JP5728890B2 - 圧電素子およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、基板上に圧電薄膜を成膜した圧電素子と、その圧電素子の製造方法とに関するものである。
従来から、駆動素子やセンサなどの電気機械変換素子として、PZT(チタンジルコン酸鉛)などの圧電体が用いられている。一方、近年の装置の小型化、高密度化、低コスト化などの要求に応えて、Si基板を用いたMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子が増加している。MEMS素子に圧電体を応用すれば、例えばインクジェットヘッド、超音波センサ、赤外線センサ、周波数フィルタなど、種々のデバイスを作製することができる。
ここで、MEMS素子に圧電体を応用する場合、圧電体を薄膜化することが望ましい。これは、圧電体を薄膜化することで、以下の利点が得られることによる。すなわち、成膜やフォトリソグラフィーなどの半導体プロセス技術を用いた高精度な加工が可能となり、小型化、高密度化を実現することができる。大面積のウェハに圧電体を一括加工できるため、コストを低減できる。電気機械の変換効率が向上し、駆動素子の特性やセンサの感度が向上する。
圧電体をSiなどの基板上に成膜する方法としては、CVD法などの化学的な方法、スパッタ法やイオンプレーティング法などの物理的な方法、ゾルゲル法などの液相での成長法が知られている。
ところで、図9は、圧電体の一種であるPZTの結晶系を示している。PZTは、PTOとPZOとの混晶であるが、PTOの比率が高いときにはPZT全体が正方晶となり、PZOの比率が高いときにはPZT全体が菱面体晶となる。
また、図10(a)は、PTOおよびPZOの組成比と結晶系との関係を示しており、図10(b)は、PTOおよびPZOの組成比と特性(比誘電率、電気機械結合係数)との関係を示している。図10(a)に示すように、PTOとPZOとの組成比が、48/52〜47/53のあたりで、結晶系が正方晶から菱面体晶、または菱面体晶から正方晶に変化する。このように結晶系が変化する境界を組成相境界(MPB;Morphotropic phase boundary )と呼び、以下では単に相境界と記す。
相境界では、図10(b)に示すように、PZTの特性が特異的に向上する。つまり、相境界では、比誘電率および電気機械結合係数の両者が特異的に高くなる。比誘電率と圧電定数(単位電界あたりの変位量)とは、正の相関があり、比誘電率が高くなることにより、圧電定数が高くなる。また、電気機械結合係数は、電気的な信号を機械的な歪みに変換する際の効率、あるいはその逆の変換の際の効率を示す指標となるものであり、この係数が高くなることによって、変換効率が高くなる。
このように相境界でPZTの特性が特異的に向上するのは、以下の理由によるものと考えられる。PTOとPZOとを相境界を構成する組成比で混合すると、数10〜100nm程度の大きさの正方晶と菱面体晶とが結晶の中に分散して形成され、それぞれの結晶系からなる圧電分域が形成される。圧電分域の境界では、相互の結晶の結合が弱くなるため、圧電分域が回転しやすくなり、分極方向が揃いやすくなるとともに、外部電界による結晶の変形も生じやすくなる。したがって、圧電特性が特異的に向上するものと思われる。
バルクセラミックスでは、結晶系の異なる複数の材料を、相境界を構成する組成比で混合し、焼成と分散(粉砕)とを繰り返すことにより、特性の高い圧電体を実現することができる。しかし、MEMS素子に圧電体を薄膜で形成する場合は、バルクセラミックスの製法を採用することができないため、他の製法が必要となる。非特許文献1では、基板上の圧電薄膜としてのPZTを、Zr/Ti比が53/47の層と、Zr/Ti比が30/70の層とを積層して構成し、相境界を構成する組成比となる層を含めることで、圧電特性の向上を図っている。
