JP5729419B2 - 積層セラミックコンデンサ - Google Patents

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この発明は、積層セラミックコンデンサに関するもので、特に、積層セラミックコンデンサの小型化かつ大容量化を図るのに適した誘電体セラミックを用いて構成される積層セラミックコンデンサに関するものである。
積層セラミックコンデンサに備える誘電体セラミック層を構成するために用いられる誘電体セラミックにおいて、高い誘電率を得るため、その主成分としては、BaTiO系化合物が用いられている。特に、BaTiOにおけるBaの一部をCaで置換した(Ba,Ca)TiOによれば、高い信頼性(高温負荷寿命特性)および良好な容量温度特性を得ることができる。
ところで、積層セラミックコンデンサに対する近年の小型化かつ大容量化への要求は、極めて厳しくなっている。たとえば、誘電体セラミック層の厚みについては、1μm以下にまで薄くすることが要求されている。その結果、誘電体セラミック層に加わる電界強度は上昇の一途を辿っており、信頼性確保のための設計は益々厳しくなっている。
上述した課題を解決するための一手段として、たとえば特開2005−194138号公報(特許文献1)には、誘電体セラミックにおいて、V等の種々の元素を一定量添加することが提案されている。
上記特許文献1において提案される誘電体セラミックは、より詳細には、組成式:100(Ba1−xCaTiO+aMnO+bV+cSiO+dRe(ただし、Reは、Y、La、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、TmおよびYbの中から選ばれる少なくとも1種の金属元素)で表わされ、x、m、a、b、c、およびdは、それぞれ、0.030≦x≦0.20、0.990≦m≦1.030、0.010≦a≦5.0、0.050≦b≦2.5、0.20≦c≦8.0、および0.050≦d≦2.5の各条件を満たす。
しかし、上記誘電体セラミックには、次のような課題があることがわかった。この誘電体セラミックは、グレイン径のばらつきが大きくなるため、これが積層セラミックコンデンサにおいて用いられたとき、誘電体セラミック層が厚み1μm程度と薄層化されながら、たとえば15kV/mm以上と高い電界強度が付与されると、高温負荷寿命が短くなるとともに、寿命ばらつきが大きくなるという課題があることがわかった。
特開2005−194138号公報
そこで、この発明の目的は、上述したような課題を解決することができる誘電体セラミックを用いて構成される積層セラミックコンデンサを提供しようとすることである。
この発明は、積層された複数の誘電体セラミック層、および誘電体セラミック層間の特定の界面に沿って形成された複数の内部電極をもって構成される、コンデンサ本体と、コンデンサ本体の外表面上の互いに異なる位置に形成され、かつ内部電極の特定のものに電気的に接続される、複数の外部電極とを備える、積層セラミックコンデンサに向けられるものであって、上述した技術的課題を解決するため、
上記誘電体セラミック層は、
組成式:100(Ba1−xCa)TiO+aMgO+bVO5/2で表わされるものであって、上記組成式中のx、a、およびbは、それぞれ、
0.05≦x≦0.15、
0.01≦a≦0.1、および
0.05≦b≦0.5
の各条件を満たすとともに、
Re(Reは、Y、La、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、TmおよびYbの中から選ばれる少なくとも1種の金属元素)が、結晶粒子の全体には固溶していない、
誘電体セラミックからなり、かつ
厚みが1μm以上であることを特徴としている。
この発明に係る積層セラミックコンデンサは、より好ましい実施形態では、上記誘電体セラミック層が、組成式:100(Ba1−xCaTiO+aMgO+bVO5/2+cReO3/2+dMnO+eSiOで表わされるものであって、上記Reは、Y、La、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、TmおよびYbの中から選ばれる少なくとも1種の金属元素であり、上記組成式中のx、a、b、c、d、e、およびmは、それぞれ、
0.05≦x≦0.15、
0.01≦a≦0.1、
0.05≦b≦0.5、
1.0≦c≦5.0、
0.1≦d≦1.0、
0.5≦e≦2.5、および
0.990≦m≦1.030
の各条件を満たすとともに、
上記Reは、結晶粒子の全体には固溶していない、
誘電体セラミックからなり、かつ
厚みが1μm以上であることを特徴としている。
