JP2005119166A - 圧電素子、インクジェットヘッド、及びこれらの製造方法、並びにインクジェット式記録装置 - Google Patents

圧電素子、インクジェットヘッド、及びこれらの製造方法、並びにインクジェット式記録装置

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JP2005119166A JP2003357391A JP2003357391A JP2005119166A JP 2005119166 A JP2005119166 A JP 2005119166A JP 2003357391 A JP2003357391 A JP 2003357391A JP 2003357391 A JP2003357391 A JP 2003357391A JP 2005119166 A JP2005119166 A JP 2005119166A
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Akiyuki Fujii
映志 藤井
Atsushi Tomosawa
淳 友澤
Satoru Fujii
覚 藤井
Takeshi Kamata
健 鎌田
Hideo Torii
秀雄 鳥井
Hiroshi Hirasawa
拓 平澤
Akiko Murata
晶子 村田
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Abstract

【課題】 Si基板のような安価な基板11を用いることにより、低コストで、しかも耐電圧特性が優れた高信頼性の圧電素子が得られるようにする。
【解決手段】 基板11上に、チタン、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、銅、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びこれらの酸化物の群から選ばれた少なくとも1種の添加物が添加された貴金属からなる第1の電極層14を設け、この第1の電極層14上に、(100)面又は(001)面に優先配向した立方晶系又は正方晶系のペロブスカイト型酸化物からなる配向制御層15を設ける。そして、この配向制御層15上に、(100)面に優先配向した正方晶系のペロブスカイト型酸化物からなりかつ厚み方向と垂直な方向に作用している残留応力が0ないし圧縮応力である圧電体層16を設ける。
【選択図】 図1

Description

本発明は、電気機械変換機能を呈する圧電素子、この圧電素子を用いたインクジェットヘッド、及びこれらの製造方法、並びに上記インクジェットヘッドを印字手段として備えたインクジェット式記録装置に関する技術分野に属する。
近年、電子機器の小型化に伴って、圧電材料を用いた圧電素子に対しても小型化が強く要求されるようになってきている。そして、この要求を満足させるために、圧電素子を、従来より多く使用されてきた焼結体に比べて体積を著しく小さくできる薄膜の形態で使用しつつあり、このような圧電素子に対する薄膜化の研究開発が盛んになってきている。
圧電素子として用いられている材料は、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(ZrXTi1-X)O3(0<X<1);以下、PZTと表記する)である。このペロブスカイト型結晶構造を有するPZT材料に対する薄膜化の取り組みは数多くなされている。例えば、スパッタ法を用いて、結晶方位(100)面が表面に出るように切り出したNaCl型結晶構造の酸化マグネシウム(MgO)からなる単結晶の基板を用い、この基板上に、下部電極として(100)面に配向したPt電極薄膜を形成し、このPt電極上に、その表面に対して垂直な方向に(001)面配向すなわちc軸配向した正方晶系PZT薄膜を600〜700℃の温度で形成している(例えば、非特許文献1、特許文献1参照)。この場合、PZT薄膜を形成する前に、PZT薄膜の下地層としてZrが存在しないPbTiO3や(Pb,La)TiO3からなる膜厚0.1μmの圧電体層を、(100)面に配向したPt電極上に形成しておいて、その上に膜厚2.5μmのPZT薄膜をスパッタ法により形成すると、PZT薄膜形成の初期にZr酸化物からなる結晶性の低い層が形成され難くなり、より高い結晶性のPZT薄膜が得られ、その結果、優れた圧電特性となる。
上記MgO単結晶基板の線膨張係数は、約120×10-7/℃であって、PZT薄膜(約60×10-7/℃)よりもかなり大きいので、600〜700℃の高温での成膜後の冷却課程で、PZT薄膜はMgO基板から厚み方向と垂直な方向に圧縮応力を受け、この結果、PZT薄膜において厚み方向と垂直な方向に作用している残留応力が圧縮応力となる。これにより、MgO単結晶基板上に形成したPZT薄膜は優れた耐電圧特性を有する。すなわち、PZT薄膜は引張力に弱いため、PZT薄膜を用いた圧電素子は、インクジェットヘッドのインク吐出用アクチュエーター等として用いられる場合、通常、PZT薄膜の厚み方向に電圧を印加してPZT薄膜を厚み方向と垂直な方向に収縮させることで厚み方向に撓ませるようにしている。したがって、PZT薄膜が厚み方向と垂直な方向に圧縮応力を有する場合には、電圧印加前に厚み方向と垂直な方向に収縮しているため、高電圧を印加しても、クラック等が発生することなく厚み方向と垂直な方向に更に収縮し、優れた耐電圧特性を有する。一方、逆に引張応力を有する場合には、電圧印加前に厚み方向と垂直な方向に伸びているため、低電圧を印加するだけでも、PZT薄膜にクラック等が発生し易く、耐電圧特性が劣ってしまう。
ところが、上記のPZT薄膜の成膜方法では、下地基板として高価なMgO単結晶基板を用いるため、圧電素子が高価になってしまい、この圧電素子を用いたインクジェットヘッドも高価になってしまうという問題がある。また、基板材料もMgO単結晶の一種類に制限されてしまうという欠点がある。
そこで、シリコン等の安価な基板の上に結晶性の良好なPZT等のペロブスカイト型圧電材料を形成する方法として、種々の工夫がなされている。多くの場合、菱面体晶系ペロブスカイト型酸化物において(100)面に優先配向させることにより結晶性を向上させ、良好な圧電特性を得ている。例えば、特許文献2には、(111)面に配向したPt電極上に、PZT又はランタンを含有したPZTの前駆体溶液を塗布し、この前駆体溶液を結晶化させる前に、先ず450〜550℃で熱分解させ、その後550〜800℃で加熱処理して結晶化させること(ゾル・ゲル法)により、菱面体晶系(100)面優先配向した結晶性の良好なPZT膜を生成させることにより可能であることが示されている。
また、特許文献3には、イリジウム下部電極上に極薄のチタン層を形成することにより、その上に形成するPZT膜の結晶性や結晶配向性を制御できることが開示されている。この方法は、シリコン等の基板上に酸化ジルコニウムを主成分とする下地層を形成し、この下地層上にイリジウムを含有する下部電極を形成し、この下部電極上に極薄のチタン層を積層し、このチタン層上に、圧電特性を有する強誘電体を構成する、金属元素及び酸素元素を含む非晶質の圧電体前駆体薄膜を形成し、この非晶質の薄膜を高温で熱処理する方法で結晶化させること(ゾル・ゲル法)により、ペロブスカイト型圧電体薄膜に変化させる製造方法である。この製造方法では、チタン層の膜厚によりPZT等の圧電体薄膜の結晶配向性の制御が可能であり、チタン層膜厚を2〜10nmとすると、結晶性の良好な菱面体晶系(100)面配向膜が得られる。
さらに、特許文献4には、ゾル・ゲル法を用いて圧電体薄膜を形成する際、(111)面配向のPt電極上に4〜6nmのチタン層を形成し、このチタン層のチタンが酸化した酸化チタンを核にすることで、結晶性の良好な菱面体晶系(100)面配向のPZT膜が得られることが開示されている。
特開平10−209517号公報 特許第3021930号公報 特開2001−88294号公報 特開平11−191646号公報 "ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス (Journal of Applied Physics)",(米国),アメリカ物理学会, 1989年2月15日,第65巻,第4号,p.1666-1670
しかし、上記いずれの方法においても、高価なMgO単結晶基板を用いない方法としては優れているものの、Si基板の線膨張係数(約30×10-7/℃)がPZT膜よりも小さいので、高温での成膜後又は高温での熱処理後の冷却課程で、PZT膜がSi基板から厚み方向と垂直な方向に引張応力を受け、この結果、PZT膜において厚み方向と垂直な方向に作用している残留応力が引張応力となり、上記の如く耐電圧特性が劣ってしまうという問題がある。
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、Si基板のような安価な基板を用いることにより、低コストで、しかも耐電圧特性が優れた高信頼性の圧電素子が得られるようにすることにある。
上記の目的を達成するために、この発明では、電極層を、チタン、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、銅、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びこれらの酸化物の群から選ばれた少なくとも1種の添加物が添加された貴金属で構成しておき、この電極層上に、立方晶系又は正方晶系のペロブスカイト型酸化物からなる配向制御層を形成し、この配向制御層上に、正方晶系のペロブスカイト型酸化物からなる圧電体層を形成するようにするとともに、上記配向制御層を形成する際に、電極層における配向制御層側の表面部に位置する上記添加物を核にしてその上側に結晶成長させることにより、該配向制御層を(100)面又は(001)面に優先配向させるようにし、この配向制御層により圧電体層を(100)面に優先配向させ、かつ正方晶系ペロブスカイト型酸化物における(100)面優先配向により、圧電体層において厚み方向と垂直な方向に作用している残留応力が0ないし圧縮応力となるようにした。
具体的には、請求項1の発明では、基板上に設けられた第1の電極層と、該第1の電極層上に設けられた配向制御層と、該配向制御層上に設けられた圧電体層と、該圧電体層上に設けられた第2の電極層とを備えた圧電素子を対象とする。
そして、上記第1の電極層は、チタン、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、銅、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びこれらの酸化物の群から選ばれた少なくとも1種の添加物が添加された貴金属からなり、上記配向制御層は、立方晶系又は正方晶系の(100)面又は(001)面に優先配向したペロブスカイト型酸化物からなり、上記圧電体層は、正方晶系の(100)面に優先配向したペロブスカイト型酸化物からなっており、上記圧電体層において厚み方向と垂直な方向に作用している残留応力が、0ないし圧縮応力であるものとする。
上記の構成により、第1の電極層である貴金属膜に、チタン等の添加物を添加することで、基板と第1の電極層との密着性を向上させることができて、圧電素子の製造時における膜剥離を防止することができるとともに、この第1の電極層上に配向制御層をスパッタ法等により形成すれば、第1の電極層が(111)面配向であったとしても、配向制御層が(100)面又は(001)面(立方晶系の場合は(100)面と(001)面とは同じである)に配向し易くなる。すなわち、第1の電極層の表面部には、添加物が島状に点在しており、この添加物であるチタン等は酸化し易くて酸化物の形態で添加しなくても、配向制御層を形成する際等において酸素が存在すれば、その表面部に点在する添加物は酸化物となる。そして、配向制御層は、この島状に点在する添加物(酸化物)を核にしてその上側に結晶成長し、これにより、添加物上において(100)面又は(001)面に配向し易くなる。一方、第1の電極層は、シリコン等の基板を用いる場合には、通常、(111)面配向になっており、このため、配向制御層において第1の電極層の表面部における添加物が存在しない部分の上側領域では、(100)面及び(001)面以外の面配向(例えば(111)面配向)になったりアモルファスになったりする。しかし、このような(100)面や(001)面配向になっていない領域は、配向制御層における第1の電極層側の表面近傍部(当該表面からせいぜい20nm程度までの範囲)にしか存在しない。つまり、上記添加物上の(100)面又は(001)面配向の領域がその結晶成長に連れて広がるため、層厚方向と垂直な断面における該領域の面積が、第1の電極層側からその反対側(圧電体層側)に向かって大きくなり、これにより、(100)面や(001)面配向になっていない領域は小さくなって、配向制御層の厚みが20nm程度となった段階では略全体が(100)面又は(001)面配向の領域となる。この配向制御層上に、圧電体層をスパッタ法等により形成すれば、その圧電体層を(100)面に容易に優先配向させることができ、これにより、結晶性の良好な圧電体層が得られる。そして、上記圧電体層を菱面体晶系ではなくて、正方晶系とすることにより、シリコン等の基板上に形成した場合においても、厚み方向と垂直な方向に作用している残留応力を0ないし圧縮応力とすることができる。そのメカニズムを以下に説明する。
