JP2007335779A - 圧電体薄膜素子、インクジェットヘッドおよびインクジェット式記録装置 - Google Patents

圧電体薄膜素子、インクジェットヘッドおよびインクジェット式記録装置 Download PDF

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Abstract

【課題】優れた圧電性能を有し、かつ高湿度環境下において高電圧で駆動しても絶縁性の低下がなく高い信頼性を有する圧電薄膜素子、この圧電体薄膜素子を用いたインクジェットヘッド、及び前記インクジェットヘッドを印字手段として備えたインクジェット式記録装置を得ること。
【解決手段】圧電体層14を、化学量論組成と比較してPb組成量の多い層14a(1〜3)と、化学量論組成と比較してPb組成量の少ない層14b(1,2)との積層構造にする。Pb組成量の多い層14aに高湿度環境下で電気化学的な反応によって発生する二酸化鉛によるリークパスが発生したとしても、Pb組成量の少ない層14bではリークパスが発生しないので、上下電極間での絶縁性の低下を防ぐことができる。また、Pb組成量の少ない層14bだけの単層膜と比較して、Pb組成量の多い層14aを含むので、製造マージンの低下も防ぐことができ、良好な圧電性能が実現できる。
【選択図】図1

Description

この発明は、電気機械変換機能を呈する圧電体薄膜素子、この圧電体薄膜素子を用いたインクジェットヘッド、及び前記インクジェットヘッドを印字手段として備えたインクジェット式記録装置に関するものである。
電気機械変換機能を呈する圧電体素子は、一般に、圧電体材料をその厚み方向両側に設けた2つの電極で挟んだ構成である。圧電体材料の代表的なものは、ペロブスカイト型結晶構造の酸化物であるチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)(以降「PZT」と記す)や、このPZTにマグネシウム、マンガン、ニッケル、ニオブなどを添加したものなどがある。
特に、ペロブスカイト型結晶構造の正方晶系PZTの場合には、<001>軸方向(C軸方向)に大きな圧電変位が得られ、菱面体晶系PZTの場合には、<111>軸方向に大きな圧電変位が得られる。しかし、多くの圧電体材料は、結晶粒子の集合体からなる多結晶体であり、各結晶軸はでたらめな方向を向いている。そのため、自発分極Psもでたらめに配列しているが、圧電体素子の場合には、それらのベクトルの総和が電界方向と平行になるように作られている。そして、この圧電体素子の1つの利用形態である圧電体アクチュエータにおいては、両電極間に電圧を印加すると、その電圧の大きさに比例した機械的変位が得られる。インクジェットヘッドは、この圧電体アクチュエータに振動板を取り付けてインク吐出の駆動源として用いている。
ところで、圧電体素子では、湿度の高い雰囲気中に長時間曝された状態で高電圧を印加すると、圧電体材料の電気絶縁性が低下して絶縁破壊が起こる場合がある。このような現象は、圧電体素子の信頼性を低下させる大きな問題の1つとされてきた。
そこで、このような絶縁破壊の発生を防止する目的で従来から色々な工夫がなされてきた。なかでも絶縁破壊に最も関係深いとされている電極材のマイグレーションの発生を防止するため、マイグレーションの起こり難い金や白金を電極材料に選択する措置が採られてきた。そして、電極材料に金や白金を用いて電極材のマイグレーションを防止する措置を採ることによって、圧電体材料の絶縁抵抗が低下する現象が明らかになった。
即ち、この絶縁抵抗を低下させる原因は、水分が直接的に圧電体材料を攻撃することによるものであった。この絶縁抵抗の低下を防止する方法として、例えば、内部に乾燥剤を入れた金属密閉容器に圧電体薄膜素子の全体を収納し、当該容器を完全に密閉するようにすれば、圧電体薄膜が絶縁劣化しないことが実証された(例えば、特許文献1参照)。
一方、近年の電子機器の小型化に伴って圧電体素子に対しても小型化が強く要求されるようになっている。即ち、その要求を満たすために、圧電体素子の圧電体材料を、従来から多く使用されてきた焼結体に比べ著しく体積の小さい薄膜の形態に成膜して使用する圧電体素子の薄膜化が研究開発され、実用化が行われている。
即ち、圧電体薄膜素子は、一般に、圧電体薄膜をその厚み方向に2つの電極で挟んでなる積層体を備えている。この圧電体薄膜をPZT膜で形成する方法としては、例えば、スパッタリング法やCVD法、ゾルゲル法などがあるが、それぞれ、成膜条件の調節や熱処理条件の工夫によって高特性の圧電薄膜が得られるようになってきている。
そして、小型化のために、圧電体薄膜素子は、上記のように金属製の密閉容器に入れずにむき出しの状態で使用することが要望されている。そのため、密閉容器に入れずに高湿度環境下で使用しても劣化しないようにする工夫もなされている。例えば、圧電体薄膜素子を構成する圧電体薄膜の傍に発熱膜を設け、この発熱膜によって圧電体薄膜を積極的に加熱することで、圧電体薄膜が湿気を吸収するのを防止する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
ここで、PZT等の鉛化合物を含む圧電体材料は、高温下で合成される。これは薄膜形態であっても同様であり、高温時の鉛の蒸気圧が高いので、例えばPZT薄膜の場合、作製時の安定性などから、化学量論組成のPZT[化学量論組成がPb(Zr1-XTiX)O3(0<x<1)で、化学量論組成比がPb:Zr+Ti:O=1:1:3である]よりも幾分、鉛過剰の組成にすることが通常になっている(例えば、特許文献3参照)。
上記鉛過剰の圧電体薄膜を用いた圧電体薄膜素子において、湿気の高い環境下で高電圧を印加したときに絶縁破壊が起こる原因は、以下のメカニズムだと考えられる。即ち、圧電薄膜は、例えばスパッタリング法で作製された圧電薄膜の厚み方向の一方向から他方向に向いている複数の柱状結晶粒子によって構成された集合体から成る場合が多く、それらの柱状粒子同士の境界部分が結晶粒界として存在する。また、柱状結晶の集合体の形態を示さない場合であっても、多くの結晶粒界を有している。さらに、薄膜形成時に存在する異物などの影響によって厚み方向に小さな空孔などが存在する。そして、この圧電体薄膜の結晶粒界や空孔表面には、過剰の鉛が酸化物の形態で存在し、この結晶粒界に存在する鉛化合物が、湿気と反応して吸収された水分と電気化学的な反応を起こして変質する。
従来の圧電体薄膜素子において、絶縁破壊が発生する原因は、水分が電極膜のピンホールを通って圧電薄膜の結晶粒界に侵入し、その結晶粒界に存在している酸化鉛が、その水分による水酸化鉛を経て、導電性を有する二酸化鉛に変質する。
この考え方から、PZTなどの鉛化合物を含む圧電体材料への水分による攻撃を無くする措置を採ればよいことになる。そのための方法として、圧電体薄膜素子を製造する場合に、圧電体薄膜と、それを厚み方向の両側に成膜する第1及び第2の電極層との積層体を作製した後に、第1の電極層と第2の電極層のいずれか一方の電極層を、ジルコニウムアルコキシド、ジルコニウムアセチルアセトネート、ジルコニウムカルボキシレート等の化学物質に曝してその化学物質を電極層から圧電体薄膜に吸収させ、圧電体薄膜の結晶粒界に存在している酸化鉛や水酸化鉛を、電気化学的に安定な酸化ジルコニウムで被覆することで、リーク電流が結晶粒界を通って流れることを防ぐ方法が考えられる。
このように、結晶粒界を酸化ジルコニウムからなる絶縁膜で覆うので、結晶粒界の電気化学的な性質は、結晶粒界に存在している酸化ジルコニウムに支配される。それゆえに、結晶粒界を電気化学的に安定した状態にすることができるので、リーク電流が結晶粒界を通って流れる絶縁破壊の発生を防ぐことができる。これによって、高湿度下においても絶縁破壊の発生を防ぐことができる。しかしながら、上記の方法では、積層体を作製した後にジルコニア処理を行う必要がある。そのため、製造工程が複雑になってしまうという問題がある。
そこで、圧電体薄膜に含まれる鉛組成を化学量論組成よりも少ない量にした圧電体薄膜素子が提案されている(例えば、特許文献4参照)。この提案によれば、過剰鉛をなくすことにより、上述したPZTなどのPbを含む酸化物薄膜においては、電気化学的な反応が生じないために、高湿度下において絶縁破壊の発生を防ぐことができる。
なお、(特許文献5)では、成膜した圧電体薄膜の圧電定数を測定する技術が開示されている。また、(特許文献6)では、コンピュータの記憶装置等として用いられるディスク装置のディスクに対する情報の記録および再生に使用されるヘッドの支持機構に使用される薄膜圧電体アクチュエータが開示されている。
特開平4−349675号公報 特開2000−43259号公報 特開平10−290033号公報 特開2005−244174号公報 特開2002−225285号公報 特開2001−332041号公報
