図1に本発明を適用した画像形成装置の概略を示す。画像形成装置100は、インクジェットプリンタとしてのプリンタであってフルカラーの画像形成を行うことができるようになっている。画像形成装置100は、外部から受信した画像情報に対応する画像信号に基づき画像形成処理を行なう。
画像形成装置100は、一般にコピー等に用いられる普通紙の他、OHPシートや、カード、ハガキ等の厚紙や、封筒等の何れをもシート状の記録媒体としてこれに画像形成を行なうことが可能である。画像形成装置100は、記録媒体である被記録材たる用紙としての記録体である転写紙Sの片面に画像形成可能な片面画像形成装置であるが、転写紙Sの両面に画像形成可能な両面画像形成装置であってもよい。
画像形成装置100は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に色分解された色にそれぞれ対応する像としての画像を形成可能な、当該色のインクとしての導電性記録液である記録液を吐出する記録液吐出体としてのインクヘッドである記録ヘッドとしてのヘッド61Y、61M、61C、61BKを有している。
ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、画像形成装置100の本体99の略中央部に配設された中間転写ドラムである中間転写体37の外周面に対向する位置に配設されている。ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、中間転写体37の移動方向であって図1において時計回り方向であるA1方向の上流側からこの順で並んでいる。同図において各符号の数字の後に付されたY、M、C、BKは、イエロー、マゼンタ、シアン、黒用の部材であることを示している。
ヘッド61Y、61M、61C、61BKはそれぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(BK)の画像を形成するための記録液吐出装置であるインク吐出装置60Y、60M、60C、60BKに備えられている。なお、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、図1の紙面に垂直な方向に複数が並設された態様で、インク吐出装置60Y、60M、60C、60BKに備えられている。
中間転写体37は、A1方向に回転している状態で、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKに対向する領域で、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKからイエロー、マゼンタ、シアン、黒の記録液が順次重ね合わされる態様で吐出されて付与され、その表面上に画像が形成されるようになっている。このように、画像形成装置100は、ヘッド61Y、61M、61C、61BKを中間転写体37に対向させA1方向に並設したタンデム構造となっている。
ヘッド61Y、61M、61C、61BKによる中間転写体37に対する記録液の吐出すなわち付与は、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の各色の画像領域が中間転写体37上の同じ位置に重なるよう、A1方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして行われる。
画像形成装置100は、ヘッド61Y、61M、61C、61BKをそれぞれ備えたインク吐出装置60Y、60M、60C、60BKと、中間転写体37を備え中間転写体37のA1方向への回転に伴って転写紙Sを搬送する用紙搬送ユニットとしての搬送ユニット10と、転写紙Sを多数枚積載可能であり積載した転写紙Sのうち最上位の転写紙Sのみを搬送ユニット10に向けて給送する給紙ユニット20と、搬送ユニット10によって搬送されてきた画像形成済み言い換えるとプリント済みの転写紙Sを多数積載可能な排紙台25とを有している。
画像形成装置100はまた、図2(b)に示すようにヘッド61Y、61M、61C、61BKから吐出された直後の記録液による液柱がヘッド61Y、61M、61C、61BKと中間転写体37との間を一時的にブリッジした状態で、中間転写体37とヘッド61Y、61M、61C、61BKとの間に電位差が形成されるように、かかる液柱の状態の記録液の内部に電極酸化反応もしくは電極還元反応に起因する電流成分を含んだ通電を行いかかる状態の記録液に後述のように含まれている色剤の凝集を促進する電圧印加手段としての通電手段33を有している。
画像形成装置100はまた、図1に示すように、記録液等が転写紙Sに転写された後の中間転写体37から、中間転写体37上に残留している記録液等を除去してクリーニングするためのクリーニング手段としての清掃手段34と、ヘッド61Y、61M、61C、61BKを一体に支持したヘッド支持体としてのキャリッジ50と、画像形成装置100の動作全般を制御するCPU、メモリ等を含む制御手段としての制御部40とを有している。
搬送ユニット10は、中間転写体37の他に、中間転写体37に対向して配置され中間転写体37との間の領域である転写部31を転写紙Sが通過するときに中間転写体37上に担持された記録液による画像をその転写紙Sに転写する転写手段64と、給紙ユニット20から給送されてきた転写紙Sを転写部31に案内するとともに、転写部31を通過した転写紙Sを排紙台25に案内するガイド板39と、中間転写体37をA1方向に回転駆動する図示しない駆動手段としてのモータ等とを有している。このように、画像形成装置100は、転写紙Sへの画像形成を中間転写体37を用いて間接的に行う間接方式の画像形成装置となっている。
転写手段64は、中間転写体37に従動回転する転写ローラ38を備えている。なお、転写ローラ38は転写紙Sに転写される画像を転写紙Sに定着させるためのヒータを内蔵していても良い。また、搬送ユニット10は、転写ローラ38によって中間転写体37から転写紙Sに転写された画像を転写紙Sに定着させるための定着手段としての定着ローラを備えていてもよい。
図2に示すように、中間転写体37は、導電性基体であるアルミニウム製の支持体37aと、支持体37a上に形成されたシリコーンゴム製の表面層37bとを有している。支持体37aの材質はアルミニウムに限られるものではなく、機械的強度があれば、たとえばアルミ合金、銅、ステンレス等の金属によって形成しても良い。表面層37bの材質はシリコーンゴムに限られるものではなく、記録液の剥離性が高いという利点のためには表面エネルギーが低く転写紙Sへの追随性が高い弾性材料であればよく、たとえばウレタンゴム、フッ素ゴム、ニトリルブタジエンゴムなどによって形成しても良い。