この発明に係る積層セラミックコンデンサによれば、誘電体セラミック層を構成する誘電体セラミックにおいて、グレイン径のばらつきを小さくすることができる。よって、誘電体セラミック層が厚み1μm程度と薄層化されながら、たとえば15kV/mm以上と高い電界強度が付与されても、良好な高温負荷寿命特性を得ることができる。すなわち、高温負荷寿命が長く、かつ寿命ばらつきを小さくすることができる。
特に、この発明に係る積層セラミックコンデンサのより好ましい実施形態によれば、上記の効果に加えて、たとえば3000以上といった高い比誘電率、たとえば室温で10V/1.2μmの電界強度下における比抵抗logρが10.5Ω・m以上といった高い電気絶縁性、および−55℃〜+125℃での容量変化率が±15%以内といった良好な容量温度特性を得ることができる。
この発明に係る積層セラミックコンデンサ1を図解的に示す断面図である。
図1を参照して、まず、この発明に係る積層セラミックコンデンサ1の構造について説明する。
積層セラミックコンデンサ1は、積層された複数の誘電体セラミック層2と誘電体セラミック層2間の特定の界面に沿って形成される複数の内部電極3および4とをもって構成される、コンデンサ本体5を備えている。内部電極3および4は、たとえばNiを主成分としている。
コンデンサ本体5の外表面上の互いに異なる位置には、第1および第2の外部電極6および7が形成される。外部電極6および7は、たとえばAgまたはCuを主成分としている。図示しないが、外部電極6および7上に、必要に応じて、めっき膜が形成される。めっき膜は、たとえば、Niめっき膜およびその上に形成されるSnめっき膜から構成される。
図1に示した積層セラミックコンデンサ1では、第1および第2の外部電極6および7は、コンデンサ本体5の互いに対向する各端面上に形成される。内部電極3および4は、第1の外部電極6に電気的に接続される複数の第1の内部電極3と第2の外部電極7に電気的に接続される複数の第2の内部電極4とがあり、これら第1および第2の内部電極3および4は、積層方向に見て交互に配置されている。
なお、積層セラミックコンデンサ1は、2個の外部電極6および7を備える2端子型のものであっても、多数の外部電極を備える多端子型のものであってもよい。
このような積層セラミックコンデンサ1において、誘電体セラミック層2は、組成式:100(Ba1−xCa)TiO+aMgO+bVO5/2で表わされ、x、a、およびbは、それぞれ、
0.05≦x≦0.15、
0.01≦a≦0.1、および
0.05≦b≦0.5
の各条件を満たすとともに、
Re(Reは、Y、La、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、TmおよびYbの中から選ばれる少なくとも1種の金属元素)が、結晶粒子の全体には固溶していない、
誘電体セラミックから構成される。
この誘電体セラミックによれば、グレイン径のばらつきを小さくすることができる。よって、誘電体セラミック層2が厚み1μm程度と薄層化されながら、たとえば15kV/mm以上と高い電界強度が付与されても、積層セラミックコンデンサ1において、良好な高温負荷寿命特性を得ることができる。
誘電体セラミックに含まれるVは、信頼性向上に有利ではあるが、BaTiOに固溶しやすく、グレイン径のばらつきを発生させやすい。他方、Mgは、粒成長を抑制するための添加物として一般的に用いられている。Mgの添加量が多いほど、粒成長抑制効果は大きく、また、焼結温度は高くなる。そのため、逆にグレイン径のばらつきが大きくなる場合がある。特に、誘電体セラミック層2が厚み1μm程度と薄層化されながら、たとえば15kV/mm以上と高い電界強度が付与される場合、グレイン径のばらつきによる信頼性への悪影響が大きくなると考えられる。
これに対して、上述の組成のように、(Ba,Ca)TiOの100モル部に対して、Mgを0.1モル部以下というように微量添加すると、粒成長の抑制だけでなく、焼結温度の低温化も可能となる。前者の粒成長の抑制作用は、Mgの一般的に知られている作用であるが、後者の焼結温度の低温化作用は、上述したようなMgの一般的に知られている作用とは逆の作用である。しかしながら、Mgの添加量を0.1モル部以下というように抑えることにより、粒成長の抑制作用と焼結温度の低温化作用とを両立させることができる。
その結果、前述したように、誘電体セラミック層2を構成する誘電体セラミックのグレイン径のばらつきを小さくすることができるとともに、誘電体セラミック層2においてポアを生じさせることなく、すなわち、誘電体セラミック層2を緻密化することができ、よって、前述したように、積層セラミックコンデンサ1において、良好な高温負荷寿命特性を得ることができる。
なお、(Ba,Ca)TiOにMgを微量添加することにより、上述のように、焼結温度を低温化できる理由は不明である。
