JP2010103546A - 圧電体膜の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】圧電体膜の製造方法は、式(P)で表されるペロブスカイト酸化物からなる圧電体膜の製造方法において、a/b≧1.07の条件で成膜を行う工程(A)と、a/b<1.07の条件で成膜を行う工程(B)とを順次実施して、パイロクロア相を含まないペロブスカイト単相構造であり、a/b≦1.06である圧電体膜を製造する。Pba(Zrx,Tiy,Mb−x−y)bOc・・・(P)(式中、Mは1種又は2種以上のBサイト元素を示す。0<x<b、0<y<b、0≦b−x−y。a:b:c=1:1:3が標準であるが、これらのモル比はペロブスカイト構造を取り得る範囲内で基準モル比からずれてもよい。)
【選択図】なし
Description
Pba(Zrx,Tiy,Mb−x−y)bOc・・・(P)
(式中、Mは1種又は2種以上のBサイト元素を示す。
0<x<b、0<y<b、0≦b−x−y。
a:b:c=1:1:3が標準であるが、これらのモル比はペロブスカイト構造を取り得る範囲内で基準モル比からずれてもよい。)
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、圧電性能と耐久性とがいずれも良好なPZT系の圧電体膜の製造方法を提供することを目的とするものである。
a/b≧1.07の条件で成膜を行う工程(A)と、a/b<1.07の条件で成膜を行う工程(B)とを順次実施して、
パイロクロア相を含まないペロブスカイト単相構造であり、a/b≦1.06である圧電体膜を製造することを特徴とするものである。
Pba(Zrx,Tiy,Mb−x−y)bOc・・・(P)
(式中、Mは1種又は2種以上のBサイト元素を示す。
0<x<b、0<y<b、0≦b−x−y。
a:b:c=1:1:3が標準であるが、これらのモル比はペロブスカイト構造を取り得る範囲内で基準モル比からずれてもよい。)
a/b≧1.07の条件で成膜を行う工程(A)と、a/b<1.07の条件で成膜を行う工程(B)とを順次実施して、
パイロクロア相を含まないペロブスカイト単相構造であり、a/b≦1.06である圧電体膜を製造することを特徴とするものである。
Pba(Zrx,Tiy,Mb−x−y)bOc・・・(P)
(式中、Mは1種又は2種以上のBサイト元素を示す。
0<x<b、0<y<b、0≦b−x−y。
a:b:c=1:1:3が標準であるが、これらのモル比はペロブスカイト構造を取り得る範囲内で基準モル比からずれてもよい。)
1-δPbO + (Zr,Ti)O2 → 1/2 Pb2-δ/2 (Zr,Ti)2O6-δ/2(パイロクロア)
δPbO+1/2 Pb1-δ(Zr,Ti)O3-δ → Pb(Zr,Ti)O3(ペロブスカイト)
例えば、基板がシリコン基板、酸化シリコン基板、あるいはSOI基板等の含シリコン基板の場合、800℃以上の高温では、PbとSiとが反応して鉛ガラスが生成されて基板が脆弱化するため、800℃未満の比較的低温で成膜することが必須である。
PZT系のペロブスカイト型酸化物においては、モルフォトロピック相境界(MPB)及びその近傍で高い圧電性能を示すと言われている。PZT系では、Zrリッチなときに菱面体晶系、Tiリッチなときに正方晶系となり、Zr/Tiモル比=55/45近傍が菱面体晶系と正方晶系との相境界、すなわちMPBとなっている。したがって、ペロブスカイト型酸化物(P)のx,yは、MPB組成又はそれに近いことが好ましい。具体的には、0.4≦y≦0.6(0.6≧x≧0.4)であることが好ましい。
被置換イオンの価数よりも高い価数を有する各種ドナイオンを添加したPZTでは、真性PZTよりも圧電性能等の特性が向上することが知られている。Mは、4価のZr,Tiよりも価数の大きい1種又は2種以上のドナイオンであることが好ましい。かかるドナイオンとしては、V5+,Nb5+,Ta5+,Sb5+,Mo6+,及びW6+等が挙げられる。すなわち、ペロブスカイト型酸化物(P)は、0<b−x−yであり、MがV,Nb,Ta,及びSbからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を含むペロブスカイト型酸化物(PX)であることが好ましい。
b−x−yは、ペロブスカイト構造を取り得る範囲であれば特に制限されない。例えば、MがNbである場合、0<b−x−y≦0.25であることが好ましく、0<b−x−y≦0.2であることがより好ましい。
圧電体膜の基板側に下部電極が形成され、基板と反対側に多数の上部電極が形成された圧電素子の形態で、圧電体膜の圧電定数d31を測定する。上部電極は、圧電体膜側から20nm厚のTi膜と150nm厚のPt膜とが順次形成された積層構造とし、個々の上部電極の面積を0.6mm2 とする。