圧電体層におけるペロブスカイト型結晶構造の圧電材料(特にPZT)は、300〜400℃にキュリー温度を持ち、その結晶系は、キュリー温度よりも高温では立方晶系であり、キュリー温度よりも低温ではZr/Ti組成により菱面体晶系又は正方晶系となる。このため、高温での成膜時(600〜700℃)には立方晶系であるが、成膜後の冷却課程で、正方晶系又は菱面体晶系となる。菱面体晶系の場合には、単位セルにおけるx方向、y方向及びz方向のそれぞれの稜の長さa1,a2,a3は全て同じ値であり(a1=a2=a3)、稜間角度も全て同じ値である(α=β=γ<90°)。そして、シリコンのように線膨張係数が圧電材料よりも小さな基板を用いて成膜すると、成膜後の室温では、圧電体層は基板から引張応力を受ける。一方、正方晶系の場合には、単位セルにおけるx方向、y方向及びz方向のそれぞれの稜の長さa1,a2,a3は全て同じ値ではなくて、a3がa1及びa2とは異なる(a1=a2<a3)。尚、稜間角度は全て同じ値である(α=β=γ=90°)。ここで、a1及びa2は等価であってa軸と呼ばれ、a3はc軸と呼ばれる。そして、正方晶系でかつ(100)面配向(a軸配向)の場合には、立方晶系から正方晶系に相転移する際、a軸は縮み、c軸は伸びる。この相転移の際に短くなるa軸が膜厚方向に向くため、圧電体層は厚み方向に縮み、厚み方向と垂直な方向には平均的に伸びることになる。その伸びが、線膨張係数の違いによりシリコン等の基板から受ける引張応力を打ち消し、結果的に厚み方向と垂直な方向に作用している残留応力を0ないし圧縮応力とすることができる。この結果、優れた耐電圧特性を有する圧電素子が得られる。
このように、高価なMgO単結晶基板を用いなくても、厚み方向と垂直な方向に作用している残留応力が0ないし圧縮応力となる結晶性・配向性が良好な圧電体層が容易に得られ、この結果、Si基板を初め、ガラス基板、金属基板、セラミックス基板等のように、線膨張係数が圧電材料よりも小さい安価な基板を用いて圧電素子を製造することで、その製造コストを低減することができる。
請求項2の発明では、請求項1の発明において、配向制御層は、ジルコニウムの含有量が0以上20モル%以下でありかつ鉛の含有量が化学量論組成と比較して0を越え30モル%以下過剰であるチタン酸ランタンジルコン酸鉛、又は該チタン酸ランタンジルコン酸鉛にマグネシウム及びマンガンの少なくとも一方を添加したものからなるものとする。
このようなチタン酸ランタンジルコン酸鉛(PLZT;ジルコニウムの含有量が0である場合のチタン酸ランタン鉛(PLT)を含む)を配向制御層に用いれば、配向制御層が(100)面又は(001)面により一層配向し易くなり、延いては圧電体層の結晶性・配向性を向上させることができる。しかも、このようにジルコニウムの含有量を20モル%以下とすると、結晶成長初期にZr酸化物からなる結晶性が低い層が形成され難く、また鉛の含有量を化学量論組成と比較して0を越え30モル%以下過剰とすることで、配向制御層の結晶性の低下を確実に抑制することができる。よって、圧電体層の結晶性や配向性を確実に向上させることができて、圧電素子の圧電特性及び耐電圧特性をより一層向上させることができる。
請求項3の発明では、請求項2の発明において、チタン酸ランタンジルコン酸鉛におけるランタンの含有量が0を越え25モル%以下であるものとする。
また、請求項4の発明では、請求項2又は3の発明において、チタン酸ランタンジルコン酸鉛にマグネシウム及びマンガンの少なくとも一方を添加する場合のトータル添加量は、0を越え10モル%以下であるものとする。
これら請求項3又は4の発明により、配向制御層の結晶性の低下をより有効に抑えることができる。
請求項5の発明では、請求項1〜4のいずれか1つの発明において、第1の電極層は、白金、イリジウム、パラジウム及びルテニウムの群から選ばれた少なくとも1種の貴金属からなり、該貴金属に添加された添加物の添加量が0を越え30モル%以下であるものとする。
このことにより、圧電素子の各膜をスパッタ法等に形成する際の温度に十分に耐えられるとともに、電極として適切な材料とすることができる。また、添加物の添加量は、30モル%を越えると配向制御層(延いては圧電体層)の結晶性及び配向性が低下するので、このように30モル%以下とするのがよい。
ここで、上記添加物は第1の電極層に添加含有したものであり、第1の電極層の上側に積極的に設けたものではないため、第1の電極層における配向制御層側の表面部に位置する上記添加物は、第1の電極層における配向制御層側の表面から突出することは殆どなく、突出したとしてもその突出量は2nm以下である。これにより、上述の如く、配向制御層が(100)面又は(001)面に配向し易くなる。
請求項6の発明では、請求項1〜5のいずれか1つの発明において、圧電体層は、チタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする圧電材料からなるものとする。
こうすることで、圧電特性が良好な圧電材料とすることができ、高性能の圧電素子が得られる。
請求項7の発明では、請求項1〜6のいずれか1つの発明において、基板と第1の電極層との間に、該基板と第1の電極層との密着性を高める密着層が設けられているものとする。
このことにより、基板と第1の電極層との密着性をさらに向上させることができ、圧電素子の製造時における膜剥離を確実に防止することができる。
請求項8の発明は、第1の電極層と配向制御層と圧電体層と第2の電極層とが順に積層されてなる圧電素子と、該圧電素子の第2の電極層側の面に設けられた振動層と、該振動層の圧電素子とは反対側の面に接合され、インクを収容する圧力室を有する圧力室部材とを備え、上記圧電素子の圧電体層の圧電効果により上記振動層を層厚方向に変位させて上記圧力室内のインクを吐出させるように構成されたインクジェットヘッドの発明である。
そして、この発明では、上記圧電素子の第1の電極層は、チタン、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、銅、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びこれらの酸化物の群から選ばれた少なくとも1種の添加物が添加された貴金属からなり、上記配向制御層は、立方晶系又は正方晶系の(100)面又は(001)面に優先配向したペロブスカイト型酸化物からなり、上記圧電体層は、正方晶系の(100)面に優先配向したペロブスカイト型酸化物からなっており、上記圧電体層において厚み方向と垂直な方向に作用している残留応力が、0ないし圧縮応力であるものとする。
この発明により、基板上に、第1の電極層、配向制御層、圧電体層、第2の電極層及び振動層をスパッタ法等により順次形成して、この振動層に圧力室部材を接合した後に上記基板を除去するようにすれば、請求項1の発明と同様の構成の圧電素子を備えたインクジェットヘッドが得られ、その圧電素子の耐電圧特性を向上させることができる。よって、耐久性に優れたインクジェットヘッドが得られる。
請求項9の発明では、第1の電極層と配向制御層と圧電体層と第2の電極層とが順に積層されてなる圧電素子と、該圧電素子の第1の電極層側の面に設けられた振動層と、該振動層の圧電素子とは反対側の面に接合され、インクを収容する圧力室を有する圧力室部材とを備え、上記圧電素子の圧電体層の圧電効果により上記振動層を層厚方向に変位させて上記圧力室内のインクを吐出させるように構成されたインクジェットヘッドを対象とする。
そして、上記圧電素子の第1の電極層は、チタン、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、銅、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びこれらの酸化物の群から選ばれた少なくとも1種の添加物が添加された貴金属からなり、上記配向制御層は、立方晶系又は正方晶系の(100)面又は(001)面に優先配向したペロブスカイト型酸化物からなり、上記圧電体層は、正方晶系の(100)面に優先配向したペロブスカイト型酸化物からなっており、上記圧電体層において厚み方向と垂直な方向に作用している残留応力が、0ないし圧縮応力であるものとする。
このことにより、圧力室部材を基板として、その上に、振動層、第1の電極層、配向制御層、圧電体層及び第2の電極層をスパッタ法等により順次形成するようにすれば、請求項8の発明と同様の作用効果を有するインクジェットヘッドが得られる。
請求項10の発明は、基板上に、チタン、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、銅、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びこれらの酸化物の群から選ばれた少なくとも1種の添加物が添加された貴金属からなる第1の電極層をスパッタ法により形成する工程と、上記第1の電極層上に、立方晶系又は正方晶系のペロブスカイト型酸化物からなる配向制御層をスパッタ法により形成する工程と、上記配向制御層上に、正方晶系のペロブスカイト型酸化物からなる圧電体層をスパッタ法により形成する工程と、上記圧電体層上に第2の電極層を形成する工程とを含む圧電素子の製造方法の発明である。
そして、この発明では、上記配向制御層を形成する工程は、上記第1の電極層における配向制御層側の表面部に位置する上記添加物を核にしてその上側に結晶成長させることにより、該配向制御層を(100)面又は(001)面に優先配向させる工程であり、上記圧電体層を形成する工程は、上記配向制御層により該圧電体層を(100)面に優先配向させ、かつ該圧電体層において厚み方向と垂直な方向に作用する残留応力を0ないし圧縮応力とする工程であるものとする。
この発明により、請求項1の発明と同様の作用効果を有する圧電素子を容易に製造することができる。
請求項11の発明は、第1の電極層と配向制御層と圧電体層と第2の電極層とが順に積層されてなる圧電素子を備え、該圧電素子の圧電体層の圧電効果により振動層を層厚方向に変位させて圧力室内のインクを吐出させるように構成されたインクジェットヘッドの製造方法の発明である。
そして、この発明では、基板上に、チタン、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、銅、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びこれらの酸化物の群から選ばれた少なくとも1種の添加物が添加された貴金属からなる第1の電極層をスパッタ法により形成する工程と、上記第1の電極層上に、立方晶系又は正方晶系のペロブスカイト型酸化物からなる配向制御層をスパッタ法により形成する工程と、上記配向制御層上に、正方晶系のペロブスカイト型酸化物からなる圧電体層をスパッタ法により形成する工程と、上記圧電体層上に第2の電極層を形成する工程と、上記第2の電極層上に、振動層を形成する工程と、上記振動層の第2の電極層とは反対側の面に、圧力室を形成するための圧力室部材を接合する工程と、上記接合工程後に、上記基板を除去する工程とを含み、上記配向制御層を形成する工程は、上記第1の電極層における配向制御層側の表面部に位置する上記添加物を核にしてその上側に結晶成長させることにより、該配向制御層を(100)面又は(001)面に優先配向させる工程であり、上記圧電体層を形成する工程は、上記配向制御層により該圧電体層を(100)面に優先配向させ、かつ該圧電体層において厚み方向と垂直な方向に作用する残留応力を0ないし圧縮応力とする工程であるものとする。
このことにより、請求項8の発明と同様の作用効果を有するインクジェットヘッドを容易に製造することができる。
