図1に本発明を適用した画像形成装置の概略を示す。画像形成装置100は、インクジェットプリンタとしてのプリンタであってフルカラーの画像形成を行うことができるようになっている。画像形成装置100は、外部から受信した画像情報に対応する画像信号に基づき画像形成処理を行なう。
画像形成装置100は、一般にコピー等に用いられる普通紙の他、OHPシートや、カード、ハガキ等の厚紙や、封筒等の何れをもシート状の記録媒体としてこれに画像形成を行なうことが可能である。画像形成装置100は、記録媒体である被記録材たる用紙としての記録体である転写紙Sの片面に画像形成可能な片面画像形成装置であるが、転写紙Sの両面に画像形成可能な両面画像形成装置であってもよい。
画像形成装置100は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に色分解された色にそれぞれ対応する像としての画像を形成可能な、当該色のインクとしての導電性記録液である記録液を吐出する記録液吐出体としてのインクヘッドである記録ヘッドとしてのヘッド61Y、61M、61C、61BKを有している。
ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、画像形成装置100の本体99の略中央部に配設された中間転写ドラムである中間転写体37の外周面に対向する位置に配設されている。ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、中間転写体37の移動方向であって図1において時計回り方向であるA1方向の上流側からこの順で並んでいる。同図において各符号の数字の後に付されたY、M、C、BKは、イエロー、マゼンタ、シアン、黒用の部材であることを示している。
ヘッド61Y、61M、61C、61BKはそれぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(BK)の画像を形成するための記録液吐出装置であるインク吐出装置60Y、60M、60C、60BKに備えられている。なお、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、図1の紙面に垂直な方向に複数が並設された態様で、インク吐出装置60Y、60M、60C、60BKに備えられている。
中間転写体37は、A1方向に回転している状態で、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKに対向する領域で、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKからイエロー、マゼンタ、シアン、黒の記録液が順次重ね合わされる態様で吐出されて付与され、その表面上に画像が形成されるようになっている。このように、画像形成装置100は、ヘッド61Y、61M、61C、61BKを中間転写体37に対向させA1方向に並設したタンデム構造となっている。
ヘッド61Y、61M、61C、61BKによる中間転写体37に対する記録液の吐出すなわち付与は、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の各色の画像領域が中間転写体37上の同じ位置に重なるよう、A1方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして行われる。
画像形成装置100は、ヘッド61Y、61M、61C、61BKをそれぞれ備えたインク吐出装置60Y、60M、60C、60BKと、中間転写体37を備え中間転写体37のA1方向への回転に伴って転写紙Sを搬送する用紙搬送ユニットとしての搬送ユニット10と、転写紙Sを多数枚積載可能であり積載した転写紙Sのうち最上位の転写紙Sのみを搬送ユニット10に向けて給送する給紙ユニット20と、搬送ユニット10によって搬送されてきた画像形成済み言い換えるとプリント済みの転写紙Sを多数積載可能な排紙台25とを有している。
画像形成装置100は、ヘッド61Y、61M、61C、61BKをそれぞれ備えたインク吐出装置60Y、60M、60C、60BKと、中間転写体37を備え中間転写体37のA1方向への回転に伴って転写紙Sを搬送する用紙搬送ユニットとしての搬送ユニット10と、転写紙Sを多数枚積載可能であり積載した転写紙Sのうち最上位の転写紙Sのみを搬送ユニット10に向けて給送する給紙ユニット20と、搬送ユニット10によって搬送されてきた画像形成済み言い換えるとプリント済みの転写紙Sを多数積載可能な排紙台25とを有している。
画像形成装置100はまた、図1に示すように、記録液等が転写紙Sに転写された後の中間転写体37から、中間転写体37上に残留している記録液等を除去してクリーニングするためのクリーニング手段としての清掃手段34と、ヘッド61Y、61M、61C、61BKを一体に支持したヘッド支持体としてのキャリッジ50と、画像形成装置100の動作全般を制御するCPU、メモリ等を含む制御手段としての制御部40とを有している。
搬送ユニット10は、中間転写体37の他に、中間転写体37に対向して配置され中間転写体37との間の領域である転写部31を転写紙Sが通過するときに中間転写体37上に担持された記録液による画像をその転写紙Sに転写する転写手段64と、給紙ユニット20から給送されてきた転写紙Sを転写部31に案内するとともに、転写部31を通過した転写紙Sを排紙台25に案内するガイド板39と、中間転写体37をA1方向に回転駆動する図示しない駆動手段としてのモータ等とを有している。このように、画像形成装置100は、転写紙Sへの画像形成を中間転写体37を用いて間接的に行う間接方式の画像形成装置となっている。
転写手段64は、中間転写体37に従動回転する転写ローラ38を備えている。なお、転写ローラ38は転写紙Sに転写される画像を転写紙Sに定着させるためのヒータを内蔵していても良い。また、搬送ユニット10は、転写ローラ38によって中間転写体37から転写紙Sに転写された画像を転写紙Sに定着させるための定着手段としての定着ローラを備えていてもよい。
