JP2010084778A - 滑り軸受構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】径方向の一側へ荷重を受けながら一方向に回転する軸を径方向の他側から供給されるオイルにより軸受メタルとの間に形成される油膜を介して支持する滑り軸受において、少ないオイル供給量でも油膜を確保できるようにする。
【解決手段】ロアメタル7の摺動面の荷重最大部位Tを含む第1領域L1は平滑な面とし、その上流側の第2領域L2の両側端部に円周方向に延びる互いに平行なやや深い側端溝16を設け、その更に上流側の第3領域L3には、一対の側端溝16をそのまま平行に延設するとともに、円周方向に延びる深い中央溝17を設け、側端溝16と中央溝17とを複数の浅い傾斜溝18で接続して、荷重最大部位に達する前に両側端側から流れ出ようとするオイルを側端溝16で捉え、傾斜溝18を経て中央溝17に集め、摺動面の上流中央部に戻して循環させる。
【選択図】図3
【解決手段】ロアメタル7の摺動面の荷重最大部位Tを含む第1領域L1は平滑な面とし、その上流側の第2領域L2の両側端部に円周方向に延びる互いに平行なやや深い側端溝16を設け、その更に上流側の第3領域L3には、一対の側端溝16をそのまま平行に延設するとともに、円周方向に延びる深い中央溝17を設け、側端溝16と中央溝17とを複数の浅い傾斜溝18で接続して、荷重最大部位に達する前に両側端側から流れ出ようとするオイルを側端溝16で捉え、傾斜溝18を経て中央溝17に集め、摺動面の上流中央部に戻して循環させる。
【選択図】図3
Description
本発明は、軸受メタルを有する滑り軸受構造に関し、特に、径方向の一側へ荷重を受けながら一方向に回転する軸を径方向の他側から供給されるオイルにより軸受メタルとの間に形成される油膜を介して支持する滑り軸受構造に関する。
エンジンのシリンダブロックのバルクヘッド部に形成される主軸受部とクランク軸のクランクジャーナル部との間には、通常、アッパメタルとロアメタルとの二つの半割り軸受メタルからなる滑り軸受が介装される。そして、この滑り軸受は、アッパメタルの幅方向中央部にバルクヘッド部の油路に連通する油孔が形成されるとともに内周面の中央部分に油孔に連通する溝が形成され、オイルポンプで汲み上げられた潤滑オイルがバルクヘッド部の油路を経て油孔からアッパメタルの内周側に供給され、それがアッパメタルおよびロアメタルの内周面とクランクジャーナル部との間に広がって油膜を形成し、その油膜を介してクランク軸のクランクジャーナル部を支持するよう構成されている。一方、ロアメタルの内周面は、クランクジャーナル部にかかる荷重に耐えられる軸受面積を確保できるよう平滑な面とされるのが普通である。
こうしたエンジン主軸受用の滑り軸受において、ロアメタルは油溝が形成されていないので、軸受に供給されるオイルが側方に排出されにくくて、軸受の冷却能力が低下し、エンジンの高回転高負荷時に軸受温度が上昇し、ひいては焼き付きを起こしてしまう問題があるということから、ロアメタルの内周面に、潤滑オイルをロアメタルの内周面の中央部から外方に導くための逆V字型または円弧状の複数の溝を設けて、軸受に供給されたオイルが油膜の切れない程度に軸受の中央部から外方に排出されるようにしたものが従来から知られている(例えば、特許文献1参照。)。
また、それとは別に、同じくエンジン主軸受用の滑り軸受において、ロアメタルの内周面に円周方向の細溝を多数並列に形成することで、潤滑油が軸線方向に流出するのを抑制して給油圧の低下を抑制し、また、潤滑油を細溝内に流して放熱を促すとともに、そのようにロアメタルの内周面に細溝を多数形成したのでは、細溝と細溝との間の凸部に軸荷重が集中して耐磨耗性が低下するということから、最小油膜厚さとなる部位は細溝を設けていない平滑な内面として、この部位の内面全体の広い面積で軸荷重を支えるようにして、耐摩耗性及び非焼付き性を確保するというものが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