請求項12の発明では、第1の電極層と配向制御層と圧電体層と第2の電極層とが順に積層されてなる圧電素子を備え、該圧電素子の圧電体層の圧電効果により振動層を層厚方向に変位させて圧力室内のインクを吐出させるように構成されたインクジェットヘッドの製造方法を対象とする。
そして、圧力室を形成するための圧力室基板上に、振動層を形成する工程と、上記振動層上に、チタン、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、銅、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びこれらの酸化物の群から選ばれた少なくとも1種の添加物が添加された貴金属からなる第1の電極層をスパッタ法により形成する工程と、上記第1の電極層上に、立方晶系又は正方晶系のペロブスカイト型酸化物からなる配向制御層をスパッタ法により形成する工程と、上記配向制御層上に、正方晶系のペロブスカイト型酸化物からなる圧電体層をスパッタ法により形成する工程と、上記圧電体層上に第2の電極層を形成する工程と、上記圧力室基板に、圧力室を形成する工程とを含み、上記配向制御層を形成する工程は、上記第1の電極層における配向制御層側の表面部に位置する上記添加物を核にしてその上側に結晶成長させることにより、該配向制御層を(100)面又は(001)面に優先配向させる工程であり、上記圧電体層を形成する工程は、上記配向制御層により該圧電体層を(100)面に優先配向させ、かつ該圧電体層において厚み方向と垂直な方向に作用する残留応力を0ないし圧縮応力とする工程であるものとする。
このことで、請求項9の発明と同様の作用効果を有するインクジェットヘッドを容易に製造することができる。
請求項13の発明は、インクジェット式記録装置の発明であり、この発明では、請求項8又は9記載のインクジェットヘッドと、上記インクジェットヘッドと記録媒体とを相対移動させる相対移動手段とを備え、上記相対移動手段によりインクジェットヘッドが記録媒体に対して相対移動しているときに、該インクジェットヘッドにおいて圧力室に連通するように設けたノズル孔から該圧力室内のインクを記録媒体に吐出させて記録を行うように構成されているものとする。
この発明により、印字性能及び耐久性が極めて良好な記録装置が容易に得られる。
以上説明したように、本発明の圧電素子によると、基板上に、チタン、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、銅、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びこれらの酸化物の群から選ばれた少なくとも1種の添加物が添加された貴金属からなる第1の電極層を設け、この第1の電極層上に、(100)面又は(001)面に優先配向した立方晶系又は正方晶系のペロブスカイト型酸化物からなる配向制御層を設け、この配向制御層上に、(100)面に優先配向した正方晶系のペロブスカイト型酸化物からなりかつ厚み方向と垂直な方向に作用している残留応力が0ないし圧縮応力である圧電体層を設けるようにしたことにより、高い耐電圧特性を有する圧電素子が得られ、この圧電素子を用いる本発明のインクジェットヘッド及びインクジェット式記録装置において、インク吐出性能を長期に亘って優れたものとすることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態に係る圧電素子を示し、同図において11は、厚みが0.3mmのφ4インチシリコン(Si)ウエハからなる基板であり、この基板11上には、厚みが0.02μmであってチタン(Ti)からなる密着層12が形成されている。尚、上記基板11は、Siに限るものではなく、線膨張係数が後述の圧電体層16の圧電材料よりも小さいガラス基板や、金属基板、セラミックス基板等であってもよい。
上記密着層12上には、厚みが0.2μmであって1.6モル%のTiを添加したイリジウム(Ir)からなる第1の電極層14が形成されている。
上記第1の電極層14上には、ランタン(La)の含有量が12モル%でありかつ鉛の含有量が化学量論組成と比較して6モル%過剰である立方晶系又は正方晶系のペロブスカイト型結晶構造を有するPLTからなる配向制御層15が形成されている。この配向制御層15は(100)面又は(001)面に優先配向してなり、その膜厚は0.04μmである。
上記配向制御層15上には、厚みが1.5μmであって正方晶系のペロブスカイト型結晶構造を有するPZTからなる圧電体層16が形成されている。この圧電体層16は(100)面に優先配向してなる。上記PZTの組成は、正方晶系と菱面体晶系との境界(モルフォトロピック相境界)付近の組成(Zr/Ti=52/48)である。尚、圧電体層16におけるZr/Ti組成は、Zr/Ti=52/48に限らず、Zr/Ti=30/70〜55/45であれば、正方晶系とすることができる。また、圧電体層16の構成材料は、PZTにSr、Nb、Al等の添加物を含有したもの等のように、PZTを主成分とする圧電材料であればよく、PMNやPZNであってもよい。さらに、膜厚は、0.5〜5.0μmの範囲であればよい。
上記圧電体層16上には、厚みが0.2μmであってPtからなる第2の電極層17が形成されている。尚、第2の電極層17の材料はPtに限らず、導電性材料であればよく、膜厚は0.1〜0.4μmの範囲であればよい。
そして、この圧電素子は、上記基板11上に、密着層12、第1の電極層14、配向制御層15、圧電体層16及び第2の電極層17をスパッタ法により順次成膜して積層したものである。尚、成膜法はスパッタ法に限らず、熱処理による結晶化工程なしに直接に結晶性薄膜を形成する成膜法(例えばCVD法等)であればよい。また、密着層12及び第2の電極層17の成膜法は、ゾル・ゲル法等であってもよい。
上記密着層12は、上記基板11と第1の電極層14との密着性を高めるためのものであって、Tiに限らず、タンタル、鉄、コバルト、ニッケル若しくはクロム又はそれら(Tiを含む)の化合物で構成してもよい。また、膜厚は0.005〜1μmの範囲であればよい。この密着層12は必ずしも必要なものではなく、基板11上に第1の電極層14を直接に形成するようにしても、第1の電極層14にTiが添加含有されているので、基板11と第1の電極層14との密着性はかなり良好となる。
上記第1の電極層14は、電極としての役割を有するだけでなく、Tiを添加したことにより、上記配向制御層15を(100)面又は(001)面に優先配向させる役割をも担っており、このような添加物としては、チタン、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、銅、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びこれらの酸化物の群から選ばれた少なくとも1種であればよい。また、第1の電極層14の材料は、白金、イリジウム、パラジウム及びルテニウムの群から選ばれた少なくとも1種の貴金属であればよく、この貴金属に添加された上記添加物の添加量は、0を越え30モル%以下であることが好ましい。さらに、第1の電極層14の厚みは0.05〜2μmの範囲であればよい。尚、上記添加物は第1の電極層14に添加含有したものであり、第1の電極層14の上側に積極的に設けたものではないため、第1の電極層14における配向制御層15側の表面部に位置する上記添加物は、上記配向制御層15側の表面から突出することは殆どなく、突出したとしてもその突出量は2nmよりも小さい。
上記配向制御層15は、上記圧電体層16の結晶性及び(100)面配向性を向上させるものであって、そのために、Laを含みかつZrを含まず、鉛の含有量が化学量論組成よりも過剰なPLTとしている。尚、圧電体層16の結晶性及び配向性を向上させる観点から、Laの含有量は0を越え25モル%以下であればよく、鉛の含有量は0を越え30モル%以下過剰であればよい。また、配向制御層15を構成する材料は、上記PLTに限らず、このPLTにジルコニウムを含有したPLZTであってもよく、これらPLTやPLZTに、マグネシウム及びマンガンの少なくとも一方を添加したものであってもよい。上記ジルコニウムの含有量は20モル%以下であることが好ましく、マグネシウム及びマンガンの少なくとも一方を添加する場合、そのトータル添加量は0を越え10モル%以下(いずれか一方の添加量が0であってもよい)であることが好ましい。また、配向制御層15の膜厚は0.01〜0.2μmの範囲であればよい。
次に、上記圧電素子の製造方法を説明する。
すなわち、Si基板11上に、密着層12、第1の電極層14、配向制御層15、圧電体層16及び第2の電極層17をスパッタ法により順次成膜する。
上記密着層12は、Tiターゲットを用いて、基板11を450℃に加熱しながら100Wの高周波電力を印加し、1Paのアルゴンガス中で、1分間形成することにより得られる。
上記第1の電極層14は、多元スパッタ装置を使用して、Tiターゲット及びIrターゲットを用い、基板11を450℃に加熱しながら1Paのアルゴンガス中において85W及び200Wの高周波電力で12分間形成することにより得られる。この得られた第1の電極層14における密着層12とは反対側の表面部には、チタンが島状に点在している。
尚、上記第1の電極層14をスパッタ法により形成する際に使用するガスは、上記のようにアルゴンガスのみであってもよく、アルゴンと酸素との混合ガスであってもよい。アルゴンガスのみを用いた場合には、第1の電極層14の表面部のチタンは酸化されないが、アルゴンと酸素との混合ガスを用いた場合には、そのチタンが酸化されて酸化チタンとなる。特にアルゴンと酸素との混合ガスを用いる場合には、基板11の温度を650℃以下に設定することが望ましい。これは、基板11の温度が650℃よりも高いと、チタンのみならず貴金属表面も僅かに酸化して、その上側に形成する配向制御層15の結晶性や配向性に悪影響を及ぼす可能性があるからである。
上記配向制御層15は、ランタンを13モル%含有するPLTに酸化鉛(PbO)を8モル%過剰に加えて調合した焼結ターゲットを用い、基板11の温度600℃で、アルゴンと酸素との混合雰囲気中(ガス体積比Ar:O2=19:1)において、真空度0.8Pa、高周波電力300Wの条件で12分間形成することにより得られる。
尚、上記配向制御層15をスパッタ法により形成する際に使用するアルゴンと酸素との混合ガスにおける酸素分圧は、0%を越え10%以下であることが好ましい。これは、酸素が全く存在しない状態では、配向制御層15の結晶性が低下する一方、酸素分圧が10%を越えると、(100)面又は(001)面の配向性が低下するからである。また、真空度は、0.05Pa以上5Pa以下であることが好ましい。これは、真空度が0.05Paよりも小さいと、配向制御層15の結晶性がばらつく一方、5Paを越えると、(100)面又は(001)面の配向性が低下するからである。
また、上記配向制御層15をスパッタ法により形成する際の基板11の温度は、450℃以上750℃以下であることが望ましい。これは、基板11の温度が450℃よりも小さいと、配向制御層15の結晶性が低下するとともに、パイロクロアが生成し易くなる一方、750℃よりも大きいと、成膜時に、膜中に含まれるPbが蒸発することにより不足し、結晶性が低下するからである。
より好ましいのは、上記酸素分圧を0.5%以上10%以下とし、かつ真空度を0.1Pa以上2Pa以下とするとともに、基板11の温度を500℃以上650℃以下にすることである。
上記のように配向制御層15を形成すれば、この配向制御層15は、第1の電極層14における配向制御層15側の表面部に点在するチタンを核にして結晶成長し、これにより、チタン上において(100)面又は(001)面に配向し易くなる。また、このチタンが、上記の如く第1の電極層14の表面からは殆ど突出していない(突出してもその突出量は2nmよりも小さい)ので、配向制御層15は、(100)面又は(001)面により一層配向し易くなる。一方、第1の電極層14は(111)面配向になっているため、配向制御層15において第1の電極層14の表面部におけるチタンが存在しない部分の上側領域では、(100)面や(001)面配向とはならない(ここでは、(111)面配向になる)。この領域は上記結晶成長に連れて小さくなる一方、(100)面又は(001)面配向の領域は拡大する。この結果、配向制御層15における第1の電極層14側の表面近傍部は、第1の電極層14における配向制御層15側の表面部に位置するチタン上に存在する(100)面又は(001)面配向の領域と、第1の電極層14の表面部におけるチタンが存在しない部分の上側に存在しかつ(100)面や(001)面配向となっていない領域とを有することになり、この(100)面又は(001)面配向の領域は第1の電極層14側からその反対側(圧電体層16側)に向かって広くなり、配向制御層15の圧電体層16側の表面では、略全体が(100)面又は(001)面配向の領域となる。そして、ジルコニウムの含有量を20モル%以下とし、ランタンの含有量が0を越え25モル%以下とすれば、配向制御層15の結晶性や配向性が格段に向上する。特にジルコニウムの含有量が少ないほど、結晶成長初期にZr酸化物からなる結晶性が低い層が形成され難くなり、結晶性の低下が確実に抑制される。