神野伊策、梅野宜崇、「超格子圧電薄膜材料の開発とマイクロマシンデバイスへの応用」、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)平成16年度研究助成事業成果報告会予稿集、プロジェクトID:02A23003d、平成17年1月18日発表
ところで、基板上に、Zr/Ti比が53/47の層を形成するにあたっては、PZOとPTOとが上記の比率で混ざった合金をスパッタ材料(ターゲット)として用いて成膜を行っているものと思われる。
一般に、合金材料を用いてスパッタを行う場合、合金を構成する2種の圧電材料の基板上での分布が均一とはならず、分布にムラが生じる。つまり、例えば2種の圧電材料の厚さ方向の分布が、基板面内の位置によって異なる。このような分布ムラは、圧電特性のさらなる向上を阻害する要因となり得るため、できればこれを排除することが望ましい。
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、相境界となる組成比で混合される、結晶系の異なる圧電材料の厚さ方向の分布にムラが生じるのを抑えることができ、これによって、基板上に圧電体を薄膜化した構成で圧電特性のさらなる向上を図ることができる圧電素子およびその製造方法を提供することにある。
本発明の圧電素子は、基板上に圧電薄膜を成膜した圧電素子であって、前記圧電薄膜は、結晶系の異なる圧電材料からなる層が、各層ごとに柱状結晶を並べた状態で交互に積層されて構成されており、前記各圧電材料の組成比は、前記結晶系が変化する相境界を構成する組成比であることを特徴としている。
また、本発明の圧電素子の製造方法は、基板上に圧電薄膜を成膜する成膜工程を有する圧電素子の製造方法であって、前記成膜工程では、結晶系が変化する相境界を構成する組成比となる、該結晶系の異なる圧電材料を、柱状結晶を並べた状態で交互に積層することによって、前記基板上に前記複数層の圧電材料からなる前記圧電薄膜を成膜することを特徴としている。
圧電薄膜は、結晶系の異なる圧電材料の混晶からなり、各圧電材料の組成比は相境界を構成する組成比であるので、各圧電材料からなる層を交互に積層しても、各層の結晶系は変化することなくそのまま維持される。しかも、各層ごとに、柱状結晶が並んでいるため、隣り合う柱状結晶の境界(結晶粒界)が、各層ごとに存在する。
したがって、各層の境界と結晶粒界とで囲まれた領域が圧電分域として機能する。圧電分域の境界(各層の境界、結晶粒界)では、相互の結晶の結合が弱くなるため、圧電分域が回転しやすくなり、分極方向が揃いやすくなるとともに、外部電界による結晶の変形も生じやすくなる。したがって、圧電特性を向上させることができる。
また、各圧電材料からなる層の膜厚は、成膜時間を制御することで、精密かつ容易に制御することができ、各層の均一な厚さを容易に実現することができる。一方、柱状結晶が並んだ状態で各層を積層すると、結晶粒界を保存したまま、下層の柱状結晶の上に上層の柱状結晶が成長する。言い換えれば、各層の結晶粒界が、各層で基板面に平行な方向に大きくずれることはない。これにより、基板面内のどの位置でも、厚さ方向の層構成がほぼ同じになり、各圧電材料の厚さ方向の分布にムラが生じるのを抑えることができる。よって、結晶系の異なる圧電材料を混ぜた合金を用いて圧電薄膜を基板上に成膜する構成に比べて、圧電特性のさらなる向上を図ることができる。
本発明の圧電素子において、前記圧電薄膜は、ペロブスカイト構造の金属酸化物で構成されていてもよい。
ペロブスカイト構造の金属酸化物で圧電薄膜を形成することにより、良好な圧電特性を得ることができる。
本発明の圧電素子において、前記結晶系の異なる圧電材料は、正方晶のPTOと、菱面体晶のPZOとで構成されていてもよい。
また、本発明の圧電素子の製造方法において、前記成膜工程では、前記結晶系の異なる圧電材料として、正方晶のPTOと、菱面体晶のPZOとを用いてもよい。
この場合、圧電薄膜はPTOとPZOとの混晶であるPZTとなり、PZTを圧電薄膜として用いる構成において、本発明が有効となる。
