JP2580531B2 - 高均質高純度イットリウム含有ジルコニア粉末の製造方法 - Google Patents
高均質高純度イットリウム含有ジルコニア粉末の製造方法Info
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は組成変動のない易焼結性
高純度イットリウム含有ジルコニア粉末の製造法に関す
る。高靭性で再現性の高いPSZ焼結体の原料粉末とし
て、構造材料用原料粉末として好適である。
高純度イットリウム含有ジルコニア粉末の製造法に関す
る。高靭性で再現性の高いPSZ焼結体の原料粉末とし
て、構造材料用原料粉末として好適である。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】ZrO2
セラミックスは高温において耐酸性及び導電性に優れ、
熱膨張係数及び熱伝導が比較的大きく、しかも高温での
靭性に優れ、更には高温において赤外線及び可視光線の
透過性が比較的良い特性を有する。そのため、耐熱材料
は、高温照明材料等として利用されている。
セラミックスは高温において耐酸性及び導電性に優れ、
熱膨張係数及び熱伝導が比較的大きく、しかも高温での
靭性に優れ、更には高温において赤外線及び可視光線の
透過性が比較的良い特性を有する。そのため、耐熱材料
は、高温照明材料等として利用されている。
【0003】ジルコニア焼結体の最も大きな用途は耐火
物であり、PZT等の電子材料、耐アルカリガラス、自
動車排気ガス用センサー、ZTC等、ファインセラミッ
クスとしての用途は全体の20%程度である。それらの
中で、強靱性ジルコニア(PZT)の用途は全体の2%程
度である。
物であり、PZT等の電子材料、耐アルカリガラス、自
動車排気ガス用センサー、ZTC等、ファインセラミッ
クスとしての用途は全体の20%程度である。それらの
中で、強靱性ジルコニア(PZT)の用途は全体の2%程
度である。
【0004】一方、イットリウム含有ジルコニア〔Y−
ZrO2〕焼結体は、高強度・強靱性・耐熱性・化学的安
定性等の機能を有するため、強靱性構造材料として広範
囲に利用されている。強靱性ジルコニア(ZTC)や部分
安定化ジルコニア(PSZ)の利用は最近かなり進展して
きたが、それに伴い材料に対し益々厳しい要求がなされ
てきた。
ZrO2〕焼結体は、高強度・強靱性・耐熱性・化学的安
定性等の機能を有するため、強靱性構造材料として広範
囲に利用されている。強靱性ジルコニア(ZTC)や部分
安定化ジルコニア(PSZ)の利用は最近かなり進展して
きたが、それに伴い材料に対し益々厳しい要求がなされ
てきた。
【0005】Y−ZrO2焼結体は、従来、PSZ型ZT
Cの応用用途として、粉砕用ボール、刃物類(包丁、
鉄、電気バリカンの刃)、スポーツ用品(ゴルフクラブ・
ヘッドのフェース、ゴルフ靴のスパイク・ピン)等にシ
ェアを占めてきた。今後、光ファイバー用フェルール、
家庭電気部品(磁気ヘッド・ローラー、ガイド、軸受
等)、機械部品(ノズル、ダイス、ポンプ等)としての伸
びが期待されている。
Cの応用用途として、粉砕用ボール、刃物類(包丁、
鉄、電気バリカンの刃)、スポーツ用品(ゴルフクラブ・
ヘッドのフェース、ゴルフ靴のスパイク・ピン)等にシ
ェアを占めてきた。今後、光ファイバー用フェルール、
家庭電気部品(磁気ヘッド・ローラー、ガイド、軸受
等)、機械部品(ノズル、ダイス、ポンプ等)としての伸
びが期待されている。
【0006】PSZ焼結体の破壊強度や破壊靭性はイッ
トリアの含有量に依存するが、イットリア含有量が同じ