上記圧電体層16は、PZT(Zr/Ti=52/48)の焼結体ターゲットを用い、基板11の温度610℃で、アルゴンと酸素との混合雰囲気中(ガス体積比Ar:O2=19.5:0.5)において、真空度0.3Pa、高周波電力200Wの条件で2時間形成することにより得られる。
尚、上記圧電体層16をスパッタ法により形成する際に使用するアルゴンと酸素との混合ガスにおける酸素分圧は、0%を越え30%以下であることが好ましい。これは、酸素が全く存在しない状態では、圧電体層16の結晶性が低下する一方、酸素分圧が30%を越えると、(100)面配向度が低下するからである。また、真空度は、0.1Pa以上1Pa以下であることが好ましい。これは、真空度が0.1Paよりも小さいと、圧電体層16の結晶性及び圧電特性がばらつく一方、1Paを越えると、(100)面配向度が低下するからである。
また、上記圧電体層16をスパッタ法により形成する際の基板11の温度は、450℃以上750℃以下であることが望ましい。これは、基板11の温度が450℃よりも小さいと、圧電体層16の結晶性が低下するとともに、パイロクロアが生成し易くなる一方、750℃よりも大きいと、成膜時に、膜中に含まれるPbが蒸発することにより不足し、結晶性が低下するからである。
より好ましいのは、上記酸素分圧を1%以上10%以下とし、かつ真空度を0.15Pa以上0.8Pa以下とするとともに、基板11の温度を525℃以上625℃以下とすることである。
上記のように圧電体層16を形成すれば、この圧電体層16は、上記配向制御層15の圧電体層16側の表面が(100)面又は(001)面配向となっていることで、正方晶系でかつ(100)面配向となり、配向制御層15の結晶性が良好であるため、この圧電体層16の結晶性も良好となる。また、Si基板11の線膨張係数(約30×10-7/℃)が、PZT膜の線膨張係数(約60×10-7/℃)よりも小さいにも拘わらず、得られたPZT膜の厚み方向と垂直な方向に作用している残留応力は、0ないし圧縮応力となる。すなわち、PZTは、300〜400℃にキュリー温度を持ち、その結晶系は、キュリー温度よりも高温では立方晶系であり、キュリー温度よりも低温では、Zr/Ti=52/48であることから正方晶系となる。このため、成膜時には立方晶系であるが、成膜後の冷却課程で正方晶系となる。この正方晶系の場合、単位セルにおけるx方向、y方向及びz方向のそれぞれの稜の長さa1,a2,a3は、全て同じ値ではなくて、a3がa1及びa2とは異なり、a1及びa2は等価であってa軸と呼ばれ、a3はc軸と呼ばれる。そして、正方晶系ペロブスカイト型酸化物における(100)面配向(a軸配向)の場合には、立方晶系から正方晶系に相転移する際、a軸は縮み、c軸は伸びる。この相転移の際に短くなるa軸が膜厚方向に向くため、PZT膜は厚み方向に縮み、厚み方向と垂直な方向には平均的に伸びることになる。その伸びが、線膨張係数の違いによりSi基板11から受ける引張応力を打ち消し、結果的に厚み方向と垂直な方向に作用している残留応力を0ないし圧縮応力とすることができる。
上記第2の電極層17は、Ptターゲットを用いて、室温において1Paのアルゴンガス中200Wの高周波電力で10分間形成することにより得られる。
したがって、本実施形態の圧電素子では、高価なMgO単結晶基板を用いなくても、安価なシリコンの基板11上にスパッタ法により成膜することで、結晶性及び配向性が良好な圧電体層16が得られ、製造コストを低減しつつ、圧電素子の信頼性(耐電圧特性)を向上させることができる。
次に、具体的に実施した実施例について説明する。尚、以下の各実施例1〜5においては、基板上に、密着層、第1の電極層、配向制御層、圧電体層及び第2の電極層を順に形成した構成は、上記実施形態と同じである(但し、実施例5では、密着層を形成していない)。
(実施例1)
この実施例1のものは、各膜の材料、膜厚、製造方法等が上記実施形態で説明したものと同じものとした。この実施例1の圧電素子の各膜には、クラックや膜剥離は見られなかった。
そして、基板(ウエハ)のそりを測定することにより、PZT膜の応力状態を調べた。その結果、PZT膜には、厚み方向と垂直な方向に30MPaの圧縮応力が作用していることが分かった。
また、第2の電極層を形成する前の圧電体層の結晶配向性や膜組成を調べた。すなわち、X線回折法による解析から、PZT膜は(100)面配向の正方晶系ペロブスカイト型結晶構造を示していた。また、PZT膜の組成は、X線マイクロアナライザーによる組成分析を行った結果、ターゲット組成と同じでZr/Ti比は52/48であった。
続いて、配向制御層を形成する前の第1の電極層の結晶配向性及び膜組成を調べた。すなわち、X線回折法により解析を行った結果、Pt膜は(111)面配向を示していた。また、X線光電子分光(XPS)で表面から5nmの深さでの組成分析を行った結果、Ti量は1.6モル%であった。
次いで、圧電体層を形成する前の配向制御層の結晶配向性及び膜組成を調べた。この配向制御層のPLT膜は(100)面配向ペロブスカイト型結晶構造を示していた。尚、配向制御層の第1の電極層側には(111)面配向になった部分が見られた。この(111)面配向になった部分は、第1の電極層の表面部におけるチタンが存在しない部分の上側に存在すると考えられる。また、X線マイクロアナライザーによる組成分析を行った結果、ランタンが12モル%含有され、Pbが6モル%過剰に含まれていた。
次に、第2の電極層を形成する前の状態のものを用いて、ダイシングにより20mm×2mmに切り出したカンチレバーを100個作製し、0.2μm厚の第2の電極層をスパッタ法により形成して、圧電定数d31の測定を行った(圧電定数d31の測定方法については、例えば特開2001−21052号公報参照)。この100個のカンチレバーの圧電定数の平均値は−118pC/Nであった。
続いて、上記圧電素子の第2の電極層を、1mm角で0.2μm厚のPt膜としてスパッタ法によりメタルマスクを用いて10mm間隔で70個形成し、それぞれの第2の電極層と第1の電極層との間に電圧を印加して耐電圧を測定した。尚、耐電圧値は、電圧印加による電流値が1μAとなる値とした。この結果、耐電圧値の平均は95Vであった。
(実施例2)
この実施例2では、基板に実施例1と同じ厚みが0.3mmのφ4インチシリコン(Si)ウエハを用い、密着層には、膜厚0.01μmのタンタル(Ta)膜を、第1の電極層には、膜厚が0.25μmであってアルミニウム2モル%含有するPt膜を、配向制御層には、膜厚が0.03μmであって15モル%のランタンを含有しかつ鉛の含有量が化学量論組成と比較して10モル%過剰であるPLT膜(3モル%のマグネシウムを添加したもの)を、圧電体層には、膜厚が1.7μmであるPZT膜(Zr/Ti=40/60)を、第2の電極層には、膜厚が0.1μmのPt膜をそれぞれ用いた。
上記密着層は、Taターゲットを用いて、基板を520℃に加熱しながら110Wの高周波電力を印加し、1Paのアルゴンガス中で、1分間形成することにより得た。
上記第1の電極層は、多元スパッタ装置を使用して、Al−Pt合金ターゲット(Al含有量4モル%)を用い、基板を400℃に加熱しながら1Paのアルゴンと酸素との混合雰囲気中(ガス体積比Ar:O2=15:1)において200Wの高周波電力で12分間形成することにより得た。
上記配向制御層は、18モル%のランタンを含有するPLTに、3モル%のマグネシウムを添加しかつ酸化鉛(PbO)を12モル%過剰に加えて調合した焼結ターゲットを用い、基板温度620℃で、アルゴンと酸素との混合雰囲気中(ガス体積比Ar:O2=19.2:0.8)において、真空度0.5Pa、高周波電力300Wの条件で15分間形成することにより得た。
上記圧電体層は、PZT(Zr/Ti=40/60)の焼結体ターゲットを用い、基板温度600℃で、アルゴンと酸素との混合雰囲気中(ガス体積比Ar:O2=19.5:0.5)において、真空度0.3Pa、高周波電力250Wの条件で2時間形成することにより得た。
上記第2の電極層は、Ptターゲットを用いて、室温において1Paのアルゴンガス中200Wの高周波電力で形成することにより得た。
この実施例2の圧電素子の各膜にも、クラックや膜剥離は見られなかった。
そして、基板(ウエハ)のそりを測定することにより、PZT膜の応力状態を調べた。その結果、PZT膜には、厚み方向と垂直な方向に20MPaの圧縮応力が作用していることが分かった。
また、第2の電極層を形成する前の圧電体層の結晶配向性や膜組成を、上記実施例1と同様の方法で調べたところ、PZT膜は(100)面配向の正方晶系ペロブスカイト型結晶構造を示した。また、PZT膜の組成は、ターゲット組成と同じでZr/Ti比は40/60であった。
続いて、配向制御層を形成する前の第1の電極層の結晶配向性及び膜組成を調べたところ、Pt膜は(111)面配向を示していた。また、アルミニウム量は2モル%であった。
次いで、圧電体層を形成する前の配向制御層の結晶配向性及び膜組成を調べたところ、PLT膜は(001)面配向ペロブスカイト型結晶構造を示していた。また、マグネシウムが3モル%、ランタンが15モル%含有され、Pbが10モル%過剰に含まれていた。
次に、上記実施例1と同様に、第2の電極層を形成する前の状態のものを用いて、ダイシングにより20mm×2mmに切り出したカンチレバーを100個作製し、0.1μm厚の第2の電極層をスパッタ法により形成して、圧電定数d31の測定を行ったところ、100個のカンチレバーの圧電定数の平均値は−110pC/Nであった。
続いて、上記圧電素子の第2の電極層を、1mm角で0.1μm厚のPt膜としてスパッタ法によりメタルマスクを用いて10mm間隔で70個形成し、それぞれの第2の電極層と第1の電極層との間に電圧を印加して耐電圧を測定したところ、耐電圧値の平均は105Vであった。
(実施例3)
この実施例3では、基板を、0.5mm厚で100mm角サイズのバリウム硼珪酸ガラス(線膨張係数:約46×10-7/℃)とし、密着層には、膜厚0.005μmのニッケル(Ni)膜を、第1の電極層には、膜厚が0.15μmであって酸化マグネシウム8モル%含有するイリジウム(Ir)膜を、配向制御層には、膜厚が0.02μmであって8モル%のランタンを含有しかつ鉛の含有量が化学量論組成と比較して16モル%過剰であるPLT膜(1モル%のマンガンを添加したもの)を、圧電体層には、膜厚が1.6μmであるPZT膜(Zr/Ti=50/50)を、第2の電極層には、膜厚が0.01μmのPt膜をそれぞれ用いた。
上記密着層は、Niターゲットを用いて、基板を300℃に加熱しながら200Wの高周波電力を印加し、1Paのアルゴンガス中で、1分間形成することにより得た。
上記第1の電極層は、多元スパッタ装置を使用して、MgO−Ir合金ターゲット(MgO含有量15モル%)を用い、基板を450℃に加熱しながら1Paのアルゴンガス中において160W及び200Wの高周波電力で10分間形成することにより得た。
上記配向制御層は、12モル%のランタンを含有するPLTに、2モル%のマンガンを添加しかつ酸化鉛(PbO)を22モル%過剰に加えて調合した焼結ターゲットを用い、基板温度580℃で、アルゴンと酸素との混合雰囲気中(ガス体積比Ar:O2=19:1)において、真空度0.8Pa、高周波電力300Wの条件で15分間形成することにより得た。
上記圧電体層は、PZT(Zr/Ti=50/50)の焼結体ターゲットを用い、基板温度580℃で、アルゴンと酸素との混合雰囲気中(ガス体積比Ar:O2=19:1)において、真空度0.35Pa、高周波電力240Wの条件で2時間形成することにより得た。
上記第2の電極層は、Ptターゲットを用いて、室温において1Paのアルゴンガス中200Wの高周波電力で形成することにより得た。
この実施例3の圧電素子の各膜にも、クラックや膜剥離は見られなかった。