本発明の圧電素子は、前記基板と前記圧電薄膜との間に金属電極を有しており、前記圧電薄膜において前記金属電極に最も近い側の層は、前記圧電薄膜の各層を構成する圧電材料のうち、格子定数が前記金属電極に最も近い圧電材料で形成されていることが望ましい。
また、本発明の圧電素子の製造方法は、前記成膜工程の前に、前記基板と前記圧電薄膜との間に金属電極を形成する電極形成工程をさらに有しており、前記成膜工程では、前記結晶系が異なる圧電材料のうち、格子定数が前記金属電極に最も近い圧電材料からなる層を形成した後、前記層の上に他の圧電材料からなる層を積層することが望ましい。
この場合、圧電薄膜における金属電極に最も近い側の層は、金属電極と格子定数が近いことによって金属電極からの応力の影響を受けにくくなり、この応力によって上記層の結晶系が相境界を越えて変化するのを抑えることができる。
本発明によれば、各圧電材料の組成比は相境界を構成する組成比であるので、各圧電材料からなる層を交互に積層しても、各層の結晶系は変化することなくそのまま維持され、各層の境界と各層の結晶粒界とで囲まれた領域が圧電分域として機能する。圧電分域の境界では、相互の結晶の結合が弱くなるため、圧電特性を向上させることができる。
また、各圧電材料からなる層を、各層ごとに柱状結晶を並べた状態で交互に積層することにより、基板面内のどの位置でも、厚さ方向の層構成がほぼ同じになり、各圧電材料の厚さ方向の分布にムラが生じるのを抑えることができるので、圧電特性のさらなる向上を図ることができる。
本発明の実施の一形態に係る圧電素子の概略の構成を示す断面図である。 上記圧電素子の圧電薄膜としてのPZTの結晶構造を模式的に示す斜視図である。 上記圧電素子の製造時の流れを、各製造工程での断面図とともに示す説明図である。 上記圧電薄膜を成膜するスパッタ装置の概略の構成を示す断面図である。 上記PZTの結晶状態を示す断面図である。 上記圧電薄膜の層構成の詳細を示す断面図である。 上記圧電素子をダイヤフラムに応用したときの構成を示す平面図である。 図7のA−A’線矢視断面図である。 PZTの結晶系を示す説明図である。 (a)は、PTOおよびPZOの組成比と結晶系との関係を示すグラフであり、(b)は、PTOおよびPZOの組成比と特性との関係を示すグラフである。
本発明の実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。
〔1.圧電素子の構成について〕
図1は、本実施形態に係る圧電素子10の概略の構成を示す断面図である。本実施形態の圧電素子10は、基板1上に、熱酸化膜2、下部電極3、圧電薄膜4および上部電極5をこの順で積層して構成されている。
基板1は、単結晶Si単体からなる半導体基板またはSOI(Silicon on Insulator)基板で構成されている。熱酸化膜2は、例えばSiOからなり、基板1の保護および絶縁の目的で形成されている。
下部電極3は、Ti層3aとPt層3bとを積層して構成されている。Ti層3aは、熱酸化膜層2とPt層3bとの密着性を向上させるために形成されている。上部電極5は、Ti層5aとAu層5bとを積層して構成されている。Ti層5aは、圧電薄膜4(後述するPZT)とAu層5bとの密着性を向上させるために形成されている。上記したPt層3bとTi層5aとの間に圧電薄膜4が位置している。
圧電薄膜4は、結晶系(結晶相)の異なる圧電材料を交互に積層して構成されており、本実施形態では、正方晶のPTOと、菱面体晶のPZOとの2種類の圧電材料を用い、各圧電材料からなる層を交互に積層して構成されている。これにより、圧電薄膜4としてPZTが構成されている。
図2は、PZTの結晶構造を模式的に示している。同図で示した結晶構造は、ペロブスカイト構造と呼ばれる。ペロブスカイト構造とは、Pb(Zr,Ti-)Oの正方晶では、正方晶の各頂点にPb原子が位置し、体心にTi原子またはZr原子が位置し、各面心にO原子が位置する構造である。圧電体は、結晶構造がペロブスカイト構造を採るときに良好な圧電効果を発現することが知られている。したがって、本実施形態の圧電素子10において、圧電薄膜4をPZT、すなわち、ペロブスカイト構造の金属酸化物で構成することにより、良好な圧電効果を得ることができる。