図2に示すように、中間転写体37は、導電性基体であるアルミニウム製の支持体37aと、支持体37a上に形成されたシリコーンゴム製の表面層37bとを有している。支持体37aの材質はアルミニウムに限られるものではなく、機械的強度があれば、たとえばアルミ合金、銅、ステンレス等の金属によって形成しても良い。表面層37bの材質はシリコーンゴムに限られるものではなく、記録液の剥離性が高いという利点のためには表面エネルギーが低く転写紙Sへの追随性が高い弾性材料であればよく、たとえばウレタンゴム、フッ素ゴム、ニトリルブタジエンゴムなどによって形成しても良い。
表面層37bは、中間転写体37に導電性を付与するために、かかるゴム材料に導電剤としてのカーボン、白金、金などの金属微粒子を分散して混入させた導電性ゴムとされ、導電層となっている。ただし、導電性微粒子を増やすと導電性は向上するが、離型性が低下するトレードオフの関係にあるので、適宜、調整が必要である。後述するように、ヘッド61Y、61M、61C、61BKと中間転写体37とが一時的にブリッジした記録液による液柱に所望の電位差を形成するには、導電性ゴムの体積抵抗率は103Ω・cm未満であることが好ましく、また、記録液の体積抵抗率よりも小さいことが望ましい。導電剤は、表面層37bに導電性が付与されるものであれば、金属微粒子でなくてもよく、金属繊維やカーボンナノチューブなどでも良い。
表面層37bの厚みは0.1〜1mm程度がよく、0.2〜0.6mmが好適である。ただし、表面層37bは必須の構成でなく、支持体37aのみを中間転写体37としても良い。また、中間転写体37は、ドラム状でなく、無端ベルト状、その他可能であればシート状であっても良い。
図1に示すように、給紙ユニット20は、転写紙Sを多数枚積載可能な給紙トレイ21と、給紙トレイ21に積載された転写紙Sのうち最上位の転写紙Sのみを搬送ユニット10に向けて給送する給紙ローラ22と、給紙トレイ21及び給紙ローラ22を支持した筐体23と、給紙ローラ22を、ヘッド61Y、61M、61C、61BKにおける記録液の吐出タイミングに合わせるように回転駆動し転写紙Sを給送させる図示しない駆動手段としてのモータ等とを有している。
キャリッジ50は、ヘッド61Y、61M、61C、61BKに劣化等が生じたときにこれらが新規のものに交換可能であるように、またメンテナンスを容易にするために、ヘッド61Y、61M、61C、61BKと一体で、本体99に対して着脱可能となっている。ヘッド61Y、61M、61C、61BKもそれぞれ、劣化等が生じたときに新規のものに交換可能であるように、またメンテナンスを容易にするために、独立して本体99に対して着脱可能となっている。これによって、交換作業、メンテナンス作業が容易化されている。
インク吐出装置60Y、60M、60C、60BKは、用いる記録液の色が異なるものの、その余の点では互いに略同様の構成となっている。インク吐出装置60Y、60M、60C、60BKはそれぞれ、ヘッド61Y、61M、61C、61BKをそれぞれ複数、主走査方向に並設され、インク吐出装置60Y、60M、60C、60BK、画像形成装置100はヘッド固定式のフルライン型となっている。
インク吐出装置60Y、60M、60C、60BKは、複数のヘッド61Y、61M、61C、61BKに供給される当該色の記録液を収容したメインタンクとしての記録液カートリッジであるインクカートリッジ81Y、81M、81C、81BKと、インクカートリッジ81Y、81M、81C、81BK内に収容された記録液を各ヘッド61Y、61M、61C、61BKに向けて圧送し給送するための供給ポンプとしての図示しないポンプと、ポンプによってインクカートリッジ81Y、81M、81C、81BK側から供給されてきた記録液を各ヘッド61Y、61M、61C、61BKに分配して供給する記録液供給部であるインク供給部としてのディストリビュータである図示しないディストリビュータタンクとを有している。
インク吐出装置60Y、60M、60C、60BKはまた、ディストリビュータタンク内の記録液量の不足を検出するために同記録液量を検知する記録液量検知手段であるインク量検知手段としての図示しないインク量検知センサと、インクカートリッジ81Y、81M、81C、81BKとディストリビュータタンクとの間の記録液の給送路をポンプとともに形成している図示しないパイプと、ディストリビュータタンクと各ヘッド61Y、61M、61C、61BKとの間の記録液の給送路を形成している図示しないパイプとを有している。
インクカートリッジ81Y、81M、81C、81BKは、内部の記録液が消費されて残り少なくなったときあるいはなくなったとき等に新規のものに交換可能であるように、またメンテナンスを容易にするために、本体99に対して着脱可能となっている。
ポンプは、制御部40によって作動を制御される。具体的には、インク量検知センサによってディストリビュータタンク内の記録液量の不足が検出されたことを条件として、この不足が検出されなくなるまで駆動され、インクカートリッジ81Y、81M、81C、81BK内の記録液をディストリビュータタンクに供給する。この点、制御部40は記録液供給制御手段であるインク供給制御手段として機能する。制御部40は、画像形成装置100において駆動される構成については、特に説明しない場合であっても、その駆動を制御するようになっている。
記録液は、イエロー、マゼンタ、シアン、黒に対応した色剤と、この色剤の分散剤であるアニオン性分散剤と、溶媒とを少なくとも含んでいる。かかる色剤とかかる分散剤とにより、記録液のインク成分はアニオン性基を有している。溶媒は安全性の観点及び後述する電気分解を生じせしめるための導電性の観点から水を含んでおり、記録液は導電性インクであり水溶性インクである水溶性記録液となっている。なお、記録液は、保存安定性の観点から、アルカリ性であることが望ましい。
記録液に用いられる色剤である顔料としては、特に限定されないが、オレンジ又はイエロー用の顔料として、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185等が挙げられる。