しかしながら、上記鉛組成が化学量論組成よりも少ないペロブスカイト型の圧電体薄膜を得るためには作製時にかなりの工夫が必要であり、製造マージンが狭いばかりでなく、良好な圧電性能が得られ難い。また、発生する鉛欠損によって圧電体薄膜の結晶配向性の制御が難しく、高い圧電性能が得られ難い。さらに、内部応力の制御も難しく、耐電圧が低下し高湿度環境下以外でも絶縁性能が劣化してしまう。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、優れた圧電性能を有し、かつ高湿度環境下において高電圧で駆動しても絶縁性の低下がなく高い信頼性を有する圧電薄膜素子、この圧電体薄膜素子を用いたインクジェットヘッド、及び前記インクジェットヘッドを印字手段として備えたインクジェット式記録装置を得ることを目的とする。
上述した目的を達成するために、この発明は、ペロブスカイト型結晶構造を有するPbを含む酸化物で成膜した圧電体層と、前記圧電体層の厚み方向両側の層面それぞれに成膜した電極層とを備えている圧電体薄膜素子において、前記圧電体層は、一方の電極層と他方の電極層との間の成膜構造が化学量論組成と比較してPb組成量の多い層と化学量論組成と比較してPb組成量の少ない層との積層構造であることを特徴とする。
この発明によれば、化学量論組成と比較してPb組成量の多い層に高湿度環境下で電気化学的な反応によって発生する二酸化鉛によるリークパスが発生したとしても、化学量論組成と比較してPb組成量の少ない層ではリークパスが発生しないので、上下電極間での絶縁性の低下を防ぐことができる。また、化学量論組成と比較してPb組成量の少ない層だけの単層膜と比較して、化学量論組成と比較してPb組成量の多い層を含むので、製造マージンの低下も防ぐことができ、良好な圧電性能が実現できる。
この発明によれば、優れた圧電性能を有し、かつ高湿度環境下において高電圧で駆動しても絶縁性の低下がなく高い信頼性を有する圧電体薄膜素子が得られるという効果を奏する。
以下に図面を参照して、この発明にかかる圧電体薄膜素子、インクジェットヘッド、及びインクジェット式記録装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1による圧電体薄膜素子の構成を示す断面図である。図1に示す本実施の形態1による圧電体薄膜素子は、基板11の上に、密着層12、下部電極である第1の電極層13、ペロブスカイト型結晶構造を有するPbを含む酸化物で成膜した圧電体薄膜である圧電体層14および上部電極である第2の圧電体層14をこの順に成膜して形成する圧電体薄膜素子において、圧電体層14を、化学量論組成と比較してPb組成量が異なる複数層の積層構造としたものである。
図1に示す例では、圧電体層14は、化学量論組成と比較してPb組成量の多い3つの圧電体層14a(1〜3)と、化学量論組成と比較してPb組成量の少ない2つの圧電体層14b(1,2)との5層構造になっている。なお、積層する順番や積層数はこれに限らず、任意である。
この構成によれば、化学量論組成と比較してPb組成量の多い圧電体層14aに高湿度環境下で電気化学的な反応によって発生する二酸化鉛によるリークパスが発生したとしても、化学量論組成と比較してPb組成量の少ない圧電体層14bではリークパスが発生しないので、上下電極間での絶縁性の低下を防ぐことができる。また、化学量論組成と比較してPb組成量の少ない圧電体層14bだけの単層膜と比較して、化学量論組成と比較してPb組成量の多い圧電体層14aを含むので、製造マージンの低下も防ぐことができ、良好な圧電性能が実現できる。圧電体層14での積層膜は、スパッタリング法、CVD法、真空蒸着法、ゾルゲル法など通常の薄膜形成方法を用いて製造可能である。
圧電体材料である「ペロブスカイト型結晶構造を有するPbを含む酸化物」としては、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)や、このPZTにLa、Sr、Nb、Alなどの添加物を含有したものなどがあるが、要するにPZTを主成分とした圧電体材料であり、PMNであるかPZNであるかは問わない。
この実施の形態1で用いるPZTの組成は、正方晶系と菱面体晶系との境界(モルフォトロピック相境界)付近の組成(Zr/Ti=53/47)であるが、圧電体層14におけるZr/Ti組成は、その組成Zr/Ti=53/47に限らず、Zr/Ti=30/70〜70/30の範囲内であればよい。
化学量論組成と比較してPb組成量の多い圧電体層14aでの過剰Pb量は、25モル%以下が望ましく、より望ましくは15モル%以下であれば良い。一方、化学量論組成と比較してPb組成量の少ない圧電体層14bでのPb欠損量は、10モル%以下が望ましく、より望ましくは5モル%以下であれば良い。
そして、圧電体層14の各層では、共に、<111>面または<001>面のいずれかの同じ面に優先配向するように成膜して優れた圧電特性が得られようにしている。その配向率は、化学量論組成と比較してPb組成量の多い圧電体層14aの方が、化学量論組成と比較してPb組成量の少ない圧電体層14bよりも高い。数値例で言えば、化学量論組成と比較してPb組成量の多い圧電体層14aの方の配向率は70%以上が望ましく、化学量論組成と比較してPb組成量の少ない圧電体層14bの方の配向率はそれよりも少ない50%以上が望ましい。
ここで、<111>面での配向率をα<111>と表記し、<001>面での配向率をα<001>と表記すれば、α<111>=I<111>/ΣI(hkl)、α<001>=I<001>/ΣI(hkl)と定義している。ΣI(hkl)は、X線回折法において、Cu−Kα線を用いたときの2θが10°〜70°でのペロブスカイト型結晶構造のPZTにおける各結晶面からの回折ピーク強度の総和である。
ペロブスカイト型結晶構造を有するPbを含む酸化物の場合は、上述したように結晶配向によって圧電性能を向上させることができるが、一方で、圧電体薄膜に発生する内部応力は大きくなる。図1に示すように圧電体層14を積層膜で構成する場合に、優れた圧電性能は、化学量論組成と比較してPb組成量の多い圧電体層14aの影響を大きく受け、化学量論組成と比較してPb組成量の少ない圧電体層14bの影響を受ける度合いは少ない。つまり、化学量論組成と比較してPb組成量の少ない圧電体層14bの結晶配向性を、化学量論組成と比較してPb組成量の多い圧電体層14aよりも低下させることによって、圧電性能の低下を抑えることができ、かつ圧電体薄膜トータルでの内部応力を抑えることが可能となる。
また、圧電体層14は、引っ張り応力を有する場合と圧縮応力を有する場合とがある。応力状態が引っ張り応力である場合は、化学量論組成と比較してPb組成量に多い圧電体層14aの方での引っ張り応力の絶対値を化学量論組成と比較してPb組成量の少ない圧電体層14bよりも小さくする。また、応力状態が圧縮応力の場合は、化学量論組成と比較してPb組成量の多い圧電体層14aの方での圧縮応力の絶対値を化学量論組成と比較してPb組成量の少ない圧電体層14bよりも大きくする。これは、圧電性能に強く影響を及ぼす化学量論組成と比較してPb組成量が多い圧電体層14aの応力状態を、化学量論組成と比較してPb組成量の少ない圧電体層14bの応力によって調整するためである。なぜなら、圧電薄膜の内部応力は、耐電圧などの信頼性に影響を及ぼすが、化学量論組成と比較してPb組成量の多い圧電体層14aは、高い圧電性能を得ることを最優先に作製するので、必ずしも高い信頼性を有さないことがある。そこで、作製時に圧電薄膜の圧電性能への影響が小さい、化学量論組成と比較してPb組成量が少ない圧電体層14bの応力を調整することにより、化学量論組成と比較してPb組成量が多い圧電体層14aの応力状態を制御するのである。具体的な数値で言えば、応力状態が引っ張り応力であっても圧縮応力であっても、その絶対値が300MPa以下であればよいが、100MPa以下であることがより望ましい。
次に、圧電体層14の圧電定数に関しては、化学量論組成と比較してPb組成量の多い圧電体層14aの圧電定数は化学量論組成と比較してPb組成量の少ない圧電体層14bよりも大きくなるようにしている。上述したように、化学量論組成と比較してPb組成量の少ない圧電体層14bは、高湿度環境下での絶縁耐圧の確保、応力状態のコントロールを行う。そのため、それらの調整が圧電性能に与える影響を小さくするためである。
次に、圧電体層14の比誘電率に関しては、化学量論組成と比較してPb組成量の多い圧電体層14aは、化学量論組成と比較してPb組成量の少ない圧電体層14bよりも大きくなるようにしている。これも圧電定数の場合と同様、圧電体層14の圧電性能に与える影響を小さくするためである。
次に、圧電体層14の層厚は、0.5μm〜5.0μmの範囲内であればよいが、化学量論組成と比較してPb組成量の少ない圧電体層14bにおいては、厚みが0.1〜1μmであり、結晶粒径が0.1μm以上であるものとする。厚みが0.1μm以下であると、高湿度下でのリークパスの防止機能が十分でなく、1μm以上であると、圧電体層14の圧電性能の低下が大きくなるためである。また、結晶粒径が0.1μm以下の場合は、化学量論組成と比較してPb組成量の少ない圧電体層14bの圧電性能が大きく低下するためである。
