JP5710109B2 - 光測距装置 - Google Patents
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例えば、光測距装置を、列車のドアやプラットホームドアでの荷物等の挟み込みの検出に用いる場合、光測距装置の近傍に荷物などが存在することで、レーザ光の発光が無用に停止されてしまい、これによって挟み込みの検出(測距)が不能になり、列車の出発許可が行えなくなってしまうという問題が生じる。
更に、安全モードでの測距動作における実際の被曝放出レベルが所定よりも高い場合には、たとえ人間の眼が至近距離に存在していることを検知して、高精度モードから安全モードに切り替えたとしても、被曝放出レベルを最大許容露光レベルよりも小さく抑えることができず、眼を保護することができないので、安全モードでの測距動作が、被曝放出レベルが最大許容露光レベルよりも小さくなるパターンで実際に行われることが確かめられてから、安全モードでの測距動作及び高精度モードでの測距動作を許可する。
上記請求項1又は2の構成において、請求項3のように、閾値よりも近い距離に存在する物体の測距視野に占める割合が所定割合よりも大きくかつ当該物体に他よりも反射光量が高い測点が存在する状態が定時間以上継続している場合に、前記高精度モードから前記安全モードに切り替えることができる。
この場合、人間の眼が至近距離に存在しているとしても、短時間であれば、眼の被曝量を小さく抑制できるので、人間の眼が至近距離に存在している状態の継続時間が所定時間よりも長くなってから、測距動作における被曝放出レベルを最大許容露光レベルよりも小さく制限し、前記継続時間が前記所定時間よりも短い場合には、前記被曝放出レベルの制限を実施しない。
図1は、本発明に係る光測距装置における光学系を示す斜視図である。
図1に示す光測距装置1は、2次元走査ミラー(スキャナ)2、レーザ投光部3、レーザ受光部4、投光/受光分離器5b、ガラス板などの透明板からなるレーザ光を透過させる投受光窓6を含んで構成され、測定対象物7に向けたレーザ光(パルスレーザ)の投光、及び、測定対象物7からの反射光の受光は、前記投受光窓6を介してなされるようになっている。
前記レーザ投光部3は、図2に示すように、レーザドライバ31、レーザ素子(半導体レーザ)32、投光光学系(レンズなど)33を含んで構成され、前記レーザドライバ31は、レーザ放射タイミング制御信号に基づいて前記レーザ素子32を駆動制御して、レーザ素子32からレーザ光(パルス光)を発光させる。
ここで、前記2次元走査ミラー2が2次元的に振動することで、2次元走査ミラー2での反射光は2次元領域に走査され、これにより、レーザ光で測定対象物7が2次元走査される。
前記投受光窓6を透過して測定対象物7に向けて放射されたレーザ光は、測定対象物7で反射し、この反射レーザ光は、投受光窓6を透過して2次元走査ミラー2で反射し、更に、投光/受光分離器5bで反射して、レーザ受光部4に受光される。
そして、投光/受光分離器5bで反射したレーザ光は、受光光学系41で集光されて受光素子42に受光され、受光素子42は、受光したレーザ光の強度が高いほど大きな電流を発生する。
尚、前記レーザドライバ31及びプリアンプ43には、高電圧電源(HV電源)11の高電圧が供給される。
前記発光モニタ部12は、受光素子(フォトダイオード)を含んで構成され、この受光素子(フォトダイオード)でレーザ素子32から発光されたレーザ光(パルス光)を検出して、測定対象物7に向けたレーザ光の放射タイミングにおいて計時スタートパルスを生成し、この計時スタートパルスを前記測距計測部9(時間計測部95,96)に出力する。
前記ゼロクロス検出方式及び立上がりエッジ検出方式でそれぞれに計測した、レーザ光の放射タイミングと測定対象物7からの反射光を受光した受光タイミングとの時間差は、制御部10の距離値算出部101に入力される。
前記立上がりエッジ検出方式は、受光素子42の出力信号の波高値が高い場合には、比較的精度の良い測距が可能であるが、波高値が低くなるほど測距精度が低下する。