offset10V、振幅±10V、1kHzの正弦波電圧下で測定される圧電定数d31をd31(+)と定義する。offset−10V、振幅±10V、1kHzの正弦波電圧下で測定される圧電定数d31をd31(−)と定義する。
d31(+)≧d31(−)の場合は、12.5V±12.5V、100kHzの台形波を印加する(図7上図を参照)。d31(−)>d31(+)の場合は、−12.5V±12.5V、100kHzの台形波を印加する(図7下図を参照)。いずれの場合においても、10億サイクルごとに(すなわち100kHz×10億サイクル=16.7分おきに)電圧印加を切って、LCRメータにて、1V、1kHzのtanδを計測し、tanδが0.1を超えた点を寿命として求める。圧電体膜上の多数の上部電極のうちランダムに選んだ20ヶ所の測定寿命の平均を平均寿命として求める。
本明細書において、「圧電定数d31が150pm/V以上である」とは、上記で定義されるd31(+)とd31(−)とのうち少なくとも一方が150pm/V以上であることを意味するものとする。
例えば、スパッタ法は、基板とターゲットとを対向配置させ、減圧下でプラズマ化させたガスをターゲットに衝突させ、そのエネルギーによりターゲットから飛び出した分子や原子を基板に付着させる成膜方法である。スパッタ法において、a/bは、ターゲット組成、成膜温度、基板の表面エネルギー、成膜圧力、雰囲気ガス中の酸素量、プラズマ電位、及び基板/ターゲット間距離等の成膜に関与するファクターのうち1種又は2種以上を変えることで、調整できる。
図1を参照して、本発明に係る一実施形態の圧電素子及びこれを備えたインクジェット式記録ヘッド(液体吐出装置)の構造について説明する。図1はインクジェット式記録ヘッドの要部断面図(圧電素子の厚み方向の断面図)である。視認しやすくするため、構成要素の縮尺は実際のものとは適宜異ならせてある。
圧電体膜30のパターンは図示するものに限定されず、適宜設計される。また、圧電体膜30は連続膜でも構わない。但し、圧電体膜30は、連続膜ではなく、互いに分離した複数の凸部31からなるパターンで形成することで、個々の凸部31の伸縮がスムーズに起こるので、より大きな変位量が得られ、好ましい。
図2及び図3を参照して、上記実施形態のインクジェット式記録ヘッド3を備えたインクジェット式記録装置の構成例について説明する。図2は装置全体図であり、図3は部分上面図である。
印字部102をなすヘッド3K,3C,3M,3Yが、各々上記実施形態のインクジェット式記録ヘッド3である。
ロール紙を使用する装置では、図2のように、デカール処理部120の後段に裁断用のカッター128が設けられ、このカッターによってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター128は、記録紙116の搬送路幅以上の長さを有する固定刃128Aと、該固定刃128Aに沿って移動する丸刃128Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃128Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃128Bが配置される。カット紙を使用する装置では、カッター128は不要である。
吸着ベルト搬送部122により形成される用紙搬送路上において印字部102の上流側に、加熱ファン140が設けられている。加熱ファン140は、印字前の記録紙116に加熱空気を吹き付け、記録紙116を加熱する。印字直前に記録紙116を加熱しておくことにより、インクが着弾後に乾きやすくなる。
印字検出部124は、印字部102の打滴結果を撮像するラインセンサ等からなり、ラインセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まり等の吐出不良を検出する。
後乾燥部142の後段には、画像表面の光沢度を制御するために、加熱・加圧部144が設けられている。加熱・加圧部144では、画像面を加熱しながら、所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラ145で画像面を加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列にプリントする場合には、カッター148を設けて、テスト印字の部分を切り離す構成とすればよい。
インクジェット記記録装置100は、以上のように構成されている。
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能である。
