JP5727910B2 - ワッシャ - Google Patents
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Description
従来の差動歯車機構用のワッシャは、図5に示すように円周方向複数箇所に潤滑油を保持するための8個の貫通孔が穿設されている。また、差動歯車機構用のワッシャは、図5に示すように、相手材と摺動する際の回転速度は通常数十rpm、片輪空転時に最大1000rpm程度と低速であるため、スラスト面に十分な油膜を形成しにくいという欠点があった。
なお、差動歯車機構用のワッシャではないけれども、スラスト方向の荷重を受けるワッシャ部材およびそのスラスト面の改良として例えば特許文献1〜特許文献3が公知である。
潤滑油を貯溜するための潤滑油供給溝を上記スラスト面に形成し、上記潤滑油供給溝は、一端がワッシャの内周部に開口するとともに他端がスラスト面の放射方向の中央部分に位置し、かつ円周方向複数箇所に形成された内方給油溝と、一端がワッシャの外周部に開口するとともに他端がスラスト面の放射方向の中央部分に位置し、かつ上記内方給油溝と円周方向において互い違いに形成された外方給油溝とを備えており、さらに、上記内方給油溝および外方給油溝はS字形またはZ字形に形成されるとともにスラスト面の放射方向においてオーバラップして配置されていることを特徴とするものである。
したがって、製造コストの増加を抑制して摺動性能が良好なワッシャを提供することができる。
しかして、本実施例のワッシャ1は、スラスト面1Aとなる両端面に潤滑油供給溝2を形成したことが特徴である。すなわち、スラスト面1Aにおける内周部1B側に円周方向において等ピッチで複数の内方給油溝3が形成されている。また、スラスト面1Aにおける外周部1C側に円周方向において等ピッチで、かつ上記各内方給油溝3と互い違いに外方給油溝4が形成されている。これら複数の内方給油溝3と外方給油溝4とによって潤滑油供給溝2が構成されている。
より詳細には、外方給油溝4は、外周部1Cから放射方向の中央部分1Dにわたって設けられており、これら外方給油溝4もスラスト面1Aの円周方向に18個形成されている。外方給油溝4の外方側の端部4Aから中央部分1Dの外周縁1Dbまでの箇所が潤滑油の導入部4Bとなっている。他方、外方給油溝4の内方側の端部4Cは中央部分1Dの内周縁1Daの隣接外方側に位置している。中央部分1D内に位置する上記端部4Cとその隣接部分が、潤滑油を貯溜する貯溜部4Dとなっている。外方給油溝4は、その内外の端部4B、4Cを結ぶ仮想の直線がスラスト面1Aの放射方向と一致するように配置されている。
隣り合う内方給油溝3の貯溜部3Dと外方給油溝4の貯溜部4Dとは対向した状態となり、中央部分1Dにおいて内方給油溝3と外方給油溝4とが放射方向でオーバラップしている。
ここで、本実施例においては、内方給油溝3の導入部3Bと外方給油溝4の導入部4Bは、ワッシャ1が正逆に回転される際の回転方向に対して傾斜した配置となっている。そのため、上述したワッシャ1が正逆に回転される際には、導入部3B(4B)から貯溜部3D(4D)へ円滑に、かつ確実に導入されるようになっている。このように、ワッシャ1の両方のスラスト面1Aに形成された潤滑油供給溝2は、スラスト面1Aが正逆いずれの方向に回転して摺動する場合であっても、内方給油溝3の貯溜部3Dあるいは外方給油溝4の貯溜部4Dに潤滑油を確実に貯溜できるように構成されている。
なお、本実施例において上記内方給油溝3と外方給油溝4とが放射方向においてオーバラップする範囲は、スラスト面1Aにおける内周部1Bから外周部1Cまでの放射方向の範囲(ワッシャ1の幅)の10%〜80%となっている。
また、前述したようにワッシャ1は鉄系の材料からなるが、スラスト面1Aの表面にはコーティング材等の被膜は施していない。
そして、この図1に示したワッシャ1は、スラスト面1Aの面積に対して潤滑油供給溝2(内方給油溝3、外方給油溝4)が占める割合は小さくなっている。そのため、この図1のワッシャ1は、僅かな潤滑油をスラスト面1Aに供給すればよい、低負荷のワッシャ1として好適である。
