以下、本発明の実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
本発明の耐燃焼性シートは、第1の層と、第1の層に積層された第2の層を備えている。
本発明の耐燃焼性シートでは、第2の層を炎に直接触れない面に積層することが好ましい。もっとも、本発明の耐燃焼性シートは、第1の層の表裏面の双方に第2の層が積層された3層構造であってもよく、第1及び第2の層が交互に積層されるなどの4層以上の積層構造であってもよい。なお、第2の層は、第1の層を被膜する被膜層であってもよい。
第1の層及び/または第2の層の表面には、印刷加工が施されていてもよい。また、耐燃焼性シートには、加飾層が設けられていてもよい。この場合には、耐燃焼性シートの意匠性を高めることができる。
また、耐燃焼性シートには、これらの層以外に、保護層、反射防止層などの種々の機能層が設けられていてもよい。
第1の層は、薄片化黒鉛と、第1の熱可塑性樹脂とを含んでいる。第1の層は、単一の層であってもよく、複数の層が積層されている複層構造であってもよい。第1の層が複層構造である場合には、第1の層は、熱可塑性樹脂と薄片化黒鉛とを含む層に加えて、薄片化黒鉛とは異なる他の充填材、例えば、銅、アルミなどの微粒子もしくは微細繊維等を含む層を備えていてもよい。この場合には、上述した他の充填材の有する優れた特性、例えば難燃性等を充分に発揮することができる。
本発明において、薄片化黒鉛とは、元の黒鉛を剥離処理して得られるものであり、元の黒鉛よりも薄いグラフェンシート積層体をいう。薄片化黒鉛におけるグラフェンシート積層数は、元の黒鉛より少なければよいが、通常1層〜200層程度である。
薄片化黒鉛は、元の黒鉛を剥離処理して得られるものであるため、通常の黒鉛よりも厚みが薄く、アスペクト比が比較的高い形状を有する。加えて、薄片化黒鉛は、高い熱伝導率を有する。そのため、上記薄片化黒鉛は、積層面方向へと熱を効率よく逃がすことができる。従って、上記薄片化黒鉛により、第1の層及び耐燃焼性シートの耐燃焼性を高めることができる。なお、本発明において、アスペクト比とは、薄片化黒鉛の積層面方向における最大寸法の薄片化黒鉛の厚みに対する比をいうものとする。
元の黒鉛の剥離処理により薄片化黒鉛のアスペクト比が高くなると、上記薄片化黒鉛の比表面積が大きくなる。そのため、上記薄片化黒鉛の比表面積が大きいことが望ましい。上記薄片化黒鉛の比表面積の好ましい下限は50m2/gであり、好ましい上限は2600m2/gである。上記薄片化黒鉛の比表面積が小さすぎると、すなわち上記薄片化黒鉛のアスペクト比が低すぎると、耐燃焼性が充分に高められないことがある。一方で、上記薄片化黒鉛の比表面積が大きすぎると、すなわち上記薄片化黒鉛のアスペクト比が高すぎると、効果が飽和してそれ以上の耐燃焼性を望めないことがある。
第1の層に含まれる上記薄片化黒鉛の割合は特に限定されないが、前記薄片化黒鉛以外の前記第1の層に含まれる成分の合計100重量部に対し、0.1〜50重量部の範囲とすることが好ましい。0.1重量部未満では、耐燃焼性が充分に高められないことがある。50重量部を超えると、脆くて割れやすくなることがあり、耐衝撃性及び二次成形性が悪化することがある。好ましくは、上記薄片化黒鉛の割合は、0.5〜30重量部の範囲であり、より好ましくは1〜15重量部の範囲である。なお、本発明の耐燃焼性シートに加飾層を設ける場合には、上記薄片化黒鉛の割合は、0.5〜50重量部の範囲であることが好ましい。
上記薄片化黒鉛は、第1の層に含まれる第1の熱可塑性樹脂中に、均一に分散されていることが望ましい。それによって、薄片化黒鉛による耐燃焼性の向上効果を効率的に発揮することができる。従って、第1の層及び耐燃焼性シートの耐燃焼性を効率的に高めることができる。
第1の熱可塑性樹脂は、特に限定されず、種々の樹脂を用いることができる。第1の層に熱可塑性樹脂を用いることにより、第1の層及び耐燃焼性シートの加熱下における成形が容易となる。従って、第1の層及び耐燃焼性シートの成形性を高めることができる。