場合でも、焼結体の微構造によってその性能は大きく影
響されている。最近では、組成変動が小さく、また粒径
の小さい高密度焼結体が必要とされている。
トリアの含有量に依存するが、イットリア含有量が同じ
場合でも、焼結体の微構造によってその性能は大きく影
響されている。最近では、組成変動が小さく、また粒径
の小さい高密度焼結体が必要とされている。
【0007】従来、Y−ZrO2用の原料粉末は、工業的
に中和共沈法、加水分解法、アルコキシド法の3つの方
法によって製造されている。勿論、ジルコニア原料粉末
の調製法には上記3方法以外のものもあるが、現在それ
ほど一般的な方法とはなっていない。
に中和共沈法、加水分解法、アルコキシド法の3つの方
法によって製造されている。勿論、ジルコニア原料粉末
の調製法には上記3方法以外のものもあるが、現在それ
ほど一般的な方法とはなっていない。
【0008】中和共沈法及び加水分解法においては、高
純度のジルコニウム塩(特に、ZrOCl2)と安定化剤(イ
ットリウム塩)の混合溶液から水酸化物を沈殿させ、こ
れを水洗・乾燥・仮焼・粉砕してY−ZrO2粉末を得て
いる。また、アルコキシド法においては、ジルコニウム
と安定化剤のアルコキシドを有機溶媒中で混合し、これ
を加水分解してゾル化に引続きゲル化した後、乾燥・粉
砕・仮焼・再粉砕している。
純度のジルコニウム塩(特に、ZrOCl2)と安定化剤(イ
ットリウム塩)の混合溶液から水酸化物を沈殿させ、こ
れを水洗・乾燥・仮焼・粉砕してY−ZrO2粉末を得て
いる。また、アルコキシド法においては、ジルコニウム
と安定化剤のアルコキシドを有機溶媒中で混合し、これ
を加水分解してゾル化に引続きゲル化した後、乾燥・粉
砕・仮焼・再粉砕している。
【0009】ジルコニウムとイットリウムの分布が不均
質になると、焼結体の破壊強度や破壊靭性のバラツキが
大きくなり、材料としての再現性が悪くなる。この点、
中和共沈法又は加水分解法由来の原料粉末から作成され
た焼結体の場合、組成変動が比較的大きく、しかも破壊
靭性のバラツキが大きいので、構造材料としてあまり満
足できるものではない。また、アルコキシド法由来の焼
結体では、組成変動が比較的小さいものの、コスト的に
はかなり問題がある。
質になると、焼結体の破壊強度や破壊靭性のバラツキが
大きくなり、材料としての再現性が悪くなる。この点、
中和共沈法又は加水分解法由来の原料粉末から作成され
た焼結体の場合、組成変動が比較的大きく、しかも破壊
靭性のバラツキが大きいので、構造材料としてあまり満
足できるものではない。また、アルコキシド法由来の焼
結体では、組成変動が比較的小さいものの、コスト的に
はかなり問題がある。
【0010】このように、構造材料用として用いられる
Y−ZrO2焼結体の原料粉末は、微粒・易焼結性・組成
の均一性等が要求される。然るに、現在使用されている
Y−ZrO2粉末は組成変動が大きいために、これから均
質な微構造を持った焼結体を作成することは極めて難し
い。
Y−ZrO2焼結体の原料粉末は、微粒・易焼結性・組成
の均一性等が要求される。然るに、現在使用されている
Y−ZrO2粉末は組成変動が大きいために、これから均
質な微構造を持った焼結体を作成することは極めて難し
い。
【0011】本発明は、かゝる事情のもとで、組成変動
がなく、均質度が高く、しかも粒径が小さく、更に焼結
性の良いY−ZrO2粉末を経済的に製造し得る方法を提
供することを目的としている。
がなく、均質度が高く、しかも粒径が小さく、更に焼結
性の良いY−ZrO2粉末を経済的に製造し得る方法を提