エンジンのクランク軸はピストンの往復動に伴い径方向の一側(通常は下側)へ荷重を受けながら一方向に回転する。そして、その荷重が一番大きくなる位置で油膜厚さが一番小さくなり、軸受メタル内周面とクランクジャーナル部とのクリアランスが一番小さくなる。摺動抵抗を抑えるためには、この一番クリアランスが小さくなる位置を含む軸受面全域で油膜を確保できるだけのオイル供給量が必要である。オイル供給量が十分でないと、軸受内にオイルで満たされない部分が発生し安定した油膜の確保が困難である。
しかしながら、オイル供給量を多くするためには、オイルポンプの仕事量を大きくする必要があり、オイルポンプは、通常、エンジンによって駆動する機械式のポンプであるため、エンジン補機の負荷が増大することになって、それが燃費に影響する。
エンジンの主軸受としてバルクヘッドの主軸受部に介装される半割り構造の滑り軸受は、オイルポンプで汲み上げられた潤滑オイルがバルクヘッド部の油路を経てアッパメタルの内周側に供給され、それが軸受メタルであるアッパメタルおよびロアメタルの内周面とクランクジャーナル部との間に広がって油膜を形成し、その油膜を介してクランク軸のクランクジャーナル部を支持するよう構成されるもので、バルクヘッド部の油路に連通する油孔からアッパメタルの内周側に供給されたオイルは、回転するクランクジャーナル部に引きずられ、クリアランスが小さくなる方向に引き込まれていくような流れとなって、アッパメタルおよびロアメタルの内周面とクランクジャーナル部との間に広がっていくが、軸受は両側端は開放状態であるため、軸受メタル内周面とクランクジャーナル部との間に油膜を形成するオイルは供給されたオイルの一部であって、クリアランスが小さくなる方向に引き込まれるのに伴って、殆どのオイルが軸受の両側端側からどんどん流れ出てしまう。その分、必要なオイル供給量が増大し、燃費が悪化する。
本発明は、径方向の一側へ荷重を受けながら一方向に回転する軸を径方向の他側から供給されるオイルにより軸受メタルとの間に形成される油膜を介して支持する滑り軸受において、少ないオイル供給量でも油膜を確保できるようにすることを目的とする。
本発明の滑り軸受構造は、軸受メタルを有し、径方向の一側へ荷重を受けながら一方向に回転する軸を径方向の他側から供給されるオイルにより軸受メタルとの間に形成される油膜を介して支持する滑り軸受構造において、軸受メタルの摺動面の荷重が最大となる部位を含む第1領域は平滑な面とし、摺動面の第1領域の軸回転方向の遅れ側の第2領域は、メタル幅方向の両側端部に円周方向に延びる互いに平行な一対の側端溝を設け、摺動面の第2領域の軸回転方向の遅れ側の第3領域は、第2領域の一対の側端溝をそのまま平行に延設するとともに、該側端溝と円周方向に一部ラップして幅方向の中央に円周方向に延びる中央溝を設け、それら側端溝と中央溝とがラップする部分に、それら側端溝と中央溝とを接続する傾斜溝を、側端溝との接続部位に対し中央溝との接続部位が軸回転方向の進み側となるように設けたことを特徴とする。
この滑り軸受構造では、軸受メタルと軸との間に供給されたオイルは、回転する軸に引きずられ、軸受の両側端側に広がりつつクリアランスが小さくなる方向に引き込まれていって軸受メタルと軸との間に油膜を形成する。そして、クリアランスが小さくなる方向に引き込まれるのに伴って、クリアランスの断面積が小さくなるために軸受の両側端側から流れ出ようとするオイルが多くなり、そのままでは、軸受メタルの摺動面の荷重が最大となる部位まで達するオイルが少なくなるため、元々のオイル供給量が少ないと荷重最大部位で油膜を確保することができなくなるが、本発明の滑り軸受構造では、オイルが荷重最大部位を含む摺動面の第1領域に達する前に、第1領域の軸回転方向の遅れ側の第2領域において、両側端側から流れ出ようとするオイルがメタル幅方向の両側端部の円周方向に延びる互いに平行な一対の側端溝に捉えられ、この側端溝に捉えられたオイルが溝内で一部上流側へ圧し戻されて、第2領域の軸回転方向の遅れ側の第3領域まで戻り、側端溝から傾斜溝を経て中央溝に集められ、再びクリアランスが小さくなる方向へ引き込まれていって、荷重最大部位での油膜形成に寄与することになる。このように一旦クリアランスが小さい領域に流れたオイルを上流側へ循環させて再利用することにより、少ないオイル供給量でも安定して油膜を確保できる。そして、軸受メタルの摺動面の荷重が最大となる部位は、平滑な面で、広い面積で軸荷重を支えることができ、耐摩耗性及び非焼付き性を確保できる。