次に、圧電体層14は、柱状構造を有し、その粒子径は、化学量論組成と比較してPb組成量の多い圧電体層14aが、化学量論組成と比較してPb組成量の少ない圧電体層14bよりも大きくなっている。化学量論組成と比較してPb組成量の多い圧電体層14aは、薄膜形成の際に厚み方向に生じる小さな空孔に加えて、結晶粒界に存在する過剰鉛の高湿度下での電気化学的な反応によってリークパスが形成され絶縁性能が低下する。化学量論組成と比較してPb組成量の多い圧電体層14aの結晶粒径を大きくすることにより、そのリークパスの発生箇所を少なくすることができる。
次に、圧電体層14の周辺に配置される要素について説明する。基板11は、シリコン基板や、ガラス基板、金属基板、セラミックス基板等である。密着層12は、基板11と第1の電極層13との密着性を高めるためのものである。この実施の形態1では、一般性を保つ趣旨から密着層12を設ける場合を示すが、基板11と第1の電極層13との密着性に問題がなければ、設ける必要はない。密着層12の膜厚は、0.005〜1μmの範囲内であればよい。密着層12に用いる材料は、この実施の形態1ではチタン(Ti)を用いているが、その他に、タンタル、鉄、コバルト、ニッケル若しくはクロムまたはそれらの化合物等でもよい。
第1の電極層13に用いる材料は、通常は白金(Pt)を用いるが、Pt、イリジウム、パラジウム及びルテニウムの群から選ばれた少なくとも1種の貴金属又はそれらの化合物であればよく、膜厚は、0.05〜2μmの範囲内であればよい。また、第2の電極層15は、通常は白金(Pt)を用いるが、任意の導電材料を用いてよい。その厚さは、0.1〜0.4μmの範囲内であればよい。
以下に、6つの実施例を示してこの実施の形態1による措置の優位性を明らかにする。なお、この圧電体薄膜素子の成膜法には、スパッタリング法、真空蒸着法、レーザーアブレーション法、イオンプレーティング法、MBE法、PVD法、MOCVD法、プラズマCVD法、ゾルゲル法、MOD法など各種あるが、ここでは、スパッタリング法を用いて説明する。
(実施例1)
基板11は、厚さが0.3mm、直径が4インチの円盤状シリコンウェハ基板である。この円盤状シリコンの基板11の上面に、厚さ0.02μmの密着層12、厚さ0.22μmの第1の電極層13、厚さ3.2μmのPb組成量が異なる複数層の積層構造とした圧電体層14及び厚さ0.02μmの第2の電極層をスパッタリング法によって順に成膜することで、圧電体薄膜素子を作製した。
密着層12は、例えばチタン(Ti)ターゲットを用いて、真空度1Paのアルゴンガス中において基板11を400℃に加熱しながら100Wの高周波電力を1分間印加して厚さ0.02μmに成膜した。第1の電極層13は、例えば白金(Pt)ターゲットを用い、真空度1Paのアルゴンガス中において基板11を400℃に加熱しながら200Wの高周波電力を12分間印加して厚さ0.22μに成膜した。第2の電極層15は、例えば白金(Pt)ターゲットを用い、真空度1Paのアルゴンガス中において、基板11を室温に維持して200Wの高周波電力を10分間印加して成膜した。
さて、厚さ3.2μmの圧電体層14は、多元スパッタ装置を用いて作製した。ターゲットである菱面体晶系または正方晶系のペロブスカイト型結晶構造を有するPZTには、化学量論組成と比較してPb組成量の多い圧電体層14a(1〜3)は、PZT(Zr/Ti=53/47、Pb量が20モル%過剰)の焼結体ターゲットを用い、化学量論組成と比較してPb組成量の少ない圧電体層14b(1,2)はPZT(Zr/Ti=53/47、Pb量が5モル%過剰)を用いた。
図1に示す構成であれば、圧電体層14a1,14b1,14a2,14b2,14a3の順に成膜することになる。圧電体層14a1,14a2,14a3は、それぞれ、真空度0.3Paのアルゴンと酸素との混合雰囲気中(ガス体積比Ar:O2=18:2)において、基板11を580℃で加熱しながら、250Wの高周波電力を45分間印加して厚み0.8μmに成膜した。また、圧電体層14b1,14b2は、それぞれ、真空度0.3Paのアルゴンと酸素との混合雰囲気中(ガス体積比Ar:O2=18:2)において、基板11を650℃で加熱しながら、200Wの高周波電力を35分間印加して厚み0.4μmに成膜した。
そして、以上のような成膜条件で作製した圧電体薄膜素子における圧電体層14について各種の観察を行った。まず、X線マイクロアナライザーによって調べたPb組成は、圧電体層14a(1〜3)は、Pb量が10モル%過剰の組成であり、圧電体層14b(1,2)は、Pb量が2モル%少ない組成であった。
また、SEM観察の結果、圧電体層14は柱状構造を有しており、その柱状粒子径は、圧電体層14a(1〜3)が0.4μmであり、圧電体層14b(1,2)が0.2μmであった。圧電体層14a(1〜3)の1層の厚みは0.8μmであり、圧電体層14b(1,2)の1層の厚みは0.4μmであり、圧電体層14のトータルの厚みは、3.2μmであった。
上述した成膜条件で作製した圧電体層14の結晶構造、結晶配向性、内部応力をX線回折及びsin2ψ法によって調べた。その結果、得られた圧電体層14は、菱面体晶系ペロブスカイト型結晶構造を有しており、<111>面に配向をしていた。また、<111>結晶配向性は、圧電体層14a(1〜3)では、<111>配向率が99%であり、圧電体層14b(1,2)では、<111>配向率が70%であった。また、それぞれの層の内部応力は、引っ張り応力であって、圧電体層14a(1〜3)では、12MPaであり、圧電体層14b(1,2)では、36MPaであった。
次に、第2の電極層15を形成する前の状態のものから、ダイシングにより15mm×2mmに切り出したカンチレバーを100個作製し、0.2μm厚の第2の電極層15をスパッタリング法によって形成して圧電定数の測定を行った。なお、測定方法は、(特許文献5)と基本的に同じである。その結果、カンチレバーの圧電定数は平均152pC/Nであり、ばらつきσは、σ=3.4%であった。
そして、上述した成膜条件で、第1の電極層13上に、圧電体層14aの1層のみを形成したサンプル1Aと、サンプル1Aの上に圧電体層14bの1層のみを形成したサンプル1Bと、さらにサンプル1Bの上に圧電体層14aの1層形成したサンプル1Cとを作製し、それぞれについて同様に圧電定数を測定し、そこで得られた3つのサンプル(1A、1B、1C)の各圧電定数の値から、圧電体層14aと圧電体層14bとの各圧電定数を換算して求めた。その結果、圧電体層14aの圧電定数は、168pC/Nであり、圧電体層14bの圧電定数は、120pC/Nであった。また、圧電体層14a,14bの比誘電率も同様の方法で求めた結果、圧電体層14aでは850であり、圧電体層14bでは770であった。
次に、圧電定数の測定系を高温高湿層内に入れ、40℃、湿度80%の雰囲気中で、上記カンチレバーに波高値40V、周波数200Hzのsin波電圧を連続して印加した状態で、30個のサンプルに対して圧電定数の変化を調べた。その結果、化学量論組成と比較してPb組成量が異なる複数層の積層構造をした圧電体層14では、測定した30個全てにおいて200時間連続して電圧を印加し続けても圧電定数の低下は見られず、300時間後に26個のサンプルで2〜20%の低下が見られた。
しかし、圧電定数の測定後にDC50Vの電圧を30個全てのサンプルに印加してリーク電流を測定した結果、化学量論組成と比較してPb組成量が異なる複数層の積層構成の圧電体層14では、リーク電流が5×10-7(A/cm2)以下であり、測定開始前と同じ値であった。したがって、300時間後に圧電特性に低下が見られたのは、化学量論組成と比較してPb組成量の多い層にリークが発生したことが原因であると考えられるが、上下電極層間の膜厚方向に、化学量論組成と比較してPb組成量の少ない層が存在するので、上下電極層間でのリーク電流が増加しなかったと考えることができる。
(実施例2)
この実施例2は、実施例1に対する比較例であって、圧電体層14を、化学量論組成と比較してPb組成量が異なる複数層の積層構造ではなく、従来の構成例の一つである化学量論組成と比較してPb組成量の多い圧電体層14aのみの単層構成としたもので、実施例1と同様の成膜条件で各層を成膜して作製した。
この化学量論組成と比較してPb組成量の多い層のみの単層構成の圧電体層14aでは、膜厚は3.2μmであり、<111>に優先配向していた。X線マイクロアナライザーによって調べたPb組成は、化学量論組成と比較してPb量が10モル%過剰であった。
そして、第2の電極層15を形成する前の状態のものをダイシングによって15mm×2mmに切り出したカンチレバーを100個作製し、0.2μm厚の第2の電極層15をスパッタリング法によって形成し、圧電定数の測定を行った。その結果、カンチレバーの圧電定数は、平均170pC/Nであり、ばらつきσは、実施例1(σ=3.4%)よりも少ないσ=2.9%であった。また、比誘電率は870であった。