より好ましい実施形態では、誘電体セラミック層2は、組成式:100(Ba1−xCaTiO+aMgO+bVO5/2+cReO3/2+dMnO+eSiOで表わされ、Reは、Y、La、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、TmおよびYbの中から選ばれる少なくとも1種の金属元素であり、x、a、b、c、d、e、およびmは、それぞれ、
0.05≦x≦0.15、
0.01≦a≦0.1、
0.05≦b≦0.5、
1.0≦c≦5.0、
0.1≦d≦1.0、
0.5≦e≦2.5、および
0.990≦m≦1.030
の各条件を満たすとともに、
上記Reは、結晶粒子の全体には固溶していない、
誘電体セラミックから構成される。
上記のより好ましい実施形態に係る誘電体セラミックによれば、上記の効果に加えて、積層セラミックコンデンサ1において、たとえば3000以上といった高い比誘電率、たとえば室温で10V/1.2μmの電界強度下における比抵抗logρが10.5Ω・m以上といった高い電気絶縁性、および−55℃〜+125℃での容量変化率が±15%以内といった良好な容量温度特性を得ることができる。
なお、上記のより好ましい実施形態に係る誘電体セラミックは、特に積層セラミックコンデンサ1において有利に用いられる。もちろん、積層セラミックコンデンサ1において、上記のより好ましい実施形態に係る誘電体セラミック以外の前述した組成式:100(Ba1−xCa)TiO+aMgO+bVO5/2で表わされる誘電体セラミックを用いることも可能である。また、たとえば単層のセラミックコンデンサの場合には、上記のより好ましい実施形態に係る誘電体セラミック以外の組成式:100(Ba1−xCa)TiO+aMgO+bVO5/2で表わされる誘電体セラミックを用いれば十分であると言える。
この発明に係る誘電体セラミックのための原料を作製するにあたっては、まず、(Ba,Ca)TiO系の主成分粉末が作製される。そのため、たとえば、主成分の構成元素を含む酸化物、炭酸物、塩化物、金属有機化合物などの化合物粉末を所定の割合で混合し、仮焼する、といった固相合成法が適用される。
他方、副成分としてのMgおよびV、さらに必要に応じて、Re、MnおよびSiの各々を含む酸化物、炭酸物、塩化物、金属有機化合物などの化合物粉末が用意される。そして、これら副成分粉末が、所定の割合で、上記主成分粉末と混合されることによって、誘電体セラミックのための原料粉末が得られる。
なお、誘電体セラミックのための原料粉末において、主成分である(Ba,Ca)TiO系の粉末については、予め仮焼して合成されたものが用いられる。すなわち、(Ba,Ca)TiO中のCaについては、Ca化合物の後添加によるものではない。
積層セラミックコンデンサ1を製造するため、上記のようにして得られた誘電体セラミック原料粉末を用いてセラミックスラリーを作製し、このセラミックスラリーからセラミックグリーンシートを成形し、これら複数枚のセラミックグリーンシートを積層することによって、コンデンサ本体5となるべき生の積層体を得、この生の積層体を焼成する工程が実施される。この生の積層体を焼成する工程において、上述のように配合された誘電体セラミック原料粉末が焼成され、焼結した誘電体セラミックからなる誘電体セラミック層2が得られる。
以下に、この発明に基づいて実施した実験例について説明する。
(A)誘電体原料粉末の作製
まず、主成分である(Ba1−xCaTiOの出発原料として、高純度のBaCO、CaCOおよびTiOの各粉末を準備し、これらを表1ないし表3に示すCa含有量、すなわち「Ca変性量:x」および「(Ba,Ca)/Ti比:m」となるように調合した。
次に、この調合粉末をボールミルで湿式混合し、均一に分散させた後、乾燥処理を施して調整粉末を得た。次いで、得られた調整粉末を1000℃から1200℃の温度で仮焼し、平均粒径が0.20μmで、Ca変性量が表1に示すxである主成分粉末を得た。
なお、平均粒径は、走査型電子顕微鏡によって粉末を観察し、300個の粒子の粒子径(円相当径)を測長して求めた。
他方、副成分として、MgO、V、Re、MnCOおよびSiOの各粉末を準備した。なお、上記Re粉末については、Y、La、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、TmおよびYbの各粉末を準備した。
次に、Re粉末として、表1ないし表3の「Re」の欄に示すY、La、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、TmおよびYbのいずれかの金属元素を含むRe粉末を選ぶとともに、MgO、V、Re、MnCOおよびSiOの各粉末を、それぞれ、表1ないし表3に示したa、b、c、dおよびeの含有量となるように秤量し、かつ前述の主成分粉末に添加することによって、混合粉末を得た。
