JP5716008B2 - 部分安定化ジルコニア磁器の製造方法 - Google Patents

部分安定化ジルコニア磁器の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、自動車用内燃機関等において使用する排気センサ用の部分安定化ジルコニア磁器を製造する方法に関する。
従来、自動車用内燃機関等において、空燃比制御に、排気センサが利用されている。
上記排気センサに設置されるセンサ素子としては、固体電解質とその固体電解質の両側に設けられた電極と排気ガスに曝される側の電極を保護するように被覆された構造の素子や、固体電解質と、その固体電解質の両側に設けられた電極と排気ガスに曝される側の電極の上にガス(酸素や未燃焼ガス)の拡散を抑制する膜が形成された構造の素子が知られている。
近年の厳しい排気ガス規制に対応するために、低温活性や応答性に優れたセンサが不可欠となり、その解決の手段として、ジルコニア焼結体の粒界の純度を上げることで電気伝導性を下げることが、非常に有効である。
そして、上記素子の固体電解質には、イットリア添加ジルコニア磁器等が使用されている。上記ジルコニア焼結体としては、C相(立方晶)からなる完全安定化ジルコニアと、C相、M相(単斜晶)、及びT相(正方晶)とから構成される部分安定化ジルコニア等が知られている。
上記完全安定化ジルコニアは、室温(20℃)から高温(1000℃)まで安定し、経年劣化しない材料である。しかし、完全安定化ジルコニアは、振動等の機械的衝撃や熱衝撃に弱く、破損し易い材料である。そのため、上記固体電解質としては、通常は、部分安定化ジルコニアが使用されている。
しかしながら、上記部分安定化ジルコニアは、室温(20℃)から高温(1000℃)の間において、加熱と冷却を繰り返すことにより、M相とT相との間で相変態が発生し、およそ4%の体積変化を伴うことで破損するという問題がある。
そのため、ジルコニア、イットリア以外の不純物成分(例えば、アルミナ、チタニア、シリカ等)を添加することで、結晶安定性を向上させて、破損を防止する技術が開示されている(特許文献1、2)。
特許文献1には、4.4〜4.5重量%のY23を含むジルコニア質焼結体であって、0.1〜1.5重量%のAl23及び0.03〜0.5重量%のTiO2を含むことによって、水の存在する環境下での相転移が少なく、安定した強度を有するジルコニア質焼結体が記載されている。
また、特許文献2には、酸化ジルコニウム89〜97モル%及び酸化イットリウム11〜3モル%よりなる酸素イオン導電体材料89.4〜99.5重量%、及び酸化アルミニウム0.5〜10重量%、及び酸化珪素0.6重量%以下の組成から構成することで、焼結促進効果を十分に満足でき、酸素イオン伝導率がよい酸素センサのジルコニア焼結体が記載されている。
しかしながら、それらの固体電解質は、添加物である不純物成分がジルコニア粒界に存在することで、電気伝導率が低くなり、電極との界面抵抗を増大させることで、低温活性や応答性を悪化させる要因となる。
特開平11−116328号公報 特公昭60−5548号公報
つまり、排気センサ用のジルコニア磁器は、電気伝導率の確保のために、純度の高い磁器であることが望ましいが、結晶安定性が得られない。そこで、特許文献1、2のように、電気伝導率を犠牲にして、結晶安定性を向上するために不純物成分を多く添加するのが実情である。
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、結晶安定性が高く、かつ電気伝導性の高い部分安定化ジルコニア磁器の製造方法を提供しようとするものである。
参考発明は、ジルコニアとイットリアとからなり、M相とC相とからなる結晶構造を有し、