供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者は、前記課題を
解決するために鋭意研究を重ねた結果、ジルコニウム・
イオン〔Zr4+〕を過酸化水素〔H2O2〕水によってマ
スクし、ほぼ同じpH領域でイットリウム・イオン〔Y
3+〕と共沈させることによって、組成変動のない高均質
Y−ZrO2(t−相)を製造できることを見い出した。
解決するために鋭意研究を重ねた結果、ジルコニウム・
イオン〔Zr4+〕を過酸化水素〔H2O2〕水によってマ
スクし、ほぼ同じpH領域でイットリウム・イオン〔Y
3+〕と共沈させることによって、組成変動のない高均質
Y−ZrO2(t−相)を製造できることを見い出した。
【0013】すなわち、本発明は、ジルコニウムとイッ
トリウムの混合溶液中にアンモニア水を滴下することに
よって水酸化物を共沈させ、それを熱分解及び仮焼する
ことによってイットリウム含有ジルコニア粉末とする方
法において、ジルコニウム溶液に過酸化水素水、イット
リウム溶液を順次加えた後、沈殿を生成させることなく
硫酸アンモニウム溶液を添加し、この混合溶液にアンモ
ニア水を滴下して水酸化物を共沈させることを特徴とす
る組成変動のない易焼結性高純度イットリウム含有ジル
コニア粉末の製造方法を要旨としている。
トリウムの混合溶液中にアンモニア水を滴下することに
よって水酸化物を共沈させ、それを熱分解及び仮焼する
ことによってイットリウム含有ジルコニア粉末とする方
法において、ジルコニウム溶液に過酸化水素水、イット
リウム溶液を順次加えた後、沈殿を生成させることなく
硫酸アンモニウム溶液を添加し、この混合溶液にアンモ
ニア水を滴下して水酸化物を共沈させることを特徴とす
る組成変動のない易焼結性高純度イットリウム含有ジル
コニア粉末の製造方法を要旨としている。
【0014】
【作用】以下に本発明を更に詳細に説明する。
【0015】PSZ焼結体の作成において、その微構造
や物性を決める最も重要な要因は、原料粉末の特性であ
る。粉末特性の中で特に重要なものは、二次粒子の有無
と安定剤(Y3+)の分布である。二次粒子の存在は、成形
体の充填性を不均一にするのみならず焼結体の微構造も
不均一にし、結果としてその焼結を阻害する。また、安
定化剤の不均一分布は、複数の結晶相の出現や不均一な
微構造をもたらす。例えば、焼結体の中で安定化剤を多
量に含む領域は、粒径の大きな立方晶(c−相)からな
る。これに対し安定化剤の少ない領域は、粒径の小さい
不安定な正方晶(t−相)からなる。したがって、焼結体
の化学組成が同じであっても、安定化剤の不均一性の程
度によってその微構造が影響され、結果として破壊強度
や破壊靭性などの機械的性質が大きく変動する。
や物性を決める最も重要な要因は、原料粉末の特性であ
る。粉末特性の中で特に重要なものは、二次粒子の有無
と安定剤(Y3+)の分布である。二次粒子の存在は、成形
体の充填性を不均一にするのみならず焼結体の微構造も
不均一にし、結果としてその焼結を阻害する。また、安
定化剤の不均一分布は、複数の結晶相の出現や不均一な
微構造をもたらす。例えば、焼結体の中で安定化剤を多
量に含む領域は、粒径の大きな立方晶(c−相)からな
る。これに対し安定化剤の少ない領域は、粒径の小さい
不安定な正方晶(t−相)からなる。したがって、焼結体
の化学組成が同じであっても、安定化剤の不均一性の程
度によってその微構造が影響され、結果として破壊強度
や破壊靭性などの機械的性質が大きく変動する。
【0016】湿式法により複合酸化物を作成する場合、
