃縮層とろう材部の電位差が大きくなり優先腐食が発生して接合部において貫通が生じた。
比較例No.38は、ろう材ワイヤーのZn量が本発明を超えるため、ろう材中のZn量が多くなり腐食量が多くなり接合部において貫通が生じた。
比較例No.39では、ろう付け温度が本発明未満のため、ろう付け性が不良であった
。
比較例No.40では、ろう付け時間が本発明未満のため、トーチろう付け部のろう付け性が不良であった。
比較例No.41では、ろう付け時間が本発明を超えるため、トーチろう付け部のろう付けが不良であった。
2……管材
3……クラッド層、Zn溶射層、犠牲陽極材
31……Al−Zn層
32……Al−Zn層
4……芯材
5……ろう材、トーチろう材
51……Zn濃化層
52……腐食したZn濃化層部分
6……チューブ
7……フィン
8……拡管用の治具
Claims (1)
- Al合金からなる芯材の外面にZn溶射層を設けた管材を2本用意し、一方の管材の端部を拡管し、当該拡管部に他方の管材を挿入してトーチろう付けによって接合部のみを加熱して両管材を接合する方法において、前記Zn溶射層におけるZn付着量が10.0〜18.0g/m2であり、当該Zn溶射層は管材に対して犠牲防食層として作用し、トーチろう付け前において、Zn溶射層が形成された管材に400℃〜500℃の温度で1〜8時間の予備加熱処理が施され、トーチろう付けに用いるろう材が、Si11.0wt%〜13.0wt%、Zn1.0wt%〜2.0wt%で残部不回避不純物からなるAl合金であり、トーチろう付けが600℃に到達してから3〜8秒保持されることを特徴とする管材の接合方法。
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