そして、基板のそりを測定することにより、PZT膜の応力状態を調べた。その結果、PZT膜には、厚み方向と垂直な方向に5MPaの圧縮応力が作用していることが分かった。
また、第2の電極層を形成する前の圧電体層の結晶配向性や膜組成を調べたところ、PZT膜は(100)面配向の正方晶系ペロブスカイト型結晶構造を示した。また、PZT膜の組成は、ターゲット組成と同じでZr/Ti比は50/50であった。
続いて、配向制御層を形成する前の第1の電極層の結晶配向性及び膜組成を調べたところ、Ir膜は(111)面配向を示していた。また、MgO量は8モル%であった。
次いで、圧電体層を形成する前の配向制御層の結晶配向性及び膜組成を調べたところ、PLT膜は(100)面配向ペロブスカイト型結晶構造を示していた。また、マンガンが1モル%、ランタンが8モル%含有され、Pbが16モル%過剰に含まれていた。
次に、第2の電極層を形成する前の状態のものを用いて、ダイシングにより20mm×2mmに切り出したカンチレバーを100個作製し、0.01μm厚の第2の電極層をスパッタ法により形成して、圧電定数d31の測定を行ったところ、100個のカンチレバーの圧電定数の平均値は−120pC/Nであり、ばらつきはσ=3.5%であった。
続いて、上記圧電素子の第2の電極層を、1mm角で0.01μm厚のPt膜としてスパッタ法によりメタルマスクを用いて10mm間隔で70個形成し、それぞれの第2の電極層と第1の電極層との間に電圧を印加して耐電圧を測定したところ、耐電圧値の平均は93Vであった。
(実施例4)
この実施例4では、基板を、0.5mm厚のφ4インチシリコンウエハとし、密着層には、膜厚0.01μmのチタン膜を、第1の電極層には、膜厚が0.25μmであってコバルト5モル%含有するIr膜を、配向制御層には、膜厚が0.05μmであって10モル%のランタンを含有しかつ鉛の含有量が化学量論組成と比較して10モル%過剰であるPLT膜を、圧電体層には、膜厚が1.2μmであるPZT膜(Zr/Ti=52/48)を、第2の電極層には、膜厚が0.01μmのPt膜をそれぞれ用いた。
上記密着層は、Tiターゲットを用いて、基板を500℃に加熱しながら100Wの高周波電力を印加し、1Paのアルゴンガス中で、1分間形成することにより得た。
上記第1の電極層は、多元スパッタ装置を使用して、Coターゲット及びIrターゲットを用い、基板を400℃に加熱しながら1Paのアルゴンと酸素との混合雰囲気中(ガス体積比Ar:O2=10:1)において90W及び200Wの高周波電力で12分間形成することにより得た。
上記配向制御層は、10モル%のランタンを含有するPLTに酸化鉛(PbO)を14モル%過剰に加えて調合した焼結ターゲットを用い、基板温度600℃で、アルゴンと酸素との混合雰囲気中(ガス体積比Ar:O2=15:1)において、真空度0.84Pa、高周波電力300Wの条件で20分間形成することにより得た。
上記圧電体層は、PZT(Zr/Ti=52/48)の焼結体ターゲットを用い、基板温度620℃で、アルゴンと酸素との混合雰囲気中(ガス体積比Ar:O2=19:1)において、真空度0.4Pa、高周波電力170Wの条件で1時間形成することにより得た。
上記第2の電極層は、Ptターゲットを用いて、室温において1Paのアルゴンガス中200Wの高周波電力で形成することにより得た。
この実施例4の圧電素子の各膜にも、クラックや膜剥離は見られなかった。
そして、基板(ウエハ)のそりを測定し、PZT膜の応力状態を調べた。その結果、PZT膜には、厚み方向と垂直な方向に60MPaの圧縮応力が作用していることが分かった。
また、第2の電極層を形成する前の圧電体層の結晶配向性や膜組成を調べたところ、圧電体層は(100)面配向の正方晶系ペロブスカイト型結晶構造を示した。PZT膜の組成は、ターゲット組成と同じでZr/Ti比は52/48であった。
続いて、配向制御層を形成する前の第1の電極層の結晶配向性及び膜組成を調べたところ、Ir膜は(111)面配向を示していた。また、コバルト量は5モル%であった。
次いで、圧電体層を形成する前の配向制御層の結晶配向性及び膜組成を調べたところ、PLT膜は(100)面配向ペロブスカイト型結晶構造を示していた。また、ランタンが10モル%含有され、Pbが10モル%過剰に含まれていた。
次に、第2の電極層を形成する前の状態のものを用いて、ダイシングにより20mm×2mmに切り出したカンチレバーを100個作製し、0.01μm厚の第2の電極層をスパッタ法により形成して、圧電定数d31の測定を行ったところ、100個のカンチレバーの圧電定数の平均値は−121pC/Nであった。
続いて、上記圧電素子の第2の電極層を、1mm角で0.01μm厚のPt膜としてスパッタ法によりメタルマスクを用いて10mm間隔で70個形成し、それぞれの第2の電極層と第1の電極層との間に電圧を印加して耐電圧を測定したところ、耐電圧値の平均は78Vであった。
(実施例5)
この実施例5では、基板を、0.3mm厚のφ4インチシリコンウエハとし、密着層をなくして、基板に第1の電極層を直接形成するとともに、この第1の電極層には、膜厚が0.22μmであって酸化チタンを2.1モル%含有するIr膜を、配向制御層には、膜厚が0.03μmであって12モル%のランタンと15モル%のジルコニウムとを含有しかつ鉛の含有量が化学量論組成と比較して18モル%過剰であるPLZT膜(3モル%のマグネシウムを添加したもの)を、圧電体層には、膜厚が1.5μmであるPZT膜(Zr/Ti=53/47)を、第2の電極層には、膜厚が0.2μmのPt膜をそれぞれ用いた。
上記第1の電極層は、多元スパッタ装置を使用して、酸化チタンターゲット及びIrターゲットを用い、基板を400℃に加熱しながら1Paのアルゴンガス中において100W及び200Wの高周波電力で12分間形成することにより得た。
上記配向制御層は、14モル%のランタンと15モル%のジルコニウムとを含有するPLZTに、3モル%のマグネシウムを添加しかつ酸化鉛(PbO)を24モル%過剰に加えて調合した焼結ターゲットを用い、基板温度600℃で、アルゴンと酸素との混合雰囲気中(ガス体積比Ar:O2=19:1)において、真空度0.8Pa、高周波電力300Wの条件で12分間形成することにより得た。
上記圧電体層は、PZT(Zr/Ti=53/47)の焼結体ターゲットを用い、基板温度610℃で、アルゴンと酸素との混合雰囲気中(ガス体積比Ar:O2=19:1)において、真空度0.3Pa、高周波電力250Wの条件で1.5時間形成することにより得た。
上記第2の電極層は、Ptターゲットを用いて、室温において1Paのアルゴンガス中200Wの高周波電力で形成することにより得た。
この実施例5の圧電素子の各膜にも、クラックや膜剥離は見られなかった。
そして、基板(ウエハ)のそりを測定することにより、PZT膜の応力状態を調べた。その結果、PZT膜には、厚み方向と垂直な方向に50MPaの圧縮応力が作用していることが分かった。
また、第2の電極層を形成する前の圧電体層の結晶配向性や膜組成を調べたところ、圧電体層は(100)面配向の正方晶系ペロブスカイト型結晶構造を示した。また、PZT膜の組成は、ターゲット組成と同じでZr/Ti比は53/47であった。
続いて、配向制御層を形成する前の第1の電極層の結晶配向性及び膜組成を調べたところ、Ir膜は(111)面配向を示していた。また、酸化チタン量は2.1モル%であった。
次いで、圧電体層を形成する前の配向制御層の結晶配向性及び膜組成を調べたところ、PLT膜は(100)面配向ペロブスカイト型結晶構造を示していた。また、マグネシウムが3モル%、ランタンが12モル%含有され、Pbが18モル%過剰に含まれていた。
次に、第2の電極層を形成する前の状態のものを用いて、ダイシングにより20mm×2mmに切り出したカンチレバーを100個作製し、0.2μm厚の第2の電極層をスパッタ法により形成して、圧電定数d31の測定を行ったところ、100個のカンチレバーの圧電定数の平均値は−120pC/Nであった。
続いて、上記圧電素子の第2の電極層を、1mm角で0.2μm厚のPt膜としてスパッタ法によりメタルマスクを用いて10mm間隔で70個形成し、それぞれの第2の電極層と第1の電極層との間に電圧を印加して耐電圧を測定したところ、耐電圧値の平均は92Vであった。
(比較例)
この比較例のものは、上記実施例1のものに対して、PZT膜の組成(Zr/Ti=60/40)のみが異なるものであり、基板上に、密着層、第1の電極層、圧電体層及び第2の電極層を順に形成した構成である。
この比較例の圧電素子における圧電体層は(100)面配向の菱面体晶系ペロブスカイト型結晶構造を示した。膜厚は実施例1の場合と同じで1.5μmであった。
そして、基板(ウエハ)のそりを測定し、PZT膜の応力状態を調べた。その結果、PZT膜には、厚み方向と垂直な方向に95MPaの引張応力が作用していることが分かった。
また、上記実施例1と同様にして圧電定数d31の測定を行ったところ、圧電定数の平均値は−125pC/Nであった。
さらに、上記実施例1と同様にして耐電圧を測定したところ、耐電圧値の平均は45Vであった。
上記の結果より、圧電体層が(100)面配向の菱面体晶系ペロブスカイト型結晶構造である場合には、圧電定数は正方晶系と同様に良好であるものの、耐電圧特性は正方晶系よりもかなり劣ることが判る。これは、圧電体層において厚み方向と垂直な方向に作用している残留応力が引張応力となっているからである。したがって、上記各実施例のように、圧電体層を(100)面配向の正方晶系ペロブスカイト型結晶構造とすることにより、圧電体層において厚み方向と垂直な方向に作用している残留応力を圧縮応力とすることができ、この結果、圧電素子の耐電圧特性を向上できることが判る。
(実施形態2)
図2は、本発明の実施形態に係るインクジェットヘッドの全体構成を示し、図3はその要部の構成を示す。図2及び図3において、Aは、圧力室部材であって、この圧力室部材Aには、その厚み方向(上下方向)に貫通する圧力室開口部101が形成されている。Bは、上記圧力室開口部101の上端開口を覆うように配置されたアクチュエータ部であり、Cは、圧力室開口部101の下端開口を覆うように配置されたインク流路部材である。上記圧力室部材Aの圧力室開口部101は、その上下にそれぞれ位置する上記アクチュエータ部B及びインク流路部材Cにより閉塞されることで圧力室102とされている。
上記アクチュエータ部Bは、上記各圧力室102の略真上に位置する第1の電極層103(個別電極)を有し、これら圧力室102及び第1の電極層103は、図2から判るように、千鳥状に多数配列されている。
上記インク流路部材Cは、インク供給方向に並ぶ圧力室102間で共用する共通液室105と、この共通液室105のインクを上記圧力室102に供給するための供給口106と、圧力室102内のインクを吐出させるためのインク流路107とを有している。
Dは、ノズル板であって、このノズル板Dには、上記インク流路107に連通するノズル孔108が形成されている。また、EはICチップであって、このICチップから上記各個別電極103に対してボンディングワイヤBWを介して電圧をそれぞれ供給するようになっている。
次に、上記アクチュエータ部Bの構成を図4に基づいて説明する。この図4は、図2に示したインク供給方向とは直交する方向の断面図である。同図では、上記直交方向に並ぶ4個の圧力室102を持つ圧力室部材Aが参照的に描かれている。このアクチュエータ部Bは、上記の如く各圧力室102の略真上にそれぞれ位置する第1の電極層103と、この各第1の電極層103上(同図では下側)に設けられた配向制御層104と、この配向制御層104上(同下側)に設けられた圧電体層110と、この圧電体層110上(同下側)に設けられ、全圧電体層110に共通となる第2の電極層112(共通電極)と、この第2の電極層112上(同下側)に設けられ、上記圧電体層110の圧電効果により層厚方向に変位し振動する振動層111と、この振動層111上(同下側)に設けられ、各圧力室102の相互を区画する区画壁102aの上方に位置する中間層113(縦壁)とを有しており、上記第1の電極層103、配向制御層104、圧電体層110及び第2の電極層112は、これらが順に積層されてなる圧電素子を構成することになる。また、振動層111は、この圧電素子の第2の電極層112側の面に設けられていることになる。