また、レッド又はマゼンタ用の顔料として、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I、ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
また、グリーン又はシアン用の顔料として、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
また、ブラック用の顔料として、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック6、C.I.ピグメントブラック7等が挙げられる。
記録液中の顔料の含有量は、通常、0.1〜40質量%であり、1〜30質量%が好ましく、2〜20質量%がさらに好ましい。
アニオン性分散剤としては、特に限定されないが、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
記録液は、転写性の点から、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基等が塩基を用いて中和されたアニオン性基を有する樹脂をさらに含むことが好ましい。
記録液は、水に可溶な溶媒をさらに含んでもよい。水に可溶な溶媒としては、特に限定されないが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1、5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン等の多価アルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジグリセリンのエチレンオキサイド付加物等の多価アルコール誘導体;ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、トリエタノールアミン等の含窒素溶媒;エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類;チオジエタノール、チオジグリセロール、スルフォラン、ジメチルスルホキシド等の含硫黄溶媒;炭酸プロピレン、炭酸エチレン等の炭酸アルキレンが挙げられ、二種以上併用してもよい。
図2に示すように、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、同図において下方を向く記録液吐出側に配設された導電性のノズル板61aと、ノズル板61aに形成されたノズル61bと、ディストリビュータタンクから記録液を供給され記録液を充填されたインク室61cと、インク室61c内の記録液をノズル61bから吐出させる図示しないインク吐出手段とを有している。ノズル板61a、ノズル61b、インク室61c、インク吐出手段はこれらが1組となって、それぞれ各ヘッド61Y、61M、61C、61BKに多数備えられているが、同図においてはそのうちの1組のみを図示している。ノズル板61aは、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKのそれぞれに備えられているが、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKのそれぞれにおいては、すべてのノズル61b等に共通である。
ノズル板61aは、詳細な図示を省略するが、導電性の基板と、この基板の、中間転写体37に対向する側の面に形成された撥水膜とを有している。撥水膜は、フッ素系撥水剤やシリコン系撥水剤などを塗布して形成しても良いし、フッ素系高分子やフッ素―金属化合物共析などをメッキして形成しても良く、撥水性がある膜なら特に限定されない。ノズル板61aは、インク室61c側の面をインク室61c内の記録液との界面を形成する界面形成部として備えており、後述するようにカソードとして機能する。
ノズル板61aは、全体が導電性であっても良いし、インク室61c側の面のみを導電処理された部材であっても良いし、インク室61c側に配設された導電性部材と中間転写体37側に配設された絶縁性部材とによって構成しても良い。
ノズル板61aの導電性の部分は、後述するようにカソードとして備えられるため、金属溶出に対して耐性を有する材質によって構成する必要はなく、金属、カーボンなど導電性の高い材料によって構成されればよい。
ノズル板61aは、中間転写体37とのギャップが50〜200μmの間で設定される。かかるギャップが50μm未満であると、回転体である中間転写体37とノズル板61aとのギャップを維持することが困難になることがあり、またかかるギャップが200μmを超えると、後述する液注のブリッジが形成されにくくなることがあるためである。ただし、ギャップの維持さえ可能なら50μm未満でも特に問題はなく、200μm以上であっても、安定した液柱のブリッジが形成されれば問題ない。
インク吐出手段は、各ノズル61bから記録液を液滴化して吐出させ転写紙Sに着弾させるためのアクチュエータとして圧電素子を有し、制御部40による制御によって圧電素子に印加される電圧パルスに応じてノズル61bから記録液を吐出するようになっている。この点、制御部40は、インク吐出制御手段として機能する。インク吐出制御手段として機能する制御部40は、かかる圧電素子を駆動するための電圧パルスを所定の信号波形でかかる圧電素子のそれぞれに入力する。
本形態において、ノズル板61a、ノズル61b、インク室61c、インク吐出手段は、これらが1組となって、それぞれ各ヘッド61Y、61M、61C、61BKに多数備えられている。また、インク吐出手段は、各ノズル61bからの記録液の吐出タイミングを個別に制御可能となっている。
インク吐出手段のアクチュエータはピエゾ方式等の、形状変形素子方式である他の方式の可動アクチュエータであってもよいし、サーマル方式等の加熱ヒータ方式によってノズル61bから記録液を吐出させるものであっても良い。
通電手段33は、電源33aと、電源33aを支持体37aに接続し、またノズル板61aを接地した特に図示しない電気回路と、制御部40の機能の一部として実現され電源33aによる電圧の印加タイミング、印加時間を制御する電圧印加制御手段とを有している。