表面層37bは、中間転写体37に導電性を付与するために、かかるゴム材料に導電剤としてのカーボン、白金、金などの金属微粒子を分散して混入させた導電性ゴムとされ、導電層となっている。ただし、導電性微粒子を増やすと導電性は向上するが、離型性が低下するトレードオフの関係にあるので、適宜、調整が必要である。後述するように、ヘッド61Y、61M、61C、61BKと中間転写体37とが一時的にブリッジした記録液による液柱に所望の電位差を形成するには、導電性ゴムの体積抵抗率は103Ω・cm未満であることが好ましく、また、記録液の体積抵抗率よりも小さいことが望ましい。
表面層37bの厚みは0.1〜1mm程度がよく、0.2〜0.6mmが好適である。ただし、表面層37bは必須の構成でなく、支持体37aのみを中間転写体37としても良い。また、中間転写体37は、ドラム状でなく、無端ベルト状、その他可能であればシート状であっても良い。
図1に示すように、給紙ユニット20は、転写紙Sを多数枚積載可能な給紙トレイ21と、給紙トレイ21に積載された転写紙Sのうち最上位の転写紙Sのみを搬送ユニット10に向けて給送する給紙ローラ22と、給紙トレイ21及び給紙ローラ22を支持した筐体23と、給紙ローラ22を、ヘッド61Y、61M、61C、61BKにおける記録液の吐出タイミングに合わせるように回転駆動し転写紙Sを給送させる図示しない駆動手段としてのモータ等とを有している。
キャリッジ50は、ヘッド61Y、61M、61C、61BKに劣化等が生じたときにこれらが新規のものに交換可能であるように、またメンテナンスを容易にするために、ヘッド61Y、61M、61C、61BKと一体で、本体99に対して着脱可能となっている。ヘッド61Y、61M、61C、61BKもそれぞれ、劣化等が生じたときに新規のものに交換可能であるように、またメンテナンスを容易にするために、独立して本体99に対して着脱可能となっている。これによって、交換作業、メンテナンス作業が容易化されている。
インク吐出装置60Y、60M、60C、60BKは、用いる記録液の色が異なるものの、その余の点では互いに略同様の構成となっている。インク吐出装置60Y、60M、60C、60BKはそれぞれ、ヘッド61Y、61M、61C、61BKをそれぞれ複数、主走査方向に並設され、インク吐出装置60Y、60M、60C、60BK、画像形成装置100はヘッド固定式のフルライン型となっている。
インク吐出装置60Y、60M、60C、60BKは、複数のヘッド61Y、61M、61C、61BKに供給される当該色の記録液を収容したメインタンクとしての記録液カートリッジであるインクカートリッジ81Y、81M、81C、81BKと、インクカートリッジ81Y、81M、81C、81BK内に収容された記録液を各ヘッド61Y、61M、61C、61BKに向けて圧送し給送するための供給ポンプとしての図示しないポンプと、ポンプによってインクカートリッジ81Y、81M、81C、81BK側から供給されてきた記録液を各ヘッド61Y、61M、61C、61BKに分配して供給する記録液供給部であるインク供給部としてのディストリビュータである図示しないディストリビュータタンクとを有している。
インク吐出装置60Y、60M、60C、60BKはまた、ディストリビュータタンク内の記録液量の不足を検出するために同記録液量を検知する記録液量検知手段であるインク量検知手段としての図示しないインク量検知センサと、インクカートリッジ81Y、81M、81C、81BKとディストリビュータタンクとの間の記録液の給送路をポンプとともに形成している図示しないパイプと、ディストリビュータタンクと各ヘッド61Y、61M、61C、61BKとの間の記録液の給送路を形成している図示しないパイプとを有している。
インクカートリッジ81Y、81M、81C、81BKは、内部の記録液が消費されて残り少なくなったときあるいはなくなったとき等に新規のものに交換可能であるように、またメンテナンスを容易にするために、本体99に対して着脱可能となっている。
ポンプは、制御部40によって作動を制御される。具体的には、インク量検知センサによってディストリビュータタンク内の記録液量の不足が検出されたことを条件として、この不足が検出されなくなるまで駆動され、インクカートリッジ81Y、81M、81C、81BK内の記録液をディストリビュータタンクに供給する。この点、制御部40は記録液供給制御手段であるインク供給制御手段として機能する。制御部40は、画像形成装置100において駆動される構成については、特に説明しない場合であっても、その駆動を制御するようになっている。
記録液は、イエロー、マゼンタ、シアン、黒に対応した色剤と、この色剤の分散剤であるアニオン性分散剤と、溶媒とを少なくとも含んでいる。かかる色剤とかかる分散剤とにより、記録液のインク成分はアニオン性基を有している。溶媒は安全性の観点及び後述する電気分解を生じせしめるための導電性の観点から水を含んでおり、記録液は導電性インクであり水溶性インクである水溶性記録液となっている。なお、記録液は、保存安定性の観点から、アルカリ性であることが望ましい。
記録液に用いられる色剤である顔料としては、特に限定されないが、オレンジ又はイエロー用の顔料として、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185等が挙げられる。
また、レッド又はマゼンタ用の顔料として、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
また、グリーン又はシアン用の顔料として、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
また、ブラック用の顔料として、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック6、C.I.ピグメントブラック7等が挙げられる。
記録液中の顔料の含有量は、通常、0.1〜40質量%であり、1〜30質量%が好ましく、2〜20質量%がさらに好ましい。
アニオン性分散剤としては、特に限定されないが、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