第1の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ(1−)ブテン系樹脂、ポリペンテン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリフェニレンエーテル系樹脂;アクリル系樹脂;ポリスチレン(耐衝撃性ポリスチレンを含む)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル−スチレン(AS)樹脂、アクリロニトリル−エチレン−プロピレン−スチレン(AES)樹脂、アクリロニトリル−アクリレート−スチレン(AAS)樹脂等のスチレン系樹脂;ポリアミド系樹脂;塩素化ポリエチレン等の塩素化ポリオレフィン;塩化ビニル系樹脂;塩素化塩化ビニル系樹脂;エチレン−酢酸ビニルコポリマー、エチレン−アクリル酸メチルコポリマー(EMA)、エチレン−アクリル酸エチルコポリマー(EEA)、エチレン−アクリル酸ブチルコポリマー(EBA)、エチレン−メタクリル酸メチルコポリマー(EMMA)、上述したAES等のエチレン系共重合体等が挙げられる。これら熱可塑性樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、難燃性、耐衝撃性及び二次加工性に優れる塩化ビニル系樹脂や、耐衝撃性及び二次加工性に優れる塩素化ポリオレフィン等が好ましい。また、第2の層に含まれる第2の熱可塑性樹脂に塩化ビニル系樹脂を用いた場合には、第1の層に含まれる第1の熱可塑性樹脂にも塩化ビニル系樹脂を用いることにより、第1及び第2の層の間の接着をより強固にすることができる。
第1の熱可塑性樹脂の分子量は、特に限定されないが、例えば、1万〜100万程度の重量平均分子量が挙げられる。なお、本発明において、重量平均分子量とは、スチレン系エラストマーのGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量である。具体的には、(メタ)アクリレート重合体の重量平均分子量は、以下の条件で測定した値とすることができる。装置:HLC−8120(東ソー社製)、溶媒:THFを用いて、分子量が既知のポリスチレンの分子量によって検量線を作成する。測定に使用するカラム及びサンプル濃度は、測定する各(メタ)アクリレート重合体の重量平均分子量によって適宜選択する。例えば、上記分子量が300万の場合は、使用カラム:GMHHR−H(30)×2本、溶媒:THF、サンプル濃度:0.05%、注入量:50μl、流量:0.5ml/分によって、測定する。
塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニル単独重合体(塩化ビニルホモポリマー)、塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーと塩化ビニルモノマー(好ましくは、50重量%以上含む)との共重合体、重合体に塩化ビニルモノマーをグラフト共重合したグラフト共重合体等が挙げられる。これら重合体は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等のα−オレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;ブチルビニルエーテル、アセチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、フェニルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−置換マレイミド類、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、アクリロニトリル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
塩化ビニルをグラフト共重合する重合体としては、塩化ビニルをグラフト重合させるものである限りにおいて、特に限定されない。該重合体は、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート−一酸化炭素共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリウレタン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記塩化ビニル系樹脂の重合方法は、特に限定されず、従来公知の任意の重合方法を利用することができる。例えば、塊状重合方法、溶液重合方法、乳化重合方法、懸濁重合方法等が挙げられる。
塩素化塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニル系モノマーの重合前に塩素化を行ったものを用いて重合したものでもよく、塩化ビニル系樹脂を重合した後、塩素化を行ったものでもよい。塩化ビニル系樹脂の塩素化方法は、特に限定されず、当該分野で公知の方法を利用することができる。塩素化の方法は、例えば、熱塩素化方法、光塩素化方法等が挙げられる。