電源33aは、支持体37aに接続されている。本形態において、通電手段33は、中間転写体37をアノードとして機能させ、ノズル板61aをカソードとして機能させることで、後述するように、中間転写体37側での記録液の色剤成分の凝集作用を生じさせるために備えている。
電源33aは、交流電圧に直流電圧を重畳した電圧を支持体37aに印加することで、支持体37aとノズル板61aとの間に電位差を形成するようになっている。電源33aがこのように交流電圧に直流電圧を重畳した電圧を支持体37aに印加することにより、後述するように、交流電圧のみを支持体37aに印加するよりも良好な画像形成が行われるとともに、良好な画像形成を行うために必要な交流電圧値も低電圧化可能となり、電源33a自体の構成あるいは画像形成装置100の構成も簡易化可能となるが、電源33aは、少なくとも交流電圧による電圧印加を行うためのものであればよく、交流電圧のみを支持体37aに印加するようにしても良い。
電源33aは、使用する記録液の種類等によっては、ノズル板61aに接続されていても良く、また、支持体37aとノズル板61aとの間に接続された構成ともされ得る。
電源33aは、ヘッド61Y、61M、61C、61BKのそれぞれに設けられている。
電圧印加制御手段としての制御部40は、電源33aの交流電圧値、交流電圧の周波数、直流電圧値を、後述するように、電源33aにより支持体37aとノズル61aとの間において記録液に印加される電圧により放電が生じることのないように、あるいはこの放電による画像への影響が問題とならない程度となるように、等の条件を満たすように制御する。言い換えると、電圧印加制御手段としての制御部40は、かかる条件を満たすように電源33aの交流電圧値、交流電圧の周波数、直流電圧値を制御する態様で、かかる放電を制御する。ここで言う交流電圧値には、当該周波数における、ノズル61bからの記録液の吐出タイミングに対する位相に応じた当該交流電圧値を含む。すでに述べたように、電源33aは、少なくとも交流電圧による電圧印加を行うためのものであればよいため、電源33aが交流電圧による電圧印加のみを行う場合には、電圧印加制御手段としての制御部40は、電源33aの交流電圧値、交流電圧の周波数の少なくとも一方を、かかる条件を満たすように制御する。
かかる条件を満たすのであれば、電圧印加制御手段としての制御部40は、電源33aの交流電圧値、交流電圧の周波数、直流電圧値を、予め定められた一定の設定値となるように制御しても良いが、電源33aの交流電圧値、交流電圧の周波数、直流電圧値のうち交流電圧値、交流電圧の周波数の少なくとも一方を変更する態様で制御するように構成されていても良く、この場合、電圧変更手段として機能する。たとえば、インク吐出制御手段として機能する制御部40が、圧電素子を駆動するための電圧パルスの信号波形を変更する場合には、これに応じて上述の条件を満たすように、電圧印加制御手段としての制御部40は電圧変更手段として機能する。
なお、電圧印加制御手段としての制御部40は、電源33aの交流電圧値、交流電圧の周波数、直流電圧値を、予め定められた一定の設定値となるように制御する場合にも、電源33aによる電圧の印加タイミング、印加時間、電源33aの交流電圧値、交流電圧の周波数、直流電圧値を、上述の条件を満たすように制御して放電を制御することに変わりはない。
図1に示すように、清掃手段34は、中間転写体37に対していわゆるカウンター当接の態様で当接した、弾性体としてのゴムによって形成された清掃部材としてのクリーニングブレードによって構成されている。清掃手段34はクリーニングブレードとともに、清掃部材としてのクリーニングローラを備えていてもよい。
このような構成の画像形成装置100においては、画像形成開始の旨の所定の信号の入力により、中間転写体37が各ヘッド61Y、61M、61C、61BKに対向しながらA1方向に回転し、この過程で、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の各色の画像領域が中間転写体37の同じ位置に重なるよう、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKから、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の記録液が、A1方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして順次重ね合わされる態様で吐出され、中間転写体37上に一時的に画像が担持される。
このとき、電圧印加制御手段としての制御部40により、通電手段33が駆動され、電源33aから支持体37aに電圧が印加され、支持体37aとノズル板61aとの間に電位差が形成される。
この状態で、記録液が、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKから中間転写体37上に付与されるが、そのときには、まず、ヘッド61Y、61M、61C、61BKから、図2(a)に示すように、ノズル61bにおいてメニスカスを形成している記録液が、図2(b)に示すように、中間転写体37に向けて移動し、ノズル61bと中間転写体37との間に、記録液からなる液柱のブリッジが一時的に形成され、次いで、図2(c)に示すように、記録液からなる液柱のブリッジが分断されることによって中間転写体37に担持され、中間転写体37上に記録液による画像が形成される。
そして、図2(b)に示した、記録液からなる液注のブリッジが形成された状態では、通電手段33により、記録液中の色剤成分が凝集作用を受ける。具体的には、通電手段33による中間転写体37への電圧印加において、正電圧が印加されているときに、カソードとして機能しているノズル板61aとアノードとして機能している中間転写体37とにはそれぞれ次の電極反応が生じ、記録液の液柱のブリッジに含まれる水が電気分解される。
カソード:4H2O+4e−→2H2+4OH−・・・反応式(1)
アノード:2H2O→4H++O2+4e−・・・反応式(2)