上記ジルコニアの含有量は89〜97モル%であり、上記イットリアの含有量は11〜3モル%であり、且つ、ジルコニアとイットリア以外の不純物の含有量が0.1質量%以下であることを特徴とする部分安定化ジルコニア磁器にある
本発明は、ジルコニアとイットリアとからなると共に、上記ジルコニアの含有量は89〜97モル%であり、上記イットリアの含有量は11〜3モル%であり、且つ、ジルコニアとイットリア以外の不純物の含有量が0.1質量%以下である部分安定化ジルコニア磁器を製造する方法であって、
Zrを含む出発原料として水酸化ジルコニウムを用い、該水酸化ジルコニウムにイットリア微粒子粉末又はイットリウム塩類を均一分散させた複合物を作製する複合物作製工程と、
上記複合物に対して1300〜1400℃の温度域で熱処理を行うことによりジルコニアを得る熱処理工程と、
上記ジルコニアを粉砕してセラミック粉末を得る粉砕工程と、
上記セラミック粉末を用いて所望の形状を有する成形体に成形する成形工程と、
上記成形体を焼成する焼成工程とを有することを特徴とする部分安定化ジルコニア磁器の製造方法にある
参考発明の部分安定化ジルコニア磁器は、上記M相とC相とからなる結晶構造とし、かつ、上記ジルコニア、イットリア、及び不純物の含有量を制限することにより、結晶安定性が高く、かつ高い電気伝導性を有することができる。
まず、上記部分安定化ジルコニア磁器は、M相とC相とからなる結晶構造を有している。実質的にT相を存在させないことにより、室温(20℃)と高温(1000℃)の加熱と冷却の繰り返しや、水熱劣化試験等により、M相とT相との間の相変態を発生させても、安定した結晶状態を示すことができる。そのため、耐熱衝撃性を向上することができる。
そして、上記部分安定化ジルコニア磁器は、上記ジルコニアの含有量は89〜97モル%であり、上記イットリアの含有量は11〜3モル%であり、且つ、ジルコニアとイットリア以外の不純物の含有量が0.1質量%以下である。そのため、高純度であり、また、粒界純度の高い部分安定化ジルコニア磁器を得ることができる。これにより、上記部分安定化ジルコニア磁器は、高い電気伝導性を有することができ、低温活性及び応答性に優れるものとすることができる。また、上記イットリアをジルコニアに良好に分散させることができるため、電気伝導性を助長することができ、また、結晶安定性を阻害することもない。
つまり、高純度の部分安定化ジルコニアであっても、従来のようにアルミナ等の不純成分を添加することなく、高い結晶安定性を得ることができ、かつ、高い電気伝導性を維持することができる。
このように、参考発明によれば、高い結晶安定性を有すると共に、高い電気伝導性を有する部分安定化ジルコニア磁器を提供することができる。
なお、参考発明において、上記M相とC相とからなるとは、実質的にT相を含まないという意味であり、M相とT相との間に相変態が生じ、T相が一時的に存在している場合は許容されるものとする。
また、上記部分安定化ジルコニア磁器は、特に、後述する部分安定化ジルコニア磁器の製造方法を用いて作製した場合には、確実に、高い結晶安定性と高い電気伝導性を両立することができる。
次に、本発明の製造方法の複合物作製工程において、得られる部分安定化ジルコニア磁器におけるジルコニアの含有量が89〜97モル%となり、上記イットリアの含有量が11〜3モル%となるように、上記水酸化ジルコニウムと上記イットリア微粒子粉末の配合量を調整して混合させる必要があることは言うまでもない。
そして、上記部分安定化ジルコニア磁器の製造方法の最も注目すべき点は、Zrを含む出発原料として水酸化ジルコニウムを用い、該水酸化ジルコニウムにイットリア微粒子粉末又はイットリウム塩類を均一分散させた複合物に対して特定の温度で熱処理工程を行うことでジルコニアを得る点にある。これにより、本発明により得られる部分安定化ジルコニア磁器は、高純度でありながら、高い結晶安定性を有することができる。