上記塩化ビニルの重合度は、小さくなると耐衝撃性が低下する傾向があり、大きくなると二次成形性が悪化する傾向がある。そのため、上記重合度は、好ましくは400〜2500程度、より好ましくは600〜2000程度、更に好ましくは600〜1600程度である。なお、重合度を調整する方法としては、例えば、重合温度等が挙げられる。一般に、重合温度が高いほど、重合度は低くなる。また、重合度は、JIS K 6720−2に準拠して測定することができる。
塩素化ポリオレフィンは、一般に単独で柔軟性、耐候性、耐熱老化性、難燃性、耐薬品性に優れるエラストマーとして使用される。また、塩素化ポリオレフィンは、塩化ビニル系樹脂、オレフィン系樹脂、ABSなどの汎用樹脂またはEPDM、クロロスルホン化ポリエチレン、クロロプレン、SBRなどのゴム類の物性改良材としても使用される。塩素化ポリオレフィンは、なかでも、塩素化ポリエチレンが好適に用いられる。塩素化ポリエチレンは、従来公知の塩素化方法を利用して得ることができる。
第1の熱可塑性樹脂に薄片化黒鉛を添加すると、弾性率が著しく上昇し、第1の層全体が剛直となる。そのため、第1の層の耐衝撃性や二次加工性に必要な高温での伸び性が低下することがある。このとき、塩素化ポリエチレンを用いると、塩素化ポリエチレンは薄片化黒鉛の添加によって硬く、脆くなったマトリックス中で網目構造をとり、第1の層に柔軟性を付与することができる。従って、第1の熱可塑性樹脂に塩素化ポリエチレンを用いることによって、薄片化黒鉛により低下した第1の層の耐衝撃性及び高温での伸び性を効率よく補うことができる。
上記塩素化ポリエチレンの分子量は、5万〜40万程度の重量平均分子量が適しており、比較的高い範囲(例えば、32万程度以上)であることが好ましい。上記塩素化ポリエチレンの分子量を上記範囲とすることにより、特に、塩化ビニル樹脂、アクリル系加工助剤等の他の樹脂が第1の層に含有されている場合には、他の樹脂との分子レベルでの絡み合いを発現させることにより、相溶性を高めることができる。
また、上記塩素化ポリエチレンの塩素化度は、20%〜40%が適している。上記塩素化ポリエチレンの塩素化度を上記範囲とすることにより、特に、塩化ビニル樹脂、アクリル系加工助剤等の他の樹脂が第1の層に含有されている場合には、他の樹脂に近い極性を示すことにより、相溶性を高めることができる。より好ましくは、上記塩素化ポリエチレンは、15万〜35万程度の重量平均分子量及び25%〜36%の塩素化度を有する。
上記第1の熱可塑性樹脂の添加量は特に限定されず、第1の熱可塑性樹脂の種類、真空成形などの二次加工性、成形性及び難燃性を考慮して適宜調整することが好ましい。例えば、第1の熱可塑性樹脂は、第1の層全体に対して、1重量%以上、好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは8重量%以上、特に好ましくは15重量%以上である。第1の熱可塑性樹脂の添加量が少なすぎると、物性が悪化することがある。
第1の層には、二次加工性を改善するアクリル系加工助剤が添加されていることが好ましい。アクリル系加工助剤を添加することにより、特に、真空成形性を向上させることができる。アクリル系加工助剤は、第1の層に含まれる種々の物質との相溶性にも優れている。
アクリル系加工助剤としては、(メタ)アクリレート重合体が挙げられる。(メタ)アクリレート重合体は、アクリレート系モノマーまたはメタクリレート系モノマーを主体とする重合体の総称であり、加工助剤などの役割を果たす。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系モノマーの単独重合体もしくは共重合体;上記(メタ)アクリレート系モノマーとスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル等の他のモノマーとの共重合体等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アクリル系加工助剤の添加量は、薄片化黒鉛の添加量、薄片化黒鉛の添加で低下した真空成形などの二次加工性、成形性及び難燃性を考慮して適宜調整することができる。第1の層において、薄片化黒鉛の含有量が多くなると、成形性の低下を防ぐ目的からアクリル系加工助剤の添加量も増やす必要がある。一方で、加飾層を設ける場合や、車両燃焼性試験において着火がない(不燃)と判断されるためには、さらに、薄片化黒鉛の添加量(組成物に占める割合)を増やす必要があるため、添加可能なアクリル系加工助剤の量が制限される。よって、アクリル系加工助剤の添加量は、第1の層を構成する組成物の全重量に対して、1重量%以上、好ましくは4重量%以上、さらに好ましくは12重量%以上、特に好ましくは23重量%以上である。また、上限としては、60重量%以下、好ましくは40重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下である。上記添加量は、例えば、1〜60重量%、4〜40重量%、12〜30重量%等が挙げられる。上記添加量をこの範囲に設定することで、薄片化黒鉛を添加したことによる耐燃焼性の向上と、二次加工性を両立することができる。添加量が多すぎると、第1の熱可塑性樹脂の割合が減少するため、耐衝撃性及び二次加工性が低下することがある。