一般に中和共沈法を利用することが多い。組成変動のな
い共沈物を中和共沈法によって調製するためには、一般
に両イオンの沈殿領域がpH>4以内であることが必要
と言われる。Zr4+及びY3+は、それぞれ酸性領域(pH
>1)及び弱アルカリ領域(pH>7)において水酸化物
を沈殿する。したがって、Zr4+及びY3+の沈殿領域の
間には、約ΔpH=6もの差がある。上記混合溶液中に
アンモニア水〔NH4OH〕を滴下すると、pH=1〜
2において先ず水酸化ジルコニウム〔Zr(OH)4〕が沈
殿し、次いでpH=7〜7.5において水酸化イットリ
ウム〔Y(OH)3〕が沈殿する。すなわち、通常の中和
沈殿法においては、水酸化物が2段階に分かれて沈殿し
てくる。したがて、中和共沈法の沈殿条件を如何に制御
しても、組成変動のない共沈物又は仮焼粉末を得ること
は原理的に不可能である。
一般に中和共沈法を利用することが多い。組成変動のな
い共沈物を中和共沈法によって調製するためには、一般
に両イオンの沈殿領域がpH>4以内であることが必要
と言われる。Zr4+及びY3+は、それぞれ酸性領域(pH
>1)及び弱アルカリ領域(pH>7)において水酸化物
を沈殿する。したがって、Zr4+及びY3+の沈殿領域の
間には、約ΔpH=6もの差がある。上記混合溶液中に
アンモニア水〔NH4OH〕を滴下すると、pH=1〜
2において先ず水酸化ジルコニウム〔Zr(OH)4〕が沈
殿し、次いでpH=7〜7.5において水酸化イットリ
ウム〔Y(OH)3〕が沈殿する。すなわち、通常の中和
沈殿法においては、水酸化物が2段階に分かれて沈殿し
てくる。したがて、中和共沈法の沈殿条件を如何に制御
しても、組成変動のない共沈物又は仮焼粉末を得ること
は原理的に不可能である。
【0017】一方、本発明の原理は以下のとおりであ
る。
る。
【0018】Zr4+とY3+を均質に共沈させる方法とし
て、マスキング剤を利用してZr4+の溶解度積を小さく
する方法、つまり、Zr4+のpH−溶解度曲線をY3+の
値に接近させる方法がある。上記マスキング法で得られ
る共沈物は、原理的に組成変動のないものになる。マス
キング剤の使用が可能になるには、以下の条件をクリア
ーする必要がある。
て、マスキング剤を利用してZr4+の溶解度積を小さく
する方法、つまり、Zr4+のpH−溶解度曲線をY3+の
値に接近させる方法がある。上記マスキング法で得られ
る共沈物は、原理的に組成変動のないものになる。マス
キング剤の使用が可能になるには、以下の条件をクリア
ーする必要がある。
【0019】すなわち、 pH−溶解度曲線がシフトして、共存イオンの値に近
づくこと、 共存イオンに悪い影響を与えないこと、 共沈物及び仮焼粉末に残存しないこと、等である。
づくこと、 共存イオンに悪い影響を与えないこと、 共沈物及び仮焼粉末に残存しないこと、等である。
【0020】これらの条件を満たすマスキング剤の一つ
として、過酸化水素〔H2O2〕がある。H2O2の存在下
では、Zr4+のpH−溶解度曲線はpH=4近傍までシ
フトされる。したがって、H2O2の存在下におけるZr4
+とY3+のpH−溶解度曲線は、見掛上、約ΔpH=3.
5以内に接近したことになる。それ故、H2O2を使用す
ることによって、組成変動の極めて小さい共沈物を得る
ことが可能である。
として、過酸化水素〔H2O2〕がある。H2O2の存在下
では、Zr4+のpH−溶解度曲線はpH=4近傍までシ
フトされる。したがって、H2O2の存在下におけるZr4
+とY3+のpH−溶解度曲線は、見掛上、約ΔpH=3.