これにより、アノードとして機能する中間転写体37の表面で、記録液の液柱のブリッジに含まれる水が酸化してプロトン(H+)が生成するため、図3に示すように、アニオン性分散剤Dにより分散されている顔料Pが、プロトンを介して凝集する。これにより、隣接するドット間の滲みの発生が抑制され、高精細な画像が形成される。また、かかる電圧印加によりノズル61bの目詰まりが予防されるという利点もある。なお、かかるブリッジを形成する時間は、圧電素子に印加される電磁パルスのピーク電圧とパルス幅等により制御可能である。
ここで、図4を用いて、カソード及びアノードの間に形成される液柱のブリッジについて説明する。液柱のブリッジBの内部では、カチオン及びアニオンは、それぞれカソードC及びアノードAの近傍に移動する。その結果、カソードC及びアノードAの表面に、それぞれ電気二重層EC及びEAが形成されるが、電気二重層EC及びEAの充電速度は、液柱のブリッジBの導電率、記録液に含まれるイオンの濃度でほぼ決定される。このとき、電気二重層EAの電圧が数Vに達すると、水が電気分解してファラデー電流が流れる。その結果、アノードAの表面では、水が酸化してプロトンが生成し、アニオン性分散剤により分散されている顔料が凝集する。すなわち、かかるブリッジが形成された瞬間に、ブリッジに、顔料の凝集作用をもたらすイオンが効率よく生成することで、記録液の中間転写体37への着液と同時に顔料の凝集が行われる。その結果、隣接する記録液ドット間における顔料の滲みが発生せず、非常に高精細な溶質画像が形成される。
このように、通電手段33は、液柱のブリッジBを形成している記録液を電気分解するための、中間転写体37と、ヘッド61Y、61M、61C、61BK、具体的にはノズル板61aとの間の電圧印加を行なうための構成となっている。
この電圧印加は、この電圧印加によって記録液に印加される電圧に起因する放電を制御するために、電圧印加制御手段、電圧変更手段として機能する制御部40により制御される。かかる放電及び制御の態様については後に詳しく述べる。
液柱のブリッジBが形成されてから分断されるまでの時間は、通常、数マイクロ秒〜数十マイクロ秒であり、記録液の導電率は、通常、数十mS/m〜数百mS/mである。このため、中間転写体37に記録液による画像を形成するためには、通電手段33による印加電圧は、水の理論分解電圧である1.23Vや一般的な水の電気分解の条件である数V〜十数Vでは不十分であり、数十V〜数百Vであることが好ましい。
中間転写体37上に担持された画像の先端が転写部31に到達するタイミングに合わせて、給紙ユニット20から給送された一枚の転写紙Sが転写部31に供給され、転写ローラ38が連れ回りしながら、転写部31を通過する転写紙Sに、中間転写体37上に担持されている画像が転写され、転写紙Sの表面に画像が形成される。画像が形成された転写紙Sは、排紙台25に案内され排紙台25上に積載される。
このようにして画像が転写紙Sに転写されるときには、凝集成分を含む記録液が転写紙Sに転写される。したがって、上述の凝集作用により凝集した色剤によって画像が形成されることにより、転写紙Sが普通紙である場合であっても、フェザリングやブリーディングを防止ないし抑制しつつ、高速で高画像濃度、高画質の画像形成が可能である。
また、高速の画像形成を行うには、記録液を速乾性とすることを要するため、記録液は転写紙Sへの吸収性が一般に高いが、この場合には記録液が転写紙Sの奥深くまで浸透し、いわゆる裏移りを生じ、両面画像形成に不向きとなる。しかし、かかる凝集作用により記録液の転写紙Sへの吸収性が低減されるためかかる裏移りが防止ないし抑制され、両面画像形成にも適している。さらにまた、記録液の転写紙Sへの吸収性が低減されることにより、転写紙Sのコックリングやカールなどの変形も抑制ないし防止されるとともに、これによって画像を担持した転写紙Sの搬送性が向上し、ジャムが防止ないし抑制されるなど、転写紙Sの取り扱いが容易化する。
転写部31における転写により、転写部31を通過した中間転写体37上には、記録液に起因する成分はほとんど残っていないが、中間転写体37は清掃手段34によるクリーニングを受けることで、記録液のオフセットが高度に防止ないし抑制され、繰り返し画像形成を行っても、オフセットによる地肌汚れが防止ないし抑制され、画像劣化、中間転写体37の劣化が抑制ないし防止されて、経時的に良好な画像形成を行うことが可能である。
以上のような画像形成装置100において、記録液が中間転写体37とヘッド61Y、61M、61C、61BK具体的にはノズル板61aとの間をブリッジした状態となる前後にわたって通電手段33による、記録液を電気分解する電圧印加を継続すると、この電圧印加によって記録液に印加される電圧に起因する放電が生じ、画像形成に不具合を生じたり、画像形成装置100に負荷をかけたりし得ることが分かった。
このような現象についてより詳しく検証すると、かかる放電は、空気中の放電であり、ヘッド61Y、61M、61C、61BKから吐出された記録液が中間転写体37に近づき、記録液と中間転写体37との間の距離が記録液に印加されている電圧による放電を生じる距離となった場合や、中間転写体37とヘッド61Y、61M、61C、61BKとの間をブリッジした記録液が切れてヘッド61Y、61M、61C、61BKから遠ざかり、記録液とヘッド61Y、61M、61C、61BKとの間の距離が記録液に印加されている電圧による放電を生じる距離となった場合に発生するものと考察される。そして、これらの場合には、放電によって記録液が飛び散って像が乱れ、また前者の場合には、放電によって中間転写体37にダメージが与えられることによっても像が乱れ、後者の場合には、放電によって撥水膜が破壊されたりノズル板61a本体もとくに樹脂製である場合には破壊されたりして、メニスカスが正常な状態で維持されなくなり、記録液の吐出異常が生じることによっても像が乱れると考えられる。
なお、かかる放電は、上述の空気中の放電が主なものと考えられるが、空気中の放電の他に記録液中の放電を含む可能性がある。記録液中の放電は、空気中の放電の発生をトリガーとして生じると考えられるものであり、ノズル61b中の記録液や中間転写体37に付与された記録液における不要な凝集作用の原因となると推測されるものである。