この滑り軸受構造は、傾斜溝が、円周方向に間隔をおいて複数設けられているのがよい。
このように傾斜溝が円周方向に間隔をおいて複数設けられることで、側端溝から中央溝へオイルが効率よく流れ、オイルの再利用による油膜の形成が促進される。
また、この滑り軸受構造は、軸と軸受メタルとの間の油膜厚さが、第1領域、第2領域、第3領域の順に厚くなっている場合に好適である。
この滑り軸受構造は、エンジンの主軸受としてバルクヘッドの主軸受部に介装される半割り構造の滑り軸受に適用することができる。その場合、径方向の一側へ荷重を受けながら一方向に回転する軸がエンジンのクランク軸で、摺動面の荷重が最大となる部位を含む第1領域は平滑な面とし、摺動面の前記第1領域の軸回転方向の遅れ側の第2領域は、メタル幅方向の両側端部に円周方向に延びる互いに平行な一対の側端溝を設け、摺動面の第2領域の軸回転方向の遅れ側の第3領域は、第2領域の一対の側端溝をそのまま平行に延設するとともに、該側端溝と円周方向に一部ラップして幅方向の中央に円周方向に延びる中央溝を設け、それら側端溝と中央溝とがラップする部分に、それら側端溝と中央溝とを接続する傾斜溝を、側端溝との接続部位に対し中央溝との接続部位が軸回転方向の進み側となるように設けた軸受メタルが、アッパメタルとロアメタルとの二つの半割り軸受メタルからなる滑り軸受のロアメタルである。
このようにエンジンの主軸受としてバルクヘッドの主軸受部に介装される半割り構造の滑り軸受に適用することで、少ないオイル供給量でも安定して油膜を確保できるとともに、オイルの流出を抑えることで低温時の油膜の昇温による摺動抵抗の軽減に寄与できる。
このように、本発明によれば、本発明の滑り軸受構造によれば、クリアランスが小さい領域から上流側へオイルを循環させて再利用することができ、少ないオイル供給量でも軸受荷重が最大となる部位を含めむ摺動面の全域に安定して油膜を確保することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図7は本発明の実施形態の一例としてエンジンのクランク軸を支持する主軸受に係る滑り軸受構造を示している。図1はエンジンの主軸受部の軸方向断面図、図2はエンジンの主軸受部の径方向断面図、図3はロアメタルの展開図、図4は図3のA−A断面図(a)およびB−B断面図(b)、図5は主軸受の油膜圧力分布の説明図、図6はロアメタルの各溝毎のオイル流れを模式的に示すもので、(a)は傾斜溝内のオイル流れのイメージ図、(b)は上流側中央溝内のオイル流れのイメージ図、(c)は上流側側端溝内のオイル流れのイメージ図、(d)は下流側中央溝内のオイル流れのイメージ図、図7はロアメタル摺動面の各溝により生ずるオイル流れの説明図である。
図1〜図7は本発明の実施形態の一例としてエンジンのクランク軸を支持する主軸受に係る滑り軸受構造を示している。図1はエンジンの主軸受部の軸方向断面図、図2はエンジンの主軸受部の径方向断面図、図3はロアメタルの展開図、図4は図3のA−A断面図(a)およびB−B断面図(b)、図5は主軸受の油膜圧力分布の説明図、図6はロアメタルの各溝毎のオイル流れを模式的に示すもので、(a)は傾斜溝内のオイル流れのイメージ図、(b)は上流側中央溝内のオイル流れのイメージ図、(c)は上流側側端溝内のオイル流れのイメージ図、(d)は下流側中央溝内のオイル流れのイメージ図、図7はロアメタル摺動面の各溝により生ずるオイル流れの説明図である。
図1および図2に示すように、この実施形態のエンジンは、シリンダブロック1のバルクヘッド部2に形成された主軸受部3とクランク軸4のクランクジャーナル部5との間に、主軸受としてアッパメタル6とロアメタル7との二つの半割り軸受メタルからなる滑り軸受8が介装されている。
クランク軸4は、回転中心となるクランクジャーナル部5の軸心に対し偏心したクランクピン部9が気筒毎に一対のクランクアーム部10によりクランクジャーナル部5に連結され、そのクランクピン部9に、ピン部軸受11(滑り軸受)を介して、シリンダ内を往復動するピストン(図示せず)に連結するコネクティングロッド12が連結され、爆発荷重を伴うピストンの往復動に伴って径方向の一側(図2に矢印aで示す側)へ荷重を受けながら一方向に回転する。