5以内に接近したことになる。それ故、H2O2を使用す
ることによって、組成変動の極めて小さい共沈物を得る
ことが可能である。
【0021】塩基沈殿剤として、苛性ソーダ〔NaO
H〕や苛性カリ〔KOH〕等のアルカリを用いると、共
沈物のみならず仮焼粉末中にも少量のアルカリ金属が残
存し、それが焼結性や焼結体の微構造或いは焼結体の破
壊靭性などにも悪い影響を及ぼす。また、NH4OHを
用いると共沈物の純度は高くなるものの、沈殿の性状は
かなり悪くなる。沈殿の性状が悪くなると、洗浄や濾過
が困難になるばかりでなく、不純物の吸着や吸蔵が著し
く増加する。マスキング剤を含む混合溶液にNH4OH
を使用すると、通常の共沈法に比べ沈殿の性状は更に悪
くなる。
H〕や苛性カリ〔KOH〕等のアルカリを用いると、共
沈物のみならず仮焼粉末中にも少量のアルカリ金属が残
存し、それが焼結性や焼結体の微構造或いは焼結体の破
壊靭性などにも悪い影響を及ぼす。また、NH4OHを
用いると共沈物の純度は高くなるものの、沈殿の性状は
かなり悪くなる。沈殿の性状が悪くなると、洗浄や濾過
が困難になるばかりでなく、不純物の吸着や吸蔵が著し
く増加する。マスキング剤を含む混合溶液にNH4OH
を使用すると、通常の共沈法に比べ沈殿の性状は更に悪
くなる。
【0022】しかし、沈殿の性状を良くする方法とし
て、均質沈殿法や沈澱性状良質化法があり、本発明で
は、後者の沈澱性状良質化法を採用するものである。マ
スキング剤と沈殿性状良質化法の組合せによって得られ
る共沈物は、極めて性状の良い沈澱になり、しかも、そ
の仮焼物は組成変動のないものになる。
て、均質沈殿法や沈澱性状良質化法があり、本発明で
は、後者の沈澱性状良質化法を採用するものである。マ
スキング剤と沈殿性状良質化法の組合せによって得られ
る共沈物は、極めて性状の良い沈澱になり、しかも、そ
の仮焼物は組成変動のないものになる。
【0023】本発明は、以下の2段階のプロセスから構
成される。すなわち、第1段階は、Zr4+溶液中にH2O
2を滴下し、Zr4+をマスクする過程である。先ず、Zr4
+溶液中に所定量のH2O2を添加し、次いで安定化剤で
あるY3+溶液を所定量添加して混合溶液を調製する。H
2O2の添加量は〔H2O2〕/〔Zr4+〕=2×10-3〜
1×10-2(mol ratio)の範囲が望ましい。添加量が2
×10-3(mol ratio)以下になると、Zr4+のマスク効果
は認められるものの、その効果は十分でない。一方、そ
の添加量が1×10-2(mol ratio)以上になると、マス
キング効果は殆ど変わらなくなる。しかしながら、母液
中に存在する過剰のH2O2が急速に発泡するため、沈殿
の飛散が起こったり、生成した沈殿の性状が不均質にな
ったりする。Y3+の添加量は、必要に応じて任意に変化
させることが可能である。
成される。すなわち、第1段階は、Zr4+溶液中にH2O
2を滴下し、Zr4+をマスクする過程である。先ず、Zr4
+溶液中に所定量のH2O2を添加し、次いで安定化剤で
あるY3+溶液を所定量添加して混合溶液を調製する。H
2O2の添加量は〔H2O2〕/〔Zr4+〕=2×10-3〜
1×10-2(mol ratio)の範囲が望ましい。添加量が2
×10-3(mol ratio)以下になると、Zr4+のマスク効果
は認められるものの、その効果は十分でない。一方、そ
の添加量が1×10-2(mol ratio)以上になると、マス
キング効果は殆ど変わらなくなる。しかしながら、母液
中に存在する過剰のH2O2が急速に発泡するため、沈殿
の飛散が起こったり、生成した沈殿の性状が不均質にな
ったりする。Y3+の添加量は、必要に応じて任意に変化
させることが可能である。
【0024】ここで、Zr4+溶液、Y3+溶液は、それら
の塩化物や酸化物等の水溶液が用いられる。但し、上記
溶液として硫酸塩を用いると、尿素添加の際、過酸化水
素水によるZr4+のマスキングがデスマスキングされ、
直ちに水酸化ジルコニウムが沈殿してくる。その結果、
尿素による均質沈殿法が利用できない。また、弗化物を
用いると、Zr4+は弗素によって強力にマスキングされ
るため、尿素を使用した均質沈殿法では沈殿が生成しな
い。