次に、圧電定数の測定系を高温高湿層内に入れ、30個のサンプルに対して40℃、湿度80%の雰囲気中で、上記カンチレバーに波高値40V、周波数200Hzのsin波電圧を連続して印加した状態で、30個のサンプルに対して圧電定数の変化を調べた結果、単層構成の圧電体層14では、測定した30個全てにおいて10時間後に圧電定数が30%以上低下し、50時間後には測定不能となった。
そして、圧電定数の測定後に、DC50Vの電圧を30個全てのサンプルに印加してリーク電流を測定した結果、単層構成の圧電体層14では、リーク電流が1×10-3(A/cm2)以上であり、明らかにリークが発生していた。
以上の実施例1,2の比較から、<111>面に優先配向しているので、両者はほぼ同等の圧電性能を有しているが、絶縁性は、実施例1の方が優れている。つまり、圧電体層を化学量論組成と比較してPb組成量が異なる複数層の積層構造とした場合には、圧電体層を化学量論組成と比較してPb組成量の多い層の単層構成とした場合と比較して、ほぼ同等の圧電性能を有し、かつ優れた信頼性を有していることが解る。
(実施例3)
この実施例3は、実施例1に対する比較例であって、圧電体層14を、化学量論組成と比較してPb組成量が異なる複数層の積層構造ではなく、従来の構成例の一つである化学量論組成と比較してPb組成量の少ない圧電体層14bのみの単層構成としたもので、実施例1と同様の成膜条件で各層を成膜して作製した。
この化学量論組成と比較してPb組成量の少ない層のみの単層構成の圧電体層14bでは膜厚は3.2μmであり、<111>に優先配向していた。X線マイクロアナライザーにて調べたPb組成は、化学量論組成と比較してPb量が2モル%少ない組成であった。
そして、第2の電極層15を形成する前の状態のものをダイシングによって15mm×2mmに切り出したカンチレバーを100個作製し、0.2μm厚の第2の電極層15をスパッタリング法によって形成し、圧電定数の測定を行った。その結果、カンチレバーの圧電定数は、平均112pC/Nであり、ばらつきσは、実施例1(σ=3.4%)よりも多いσ=9.6%であった。また、比誘電率は870であった。
次に、圧電定数の測定系を高温高湿層内に入れ、40℃、湿度80%の雰囲気中で、上記カンチレバーに波高値40V、周波数200Hzのsin波電圧を連続して印加した状態で、30個のサンプルに対して圧電定数の変化を調べた。その結果、化学量論組成と比較してPb組成量の少ない層の単層構造をした圧電体層14bでは、測定した30個全てにおいて300時間連続して電圧を印加し続けても圧電定数の低下は見られなかった。
そして、圧電定数の測定後に、DC50Vの電圧を30個全てのサンプルに印加してリーク電流を測定した結果、実施例1と同様に、リーク電流が5×10-7(A/cm2)以下であり、測定開始前と同じ値であった。
以上の実施例1,3の比較から、<111>面に優先配向しているので、両者はほぼ同等の圧電性能を有している。そして、両者の絶縁性もほぼ同等である。つまり、圧電体層を化学量論組成と比較してPb組成量が異なる複数層の積層構造とした場合には、圧電体層を化学量論組成と比較してPb組成量の少ない層の単層構成とした場合と比較して、ほぼ同等の信頼性を有し、かつ優れた圧電特性を有していることが解る。
(実施例4)
この実施例4では、基板11にMgO単結晶基板を用いて、実施例1と同様の化学量論組成と比較してPb組成量が異なる複数層の積層構造とした圧電体層14を作製する。即ち、MgO単結晶の基板11上に、密着層12、第1の電極層13、Pb組成量が異なる複数層の積層構造とした圧電体層14、および第2の電極層15を、スパッタリング法によって順次成膜することにより、圧電体薄膜素子を作製した。
密着層12は、Tiターゲットを用い、真空度1Paのアルゴンガス中において、基板11を400℃に加熱しながら100Wの高周波電力を1分間印加して成膜した。第1の電極層13は、Ptターゲットを用い、真空度1Paのアルゴンガス中において、基板11を600℃に加熱しながら180Wの高周波電力を12分間印加して成膜した。第2の電極層15は、Ptターゲットを用い、真空度1Paのアルゴンガス中において、基板11を室温に維持して200Wの高周波電力を10分間印加して成膜した。
さて、圧電体層14は、多元スパッタ装置を用いて作製した。ターゲットである菱面体晶系または正方晶系のペロブスカイト型結晶構造を有するPZTには、化学量論組成と比較してPb組成量の多い圧電体層14a(1〜3)は、PZT(Zr/Ti=53/47、Pb量が25モル%過剰)の焼結体ターゲットを用い、化学量論組成と比較してPb組成量の少ない圧電体層14b(1,2)はPZT(Zr/Ti=53/47、Pb量が10モル%過剰)を用いた。
図1に示す構成であれば、圧電体層14a1,14b1,14a2,14b2,14a3の順に成膜することになる。圧電体層14a1,14a2,14a3は、それぞれ、真空度0.3Paのアルゴンと酸素との混合雰囲気中(ガス体積比Ar:O2=19:1)において、基板11を600℃で加熱しながら、250Wの高周波電力を45分間印加して厚み0.8μmに成膜した。また、圧電体層14b1,14b2は、それぞれ、真空度0.3Paのアルゴンと酸素との混合雰囲気中(ガス体積比Ar:O2=19.6:0.4)において、基板11を680℃で加熱しながら、200Wの高周波電力を35分間印加して厚み0.4μmに成膜した。
そして、以上のような成膜条件で作製した圧電体薄膜素子における圧電体層14について各種の観察を行った。まず、X線マイクロアナライザーによって調べたPb組成は、圧電体層14a(1〜3)は、Pb量が12モル%過剰の組成であり、圧電体層14b(1,2)は、Pb量が2モル%少ない組成であった。
また、SEM観察の結果、圧電体層14は柱状構造を有しており、その柱状粒子径は、圧電体層14a(1〜3)が0.6μmであり、圧電体層14b(1,2)が0.3μmであった。圧電体層14a(1〜3)の1層の厚みは0.8μmであり、圧電体層14b(1,2)の1層の厚みは0.4μmであり、圧電体層14のトータルの厚みは、3.2μmであった。
上述した成膜条件で作製した圧電体層14の結晶構造、結晶配向性、内部応力をX線回折及びsin2ψ法によって調べた。その結果、得られた圧電体層14は、正方晶系ペロブスカイト型結晶構造を有しており、<001>面に配向をしていた。また、<001>結晶配向性は、圧電体層14a(1〜3)では、<001>配向率が99%であり、圧電体層14b(1,2)では、<001>配向率が65%であった。また、それぞれの層の内部応力は、圧縮応力であって、圧電体層14a(1〜3)では、38MPaであり、圧電体層14b(1,2)では、24MPaであった。
次に、第2の電極層15を形成する前の状態のものから、ダイシングにより15mm×2mmに切り出したカンチレバーを100個作製し、0.2μm厚の第2の電極層15をスパッタリング法によって形成して圧電定数の測定を行った。なお、測定方法は、(特許文献5)と基本的に同じである。その結果、カンチレバーの圧電定数は平均135pC/Nであり、ばらつきσは、σ=2.6%であった。
そして、上述した成膜条件で、第1の電極層13上に、圧電体層14aの1層のみを形成したサンプル1Aと、サンプル1Aの上に圧電体層14bの1層のみを形成したサンプル1Bと、さらにサンプル1Bの上に圧電体層14aの1層形成したサンプル1Cとを作製し、それぞれについて同様に圧電定数を測定し、そこで得られた3つのサンプル(1A、1B、1C)の各圧電定数の値から、圧電体層14aと圧電体層14bとの各圧電定数を換算して求めた。その結果、圧電体層14aの圧電定数は、145pC/Nであり、圧電体層14bの圧電定数は、108pC/Nであった。また、圧電体層14a,14bの比誘電率も同様の方法で求めた結果、圧電体層14aでは340であり、圧電体層14bでは280であった。
次に、圧電定数の測定系を高温高湿層内に入れ、40℃、湿度80%の雰囲気中で、上記カンチレバーに波高値40V、周波数200Hzのsin波電圧を連続して印加した状態で、30個のサンプルに対して圧電定数の変化を調べた。その結果、化学量論組成と比較してPb組成量が異なる複数層の積層構造をした圧電体層14では、測定した30個全てにおいて200時間連続して電圧を印加し続けても圧電定数の低下は見られず、300時間後に24個のサンプルで約5〜15%の低下が見られた。
しかし、圧電定数の測定後にDC50Vの電圧を30個全てのサンプルに印加してリーク電流を測定した結果、化学量論組成と比較してPb組成量が異なる複数層の積層構成の圧電体層14では、リーク電流が5×10-7(A/cm2)以下であり、測定開始前と同じ値であった。したがって、300時間後に圧電特性に低下が見られたのは、化学量論組成と比較してPb組成量の多い層にリークが発生したことが原因であると考えられるが、上下電極層間の膜厚方向に、化学量論組成と比較してPb組成量の少ない層が存在するので、上下電極層間でのリーク電流が増加しなかったと考えることができる。