シリンダブロック1のバルクヘッド部2には、オイルポンプ(図示せず)で汲み上げられたオイルを主軸受部3に滑り軸受8(主軸受)を介して支持されるクランク軸4のクランクジャーナル部5に向けて供給するよう油路13が設けられている。
滑り軸受8(主軸受)のアッパメタル6は、内周面の幅方向中央部に円周方向の溝14が設けられ、また、その溝14をバルクヘッド部3の油路13に連通するよう油孔15が設けられている。
そして、オイルポンプで汲み上げられたオイル(潤滑オイル)がバルクヘッド部2の油路13を経て油孔15からアッパメタル6の内周側に供給され、それが軸受メタル(アッパメタル6およびロアメタル7)の内周面とクランクジャーナル部5との間に広がって油膜を形成する。すなわち、図2に示すように、クランク軸4が径方向の一側(矢印aで示す側)へ荷重を受けながら、一方向(矢印bで示す方向)に回転することにより、滑り軸受8には、図の下側に向けて荷重がかかり、軸受メタル(アッパメタル6およびロアメタル7)の内周面とクランクジャーナル部5との間のクリアランスSは、上側で大きくて下側で小さくなる。そして、油穴15から入ったオイルは、回転するクランク軸4に引きずられ、軸受メタル(アッパメタル6およびロアメタル7)の両側端側に広がりつつ、クリアランスSが小さくなる下側の方向に引き込まれていって油膜を形成する。この油膜を介してクランク軸4のクランクジャーナル部6が支持される。滑り軸受8の摺動面が受ける荷重(軸受荷重)は、摺動面の最下方であるロアメタル7の摺動面の周方向中央部で最大となる。そして、その部分(荷重最大部位T)でクリアランスSが最も小さくなる。
その際、図2に矢印cで示すように油穴15から入り、クリアランスSが小さくなる方向に引き込まれるオイルは、ロアメタル7の内周面が平滑なままでは、荷重最大部位Tに達するまでにクリアランスSの断面積が小さくなるに伴って滑り軸受8の両側端側から流れ出てしまい、荷重最大部位Tに適切な厚さの油膜を確保できなくなる恐れがある。そのため、この実施形態では、ロアメタル7の内周面(摺動面)を図3および図4に示すような構成にしている。
つまり、図3に示すように、ロアメタル7の摺動面の荷重最大部位Tを含む第1領域L1は平滑な面とし、第1領域L1の上流側(軸回転方向の遅れ側)の第2領域L2に、メタル幅方向の両側端部に円周方向に延びる互いに平行な一対の側端溝16を設け、第2領域L2の上流側(軸回転方向の遅れ側)の第3領域L3に、第2領域L2の一対の側端溝16をそのまま平行に延設するとともに、該側端溝16と円周方向に一部ラップして幅方向の中央に円周方向に延びる中央溝17を設け、それら側端溝16と中央溝17とがラップする部分に、それら側端溝16と中央溝17とを接続する傾斜溝18を、側端溝16との接続部位に対し中央溝17との接続部位が下流側(軸回転方向の進み側)となり、上流側(軸回転方向の遅れ側)がメタル幅方向の両側端部に向けて傾斜するよう、円周方向に間隔をおいて複数設けている。
また、ロアメタル7の摺動面の第3領域L3より上流側(軸回転方向の遅れ側)には、第3領域L3の中央溝17をそのまま延設するとともに、第3領域L3に隣接する部分に、第3領域L3の傾斜溝18と並ぶ配列で中央溝17に接続する傾斜溝18を設けている。
これらの溝は、図4に示すように、中央溝17が一番深く、両側の側端溝16が次に深く、傾斜溝18は一番浅い。図4においてnは油膜圧力分布を示す。
さらに、ロアメタル7の摺動面の第1領域より下流側(軸回転方向の進み側)には、第2領域と同様の中央溝19を設け、この中央溝19に接続する傾斜溝20を、中央溝19との接続部位が下流側(軸回転方向の進み側)に位置し、上流側(軸回転方向の遅れ側)がメタル幅方向の両側端部に向けて傾斜する配置で、円周方向に間隔をおいて複数設けている。
第3領域L3の傾斜溝18並びに下流側(軸回転方向進み側)の傾斜溝20は、いずれも端部が閉じたもので、ロアメタル7の側端側に開放されてはいない。