の塩化物や酸化物等の水溶液が用いられる。但し、上記
溶液として硫酸塩を用いると、尿素添加の際、過酸化水
素水によるZr4+のマスキングがデスマスキングされ、
直ちに水酸化ジルコニウムが沈殿してくる。その結果、
尿素による均質沈殿法が利用できない。また、弗化物を
用いると、Zr4+は弗素によって強力にマスキングされ
るため、尿素を使用した均質沈殿法では沈殿が生成しな
い。
【0025】第2段階は、混合溶液中に(NH4)2SO4
溶液を添加することによって沈澱を良質性状にする過程
である。(NH4)2SO4の添加量は[(NH4)2SO4]/
[Zr4+]=0.15〜1.0(mol ratio)の範囲が望まし
い。添加量が0.15(mol ratio)以下になると、(N
H4)2SO4の沈澱性状の良質化効果は認められるもの
の、その効果は十分でない。一方、その添加量1.0(mo
l ratio)以上になると、沈澱性状の良質化効果が極端に
現れる。しかも、共沈物が粗大化するのみならず、仮焼
物の1次粒子サイズも著しく大きくなり、結果として仮
焼物は難焼結性になる。上記(NH4)2SO4を添加した
混合溶液中にアンモニア水を滴下して水酸化物を共沈さ
せる。得られる共沈物は洗浄性や濾過性が極めて良好で
ある。しかしながら、(NH4)2SO4の添加に先ち、沈
澱が生成しない範囲でアンモニア水を滴下し、混合溶液
のpHを調整すると、アンモニア水の添加量に比例して
沈澱性状は悪くなる。このような場合には、(NH4)2S
O4の添加量を約20〜30%過剰に添加すると、その
効果は減衰しない。
溶液を添加することによって沈澱を良質性状にする過程
である。(NH4)2SO4の添加量は[(NH4)2SO4]/
[Zr4+]=0.15〜1.0(mol ratio)の範囲が望まし
い。添加量が0.15(mol ratio)以下になると、(N
H4)2SO4の沈澱性状の良質化効果は認められるもの
の、その効果は十分でない。一方、その添加量1.0(mo
l ratio)以上になると、沈澱性状の良質化効果が極端に
現れる。しかも、共沈物が粗大化するのみならず、仮焼
物の1次粒子サイズも著しく大きくなり、結果として仮
焼物は難焼結性になる。上記(NH4)2SO4を添加した
混合溶液中にアンモニア水を滴下して水酸化物を共沈さ
せる。得られる共沈物は洗浄性や濾過性が極めて良好で
ある。しかしながら、(NH4)2SO4の添加に先ち、沈
澱が生成しない範囲でアンモニア水を滴下し、混合溶液
のpHを調整すると、アンモニア水の添加量に比例して
沈澱性状は悪くなる。このような場合には、(NH4)2S
O4の添加量を約20〜30%過剰に添加すると、その
効果は減衰しない。
【0026】上記3過程を経て得られる共沈物は、通常
の洗浄・乾燥・熱分解・仮焼過程を経てY−ZrO2粉末
になる。本発明によって得られるY−ZrO2粉末は高純
度で、組成変動が小さく、しかも易焼結性である。
の洗浄・乾燥・熱分解・仮焼過程を経てY−ZrO2粉末
になる。本発明によって得られるY−ZrO2粉末は高純
度で、組成変動が小さく、しかも易焼結性である。
【0027】本発明は、従来の中和共沈法に“マスキン
グ法”及び“沈澱高性状化法”を組合せた新しい共沈法
である。この改良型共沈法は、従来、中和共沈法の適用
が困難であったpH−溶解度曲線の著しく異なる複数イ
オンを含む混合溶液から、組成変動のない均一な共沈物
を製造する方法である。この方法で得られる共沈物は性
状が一段と良く、その仮焼物は高純度で、易焼結性であ
り、しかも組成変動が殆どないという特徴がある。
グ法”及び“沈澱高性状化法”を組合せた新しい共沈法
である。この改良型共沈法は、従来、中和共沈法の適用
が困難であったpH−溶解度曲線の著しく異なる複数イ
オンを含む混合溶液から、組成変動のない均一な共沈物
を製造する方法である。この方法で得られる共沈物は性
状が一段と良く、その仮焼物は高純度で、易焼結性であ
り、しかも組成変動が殆どないという特徴がある。
【0028】次に本発明の実施例を示す。
【0029】
【実施例1】濃度0.1molのオキシ塩化ジルコニウム溶
液48.5ml中に過酸化水素水(30%)を2.5mlを加え
た後、これに濃度0.1molの塩化イットリウム溶液1.