Siウエハ上にスパッタ法により、下部電極として20nm厚のTi膜と150nm厚の(111)Ir膜とを順次成膜した。この下部電極上にNb−PZT圧電体膜を成膜した。Nb−PZT圧電体膜の成膜に際しては、基板温度420℃で150nm厚の初期層を成膜した後、基板温度の設定温度を450℃に変えて引き続き主層の成膜を行った。使用した装置では、設定温度を変更した後、実際に基板温度がsettei温度に昇温するには10分程度に時間がかかる。Nb−PZT圧電体膜の総厚は4μmとした。
成膜装置:RFスパッタ装置(アルバック社製「強誘電体成膜スパッタ装置MPS型」)、
ターゲット:120mmφのPb1.3((Zr0.52Ti0.48)0.88Nb0.12)O3焼結体、
成膜パワー:500W、
基板/ターゲット間距離:60mm、
成膜圧力:0.3Pa、
成膜ガス:Ar/O2=97.5/2.5(モル比)。
得られた圧電体膜は、ペロブスカイト構造を有する(100)配向膜であった。Lotgerling法により測定される配向度Fは99%であった。パイロクロア相のピークは観察されず、得られた圧電体膜はペロブスカイト単相構造の結晶性の良好な膜であった。「パイロクロア相のピーク」は、Pb2Nb2O7パイロクロアの(222)面である2θ=29.4°付近、及び(400)面である2θ=34.1°の±1°の範囲に現れる。
圧電体膜の成膜温度条件を表1に示す条件とした以外は実施例1と同様にして、圧電素子を得た。評価結果を表1及び表2に示す。
実施例1〜4で得られたNb−PZT膜はいずれも、a/b≦1.06であり、パイロクロア相のないペロブスカイト単相構造の結晶性の良好な膜であった。得られた膜はいずれも、高圧電性能と高耐久性とを有する膜であった。
ターゲット組成をPb1.3(Zr0.52Ti0.48)O3とした以外は実施例1〜4と同様にして、本発明の圧電素子を製造した。真性PZTにおいても、a/b≧1.07の条件で成膜を行う工程(A)と、a/b<1.07の条件で成膜を行う工程(B)とを順次実施することにより、パイロクロア相を含まないペロブスカイト単相構造であり、a/b≦1.06である圧電体膜を製造できることが確認された。得られた圧電体膜は、圧電性能と耐久性とがいずれも良好であった。ただし、Nbをドープしない真性PZTでは、Nb−PZTよりも圧電性能が相対的に低く、変位が少ない分、耐久性は真性PZTよりも向上した。
本発明者は、初期層の厚みを変える以外は比較例6と同様にして、初期層の厚みの検討を行った。結果を表3に示す。表に示すように、初期層は30nm以上が好ましいことが明らかとなった。
3、3K,3C,3M,3Y インクジェット式記録ヘッド(液体吐出装置)
10 基板
20、40 電極
30 圧電体膜
60 インクノズル(液体貯留吐出部材)
61 インク室(液体貯留室)
62 インク吐出口(液体吐出口)
100 インクジェット式記録装置
Claims (6)
- 下記一般式(P)で表されるペロブスカイト酸化物からなる(不可避不純物を含んでいてもよい)圧電体膜の製造方法において、
a/b≧1.07の条件で成膜を行う工程(A)と、a/b<1.07の条件で成膜を行う工程(B)とを順次実施して、
パイロクロア相を含まないペロブスカイト単相構造であり、a/b≦1.06である圧電体膜を製造することを特徴とする圧電体膜の製造方法。
Pba(Zrx,Tiy,Mb−x−y)bOc・・・(P)
(式中、Mは1種又は2種以上のBサイト元素を示す。
0<x<b、0<y<b、0≦b−x−y。
a:b:c=1:1:3が標準であるが、これらのモル比はペロブスカイト構造を取り得る範囲内で基準モル比からずれてもよい。) - 工程(A)の成膜温度が工程(B)の成膜温度よりも相対的に低いことを特徴とする請求項1に記載の圧電体膜の製造方法。
- 気相成膜法により工程(A)及び工程(B)を実施することを特徴とする請求項1又は2に記載の圧電体膜の製造方法。
- 前記一般式(P)で表されるペロブスカイト型酸化物は、
0<b−x−yであり、MがV,Nb,Ta,及びSbからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を含むペロブスカイト型酸化物(PX)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の圧電体膜の製造方法。 - シリコン基板、酸化シリコン基板、及びSOI基板のうちいずれかの基板上に前記圧電体膜を製造することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の圧電体膜の製造方法。
- 3.0μm以上の膜厚で前記圧電体膜を製造することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の圧電体膜の製造方法。
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