そこで、受光強度データ(反射光量データ)と閾値とを比較することで、受光素子42の出力信号の波高値を判断し、測定対象物7からの反射光の強度(光量)が低い場合(波高値が低い場合)には、ゼロクロス検出方式で計測した時間差によって求めた距離を出力し、測定対象物7からの反射光の強度(光量)が高い場合(波高値が高い場合)には、立上がりエッジ検出方式で計測した時間差によって求めた距離を出力することで、反射光の強度(反射光量)が低い場合と高い場合との双方で、精度の良い測距を行えるようにしてある。
前記レーザ・スキャナ・コントローラ103には、前記距離の測定結果と共に、前記A/D変換器44の出力である受光強度データ(受光光量データ)が入力される。
前記縦振動駆動手段及び横振動駆動手段の駆動信号は、スキャナドライバ(駆動回路)104に出力され、このスキャナドライバ104によって縦振動駆動手段及び横振動駆動手段(コイル)への通電が制御される。
前記スキャナドライバ(駆動回路)104、及び、前記レーザ・スキャナ・コントローラ103などは、DC12V電源106によって動作する。
尚、前記最大許容露光レベルとは、「通常の環境の下で、人体に照射しても有害な影響を与えることがないレーザ放射レベルの最大値」であり、単位は、パワー密度[W/m2]、又は、エネルギー密度[J/m2]で示される。
前記安全モードでは、測定対象物7が細く小さいものであったり、光測距装置1と測定対象物7との相対速度が速くなったりすると、充分な測距精度を維持することが難しく、測距精度を維持するには、レーザ投光頻度を上げたり、レーザ光の走査振幅を絞って角度分解能を上げたりする必要があり、前記安全モードよりも、レーザ投光頻度を上げたり、走査振幅を絞る設定など動作パターンの変更を行って、より高い測距精度が得られるようにしたのが、前記高精度モードである。
ステップS201で、測定対象物7までの距離の計測動作(測距動作)が開始されると(光測距装置1が起動されると)、次のステップS202では、安全モードにおけるレーザ光走査のパラメータ、換言すれば、安全モードでの動作パターンを示すパラメータ(レーザ条件)の設定を行う。
前記システムクロック周波数とは、測距制御ロジックの周波数であり、レーザ光放射タイミングとは、2次元走査(例えばリサージュ走査)されるレーザ光の走査軌跡に応じて画像フレーム単位毎のレーザ光放射タイミングスケジュール(走査ポイント)を規定するデータであり、レーザ光走査振幅とは、2次元走査ミラー(スキャナ)2の往復振動振幅に対応するレーザ光の走査広がり角である。
また、ステップS204では、光測距装置1に実装した補助記憶装置に予め記憶されている安全モード用のレーザ光放射タイミングテーブルTbsを、光測距装置1に実装したマイクロコンピュータの主記憶領域(メインメモリ)に読み込む、タイミングテーブルのロードを行う。
ステップS206では、後述する2重診断系(検証手段)の一致確認ゲートを有効にする。
ステップS207以降は、同一の診断・補正処理を、2系統で個別に並行して行う。
尚、前記所定倍Xは、X≧1.0であり、例えば、所定倍X=1.1とする。但し、前記所定倍Xは、各モードにおける被曝放出限界AEL、最大許容露光レベルMPEなどに基づいて、被曝放出レベルが少なくとも最大許容露光レベルを超えることがない値として適宜設定される値であり、1.1倍に限定されるものではない。
システムクロック周波数の若干の低下は測距動作に大きな影響を与えないが、システムクロック周波数が基準よりも高くなると、レーザ光放射の時間間隔が狭まって、被曝放出レベルが増大してしまう。そこで、基準周波数fCLKの所定倍X(例えば1.1倍)を、クロック周波数の最大許容レベルに設定して、所定倍X以下であればシステムクロック周波数は正常であると判断する。
この放射停止処理により、システムクロック周波数が基準よりも高く、レーザ光放射の時間間隔が狭まって、被曝放出レベルが標準よりも増大する条件下で、レーザ光が放射されてしまうことを回避する。
ステップS208a,208bでレーザ光の放射を停止させる処理を行うと、次に、ステップS209a,209bへ進み、システムクロック周波数を1ステップ(所定値)だけ下げる処理を実行させ、実際のシステムクロック周波数が、基準周波数fCLKの所定倍X以下にまで低下するようにする。
そして、ステップS203へ戻り、周波数を低下させたシステムクロック周波数で制御動作を行うようにする。
この放射停止処理によって、安全モードによるレーザ放射中であれば、誤ったタイミングでレーザ光が放射されることを回避でき、また、高精度モードから安全モードへの切り替えによって被曝放出レベルの確実な低下を図ることができない状態での高精度モードによるレーザ放射が回避される。