第1の層を構成する組成物の真空成形は、一般に、上記第1の層を構成する組成物の表面温度が180℃〜220℃程度に加熱されて行われる。このような高温状態では、第1の層を構成する樹脂、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂の張力が低下し、破断しやすくなることがある。そのため、上記アクリル系加工助剤には、高温領域でより張力の高い(メタ)アクリレート重合体が好適に用いられる。無機物、特に薄片化黒鉛などの非球状タイプの無機物を添加すると、高温で破断しやすくなるため、(メタ)アクリレート重合体の添加が有効である。
高温での伸びを向上させる化合物としては、NBR、エルバロイ等の熱可塑性エラストマー、DOP等の可塑剤を用いることもできる。もっとも、高温での張力付与の観点から、(メタ)アクリレート重合体が特に好ましい。
上記(メタ)アクリレート重合体の重量平均分子量は、特に限定されない。ただし、高温での張力がより高くなるという観点から、上記重合平均分子量は、より高分子量であることが好ましい。上記重量平均分子量は、例えば、100万以上が好ましく、300万以上がより好ましい。一方、分子量が高くなりすぎると、成形性や耐衝撃性に悪影響を及ぼすことがある。そのため、上記重量平均分子量は、600万以下が好ましく、500万以下がより好ましい。
第1の層には、耐衝撃性に優れる衝撃改質剤が添加されていることが好ましい。衝撃改質剤としては、当該分野で通常用いられているものであれば特に限定されず、例えば、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレングラフト共重合体(MBS樹脂)、塩素化ポリエチレン(CPE)、ABS樹脂、アクリル系改質剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明において、アクリル改質剤とは、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルの1種からなる群から選択される少なくとも1つのアクリル系共重合体で、特にアクリル成分が主成分であり、架橋して球状になったものをいう。なかでも、薄片化黒鉛の添加により硬く、脆くなったマトリックス中で網目構造を採り、柔軟性を付与することで、薄片化黒鉛で低下した耐衝撃性を効率よく補うことができる塩素化ポリエチレンが好適に用いられる。
第1の層には、上述したアクリル系加工助剤及び/または衝撃性改質剤の他に、種々の添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、燃焼抑制効果を補助する目的で難燃剤、熱安定化剤、安定化助剤、滑剤、酸化防止剤、光安定化剤、顔料等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
難燃剤としては、例えば、二酸化アンチモン、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等の酸化アンチモン;三酸化モリブデン、二硫化モリブデン、アンモニウムモリブデート等のモリブデン化合物;テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモエタン等の臭素系化合物;トリフェニルフォスフェート、アンモニウムポリフォスフェート等のリン系化合物等が挙げられる。
熱安定化剤としては、例えば、ジメチル錫メルカプト、ジブチル錫メルカプト、ジオクチル錫メルカプト、ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫ラウレート、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫ラウレートポリマー等の有機錫系安定剤;鉛白、ステアリン酸鉛、二塩基性ステアリン酸鉛、二塩基性亜リン酸塩、塩基性亜硫酸鉛、二塩基性亜硫酸鉛、三塩基性硫化鉛、シリカゲル共沈硅酸鉛、安息香酸鉛、ナフテン酸鉛等の鉛系安定剤;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸系安定剤、カルシウム−亜鉛系安定剤、バリウム−亜鉛系安定剤、バリウム−カドミウム桂安定剤、ハイドロタルサイト、ゼオライト等の無機系安定剤等が挙げられる。