(実施例5)
この実施例5は、実施例4に対する比較例であって、圧電体層14を、化学量論組成と比較してPb組成量が異なる複数層の積層構造ではなく、従来の構成例の一つである化学量論組成と比較してPb組成量の多い圧電体層14aのみの単層構成としたもので、実施例4と同様の成膜条件で各層を成膜して作製した。
この化学量論組成と比較してPb組成量の多い層のみの単層構成の圧電体層14では、膜厚は3.2μmであり、<001>に優先配向していた。X線マイクロアナライザーによって調べたPb組成は、化学量論組成と比較してPb量が12モル%過剰であった。
そして、第2の電極層15を形成する前の状態のものをダイシングによって15mm×2mmに切り出したカンチレバーを100個作製し、0.2μm厚の第2の電極層15をスパッタリング法によって形成し、圧電定数の測定を行った。その結果、カンチレバーの圧電定数は、平均147pC/Nであり、ばらつきσは、実施例4(σ=2.6%)よりも少ないσ=2.4%であった。また、比誘電率は345であった。
次に、圧電定数の測定系を高温高湿層内に入れ、30個のサンプルに対して40℃、湿度80%の雰囲気中で、上記カンチレバーに波高値40V、周波数200Hzのsin波電圧を連続して印加した状態で、30個のサンプルに対して圧電定数の変化を調べた結果、単層構成の圧電体層14では、測定した30個全てにおいて10時間後に圧電定数が30%以上低下し、50時間後には測定不能となった。
そして、圧電定数の測定後に、DC50Vの電圧を30個全てのサンプルに印加してリーク電流を測定した結果、単層構成の圧電体層14では、リーク電流が1×10-3(A/cm2)以上であり、明らかにリークが発生していた。
以上の実施例4,5の比較から、<001>面に優先配向しているので、両者はほぼ同等の圧電性能を有しているが、絶縁性は、実施例4の方が優れている。つまり、圧電体層を化学量論組成と比較してPb組成量が異なる複数層の積層構造とした場合には、圧電体層を化学量論組成と比較してPb組成量の多い層の単層構成とした場合と比較して、ほぼ同等の圧電性能を有し、かつ優れた信頼性を有していることが解る。
(実施例6)
この実施例6は、実施例4に対する比較例であって、圧電体層14を、化学量論組成と比較してPb組成量が異なる複数層の積層構造ではなく、従来の構成例の一つである化学量論組成と比較してPb組成量の少ない圧電体層14bのみの単層構成としたもので、実施例4と同様の成膜条件で各層を成膜して作製した。
この化学量論組成と比較してPb組成量の少ない層のみの単層構成の圧電体層14では膜厚は3.2μmであり、<001>に優先配向していた。X線マイクロアナライザーにて調べたPb組成は、化学量論組成と比較してPb量が2モル%少ない組成であった。
そして、第2の電極層15を形成する前の状態のものをダイシングによって15mm×2mmに切り出したカンチレバーを100個作製し、0.2μm厚の第2の電極層15をスパッタリング法によって形成し、圧電定数の測定を行った。その結果、カンチレバーの圧電定数は、平均102pC/Nであり、ばらつきσは、実施例4(σ=2.6%)よりも多いσ=10.3%であった。また、比誘電率は245であった。
次に、圧電定数の測定系を高温高湿層内に入れ、40℃、湿度80%の雰囲気中で、上記カンチレバーに波高値40V、周波数200Hzのsin波電圧を連続して印加した状態で、30個のサンプルに対して圧電定数の変化を調べた。その結果、化学量論組成と比較してPb組成量の少ない層の単層構造をした圧電体層14では、測定した30個全てにおいて300時間連続して電圧を印加し続けても圧電定数の低下は見られなかった。
そして、圧電定数の測定後に、DC50Vの電圧を30個全てのサンプルに印加してリーク電流を測定した結果、実施例1と同様に、リーク電流が5×10-7(A/cm2)以下であり、測定開始前と同じ値であった。
以上の実施例4,6の比較から、<001>面に優先配向しているので、両者はほぼ同等の圧電性能を有している。そして、両者の絶縁性もほぼ同等である。つまり、圧電体層を化学量論組成と比較してPb組成量が異なる複数層の積層構造とした場合には、圧電体層を化学量論組成と比較してPb組成量の少ない層の単層構成とした場合と比較して、ほぼ同等の信頼性を有し、かつ優れた圧電特性を有していることが解る。
(実施の形態2)
この実施の形態2では、実施の形態1による圧電体薄膜素子をインク吐出の駆動源となる振動子として用いるインクジェットヘッドの構成例を示す。端的には、このインクジェットヘッドは、実施の形態1による圧電体薄膜素子のいずれかの電極側の面に設けた振動板層と、前記振動板層の前記圧電体薄膜素子とは反対側の面に接合され、インクを収容する圧力室を有する圧力室部材とを備え、前記圧電体薄膜素子の圧電効果によって前記振動板層を層厚方向に変位させて前記圧力室のインクを吐出させるように構成される。以下、具体的な構成例(図2〜図4)とその製造手順(図5〜図10)とを示す。
図2は、本発明の実施の形態2によるインクジェットヘッドの全体構成を示す外観図である。図3は、図2に示すインクジェットヘッドの要部の構成を示す斜視図である。図2、図3に示すように、インクジェットヘッド100は、主な要素として、圧力室部材Aとアクチュエータ部Bとインク流路部材Cとノズル板Dとを備えている。
図2、図3において、圧力室部材Aには、その厚み方向(上下方向)に貫通する圧力室に多数の開口部101が千鳥状に形成されている。この多数の開口部101は、その上端開口部を共通に被覆するように配置されるアクチュエータ部Bと、その下端開口部を共通に被覆するように配置されるインク流路部材Cとによってその上下端が閉塞されることで、個別の圧力室102となる。
インク流路部材Cは、インク供給方向に並ぶ圧力室102間で共用する共通液室105と、この共通液室105のインクを圧力室102に供給するための供給口106と、圧力室102内のインクを吐出させるためのインク流路107とを有している。ノズル板Dには、インク流路107に連通するノズル孔108が形成されている。また、ICチップEから各個別電極103に対してボンディングワイヤBWを通して電圧をそれぞれ供給するようになっている。
次に、図4は、図2に示すインクジェットヘッドの要部であるアクチュエータ部の構成を示す断面図である。図4では、図2に示したインク供給方向とは直交する方向での断面構成が示され、上記直交方向に並ぶ4個の圧力室102を持つ圧力室部材Aが参照的に描かれている。4個の圧力室102は、区画壁102aで仕切られている。
図4に示すように、アクチュエータ部Bは、各圧力室102に共通の天井面を構成する部材として、区画壁102aの上端面に接着剤114にて接着される中間層(区画壁102aの側壁面と面一に形成される)113と、その上に積層される振動層111と、その上に積層される共通電極である第2の電極層112とを備えている。
そして、アクチュエータ部Bは、圧力室102毎の駆動手段として、第2の電極層112の上面における各圧力室102の直上位置に設けられる圧電体層110と、その上に積層される個別電極である第1の電極層103とを備えている。
つまり、アクチュエータ部Bは、圧力室102毎に、第2の電極層112、圧電体層110、及び第1の電極層103が順に積層される構成の圧電体薄膜素子を備えている。そして、振動層111が共通電極である第2の電極層112側に設けられている。第1の電極層103、圧電体層110及び第2の電極層112の各構成材料は、実施の形態1にて説明した第1の電極層13、圧電体層14及び第2の電極層15のそれぞれと同様である。但し、構成元素の含有量が異なるものもある。また、圧電体層110の構造も、圧電体層14と同様であり、化学量論組成と比較してPb組成量の多い圧電体層14aとPb組成量の少ない圧電体層14bとの積層構造である。
アクチュエータ部Bでは、この構成によれば、1つの圧力室102に対する圧電体層110の圧電効果によって振動層111が層厚方向に変位し振動することで、その圧力室102の容積を変化させることができる。
なお、圧力室部材Aとアクチュエータ部Bとは、接着剤114によって接着されているが、各中間層113は、この接着剤114を用いた接着時に、その一部の接着剤114が区画壁102aの外方にはみ出した場合でも、この接着剤114が振動層111に付着しないで振動層111が所期通りの変位及び振動を起こすように、区画壁102aの上端面である圧力室102の上面と振動層111の下面との距離を拡げる役割を有している。したがって、中間層113を設けずに、区画壁102aの上端面に直接振動層111を支持させる構成を採る場合もある。
次に、図5〜図9を参照して、図2に示すICチップEを除く要部、つまり、図3に示す圧力室部材A、アクチュエータ部B、インク流路部材C及びノズル板Dからなるインクジェットヘッドの製造方法について説明する。