〔2.圧電素子の製造方法について〕
次に、上記した圧電素子10の製造方法について説明する。図3は、圧電素子10の製造時の流れを、各製造工程での断面図とともに示している。
まず、Siからなる基板1上に、SiOからなる熱酸化膜2を形成する(S1;熱酸化膜形成工程)。なお、用いる基板1の厚みは、基板サイズ(直径)により異なるが、例えば400〜600μm程度である。熱酸化膜2は、基板1を1500℃程度で加熱することにより形成され、その厚みは例えば0.1μm程度である。
続いて、熱酸化膜2上に、TiおよびPtを順にスパッタ法で成膜し、金属電極としての下部電極3を形成する(S2;電極形成工程)。Tiの膜厚は、例えば0.02μm程度であり、Ptの膜厚は、例えば0.1μm程度である。
次に、下部電極3上に、PTO層4aとPZO層4bとを交互に、所定の層数(厚み)となるまでスパッタ法で成膜し、PZTからなる圧電薄膜4を形成する(S3、S4、S5;成膜工程)。PZTの厚みは、用途によって異なるが、例えばセンサやフィルタでは1μm以下、アクチュエータでは1〜5μm程度である。なお、圧電薄膜4の成膜方法の詳細については後述する。
続いて、圧電薄膜4の上に、TiおよびAuを順にスパッタ法で成膜し、上部電極5を形成する(S6)。これにより、圧電素子10が完成する。Tiの膜厚は、例えば0.02μm程度であり、Auの膜厚は、例えば0.1μm程度である。
〔3.圧電薄膜の成膜方法について〕
次に、上述した圧電薄膜4の成膜方法の詳細について説明する。図4は、圧電薄膜4を成膜するスパッタ装置の概略の構成を示す断面図である。圧電薄膜4は、例えば高周波マグネトロンスパッタリング法により成膜することができる。
まず、所定の組成比に調合したPTOの粉末を混合、焼成、粉砕し、ターゲット皿に充填してプレス機で加圧することにより、ターゲット11を作製する。同様に、所定の組成比に調合したPZOの粉末を混合、焼成、粉砕し、ターゲット皿に充填してプレス機で加圧することにより、ターゲット12を作製する。そして、各ターゲット11・12を載せた皿を、マグネット13・14上にそれぞれ設置する。
マグネット13・14とその下にあるカソード電極15・16とは、真空チャンバ17と絶縁されている。また、カソード電極15・16は、高周波電源18a・18bにそれぞれ接続されている。
次に、基板19を加熱ヒーター20上に設置する。そして、真空チャンバ17内を排気し、加熱ヒーター20によって基板19を600℃まで加熱する。加熱後、バルブ21・22を開け、スパッタガスであるArとOとを所定の割合でノズル23a・23bより真空チャンバ17内に導入し、真空度を所定値に保つ。ターゲット11・12に、高周波電源18a・18bより高周波電力を投入し、プラズマを発生させるとともに、シャッタ24・25を所定時間だけ交互に開閉することにより、PTOおよびPZOからなる各層を基板19上に成膜することができ、これによって圧電薄膜4(図1参照)が形成される。
ところで、下部電極3(図1参照)のPtと、圧電薄膜4のPTOおよびPZOの格子定数は、それぞれ、0.3924nm、0.3905nm、0.4159nmである。このように、Pt、PTO、PZOの格子定数に差があるため、PZOおよびPTOは、複数の結晶が柱状に寄り集まった多結晶状態でそれぞれ成長する。図5は、PZTの結晶状態を示す断面図である。このように、PZTは、幅が0.5〜1μmの柱状結晶(結晶粒)31が並んだ状態で形成され、隣り合う柱状結晶31・31の間は、結晶粒界31aを形成している。このとき、上層の膜は、下層の膜を下地として結晶成長するため、上層および下層の結晶粒界31aは一致する。
