JP5724918B2 - すべり軸受 - Google Patents
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Description
すなわち、特許文献1のすべり軸受は、すべり軸受内に供給された潤滑油が周囲に飛散するのを防止するために、すべり軸受の端面に飛散防止用の円弧状プレートを備えている。
次に、特許文献2のすべり軸受は、その摺動面に複数の円周方向溝が形成されるとともに、各円周方向溝内に熱膨張率の大きな収縮材料が充填されている。そして、低中温時においては上記収縮材料が収縮して円周方向溝内に空間部が形成されるので、その空間部内に潤滑油が貯溜される。したがって、低中温時においてエンジンが作動されると上記空間部内に貯溜された潤滑油が隣接位置の摺動面に供給されるので、特許文献2においては耐焼付性が良好なすべり軸受を提供することができる。なお、特許文献2のすべり軸受は、高温時において上記収縮部材が熱膨張して上記空間部内にも充満するので、熱膨張後の収縮部材の表面を含めた摺動面の面積が増大することにより、摺動面の面圧が低下するように構成されている。
次に、特許文献3の軸受装置においては、すべり軸受の一部又は全部として熱膨張材料を採用してあり、低温、中温および高温において熱膨張材料の熱膨張が異なることにより、温度変化に応じた摺動特性が得られるように意図されている。
つまり、前述したようなクランクシャフト用のすべり軸受は、一対の半割り軸受を抱き合せて円筒状に構成されており、一般的には各半割り軸受の摺動面に円周方向に伸びる油溝が形成されるとともに、突き合わせ面に隣接する内周面にクラッシリリーフ(切欠き部)が形成されている(例えば特許文献4参照)。このクラッシリリーフは、一対の半割り軸受を突き合わせて円筒状に形成する際に、両者の突き合わせ箇所が半径方向内方へ変形できるように設けられている。
そして、円筒状としたすべり軸受によってクランクシャフトを軸支した状態においては、上記クラッシリリーフとクランクシャフトの外周面との間には、すべり軸受の端面に開口する軸方向の隙間が生じている(特許文献4の図1参照)。そのため、エンジンの暖機時において、すべり軸受の摺動面(内周面)に供給された潤滑油は、上記クラッシリリーフとクランクシャフトの外周面との間の軸方向の隙間を介してすべり軸受の外部へ排出されることになる。
このように、エンジンの暖機時に潤滑油を速やかに昇温することが要望されているにも拘らず、従来のすべり軸受においては、暖機時においても上記すべり軸受とクランクシャフトとの間の軸方向の隙間を介して潤滑油がすべり軸受の外部へ排出される。そのため、一対の半割り軸受から構成された従来の一般的なすべり軸受においては、暖機運転時において摺動面に供給される潤滑油が速やかに昇温されないという問題があった。したがって、従来ではすべり軸受に供給される潤滑油の粘度が低いままで暖機運転が行われるので、エンジンのフリクションロスが大きくなり、ひいてはエンジンの燃費が悪くなるという問題点が指摘されていたものである。
一方、上述した低中温時とは異なり、高温時においてはすべり軸受の焼付き防止のためにすべり軸受の摺動面に流通する潤滑油の流通量を増加させることが要望される。
そこで、本発明は、低中温時においては潤滑油の流出量を抑制し、かつ、高温時においては潤滑油の流出量を増加させることが可能なすべり軸受を提供するものである。
上記半割り軸受における軸方向の両端の位置に、該半割り軸受よりも熱膨張率が大きなバイメタルからなるシール部材をそれぞれ設けて、
低中温時においては、縮径した状態の上記シール部材によって上記クラッシリリーフの開口部を閉鎖して上記摺動面から外部へ流出する潤滑油の量を抑制し、
高温時においては、拡径した状態の上記シール部材によって上記クラッシリリーフの開口部を開放して上記摺動面から外部へ流出する潤滑油の量を増加させるようにしたものである。
上下一対の半割り軸受2における左右の突き合わせ面2Dを相互に当接させることで全体として円筒状のすべり軸受1が構成されるが、相互に当接した状態の半割り軸受2の突き合わせ面2Dは、クラッシリリーフ2Eの空間部内に半径方向内方へ塑性変形することができる。そのため、すべり軸受1によってクランクシャフト3を軸支した際に、上記突き合わせ面2Dの塑性変形箇所がクランクシャフト3の外周面と当接しないようになっている。
すなわち、図1ないし図2に示すように、上記半割り軸受2における軸方向の両端の位置となる各端面2F、2Fに、半円の円弧状をしたシール部材5、5が取り付けられている。すべり軸受1を構成する図示しない下方側の半割り軸受にも図1、図2に示した半割り軸受2と同様のシール部材5、5が取り付けられている。したがって、上下一対の半割り軸受2により円筒状となったすべり軸受1は、その軸方向の両端の位置に円周方向全域にわたってシール部材5、5が取り付けられている。
前述したように、半割り軸受2自体も外周部側が鋼板からなり、かつ、内周部側がCu合金あるいはAl合金などの軸受合金からなるバイメタルとなっているが、上記シール部材5としてすべり軸受1自体よりも熱膨張率が大きなバイメタルを採用している。
さらに、本実施例においては、バイメタルからなる円弧状のシール部材5、5を次のようにして軸方向の両端面2F、2Fに連結している。すなわち、半割り軸受2の各端面2F、2Fにシール部材5、5を重合させ、その状態において各シール部材5、5の円周方向中央部5Eをスポット溶接で各端面2F、2Fの円周方向の中央部に連結している。このように半割り軸受2の端面2F、2Fにそれぞれシール部材5、5を連結してあり、その後、上下一対の半割り軸受2を抱き合せて円筒状のすべり軸受1が形成されるようになっている。