画像形成装置100では、上述の条件を満たすように、すなわち、かかる放電を、防止するように、あるいは形成される画像の品質や画像形成装置100への負荷が問題とならない程度に抑制するように、制御するために、電圧印加制御手段として機能する制御部40により、中間転写体37とヘッド61Y、61M、61C、61BK具体的には各ノズル板61aとの間の電圧印加言い換えると電位差形成の制御を行うようになっている。
ここで、上述の放電について補足する。かりに、上述の放電を上述のように制御することを考慮せず、ノズル61bと中間転写体37との間で記録液のブリッジが形成されている状態の前後においても中間転写体37とノズル板61aとの間の電圧印加をたとえば直流電圧により継続すると、主に、ノズル61bと中間転写体37との間に記録液がブリッジした直後よりも、ブリッジが終わる、記録液が切れる直前のほうが放電しやすく、印加電圧を上げていくと、放電発生時間が早くなっていき、最終的には、ブリッジする前後においても、放電が確認されるが、この放電は、ブリッジが切れる直前の放電と比較すると弱い放電であることが分かった。
電圧印加制御手段として機能する制御部40による制御は、上述した放電のメカニズムを考慮し、ノズル61bから吐出された記録液がノズル61bと中間転写体37との間をブリッジした状態に応じて交流電圧の印加方法を変える態様で行う。
具体的には、印加電圧値が低く、ブリッジする前に放電が生じない、もしくは生じても画像に対する影響がない場合は、記録液のブリッジが終わる直前のタイミングで放電開始電圧以下の電圧印加が行われるように交流電圧の周波数および記録液の吐出周期に対する位相を制御する。
また、印加する電圧が高く、ブリッジする前に画像に影響を及ぼすような放電が生じる場合には、記録液のブリッジした直後のタイミングで放電開始電圧より高い電圧に到達し、ブリッジが終わる直前のタイミング放電開始電圧以下の電圧印加が行われるように交流電圧の周波数および記録液の吐出周期に対する位相を制御する。
ここでいうタイミングは放電が生じないタイミングであれば、特に限定はない。
交流電圧と直流電圧とを重畳した電圧値、あるいは交流電圧のみを印加する場合においてはその電圧値に関しては、記録液の種類により決定される。
交流電圧の周波数に関しては、インク吐出の周波数すなわち吐出周波数が各マシンにより設定されているため、吐出周波数の設定周波数に対応して設定する。
交流電圧の周波数は、吐出周波数と同じであれば、交流電圧の周波数自体の制御が比較的容易であるが、吐出周波数よりも高い周波数であっても良く、この場合には、後述するように、条件によっては生じる記録液のブリッジ直前の弱い放電も、良好に制御される利点がある。
交流電圧の周波数を吐出周波数よりも高くする場合は、とくに吐出周波数の整数倍の周波数とするのが、制御の容易等の観点から好ましい。ただし、交流電圧の周波数を適時変更する場合などには、交流電圧の周波数を吐出周波数よりも低くしても良い。
交流電圧の周波数を吐出周波数よりも高くする場合、記録液がブリッジする時間により、上述の条件を満たすように、交流電圧の周波数を決定するのが好ましい。
ブリッジした状態の時間すなわちブリッジが形成されているタイミングに関しては、記録液がブリッジしたときに記録液に流れる電流を検知することでこれを検知するようにしても良いし、インクの吐出条件に応じて予め計測等により準備されたものを使用しても良い。
記録液がブリッジしている状態にあるか否かを検知するためには、たとえば、図5に示すように、通電手段33が、記録液がブリッジしたときに記録液に流れる電流を検知する電流検知手段としての電流計33bを備えた構成とする。このような構成を用いると、電流計33bで電流値を監視することにより、放電による過通電などがリアルタイムで検知可能となり、かりに放電が生じた場合でも、交流電圧および直流電圧、あるいは交流電圧の印加タイミング等を、放電が生じないように変更することが可能となる。同図に示した構成において、電流計33bは、ノズル板61a側に設けられているが、電流計33bは、電源33a側に設けても良い。
また、かかる時間を予め計測等により準備しこれを使用する場合は、たとえば、温湿度環境と、インク吐出制御手段として機能する制御部40によりインク吐出手段に備えられた圧電素子に入力する信号波形及びこの入力タイミングとの組み合わせに応じて、ある基準時間からのブリッジする時間を計測等し、これを使用する。温湿度環境は、たとえば、画像形成装置100に温湿度センサを設け、これによって検知する。
電源33aは、上述のように、ヘッド61Y、61M、61C、61BKのそれぞれに設けられている。そこで、電圧印加制御手段として機能する制御部40は、ヘッド61Y、61M、61C、61BKのそれぞれについて個別に、上述の放電を上述のように制御する態様で電圧印加の制御を行う。言い換えると、電源33aは、電圧印加制御手段として機能する制御部40により、ヘッド61Y、61M、61C、61BKのそれぞれにおいて個別に、かかる態様で電圧印加が行われるように、制御可能となっている。
そして、このような制御のもとで、図2(b)に示すように、ヘッド61Y、61M、61C、61BKと中間転写体37との間を一時的にブリッジした状態の記録液を電気分解するための、電源33aによる、ヘッド61Y、61M、61C、61BKと中間転写体37との間の電圧印加すなわち制御電圧としての分解電圧の印加が行われる。
以上の条件を考慮した次の実験により画像形成が良好に行われるか否かを確かめた。
実験の条件は次のとおりである。
実験に用いた画像形成装置は、次の条件を満たす、画像形成装置100と同様の構成の、インクジェットプリンタGX5000(リコー社製)を改造した画像形成装置である。
中間転写体37は、支持体37aとしてのアルミニウム素管の外周に、表面層37bとして、体積抵抗率が5.3Ω・cm、厚さが0.5mmの、カーボンが分散されているシリコーンゴム層を有しており、外周の線速が500mm/sでA1方向に回転駆動される。
交流電圧を中間転写体31に印加し、各ヘッド61は電気的に接地した。交流電圧に直流電圧を重畳するか否かについては後掲の表のとおりである。
各ヘッド61Y、61M、61C、61BKと中間転写体37とのギャップは80μmとした。