次に、この混合粉末をボールミルで湿式混合し、均一に分散させた後、乾燥処理を施して、誘電体原料粉末を得た。
(B)積層セラミックコンデンサの作製
次に、上記誘電体原料粉末に、ポリビニルブチラール系バインダ、可塑剤および有機溶剤としてのエタノールを加え、これらをボールミルにより湿式混合し、セラミックスラリーを作製した。
次いで、このセラミックスラリーをリップ方式によりシート成形し、厚み1.5μmの矩形のセラミックグリーンシートを得た。
次に、上記セラミックグリーンシート上に、Niを含有する導電性ペーストをスクリーン印刷し、内部電極となるべき導電性ペースト膜を形成した。
次に、導電性ペースト膜が形成されたセラミックグリーンシートを、導電ペースト膜の引き出されている側が互い違いになるように複数枚積層し、コンデンサ本体となるべき生の積層体を得た。
次に、この積層体を、N雰囲気中にて、350℃の温度で3時間加熱し、バインダを燃焼させた後、酸素分圧10-9〜10-12MPaのH−N−HOガスからなる還元性雰囲気中において、表1ないし表3の「焼成温度」の欄に示す温度で2時間焼成し、焼結したコンデンサ本体を得た。
次に、上記コンデンサ本体の両端面に、ガラスフリットを含有するCuペーストを塗布し、N雰囲気中において、800℃の温度で焼き付け、内部電極と電気的に接続された外部電極を形成し、各試料に係る積層セラミックコンデンサを得た。
このようにして得られた積層セラミックコンデンサの外形寸法は長さ2.0mm、幅1.2mm、厚さ1.0mmであり、内部電極間に介在する誘電体セラミック層の厚みは1.2μmであった。また、有効誘電体セラミック層の数は5であり、1つの誘電体セラミック層あたりの対向電極面積は1.8mmであった。
(C)特性評価
次に、各試料に係る積層セラミックコンデンサについて、以下のような評価を行なった。
[高温負荷信頼性試験]
高温負荷信頼性試験として、170℃の温度下にて24Vの直流電圧(20kV/mmの電界強度)を印加しながら、絶縁抵抗の経時変化を測定し、各試料の絶縁抵抗値が10Ω以下になった時点を故障とし、ワイブルプロットにより、平均故障時間(MTTF)と故障時間のばらつき(形状パラメータ:m値)とを求めた。
[比誘電率]
各試料の静電容量を測定し、比誘電率を算出した。測定は、自動ブリッジ式測定器を用い、25℃の温度において1Vrms、1kHzの交流電圧を印加して行なった。得られた静電容量値と内部電極面積および誘電体セラミック層の厚さとから比誘電率εrを算出した。
[静電容量の温度変化率]
各試料の静電容量の温度変化率を測定した。測定は、−55℃から+125℃の範囲内で、温度を変化させながら静電容量を測定し、25℃での静電容量値(C25)を基準として、変化の絶対値が最大となった静電容量値(CTC)についての変化率(ΔCTC)を、ΔCTC=((CTC−C25)/C25)の式により算出した。
[比抵抗]
各試料の絶縁抵抗を測定し、比抵抗(logρ)を算出した。測定は、絶縁抵抗計を用い、25℃の温度において10Vの直流電圧を120秒間印加して絶縁抵抗を測定し、得られた絶縁抵抗値と内部電極面積および誘電体セラミック層の厚さとから比抵抗(logρ)[Ω・m]を算出した。
以上の評価結果が表1ないし表3に示されている。
Figure 0005729419
Figure 0005729419
Figure 0005729419
表1ないし表3において、試料番号に*を付した試料(以下、「比較試料」と言う。)以外の試料は、この発明の範囲内のものであるばかりでなく、さらに、組成式:100(Ba1−xCaTiO+aMgO+bVO5/2+cReO3/2+dMnO+eSiOで表わされ、Ca変性量x、Mg添加量a、V添加量b、ReO3/2換算でのRe添加量c、Mn添加量d、Si添加量e、および(Ba,Ca)/Ti比mが、それぞれ、
0.05≦x≦0.15、
0.01≦a≦0.1、
0.05≦b≦0.5、
1.0≦c≦5.0、
0.1≦d≦1.0、
0.5≦e≦2.5、および
0.990≦m≦1.030
の各条件を満たす、この発明のより好ましい範囲にある試料である。
まず、比較試料について考察する。
前述したように、Mgは、粒成長の抑制作用および焼結温度の低温化作用を有している。Mg添加量aが0.01未満となると、Mg添加の効果が発揮されず、試料9のように、MTTFが短くなったり、試料14、19、23および28のように、m値が小さくなったりした。一方、Mg添加量aが0.1より多くなると、Mgの粒成長抑制効果が強くなりすぎ、焼結に必要な焼成温度が逆に高くなった。そのため、グレイン径のばらつきが大きくなり、試料18、22、27および32のように、m値が小さくなった。