尚、図4中、114は圧力室部材Aとアクチュエータ部Bとを接着する接着剤であり、上記各中間層113は、この接着剤114を用いた接着時に、その一部の接着剤114が区画壁102aの外方にはみ出した場合でも、この接着剤114が振動層111に付着しないで振動層111が所期通りの変位及び振動を起こすように、圧力室102の上面と振動層111の下面との距離を拡げる役割を有している。このようにアクチュエータ部Bの振動層111における第2の電極層112とは反対側面に中間層113を介して圧力室部材Aを接合するのが好ましいが、振動層111における第2の電極層112とは反対側面に直接圧力室部材Aを接合するようにしてもよい。
上記第1の電極層103、配向制御層104、圧電体層110及び第2の電極層112の各構成材料は、上記実施形態1で説明した第1の電極層14、配向制御層15、圧電体層16及び第2の電極層17とそれぞれ同様である(構成元素の含有量が異なるものもある)。また、配向制御層104及び圧電体層110の構造も、配向制御層15及び圧電体層16とそれぞれ同様であり、配向制御層104は、(100)面又は(001)面配向となっている。
次に、図2のICチップEを除くインクジェットヘッド、つまり図3に示す上記圧力室部材A、アクチュエータ部B、インク流路部材C及びノズル板Dよりなるインクジェットヘッドの製造方法を図5〜図9に基づいて説明する。
図5(a)に示すように、基板120上に、順次、密着層121、第1の電極層103、配向制御層104、圧電体層110、第2の電極層112、振動層111、上記中間層113をスパッタ法により成膜して、積層する。尚、上記密着層121は、上記実施形態1で説明した密着層12と同様であって、基板120と第1の電極層103との密着性を高めるために基板120と第1の電極層103との間に形成する(必ずしも密着層121を形成する必要はない)。この密着層121は、後述の如く、基板120と同様に除去する。また、振動層111の材料にはCrを、中間層113にはTiをそれぞれ使用する。
上記基板120には、18mm角に切断したSi基板を用いる。この基板120は、Siに限るものではなく、線膨張係数が圧電体層110の圧電材料よりも小さいガラス基板や金属基板、セラミックス基板であってもよい。また、基板サイズも18mm角に限るものではなく、Si基板であれば、φ2〜10インチのウエハであってもよい。
上記密着層121は、Tiターゲットを用いて、基板120を400℃に加熱しながら100Wの高周波電力を印加し、1Paのアルゴンガス中で、1分間形成することにより得られる。この密着層121の膜厚は0.02μmとなる。尚、密着層121の材料は、Tiに限らず、タンタル、鉄、コバルト、ニッケル若しくはクロム又はそれら(Tiを含む)の化合物であってもよい。また、膜厚は0.005〜0.2μmの範囲であればよい。
上記第1の電極層103は、多元スパッタ装置を使用して、Tiターゲット及びIrターゲットを用い、基板120を600℃に加熱しながら1Paのアルゴンガス中において85W及び200Wの高周波電力で12分間形成することにより得られる。この第1の電極層103の膜厚は0.2μmとなり、(111)面に配向する。また、Tiの含有量は2.5モル%である。この第1の電極層103も、上記実施形態1における第1の電極層14と同様に、白金、イリジウム、パラジウム及びルテニウムの群から選ばれた少なくとも1種の貴金属に、チタン、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、銅、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びこれらの酸化物の群から選ばれた少なくとも1種の添加物を添加したもの(添加量は0を越え30モル%以下であることが好ましい)であればよく、膜厚は0.05〜2μmの範囲であればよい。
上記配向制御層104は、ランタンを10モル%含有するPLTに酸化鉛(PbO)を15モル%過剰に加えて調合した焼結ターゲットを用い、基板120の温度600℃で、アルゴンと酸素との混合雰囲気中(ガス体積比Ar:O2=19:1)において、真空度0.8Pa、高周波電力300Wの条件で12分間形成することにより得られる。この得られたチタン酸ランタン鉛膜は、ランタンを10モル%含みかつ鉛を化学組成量論組成よりも10%過剰に含むペロブスカイト型結晶構造であり、(100)面又は(001)面に配向している。
尚、上記実施形態1における配向制御層15と同様に、上記配向制御層104のLaの含有量は0を越え25モル%以下であればよく、鉛の含有量は0を越え30モル%以下過剰であればよい。また、配向制御層104を構成する材料も、PLTにジルコニウムを含有したPLZT(ジルコニウムの含有量は20モル%以下であることが好ましい)であってもよく、PLTやPLZTに、マグネシウム及びマンガンの少なくとも一方を添加したもの(マグネシウム及びマンガンの添加量は0を越え10モル%以下であることが好ましい)であってもよい。また、配向制御層104の膜厚は0.01〜0.2μmの範囲であればよい。
上記圧電体層110は、PZT(Zr/Ti=52/48)の焼結体ターゲットを用い、基板120の温度580℃で、アルゴンと酸素との混合雰囲気中(ガス体積比Ar:O2=15:1)において、真空度0.3Pa、高周波電力250Wの条件で2時間形成することにより得られる。この得られたPZT膜は、正方晶系ペロブスカイト型結晶構造で(100)面配向となり、この正方晶系ペロブスカイト型酸化物における(100)面配向により、厚み方向と垂直方向に作用する残留応力が圧縮応力となる。また、圧電体層110の膜厚は2.1μmとなる。尚、この圧電体層110のZr/Ti組成は、Zr/Ti=30/70〜55/45であれば、正方晶系とすることができ、膜厚は、1〜5μmの範囲であればよい。また、圧電体層110の構成材料は、PZTにSr、Nb、Al等の添加物を含有したもの等のように、PZTを主成分とする圧電材料であればよく、PMNやPZNであってもよい。
上記第2の電極層112は、Ptターゲットを用いて、室温において1Paのアルゴンガス中200Wの高周波電力で10分間形成することにより得られる。この第2の電極層112の膜厚は0.2μmとなる。尚、第2の電極層112の材料はPtに限らず、導電性材料であればよく、膜厚は0.1〜0.4μmの範囲であればよい。
上記振動層111は、Crターゲットを用いて、室温において1Paのアルゴンガス中200Wの高周波電力で6時間形成することにより得られる。この振動層111の膜厚は3μmとなる。この振動層111の材料は、Crに限らず、ニッケル、アルミニウム、タンタル、タングステン、シリコン又はこれらの酸化物若しくは窒化物(例えば二酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化シリコン)等であってもよい。また、振動層111の膜厚は2〜5μmであればよい。
上記中間層113は、Tiターゲットを用いて、室温において1Paのアルゴンガス中200Wの高周波電力で5時間形成することにより得られる。この中間層113の膜厚は5μmとなる。この中間層113の材料は、Tiに限らず、Cr等の導電性金属であればよい。また、中間層113の膜厚は3〜10μmであればよい。
一方、図5(b)に示すように、圧力室部材Aを形成する。この圧力室部材Aは、上記Si基板120よりも大きいサイズ、例えば4インチウエハーのシリコン基板130(図10参照)を使用して形成される。具体的には、先ず、シリコン基板130(圧力室部材用)に対して複数の圧力室用開口部101をパターンニングする。このパターンニングは、同図(b)から判るように、4つの圧力室用開口部101を1組として、各組を区画する区画壁102bは、各組内の圧力室用開口部101を区画する区画壁102aの幅の約2倍の幅の厚幅に設定される。その後、上記パターンニングされたシリコン基板130をケミカルエッチング又はドライエッチング等で加工して、各組で4個の圧力室用開口部101を形成し、圧力室部材Aを得る。
その後は、上記成膜後のシリコン基板120(成膜用)と前記圧力室部材Aとを接着剤を用いて接着する。この接着剤の形成は電着による。すなわち、先ず、同図(c)に示すように、圧力室部材A側の接着面として、圧力室の区画壁102a、102bの上面に接着剤114を電着により付着させる。具体的には、図示しないが、上記区画壁102a、102bの上面に、下地電極膜として、光が透過する程度に薄い数百ÅのNi薄膜をスパッタ法により形成し、その後、上記Ni薄膜上に、パターニングされた接着樹脂剤114を形成する。この際、電着液としては、アクリル樹脂系水分散液に0〜50重量部の純水を加え、良く攪拌混合した溶液を使用する。Ni薄膜の膜厚を光が透過するほど薄く設定するのは、シリコン基板130(圧力室部材用)に接着樹脂が完全に付着したことを容易に視認できるようにするためである。電着条件は、実験によると、液温約25℃、直流電圧30V、通電時間60秒が好適であり、この条件下で約3〜10μmのアクリル樹脂を、シリコン基板130(圧力室部材用)のNi薄膜上に電着樹脂形成する。
そして、図6(a)に示すように、上記積層されたSi基板120(成膜用)と圧力室部材Aとを、上記電着された接着剤114を用いて接着する。この接着は、基板120(成膜用)に成膜された中間層113を基板側接着面として行う。また、Si基板120(成膜用)は18mmのサイズであり、圧力室部材Aを形成するSi基板130は4インチサイズと大きいため、図10に示すように、複数(同図では14個)のSi基板120(成膜用)を1個の圧力室部材A(Si基板130)に貼り付ける。この貼り付けは、図6(a)に示すように、各Si基板120(成膜用)の中心が圧力室部材Aの厚幅の区画壁102bの中心に位置するように位置付けられた状態で行われる。この貼り付け後、圧力室部材AをSi基板120(成膜用)側に押圧、密着させて、両者の接着を液密性高くする。さらに、上記接着したSi基板120(成膜用)及び圧力室部材Aを加熱炉において徐々に昇温して、上記接着剤114を完全に硬化させる。続いて、プラズマ処理を行って、上記接着剤114のうち、はみ出した断片を除去する。
尚、図6(a)では、成膜後のSi基板120(成膜用)と圧力室部材Aとを接着したが、圧力室用開口部101を形成しない段階のSi基板130(圧力室部材用)を上記成膜後のSi基板120(成膜用)と接着してもよい。
その後は、図6(b)に示すように、圧力室部材Aの各区画壁102a、102bをマスクとして中間層113をエッチングして所定形状に仕上げる(上記各区画壁102a、102bに連続する形状(縦壁)とする)。次いで、図7(a)に示すように、Si基板120(成膜用)及び密着層121をエッチングにより除去する。
続いて、図7(b)に示すように、上記圧力室部材A上に位置する第1の電極層103について、フォトリソグラフィー技術を用いてエッチングして、各圧力室102毎に個別化する。そして、図8(a)に示すように、フォトリソグラフィー技術を用いて配向制御層104と圧電体層110とをエッチングして第1の電極層103と同様の形状に個別化する。これらエッチング後の第1の電極層103、配向制御層104及び圧電体層110は、圧力室102の各々の上方に位置し、かつ第1の電極層103、配向制御層104及び圧電体層110の幅方向の中心が、対応する圧力室102の幅方向の中心に対し高精度に一致するように形成される。このように第1の電極層103、配向制御層104及び圧電体層110を各圧力室102毎に個別化した後、図8(b)に示すように、シリコン基板130(圧力室部材用)を各厚幅の区画壁102bの部分で切断して、4つの圧力室102を持つ圧力室部材Aとその上面に固着されたアクチュエータ部Bとが4組完成する。
続いて、図9(a)に示すように、インク流路部材Cに共通液室105、供給口106及びインク流路107を形成するとともに、ノズル板Dにノズル孔108を形成する。次いで、同図(b)に示すように、上記インク流路部材Cとノズル板Dとを接着剤109を用いて接着する。
その後、同図(c)に示すように、圧力室部材Aの下端面又はインク流路部材Cの上端面に接着剤(図示せず)を転写し、圧力室部材Aとインク流路部材Cとのアライメント調整を行って、この両者を上記接着剤により接着する。以上により、同図(d)に示すように、圧力室部材A、アクチュエータ部B、インク流路部材C及びノズル板Dを持つインクジェットヘッドが完成する。
上記のようにして得られたインクジェットヘッドの第1及び第2電極層103,112間に所定電圧を印加すると、圧電体層110の圧電効果により振動層111における各圧力室102に対応する部分が層厚方向に変位して、圧力室102内のインクが該圧力室102に連通するノズル孔108から吐出されることになる。そして、周波数が20kHzの50V交流電圧を10日間印加し続けたが、インクの吐出不良は全くなく、吐出性能の低下は見られなかった。