転写ローラ38は、金属製の芯金に厚さが5mmのゴム層を形成したものである。
清掃手段34としては、フッ素ゴムからなるブレードを用いた。
なお、本実験においては、中間転写体37の長手方向すなわちA1方向に垂直な方向すなわち、図1の紙面に垂直な方向には、ヘッド61Y、61M、61C、61BKを移動させず、ヘッド61Y、61M、61C、61BKを固定して用いた。各ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、図1に示したようにA1方向にずれた位置に設置した。各ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、ノズル61bを多数備えているが、後述する滲みの評価が可能なように、本実験は、選択されたノズル61bから記録液を吐出して行った。図6に、本実験によって形成した画像パターンすなわち評価パターンである吐出パターンの概念図を示す。本実験によって形成した吐出パターンは、同図に示した、隣り合う色が互いに異なる8ラインの繰り返しによって作像したものであり、この吐出パターンによる作像結果に基づいて、後述する評価を行った。
記録液としては以下のようなものを用いた。
<イエロー記録液>
・スルホン酸基結合型イエロー顔料分散液(CAB−O−JET−270Y、固形分10質量%、キャボット・スペシャルティ・ケミカルズ・インク製):40.0質量%
・トリエチレングリコール:14.0質量%
・グリセリン:30.0質量%
・プロピレングリコールモノブチルエーテル:7.0質量%
・デヒドロ酢酸ソーダ:0.1質量%
・蒸留水:残量
その後、水酸化リチウムの5質量%水溶液によりpH9.2に調整し、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターにて加圧濾過。
<マゼンタ記録液>
・スルホン酸基結合型マゼンタ顔料分散液(CAB−O−JET−260M、固形分10質量%、キャボット・スペシャルティ・ケミカルズ・インク製):40.0質量%
・ジエチレングリコール:25.0質量%
・プロピレングリコールモノブチルエーテル:5.0質量%
・デヒドロ酢酸ソーダ:0.1質量%
・蒸留水:残量
その後、水酸化リチウムの5質量%水溶液によりpH9.2に調整し、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターにて加圧濾過。
<シアン記録液>
・スルホン酸基結合型シアン顔料分散液(CAB−O−JET−250C、固形分10質量%、キャボット・スペシャルティ・ケミカルズ・インク製):40.0質量%
・エチレングリコール:5.0質量%
・トリエチレングリコール:18.0質量%
・プロピレングリコールモノブチルエーテル:5.0質量%
・デヒドロ酢酸ソーダ:0.1質量%
・蒸留水:残量
その後、水酸化リチウムの5質量%水溶液によりpH9.2に調整し、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターにて加圧濾過。
<ブラック記録液>
・スルホン酸基結合型カーボンブラック顔料分散液(CAB−O−JET−200、固形分20質量%、キャボット・スペシャルティ・ケミカルズ・インク製):35.0質量%
・2−ピロリドン:9.0質量%
・グリセリン:20.0質量%
・プロピレングリコールモノブチルエーテル:1.0質量%
・デヒドロ酢酸ソーダ:0.1質量%
・蒸留水:残量
その後、水酸化リチウムの5質量%水溶液によりpH9.2に調整し、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターにて加圧濾過。
本評価においては、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKにおけるすべてのノズル71bの圧電素子に入力する信号波形を同一とした。事前の観察により、記録液のブリッジは、信号波形の各周期の入力後の、7μ秒後から31μ秒後までの間で形成されることを確認した。
各実施例及び各比較例の評価の手順は次のとおりである。
(1)各ヘッド61Y、61M、61C、61BKを、A1方向に垂直な、図1における紙面に垂直な方向に対応する方向へ移動させながら、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKから1ドットのライン画像をA1方向に沿って10本、出力した。各ヘッド61Y、61M、61C、61BKにおける吐出周波数は12.5kHzとし、吐出時間は1秒とした。
(2)中間転写体37と転写ローラ38との間にリコービジネスコートグロス100を搬送し、中間転写体上の(1)で作像した導電性記録液像を転写した。
(3)再度(1)を行い、中間転写体37上でのインクの飛び散りを観察した。
(4)(1)、(2)において、吐出時間を4秒とし、これらを200回繰り返した後に、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKの撥水膜の様子を観察した。
各実施例および各比較例の条件と、評価結果である滲み及びインクの飛び散りに関して以下表1にまとめる。
同表に示した「条件」において、「交流電圧値」は、印加する交流電圧のピーク値すなわち最大値を意味している。交流電圧は正弦波として印加されている。
同表に示した「条件」において、「周波数」は、印加する交流電圧の周波数を意味している。
同表に示した「条件」において、「直流電圧値」は、交流電圧に重畳する直流電圧の値を意味している。
同表に示した「条件」において、「タイミング」は、ノズル71bが動作して記録液を吐出する信号波形が同ノズル71bの圧電素子に入力されるタイミングを基準の0μ秒としたときにおける、正弦波として印加される交流電圧の値がSin0となる、交流電圧の印加タイミングである。たとえば、「タイミング」が5μ秒であるとき、ノズル71bの圧電素子にかかる信号波形を入力してから5μ秒後に交流電圧の値が0Vとなることを意味しており、この場合、その後、正弦波の位相が変化して正電圧が印加され始めることとなる。「タイミング」の値が負の場合は、かかる信号波形の入力前に、正弦波として印加される交流電圧の値が0Vとなることを意味している。