記録液は、転写性の点から、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基等が塩基を用いて中和されたアニオン性基を有する樹脂をさらに含むことが好ましい。
記録液は、水に可溶な溶媒をさらに含んでもよい。水に可溶な溶媒としては、特に限定されないが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1、5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン等の多価アルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジグリセリンのエチレンオキサイド付加物等の多価アルコール誘導体;ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、トリエタノールアミン等の含窒素溶媒;エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類;チオジエタノール、チオジグリセロール、スルフォラン、ジメチルスルホキシド等の含硫黄溶媒;炭酸プロピレン、炭酸エチレン等の炭酸アルキレンが挙げられ、二種以上併用してもよい。
図2に示すように、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、同図において下方を向く記録液吐出側に配設された導電性のノズル板61aと、ノズル板61aに形成されたノズル61bと、ディストリビュータタンクから記録液を供給され記録液を充填されたインク室61cと、インク室61c内の記録液をノズル61bから吐出させる図示しないインク吐出手段とを有している。ノズル板61a、ノズル61b、インク室61c、インク吐出手段はこれらが1組となって、それぞれ各ヘッド61Y、61M、61C、61BKに多数備えられているが、同図においてはそのうちの1組のみを図示している。ノズル板61aは、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKのそれぞれに備えられているが、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKのそれぞれにおいては、すべてのノズル61b等に共通である。
ノズル板61aは、詳細な図示を省略するが、導電性の基板と、この基板の、中間転写体37に対向する側の面に形成された撥水膜とを有している。撥水膜は、フッ素系撥水剤やシリコン系撥水剤などを塗布して形成しても良いし、フッ素系高分子やフッ素―金属化合物共析などをメッキして形成しても良く、撥水性がある膜なら特に限定されない。ノズル板61aは、インク室61c側の面をインク室61c内の記録液との界面を形成する界面形成部として備えており、後述するようにカソードとして機能する。
ノズル板61aは、全体が導電性であっても良いし、インク室61c側の面のみを導電処理された部材であっても良いし、インク室61c側に配設された導電性部材と中間転写体37側に配設された絶縁性部材とによって構成しても良い。
ノズル板61aの導電性の部分は、後述するようにカソードとして備えられるため、金属溶出に対して耐性を有する材質によって構成する必要はなく、金属、カーボンなど導電性の高い材料によって構成されればよい。
ノズル板61aは、中間転写体37とのギャップが50〜200μmの間で設定される。かかるギャップが50μm未満であると、回転体である中間転写体37とノズル板61aとのギャップを維持することが困難になることがあり、またかかるギャップが200μmを超えると、後述する液注のブリッジが形成されにくくなることがあるためである。ただし、ギャップの維持さえ可能なら50μm未満でも特に問題はなく、200μm以上であっても、安定した液柱のブリッジが形成されれば問題ない。
各インク吐出手段は、各ノズル61bから記録液を液滴化して吐出させ転写紙Sに着弾させるためのアクチュエータとして圧電素子を有し、制御部40による制御によって圧電素子に印加される電圧パルスに応じてノズル61bから記録液を吐出するようになっている。この点、制御部40は、インク吐出制御手段として機能する。インク吐出制御手段として機能する制御部40は、かかる圧電素子を駆動するための電圧パルスを所定の信号波形でかかる圧電素子のそれぞれに個別に入力する。
このようにして、インク吐出制御手段として機能する制御部40は、各インク吐出手段を個別に制御することで、各ノズル61bからの記録液の吐出タイミングを個別に制御可能となっている。具体的には、インク吐出制御手段として機能する制御部40は、各ノズル71bによって形成するドット径を互いに異ならせることを可能とするために、各圧電素子に入力する信号波形を、信号波形の1周期における記録液の吐出量を異ならせるように変化させる方式を採ることが可能となっている。たとえばインク吐出制御手段として機能する制御部40は、ヘッド61Y、61M、61C、61BKのそれぞれにおいて、複数のノズル61bのそれぞれによって形成されるドット径を変えるために、複数滴の記録液でドットを形成するべく、各圧電素子に入力する駆動波形を変更可能となっている。
インク吐出手段のアクチュエータはピエゾ方式等の、形状変形素子方式である他の方式の可動アクチュエータであってもよいし、サーマル方式等の加熱ヒータ方式によってノズル61bから記録液を吐出させるものであっても良い。
通電手段33は、電源33aと、電源33aを支持体37aとノズル板61aとに接続した特に図示しない電気回路と、制御部40の機能の一部として実現され電源33aによる電圧の印加タイミング、印加時間を制御する電圧印加制御手段とを有している。電圧印加制御手段としての制御部40は、電源33aの電圧を変更する電圧変更手段としても機能する。
電源33aは、陽極を支持体37aに接続され、陰極をノズル板61aに接続されている。よって、通電手段33は、中間転写体37をアノードとして備え、ノズル板61aをカソードとして備えている。電源33aは、ヘッド61Y、61M、61C、61BKのそれぞれに設けられている。
図1に示すように、清掃手段34は、中間転写体37に対していわゆるカウンター当接の態様で当接した、弾性体としてのゴムによって形成された清掃部材としてのクリーニングブレードによって構成されている。清掃手段34はクリーニングブレードとともに、清掃部材としてのクリーニングローラを備えていてもよい。