一方、上記本発明のインクジェットヘッドに対して、圧電体層が(100)配向の菱面体晶系PZT薄膜である点のみが異なるインクジェットヘッドを作製し、このインクジェットヘッドの第1及び第2電極層103,112間に、周波数が20kHzの50V交流電圧を10日間印加し続けたところ、全圧力室102のうちの約15%の圧力室102に対応する部分でインク吐出不良が発生した。これは、インクの詰まり等ではないことから、アクチュエータ部B(圧電素子)の耐久性が低いと考えられる。
したがって、本実施形態のインクジェットヘッドは、耐久性が良好であり、インク吐出性能が長期に亘って優れていることが判る。
(実施形態3)
図11は、本発明の実施形態に係る他のインクジェットヘッドの主要部を示し、上記実施形態2のインクジェットヘッドのように基板を成膜用と圧力室部材用とに別個に用いないで、成膜用と圧力室部材用とを兼用するようにしたものである。
具体的には、圧力室402がエッチング加工により形成された圧力室基板401(圧力室部材)上に、振動層403、密着層404、第1の電極層406(共通電極)、配向制御層407、圧電体層408及び第2の電極層409(個別電極)が順に積層されている。上記第1の電極層406、配向制御層407、圧電体層408及び第2の電極層409は、これらが順に積層されてなる圧電素子を構成することになる。また、振動層403は、この圧電素子の第1の電極層406側の面に密着層404を介して設けられていることになる。この密着層404は、振動層403と第1の電極層406との密着性を高めるものであり、上記実施形態2における密着層121と同様になくてもよい。上記密着層404、第1の電極層406、配向制御層407、圧電体層408及び第2の電極層409の各構成材料は、上記実施形態2で説明した密着層121、第1の電極層103、配向制御層104、圧電体層110及び第2の電極層112とそれぞれ同様である。また、配向制御層407及び圧電体層408の構造も、配向制御層104及び圧電体層110とそれぞれ同様であり、配向制御層407は、(100)面又は(001)面配向となっている。
上記圧力室基板401は、φ4インチで厚さ200μmのSi基板を用いる。この実施形態でも、Siに限るものではなく、線膨張係数が圧電体層408の圧電材料よりも小さいガラス基板や金属基板、セラミックス基板であってもよい。
上記振動層403は、この実施形態では、膜厚が2.8μmであって二酸化シリコンからなる。尚、この振動層403の材料は、二酸化シリコンに限らず、上記実施形態2で説明した材料(ニッケルやクロム等の単体又はその酸化物若しくは窒化物)であってもよい。また、振動層111の膜厚は0.5〜10μmであればよい。
次に、上記インクジェットヘッドの製造方法について図12を参照しながら説明する。
すなわち、先ず、図12(a)に示すように、圧力室402が形成されていない圧力室基板401に、振動層403、密着層404、第1の電極層406、配向制御層407、圧電体層408及び第2の電極層409をスパッタ法により順次形成する。
上記振動層403は、二酸化シリコン焼結体のターゲットを用いて、圧力室基板401の加熱は行わないで室温において、300Wの高周波電力を印加して、0.4Paのアルゴンと酸素との混合雰囲気中(ガス体積比Ar:O2=5:25)で、8時間形成することにより得られる。尚、この振動層403の成膜法としては、スパッタ法に限らず、熱CVD法、プラズマCVD法、ゾル・ゲル法等であってもよく、圧力室基板401の熱酸化処理で形成する方法であってもよい。
上記密着層404は、Tiターゲットを用いて、圧力室基板401を400℃に加熱しながら、100Wの高周波電力を印加して、1Paのアルゴンガス中で、1分間加熱することにより得られる。この密着層404の膜厚は0.03μmとなる。尚、密着層404の材料は、Tiに限らず、タンタル、鉄、コバルト、ニッケル若しくはクロム又はそれら(Tiを含む)の化合物であってもよい。また、膜厚は0.005〜0.1μmの範囲であればよい。
上記第1の電極層406は、多元スパッタ装置を使用して、Tiターゲット及びIrターゲットを用い、圧力室基板401を600℃に加熱しながら1Paのアルゴンガス中において85W及び200Wの高周波電力で12分間形成することにより得られる。この第1の電極層406の膜厚は0.2μmとなり、(111)面に配向する。また、Tiの含有量は2.5モル%である。この第1の電極層406も、上記実施形態1における第1の電極層14と同様に、白金、イリジウム、パラジウム及びルテニウムの群から選ばれた少なくとも1種の貴金属に、チタン、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、銅、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びこれらの酸化物の群から選ばれた少なくとも1種の添加物を添加したもの(添加量は0を越え30モル%以下であることが好ましい)であればよく、膜厚は0.05〜2μmの範囲であればよい。
上記配向制御層407は、ランタンを10モル%含有するPLTに酸化鉛(PbO)を15モル%過剰に加えて調合した焼結ターゲットを用い、圧力室基板401の温度620℃で、アルゴンと酸素との混合雰囲気中(ガス体積比Ar:O2=19:1)において、真空度0.8Pa、高周波電力300Wの条件で12分間形成することにより得られる。この得られたチタン酸ランタン鉛膜は、上記実施形態2における配向制御層104と同じである。
尚、上記実施形態1における配向制御層15と同様に、上記配向制御層407のLaの含有量は0を越え25モル%以下であればよく、鉛の含有量は0を越え30モル%以下過剰であればよい。また、配向制御層407を構成する材料も、PLTにジルコニウムを含有したPLZT(ジルコニウムの含有量は20モル%以下であることが好ましい)であってもよく、PLTやPLZTに、マグネシウム及びマンガンの少なくとも一方を添加したもの(マグネシウム及びマンガンの添加量は0を越え10モル%以下であることが好ましい)であってもよい。また、配向制御層104の膜厚は0.01〜0.2μmの範囲であればよい。
上記圧電体層408は、PZT(Zr/Ti=52/48)の焼結体ターゲットを用い、圧力室基板401の温度580℃で、アルゴンと酸素との混合雰囲気中(ガス体積比Ar:O2=15:1)において、真空度0.3Pa、高周波電力250Wの条件で2時間形成することにより得られる。この得られたPZT膜は、上記実施形態2における圧電体層110と同じである。尚、圧電体層408のZr/Ti組成は、Zr/Ti=30/70〜55/45であれば、正方晶系とすることができ、膜厚は、1〜5μmの範囲であればよい。また、圧電体層408の構成材料は、PZTにSr、Nb、Al等の添加物を含有したもの等のように、PZTを主成分とする圧電材料であればよく、PMNやPZNであってもよい。
上記第2の電極層409は、Ptターゲットを用いて、室温において1Paのアルゴンガス中200Wの高周波電力で10分間形成することにより得られる。この第2の電極層409の膜厚は0.2μmとなる。尚、第2の電極層409の材料はPtに限らず、導電性材料であればよく、膜厚は0.1〜0.4μmの範囲であればよい。
次いで、上記第2の電極層409上に、レジストをスピンコートにより塗布し、圧力室402が形成されるべき位置に合わせて露光・現像を行ってパターニングする。そして、第2の電極層409、圧電体層408及び配向制御層407をエッチングして個別化する。このエッチングは、アルゴンとフッ素元素を含む有機ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングで行う。
続いて、図12(b)に示すように、圧力室基板401に圧力室402を形成する。この圧力室402の形成は、六フッ化硫黄ガス、フッ素元素を含む有機ガス又はこれらの混合ガスを使用した異方性ドライエッチングで行う。つまり、圧力室基板401の上記各膜を形成した面とは反対側の面における側壁413となる部分にエッチングマスクを形成して、異方性ドライエッチングにより圧力室402を形成する。
そして、予めノズル孔410を形成したノズル板412を、接着剤を用いて圧力室基板401の上記各膜を形成した面とは反対側の面に接合することにより、インクジェットヘッドが完成する。上記ノズル孔410は、リソグラフィ法、レーザー加工法、放電加工法等により、ノズル板412の所定位置に開口する。そして、ノズル板412を圧力室基板401に接合する際には、各ノズル孔410が圧力室402に対応して配置されるように位置合わせを行う。
上記のようにして得られたインクジェットヘッドの第1及び第2電極層406,409間に、周波数が20kHzの50V交流電圧を10日間印加し続けたが、インクの吐出不良は全くなく、吐出性能の低下は見られなかった。
一方、上記本発明のインクジェットヘッドに対して、圧電体層を(100)配向の菱面体晶系PZT薄膜とした点のみが異なるインクジェットヘッドを作製し、このインクジェットヘッドの第1及び第2電極層406,409間に、周波数が20kHzの50V交流電圧を10日間印加し続けたところ、全圧力室402のうちの約10%の圧力室402に対応する部分でインク吐出不良が発生した。これは、インクの詰まり等ではないことから、アクチュエータ部(圧電素子)の耐久性が低いと考えられる。
したがって、本実施形態のインクジェットヘッドは、上記実施形態2のインクジェットヘッドと同様に、インク吐出性能が長期に亘って優れていることが判る。
(実施形態4)
図13は、本発明の実施形態に係るインクジェット式記録装置27を示し、このインクジェット式記録装置27は、上記実施形態2又は3で説明したものと同様のインクジェットヘッド28を備えている。このインクジェットヘッド28において圧力室(上記実施形態2における圧力室102や実施形態3における圧力室402)に連通するように設けたノズル孔(上記実施形態2におけるノズル孔108や実施形態3におけるノズル孔410)から該圧力室内のインクを記録媒体29(記録紙等)に吐出させて記録を行うように構成されている。
上記インクジェットヘッド28は、主走査方向Xに延びるキャリッジ軸30に設けられたキャリッジ31に搭載されていて、このキャリッジ31がキャリッジ軸30に沿って往復動するのに応じて主走査方向Xに往復動するように構成されている。このことで、キャリッジ31は、インクジェットヘッド28と記録媒体29とを主走査方向Xに相対移動させる相対移動手段を構成することになる。
また、このインクジェット式記録装置27は、上記記録媒体29をインクジェットヘッド28の主走査方向Xと略垂直方向の副走査方向Yに移動させる複数のローラ32を備えている。このことで、複数のローラ32は、インクジェットヘッド28と記録媒体29とを副走査方向Yに相対移動させる相対移動手段を構成することになる。尚、図13中、Zは上下方向である。
そして、インクジェットヘッド28がキャリッジ31により主走査方向Xに移動しているときに、インクジェットヘッド28のノズル孔からインクを記録媒体29に吐出させ、この一走査の記録が終了すると、上記ローラ32により記録媒体29を所定量移動させて次の一走査の記録を行う。
したがって、このインクジェット式記録装置27は、上記実施形態2又は3と同様のインクジェットヘッド28を備えているので、良好な印字性能及び耐久性を有している。
本発明の圧電素子は、インクジェット式記録装置のインクジェットヘッドにおけるインク吐出用アクチュエータ等のような各種アクチュエータや、角速度センサー、赤外センサー、超音波センサー、圧力センサー、加速度センサー、流量センサー、ショックセンサー等の各種センサ、薄膜コンデンサー、不揮発性メモリ素子の電荷蓄積キャパシタ、圧電トランス、圧電点火素子、圧電スピーカー、圧電マイクロフォン、圧電フィルタ、圧電ピックアップ、音叉発振子、遅延線等に有用である。