これにより、すべり軸受1の摺動面2Aに供給された潤滑油が軸方向の隙間4内に保持された状態となるので、該潤滑油はエンジン本体の熱によって速やかに昇温される。このように、低中温時であるエンジンの暖機時においては、すべり軸受1内の潤滑油が速やかに昇温されることで、該潤滑油の粘度が低下し、その潤滑油は摺動面2Aおよび摺動部分へ速やかに供給される。そのため、本実施例のすべり軸受1によれば、摺動部分のフリクションロスを低減させることができ、ひいてはエンジンの燃費を向上させることができる。
ここで、図6はシール部材5を設けた本実施例のすべり軸受1とシール部材を備えていない従来のすべり軸受との潤滑油の温度変化を比較したものである。この図6から明らかなように、すべり軸受の油温は、従来技術と比較して本実施例の方が速やかに上昇していることが理解できる。
このように、本実施例のすべり軸受1によれば、低中温時において潤滑油を速やかに昇温させることができ、かつ高温時においては十分な耐焼付性を得ることができる。
すなわち、図7に示した実施例においては、半割り軸受102の端面102Fにおける内周面側に円周方向に沿った係合凹部102Gを形成し、その係合凹部102G内にシール部材105を嵌め込み、その後に該シール部材105を係合凹部102Gの底面にスポット溶接している。なお、この図7の実施例においては、上記第1実施例と対応する部材にそれぞれ100を加算した部材番号を付している。
次に、図8の実施例においては、軸方向の両端の位置となる摺動面202A(内周面)に円周方向に沿った係合溝202Hを形成してあり、そこにシール部材205を嵌着している。なお、この図8の実施例においては、上記第1実施例と対応する部材にそれぞれ200を加算した部材番号を付している。
このような図7、図8に示した実施例であっても上記第1実施例と同様の作用、効果を得ることができる。
ここで、半割り軸受302の外周面の半径R1は、シール部材305の外周面の半径R2よりも大きな寸法に設定されている。つまり、R1>R2となっている。このように、図9ないし図10に示す実施例においては、半割り軸受302とは曲率が異なるシール部材305を、半割り軸受302の端部の位置に一体に連結している。
そのため、クラッシリリーフ302Eの軸方向の開口部302E’、302E’は、低中温時において縮径しているシール部材305の縁部305Dによって閉鎖される。他方、高温時においては、シール部材305の縁部305Dが熱膨張して拡径することで開口部302E’、302E’が開放されるようになっている。このような図9ないし図10に示す実施例であっても、上記第1実施例と同等の作用、効果を得ることができる。
なお、上述した各実施例においては、シール部材5(105、205、305)をスポット溶接により半割り軸受2(102、202、302)に連結しているが、スポット溶接の代わりにピンやカシメを用いて連結しても良い。
2A‥摺動面 2D‥突き合わせ面
2E‥クラッシリリーフ 2E’‥開口部
3‥シール部材
Claims (5)
- 半円筒状に形成されるとともに、内周面における円周方向の両端にそれぞれ切欠き部からなるクラッシリリーフを有する一対の半割り軸受を備え、それら一対の半割り軸受を相互に抱き合せて円筒状に形成されて、内周面となる摺動面によって回転軸を回転自在に軸支するようにしたすべり軸受において、
上記半割り軸受における軸方向の両端の位置に、該半割り軸受よりも熱膨張率が大きなバイメタルからなるシール部材をそれぞれ設けて、
低中温時においては、縮径した状態の上記シール部材によって上記クラッシリリーフの開口部を閉鎖して上記摺動面から外部へ流出する潤滑油の量を抑制し、
高温時においては、拡径した状態の上記シール部材によって上記クラッシリリーフの開口部を開放して上記摺動面から外部へ流出する潤滑油の量を増加させることを特徴とするすべり軸受。 - 上記シール部材は半割り軸受の円周方向に沿った円弧状に形成されており、また、上記シール部材は、上記半割り軸受における軸方向の両端となる端面に設けられ、かつ、円周方向の中央部を半割り軸受の端面に連結されることを特徴とする請求項1に記載のすべり軸受。
- 上記半割り軸受における軸方向の両端の位置となる内周面に円周方向溝が形成されており、また、上記各シール部材は半割り軸受の円周方向に沿った円弧状に形成されており、かつ、上記円周方向溝に嵌着されていることを特徴とする請求項1に記載のすべり軸受。
- 上記半割り軸受における軸方向の両端の位置には、円周方向における両方の縁部から円周方向の中央部に向けて伸びる左右一対の切欠き部が形成されており、また、上記各シール部材は半割り軸受の円周方向に沿った左右一対の円弧状部材から構成されるとともに、それら左右一対の円弧状部材は上記左右一対の切欠き部に嵌着されていることを特徴とする請求項1に記載のすべり軸受。
- 上記バイメタルとしてのシール部材は、外周部側が鋼板からなり、内周部側が銅又はアルミ合金からなることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のすべり軸受。
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