このような構成の画像形成装置100においては、画像形成開始の旨の所定の信号の入力により、中間転写体37が各ヘッド61Y、61M、61C、61BKに対向しながらA1方向に回転し、この過程で、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の各色の画像領域が中間転写体37の同じ位置に重なるよう、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKから、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の記録液が、A1方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして順次重ね合わされる態様で吐出され、中間転写体37上に一時的に画像が担持される。
このとき、電圧印加制御手段としての制御部40により、通電手段33が駆動され、電源33aから支持体37aとノズル板61aとの間に電圧が印加されている。
この状態で、記録液が、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKから中間転写体37上に付与されるが、そのときには、まず、ヘッド61Y、61M、61C、61BKから、図2(a)に示すように、ノズル61bにおいてメニスカスを形成している記録液が、図2(b)に示すように、中間転写体37に向けて移動し、ノズル61bと中間転写体37との間に、記録液からなる液柱のブリッジが一時的に形成され、次いで、図2(c)に示すように、記録液からなる液柱のブリッジが分断されることによって中間転写体37に担持され、中間転写体37上に記録液による画像が形成される。
そして、図2(b)に示した、記録液からなる液注のブリッジが形成された状態では、通電手段33により、記録液中の色剤成分が凝集作用を受ける。具体的には、通電手段33の電圧印加により、カソードであるノズル板61aとアノードである中間転写体37とにはそれぞれ次の電極反応が生じ、記録液の液柱のブリッジに含まれる水が電気分解される。
カソード:4H2O+4e−→2H2+4OH−・・・反応式(1)
アノード:2H2O→4H++O2+4e−・・・反応式(2)
これにより、アノードとして機能する中間転写体37の表面で、記録液の液柱のブリッジに含まれる水が酸化してプロトン(H+)が生成するため、図3に示すように、アニオン性分散剤Dにより分散されている顔料Pが、プロトンを介して凝集する。これにより、隣接するドット間の滲みの発生が抑制され、高精細な画像が形成される。また、かかる電圧印加によりノズル61bの目詰まりが予防されるという利点もある。なお、かかるブリッジを形成する時間は、圧電素子に印加される電磁パルスのピーク電圧とパルス幅等により制御可能である。
ここで、図4を用いて、カソード及びアノードの間に形成される液柱のブリッジについて説明する。液柱のブリッジBの内部では、カチオン及びアニオンは、それぞれカソードC及びアノードAの近傍に移動する。その結果、カソードC及びアノードAの表面に、それぞれ電気二重層EC及びEAが形成されるが、電気二重層EC及びEAの充電速度は、液柱のブリッジBの導電率、記録液に含まれるイオンの濃度でほぼ決定される。このとき、電気二重層EAの電圧が数Vに達すると、水が電気分解してファラデー電流が流れる。その結果、アノードAの表面では、水が酸化してプロトンが生成し、アニオン性分散剤により分散されている顔料が凝集する。すなわち、かかるブリッジが形成された瞬間に、ブリッジに、顔料の凝集作用をもたらすイオンが効率よく生成することで、記録液の中間転写体37への着液と同時に顔料の凝集が行われる。その結果、隣接する記録液ドット間における顔料の滲みが発生せず、非常に高精細な溶質画像が形成される。
このように、通電手段33は、液柱のブリッジBを形成している記録液を電気分解するための、中間転写体37と、ヘッド61Y、61M、61C、61BK、具体的にはノズル板61aとの間の電圧印加を行なうための構成となっている。
この電圧印加は、この電圧印加によって記録液に印加される電圧に起因する放電を制御するために、電圧印加制御手段、電圧変更手段として機能する制御部40により制御される。かかる放電及び制御の態様については後に詳しく述べる。
液柱のブリッジBが形成されてから分断されるまでの時間は、通常、数マイクロ秒〜数十マイクロ秒であり、記録液の導電率は、通常、数十mS/m〜数百mS/mである。このため、中間転写体37に記録液による画像を形成するためには、通電手段33による印加電圧は、水の理論分解電圧である1.23Vや一般的な水の電気分解の条件である数V〜十数Vでは不十分であり、数十V〜数百Vであることが好ましい。
中間転写体37上に担持された画像の先端が転写部31に到達するタイミングに合わせて、給紙ユニット20から給送された一枚の転写紙Sが転写部31に供給され、転写ローラ38が連れ回りしながら、転写部31を通過する転写紙Sに、中間転写体37上に担持されている画像が転写され、転写紙Sの表面に画像が形成される。画像が形成された転写紙Sは、排紙台25に案内され排紙台25上に積載される。
このようにして画像が転写紙Sに転写されるときには、凝集成分を含む記録液が転写紙Sに転写される。したがって、上述の凝集作用により凝集した色剤によって画像が形成されることにより、転写紙Sが普通紙である場合であっても、フェザリングやブリーディングを防止ないし抑制しつつ、高速で高画像濃度、高画質の画像形成が可能である。
また、高速の画像形成を行うには、記録液を速乾性とすることを要するため、記録液は転写紙Sへの吸収性が一般に高いが、この場合には記録液が転写紙Sの奥深くまで浸透し、いわゆる裏移りを生じ、両面画像形成に不向きとなる。しかし、かかる凝集作用により記録液の転写紙Sへの吸収性が低減されるためかかる裏移りが防止ないし抑制され、両面画像形成にも適している。さらにまた、記録液の転写紙Sへの吸収性が低減されることにより、転写紙Sのコックリングやカールなどの変形も抑制ないし防止されるとともに、これによって画像を担持した転写紙Sの搬送性が向上し、ジャムが防止ないし抑制されるなど、転写紙Sの取り扱いが容易化する。
転写部31における転写により、転写部31を通過した中間転写体37上には、記録液に起因する成分はほとんど残っていないが、中間転写体37は清掃手段34によるクリーニングを受けることで、記録液のオフセットが高度に防止ないし抑制され、繰り返し画像形成を行っても、オフセットによる地肌汚れが防止ないし抑制され、画像劣化、中間転写体37の劣化が抑制ないし防止されて、経時的に良好な画像形成を行うことが可能である。