5mlを混合した。この混合溶液に硫酸アンモニウム0.
66gを添加した後、撹拌しながら0.75Nのアンモニ
ア水を滴下して共沈物を得た。得られた共沈物を洗浄及
び乾燥した後、酸素雰囲気中600℃で熱分解し、引続
き900℃にて2hrs仮焼した。
液48.5ml中に過酸化水素水(30%)を2.5mlを加え
た後、これに濃度0.1molの塩化イットリウム溶液1.
5mlを混合した。この混合溶液に硫酸アンモニウム0.
66gを添加した後、撹拌しながら0.75Nのアンモニ
ア水を滴下して共沈物を得た。得られた共沈物を洗浄及
び乾燥した後、酸素雰囲気中600℃で熱分解し、引続
き900℃にて2hrs仮焼した。
【0030】得られた仮焼物の化学組成はY2O3(3mol
%)−ZrO2で、結晶相は100%正方晶であり、組成
変動は1×10-3であった。静水圧下2ton/cm2で成形
した圧粉体を、酸素雰囲気中5℃/min定速昇温し、1
500℃まで加熱したところ、理論密度の約98%の嵩
密度を有した焼結体が得られた。
%)−ZrO2で、結晶相は100%正方晶であり、組成
変動は1×10-3であった。静水圧下2ton/cm2で成形
した圧粉体を、酸素雰囲気中5℃/min定速昇温し、1
500℃まで加熱したところ、理論密度の約98%の嵩
密度を有した焼結体が得られた。
【0031】
【実施例2】実施例1において、Zr4+とY3+の混合量
を変え、化学組成を変化させて共沈物を調製したとこ
ろ、Y2O3=2〜15mol%の範囲においてはほぼ同様
の結果が得られた。但し、Y2O3=10mol%の範囲を
超えると、イットリウムの添加量と共に共沈物の性状は
徐々に幾分悪くなり、それに伴って組成変動も多少大き
くなる傾向を示した。
を変え、化学組成を変化させて共沈物を調製したとこ
ろ、Y2O3=2〜15mol%の範囲においてはほぼ同様
の結果が得られた。但し、Y2O3=10mol%の範囲を
超えると、イットリウムの添加量と共に共沈物の性状は
徐々に幾分悪くなり、それに伴って組成変動も多少大き
くなる傾向を示した。
【0032】
【比較例1】濃度0.1molのオキシ塩化ジルコニウム溶
液48.5mlと濃度0.1molの塩化イットリウム溶液1.
5mlの混合溶液中に、硫酸アンモニウム0.66gを添加
したところ、直ちに水酸化ジルコニウムの沈澱が生成し
た。引き続き撹拌しながら0.75Nのアンモニア水を
滴下した共沈物を得た。得られた共沈物は比較的良好な
性状であった。それを洗浄及び乾燥した後、酸素雰囲気
中600℃で熱分解し、引続き900℃にて2hrs仮焼
した。得られた仮焼物の化学組成はY2O3(3mol%)−
ZrO2で、結晶相は100%正方晶であり、組成変動は
4×10-3であった。静水圧下2ton/cm2で成形した圧
粉体を、酸素雰囲気中5℃/min定速昇温し、1500
℃まで加熱したところ、理論密度の約94%の嵩密度を
有した焼結体であった。
液48.5mlと濃度0.1molの塩化イットリウム溶液1.