得られる部分安定化ジルコニア磁器は、ジルコニアとイットリアとからなると共に、上記ジルコニアの含有量は89〜97モル%であり、上記イットリアの含有量は11〜3モル%であり、且つ、ジルコニアとイットリア以外の不純物の含有量が0.1質量%以下である。そのため、高純度であり、また、粒界純度が高く、高い電気伝導性を有することができ、低温活性及び応答性に優れるものとすることができる。また、上記イットリアをジルコニアに良好に分散させることができるため、電気伝導性を助長することができ、また、結晶安定性を阻害することもない。
また、上記特定の原料に対して上記特定の工程を施すことにより得られる部分安定化ジルコニア磁器は、主にM相とC相とから構成されることとなる。そして、この部分安定化ジルコニア磁器は、室温(20℃)と高温(1000℃)の加熱と冷却の繰返しや、水熱劣化試験等により、M相とT相との間の相変態を発生させても、安定した結晶状態を示す。そのため、耐熱衝撃性を向上することができる。
つまり、上記特定の原料を用い、製造条件を制御することにより、高純度のジルコニアであっても、従来のようにアルミナ等の不純成分を添加することなく、高い結晶安定性を得ることができ、かつ、高い電気伝導性を維持することができる。
このように、本発明によれば、結晶安定性が高く、かつ電気伝導性の高い部分安定化ジルコニア磁器を製造することができる。
なお、Zrを含む出発原料として水酸化ジルコニウムを用いて上記熱処理を行うことが有効な理由については、明らかではないが、次のように推定される。水酸化ジルコニウム表面にイットリア粒子が均一に分散し、熱処理(焼成も含む)による熱分散により、ジルコニア表面にイットリアが均一に形成されることで結晶安定性が増大すると考えられる。
実施例1における、排気センサ用素子を示す説明図。
上記部分安定化ジルコニア磁器は、上述したように、ジルコニアとイットリアとからなり、M相とC相とからなる結晶構造を有する。
T相が存在する場合には、加熱と冷却を繰り返す際に発生するM相とT相との間の相変態で、部分安定化ジルコニアが破損するという問題がある。
また、上記ジルコニアの含有量は89〜97モル%であり、上記イットリアの含有量は11〜3モル%であり、且つ、ジルコニアとイットリア以外の不純物の含有量が0.1質量%以下である。
上記イットリアの含有量が3モル%未満の場合には、酸素イオン導電性が低下することにより電気伝導率が悪くなるおそれがある。一方、上記イットリアの含有量が11モル%を超える場合には、過剰な粒子成長により十分な強度が得られないおそれがある。
また、上記不純物の含有量が0.1質量%を超える場合には、結晶安定性を得ることはできるが、電気伝導率が低くなるという問題や、電極との界面抵抗を増大させることで、低温活性や応答性を悪化させるという問題がある。
また、上記部分安定化ジルコニア磁器は、排気センサ用素子に用いられることが好ましい。
上記部分安定化ジルコニア磁器は、上述したように、結晶安定性が高く、かつ電気伝導性が高い。そのため、排気センサ用素子の固体電解質として良好に用いることができる。
上記部分安定化ジルコニア磁器を排気センサ用素子に用いる場合には、例えば、シート形状の部分安定化ジルコニア磁器に対して、スクリーン印刷により、Ptペーストを用いて所定のパターンを形成する。また、大気導入孔を形成し、所定の発熱パターンを印刷して発熱部を形成したアルミナシートを別途用意する。そして、上記アルミナシート、上記部分安定化ジルコニア磁器よりなる固体電解質、及び多孔質層とガス遮蔽層とからなる拡散抵抗層とを積層して積層体を形成し、その積層体を切断後、1400〜1500℃で焼成することにより、シートを積層した板型の排気センサ用素子を得ることができる。