以上のような画像形成装置100において、記録液が中間転写体37とヘッド61Y、61M、61C、61BK具体的にはノズル板61aとの間をブリッジした状態となる前後にわたって通電手段33による、記録液を電気分解する電圧印加を継続すると、この電圧印加によって記録液に印加される電圧に起因する放電が生じ、画像形成に不具合を生じたり、画像形成装置100に負荷をかけたりし得ることが分かった。
このような現象についてより詳しく検証すると、かかる放電は、空気中の放電であり、ヘッド61Y、61M、61C、61BKから吐出された記録液が中間転写体37に近づき、記録液と中間転写体37との間の距離が記録液に印加されている電圧による放電を生じる距離となった場合や、中間転写体37とヘッド61Y、61M、61C、61BKとの間をブリッジした記録液が切れてヘッド61Y、61M、61C、61BKから遠ざかり、記録液とヘッド61Y、61M、61C、61BKとの間の距離が記録液に印加されている電圧による放電を生じる距離となった場合に発生するものと考察される。そして、これらの場合には、放電によって記録液が飛び散って像が乱れ、また前者の場合には、放電によって中間転写体37にダメージが与えられることによっても像が乱れ、後者の場合には、放電によって撥水膜が破壊されたりノズル板61a本体もとくに樹脂製である場合には破壊されたりして、メニスカスが正常な状態で維持されなくなり、記録液の吐出異常が生じることによっても像が乱れると考えられる。
なお、かかる放電は、上述の空気中の放電が主なものと考えられるが、空気中の放電の他に記録液中の放電を含む可能性がある。記録液中の放電は、空気中の放電の発生をトリガーとして生じると考えられるものであり、ノズル61b中の記録液や中間転写体37に付与された記録液における不要な凝集作用の原因となると推測されるものである。
画像形成装置100では、かかる放電を、防止するように、あるいは形成される画像の品質や画像形成装置100への負荷が問題とならない程度に抑制するように、制御するために、電圧印加制御手段として機能する制御部40により、中間転写体37とヘッド61Y、61M、61C、61BK具体的には各ノズル板61aとの間の電圧印加の制御を行うようになっている。
ここで、上述の放電について補足する。かりに、上述の放電を上述のように制御することを考慮せず、ノズル61bと中間転写体37との間で記録液のブリッジが形成されている状態の前後においても中間転写体37とノズル板61aとの間の電圧印加を同じ印加電圧で継続すると、主に、かかる状態が開始するときよりも、かかる状態が終わるとき、すなわち記録液のブリッジが切れる直前のほうが放電しやすいことが分かった。また、このように電圧印加を継続した場合、印加電圧を上げていくと、かかる状態が開始する側でも、かかる状態が終了する側でも、放電発生時間が早くなっていき、最終的には、かかる状態となる前後においても、放電が確認される場合があるものの、この放電は、ブリッジが切れる直前の放電と比較すると弱い放電であることが分かった。
また、ノズル61bと中間転写体37との間でブリッジを形成している記録液の液柱は、時間の経過に従って、図2(b)に示した状態から図2(c)に示した状態に移行する過程で、ノズル61b側から次第に細くなっていくが、この記録液の溶液抵抗は、この液柱の直径の二乗に反比例するため、液柱が細るにつれて、細った部分の溶液抵抗が著しく大きくなる。したがって、上述の放電は、かかる液柱が細るにつれて、液柱の細くなっている部分に電界が集中することによって引き起こされると考えられる。
しかし、この放電を防止ないし抑制するために、ノズル61bと中間転写体37との間で記録液のブリッジが形成されている状態の開始当初から印加電圧の値を小さくすると、記録液の電気分解に与えられるエネルギーが不足し、記録液の電気分解が不十分となって滲みが生じる。
そこで、かかる状態の終了側での放電がかかる開始側での放電よりも強いことを考慮すると、記録液の電気分解に必要なエネルギーを確保しつつ放電を制御するには、かかる液柱の最も細い部分である最小直径が、所定の大きさまで小さくなったときに、印加電圧を弱めることが望ましい。
かかる所定の大きさは、上述のようにかかる液柱の容積抵抗が大きくなることで発生する放電が、防止される程度に、あるいは形成される画像の品質や画像形成装置100への負荷が問題とならない程度に抑制されるように決定される大きさである。本発明者らの鋭意研究により、かかる最小直径の大きさは、3μmであることが分かった。この根拠については後に明らかとなる。
このような理由により、画像形成装置100においては、電圧印加制御手段、電圧変更手段として機能する制御部40によって、ノズル61bと中間転写体37との間でブリッジした状態となった記録液の最小直径が3μmに細るタイミングで、ノズル61bと中間転写体37との間の電圧印加における印加電圧を低下させる態様で変更する。これにより、放電に起因する記録液の飛び散り等の不具合が防止ないし抑制される。
この、電圧印加制御手段として機能する制御部40によって電圧印加を低下させるタイミングは、温湿度及び圧電素子に入力する波形ごとに、最小直径が3μmとなるタイミングと一致するように設定された、ある基準時間からのタイミングとしても良いし、最小直径を光学的に検知する撮像素子のような液柱径検知手段としてセンサーを取り付け、この液柱径検知手段によって検知された最小直径が3μmとなったタイミングとしても良い。かかるタイミングを記憶させる構成については、たとえば制御部40にかかるタイミングを記憶させることが可能であり、かかるタイミングを記憶した構成は、印加電圧低下タイミング記憶手段として機能する。
なお、画像形成装置100においては、かかる開始側の放電を考慮して、電圧印加制御手段として機能する制御部40によって電圧印加を開始させるタイミングを、記録液のブリッジが形成されている状態の開始時以降としている。開始側の放電は、上述した放電のメカニズムから明らかなように、ノズル61bと中間転写体37との間で記録液のブリッジが形成されていれば生じないため、電圧印加の開始タイミングは、記録液のブリッジが形成されている状態の開始時以降であればよい。