次に、Vは、前述したように、信頼性向上に寄与する。V添加量bが0.05未満となると、V添加の効果が発揮されず、試料9〜13のように、MTTFは短くなった。一方、V添加量bが0.5より多くなると、Vの粒内への固溶が多くなって、局所的な粒成長を伴って、グレイン径のばらつきが大きくなった。そのため、試料28〜32のように、m値が小さくなった。
Ca変性量xについては、これが0.05未満となると、Mg添加の効果が十分に得られず、試料1および2のように、MTTFが短く、また、m値が小さくなった。一方、Ca変性量xが0.15よりも多くなると、グレイン粒径のばらつきが大きくなり、試料8のように、MTTFが短く、また、m値が小さくなった。
ReO3/2換算でのRe添加量cについては、これが1.0未満であると、試料33のように、ΔCTCの絶対値が15%を超えた。一方、Re添加量cが5.0を超えると、試料36のように、比誘電率が3000を下回った。
Mn添加量dについては、これが0.1未満であると、試料37のように、ΔCTCの絶対値が15%より高くなった。一方、Mn添加量dが1.0を超えると、試料40のように、比誘電率が3000を下回り、かつ比抵抗(logρ)が10.5Ω・m未満と低くなった。
Si添加量eについては、これが0.5未満であると、試料41のように、ΔCTCの絶対値が15%を超えた。一方、Si添加量eが2.5を超えると、試料44のように、比誘電率が3000を下回り、かつΔCTCの絶対値が15%を超えた。
(Ba,Ca)/Ti比mについては、これが0.990未満であると、試料45のように、比抵抗(logρ)が10.5Ω・m未満と低くなった。一方、(Ba,Ca)/Ti比mが1.030を超えると、試料48のように、ΔCTCの絶対値が15%を超えた。
これらの比較試料に対して、この発明のより好ましい範囲にある試料によれば、MTTF、m値、比誘電率、ΔCTCおよび比抵抗の点において、良好な結果が得られた。また、試料49〜78のように、ReにおけるReを、Dy以外のY、La、Sm、Eu、Gd、Tb、Ho、Er、TmまたはYbで置き換えた試料であっても、同様の良好な結果が得られた。
1 積層セラミックコンデンサ
2 誘電体セラミック層
3,4 内部電極
5 コンデンサ本体
6,7 外部電極

Claims (2)

  1. 積層された複数の誘電体セラミック層、および前記誘電体セラミック層間の特定の界面に沿って形成された複数の内部電極をもって構成される、コンデンサ本体と、
    前記コンデンサ本体の外表面上の互いに異なる位置に形成され、かつ前記内部電極の特定のものに電気的に接続される、複数の外部電極と
    を備え、
    前記誘電体セラミック層は、
    組成式:100(Ba1−xCa)TiO+aMgO+bVO5/2で表わされ、前記x、a、およびbは、それぞれ、
    0.05≦x≦0.15、
    0.01≦a≦0.1、および
    0.05≦b≦0.5
    の各条件を満たすとともに、
    Re(Reは、Y、La、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、TmおよびYbの中から選ばれる少なくとも1種の金属元素)が、結晶粒子の全体には固溶していない、
    誘電体セラミックからなり、かつ
    厚みが1μm以上である、
    積層セラミックコンデンサ。
  2. 積層された複数の誘電体セラミック層、および前記誘電体セラミック層間の特定の界面に沿って形成された複数の内部電極をもって構成される、コンデンサ本体と、
    前記コンデンサ本体の外表面上の互いに異なる位置に形成され、かつ前記内部電極の特定のものに電気的に接続される、複数の外部電極と
    を備え、
    前記誘電体セラミック層は、
    組成式:100(Ba1−xCaTiO+aMgO+bVO5/2+cReO3/2+dMnO+eSiOで表わされ、
    前記Reは、Y、La、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、TmおよびYbの中から選ばれる少なくとも1種の金属元素であり、
    前記x、a、b、c、d、e、およびmは、それぞれ、
    0.05≦x≦0.15、
    0.01≦a≦0.1、
    0.05≦b≦0.5、
    1.0≦c≦5.0、
    0.1≦d≦1.0、
    0.5≦e≦2.5、および
    0.990≦m≦1.030
    の各条件を満たすとともに、
    前記Reは、結晶粒子の全体には固溶していない、
    誘電体セラミックからなり、かつ
    厚みが1μm以上である、
    積層セラミックコンデンサ。
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