尚、レーザ光放射タイミングテーブルが正しくロードされたことを確認するために、伝送データにチェックサムを付加して伝送ミスによるデータ中のエラーを検出したり、CRC(サイクリック・リダンダンシ・チェック)によってデータ伝送エラーのチェックを行ったりする。
一方、ステップS210a,210bで、レーザ光放射タイミングテーブルが正しくロードされていると判断されると、ステップS213a,213bへ進み、レーザ光の走査振幅(走査広がり角)が、基準振幅θsの所定倍Y(例えば、所定倍Y=0.5)以上であるか否かを判断する。
そこで、レーザ光の走査振幅(走査広がり角)が基準に比べて狭い場合には、ステップS214a,214bへ進み、安全モード又は高精度モードによるレーザ光の放射中であればレーザ光の放射を停止させることで、被曝放出レベルが部分的に高くなる状態でレーザ光が測定対象物に向けて放射されることを回避する。
以下では、前記レーザ光の走査振幅の検出方法を説明する。
従って、コイルに発生する起電力の振幅を検出すれば、2次元走査ミラー2(ミラー21)の往復振動振幅、換言すれば、レーザ光の走査振幅(走査広がり角)を検出できることになる。
そこで、永久磁石における磁束密度の温度特性に基づいて、コイルに発生した起電力の検出結果を補正することで、温度変化があっても、2次元走査ミラー2(ミラー21)の往復振動振幅、換言すれば、レーザ光の走査振幅(走査広がり角)を高精度に検出することができる。
具体的には、例えば図5に示すように、投受光窓6の走査範囲ABCDの外側に、走査振幅の広狭方向に沿って明暗(ブラック濃度、レーザ光の反射率)が段階的に変化する黒白ストライプパターン(グレイスケール)を基準ターゲット(基準反射部)61として配置し、基準ターゲット61のどの部分にレーザ光が照射されたかによる反射光量の違いによって、走査振幅を検出することができる。
そして、前記走査範囲ABCD内で放射される測定用のレーザ光(プローブ光)とは別に、前記基準ターゲットが配置されている位置にレーザ光を反射させる向きに、2次元走査ミラー2(ミラー21)が向いているタイミングで、走査振幅を検出するためのレーザ光の放射を行わせる。
例えば、走査振幅の不足状態であって、基準ターゲット61の最内側の黒色(低反射率)の部分にレーザ光が照射された場合、基準ターゲットからの反射光量が最低レベルであることで、黒色(低反射率)の部分にレーザ光が照射されたことを検知でき、図6(c)のように、黒色(低反射率)の部分にレーザ光が照射された場合には、走査振幅の不足状態であると判断できる。
更に、基準ターゲットの中間の白色(高反射率)の部分にレーザ光が照射された場合、基準ターゲットからの反射光量が最高レベルであることで、白色(高反射率)の部分にレーザ光が照射されたことを検知でき、図6(b)のように、白色(高反射率)の部分にレーザ光が照射された場合には、走査振幅が適切であると判断できる。
ステップS213aとステップS213bとの少なくとも一方で、レーザ光の走査振幅(走査広がり角)が正常であると判断された場合、即ち、2系統の診断の少なくとも一方で、クロック周波数・レーザ放射タイミング・走査振幅が全て正常に設定されていると判断された場合には、ステップS216へ進む。
ここで、2系統の診断結果が異なっている場合には、ステップS218へ進んで、レーザ光の放射中であればレーザ光の放射を停止させた後、ステップS202に戻って、安全モードにおけるレーザ光走査のパラメータの設定を行い、改めてクロック周波数・レーザ放射タイミング・走査振幅を調整させる。
即ち、安全モードにおけるクロック周波数・レーザ放射タイミング・走査振幅が全て正常であって、安全モードでのレーザ光の被曝放出レベルが基準(最大許容露光レベルMPE)よりも小さい状態で動作することを確認してから、安全モード(クラス1)でのレーザ放射を許可し、更に、後述するように、安全モード(クラス1)でのレーザ放射が許可されていることを条件に、高精度モードへの切り替え許可を行うものであり、安全モードでのレーザ光の被曝放出レベルが基準(最大許容露光レベルMPE)よりも大きい場合は、安全モード及び高精度モードでのレーザ放射が禁止される。