図5は、図2に示すインクジェットヘッドの製造手順(積層工程、圧力室用開口部の形成工程及び接着剤の付着工程)を説明する断面図である。図5(a)に示すように、基板120上に、順次、密着層121、第1の電極層103、圧電体層110、第2の電極層112、振動層111、中間層(最終的には縦壁になる)113をスパッタリング法によって成膜して積層する。
なお、密着層121は、実施の形態1にて説明した密着層12と同様であって、基板120と第1の電極層103との密着性を高めるために両者間に介在させてある。つまり、密着層121は、必須のものではない。後述するように、密着層121は、基板120と同様に除去される。
ここで、基板120は、成膜用の基板、つまり、1つの圧電体薄膜素子を作製する単位となる基板である。この基板120は、実施の形態1にて説明した基板11と同様であって、シリコン(Si)基板や、ガラス基板、金属基板、セラミックス基板のいずれで構成してもよい。そして、形状は、実施例1にて示したように適宜厚さの円盤状でもよいが、ここでは、基板120には、例えば厚さ18mmの四角形状に切り落としたSi基板を用いた。
そして、密着層121、第1の電極層103、圧電体層110、および第2の電極層112は、上記した実施例1と同様の方法で作製し、圧電体層110は、実施例1にて説明した内容のPb組成量が異なる層の積層構成になっている。ここでは、追加要素である振動層111及び中間層113の材料と作製方法とを説明する。
即ち、振動層111は、Cr、ニッケル、アルミニウム、タンタル、タングステン、シリコン等の単体又はこれらの酸化物若しくは窒化物(例えば二酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、窒化シリコン)等のいずれか一つ、例えばCrターゲットを用いて、真空度1Paのアルゴンガス中において基板120を室温に維持して200Wの高周波電力を6時間印加して膜厚3μmに成膜した。振動層111の膜厚は、2μm〜5μmの範囲内であればよい。
また、中間層113は、TiやCr等の導電性金属、例えばTiターゲットを用いて、真空度1Paのアルゴンガス中において基板120を室温に維持して200Wの高周波電力を5時間印加して膜厚5μmに成膜した。中間層113の膜厚は、3μm〜10μmの範囲内であればよい。
次に、図5(b)(c)及び図10に示すように圧力室部材Aを形成する。なお、図10は、成膜用基板と圧力室部材用基板との関係を説明する平面図である。図10に示すように、圧力室部材Aで使用する基板130は、必要数のSi基板120が搭載できる程度に大きいサイズのSiウェハ基板である。具体的には、基板130は、径が2インチ〜10インチの範囲内の適宜直径(ここでは4インチとした)の円盤状をしている。
圧力室部材Aは、このSi基板130を使用して形成される。具体的には、先ず、Si基板130に対して複数の圧力室用開口部101をパターンニングする。このパターンニングは、図5(b)から判るように、4つの圧力室用開口部101を1組として、各組を区画する区画壁102bの幅厚は、各組内の圧力室用開口部101を区画する区画壁102aの幅の約2倍に設定される。
その後、上記パターンニングされたSi基板130をケミカルエッチング又はドライエッチング等で加工して各組で4個の圧力室用開口部101を形成することで、圧力室部材Aを得る。
その後は、図5(c)に示すように、圧力室部材AとSi基板130とを接着剤にて接着する。この接着剤の形成は電着による。図5(c)において、まず、圧力室部材A側の接着面として圧力室の区画壁102a,102bの上面に接着剤114を電着によって付着させる。具体的には、図示しないが、区画壁102a,102bの上面に、下地電極膜として、光が透過する程度に薄い数百ÅのNi薄膜をスパッタ法によって形成し、その後、当該Ni薄膜上に、パターニングされた接着剤114を形成する。
ここで、電着液としては、アクリル樹脂系水分散液に0〜50重量部の純水を加え、良く攪拌混合した溶液を使用する。また、Ni薄膜の膜厚を光が透過するほど薄く設定するのは、Si基板130に接着樹脂が完全に付着したことを容易に視認できるようにするためである。電着条件は、実験によると、液温約25℃、直流電圧30V、通電時間60秒が好適である。この条件下で約3μm〜10μmのアクリル樹脂を、圧力室部材用Si基板130のNi薄膜上に電着形成する。
次に、図6は、図2に示すインクジェットヘッドの製造手順(成膜後の成膜用基板と圧力室部材との接着工程及び縦壁の形成工程)を説明する断面図である。図6(a)に示すように、上記のように積層された成膜用Si基板120の所定数と圧力室部材A(つまりSi基板130)とを上記のように電着された接着剤114を用いて接着する。この接着は、Si基板120に成膜された中間層113を基板側接着面として行う。
図10は、この状態を示している。図10に示す例では、Si基板120は18mm角の矩形状であるのに対し、Si基板130の盤面は、4インチサイズという大きな円形状をしているので、14個の成膜用Si基板120が圧力室部材Aで使用する1つのSi基板130に貼り付けられている。
この貼り付けは、図6(a)に示すように、各Si基板120の中心が圧力室部材Aの区画壁102bの中心に位置するように位置決めした状態で行われる。貼り付け後、圧力室部材AをSi基板120側に押圧、密着させて、両者の接着を液密性高くする。さらに、上記接着したSi基板120及び圧力室部材Aを加熱炉において徐々に昇温加熱して接着剤114を完全に硬化させる。続いて、図6(b)に示すように、プラズマ処理を行って接着剤114のうち、圧力室用開口部101内にはみ出した断片を除去する。また、圧力室部材Aの各区画壁102a,102bをマスクとして中間層113をエッチングし、各区画壁102a,102bの縦壁に連続するような所定形状に仕上げる。
なお、図6(a)では、成膜後のSi基板120と圧力室部材Aとを接着したが、圧力室用開口部101を形成しない段階の圧力室部材用Si基板130を成膜後のSi基板120と接着してもよい。
次に、図7は、図2に示すインクジェットヘッドの製造手順(成膜後の成膜用基板及び密着層の除去工程及び第1の電極層の個別化工程)を説明する断面図である。図7(a)に示すように、図6(b)とした後に、成膜後の成膜用基板120及び密着層121をエッチングによって除去する。その後、図7(b)に示すように、圧力室部材A上に位置する第1の電極層103について、フォトリソグラフィー技術を用いてエッチングして、各圧力室102に個別化する。
次に、図8は、図2に示すインクジェットヘッドの製造手順(圧電体層の個別化工程及び圧力室部材用基板の切断工程)を説明する断面図である。図8(a)に示すように、フォトリソグラフィー技術を用いて圧電体層110をエッチングして第1の電極層103と同様の形状に個別化する。これらエッチングでは、第1の電極層103及び圧電体層110が、圧力室102の各々の上方に位置し、かつ第1の電極層103及び圧電体層110の幅方向の中心が対応する圧力室102の幅方向の中心に対し高精度に一致するように形成される。
このように第1の電極層103及び圧電体層110を圧力室102毎に個別化した後、図8(b)に示すように、圧力室部材用基板(Si基板130)を各区画壁102bの部分で切断し、4つの圧力室102を持つ圧力室部材Aとその上面に固定されたアクチュエータ部Bとが4組完成する。
次に、図9は、図2に示すインクジェットヘッドの製造手順(インク流路部材及びノズル板の生成工程、インク流路部材とノズル板との接着工程、圧力室部材とインク流路部材との接着工程及び完成したインクジェットヘッド)を説明する断面図である。
その後、図9(a)に示すように、インク流路部材Cに共通液室105、供給口106及びインク流路107を形成するとともに、ノズル板Dにノズル孔108を形成する。次いで、図9(b)に示すように、インク流路部材Cとノズル板Dとを接着剤109を用いて接着する。
その後、図9(c)に示すように、圧力室部材Aの下端面又はインク流路部材Cの上端面に接着剤(図示せず)を転写し、圧力室部材Aとインク流路部材Cとのアライメント調整を行ってこの両者を上記接着剤により接着する。以上によって、図9(d)に示すように、圧力室部材A、アクチュエータ部B、インク流路部材C及びノズル板Dを持つインクジェットヘッドが完成する。
以上のようにして作製したインクジェットヘッドは、実施の形態1における実施例1による組成条件で作製した積層構成の圧電体薄膜(圧電体層)を有する圧電体薄膜素子を用いている。このインクジェットヘッドにおいて、第1の電極層103及び第の2電極層112間に、周波数が20kHzで波高値30Vの交流電圧を100日間印加し続けたが、インクの吐出不良は全くなく、吐出性能の低下は見られなかった。
一方、実施の形態1における実施例2による方法で作製した単層構成の圧電体薄膜(圧電体層)を有する圧電体薄膜素子を用いるインクジェットヘッドを作製し、このインクジェットヘッドについて同様の試験を実施したところ、全圧力室102に対応する部分でインク吐出不良が発生した。これは、インクの詰まり等ではないことから、アクチュエータ部B(圧電体薄膜素子)にクラックが発生しリーク電流が発生したと考えられる。