PZTの成膜温度を、ペロブスカイト構造が形成される下限付近に設定することにより、柱状結晶31の粒径(直径、幅)を小さくすることができる。例えば、成膜温度を550〜600℃前後に設定することで、柱状結晶31の粒径を100nm以下に形成できることが実験的にわかっている。
また、下地となるPtの成膜温度を低くしてPtの結晶粒径を小さくし、その上にPZTを成長させることで、柱状結晶31の粒径を小さくすることもできる。Ptの成膜温度を200℃以下にすれば、柱状結晶31の粒径を100nm以下に形成できることが実験的にわかっている。
図6は、圧電薄膜4の層構成の詳細を示す断面図である。なお、図中、下側が基板側である。同図に示すように、基板上に、PTO層4aとPZO層4bとが交互に積層されて圧電薄膜4が形成されている。このとき、PTO層4aおよびPZO層4bの厚さは、いずれも数10nmであり、PTO層4aとPZO層4bとの厚さの比率は、PTO層/PZO層=48/52となっている。
PTO層4aおよびPZO層4bが成膜される面積を一定としたとき、圧電薄膜4におけるPTOとPZOとの組成比は、PTO層4aおよびPZO層4bの厚さの比にほぼ等しい。したがって、厚さの比を、PTO層/PZO層=48/52に設定することにより、PZTは、PTOおよびPZOが相境界を構成する組成比で混合されたものとなる。この構成では、PTOおよびPZOの各結晶構造(正方晶、菱面体晶)はそのまま維持され、正方晶からなるPTO層4aと、菱面体晶からなるPZO層4bとが、厚さ方向に交互に積層されることになる。また、PTO層4aおよびPZO層4bの各層においては、柱状結晶が並んでいるため、隣り合う柱状結晶の境界である結晶粒界が、各層ごとに存在する。
したがって、各層の境界と結晶粒界とで囲まれた領域が圧電分域として機能する。圧電分域の境界では、相互の結晶の結合が弱くなるため、圧電分域が回転しやすくなり、分極方向が揃いやすくなるとともに、外部電界による結晶の変形も生じやすくなる。したがって、圧電特性を向上させることができる。
また、PTO層4aおよびPZO層4bの厚さは、成膜時間、すなわち、シャッタ24・25の開閉時間を制御することで、精密かつ容易に制御することができ、各層の均一な厚さを容易に実現することができる。また、各層では、上述したように、結晶粒界を保存したまま、下層の柱状結晶の上に上層の柱状結晶が成長するため、各層の結晶粒界が、各層で基板面に平行な方向に大きくずれることはない。したがって、基板面内のどの位置でも、厚さ方向の層構成がほぼ同じになり、PTOおよびPZOの厚さ方向の分布にムラが生じるのを抑えることができる。よって、従来のように、合金材料をスパッタして圧電薄膜を基板上に成膜する構成に比べて、圧電特性のさらなる向上を図ることができる。
また、上述のように、圧電薄膜4の各層の成膜温度を低めに設定することにより、基板面内方向に100nm以下(数10nm)の結晶粒が形成される。したがって、各層の膜厚を制御すれば、PTOの正方晶からなる圧電分域およびPZOの菱面体晶からなる圧電分域は、数10nm角のサイズで基板面に平行な方向(基板面内方向)に均一に並ぶことになる。
このように、PTO層4aおよびPZO層4bの各層を、膜厚および結晶粒をともに数10〜100nm程度の大きさで形成することにより、結晶系の異なる圧電材料が相境界を構成する組成比で存在するバルクセラミックスと同様の構成を、薄膜で実現することができる。
また、本実施形態のように、結晶系の異なる圧電材料として、正方晶のPTOと、菱面体晶のPZOとを用いることにより、PZTの薄膜を基板上に形成する構成において、上述した効果を得ることができる。
本実施形態では、PTOとPZOとの組成比、すなわち、PTO層4aとPZO層4bとの厚さの比率を、PTO層/PZO層=48/52としたが、この比率に限定されるわけではなく、PTO層/PZO層=45/55〜50/50の範囲であればよい。この範囲外では、膜応力の影響により、PTOおよびPZOの双方の膜が、正方晶、菱面体晶のいずれか一方に揃ってしまい、分域の境界を形成することができなくなる。