安定化助剤としては、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化テトラヒドロフタレート、エポキシ化ポリブタジエン、ステアリン酸ブチル等が挙げられる。
滑剤としては、例えば、モンタン酸ワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ステアリン酸、ステアリルアルコール、ステアリン酸ブチル等が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系抗酸化剤、イオウ系抗酸化剤、ホスファイト系抗酸化剤等が挙げられる。
光安定化剤としては、例えば、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤、あるいはヒンダードアミン系の光安定剤等が挙げられる。
顔料としては、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、スレン系、染料レーキ系等の有機顔料;酸化物系、クロム酸モリブデン系、硫化物・セレン化物系、フェロシアン化物系等の無機顔料等が挙げられる。
添加剤の添加方法及び添加順序は、特に限定されず、任意の方法及び順序とすることができる。添加方法としては、例えば、塩化ビニル系樹脂に、ホットブレンド法、コールドブレンド法等により添加することができる。
第2の層は、第2の熱可塑性樹脂を含んでいる。第2の層に熱可塑性樹脂を用いることにより、第2の層及び耐燃焼性シートの加熱下における成形が容易となる。従って、第2の層及び耐燃焼性シートの二次成形性を高めることができる。
上記第2の熱可塑性樹脂は、特に限定されない。上記第2の熱可塑性樹脂としては、例えば、上述した第1の熱可塑性樹脂として使用可能な熱可塑性樹脂等が挙げられる。これら熱可塑性樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、第2の熱可塑性樹脂としては、難燃性を考慮して、難燃性の高い熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。難燃性の高い熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂及び/または塩化ビニル系樹脂が挙げられる。スチレン系樹脂は、上述したものの他、上述したスチレン系樹脂と他の樹脂とのポリマーアロイも含まれる。上記ポリマーアロイとしては、例えば、ポリカーボネート樹脂とABS樹脂とのアロイ(PC/ABS)、ポリカーボネート樹脂とAES樹脂とのアロイ)PC/ABS)等が挙げられる。
好ましくは、第2の層は、上記第2の熱可塑性樹脂に加えて、衝撃改質剤及び/または加工助剤を含んでいる。この場合には、上記衝撃改質剤の量は、耐衝撃性の改善、耐燃焼性、機械的強度等を考慮して、第2の熱可塑性樹脂100重量部に対して1〜30重量部が好ましく、3〜20重量部がより好ましい。加工助剤は、真空成形性及びシートの表面平滑性の向上を考慮して、第2の熱可塑性樹脂100重量部に対して1〜30重量部が好ましく、3〜20重量部がより好ましい。第2の層は、より好ましくは、衝撃改質剤と加工助剤との両方を含んでいる。
上記衝撃改質剤としては、例えば、上述したものの中から1種以上を適宜選択することができる。上記加工助剤としては、上述したアクリル系加工助剤が好ましい。なかでも、上記衝撃改質剤及び上記加工助剤の組み合わせとしては、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレングラフト共重合体(MBS樹脂)と重量平均分子量が100万〜600万の(メタ)アクリレート重合体、アクリル系衝撃改質剤と重量平均分子量が100万〜600万の(メタ)アクリレート重合体またはこれらの組み合わせ等が好ましい。この場合には、第2の層及び耐燃焼性シートの耐燃焼性、耐衝撃性及び二次加工性をより効果的に高めることができる。
また、第2の層は、第1の層と同様に、種々の添加剤を含んでいてもよい。
本発明の耐燃焼性シートは、加飾層や保護層、反射防止層などの種々の機能層が設けられていてもよい。これらの機能層は、耐燃焼性を考慮して、難燃性の高い材料を用いることが好ましい。すなわち、耐燃焼性シートの耐燃焼性に対する影響が少なくなるように、熱伝導率がなるべく高くなるように、最小限の厚みとすることが好ましい。難燃性の高い材料としては、例えば、塩化ビニル樹脂等が挙げられる。