本発明の実施形態に係る圧電素子を示す断面図である。 本発明の実施形態に係るインクジェットヘッドの全体構成を示す斜視図である。 図2のインクジェットヘッドにおける圧力室部材及びアクチュエータ部の要部を示す分解斜視図である。 図2のインクジェットヘッドにおける圧力室部材及びアクチュエータ部の要部を示す断面図である。 図2のインクジェットヘッドの製造方法における積層工程、圧力室用開口部の形成工程及び接着剤の付着工程を示す図である。 図2のインクジェットヘッドの製造方法における、成膜後の基板と圧力室部材との接着工程及び縦壁の形成工程を示す図である。 図2のインクジェットヘッドの製造方法における、基板(成膜用)及び密着層の除去工程並びに第1の電極層の個別化工程を示す図である。 図2のインクジェットヘッドの製造方法における、配向制御層及び圧電体層の個別化工程並びに基板(圧力室部材用)の切断工程を示す図である。 図2のインクジェットヘッドの製造方法における、インク流路部材及びノズル板の生成工程、インク流路部材とノズル板との接着工程、圧力室部材とインク流路部材との接着工程及び完成したインクジェットヘッドを示す図である。 図2のインクジェットヘッドの製造方法において、成膜されたSi基板と圧力室部材用のSi基板との接着状態を示す平面図である。 本発明の実施形態に係る他のインクジェットヘッドにおける圧力室部材及びアクチュエータ部の要部を示す断面図である。 図11のインクジェットヘッドの製造方法における積層工程及び圧力室形成工程を示す図である。 本発明の実施形態に係るインクジェット式記録装置を示す概略斜視図である。
符号の説明
11 基板
12 密着層
14 第1の電極層
15 配向制御層
16 圧電体層
17 第2の電極層
27 インクジェット式記録装置
28 インクジェットヘッド
29 記録媒体
31 キャリッジ(相対移動手段)
A 圧力室部材
102 圧力室
103 第1の電極層(個別電極)
104 配向制御層
108 ノズル孔
110 圧電体層
111 振動層
112 第2の電極層(共通電極)
120 基板
121 密着層
401 圧力室基板
402 圧力室
403 振動層
404 密着層
406 第1の電極層(共通電極)
407 配向制御層
408 圧電体層
409 第2の電極層(個別電極)
410 ノズル孔

Claims (13)

  1. 基板上に設けられた第1の電極層と、該第1の電極層上に設けられた配向制御層と、該配向制御層上に設けられた圧電体層と、該圧電体層上に設けられた第2の電極層とを備えた圧電素子であって、
    上記第1の電極層は、チタン、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、銅、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びこれらの酸化物の群から選ばれた少なくとも1種の添加物が添加された貴金属からなり、
    上記配向制御層は、立方晶系又は正方晶系の(100)面又は(001)面に優先配向したペロブスカイト型酸化物からなり、
    上記圧電体層は、正方晶系の(100)面に優先配向したペロブスカイト型酸化物からなっており、
    上記圧電体層において厚み方向と垂直な方向に作用している残留応力が、0ないし圧縮応力であることを特徴とする圧電素子。
  2. 請求項1記載の圧電素子において、
    配向制御層は、ジルコニウムの含有量が0以上20モル%以下でありかつ鉛の含有量が化学量論組成と比較して0を越え30モル%以下過剰であるチタン酸ランタンジルコン酸鉛、又は該チタン酸ランタンジルコン酸鉛にマグネシウム及びマンガンの少なくとも一方を添加したものからなることを特徴とする圧電素子。
  3. 請求項2記載の圧電素子において、
    チタン酸ランタンジルコン酸鉛におけるランタンの含有量が0を越え25モル%以下であることを特徴とする圧電素子。
  4. 請求項2又は3記載の圧電素子において、
    チタン酸ランタンジルコン酸鉛にマグネシウム及びマンガンの少なくとも一方を添加する場合のトータル添加量は、0を越え10モル%以下であることを特徴とする圧電素子。
  5. 請求項1〜4のいずれか1つに記載の圧電素子において、
    第1の電極層は、白金、イリジウム、パラジウム及びルテニウムの群から選ばれた少なくとも1種の貴金属からなり、該貴金属に添加された添加物の添加量が0を越え30モル%以下であることを特徴とする圧電素子。
  6. 請求項1〜5のいずれか1つに記載の圧電素子において、
    圧電体層は、チタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする圧電材料からなることを特徴とする圧電素子。
  7. 請求項1〜6のいずれか1つに記載の圧電素子において、
    基板と第1の電極層との間に、該基板と第1の電極層との密着性を高める密着層が設けられていることを特徴とする圧電素子。
  8. 第1の電極層と配向制御層と圧電体層と第2の電極層とが順に積層されてなる圧電素子と、該圧電素子の第2の電極層側の面に設けられた振動層と、該振動層の圧電素子とは反対側の面に接合され、インクを収容する圧力室を有する圧力室部材とを備え、上記圧電素子の圧電体層の圧電効果により上記振動層を層厚方向に変位させて上記圧力室内のインクを吐出させるように構成されたインクジェットヘッドであって、
    上記圧電素子の第1の電極層は、チタン、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、銅、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びこれらの酸化物の群から選ばれた少なくとも1種の添加物が添加された貴金属からなり、
    上記配向制御層は、立方晶系又は正方晶系の(100)面又は(001)面に優先配向したペロブスカイト型酸化物からなり、
    上記圧電体層は、正方晶系の(100)面に優先配向したペロブスカイト型酸化物からなっており、
    上記圧電体層において厚み方向と垂直な方向に作用している残留応力が、0ないし圧縮応力であることを特徴とするインクジェットヘッド。
  9. 第1の電極層と配向制御層と圧電体層と第2の電極層とが順に積層されてなる圧電素子と、該圧電素子の第1の電極層側の面に設けられた振動層と、該振動層の圧電素子とは反対側の面に接合され、インクを収容する圧力室を有する圧力室部材とを備え、上記圧電素子の圧電体層の圧電効果により上記振動層を層厚方向に変位させて上記圧力室内のインクを吐出させるように構成されたインクジェットヘッドであって、
    上記圧電素子の第1の電極層は、チタン、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、銅、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びこれらの酸化物の群から選ばれた少なくとも1種の添加物が添加された貴金属からなり、
    上記配向制御層は、立方晶系又は正方晶系の(100)面又は(001)面に優先配向したペロブスカイト型酸化物からなり、
    上記圧電体層は、正方晶系の(100)面に優先配向したペロブスカイト型酸化物からなっており、
    上記圧電体層において厚み方向と垂直な方向に作用している残留応力が、0ないし圧縮応力であることを特徴とするインクジェットヘッド。
  10. 基板上に、チタン、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、銅、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びこれらの酸化物の群から選ばれた少なくとも1種の添加物が添加された貴金属からなる第1の電極層をスパッタ法により形成する工程と、上記第1の電極層上に、立方晶系又は正方晶系のペロブスカイト型酸化物からなる配向制御層をスパッタ法により形成する工程と、上記配向制御層上に、正方晶系のペロブスカイト型酸化物からなる圧電体層をスパッタ法により形成する工程と、上記圧電体層上に第2の電極層を形成する工程とを含む圧電素子の製造方法であって、
    上記配向制御層を形成する工程は、上記第1の電極層における配向制御層側の表面部に位置する上記添加物を核にしてその上側に結晶成長させることにより、該配向制御層を(100)面又は(001)面に優先配向させる工程であり、
    上記圧電体層を形成する工程は、上記配向制御層により該圧電体層を(100)面に優先配向させ、かつ該圧電体層において厚み方向と垂直な方向に作用する残留応力を0ないし圧縮応力とする工程であることを特徴とする圧電素子の製造方法。
  11. 第1の電極層と配向制御層と圧電体層と第2の電極層とが順に積層されてなる圧電素子を備え、該圧電素子の圧電体層の圧電効果により振動層を層厚方向に変位させて圧力室内のインクを吐出させるように構成されたインクジェットヘッドの製造方法であって、
    基板上に、チタン、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、銅、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びこれらの酸化物の群から選ばれた少なくとも1種の添加物が添加された貴金属からなる第1の電極層をスパッタ法により形成する工程と、
    上記第1の電極層上に、立方晶系又は正方晶系のペロブスカイト型酸化物からなる配向制御層をスパッタ法により形成する工程と、
    上記配向制御層上に、正方晶系のペロブスカイト型酸化物からなる圧電体層をスパッタ法により形成する工程と、
    上記圧電体層上に第2の電極層を形成する工程と、
    上記第2の電極層上に、振動層を形成する工程と、
    上記振動層の第2の電極層とは反対側の面に、圧力室を形成するための圧力室部材を接合する工程と、
    上記接合工程後に、上記基板を除去する工程とを含み、
    上記配向制御層を形成する工程は、上記第1の電極層における配向制御層側の表面部に位置する上記添加物を核にしてその上側に結晶成長させることにより、該配向制御層を(100)面又は(001)面に優先配向させる工程であり、
    上記圧電体層を形成する工程は、上記配向制御層により該圧電体層を(100)面に優先配向させ、かつ該圧電体層において厚み方向と垂直な方向に作用する残留応力を0ないし圧縮応力とする工程であることを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
  12. 第1の電極層と配向制御層と圧電体層と第2の電極層とが順に積層されてなる圧電素子を備え、該圧電素子の圧電体層の圧電効果により振動層を層厚方向に変位させて圧力室内のインクを吐出させるように構成されたインクジェットヘッドの製造方法であって、
    圧力室を形成するための圧力室基板上に、振動層を形成する工程と、
    上記振動層上に、チタン、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、銅、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びこれらの酸化物の群から選ばれた少なくとも1種の添加物が添加された貴金属からなる第1の電極層をスパッタ法により形成する工程と、
    上記第1の電極層上に、立方晶系又は正方晶系のペロブスカイト型酸化物からなる配向制御層をスパッタ法により形成する工程と、
    上記配向制御層上に、正方晶系のペロブスカイト型酸化物からなる圧電体層をスパッタ法により形成する工程と、
    上記圧電体層上に第2の電極層を形成する工程と、
    上記圧力室基板に、圧力室を形成する工程とを含み、
    上記配向制御層を形成する工程は、上記第1の電極層における配向制御層側の表面部に位置する上記添加物を核にしてその上側に結晶成長させることにより、該配向制御層を(100)面又は(001)面に優先配向させる工程であり、
    上記圧電体層を形成する工程は、上記配向制御層により該圧電体層を(100)面に優先配向させ、かつ該圧電体層において厚み方向と垂直な方向に作用する残留応力を0ないし圧縮応力とする工程であることを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
  13. 請求項8又は9記載のインクジェットヘッドと、
    上記インクジェットヘッドと記録媒体とを相対移動させる相対移動手段とを備え、
    上記相対移動手段によりインクジェットヘッドが記録媒体に対して相対移動しているときに、該インクジェットヘッドにおいて圧力室に連通するように設けたノズル孔から該圧力室内のインクを記録媒体に吐出させて記録を行うように構成されていることを特徴とするインクジェット式記録装置。
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