ただし電圧印加の継続時間が短いと記録液の電気分解が不十分となって滲みが生じるため、電圧印加の開始タイミングは、記録液の電気分解が十分に生じる程度に電圧印加の継続時間が確保されるように、決定される。そのためには、記録液のブリッジの形成継続時間の調整も行われ得る。
同様に、最小直径が3μmとなる前の印加電圧すなわち開始側印加電圧と、最小直径が3μmとなって以降の印加電圧すなわち変更後印加電圧との具体的な値は、電圧印加の開始タイミング、記録液のブリッジの形成継続時間との兼ね合いで、記録液の電気分解が十分に生じる程度のエネルギーが確保される範囲で、且つ、上述の放電が上述のように制御される範囲で決定される。ただし、変更後印加電圧は200V以下が好ましく、とくに0Vとすることが好ましい。この根拠については後に明らかとなる。
電源33aは、上述のように、ヘッド61Y、61M、61C、61BKのそれぞれに設けられている。電圧印加制御手段、電圧変更手段として機能する制御部40は、ヘッド61Y、61M、61C、61BKのそれぞれについて個別に、上述の放電を上述のように制御する態様で電圧印加の制御を行う。言い換えると、電源33aは、電圧印加制御手段として機能する制御部40により、ヘッド61Y、61M、61C、61BKのそれぞれにおいて個別に、かかる態様で電圧印加が行われるように、制御可能とされている。
上述のように、インク吐出制御手段として機能する制御部40は、各ノズル71bによって形成するドット径を互いに異ならせることを可能とするために、各圧電素子に入力する信号波形を、信号波形の1周期における記録液の吐出量を異ならせるように変化させる方式を採ることが可能となっている。上述の放電を上述のように制御するためには、全てのノズル61bの圧電素子に入力する信号波形の各周期内の駆動波形を全て同一にするとともに各周期内の駆動波形の数を調整し、この数によって定まる液滴数によりドット径を制御しても良いし、圧電素子に入力する信号波形の各周期内の駆動波形を適宜変更することで各周期を構成する入力波形を変え、入力波形によって定まる液滴量によりドット径を制御してもよい。
ただし、圧電素子への入力波形を変える場合には、各ノズル61bからの記録液の吐出タイミングに応じてノズル61bから吐出された記録液がノズル61bと中間転写体37との間をブリッジした状態となっている時間が変化することをも考慮して、最小直径が最も小さい記録液の液注に印加電圧変更のタイミングを合わせることにより、放電を制御することが望ましい。
具体的には、ヘッド61Y、61M、61C、61BKのそれぞれにおいて、複数のノズル61bから吐出されノズル61bと中間転写体37との間でブリッジした状態となった記録液のうち、最小直径が3μmにまで細るタイミングが最も早い記録液のそのタイミングで、当該ヘッド61Y、61M、61C、61BKに備えられているノズル61bのすべてについて、電圧印加制御手段、電圧変更手段として機能する制御部40による印加電圧における印加電圧を低下させる。
このように、複数のノズル61bが各ヘッド61Y、61M、61C、61BKに備えられている構成では、それぞれのヘッド61Y、61M、61C、61BKにおいて、最小直径が最も早く3μmに細るタイミングを当該ヘッド61Y、61M、61C、61BKにおける各ノズル61bのすべてについての印加電圧低下タイミングに適用し、かかるタイミングに合わせて全てのノズル61bにおける印加電圧を低下させることで、上述の放電が上述のように制御される。
そして、このような、最も小さい最小直径が3μmになるタイミングに基づいて印加電圧を低下させる制御のもとで、図2(b)に示すように、ヘッド61Y、61M、61C、61BKと中間転写体37との間を一時的にブリッジした状態の記録液を電気分解するための、電源33aによる、ヘッド61Y、61M、61C、61BKと中間転写体37との間の電圧印加すなわち制御電圧としての分解電圧の印加が行われ、このようにすることで、様々なドット径で、放電に起因する記録液の飛び散り等の不具合が、それぞれのヘッド61Y、61M、61C、61BKにおいて防止ないし抑制されるなど、上述の放電を考慮した良好な画像形成が行われる。
なお、このように印加電圧低減のタイミングを合わせる制御を行う場合、それぞれのヘッド61Y、61M、61C、61BKにおける各ヘッド61bからの記録液の吐出開始タイミング言い換えるとブリッジの形成開始タイミングが一致するようにすることが望ましく、そのため、かかる吐出開始タイミングが異なるような波形の入力は避けることが好ましい。
以上の条件を考慮した次の実験により画像形成が良好に行われるか否かを確かめた。
実験の条件は次のとおりである。
実験に用いた画像形成装置は、次の条件を満たす、画像形成装置100と同様の構成の、インクジェットプリンタGX5000(リコー社製)を改造した画像形成装置である。
中間転写体37は、支持体37aとしてのアルミニウム素管の外周に、表面層37bとして、体積抵抗率が1.6Ω・cm、厚さが0.5mmの、カーボンが分散されているシリコーンゴム層を有しており、外周の線速が100mm/秒でA1方向に回転駆動される。
各ヘッド61Y、61M、61C、61BKと中間転写体37とのギャップは80μmとした。
転写ローラ38は、金属製の芯金に厚さが5mmのゴム層を形成したものである。
清掃手段34としては、フッ素ゴムからなるブレードを用いた。
なお、本実験においては、中間転写体37の長手方向すなわちA1方向に垂直な方向すなわち、図1の紙面に垂直な方向には、ヘッド61Y、61M、61C、61BKを移動させず、ヘッド61Y、61M、61C、61BKを固定して用いた。各ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、図1に示したようにA1方向にずれた位置に設置した。各ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、ノズル61bを多数備えているが、後述する滲みの評価が可能なように、本実験は、選択されたノズル61bから記録液を吐出して行った。図5に、本実験によって形成した画像パターンすなわち評価パターンである吐出パターンの概念図を示す。本実験によって形成した吐出パターンは、同図に示した、隣り合う色が互いに異なる8ラインの繰り返しによって作像したものであり、この吐出パターンによる作像結果に基づいて、後述する評価を行った。
記録液としては以下のようなものを用いた。
<イエロー記録液>
・スルホン酸基結合型イエロー顔料分散液(CAB−O−JET−270Y、固形分10質量%、キャボット・スペシャルティ・ケミカルズ・インク製):40.0質量%