なお、本発明の耐燃焼性シートは、例えば、耐燃焼性シートを鉄道車両等の内装材等として使用する場合、乗客側に露出する面に対する着火性等によって燃焼性が評価される。例えば、鉄道に関する技術上の基準を定める省令(平成13年12月25日国土交通省令第151号)の第5節車両の火災対策等第83条に準拠した方法で行う燃焼試験が、この評価の1つの指標となる。
本発明の耐燃焼性シートは、当該分野で公知の任意の方法によって形成することができる。本発明の耐燃焼性シートは、例えば、第1の層及び第2の層を別々にシート状に形成し、両者を張り合わせる方法、第1の層または第2の層のいずれか一方をシート状に形成し、他方の原料を塗布する方法及びインフレーション法、Tダイ法等の公知の方法で共押出することによる積層一体化方法等によって形成することができる。
第1の層の厚みは、特に限定されず、任意の厚みとすることができる。なお、第1の層の厚みが厚いほど、耐燃焼性効果が大きくなる。第1の層を厚くした場合には、第1の層の耐燃焼性を確保するために必要な薄片化黒鉛の量を少なくすることができる。そのため、第1の層及び耐燃焼性シートの耐衝撃性及び二次加工性が高くなる。
第2の層の厚みは、特に限定されないが、第1の層の厚み及び薄片化黒鉛の添加量に応じて決定することが好ましい。すなわち、第1の層の耐燃焼性に対する影響が少なくなるように、あるいは、第1の層の耐燃焼性を阻害しない範囲内で耐燃焼性シートの熱伝導率がなるべく高くなるように、第2の層を最小限の厚みとすることが好ましい。例えば、第2の層の厚みとしては、3mm程度以下が挙げられ、好ましくは0.5mm以下であり、より好ましくは0.05〜0.3mmの範囲である。これによって、第1の層の耐燃焼性を阻害することなく、耐燃焼性シートの耐衝撃性及び二次加工性を効率的に高めることができる。
本発明の耐燃焼性シートでは、薄片化黒鉛を含む第1の層の耐燃焼性効果により、耐燃焼性が高められている。そのため、耐燃焼性効果を効率的に発現させるために、本発明の耐燃焼性シートでは、第2の層を炎に直接触れない面に配置することが好ましい。例えば、本発明の耐燃焼性シートを鉄道車両等の内装材等として使用する場合、乗客側に露出する面に第1の層を設けることが好ましい。もっとも、本発明の耐燃焼性シートは、目的に応じて、第1の層の表裏面の双方に第2の層が積層された3層構造であってもよく、これらの層が交互に積層されるなどの4層以上の積層構造であってもよい。また、本発明の耐燃焼性シートには、印刷加工が施されていてもよく、加飾層や保護層、反射防止層などの種々の機能層が設けられていてもよい。
本発明の耐燃焼性シートは、耐燃焼性が要求されるあらゆる分野において利用可能である。本発明の耐燃焼性シートは、例えば、車両等の内装材として、特に、鉄道車両、自動車、飛行機等の内装材として好適に用いることができる。さらに、本発明の耐燃焼性シートは、各種機能性を付与した機能性シート等としても好適に用いることができる。
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を明らかにする。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
以下の実施例における部及び%は、特に断りのない限り重量基準の値を示す。また、表中の各成分の組成は、特に断りのない限り重量%を示す。
(薄片化黒鉛)
本発明の実施例及び比較例において使用した薄片化黒鉛を、以下の方法により調製した。
予備成形シートとして、黒鉛シート(商品名「PF100−UHP」、東洋炭素社製)を用意した。図1に示すように、この予備成型シート1をロール2,3間に供給し、ロール2,3により圧延した。これにより、密度0.7、厚み1mmの低密度黒鉛シートを用意した。
上記のようにして得られた密度0.7の黒鉛シートを3cm×3cmの大きさに切断し、電極材料としての黒鉛シートを得た。図2に示すように、この黒鉛シート11に2本のスリット11a,11bを、スリットの長さが1cm、幅が1cmとなるようにカッターナイフにより切削し、形成した。上記2本のスリット11a,11bが形成された黒鉛シート11に、図2に示すPtからなる電極12の挿入片12a,12bを挿入した。このようにして用意した黒鉛シート11を作用極(陽極)として、Ptからなる対照極(陰極)及び、Ag/AgClからなる参照極とともに60重量%濃度の硝酸水溶液中に浸漬し、直流電圧を印加し電気化学処理を行った。電気化学処理に際しては、図3に示すように電圧を2.5時間印加した。このようにして、陽極に作用極として用いた黒鉛を膨張化黒鉛とした。