ところで、上述した格子定数の関係より、PZOよりもPTOのほうが、下部電極3を構成するPtに格子定数が近い。したがって、電極形成工程にて下部電極3のPtを形成した後、圧電薄膜4の成膜工程では、下部電極3上にPTOの層を先に形成し、その後、PZOの層を積層することが望ましい。この場合、下部電極3上のPTOは、下部電極3を構成するPtからの応力の影響を受けにくくなり、この応力によって結晶系が(立方晶から菱面体晶に)変化するのを抑えることができる。
なお、PTOは、格子定数がPtと異なる以上、Ptからの応力の影響を完全に避けることはできない。ここで、圧電体が外部から力を受けると、相境界が変化し、相境界を構成する組成比が変化する。例えば、図10(a)より、温度が上昇すると、すなわち圧電体が膨張すると、相境界となる組成比は、PTOが少なくても結晶系が変化する方向に変化し、温度が下降すると、すなわち圧電体が収縮すると、相境界となる組成比は、PZOが少なくても結晶系が変化する方向に変化することがわかる。
このことを利用し、圧電体が下地から圧縮の力を受けるときには、PZOの比率(膜厚)を小さくし、引張の力を受けるときには、PTOの比率(膜厚)を小さくしてもよい。上記のように下部電極3の上にPTOの層を先に形成した場合、PTOは、Ptよりも格子定数が小さいので、Ptから引張の力を受ける。したがって、PTOの比率(膜厚)を小さくすることにより、Ptからの応力を受けても、相境界となる組成比を維持することができる。
なお、下地からの影響は、下地からの距離が離れるほど小さくなるため、層数が増えるにしたがって、PTOとPZTとの膜厚の比を、本来の相境界を構成する組成比に近づくように変化させてもよい。
なお、PZTを低温で成膜し、所望の膜厚に達した後、高温で所定時間焼成し、結晶化を促進させてもよい。
〔3.圧電素子の応用例について〕
図7は、本実施形態で作製した圧電素子10をダイヤフラム(振動板)に応用したときの構成を示す平面図であり、図8は、図7のA−A’線矢視断面図である。圧電薄膜4は、基板1の必要な領域に、2次元の千鳥状に配置されている。基板1において圧電薄膜4の形成領域に対応する領域は、厚さ方向の一部が断面円形で除去された凹部1aとなっており、基板1における凹部1aの上部(凹部1aの底部側)には、薄い板状の領域1bが残っている。下部電極3および上部電極5は、図示しない配線により、外部の制御回路と接続されている。
制御回路から、所定の圧電薄膜4を挟む下部電極3および上部電極5に電気信号を印加することにより、所定の圧電薄膜4のみを駆動することができる。つまり、圧電薄膜4の上下の電極に所定の電界を加えると、圧電薄膜4が左右方向に伸縮し、バイメタルの効果によって圧電薄膜4および基板1の領域1bが上下に湾曲する。したがって、基板1の凹部1aに気体や液体を充填すると、圧電素子10をポンプとして用いることができる。
また、所定の圧電薄膜4の電荷量を下部電極3および上部電極5を介して検出することにより、圧電薄膜4の変形量を検出することもできる。つまり、音波や超音波により、圧電薄膜4が振動すると、上記と反対の効果によって上下の電極間に電界が発生するため、このときの電界の大きさや検出信号の周波数を検出することにより、圧電素子10をセンサとして用いることもできる。
〔4.その他〕
本実施形態では、組成相境界を実現できる圧電材料の組み合わせとして、PTOとPZTとを用いたが、バルク材で実績のある以下の圧電材料を組み合わせて用いても、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
(1)Pb(B1,B2)OとPbTiO
ただし、
B1:Zn,Mg,Ni,Lu,In,Sc
B2:Nb,Ta,Mo,W
(2)BiNaTiOとBaTiO
(3)KNbOとNaNbO