また、半円筒形状の部分安定化ジルコニア磁器に対して、PtペーストやPtめっきにより対電極を形成した後、スピネル等を溶射してガス拡散層・電極保護層を形成することによって、半円筒状のコップ型排気センサ用素子を得ることもできる。
本発明の部分安定化ジルコニア磁器の製造方法は、上述したように、上記複合物作製工程と、上記熱処理工程と、上記粉砕工程と、上記成形工程と、上記成形工程とを有する。
上記複合物作製工程は、Zrを含む出発原料として水酸化ジルコニウムを用い、該水酸化ジルコニウムにイットリア微粒子粉末又はイットリウム塩類を均一分散させた複合物を作製する。
上記複合物は、例えば、水酸化ジルコニウムを含む水性懸濁液(ジルコニウムイオンを含む溶液でもよい)とイットリア微粒子粉末又はイットリウム塩類とを混合することにより得ることができる。
上記ジルコニウムイオンを含む溶液を用いる場合には、上記ジルコニウムイオンの濃度は、5〜20%であることが好ましい。ジルコニウムイオンの濃度が5%未満の場合には、乾燥処理に長時間を要してしまうおそれがある。一方、上記ジルコニウムイオンの濃度が20%を超える場合には、溶解に時間がかかるおそれや、気温変化により、ジルコニウムイオンが塩として析出するおそれがある。
なお、上記混合水性懸濁液を作製する場合には、アンモニア水等でpH9以上のアルカリ側で処理することで、イットリア粒子にジルコニウムイオンを担持させ、上記混合水性懸濁液をろ過することで、イットリアにジルコニウムイオンが担持した粉末状の複合物が得られる。また、上記混合水性懸濁液を加熱攪拌しながら乾燥することによっても、粉末状の複合物を得ることができる。
また、上述したように、上記水酸化ジルコニウムと上記イットリア微粒子粉末の配合量は、得られる部分安定化ジルコニア磁器におけるジルコニアの含有量が89〜97モル%となり、上記イットリアの含有量が11〜3モル%となるように調整して混合させる必要がある。
また、上記複合物は、得られる部分安定化ジルコニア磁器の不純物の含有量が0.1質量%以下となる範囲で、ジルコニアに所定量イットリアと結晶を安定化させるためのアルミナやシリカを添加することが好ましい。
また、上記熱処理工程は、上記複合物に対して1100〜1400℃の温度域で熱処理を行うことによりジルコニアを得る。
熱処理工程を行うことによって、確実にジルコニアにイットリアを固溶させることができる。
上記熱処理工程の熱処理温度が1100℃未満である場合には、イットリアをジルコニアに確実に固溶させることができず、イットリアの分散が悪くなり、結晶安定性が低下するという問題がある。一方、上記熱処理温度が1400℃を超える場合には、粉体の焼結が進み、後加工での粒子径制御での粉砕性が悪化し、粉砕時間がかかること、その際に不純物が混入し、電気伝導度が悪化すること、また、最終焼成時の温度が上昇するという問題がある。
そして、上記熱処理工程は、1300〜1400℃の温度域で熱処理を行うことがより好ましい
なお、この粉砕工程では、粉砕後のセラミック粉末に不純物が入らないように行う必要がある。その具体的な方法としては、粉砕時にジルコニアに接するメディア(媒介物)として、摩耗や損傷が生じにくい高強度のものを用いる方法や、メディア自体をジルコニアとする方法がある。そして、上記粉砕工程は、上記不純物の混入を防ぐために、ジルコニア製の粉砕用メディアを用いることが特に好ましい
また、上記粉砕工程は、上記ジルコニアを粉砕してセラミック粉末を得る。これにより、適切な温度における必要焼成体密度を得ることができる。
上記粉砕工程は、乾式粉砕により行っても、湿式粉砕により行ってもよいし、乾式粉砕後に湿式粉砕を行う等、乾式粉砕と湿式粉砕とを組み合わせて行ってもよい。そして、湿式で粉砕工程を行った場合には、必要な粒子径に制御した後、スプレー乾燥等によってセラミック粉末を乾燥させることが好ましい。