得られた膨張化黒鉛を、1cm角に切断し、その1つをカーボンるつぼに入れて電磁誘導加熱処理を行った。誘導加熱装置はSKメディカル社製MU1700Dを用い、アルゴンガス雰囲気下で最高到達温度550℃となるように10Aの電流量で行った。上記処理の際に、膨張化黒鉛表面の温度を放射温度計にて測定したところ、膨張化黒鉛表面の温度が室温から550℃となるまで、12秒を要した。上記処理により、膨張化黒鉛は薄片化された。得られた薄片化黒鉛の粉末を比表面積測定装置(商品名「ASAP−2000」、島津製作所(株)製)で窒素ガスを用いて測定したところ、1回測定で830m2/gの比表面積を示した。
その他、本発明の実施例及び比較例において使用した材料は、以下の通りである。
(1)塩化ビニル樹脂:商品名「TS−800E」、徳山積水工業社製、重合度800
(2)塩素化ポリエチレン(CPE):商品名「タイリン3615P」、ダウケミカル社製
(3)衝撃改質剤(メチルメタクリレート/ブタジエン/スチレン共重合体(MBS)):商品名「M511」、カネカ社製
(4)加工助剤((メタ)アクリレート重合体):商品名「メタブレンP−530A」、三菱レイヨン社製、分子量310万、
(5)熱安定剤:商品名「TVS #1380」、日東化成工業社製
(6)滑剤1(HW220MP):商品名「Hiwax220MP」、三井化学社製
(7)滑剤3(G70S):商品名「LOXIOL G70S」、エメリーオレオケミカルズジャパン社製
(8)膨張後粉砕黒鉛:商品名「CS−F400」、丸豊鋳材社製、BET比表面積18.7m2/g
(9)PC/ABSアロイ樹脂:商品名「テクニエースT−105」、日本エイアンドエル社製
(10)ABS樹脂:商品名「クララスチックGA−501」、日本エイアンドエル社製
A.実施例1及び比較例1
下記の表1に示した所定量(重量%)の各成分を、20Lスーパーミキサー(カワタ社製)に供給し、撹拌混合して樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を8インチミキシングロール混練機(安田精機社製)に供給し、温度185℃で溶融混練して、厚さ1mmのロールシートを得た。
次いで、熱プレス成形機(東邦マシナリー社製)に供給し、温度190℃、20MPaで加圧し、表1に記載した厚みのB5判サイズのプレスシート(第1または第2の層)を得た。
さらに、第1の層と第2の層(裏側)とを重ね合わせ、熱プレス成形機(東邦マシナリー社製)に供給し、温度190℃、20MPaで加圧し、表1に記載した厚みのB5判サイズのプレスシートを得た(耐燃焼性シート)。
<車両燃焼試験>
「鉄道に関する技術上の基準を定める省令(平成13年12月25日国土交通省令第151号)」の第5節車両の火災対策等第83条に準拠して、車両燃焼試験を評価した。アルコールの炎を接触させる面は全て第1の層側からとした。
車両燃焼試験における判定基準は、以下の通りとした。結果を下記の表1に示す。
◎:着火なし(不燃相当)
○:着火時間が70秒以上であり、着火後の火勢も弱い(極難燃相当)
△:30秒を超え、70秒未満に着火(難燃相当)
×:30秒以内に着火
B.実施例2〜3及び比較例2〜3
下記の表1に示した所定量(重量%)の各成分を、8インチミキシングロール混練機(安田精機社製)に供給し、温度190℃で溶融混練して、ロールシートを得た。
次いで、熱プレス成形機(東邦マシナリー社製)に供給し、温度200℃、20MPaで加圧し、表1に記載した各厚みのB5判サイズのプレスシートを得た。
(第2の層:ABS)
原料樹脂を8インチミキシングロール混練機(安田精機社製)に供給し、温度190℃で溶融混練して、ロールシートを得た。
次いで、熱プレス成形機(東邦マシナリー社製)に供給し、温度200℃、20MPaで加圧し、表1に記載した各厚みのB5判サイズのプレスシートを得た。
(第2の層:PC/ABSアロイ)
原料樹脂を8インチミキシングロール混練機(安田精機社製)に供給し、温度220℃で溶融混練して、ロールシートを得た。
次いで、熱プレス成形機(東邦マシナリー社製)に供給し、温度220℃、20MPaで加圧し、表1に記載した各厚みのB5判サイズのプレスシートを得た。
(積層体の作製)
上記第1及び第2の層を重ね合わせ、熱プレス成形機(東邦マシナリー社製)に供給し、温度220℃、20MPaで加圧し、厚さ3.5mmのB5判サイズのプレスシートを得た(3層シート)。加飾層は、厚さ120μmのアクリル樹脂製ラミネートフィルムを使用した。
次いで、実施例1及び比較例1と同様にして、車両燃焼試験を行った。結果を下記の表1に示す。
表1から明らかなように、本発明に従う実施例1〜3のプレスシートは、比較例1〜3のプレスシートと比較して、耐燃焼性が高いことがわかる。これは、実施例1〜3の第1の層には、比表面積の大きい薄片化黒鉛が含まれていることによる。上記薄片化黒鉛によって、プレスシートの耐燃焼性が効率的に高められたと考えられる。