したがって、実施の形態1における実施例1による組成条件で作製した積層構成の圧電体薄膜(圧電体層)を有する圧電体薄膜素子を用いるこの実施の形態2によるインクジェットヘッドは、高湿度下での信頼性に優れていることが判る。
(実施の形態3)
図11は、本発明の実施の形態3によるインクジェットヘッドの主要部の構成を示す断面図である。この実施の形態3では、実施の形態2にて示した成膜用基板と圧力室部材用基板とを1つの基板で兼用する場合の構成例を示す。そのため、図11では、主要部として圧力室部材A及びアクチュエータ部Bに関わる部分を中心に示してある。
図11において、符号401は、成膜用基板と圧力室部材用基板とを兼用する基板であり、ここでは圧力室基板と称している。この圧力室基板401は、Si基板130で構成されている。
具体的には、圧力室基板401は、直径が4インチで厚さが200μmの円盤状をしたSi基板である。この圧力室基板401の片面(図示例では下面)にエッチング加工を施して圧力室402が形成されている。圧力室402は、側壁413で囲まれている。図11では、圧力室402は、1つ示すが、多数の圧力室402が側壁413で分離される形で配置されている。
側壁413の一端側面(図中下端側の面)には、ノズル孔410を有するノズル板412が各圧力室402の開口部を塞ぐように設けられている。そして、側壁413の他端側面(図中上端側の面)には、各圧力室402の天井を構成する振動層403、密着層404及び第1の電極層(共通電極)406がこの順に積層され、その上に、当該圧力室402用の圧電体薄膜素子を構成する圧電体層408及び第2の電極層(個別電極)409がこの順に積層されている。
密着層404、第1の電極層406、圧電体層408及び第2の電極層409の各構成材料は、実施の形態2にて説明した密着層121、第1の電極層103、圧電体層110及び第2の電極層112とそれぞれ同様である。また、圧電体層408の構造も圧電体層110と同様に、実施の形態1での実施例1にて説明した3層構成のものである。なお、密着層404は、振動層403と第1の電極層406との密着性を高めるものであり、密着性を問題としない場合には、実施の形態2における密着層121と同様に、設けなくともよい。
ここで、振動層403は、実施の形態2にて説明した材料、即ち、ニッケルやクロム等の単体又はその酸化物若しくは窒化物(例えば二酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、窒化シリコン)のいずれか一つ、例えば二酸化シリコンを膜厚2.8μmに成膜して形成した。なお、振動層111の膜厚は、0.5μm〜10μmの範囲内であればよい。
次に、この実施の形態3によるインクジェットヘッドの製造方法について説明する。ここでは、図12を参照して、主要部である図11に示す圧力室部材及びアクチュエータ部の製造方法について説明する。なお、図12は、図11に示す圧力室部材及びアクチュエータ部の製造手順(積層工程及び圧力室形成工程)を説明する断面図である。
図12(a)に示すように、まず、圧力室402が形成されていない圧力室基板401の上面に、振動層403、密着層404、第1の電極層406、圧電体層408及び第2の電極層409をスパッタ法により順次形成する。
振動層403は、二酸化シリコン焼結体のターゲットを用いて、真空度0.4Paのアルゴンと酸素との混合雰囲気(ガス体積比Ar:O2=5:25)中において、圧力室基板401を室温に維持して、300Wの高周波電力を8時間印加して2.8μmの膜厚に成膜した。振動層403の膜厚は、0.5μm〜10μmの範囲内であればよい。なお、この振動層403の成膜法としては、スパッタリング法に限らず、熱CVD法、プラズマCVD法、ゾルゲル法等であってもよく、圧力室基板401の熱酸化処理で形成する方法であってもよい。
密着層404は、Ti、タンタル、鉄、コバルト、ニッケル若しくはクロム又はそれら(Tiを含む)の化合物のいずれか一つ、例えばTiターゲットを用いて、真空度1Paのアルゴンガス中において、圧力室基板401を400℃に加熱しながら100Wの高周波電力を1分間印加して0.03μmの膜厚に成膜した。なお、密着層404の膜厚は、0.005μm〜0.1μmの範囲内であればよい。
第1の電極層406は、例えばPtターゲットを用い、真空度1Paのアルゴンガス中において基板120を600℃に加熱しながら200Wの高周波電力を12分間印加して0.2μmの膜厚に成膜した。この第1の電極層103は、実施の形態1における第1の電極層13と同様に、Pt、イリジウム、パラジウム及びルテニウムの群から選ばれた少なくとも1種の貴金属又はそれらの化合物であればよい。また、膜厚は、0.05μm〜2μmの範囲内であればよい。
圧電体層408は、実施例1と同様に、多元スパッタ装置を用いて作製した。作製方法やスパッタ条件は、実施例1と同様であり、菱面体晶系又は正方晶系のペロブスカイト型結晶構造を有するPZTを3層構造に成膜した。実施例1と同様に、<111>面に配向している。PZTのZr/Ti組成等に関しては、実施の形態1と同様である。
次に、以上のように積層構造に成膜した圧電体層の上に、第2の電極層409を、導電性材料である例えばPtターゲットを用いて、真空度1Paのアルゴンガス中の室温において、200Wの高周波電力を10分間印加して0.2μmの膜厚に成膜した。なお、膜厚は、0.1μm〜0.4μmの範囲内であればよい。
次いで、第2の電極層409の上に、レジストをスピンコートによって塗布し、圧力室402が形成されるべき位置に合わせて露光・現像を行ってパターニングする。そして、図12(b)に示すように、第2の電極層409、圧電体層408をエッチングして個別化する。このエッチングは、アルゴンとフッ素元素を含む有機ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングで行う。
そして、図12(b)に示すように、個別化した第2の電極層409、圧電体層408の配置位置直下の圧力室基板401に、下方に向けて開口する圧力室402をエッチングして形成する。この圧力室402の形成は、六フッ化硫黄ガス、フッ素元素を含む有機ガス又はこれらの混合ガスを使用した異方性ドライエッチングで行う。つまり、圧力室基板401の上記各膜を形成した上面とは反対側の下面において、上記各膜の幅方向両端位置を内端とする側壁413となる部分にエッチングマスクを形成して、異方性ドライエッチングによって、上記各膜の幅方向分の開口部を有する圧力室402を形成する。
そして、予めノズル孔410を形成したノズル板412を側壁413の下端面に接着剤を用いて接合することで、図11に示したインクジェットヘッドが完成する。
上記ノズル孔410は、リソグラフィ法、レーザー加工法、放電加工法等によって、ノズル板412の所定位置に開口する。ノズル板412を圧力室基板401の側壁413の下端面に接合する際に、各ノズル孔410が圧力室402の開口中央などの適切な位置に配置されるように位置合わせを行う。
上記のようにして得られたインクジェットヘッドの第1及び第2電極層406,409間に、周波数が20kHzで波高値30Vの交流電圧を100日間印加し続けたが、インクの吐出不良は全くなく、吐出性能の低下は見られなかった。
一方、実施の形態1における実施例2による方法で作製した単層構成の圧電体薄膜(圧電体層)を有する圧電体薄膜素子を用いるインクジェットヘッドを作製し、このインクジェットヘッドについて同様の試験を実施したところ、全圧力室402に対応する部分でインク吐出不良が発生した。これは、インクの詰まり等ではないことから、アクチュエータ部B(圧電体薄膜素子)にリーク電流が発生したことによると考えられる。
したがって、実施の形態1における実施例1による組成条件で作製した積層構成の圧電体薄膜(圧電体層)を有する圧電体薄膜素子を用いるこの実施の形態3によるインクジェットヘッドは、高湿度環境下での信頼性に優れていることが解る。
(実施の形態4)
この実施の形態4では、実施の形態2または3によるインクジェットヘッドを用いたインクジェット式記録装置の構成例を示す。端的には、このインクジェット式記録装置は、実施の形態1における実施例1による組成条件で作製した3層構成の圧電体薄膜(圧電体層)を有する圧電体薄膜素子を用いる実施の形態2または3によるインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドと記録媒体とを相対移動させる相対移動手段とを備え、前記相対移動手段にて前記インクジェットヘッドが記録媒体に対して相対移動しているときに、前記インクジェットヘッドにおいて圧力室に連通するように設けたノズル孔から前記圧力室のインクを記録媒体に吐出させて記録を行うように構成される。以下、具体的な構成例(図13)を示す。