前記投光パワーが正常であるか否かの判断は、発光モニタ12によってレーザ光の放射を検出したときの検出信号の波高値に基づいて判断できる他、前記走査振幅の検出に用いたような基準ターゲットを走査範囲の端に配置し、この基準ターゲットでの反射光量に基づいて判断させることができ、投光パワー(波高値)が最大許容値以下になるように、レーザ素子32の駆動信号を補正する。
尚、前記クロック周波数,レーザ放射タイミング,走査振幅,投光パワー,投光パルス幅のうちの1つについて、又は、これらパラメータのうちの複数について、実際値が基準範囲に含まれるように調整させることができ、また、2重診断系を省略し、1系統のみで診断を行わせてもよい。
そして、所定時間が経過している場合には、ステップS207a,207bに戻って、安全モードでの動作パターン(クロック周波数・レーザ放射タイミング・走査振幅など)が正常に設定されているか否かを判断させるようにする。
ステップS220で、安全モード(クラス1)でのレーザ放射の許可を行った直近のタイミングから所定時間(例えば10秒)が経過していないと判断された場合には、ステップS220に戻って経過時間を再度判定する処理と、ステップS221に進む処理との双方を実行する。
ステップS221では、高精度モード(クラス3R)におけるレーザ光走査のパラメータ、換言すれば、高精度モードでの動作パターンを示すパラメータ(システムクロック周波数、レーザ光放射タイミング、レーザ光走査振幅など)の設定を行う。
ステップS223では、2重診断系の一致確認ゲートを有効にし、2重診断系を構成するステップS224a,224bでは、それぞれに、光測距装置1に実装したマイクロコンピュータの主記憶領域(メインメモリ)にロードしたレーザ光放射タイミングテーブルが、光測距装置1に実装した補助記憶装置に記憶されている高精度モード用のレーザ光放射タイミングテーブルTbsに一致しているか否か、換言すれば、高精度モード用のレーザ光放射タイミングテーブルTbsが正しくロードされたか否かを判別する。
上記処理により、高精度モード(クラス3R)によるレーザ光の放射が、誤ったタイミングで行われることを回避する。
これは、安全モード(クラス1)での動作が適切に行われない場合、安全モードでのレーザ放射を許可できないばかりでなく、高精度モードから安全モードに切り替えても被曝放出レベルを眼に対する安全レベルにまで確実に低下させることができないことを意味するので、安全モード(クラス1)での動作が適切に行われることを条件に高精度モードでのレーザ放射がなされるように、高精度モード(クラス3R)によるレーザ光放射と安全モード(クラス1)でのレーザ光放射とのいずれについても停止させるようにしている。
一方、ステップS224a,224bの少なくとも一方で、高精度モード用のレーザ光放射タイミングテーブルTbsが正しくロードされたと判断されると、ステップS227へ進む。
ここで、2系統の診断結果が異なっている場合には、ステップS229へ進んで、高精度モード(クラス3R)によるレーザ光の放射中であればレーザ光の放射を停止させ、その後、ステップS221に戻って、高精度モードにおけるレーザ光走査のパラメータの設定を行い、高精度モードでの動作パターンで動作するように、改めてレーザ放射タイミングを調整させる。
ステップS230では、光測距装置1の至近距離に人間の眼が存在しているか否かを判断し、至近距離に人間の眼が存在していなければ、安全モードから高精度モードに切り替えても、人間の眼に有害となることはないので、ステップS232へ進んで、高精度モード(クラス3R)でのレーザ放射を許可し、実際に高精度モードに従ったレーザ放射によって距離を測定させる。
まず、ステップS301では、レーザ光を2次元に走査させて得た各測点での測定対象物までの距離に基づいて、光測距装置1から所定距離DSL(閾値)以下の範囲内に物体が存在するか否かを判断する。
例えば、測定距離10cmでのクラス1の被曝放射限界AELの1.3倍の投光エネルギで高精度モードによるレーザ放射が行われるとすると、10cm×1.32≒17cmが、レーザ放射レベルが最大許容露光レベルMPEを下回る最小距離となり、17cmよりも離れていれば、高精度モードであっても人間の眼の安全を確保できるので、前記所定距離DSLを17cm以上に設定する。