ロアメタル7の内周面をこのような構成とすることで、油穴15から入ってクリアランスSが小さくなる方向に引き込まれるオイルは、荷重最大部位Tを含む摺動面の第1領域L1に達する前に、第1領域L1の上流側(軸回転方向の遅れ側)の第2領域L2において、両側端側から流れ出ようとするオイルがメタル幅方向の両側端部の円周方向に延びる互いに平行な一対の側端溝16に捉えられ、この側端溝16に捉えられたオイルの一部が溝16内で上流側(軸回転方向の遅れ側)へ流れて、第2領域L2の上流側(軸回転方向の遅れ側)の第3領域L3まで戻り、側端溝16から傾斜溝18を経て中央溝17に集められ、中央溝17をさらに上流側(軸回転方向の遅れ側)に戻り、摺動面の中央部から再びクリアランスが小さくなる方向へ引き込まれていくようになる。こうして、一旦クリアランスが小さい領域に流れたオイルを上流側(軸回転方向の遅れ側)へ循環させて再利用することができ、荷重最大部位Tまで引き込まれるオイルの量が多くなって、荷重最大部位Tでも安定して油膜を形成できるようになる。
その結果、図5に示すように、荷重最大部位Tで軸受荷重に対応した高い油膜圧力を確保することができる。図5において、mは主軸受(滑り軸受8)の摺動面とクランクジャーナル部7との間の油膜を形成するオイルを示し、pは油膜圧力分布を示している。クランクジャーナル部5と滑り軸受8のロアメタル7部分の摺動面との間の油膜厚さは、第1領域L1、第2領域L2、第3領域L3の順に厚くなる。
そして、ロアメタル7の摺動面の荷重最大部位Tは、平滑な面であるため、広い面積で軸荷重を支えることができ、耐摩耗性及び非焼付き性を確保できる。
ところで、クランクジャーナル部5とロアメタル7の摺動面との間の油膜は、クランク軸4の一方向の回転により引きずられ、せん断作用に伴い熱を発生させることから、オイルが昇温する。しかし、この実施形態のエンジンでは、ロアメタル7の側端部からのオイルの流出を抑えるとともに、オイルを上流側(軸回転方向の遅れ側)に循環させて再利用するため、エンジンの低温時の油膜の昇温による摺動抵抗の軽減効果が一層高められる。
図6はロアメタル7の各溝毎のオイル流れを模式的に示している。図示のように、ロアメタル7に対し、クランク軸(クランクジャーナル部5)が矢印方向(左側)に摺動すると、オイルmは、クランクジャーナル5の摺動面近傍ではクランクジャーナル7に引きずられる方向に動き、ロアメタル7の摺動面近傍では、その引きずられる方向のベクトルがゼロ(零)に近くなる。そして、溝内では、そのベクトルがマイナス側に作用し、溝が深いと、クリアランスが最小となる部位より上流側(軸回転方向の遅れ側)では、クリアランスが小さくなる方向へ引き込まれることで油膜圧力が高くなるために、特に溝の底部近傍で、オイルmがクランクジャーナル5とは逆の方向に動くという現象が現れる。
そのため、ロアメタル7の摺動面の第1領域より上流側(軸回転方向の遅れ側)では、浅い溝である傾斜溝18のオイルmは、図6の(a)に矢印で示すようにクランクジャーナル5に引きずられて同じ方向に流れるが、深い溝である中央溝17のオイルmは、図6の(b)に示すように浅いところではクランクジャーナル5に引きずられて下流側(軸回転方向の進み側)に流れ、深いところでは上流側(軸回転方向の遅れ側)に流れる。また、やや深い溝である側端溝16のオイルmは、図6の(c)に示すように浅いところではクランクジャーナル5に引きずられて下流側(軸回転方向の進み側)に流れるが、深いところでは、やや弱い流れではあるが上流側(軸回転方向の遅れ側)に流れる。
その結果、図7に示すように、第2領域L2において両側端側から流れ出ようとして側端溝16に捉えられたオイルの一部が溝16内で上流側(軸回転方向の遅れ側)へ流れ、第3領域L3で、側端溝16との接続部位に対し中央溝17との接続部位が下流側(軸回転方向の進み側)となり上流側(軸回転方向の遅れ側)がメタル幅方向の両側端部に向けて傾斜した傾斜溝18を経て中央溝17に集まり、中央溝17をさらに上流側(軸回転方向の遅れ側)に流れて摺動面中央に戻るオイル流れが生じる。これにより、両側端側から流れでようとするオイルを上流側(軸回転方向の遅れ側)へ循環させて再利用することが可能となる。