そのため、ワッシャ1のスラスト面1Aに十分な量の潤滑油を保持することができるので、スラスト面1Aの全域にわたって潤滑油の油膜を形成することができる。そのため、本実施例においては、安価な鉄系材料によってワッシャ1を製造することができ、しかも、スラスト面1Aに形成された潤滑油供給溝2によりワッシャ1の耐摩耗性および耐焼付性を向上させることができる。
より詳細には、内方給油溝3と外方給油溝4はスラスト面1Aの円周方向において各36個ずつ設けられている。このように内方給油溝3と外方給油溝4の配置数を増加させたことに伴って、スラスト面1Aに占める潤滑油供給溝2の割合は、上記第1実施例のものよりも大きくなっている。特にこの第2実施例においては、中央部分1Dの面積に対して貯溜部3D、4Dが占める割合が上記第1実施例よりも大きくなっている。そのため、この第2実施例のワッシャ1は、スラスト面1Aに大きな負荷が作用する箇所のワッシャとして好適である。その他の構成は上記第1実施例と同じであり、この第2実施例においては上記第1実施例と対応する各部に同一の部材番号を付している。
このような第2実施例であっても、上述した第1実施例と同様の作用・効果を得ることができる。
このような構成の第3実施例であっても上記各実施例と同様の作用・効果を得ることができる。
また、ワッシャ1(101)の摺動特性を向上させるために、スラスト面1A(101A)に樹脂被膜、化成処理被膜およびめっき被膜などの所要の材料をコーティングしても良い。
また、上記実施例においては、内方給油溝3と外方給油溝4を円周方向において1個ずつ交互に配置しているが、内方給油溝3と外方給油溝4を円周方向において2個ずつ交互に配置しても良いし、或いは内方給油溝3を隣接させて2個配置し、その隣に外方給油溝4を1個配置するように交互に配置しても良い。
また、内方給油溝3(103)および外方給油溝4(104)の断面形状は、矩形状、円弧状や、隅にRのついた矩形状などの他に、V字形の頂点を溝幅方向にずらした断面三角形状や、溝底面の中央部が浅くなった形状などでも良い。
さらに、上述した各実施例は、本発明を差動歯車機構用のワッシャに適用した場合について説明しているが、差動歯車機構用のだけでなくその他のスラストワッシャにも本発明を適用できることは勿論である。
1B‥内周部 1C‥外周部
1D‥中央部分 2‥潤滑油供給溝
3‥内方給油溝 4‥外方給油溝
Claims (4)
- 環状のワッシャ本体と、
前記ワッシャ本体に形成され、相手材と摺動するスラスト面と、
前記スラスト面に形成され、潤滑油を貯溜するための潤滑油供給溝と
を有し、
前記潤滑油供給溝は、
一端が前記ワッシャ本体の内周部に開口するとともに他端が前記スラスト面の放射方向の中央部分に位置し、かつ円周方向において複数箇所に形成された内方給油溝と、
一端が前記ワッシャ本体の外周部に開口するとともに他端が前記スラスト面の放射方向の中央部分に位置し、かつ前記内方給油溝と円周方向において互い違いに形成された外方給油溝と
を有し、
前記内方給油溝および前記外方給油溝はS字形またはZ字形に形成され、
前記内方給油溝と前記外方給油溝とは、前記スラスト面の中央部分において円周方向にオーバラップして配置されている
ことを特徴とするワッシャ。 - 前記スラスト面は相手材に対して正逆方向に回転して摺動できるようになっており、
前記内方給油溝の一端とその隣接部分および外方給油溝の一端とその隣接部分は潤滑油の導入部となっており、
前記スラスト面が相手材に対して正逆に回転して摺動する際には、前記各内方給油溝または各外方給油溝の導入部から各内方給油溝または各外方給油溝に潤滑油が導入される
ことを特徴とする請求項1に記載のワッシャ。 - 前記潤滑油供給溝は、前記ワッシャ本体における両方のスラスト面に形成されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載のワッシャ。 - 前記スラスト面には、樹脂被膜、化成処理被膜およびめっき被膜のいずれか1種以上が形成されている
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載のワッシャ。
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