上記粉砕工程において粉砕に用いる設備は、粉砕物を所定の粒度に出来るものであれば特に限定されるものでは無く、いずれの設備を用いても良い。具体的には、上記設備としては、例えば、公知の振動ミル、ボールミル、遊星ミル等が挙げられる。
なお、粉砕時にメディアや粉砕設備内壁にセラミック粉末が付着することによる粉砕効率の低下を防ぐために、プロピレングリコール等の分散剤を0.5〜2.5%添加しておくことが好ましい。
そして、上記セラミック粉末は、平均粒子径が0.5〜1.5μmであることが好ましい
上記セラミック粉末の平均粒子径が0.5μm未満である場合には、シート成形が難しくなるという問題や、焼成温度が低下するため、積層タイプの場合は、アルミナの焼成温度とズレが生じ、同時焼結が難しくなるおそれがある。一方、上記平均粒子径が1.5μmを超える場合には、焼成温度を上げる必要があり、積層タイプの場合は、アルミナの焼成温度とズレが生じ、同時焼結が難しくなるおそれがある。
また、上記成形工程は、上記セラミック粉末を用いて所望の形状を有する成形体に成形する。
上記成形工程では、上記セラミック粉末を含有するスラリーを作製して成形を行う方法や、上記セラミック粉末を乾式プレスにより成形を行うことにより成形体を得ることができる。
上記成形体の形状としては、シート形状や、半円筒形状等がある。
そして、スラリーを作製して成形を行う場合には、例えば、上記セラミック粉末と、バインダと、可塑剤と、溶剤とを混合してスラリー化し、このスラリーを用いてドクターブレード法成形を行い、シート形状の成形体を成形することができる。また、押出成形によって成形を行ってもよい。
また、上述したようにスラリーを作製する場合には、セラミック粉末に対して、上記バインダの含有量を7〜20%とすることが好ましい。
上記バインダの含有量が少ない場合には、セラミック粉末とバインダとを十分に混合できなくなり、後工程である焼成工程において、成形体にひび割れが生じてしまうおそれがある。一方、上記バインダの含有量が多い場合には、後工程である焼成工程において、脱バインダが難しくなり、場合によっては、内部気孔が形成されてシート強度が低下するおそれがある。
また、セラミック粉末にバインダと可塑剤と溶剤とを所定量加えた後にこれらを混合する時間は、4〜24時間とすることが好ましい。
混合時間が短い場合にも、セラミック粉末とバインダとを十分に混合できなくなり、後工程である焼成工程において、成形体にひび割れが生じてしまうおそれがある。一方、混合時間が長い場合には、混合により不純物が混入するおそれがあり、性能劣化が懸念される。
また、上記焼成工程は、上記成形体を焼成する。
上記焼成工程は、上記成形工程において、スラリーを作製して成形を行った場合には、焼成温度1400〜1500℃、焼成時間1〜4時間の条件で行うことが好ましい。また、上記成形工程において、乾式プレスによって成形を行った場合には、焼成温度1350〜1500℃、焼成時間1〜4時間の条件で行うことが好ましい。
(実施例1)
本例においては、本発明の実施例にかかる部分安定化ジルコニア磁器の製造方法について説明する。
本例では、表1に示すように、実施例及び参考例としての部分安定化ジルコニア磁器(試料E1〜試料E7)、及び比較例としての部分安定化ジルコニア磁器(試料C1〜試料C10)を作製した。
以下、これを詳説する。
まず、セラミック粉末の作製を行った。
試料E1〜試料E7、及び試料C1〜試料C6については、複合物作製工程において、イットリアの含有量が表1に示す量となるように、Zrを含む出発原料である水酸化ジルコニウムとイットリア微粒子粉末とを混合した。具体的には、上記水酸化ジルコニウムとして、水酸化ジルコニウムを含む水性懸濁液(濃度15%)を用意し、また、イットリア微粒子粉末を用意し、混合し、複合物を作製した。