・トリエチレングリコール:14.0質量%
・グリセリン:25.0質量%
・プロピレングリコールモノブチルエーテル:7.0質量%
・デヒドロ酢酸ソーダ:0.1質量%
・蒸留水:残量
その後、水酸化リチウムの5質量%水溶液によりpH9.2に調整し、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターにて加圧濾過。
<マゼンタ記録液>
・スルホン酸基結合型マゼンタ顔料分散液(CAB−O−JET−260M、固形分10質量%、キャボット・スペシャルティ・ケミカルズ・インク製):40.0質量%
・ジエチレングリコール:20.0質量%
・プロピレングリコールモノブチルエーテル:5.0質量%
・デヒドロ酢酸ソーダ:0.1質量%
・蒸留水:残量
その後、水酸化リチウムの5質量%水溶液によりpH9.2に調整し、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターにて加圧濾過。
<シアン記録液>
・スルホン酸基結合型シアン顔料分散液(CAB−O−JET−250C、固形分10質量%、キャボット・スペシャルティ・ケミカルズ・インク製):40.0質量%
・エチレングリコール:5.0質量%
・トリエチレングリコール:15.0質量%
・プロピレングリコールモノブチルエーテル:5.0質量%
・デヒドロ酢酸ソーダ:0.1質量%
・蒸留水:残量
その後、水酸化リチウムの5質量%水溶液によりpH9.2に調整し、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターにて加圧濾過。
<ブラック記録液>
・スルホン酸基結合型カーボンブラック顔料分散液(CAB−O−JET−200、固形分20質量%、キャボット・スペシャルティ・ケミカルズ・インク製):35.0質量%
・2−ピロリドン:9.0質量%
・グリセリン:16.0質量%
・プロピレングリコールモノブチルエーテル:1.0質量%
・デヒドロ酢酸ソーダ:0.1質量%
・蒸留水:残量
その後、水酸化リチウムの5質量%水溶液によりpH9.2に調整し、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターにて加圧濾過。
本評価においては、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKにおけるすべてのノズル61bの圧電素子に入力する信号波形を同一とした。事前の観察により、入力した信号波形の各周期において、信号波形を入力してからの時間と記録液の最小直径との関係がほぼ一定に保たれること、すなわち、記録液の最小直径の時間的推移がほぼ一様に生じることを確認した。
各実施例及び各比較例の評価の手順は次のとおりである。
(1)各ヘッド61Y、61M、61C、61BKから1ドットのライン画像をA1方向に沿って1本、出力した。各ヘッド61Y、61M、61C、61BKにおける吐出周波数は1000Hzとし、吐出時間は1秒とした。
(2)中間転写体37と転写ローラ38との間にリコービジネスコートグロス100を搬送し、中間転写体上の(1)で作像した導電性記録液像を転写した。
(3)再度(1)を行い、中間転写体37上でのインクの飛び散りを観察した。
(4)各ヘッド61Y、61M、61C、61BKから1ドットのライン画像をA1方向に沿って48本、計192本出力し、ノズル不吐出数のチェックとしてライン画像が何本出力されなくなったかを計数した。各ヘッド61Y、61M、61C、61BKにおける吐出周波数、吐出時間は(1)と同じであり、それぞれ1000Hz、1秒とした。
各実施例および各比較例の条件と、評価結果である滲み、インクの飛び散り、ノズル不吐出数に関して以下表1にまとめる。
同表に示した条件において、「電圧1」は、上述した開始側印加電圧に対応するものであり、印加する最大電圧の電圧値を意味している。
同表に示した条件において、「電圧2」は、上述した変更後印加電圧に対応するものであり、最小直径が同表の「最小直径」の欄に示す所定の大きさになったときに切り換えられる変更後の印加電圧の電圧値を意味している。なお、「電圧2」が0Vの場合は、0Vの電圧を印加し続けることを意味しており、電圧印加を終了することを意味するものではない。
同表に示した条件において、「最小直径」はすでに述べたとおり、ノズル61bから吐出されノズル61bと中間転写体37との間を一時的にブリッジした状態となった記録液の最も細い部分の直径を意味している。
同表に示した評価結果において、「滲み」は、マイクロスコープにより観察し、各色の記録液の境界部の滲みを評価したものであり、評価の基準は以下の通りである。
・境界部が非常に鮮明に分かる・・・◎
・境界部が鮮明に分かる・・・○
・多少の滲みはあるが、問題ないレベル・・・△
・ライン同士が混色してしまい、元の色がはっきりしない・・・×
また同表に示した評価結果において、「飛び散り」は、中間転写体37上での各色の記録液の飛び散りを評価したものであり、評価の基準は以下の通りである。
・飛び散りが確認されない・・・○
・若干の飛び散りが見られるが問題ないレベル・・・△
・激しく飛び散り、ラインが太っている・・・×
また同表に示した評価結果において、「ノズル不吐出数」は、記録液を吐出しなくなったノズルの数、すなわちライン画像が中間転写体37上で何本記録されなくなったかを評価したものであり、評価の基準は、ノズル不吐出数である本数に応じて、以下の通りである。
・ノズル不吐出数0本:ノズル不吐出が確認されない・・・○
・ノズル不吐出数1本以上4本未満:画像品質に問題ないレベル・・・△
・ノズル不吐出数5本以上:画像品質に問題あり・・・×
同表から、滲みに対する電圧印加の効果と、飛び散り及び不吐出数に対する印加電圧低下のタイミングの制御の効果とが確認される。
補足すると、滲みに関しては、比較例1と他の例との比較から、電圧1を印加しなければ滲みに対する効果が得られず、また、実施例2、4と実施例7との比較から、電圧1の大きさが大きい場合には滲みに対する効果が向上することが分かる。
同じく、滲みに関しては、実施例3、6と、比較例2との比較から、最小直径が5μmの早いタイミングで印加電圧を低下させても、電圧1、電圧2の大きさが大きい場合には滲みに対する効果が得られる場合があるものの、実施例3と実施例4との比較、実施例6と実施例7との比較から、最小直径が5μmの早いタイミングで印加電圧を低下させると、滲みに対する効果が減少することが分かる。