なお、圧電薄膜の成膜方法としては、上述したスパッタ法だけでなく、物理気相成長法である蒸着法、化学気相成長法であるCVD法、液相法であるゾルゲル法など、他の手法を用いることも可能である。
本発明は、例えばインクジェットヘッド、超音波センサ、赤外線センサ、周波数フィルタなどの種々のデバイスに利用可能であり、特に、小型化、薄型化が要求されるデバイスに利用可能である。
1 基板
3 下部電極(金属電極)
4 圧電薄膜
4a PTO層
4b PZO層
10 圧電素子

Claims (9)

  1. 基板上に圧電薄膜を成膜した圧電素子であって、
    前記圧電薄膜は、正方晶のPTOからなる層と、菱面体晶のPZOからなる層が、各層ごとに柱状結晶を並べた状態で交互に積層された、ペロブスカイト構造の金属酸化物で構成されており、
    前記正方晶のPTOからなる層と前記菱面体晶のPZOからなる層の組成比は、45/55以上50/50未満の範囲であることを特徴とする圧電素子。
  2. 前記基板と前記圧電薄膜との間に金属電極を有しており、
    前記圧電薄膜において前記金属電極に最も近い側の層は、前記圧電薄膜の各層を構成する圧電材料のうち、格子定数が前記金属電極に最も近い圧電材料で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電素子。
  3. 基板上に金属電極および圧電薄膜をこの順で積層した圧電素子であって、
    前記圧電薄膜は、正方晶のPTOからなる層と、菱面体晶のPZOからなる層が、各層ごとに柱状結晶を並べた状態で交互に積層されて構成されており、
    前記各層を構成する圧電材料の組成比は、結晶系が変化する相境界を構成する組成比であり、該組成比は、前記金属電極からの距離によって変化していることを特徴とする圧電素子。
  4. 前記圧電薄膜は、ペロブスカイト構造の金属酸化物で構成されていることを特徴とする請求項3に記載の圧電素子。
  5. 前記圧電薄膜において前記金属電極に最も近い側の層は、前記圧電薄膜の各層を構成する圧電材料のうち、格子定数が前記金属電極に最も近い圧電材料で形成されていることを特徴とする請求項3または4に記載の圧電素子。
  6. 基板上に圧電薄膜を成膜する成膜工程を有する圧電素子の製造方法であって、
    前記成膜工程では、正方晶のPTOからなる層と菱面体晶のPZOからなる層を、柱状結晶を並べた状態で交互に積層することによって、前記基板上に複数層の圧電材料からなる前記圧電薄膜を成膜するとともに、前記正方晶のPTOからなる層と前記菱面体晶のPZOからなる層の組成比が45/55以上50/50未満の範囲となるように前記圧電薄膜を成膜することを特徴とする圧電素子の製造方法。
  7. 前記成膜工程の前に、前記基板と前記圧電薄膜との間に金属電極を形成する電極形成工程をさらに有しており、
    前記成膜工程では、前記結晶系が異なる圧電材料のうち、格子定数が前記金属電極に最も近い圧電材料からなる層を形成した後、前記層の上に他の圧電材料からなる層を積層することを特徴とする請求項6に記載の圧電素子の製造方法。
  8. 基板上に金属電極を形成する電極形成工程と、前記金属電極上に圧電薄膜を成膜する成膜工程とを有する圧電素子の製造方法であって、
    前記成膜工程では、結晶系が変化する相境界を構成する組成比となる、該結晶系の異なる圧電材料である正方晶のPTOと、菱面体晶のPZOとを、柱状結晶を並べた状態で交互に積層することによって、前記基板上に複数層の圧電材料からなる前記圧電薄膜を成膜するとともに、前記各圧電材料の組成比を、前記金属電極からの距離によって変化させて前記圧電薄膜を成膜することを特徴とする圧電素子の製造方法。
  9. 前記成膜工程では、前記結晶系が異なる圧電材料のうち、格子定数が前記金属電極に最も近い圧電材料からなる層を形成した後、前記層の上に他の圧電材料からなる層を積層することを特徴とする請求項8に記載の圧電素子の製造方法。
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