その後、熱処理工程において、上記複合物を表1に示す熱処理温度(900〜1300℃)で加熱処理を行い、ジルコニアを得た。
その後、粉砕工程において、上記ジルコニアを、表1に示す粉砕装置(ジルコニア玉石又はアルミナ玉石)を用いて、0.7μmに粉砕し、セラミック粉末を得た。
なお、上記粉砕工程において、粉砕時にメディアや粉砕設備内壁に粉末が付着することによる粉砕効率の低下を防ぐ為に、プロピレングリコールからなる分散剤を1.0%添加した。
そして、試料C7〜試料C10については、従来から用いられてきたセラミック粉末を用意した。
具体的には、試料C7及び試料C9は、ジルコニアに、表1に示す含有量のイットリアと、アルミナ2.0%とを添加し、混合することによりセラミック粉末を得た。
また、試料C8及び試料C10は、ジルコニアに、表1に示す含有量のイットリアを添加し、混合することによりセラミック粉末を得た。
Figure 0005716008
次に、成形工程において、上記セラミック粉末と、バインダと、可塑剤と、溶剤とを混合することにより作製したスラリーを用いて、ドクターブレード法成形により、シート形状の成形体を作製した。
上記バインダとしては、ポリビニブチラール(PVB)を用いた。上記バインダの含有量は、セラミック粉末100部に対して、8部%とした。
また、上記可塑剤としては、フタル酸ブチルベンジル(BBP)を用いた。上記可塑剤の含有量は、セラミック粉末100部に対して、4部%とした。
また、上記溶剤としては、n−ブチルアルコール:イソプロピルアルコール:エタノール=1:1:1の混合溶媒を用いた。上記溶剤の含有量は、セラミック粉末100部に対して、70部%とした。
また、セラミック粉末、バインダ、可塑剤、及び溶剤を混合する時間は12時間とした。
そして、焼成工程において、上記成形体を、焼成温度1450℃、焼成時間3時間という条件で焼成を行うことにより、ジルコニア磁器(試料E1〜試料E7、及び試料C1〜試料C10)を得た。表1に焼成密度、結晶構造、不純物の含有量を示す。
なお、焼成工程において、上記分散剤、バインダ、可塑剤、及び溶剤等は消失する。
上記のように、実施例としての部分安定化ジルコニア磁器(試料E1〜試料E7)の製造方法は、Zrを含む出発原料として水酸化ジルコニウムを用い、該水酸化ジルコニウムにイットリア微粒子粉末又はイットリウム塩類を均一分散させた複合物を作製する複合物作製工程と、上記複合物に対して1100〜1400℃の温度域で熱処理を行うことによりジルコニアを得る熱処理工程と、上記ジルコニアを粉砕してセラミック粉末を得る粉砕工程と、上記セラミック粉末を用いて所望の形状を有する成形体に成形する成形工程と、上記成形体を焼成する焼成工程とを有する。
結晶構造の特定は、X線回折を用いて、C相は2θ=30.2°付近のC(111)のピーク、M相は2θ=28.3°付近のM(11−1)及び2θ=31.5°付近のM(111)のピーク、T相は2θ=74.5°付近のT(400)及び2θ=73.5°付近のT(004)のピークを確認することにより行った。なお、ミラー指数は、一般的に、マイナスがつく場合は、指数の上にバーをつけて表すが、本明細書では、数字の前にマイナス(−)をつけて表す(上記M(11−1)における−1)。
また、不純物の含有量は、蛍光X線を用いて、定量分析することにより測定した。
そして、本例において得られた実施例としての部分安定化ジルコニア磁器(試料E1〜試料E7)は、ジルコニアとイットリアとからなり、M相とC相とからなる結晶構造を有する。ジルコニアの含有量は89〜97モル%であり、イットリアの含有量は11〜3モル%であり、且つ、ジルコニアとイットリア以外の不純物の含有量が0.1質量%以下であった。
また、得られた部分安定化ジルコニア磁器について、水熱劣化試験を行い、水熱耐久性の評価を行った。結果を表2に示す。