一方、所定距離DSL以下の範囲内に物体が存在する場合であっても、それが人間の頭部ではなく人間の頭部以外の物(荷物など)が至近距離に存在する場合や、頭部であっても眼が測距視野に入っていない場合には、高精度モード(クラス3R)でのレーザ放射を許可することが可能であるので、所定距離DSL以下の範囲内に物体が存在すると判断された場合には、続いてステップS302へ進み、距離画面(走査範囲)の所定割合RSL以上が、所定距離DSL以下の測点で占められているか否かを判断する。
例えば、前記所定距離DSLを17cmとし、17cm先での測距視野を約9cm×18cmとし、乳児の頭部が直径10cmの球体であると仮定し、更に、測距視野内に片目が入る場合、最低でも頭部の投影面積の1/4が測距視野内に入るとすると、所定距離DSLよりも近い至近距離に眼が存在する場合に、測距視野内で頭部が占める割合は、12%≒(頭部の投影面積/4)/(9×18)となる。
逆に、距離画面(走査範囲)のうち所定距離DSL以下の測点で占められている割合が、所定割合RSL以上であれば、所定距離DSL以下に存在する物体が人間の頭部であって、かつ、眼が測距視野に入っている可能性があると判断して、ステップS303へ進む。
前記所定時間TSLは、高精度モード(クラス3R)の被曝放出レベルで最大許容露光レベルMPEを超えない最大時間として設定され、仮に至近距離に人間の眼が存在していても、前記所定時間TSL以内であれば、眼の安全を確保できる。
一方、継続時間が所定時間TSL以上である場合、それ以上に高精度モードでのレーザ放射を継続させると、人間の眼における最大許容露光レベルMPEを超える照射線量(被曝量)になってしまうので、ステップS304へ進み、至近距離で所定割合RSL以上を占める物体に、人間の眼に相当すると推定される測点が含まれているか否かを判断する。
従って、測距視野において所定割合RSL以上を占める物体に、他よりも反射光量が高い測点が部分的に存在する場合には、その反射光量が強い部分は、人間の眼であると推定することができる。
ここで、測距視野内の至近距離に眼が存在する場合、被曝放出レベルの高い高精度モードでのレーザ走査を、前記所定時間を越えて継続させると、眼の保護を充分に図ることができない。
一方、安全モード(クラス1)によってレーザ放射を行わせている状態で、ステップS230で至近距離に眼が存在すると判断された場合には、高精度モードに移行させることなく、そのまま安全モードでのレーザ放射を継続させ、至近距離に眼が存在しなくなると、ステップS232に進んで高精度モード(クラス3R)によるレーザ放射が許可されることで、高精度モードへの切り替えが実行される。
また、継続時間を判定するステップS303を最後に実行させ、人間の眼が至近距離に存在していると判断されている時間が、所定時間TSLを越えていなければ、高精度モードを許可させることができる。
上記実施形態によると、基本的には、高精度モード(クラス3R)でのレーザ放射によって測距を行わせるが、至近距離に人間の眼が存在するようになると、安全モード(クラス1)でのレーザ放射による測距に切り替えるので、高い測距精度を極力維持しつつ、また、測距動作を停止させることなく、人間の眼の保護を図ることができる。
更に、安全モード・高精度モードそれぞれでの動作パターンが正規であることを検証した上でレーザ放射を許可するので、予定される被曝放出レベルを超えたレーザ放射がなされてしまうことを回避でき、特に、人間の眼が至近距離に存在することを検知したときに、安全モードでのレーザ放射に切り替えた場合に、人間の眼を確実に保護しつつ、測距動作を継続させることができる。
図8のフローチャートに示すルーチンでは、高精度モード用のレーザ放射タイミングが正常にロードされたという結果で2系統の診断結果が一致していると、ステップS228で判定されると、ステップS230Aに進んで、高精度モードでの測距が要求される条件が成立している否かを判断する。
ステップS230Aで、高精度モードでの測距が要求される条件ではないと判断された場合には、安全モード(通常モード)で測距を行わせるべく、ステップS231Aで高精度モード(クラス3R)によるレーザ光放射を停止させた後(高精度モードでのレーザ放射許可判定をキャンセルした後)、ステップS224a,224bに戻るようにする。