また、ロアメタル7の摺動面の第1領域より下流側(軸回転方向の進み側)では、浅い溝である傾斜溝20のオイルmは、図6の(a)に矢印で示すようにクランクジャーナル5に引きずられて同じ方向に流れる。また、クリアランスが最小となる位置よりも下流側であるので、クリアランスが小さくなる方向へ引き込まれるということがなくて油膜圧力が低いために、深い溝である中央溝20のオイルmも、上流側(軸回転方向の遅れ側)とは違って、図6の(d)に矢印で示すようにクランクジャーナル5に引きずられる方向に流れる。そのため、図7に示すように、第1領域L1より下流側(軸回転方向の進み側)では、両側端側から流れ出ようとしたオイルの一部は傾斜溝20に捉えられ、中央溝19に集まって摺動面中央に戻り、再利用されるオイル流れとなる。
なお、上記実施形態は、エンジンのクランク軸を支持する主軸受に係る滑り軸受構造に関するものであるが、本発明は、これに限定されるものではなく、径方向の一側へ荷重を受けながら一方向に回転する軸を径方向の他側から供給されるオイルにより軸受メタルとの間に形成される油膜を介して支持する滑り軸受構造一般に適用することができる。
1 シリンダブロック
2 バルクヘッド部
3 主軸受部
4 クランク軸
5 クランクジャーナル部
6 アッパメタル
7 ロアメタル
8 滑り軸受(主軸受)
13 油路
14 溝
15 油孔
16 側端溝
17 中央溝
18 傾斜溝
T 荷重最大部位
S クリアランス
L1 第1領域
L2 第2領域
L3 第3領域
m オイル
p 油膜圧力分布
2 バルクヘッド部
3 主軸受部
4 クランク軸
5 クランクジャーナル部
6 アッパメタル
7 ロアメタル
8 滑り軸受(主軸受)
13 油路
14 溝
15 油孔
16 側端溝
17 中央溝
18 傾斜溝
T 荷重最大部位
S クリアランス
L1 第1領域
L2 第2領域
L3 第3領域
m オイル
p 油膜圧力分布
Claims (4)
- 軸受メタルを有し、径方向の一側へ荷重を受けながら一方向に回転する軸を径方向の他側から供給されるオイルにより前記軸受メタルとの間に形成される油膜を介して支持する滑り軸受構造において、
前記軸受メタルの摺動面の前記荷重が最大となる部位を含む第1領域は平滑な面とし、
前記摺動面の前記第1領域の軸回転方向の遅れ側の第2領域は、メタル幅方向の両側端部に円周方向に延びる互いに平行な一対の側端溝を設け、
前記摺動面の前記第2領域の軸回転方向の遅れ側の第3領域は、前記第2領域の一対の側端溝をそのまま平行に延設するとともに、該側端溝と円周方向に一部ラップして幅方向の中央に円周方向に延びる中央溝を設け、それら側端溝と中央溝とがラップする部分に、それら側端溝と中央溝とを接続する傾斜溝を、側端溝との接続部位に対し中央溝との接続部位が軸回転方向の進み側となるように設けたことを特徴とする滑り軸受構造。 - 前記傾斜溝が、円周方向に間隔をおいて複数設けられている請求項1記載の滑り軸受構造。
- 前記軸と前記軸受メタルとの間の油膜厚さが、前記第1領域、前記第2領域、前記第3領域の順に厚くなっている請求項1または2記載の滑り軸受構造。
- 前記軸がエンジンのクランク軸であり、摺動面の前記荷重が最大となる部位を含む第1領域は平滑な面とし、前記摺動面の前記第1領域の軸回転方向の遅れ側の第2領域は、メタル幅方向の両側端部に円周方向に延びる互いに平行な一対の側端溝を設け、前記摺動面の前記第2領域の軸回転方向の遅れ側の第3領域は、前記第2領域の一対の側端溝をそのまま平行に延設するとともに、該側端溝と円周方向に一部ラップして幅方向の中央に円周方向に延びる中央溝を設け、それら側端溝と中央溝とがラップする部分に、それら側端溝と中央溝とを接続する傾斜溝を、側端溝との接続部位に対し中央溝との接続部位が軸回転方向の進み側となるように設けた軸受メタルが、アッパメタルとロアメタルとの二つの半割り軸受メタルからなる滑り軸受のロアメタルである請求項1,2または3記載の滑り軸受構造。
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---|---|---|---|
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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