水熱劣化試験は、部分安定化ジルコニア磁器それぞれについて、オートクレーブ装置を用い、230℃(28気圧)で10時間の水熱劣化試験を1セットとして、これを繰り返し実施した。そして、水熱耐久性は、1セット目の水熱劣化試験終了後に、割れが発生するか否かで判断した。
水熱耐久性の評価は、1セット目の水熱劣化試験で割れが発生しなかった場合を合格(評価○)、1セット目の水熱劣化試験で割れが発生した場合を不合格(評価×)とする。
また、参考までに、2セット目以降で割れが発生した場合には、表2の水熱耐久性の欄における○の横に、割れが発生した際の合計時間を示す(例えば、(70H×)の表示は、合計時間70時間(7セット目)で割れが発生したことを示す)。
Figure 0005716008
次に、上記実施例1において作製した部分安定化ジルコニア磁器(試料E1〜試料E7、及び試料C1〜試料C10)を用いて排気センサ用素子を作製し、その特性を評価した。
まず、上記部分安定化ジルコニア磁器1(試料E1〜試料E7、及び試料C1〜試料C10)に、スクリーン印刷により、Ptペーストを所定のパターンで印刷し、白金電極11を形成した。
その後、上述のドクターブレード法成形と同様の方法でアルミナシート3を成形した。そして、上記アルミナシート3に、所定の発熱パターンを印刷して発熱部を形成し、大気導入孔31を形成した。
その後、図1に示すように、上記アルミナシート3、上記部分安定化ジルコニア磁器1(固体電解質)、及び多孔質層41とガス遮蔽層42とからなる拡散抵抗層4とを積層して積層体を形成し、その積層体を切断後、1450℃で3時間焼成することにより、シートを積層した板型の排気センサ用素子2を得た。
次に、得られた排気センサ用素子2を組付け、750℃のセンサ特性である750℃の内部抵抗と応答性を確認した。結果を表2に併せて示す。
上記内部抵抗は、150Ω以下である場合を合格、150Ωを超える場合を不合格とする。
また、上記応答性は、250ms以下である場合を合格、250msを超える場合を不合格とする。
そして、上記部分安定化ジルコニア磁器の水熱耐久性、排気用センサ素子の内部抵抗と応答性の全ての項目が合格である場合を、判定を合格(○)とし、いずれか1つでも不合格である場合には、判定を不合格(×)とする。
表2より知られるように、実施例及び参考例としての試料E1〜試料E7は、部分安定化ジルコニア磁器の水熱耐久性、排気用センサ素子の内部抵抗と応答性のいずれの項目においても良好な結果を示した。
このように、本発明によれば、結晶安定性が高く、かつ電気伝導性の高い部分安定化ジルコニア磁器の製造方法、及びそれにより得られる部分安定化ジルコニア磁器を提供することができることがわかる。
また、表2より知られるように、比較例としての試料C1は、熱処理工程における熱処理温度が本発明の下限を下回るため、イットリアをジルコニアに十分に分散させた状態で固溶させることができず、粉砕工程後イットリアの分散状態が悪化することで、T相が形成されるため、結晶安定性を得ることができず、水熱耐久性が不合格であった。
また、比較例としての試料C2は、熱処理工程における熱処理温度が本発明の下限を下回り、イットリアをジルコニアに十分に分散させた状態で固溶させることができず、粉砕工程後イットリアの分散状態が悪化することで、T相が形成されるため、結晶安定性を得ることができず、また、粉砕工程で混入する微量のアルミナにより電気伝導率が悪化することで、水熱耐久性及び素子抵抗が不合格であった。
また、比較例としての試料C3及び試料C4は、粉砕工程をアルミナ玉石を用いて行い、不純物の含有量が本発明の上限を上回るため、十分な電気伝導率を得ることができず、素子抵抗が不合格であった。