飛び散り及び不吐出数に関しては、実施例1と、比較例3、4との比較から、印加電圧低下のタイミングが、最小直径が1μmのタイミングまで遅れても、電圧1の大きさが小さい場合には飛び散りが許容範囲の場合もあるが、比較例3では不吐出数に問題があるため、印加電圧低下のタイミングは、最小直径が3μmのタイミングとしなければ、飛び散り及び不吐出数に対する効果が得られないことが分かる。
また、実施例4と比較例3との比較、実施例8と比較例4との比較から、印加電圧低下のタイミングが、最小直径が1μmのタイミングまで遅れると、滲み、飛び散り及び不吐出数とくに飛び散り及び不吐出数が悪化することが分かる。
また、実施例4と実施例5との比較、実施例7と実施例8との比較から、電圧2は、200Vよりも0Vである方が、滲み、飛び散り及び不吐出数に対する効果があることが分かる。
なお、飛び散りは、放電によって記録液が飛び散る現象であり、上述のように、最小直径が小さくなるほど容積抵抗が大きくなることによって電界が集中し放電が生じることによって発生すると考察される。
不吐出の発生原因については、放電によるノズル61b周辺のノズル板61aの劣化によってノズル61bから記録駅が吐出されなくなるものと考察される。なお、不吐出がライン画像の中途部の不定位置から発生することから、放電は、不規則なタイミング、程度で生じるものと考察される。また、不吐出は、一旦発生すると、ライン画像形成の終了まで継続したが、画像形成終了後のメンテナンスにより解消される場合も見られた。
その他、圧電素子への入力波形をそれぞれのノズルで異なるものにし、同一ヘッド内で、最も小さい最小直径が3μmになるタイミングに基づいて全てのノズルの印加電圧を低下させる制御を行ったところ、かかるタイミングにおいて最小直径が3μmより大きい記録液では滲みが多少悪化したが、画像に大きな影響を及ぼすものではなかった。
また、圧電素子への入力波形をそれぞれのノズルで異なるものにし、それぞれのノズルにおいて最小直径が3μmになるタイミングに基づいて印加電圧を低下させる制御を行ったところ、飛び散りが若干増えたが、画像に大きな影響を及ぼすものではなかった。
ここで、中間転写体37が表面層37bを備えておらず支持体37aからなる構成においては、すでに述べたように、支持体37aがアノードとして機能することとなる。この場合、支持体37aの表面で、水とともに、金属である支持体37aを酸化するようにすることが可能である。金属である支持体37aを酸化するようにすると、色剤を凝集するのに優れた金属カチオンが生成するため、図6に示すように、プロトン及び金属カチオン(Mn+)を介して、アニオン性分散剤Dにより分散されている顔料Pが凝集することとなり、凝集性が高くなる。
このような構成においては、図7に示すように、転写手段64が、転写ローラ38のみならず、中間転写体37上に形成された画像を転写され一旦担持する、表面に弾性体層としてのゴム層63aを備えた転写画像担持体としての中間転写ドラム63を備えていることが望ましい。中間転写ドラム63は中間転写体37に連れ回りし、転写ローラ38は中間転写ドラム63に連れ回りする。中間転写ドラム63の表面が弾性体であることにより、金属製で表面硬度の高い中間転写体37からの画像の転写が良好に行われ、転写性が向上する。
中間転写ドラム63は、ゴム層63aと、ゴム層63aに覆われた基体63bとを有している。基体63bを構成する材料としては、特に限定されないが、アルミニウム、アルミ合金、銅、ステンレス等の金属が挙げられる。ゴム層63aを構成する材料としては、特に限定されないが、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。
ここで、制御部40は、メモリに、記録液を吐出するノズル61bを備えたヘッド61Y、61M、61C、61BKと、ヘッド61Y、61M、61C、61BKにより吐出された記録液を付与される、少なくとも表面が導電性の中間転写体37と、ヘッド61Y、61M、61C、61BKから吐出されヘッド61Y、61M、61C、61BKと中間転写体37との間を一時的にブリッジした状態の記録液を電気分解するための中間転写体37とヘッド61Y、61M、61C、61BKとの間の電圧印加を行うための通電手段33と、記録液によって中間転写体37上に担持された画像を転写紙Sに転写する転写手段64と、かかる電圧印加によって記録液に印加される電圧による放電を制御するためにかかる電圧印加の制御を行う電圧印加制御手段として機能する制御部40とを用い、かかる状態となった記録液の最も細い部分の直径が3μmに細るタイミングで、電圧印加制御手段として機能する制御部40により、かかる電圧印加における印加電圧を低下させる画像形成方法を実行するための画像形成プログラムを記憶している。この点、制御部40ないしメモリは、画像形成プログラム記憶手段として機能している。かかる画像形成プログラムは、制御部40に備えられたメモリのみならず、半導体媒体(たとえば、ROM、不揮発性メモリ等)、光媒体(たとえば、DVD、MO、MD、CD−R等)、磁気媒体(たとえば、ハードディスク、磁気テープ、フレキシブルディスク等)その他の記憶媒体に記憶可能であり、かかるメモリ、他の記憶媒体は、かかる画像形成プログラムを記憶した場合に、かかる画像形成プログラムを記憶したコンピュータ読取可能な記録媒体を構成する。
以上本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
たとえば、導電性記録液中の顔料は、カチオン性分散剤により分散し、カソードとして機能する中間転写体の表面で生成した水酸化物イオンを介して、凝集させてもよい。
中間転写体は、全体が導電性である必要はなく、少なくとも表面が導電性であればよい。
本発明を適用する画像形成装置は、上述のタイプの画像形成装置に限らず、他のタイプの画像形成装置、すなわち、ヘッドに関してシャトル型であってもよいし、また、複写機、ファクシミリの単体、あるいはこれらの複合機、これらに関するモノクロ機等の複合機、その他、電気回路形成に用いられる画像形成装置、バイオテクノロジー分野において所定の画像を形成するのに用いられる画像形成装置であっても良い。ヘッドの数は画像形成装置の用途に応じて増減されるものであり、1つであっても、複数であってもよい。
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。