同表に示した「結果」において、「滲み」は、マイクロスコープにより観察し、各色の記録液の境界部の滲みを評価したものであり、評価の基準は以下の通りである。
・境界部が非常に鮮明に分かる・・・◎
・境界部が鮮明に分かる・・・○
・多少の滲みはあるが、問題ないレベル・・・△
・ライン同士が混色してしまい、元の色がはっきりしない・・・×
また同表に示した「結果」において、「飛び散り」は、中間転写体37上での各色の記録液の飛び散りを評価したものであり、評価の基準は以下の通りである。
・飛び散りが確認されない・・・○
・若干の飛び散りが見られるが問題ないレベル・・・△
・激しく飛び散り、ラインが太っている・・・×
同表から、交流電圧の印加による滲み及び飛び散りへの効果が確認される。
また吐出周波数と同じ周波数の交流電圧を印加すると、記録液のブリッジが切れる時の放電を抑えることが可能であることが分かった。交流電圧の周波数を吐出周波数より高くすると、条件によっては記録液がブリッジする直前に生じる弱い放電も防止ないし抑制されるため、飛び散りが防止ないし問題ない程度に抑制されるとともに、記録液中の色剤成分を凝集させるための電気分解に必要な電圧も十分に与えられるため、滲みのない良好な画質が得られることが分かった。
次に作像前後の撥水膜のダメージを調べた。各実施例及び比較例1に関しては特に撥水膜の変化は見られなかった。実施例の飛び散り評価項目が△の例に関しては、多少の放電は生じている可能性があるものの、撥水膜の変化は確認されなかった。しかし、比較例2に関しては、観察により、撥水膜にダメージがあることが分かった。またその影響でメニスカスの形成状態も非常に悪化していることがわかった。
ここで、中間転写体37が表面層37bを備えておらず支持体37aからなる構成においては、すでに述べたように、支持体37aがアノードとして機能することとなる。この場合、支持体37aの表面で、水とともに、金属である支持体37aを酸化するようにすることが可能である。金属である支持体37aを酸化するようにすると、色剤を凝集するのに優れた金属カチオンが生成するため、図7に示すように、プロトン及び金属カチオン(Mn+)を介して、アニオン性分散剤Dにより分散されている顔料Pが凝集することとなり、凝集性が高くなる。
このような構成においては、図8に示すように、転写手段64が、転写ローラ38のみならず、中間転写体37上に形成された画像を転写され一旦担持する、表面に弾性体層としてのゴム層63aを備えた転写画像担持体としての中間転写ドラム63を備えていることが望ましい。中間転写ドラム63は中間転写体37に連れ回りし、転写ローラ38は中間転写ドラム63に連れ回りする。中間転写ドラム63の表面が弾性体であることにより、金属製で表面硬度の高い中間転写体37からの画像の転写が良好に行われ、転写性が向上する。
中間転写ドラム63は、ゴム層63aと、ゴム層63aに覆われた基体63bとを有している。基体63bを構成する材料としては、特に限定されないが、アルミニウム、アルミ合金、銅、ステンレス等の金属が挙げられる。ゴム層63aを構成する材料としては、特に限定されないが、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。
ここで、制御部40は、メモリに、記録液を吐出するノズル61bを備えたヘッド61Y、61M、61C、61BKと、ヘッド61Y、61M、61C、61BKにより吐出された記録液を付与される、少なくとも表面が導電性の中間転写体37と、ヘッド61Y、61M、61C、61BKから吐出されヘッド61Y、61M、61C、61BKと中間転写体37との間を一時的にブリッジした状態の記録液を電気分解するための中間転写体37とヘッド61Y、61M、61C、61BKとの間の少なくとも交流電圧による電圧印加を行うための通電手段33と、記録液によって中間転写体37上に担持された画像を転写紙Sに転写する転写手段64と、かかる電圧印加によって記録液に印加される電圧による放電を制御するためにかかる電圧印加の周波数及び/又は電圧値の制御を行う電圧印加制御手段として機能する制御部40とを用いる画像形成方法を実行するための画像形成プログラムを記憶している。この点、制御部40ないしメモリは、画像形成プログラム記憶手段として機能している。かかる画像形成プログラムは、制御部40に備えられたメモリのみならず、半導体媒体(たとえば、ROM、不揮発性メモリ等)、光媒体(たとえば、DVD、MO、MD、CD−R等)、磁気媒体(たとえば、ハードディスク、磁気テープ、フレキシブルディスク等)その他の記憶媒体に記憶可能であり、かかるメモリ、他の記憶媒体は、かかる画像形成プログラムを記憶した場合に、かかる画像形成プログラムを記憶したコンピュータ読取可能な記録媒体を構成する。
以上本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
たとえば、上述の形態では、導電性記録液柱の顔料が、アニオン性分散剤により分散しており、導電性記録液のブリッジが形成されている状態で、中間転写体に正電圧の電圧印加が行われているときに、中間転写体がアノードとして機能しているが、導電性記録液中の顔料は、カチオン性分散剤により分散し、カソードとして機能する中間転写体の表面で生成した水酸化物イオンを介して、凝集させてもよい。
中間転写体は、全体が導電性である必要はなく、少なくとも表面が導電性であればよい。
本発明を適用する画像形成装置は、上述のタイプの画像形成装置に限らず、他のタイプの画像形成装置、すなわち、ヘッドに関してシャトル型であってもよいし、また、複写機、ファクシミリの単体、あるいはこれらの複合機、これらに関するモノクロ機等の複合機、その他、電気回路形成に用いられる画像形成装置、バイオテクノロジー分野において所定の画像を形成するのに用いられる画像形成装置であっても良い。ヘッドの数は画像形成装置の用途に応じて増減されるものであり、1つであっても、複数であってもよい。
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。