そして、至近距離に人間の眼が存在している場合には、高精度モードでの測距が要求されている条件ではあっても、安全モードで測距を行わせるべく、ステップS231Bで高精度モード(クラス3R)によるレーザ光放射を停止させた後(高精度モードでのレーザ放射許可判定をキャンセルした後)、ステップS224a,224bに戻るようにする。
上記実施形態によると、高精度な測距が要求される場合に高精度モードで測距させ、精度要求が低い場合には安全モードで測距させるので、過剰に高い分解能やレーザパワーで測距動作されることを回避でき、また、高精度モードが要求される条件であっても、至近距離に人間の眼が存在する場合には、安全モードで測距を行わせて人間の眼を保護することができる。
例えば、駅プラットホームドアを自動開閉するシステムにおいて、列車とプラットホームドアやプラットホームに挟まれる空間に、乗降客や荷物の居残り・残存が発生したり、或いは、列車ドアやプラットホームドアでの荷物等の挟み込みが発生しないように運用する必要があり、かかるシステムにおいて、乗降客や荷物の居残り・残存、荷物等の挟み込みの検出に、前記光測距装置1が用いられる。
このとき、測距対象物としての人間の大きさ・レーザ反射率は、安全モードで検知するに充分な大きな値であり、安全モード(通常モード)で必要充分な検出精度を得ることができる。
このような戸挟み状態では、人間或いは人間の眼が測距視野内に存在しないので、光測距装置1における高精度モードを許可して、前記戸挟みを精度よく検知できるようにする。
以上のようにして戸挟み状態を監視し、戸挟みがないことを確認した後、プラットホームドアを閉口し、列車出発許可とする。或いは、プラットホームドアの閉口は、列車ドアの閉口と同時としてもよく、その場合は、戸挟み状態がないことを確認した後、列車出発許可とする。
但し、至近距離に人間の眼が存在することを確認した場合は、高精度モードから安全モード(通常モード)に直ちに切り替えると共に、人間を検知したことを上位システムに伝達し、危険回避の手段(列車運行停止など)を起動させるトリガ信号とする。
尚、以上のドア開閉運用における光測距装置1の投光制御は、エレベータなどのドア開閉の運用にも適用できる。
2 2次元走査ミラー(スキャナ)
3 レーザ投光部
4 レーザ受光部
5b 投光/受光分離器
6 投受光窓
7 測定対象物
9 測距計測部
10 制御部
12 発光モニタ部
32 レーザ素子
42 受光素子
91 共振回路
92 立上がり回路
93,94 ストップタイミング生成部
95,96 時間計測部
97,98 A/D変換器
101 距離値算出部
103 レーザ・スキャナ・コントローラ
Claims (3)
- レーザ光で測定対象物の2次元走査を行い、前記測定対象物からの反射光に基づいて測距を行う光測距装置において、閾値よりも近い距離に存在する物体の測距視野に占める割合が所定割合よりも大きく、かつ、当該物体に他よりも反射光量が高い測点が存在する場合に、高精度モードでの測距動作を禁止して高精度モードよりも投光エネルギが低く被曝放出レベルが最大許容露光レベルよりも小さい安全モードで測距し、レーザ光の走査範囲の外側に走査方向に沿って配置した反射率が段階的変化する基準ターゲットからの反射光量に基づき検出した前記安全モードでの走査振幅が基準よりも狭い場合に、前記安全モード及び前記高精度モードでのレーザ光照射を停止する、光測距装置。
- レーザ光で測定対象物の2次元走査を行い、前記測定対象物からの反射光に基づいて測距を行ってドアにおける挟み込みの検出を行う光測距装置において、ドア開口時に被曝放出レベルが最大許容露光レベルよりも小さい安全モードで測距動作し、ドア閉口時に前記安全モードよりも投光エネルギが高い高精度モードで測距動作し、ドア閉口時に、閾値よりも近い距離に存在する物体の測距視野に占める割合が所定割合よりも大きく、かつ、当該物体に他よりも反射光量が高い測点が存在する場合に、前記高精度モードから前記安全モードに切り替える、光測距装置。
- 閾値よりも近い距離に存在する物体の測距視野に占める割合が所定割合よりも大きくかつ当該物体に他よりも反射光量が高い測点が存在する状態が所定時間以上継続している場合に、前記高精度モードから前記安全モードに切り替える、請求項1又は2記載の光測距装置。
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