5mlの混合溶液中に、硫酸アンモニウム0.66gを添加
したところ、直ちに水酸化ジルコニウムの沈澱が生成し
た。引き続き撹拌しながら0.75Nのアンモニア水を
滴下した共沈物を得た。得られた共沈物は比較的良好な
性状であった。それを洗浄及び乾燥した後、酸素雰囲気
中600℃で熱分解し、引続き900℃にて2hrs仮焼
した。得られた仮焼物の化学組成はY2O3(3mol%)−
ZrO2で、結晶相は100%正方晶であり、組成変動は
4×10-3であった。静水圧下2ton/cm2で成形した圧
粉体を、酸素雰囲気中5℃/min定速昇温し、1500
℃まで加熱したところ、理論密度の約94%の嵩密度を
有した焼結体であった。
【0033】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、
得られるY−ZrO2粉末は殆ど組成変動がないのみなら
ず、コスト的にも極めて有利である。したがって、本発
明によって得られるY−ZrO2粉末は、高靭性で再現性
の高いPSZ焼結体の原料粉末として、構造材料用原料
粉末として広く利用される可能性が高い。
得られるY−ZrO2粉末は殆ど組成変動がないのみなら
ず、コスト的にも極めて有利である。したがって、本発
明によって得られるY−ZrO2粉末は、高靭性で再現性
の高いPSZ焼結体の原料粉末として、構造材料用原料
粉末として広く利用される可能性が高い。
Claims (1)
- 【請求項1】 ジルコニウムとイットリウムの混合溶液
中にアンモニア水を滴下することによって水酸化物を共
沈させ、それを熱分解及び仮焼することによってイット
リウム含有ジルコニア粉末とする方法において、ジルコ
ニウム溶液に過酸化水素水、イットリウム溶液を順次加
えた後、沈殿を生成させることなく硫酸アンモニウム溶
液を添加し、この混合溶液にアンモニア水を滴下して水
酸化物を共沈させることを特徴とする組成変動のない易
焼結性高純度イットリウム含有ジルコニア粉末の製造方
法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP6093132A JP2580531B2 (ja) | 1994-04-05 | 1994-04-05 | 高均質高純度イットリウム含有ジルコニア粉末の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP6093132A JP2580531B2 (ja) | 1994-04-05 | 1994-04-05 | 高均質高純度イットリウム含有ジルコニア粉末の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0834614A JPH0834614A (ja) | 1996-02-06 |
JP2580531B2 true JP2580531B2 (ja) | 1997-02-12 |
Family
ID=14074001
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP6093132A Expired - Lifetime JP2580531B2 (ja) | 1994-04-05 | 1994-04-05 | 高均質高純度イットリウム含有ジルコニア粉末の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2580531B2 (ja) |
Families Citing this family (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP5205245B2 (ja) * | 2008-12-09 | 2013-06-05 | 株式会社デンソー | 部分安定化ジルコニア磁器 |
JP5716008B2 (ja) * | 2012-12-27 | 2015-05-13 | 株式会社デンソー | 部分安定化ジルコニア磁器の製造方法 |
JP6052735B2 (ja) * | 2013-03-28 | 2016-12-27 | 学校法人同志社 | 高強度強靱性ZrO2−Al2O3系固溶体セラミックスの作製法 |
Family Cites Families (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS5935029A (ja) * | 1982-08-20 | 1984-02-25 | Etsuro Kato | ジルコニア系微粉末の製造方法 |
JP2838521B2 (ja) * | 1988-06-28 | 1998-12-16 | コニカ株式会社 | 放射線画像ファイリング装置 |
-
1994
- 1994-04-05 JP JP6093132A patent/JP2580531B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH0834614A (ja) | 1996-02-06 |
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EXPY | Cancellation because of completion of term |