また、比較例としての試料C5は、イットリアの含有量が本発明の下限を下回るため、酸素イオン導電性が低下し、電気伝導率が悪くなるという理由により、素子抵抗、及び応答性が不合格であった。
また、比較例としての試料C6は、イットリアの含有量が本発明の上限を上回るため、過剰な粒子成長により十分な強度が得られないことと、イットリアの量が過剰に多くなることにより、酸素イオン導電性が低下し、電気伝導率が悪くなるという理由により、素子抵抗が不合格であった。
また、比較例としての試料C7は、水酸化ジルコニウムを原料として用いていない、アルミナを含有するジルコニアを用いており、また、粉砕工程をアルミナ玉石を用いて行っているため、不純物の含有量が本発明の上限を上回り、十分な電気伝導性を得ることができず、素子抵抗、及び応答性が不合格であった。
また、比較例としての試料C8は、水酸化ジルコニウムを原料として用いておらず、かつアルミナを含有していないジルコニアを用いているため、T相が形成され、十分な結晶安定性を得ることができず、水熱耐久性が不合格であった。また、粉砕工程をアルミナ玉石を用いて行っているため、不純物の含有量が本発明の上限を上回り、素子抵抗、及び応答性は合格であるが、比較的大きな値を示した。
また、比較例としての試料C9は、水酸化ジルコニウムを原料として用いていない、アルミナを含有するジルコニアを用いているため、不純物の含有量が本発明の上限を上回り、十分な電気伝導性を得ることができず、素子抵抗、及び応答性が不合格であった。
また、比較例としての試料C10は、水酸化ジルコニウムを原料として用いておらず、かつアルミナを含有していないジルコニアを用いているため、T相が形成され、十分な結晶安定性を得ることができず、水熱耐久性が不合格であった。
また、イットリア量が8モル%以上になると、単体強度が低下すると共に、線熱膨張係数が大きくなり(10×10-6/℃に近づく)、アルミナ(8×10-6/℃)との線熱膨張差が大きくなり、アルミナとの接合が難しくなり、焼成後の接合不良が増加した(積層型には不適となる)。
なお、上記実施例1においては、シート形状の部分安定化ジルコニア磁器を用いた排気センサ用素子を示したが、半円筒形状の部分安定化ジルコニア磁器を用いたコップ型排気センサ用素子の場合にも、上記と同様の効果を得ることができる。
1 部分安定化ジルコニア磁器
11 白金電極
2 排気センサ用素子
3 アルミナシート
31 大気導入孔
4 拡散抵抗層
41 多孔質層
42 ガス遮蔽層

Claims (3)

  1. ジルコニアとイットリアとからなると共に、上記ジルコニアの含有量は89〜97モル%であり、上記イットリアの含有量は11〜3モル%であり、且つ、ジルコニアとイットリア以外の不純物の含有量が0.1質量%以下である部分安定化ジルコニア磁器を製造する方法であって、
    Zrを含む出発原料として水酸化ジルコニウムを用い、該水酸化ジルコニウムにイットリア微粒子粉末又はイットリウム塩類を均一分散させた複合物を作製する複合物作製工程と、
    上記複合物に対して1300〜1400℃の温度域で熱処理を行うことによりジルコニアを得る熱処理工程と、
    上記ジルコニアを粉砕してセラミック粉末を得る粉砕工程と、
    上記セラミック粉末を用いて所望の形状を有する成形体に成形する成形工程と、
    上記成形体を焼成する焼成工程とを有することを特徴とする部分安定化ジルコニア磁器の製造方法。
  2. 請求項1において、上記粉砕工程は、ジルコニア製の粉砕用メディアを用いることを特徴とする部分安定化ジルコニア磁器の製造方法。
  3. 請求項1又は2において、上記セラミック粉末は、平均粒子径が0.5〜1.5μmであることを特徴とする部分安定化ジルコニア磁器の製造方法。
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