図13は、本発明の実施の形態4によるインクジェット記録装置の構成を示す概略斜視図である。図13に示すインクジェット記録装置27は、実施の形態2または3によるインクジェットヘッド28を備えている。このインクジェットヘッド28において圧力室(実施の形態2における圧力室102)に連通するように設けたノズル孔(実施の形態2におけるノズル孔108)から当該圧力室内のインクを記録用紙等の記録媒体29に吐出させて記録を行うように構成されている。
インクジェットヘッド28は、主走査方向Xに延びるキャリッジ軸30に設けられたキャリッジ31に搭載され、このキャリッジ31がキャリッジ軸30に沿って往復動するのに応じて主走査方向Xに往復動するように構成されている。このことで、キャリッジ31は、インクジェットヘッド28と記録媒体29とを主走査方向Xに相対移動させる相対移動手段を構成することになる。
また、このインクジェット式記録装置27は、記録媒体29をインクジェットヘッド28の主走査方向X(幅方向)と略垂直方向の副走査方向Yに移動させる複数のローラ32を備えている。このことで、複数のローラ32は、インクジェットヘッド28と記録媒体29とを副走査方向Yに相対移動させる相対移動手段を構成することになる。なお、図13中、Zは上下方向である。
そして、インクジェットヘッド28がキャリッジ31によって主走査方向Xに移動しているときにインクジェットヘッド28のノズル孔からインクを記録媒体29に吐出させ、この一走査の記録が終了すると、上記ローラ32によって記録媒体29を所定量移動させて次の一走査の記録を行うように、上記相対移動手段が制御される。
このように、実施の形態4によるインクジェット式記録装置は、実施の形態1における実施例1による組成条件で作製した3層構成の圧電体薄膜(圧電体層)を有する圧電体薄膜素子を用いる実施の形態2または3によるインクジェットヘッド28を備えるので、良好な印字性能及び耐久性を有することができる。
なお、この明細書では、実施の形態1による圧電体薄膜素子の好適な適用例として、インクジェットヘッド及びインクジェット式記録装置への適用例を示したが、この発明はこれに限定されるものではなく、薄膜コンデンサ、不揮発性メモリ素子の電荷蓄積キャパシタ、各種アクチュエータ、赤外センサー、超音波センサー、圧力センサー、角速度サンセー、加速度センサー、流量センサー、ショックセンサー、圧電トランス、圧電点火素子、圧電スピーカー、圧電マイクロフォン、圧電フィルタ、圧電ピックアップ、音叉発振子、遅延線等にも適用可能である。特に、例えば(特許文献6)に開示されるディスク装置用薄膜圧電体アクチュエータに好適である。
以上のように、この発明にかかる圧電体薄膜素子は、優れた圧電性能を有し、かつ高湿度環境下において高電圧で駆動しても絶縁性の低下させずに高い信頼性を得るのに有用であり、特に、インクジェットヘッド及びインクジェット式記録装置の耐久性能を向上させるのに好適である。
本発明の実施の形態1による圧電体薄膜素子の構成を示す断面図 本発明の実施の形態2によるインクジェットヘッドの全体構成を示す外観図 図2に示すインクジェットヘッドの要部の構成を示す斜視図 図2に示すインクジェットヘッドの要部であるアクチュエータ部の構成を示す断面図 図2に示すインクジェットヘッドの製造手順(積層工程、圧力室用開口部の形成工程及び接着剤の付着工程)を説明する断面図 図2に示すインクジェットヘッドの製造手順(成膜後の成膜用基板と圧力室部材との接着工程及び縦壁の形成工程)を説明する断面図 図2に示すインクジェットヘッドの製造手順(成膜後の成膜用基板及び密着層の除去工程及び第1の電極層の個別化工程)を説明する断面図 図2に示すインクジェットヘッドの製造手順(圧電体層の個別化工程及び圧力室部材用基板の切断工程)を説明する断面図 図2に示すインクジェットヘッドの製造手順(インク流路部材及びノズル板の生成工程、インク流路部材とノズル板との接着工程、圧力室部材とインク流路部材との接着工程及び完成したインクジェットヘッド)を説明する断面図 図5に示す製造過程で成膜された基板(成膜用基板)と圧力室部材で用いる基板(圧力室部材用基板)との関係を説明する平面図 本発明の実施の形態3によるインクジェットヘッドにおける主要部(圧力室部材及びアクチュエータ部)を示す断面図 図11に示す圧力室部材及びアクチュエータ部の製造手順(積層工程及び圧力室形成工程)を説明する断面図 本発明の実施の形態4によるインクジェット記録装置の構成を示す概略斜視図
符号の説明
11 基板
12 密着層
13 第1の電極層
14 圧電体層
14a(1〜3) 圧電体層
14b(1,2) 圧電体層
15 第2の電極層
27 インクジェット式記録装置
28 インクジェットヘッド
29 記録媒体
30 キャリッジ軸
31 キャリッジ(相対移動手段)
50 薄膜アクチュエータ
51 支持部
52 密着層
53 第1の電極層
54 圧電体層
55 第2の電極層
100 インクジェットヘッド
101 開口部
102 圧力室
102a,102b 区画壁
103 第1の電極層(個別電極)
105 共通液室
106 供給口
107 インク流路
108 ノズル孔
109 接着剤
110 圧電体層
111 振動層
112 第2の電極層(共通電極)
113 中間層(縦壁)
114 接着剤
120 基板(成膜用)
121 密着層
130 基板(圧力室部材用)
401 圧力室基板(兼用基板)
402 圧力室
403 振動層
404 密着層
406 第1の電極層(共通電極)
408 圧電体層
409 第2の電極層(個別電極)
410 ノズル孔
412 ノズル板
413 側壁
A 圧力室部材
B アクチュエータ部
C インク流路部材
D ノズル板
E ICチップ

Claims (9)

  1. ペロブスカイト型結晶構造を有するPbを含む酸化物で成膜した圧電体層と、前記圧電体層の厚み方向両側の層面それぞれに成膜した電極層とを備えている圧電体薄膜素子において、
    前記圧電体層は、一方の電極層と他方の電極層との間の成膜構造が化学量論組成と比較してPb組成量の多い層と化学量論組成と比較してPb組成量の少ない層との積層構造であることを特徴とする圧電体薄膜素子。
  2. 前記圧電体層は、<111>面または<001>面のいずれかに優先配向し、その配向率は、化学量論組成と比較してPb組成量の多い層の方が化学量論組成と比較してPb組成量の少ない層よりも高いことを特徴とする請求項1に記載の圧電薄膜素子。
  3. 前記圧電体層は、引張り応力の場合には、その絶対値は化学量論組成と比較してPb組成量の多い層の方が化学量論組成と比較してPb組成量の少ない層よりも小さく、圧縮応力の場合には、その絶対値は化学量論組成と比較してPb組成量の多い層の方が化学量論組成と比較してPb組成量の少ない層よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の圧電薄膜素子。
  4. 前記圧電体層の圧電定数は、化学量論組成と比較してPb組成量の多い層の方が化学量論組成と比較してPb組成量の少ない層よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の圧電薄膜素子。
  5. 前記圧電体層の比誘電率は、化学量論組成と比較してPb組成量の多い層の方が化学量論組成と比較してPb組成量の少ない層より大きいことを特徴とする請求項1に記載の圧電薄膜素子。
  6. 前記圧電体層は、柱状構造を有し、その粒子径は化学量論組成と比較してPb組成量の多い層の方が化学量論組成と比較してPb組成量の少ない層よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の圧電薄膜素子。
  7. 前記圧電体層は、化学量論組成と比較してPb組成量の少ない層の厚みが0.1μm〜1μmの範囲内であり、結晶粒径が0.1以上であるであることを特徴とする請求項1に記載の圧電薄膜素子。
  8. 請求項1に記載の圧電体薄膜素子と、
    前記圧電体薄膜素子のいずれか一方の電極層側の面に設けられた振動板層と、
    前記振動板層の前記圧電体薄膜素子とは反対側の面に接合され、前記圧電体薄膜素子の圧電効果による前記振動板層の層厚方向への変位に応じてインク吐出を行う圧力室と、
    を備えていることを特徴とするインクジェットヘッド。
  9. 請求項8に記載のインクジェットヘッドと、
    前記インクジェットヘッドと記録媒体とを相対移動させる相対移動手段と、
    前記相対移動手段によってインクジェットヘッドが記録媒体に対して相対移動しているときに、前記インクジェットヘッドにおいて圧力室に連通するように設けたノズル孔から前記圧力室のインクを記録媒体に吐出させて記録を行うように前記インクジェットヘッドが備える請求項1に記載の圧電体薄膜素子を駆動する手段と、
    を備えていることを特徴とするインクジェット式記録装置。
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